JP2009172697A - 高速断続重切削加工ですぐれた耐欠損性、耐熱亀裂性、耐摩耗性を示すwc基超硬合金製切削工具 - Google Patents
高速断続重切削加工ですぐれた耐欠損性、耐熱亀裂性、耐摩耗性を示すwc基超硬合金製切削工具 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】高速断続重切削加工ですぐれた耐欠損性、耐熱亀裂性、耐摩耗性を示すWC基超硬合金製切削工具を提供する。
【解決手段】WC基超硬合金製切削工具において、超硬基体表面から基体内部へ深さ10μmまでの領域の断面におけるhcp−Coの占める面積(Co・hcp)と、fcc−Coの占める面積(Co・fcc)との面積比の値(Co・hcp/Co・fcc)が0.1を超え0.3以下である結晶構造分布を有する。
【選択図】 図1
【解決手段】WC基超硬合金製切削工具において、超硬基体表面から基体内部へ深さ10μmまでの領域の断面におけるhcp−Coの占める面積(Co・hcp)と、fcc−Coの占める面積(Co・fcc)との面積比の値(Co・hcp/Co・fcc)が0.1を超え0.3以下である結晶構造分布を有する。
【選択図】 図1
Description
本発明は、工具寸法精度にすぐれるとともに、各種の鋼や鋳鉄等の、高熱発生を伴い、しかも、切刃部に対して大きな熱的衝撃・機械的衝撃がかかる高速断続重切削加工に用いられた場合でも、長期の使用に亘って、すぐれた耐欠損性、耐熱亀裂性、耐摩耗性を示すWC基超硬合金製切削工具(以下、超硬工具という)に関するものである。
従来から、超硬工具特性としては、耐摩耗性ばかりでなく、靭性と強度もますます要求されるようになってきている。
このような要求をかなえるための超硬工具としては、例えば、
周期律表IVa、Va、VIa族元素の炭化物(WCを除く)、窒化物および炭窒化物から選択された少なくとも1種およびWCを主体とする硬質相とCoを含む鉄族金属の結合相とを焼結後冷却して得た超硬合金を、液相出現直下の温度(例えば、1200〜1300℃程度)まで加熱し、液体中に浸漬して急冷(例えば、1000℃/min以上の冷却速度)し、
Coの結晶構造が、
0≦I(Co・hcp)/I(Co・fcc)≦0.1
(ただし、I(Co・hcp)はhcp 構造のCoの(101) 面についてのX線回折強度、I(Co・fcc)はfcc 構造のCoの(111) 面についてのX線回折強度)
の条件を満足するようにした、周期律表IVa、Va、VIa族元素の炭化物(WCを除く)、窒化物および炭窒化物から選択された少なくとも1種およびWCを主体とする硬質相とCoを含む鉄族金属の結合相とからなる超硬工具が知られている。
周期律表IVa、Va、VIa族元素の炭化物(WCを除く)、窒化物および炭窒化物から選択された少なくとも1種およびWCを主体とする硬質相とCoを含む鉄族金属の結合相とを焼結後冷却して得た超硬合金を、液相出現直下の温度(例えば、1200〜1300℃程度)まで加熱し、液体中に浸漬して急冷(例えば、1000℃/min以上の冷却速度)し、
Coの結晶構造が、
0≦I(Co・hcp)/I(Co・fcc)≦0.1
(ただし、I(Co・hcp)はhcp 構造のCoの(101) 面についてのX線回折強度、I(Co・fcc)はfcc 構造のCoの(111) 面についてのX線回折強度)
の条件を満足するようにした、周期律表IVa、Va、VIa族元素の炭化物(WCを除く)、窒化物および炭窒化物から選択された少なくとも1種およびWCを主体とする硬質相とCoを含む鉄族金属の結合相とからなる超硬工具が知られている。
そして、この超硬工具は、例えば、合金鋼の高速切削加工において、すぐれた靭性と強度、特に耐熱亀裂性および耐衝撃強度、を発揮することも知られている。
特開2000−234136号公報
近年の切削加工に対する省力化および省エネ化、さらに低コスト化の要求は強く、これに伴い、切削加工条件はより一層過酷なものとなってきているが、上記従来の超硬工具は、例えば、合金鋼等の通常条件の連続切削加工、断続切削加工に用いた場合は、すぐれた靭性、強度を示すものの、これを、高熱発生を伴い、しかも、切刃部に対して、繰り返し大きな熱的衝撃および機械的衝撃がかかる高速断続重切削条件で用いた場合には、超硬工具を構成するWC基超硬合金の靭性、強度が十分ではなく、超硬工具に熱亀裂、欠損が発生しやすくなり、これが原因となり、比較的短時間で使用寿命に至るのが現状である。
そこで、本発明者らは、超硬工具の耐欠損性、耐熱亀裂性および耐摩耗性を向上させるべく、超硬工具を構成するWC基超硬合金の結晶構造に着目し、鋭意研究を行った結果、次のような知見を得た。
(a)一般に、所定の配合組成をもった混合粉末の圧粉体を、1400℃程度の温度で焼結した後、焼結後の超硬合金基体表面に、例えば、ダイヤモンド砥石を用いた研削加工を施して所定形状・寸法に整えることにより超硬工具は製造されるが、超硬合金基体表面に研削加工を施した後、Coの変態促進処理を施すことにより、超硬合金基体の表面近傍でのCoの結晶構造の分布を調整できること。
(b)上記Co変態促進処理は、例えば、超硬合金基体を、1000〜1250℃の範囲内の所定温度に加熱した後、この温度範囲内において、15〜45分の周期で1時間以上、昇温・降温を繰り返すサイクル加熱を行い、その後、加熱温度から600℃までを、冷却速度5℃/min以下で徐冷する熱処理工程からなり、このような熱処理によって、ダイヤモンド砥石等による研削加工で形成された超硬合金基体表面近傍に存在する六方晶構造のCo(以下、hcp−Coで示す)が、面心立方晶構造のCo(以下、fcc−Coで示す)への変態が促進され、超硬合金基体表面近傍におけるfcc−Coとhcp−Coの結晶構造の分布状態、分布割合が変化し、同時に、研削加工で導入された超硬合金基体の内部歪の緩和が図られること。
(c)そして、Arイオンを用いたCP加工法(Cross−section Polisher)により超硬合金基体の断面資料を作製し、上記変態促進処理によるCoの結晶構造の分布の変化を、電子線後方散乱回折装置(EBSD)を用いた結晶構造の面解析により調査したところ、基体表面から基体内部へ深さ10μmまでの領域の各断面におけるhcp−Coの占める面積Co・hcpと、fcc−Coの占める面積Co・fccとの比の値(Co・hcp/Co・fcc)は、0.1を超え0.3以下であり、そして、このようなCoの結晶構造分布を有する超硬工具は、耐欠損性、耐熱亀裂性および耐摩耗性に優れ、また、工具寸法精度も高いものであること。
この発明は、上記知見に基づいてなされたものであって、
「 WCを主体とし、残りが、Ti、Ta、Nbのうちから選ばれた少なくとも1種の炭化物、窒化物および炭窒化物を含有するWCを主体とする硬質相と、Coを主体とする結合相とからなるWC基超硬合金を基体とするWC基超硬合金製切削工具において、
上記超硬合金の基体表面について、電子線後方散乱回折装置を用いた結晶構造の面解析を行った場合に、基体表面から基体内部へ深さ10μmまでの領域の断面における六方晶構造のCoの占める面積(Co・hcp)と、面心立方構造のCoの占める面積(Co・fcc)との面積比の値(Co・hcp/Co・fcc)が、0.1を超え0.3以下であるWC基超硬合金製切削工具。」
に特徴を有するものである。
つぎに、この発明のCo結晶構造分布およびこれを形成するための変態促進処理等について、詳細に説明する。
(a)この発明の超硬工具のWC基超硬合金基体を得るには、まず、所定粒径のWC粉末、TiC粉末、TaC粉末、TiCN、NbC粉末、Cr3C2、Co粉末等を所定の組成となるように混合配合し、その混合粉末の圧粉体を、1400℃程度の温度で焼結して超硬合金基体素材を製造し、この超硬合金基体素材に、例えば、JIS粒度170のダイヤモンド砥石を用いて研削加工を施してISO規格SEEN1203AFTN1で規定される所定形状・寸法の超硬合金基体を形成する。
(a)一般に、所定の配合組成をもった混合粉末の圧粉体を、1400℃程度の温度で焼結した後、焼結後の超硬合金基体表面に、例えば、ダイヤモンド砥石を用いた研削加工を施して所定形状・寸法に整えることにより超硬工具は製造されるが、超硬合金基体表面に研削加工を施した後、Coの変態促進処理を施すことにより、超硬合金基体の表面近傍でのCoの結晶構造の分布を調整できること。
(b)上記Co変態促進処理は、例えば、超硬合金基体を、1000〜1250℃の範囲内の所定温度に加熱した後、この温度範囲内において、15〜45分の周期で1時間以上、昇温・降温を繰り返すサイクル加熱を行い、その後、加熱温度から600℃までを、冷却速度5℃/min以下で徐冷する熱処理工程からなり、このような熱処理によって、ダイヤモンド砥石等による研削加工で形成された超硬合金基体表面近傍に存在する六方晶構造のCo(以下、hcp−Coで示す)が、面心立方晶構造のCo(以下、fcc−Coで示す)への変態が促進され、超硬合金基体表面近傍におけるfcc−Coとhcp−Coの結晶構造の分布状態、分布割合が変化し、同時に、研削加工で導入された超硬合金基体の内部歪の緩和が図られること。
(c)そして、Arイオンを用いたCP加工法(Cross−section Polisher)により超硬合金基体の断面資料を作製し、上記変態促進処理によるCoの結晶構造の分布の変化を、電子線後方散乱回折装置(EBSD)を用いた結晶構造の面解析により調査したところ、基体表面から基体内部へ深さ10μmまでの領域の各断面におけるhcp−Coの占める面積Co・hcpと、fcc−Coの占める面積Co・fccとの比の値(Co・hcp/Co・fcc)は、0.1を超え0.3以下であり、そして、このようなCoの結晶構造分布を有する超硬工具は、耐欠損性、耐熱亀裂性および耐摩耗性に優れ、また、工具寸法精度も高いものであること。
この発明は、上記知見に基づいてなされたものであって、
「 WCを主体とし、残りが、Ti、Ta、Nbのうちから選ばれた少なくとも1種の炭化物、窒化物および炭窒化物を含有するWCを主体とする硬質相と、Coを主体とする結合相とからなるWC基超硬合金を基体とするWC基超硬合金製切削工具において、
上記超硬合金の基体表面について、電子線後方散乱回折装置を用いた結晶構造の面解析を行った場合に、基体表面から基体内部へ深さ10μmまでの領域の断面における六方晶構造のCoの占める面積(Co・hcp)と、面心立方構造のCoの占める面積(Co・fcc)との面積比の値(Co・hcp/Co・fcc)が、0.1を超え0.3以下であるWC基超硬合金製切削工具。」
に特徴を有するものである。
つぎに、この発明のCo結晶構造分布およびこれを形成するための変態促進処理等について、詳細に説明する。
(a)この発明の超硬工具のWC基超硬合金基体を得るには、まず、所定粒径のWC粉末、TiC粉末、TaC粉末、TiCN、NbC粉末、Cr3C2、Co粉末等を所定の組成となるように混合配合し、その混合粉末の圧粉体を、1400℃程度の温度で焼結して超硬合金基体素材を製造し、この超硬合金基体素材に、例えば、JIS粒度170のダイヤモンド砥石を用いて研削加工を施してISO規格SEEN1203AFTN1で規定される所定形状・寸法の超硬合金基体を形成する。
ところで、WC基超硬合金基体素材に研削加工を施すと、工具寸法精度は向上するものの、特に、その表面のCoの結晶構造は、加工によって変態が促進され、六方晶を主体とした結晶構造に変化するが、六方晶構造のCo(hcp−Co)それ自体は靭性に劣るものであることから、工具の特性改善を図るためには、その後、該超硬合金基体に対して、Coの変態促進処理(後記)を行うことが必要となる。
そして、上記超硬合金基体にCoの変態促進処理を施すと、この超硬工具は、工具寸法精度がすぐれ、各種の鋼や鋳鉄などの高速断続重切削加工に供した場合にも、すぐれた耐欠損性、耐熱亀裂性、耐摩耗性を示し、長期に亘って優れた工具特性を発揮するようになる。
(b)上記変態促進処理は、具体的には、次のような条件で行う。
(b)上記変態促進処理は、具体的には、次のような条件で行う。
即ち、ダイヤモンド砥石等による研削加工が施されたWC基超硬合金基体を、例えば、1000〜1250℃の範囲内の所定温度に加熱した後、この温度範囲内において、15〜45分の周期で昇温・降温を繰り返すサイクル加熱を1時間以上行い、その後、加熱温度から600℃までを、冷却速度5℃/min以下で徐冷するという熱処理により、超硬合金基体表面近傍に研削加工により形成されたhcp−Coを、fcc−Coへの変態を促進することができる。
ただ、加熱温度が1000℃未満では耐摩耗性が向上せず、一方、加熱温度が1250℃を超えると寸法精度が劣化する。
即ち、図1に示されるように、製品寸法精度は、ISO規格SEEN1203AFTN1によって、
内接円直径精度:φD=12.7±0.025mm
厚み精度 :s=3.18±0.025mm
と定められているが、加熱温度が1250℃を超えると、上記寸法精度に対し、インサートのエッジのダレ等に起因するインサート自体の寸法精度変化が生じ、この寸法変化が切削工程において、被削材寸法および仕上げ面精度に悪影響を与えることとなる。
内接円直径精度:φD=12.7±0.025mm
厚み精度 :s=3.18±0.025mm
と定められているが、加熱温度が1250℃を超えると、上記寸法精度に対し、インサートのエッジのダレ等に起因するインサート自体の寸法精度変化が生じ、この寸法変化が切削工程において、被削材寸法および仕上げ面精度に悪影響を与えることとなる。
したがって、加熱温度範囲は、1000〜1250℃とすることが望ましい
サイクル加熱の昇温・降温周期が15分以下の場合あるいはサイクル加熱が1時間より短い場合には、所望のhcp−Coからfcc−Coへの変態が生じず、耐欠損性、耐熱亀裂性、耐摩耗性の工具特性の向上が得られず、また、昇温・降温周期が45分以上の場合には、工具外形寸法の精度が低下し、被削材の所定仕上り寸法精度を得られないため、サイクル加熱の昇温・降温周期は15〜45分とし、サイクル加熱を1時間以上行うことが望ましい。
サイクル加熱の昇温・降温周期が15分以下の場合あるいはサイクル加熱が1時間より短い場合には、所望のhcp−Coからfcc−Coへの変態が生じず、耐欠損性、耐熱亀裂性、耐摩耗性の工具特性の向上が得られず、また、昇温・降温周期が45分以上の場合には、工具外形寸法の精度が低下し、被削材の所定仕上り寸法精度を得られないため、サイクル加熱の昇温・降温周期は15〜45分とし、サイクル加熱を1時間以上行うことが望ましい。
また、600℃までの冷却速度が5℃/minより大である場合には、超硬合金基体の残留応力値が上昇し、耐欠損性の向上を図ることができないので、加熱温度から600℃までを、冷却速度5℃/min以下で徐冷することが望ましい。
そして、前記の各条件内で熱処理を行った場合に、次に述べるような好ましいCo結晶構造分布を得ることができる。
(c)上記変態促進処理を行った後のWC基超硬合金基体について、電子線後方散乱回折装置(EBSD)を用いて、超硬合金基体表面近傍のCo結晶構造について面解析したところ、基体表面から基体内部へ深さ10μmまでの領域の断面におけるhcp−Co(六方晶結晶構造のCo)の占める面積Co・hcpと、fcc−Co(面心立方構造のCo)の占める面積Co・fccとの面積比の値(Co・hcp/Co・fcc)は0.1を超え0.3以下であるCo結晶構造分布をとることが確認された。
そして、基体表面から基体内部へ深さ10μmまでの断面におけるCo・hcp/Co・fcc値が0.1以下であるような場合には、基体内部領域に大きな内部応力が残留するため、超硬合金基体が、熱的衝撃、機械的衝撃に対して非常に脆弱となり、熱亀裂の発生および進展を抑えることができず、一方、上記Co・hcp/Co・fcc値が0.3を超える場合には、超硬合金基体表面近傍での圧縮残留応力が小さくなり、高速断続重切削加工におけるすぐれた耐欠損性、耐摩耗性を維持できなくなることから、超硬合金基体表面から基体内部へ深さ10μmまでの断面におけるCo・hcp/Co・fccの値は、0.1を超え0.3以下としなければならない。
(c)上記変態促進処理を行った後のWC基超硬合金基体について、電子線後方散乱回折装置(EBSD)を用いて、超硬合金基体表面近傍のCo結晶構造について面解析したところ、基体表面から基体内部へ深さ10μmまでの領域の断面におけるhcp−Co(六方晶結晶構造のCo)の占める面積Co・hcpと、fcc−Co(面心立方構造のCo)の占める面積Co・fccとの面積比の値(Co・hcp/Co・fcc)は0.1を超え0.3以下であるCo結晶構造分布をとることが確認された。
そして、基体表面から基体内部へ深さ10μmまでの断面におけるCo・hcp/Co・fcc値が0.1以下であるような場合には、基体内部領域に大きな内部応力が残留するため、超硬合金基体が、熱的衝撃、機械的衝撃に対して非常に脆弱となり、熱亀裂の発生および進展を抑えることができず、一方、上記Co・hcp/Co・fcc値が0.3を超える場合には、超硬合金基体表面近傍での圧縮残留応力が小さくなり、高速断続重切削加工におけるすぐれた耐欠損性、耐摩耗性を維持できなくなることから、超硬合金基体表面から基体内部へ深さ10μmまでの断面におけるCo・hcp/Co・fccの値は、0.1を超え0.3以下としなければならない。
本発明のWC基超硬合金製切削工具は、前記超硬合金基体表面から基体内部へ深さ10μmまでの領域の断面におけるhcp−Coの占める面積(Co・hcp)と、fcc−Coの占める面積(Co・fcc)との面積比の値(Co・hcp/Co・fcc)は、0.1を超え0.3以下であることから、工具寸法精度にすぐれるばかりか、各種の鋼や鋳鉄等の、高熱発生を伴い、しかも、切刃部に対して大きな熱的衝撃・機械的衝撃がかかる高速断続重切削加工に用いられた場合でも、長期の使用に亘って、すぐれた耐欠損性、耐熱亀裂性、耐摩耗性を発揮するものである。
つぎに、この発明の超硬工具について、実施例により具体的に説明する。
原料粉末として、いずれも0.5〜6・高フ範囲内の所定の平均粒径を有するWC粉末、TiC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr3C2粉末、およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を表1に示される配合組成に配合し、ボールミルで72時間湿式粉砕混合し、乾燥した後、1ton/cm2の圧力で圧粉体にプレス成形し、これらの圧粉体を10-3Torrの真空中で1380〜1480℃の温度に昇温し、この温度に1時間保持した後、10〜20℃/minの冷却速度で徐却し、WC基超硬合金基体素材(以下、超硬基体素材という)1〜3を焼結で製造した。
ついで、上記超硬基体素材1〜3の表面に、JIS粒度170のダイヤモンド砥石を用いて研削加工を施して、ISO規格SEEN1203AFTN1の形状に成形し、さらに、これを、表2に示される所定の温度に加熱し、同じく表2に示される所定周期の昇温・降温を繰り返し、所定時間加熱するサイクル加熱を行い、その後、同じく表2に示される冷却条件で冷却する変態促進処理を施すことにより、WC基超硬合金製切削工具(以下、本発明超硬工具という)1〜9を製造した。
なお、上記本発明超硬工具1〜9のそれぞれについて、電子線後方散乱回折装置(EBSD)を用いたCo結晶構造の面解析を行い、基体表面から基体内部へ深さ10μmまでの領域の断面におけるhcp−Coの占める面積(Co・hcp)と、fcc−Coの占める面積(Co・fcc)とを求め、その面積比の値(Co・hcp/Co・fcc)を算出し、これらの値を表3に示した。
また、比較の目的で、上記実施例で製造した超硬基体素材1〜3に対して、その表面に、JIS粒度170のダイヤモンド砥石を用いて研削加工を施して、ISO規格SEEN1203AFTN1の形状に成形することにより、表3に示される従来のWC基超硬合金製切削工具(以下、従来超硬工具という)1〜3を製造した。(即ち、従来超硬工具1〜3は、本発明のCoの変態促進処理が施されていない。)
なお、上記従来超硬工具1〜3について、実施例の場合と同様に、電子線後方散乱回折装置(EBSD)を用いたCo結晶構造の面解析を行い、基体表面から基体内部へ深さ10μmまでの領域の断面におけるhcp−Coの占める面積(Co・hcp)と、fcc−Coの占める面積(Co・fcc)とを求め、その面積比の値(Co・hcp/Co・fcc)を算出し、表3にこれらの値を示した。
つぎに、上記の本発明超硬工具1〜9および従来超硬工具1〜3について、これをいずれも工具鋼製フライス加工用カッターに固定治具にてネジ止めした状態で、
被削材:JIS・SCM440の板材、
切削速度: 300 m/min、
切り込み: 4.0 mm、
送り: 0.3 mm/刃、
切削時間: 20 分、
の条件(切削条件Aという)での合金鋼の湿式高速高切込み高送り切削試験(通常の切削速度、切り込みおよび送りは、それぞれ、200m/min、2.5mm、0.2mm/刃)、
被削材:JIS・SUS304の板材、
切削速度: 250 m/min、
切り込み: 3.0 mm、
送り: 0.3 mm/刃、
切削時間: 10 分、
の条件(切削条件Bという)でのステンレス鋼の湿式高速高切込み高送り切削試験(通常の切削速度、切り込みおよび送りは、それぞれ、160m/min、2.0mm、0.2mm/刃)、
被削材:JIS・FC300の板材、
切削速度: 250 m/min、
切り込み: 3.0 mm、
送り: 0.2 mm/rev、
切削時間: 20 分、
の条件(切削条件Cという)での鋳鉄の湿式高速高切込み高送り切削試験(通常の切削速度、切り込みおよび送りは、それぞれ、180m/min、2.0mm、0.15mm/刃)、
を行い、いずれの切削試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。この測定結果を表4に示した。
なお、上記本発明超硬工具1〜9のそれぞれについて、電子線後方散乱回折装置(EBSD)を用いたCo結晶構造の面解析を行い、基体表面から基体内部へ深さ10μmまでの領域の断面におけるhcp−Coの占める面積(Co・hcp)と、fcc−Coの占める面積(Co・fcc)とを求め、その面積比の値(Co・hcp/Co・fcc)を算出し、これらの値を表3に示した。
また、比較の目的で、上記実施例で製造した超硬基体素材1〜3に対して、その表面に、JIS粒度170のダイヤモンド砥石を用いて研削加工を施して、ISO規格SEEN1203AFTN1の形状に成形することにより、表3に示される従来のWC基超硬合金製切削工具(以下、従来超硬工具という)1〜3を製造した。(即ち、従来超硬工具1〜3は、本発明のCoの変態促進処理が施されていない。)
なお、上記従来超硬工具1〜3について、実施例の場合と同様に、電子線後方散乱回折装置(EBSD)を用いたCo結晶構造の面解析を行い、基体表面から基体内部へ深さ10μmまでの領域の断面におけるhcp−Coの占める面積(Co・hcp)と、fcc−Coの占める面積(Co・fcc)とを求め、その面積比の値(Co・hcp/Co・fcc)を算出し、表3にこれらの値を示した。
つぎに、上記の本発明超硬工具1〜9および従来超硬工具1〜3について、これをいずれも工具鋼製フライス加工用カッターに固定治具にてネジ止めした状態で、
被削材:JIS・SCM440の板材、
切削速度: 300 m/min、
切り込み: 4.0 mm、
送り: 0.3 mm/刃、
切削時間: 20 分、
の条件(切削条件Aという)での合金鋼の湿式高速高切込み高送り切削試験(通常の切削速度、切り込みおよび送りは、それぞれ、200m/min、2.5mm、0.2mm/刃)、
被削材:JIS・SUS304の板材、
切削速度: 250 m/min、
切り込み: 3.0 mm、
送り: 0.3 mm/刃、
切削時間: 10 分、
の条件(切削条件Bという)でのステンレス鋼の湿式高速高切込み高送り切削試験(通常の切削速度、切り込みおよび送りは、それぞれ、160m/min、2.0mm、0.2mm/刃)、
被削材:JIS・FC300の板材、
切削速度: 250 m/min、
切り込み: 3.0 mm、
送り: 0.2 mm/rev、
切削時間: 20 分、
の条件(切削条件Cという)での鋳鉄の湿式高速高切込み高送り切削試験(通常の切削速度、切り込みおよび送りは、それぞれ、180m/min、2.0mm、0.15mm/刃)、
を行い、いずれの切削試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。この測定結果を表4に示した。
しかるに、Co・hcp/Co・fccの値が、0.1以下または0.3を越える従来超硬工具1〜3においては、その靭性、強度が十分ではないために、これを高速断続重切削加工に用いた場合には、熱亀裂、欠損が発生し、あるいは耐摩耗性が劣り、比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
上述のように、この発明の超硬工具は、各種の鋼や鋳鉄などの通常の条件での切削加工は勿論のこと、高熱発生を伴い、かつ、切刃に対して繰り返し大きな熱的衝撃・機械的衝撃がかかる高速断続重切削加工でもすぐれた耐欠損性、耐熱亀裂性、耐摩耗性を発揮し、切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものである。
Claims (1)
- WCを主体とし、残りが、Ti、Ta、Nbのうちから選ばれた少なくとも1種の炭化物、窒化物および炭窒化物を含有するWCを主体とする硬質相と、Coを主体とする結合相とからなるWC基超硬合金を基体とするWC基超硬合金製切削工具において、
上記超硬合金の基体表面について、電子線後方散乱回折装置を用いた結晶構造の面解析を行った場合に、基体表面から基体内部へ深さ10μmまでの領域の断面における六方晶構造のCoの占める面積(Co・hcp)と、面心立方構造のCoの占める面積(Co・fcc)との面積比の値(Co・hcp/Co・fcc)が、0.1を超え0.3以下であるWC基超硬合金製切削工具。
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JP2008012143A JP2009172697A (ja) | 2008-01-23 | 2008-01-23 | 高速断続重切削加工ですぐれた耐欠損性、耐熱亀裂性、耐摩耗性を示すwc基超硬合金製切削工具 |
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JP2008012143A JP2009172697A (ja) | 2008-01-23 | 2008-01-23 | 高速断続重切削加工ですぐれた耐欠損性、耐熱亀裂性、耐摩耗性を示すwc基超硬合金製切削工具 |
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---|---|---|---|---|
JP2013111711A (ja) * | 2011-11-29 | 2013-06-10 | Mitsubishi Materials Corp | 靭性と耐摩耗性に優れたダイヤモンド被覆超硬合金製切削工具 |
KR101733661B1 (ko) * | 2015-12-15 | 2017-05-08 | 한국야금 주식회사 | 절삭공구용 초경합금 |
JP2020132935A (ja) * | 2019-02-18 | 2020-08-31 | 三菱マテリアル株式会社 | 耐欠損性にすぐれたwc基超硬合金製切削工具および表面被覆wc基超硬合金製切削工具 |
EP3909707A1 (en) * | 2020-05-14 | 2021-11-17 | Sandvik Mining and Construction Tools AB | Method of treating a cemented carbide mining insert |
-
2008
- 2008-01-23 JP JP2008012143A patent/JP2009172697A/ja not_active Withdrawn
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WO2021228974A1 (en) * | 2020-05-14 | 2021-11-18 | Sandvik Mining And Construction Tools Ab | Method of treating a cemented carbide mining insert |
CN115485084A (zh) * | 2020-05-14 | 2022-12-16 | 山特维克矿山工程机械工具股份有限公司 | 处理硬质合金采矿刀片的方法 |
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