JP2009164542A - 一方向性電磁鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】製造性に優れたSi濃度勾配を持つ一方向性電磁鋼板の製造方法、および、圧延直角方向の高周波鉄損特性に優れ、圧延方向のB8の高い、Si濃度勾配を持つ一方向性電磁鋼板を提供する。
【解決手段】Al:0.015mass%以下、Si:3.0mass%以上を含み、板厚:0.05mm以上0.2mm以下で、B50が1.75T以上の板面主方位が(110)である珪素鋼板に対して、1100℃以上1250℃以下のSiCl4ガスを含む雰囲気で浸珪処理を行う。Al量が制御されているため、浸珪速度が変動したり、板厚方向に有効なSi濃度勾配を実現できないという問題が解消され、鋼板表面の平均Si濃度が5.5〜7mass%、板厚中心の平均Si濃度が3〜5.5mass%である一方向性電磁鋼板が得られる。この一方向性電磁鋼板は、圧延方向の高周波特性に優れ、圧延方向のB50が1.55T以上である。
【選択図】なし

Description

本発明は、磁気特性に優れ、板厚方向にSi濃度勾配を持つ一方向性電磁鋼板およびその製造方法に関するものである。
一般に珪素鋼板の鉄損は励磁周波数が高くなると急激に上昇することが知られている。ところがトランス、リアクトルなどの駆動周波数は、鉄心の小型化や高効率化を図るために年々高周波化してきている。そのため、駆動周波数の高周波化に伴い、珪素鋼板の鉄損による発熱が問題となるケースが増えてきている。
従来、高周波鉄損を低減するには、材料中のSi含有量を増して固有抵抗を高めることや、あるいは板厚を薄くすることによって渦電流損を低減する等の方法がとられてきた。
また小型化を図るためには材料の磁束密度を高めることも有効であり、二次再結晶し仕上げ焼鈍済みの方向性電磁鋼板を素材としてこれを圧延(以下、リロールと称す)し板厚0.1mm以下とした極薄の方向性電磁鋼板を用いる例もある。
ここで、一般にSi含有量を増していくと材料の飽和磁束密度は減少する。ゆえに、高周波用電磁鋼板として従来より用いられている6.5%珪素鋼板に対しても、鉄心小型化のため更なる低鉄損化と高磁束密度化が望まれている。
上記を受けて、特許文献1には、方向性電磁鋼板を浸珪処理して高珪素化した場合、従来の無方向性の高Si電磁鋼板に比べて磁束密度が向上し、高周波用鉄心の小型化が期待できることが記載されている。
特許文献2では、方向性電磁鋼板を浸珪処理してSi均一化拡散を制御することで板厚方向にSi濃度勾配を有する材料を作製し、高周波鉄損の極めて低い材料を得ることが開示されている。
特公平5-72457号公報 特開2000-45053号公報
しかしながら、上記特許文献1および2には、以下の問題がある。
方向性電磁鋼板を用いることにより、圧延直角方向の磁気特性は無方向性電磁鋼板を用いた場合よりも劣化する。高周波用途に用いられる場合には、圧延直角方向の磁気特性も重要になることが多く、この点で方向性電磁鋼板を浸珪して高周波用途に用いる場合の大きな問題となっている。
また、方向性電磁鋼板もしくはリロール法などで作製した板面主方位が(110)である珪素鋼板に対して浸珪処理を施し、板厚方向にSi濃度勾配を有する材料を製造する場合、浸珪速度が変動する問題がある。特に、板厚が薄いものでは浸珪速度低下時に生産性が低下する。また、高温の浸珪処理時に素材内でのSi拡散が素材表面での浸珪反応と同時に生じ、この素材内でのSi拡散が素材表面での浸珪反応に勝り、その結果、板厚方向に有効なSi濃度勾配を実現できないという問題が顕在化する。
本発明は、かかる事情に鑑みなされたもので、製造性に優れたSi濃度勾配を持つ一方向性電磁鋼板の製造方法、および、圧延直角方向の高周波鉄損特性に優れ、圧延方向のB8の高い、Si濃度勾配を持つ一方向性電磁鋼板を提供することを目的とする。
発明者らは、上記課題を解決するために種々の検討を行った。その結果、浸珪素材となる珪素鋼板の鋼中Al量を制御することで上記課題解決の目処をつけ、製造性に優れたSi濃度勾配を持つ一方向性電磁鋼板の製造方法、および、圧延直角方向の高周波鉄損特性に優れ、圧延方向のB8の高い、Si濃度勾配を持つ一方向性電磁鋼板の実現を可能としたものである。
以下、発明の契機となった検討内容について説明する。
従来は、一方向性電磁鋼板素材の方向性を向上させるために二次再結晶時のインヒビターとしてAl添加が有効であるため、素材としてAlを0.03%程度含む鋼種を用いることが通例であった。そして、上記のようなインヒビターは二次再結晶後に析出物として残留するが、商用周波数での励磁では磁壁移動の妨げになる等、鉄損(履歴損)特性に悪影響を及ぼすため、高温(1200℃程度)で長時間の純化焼鈍(通常、フォルステライト被膜の形成時に行われる)が行われていた。
一方、高周波用途に用いる場合、析出物による鉄損(履歴損)の劣化は支配的ではないことが知られている。このため、フォルステライト形成とともに長時間を要する鋼中成分の純化工程は省略・簡略化されることが多い。ゆえに、板厚方向にSi濃度勾配を設けて高周波用途に供する一方向性珪素鋼の浸珪プロセスでは、浸珪という付加的な処理が新たに加わるため、生産性やコストの点から、従来はインヒビター等に由来する少量のS、Alなどの不純物を残存したまま浸珪処理することが通常であった。
ところが、発明者らが鋭意検討したところ、前記のように少量の不純物を残して浸珪を行った場合、試験チャンスごとに浸珪速度や板厚方向のSi濃度分布(浸珪と同時に生じる鋼板内部でのSi拡散の結果)が変化することがわかった。そして、さらに、この原因を調査した結果、特に素材に含まれるAl量により前記浸珪速度や前記板厚方向のSi濃度分布の変動が大きく支配されることを見い出した。
素材に所定量のAlが含まれることにより上記の現象が生じる理由は必ずしも明らかではないが、発明者らは以下のような機構が生じているものと考えている。
珪素鋼板の(110)面上には少量のAlが偏析するか、もしくは雰囲気との反応で(110)面上に極薄層のAl化合物を形成する。これにより、SiCl4+2Fe→2FeCl2+Siなどの化学気相反応(浸珪反応)を阻害する。そして、これらは、一定量のAlを含有し、板面主方位が(110)である珪素鋼板(素材)に対して浸珪処理を行った場合に、浸珪速度が低下し、浸珪処理時に同時に生じる素材内部でのSi拡散が素材表面での浸珪反応に勝り、表面付近に高Si濃度の領域が形成される前に、Siの素材内部への拡散が進んでしまう事態を招くものと考えられる。
さらに、以上の検討結果をもとに、素材に含まれるAlを低減させて珪素濃度勾配を持つ一方向性電磁鋼板を製造したところ、驚くべきことに、圧延方向は勿論のこと、圧延直角方向の高周波特性についても、珪素濃度勾配を持つ無方向性電磁鋼板を製造した場合と比べて優れた特性を有することがわかった。
以上の検討結果より、以下に本発明を構成するに至った実験の要点をまとめる。
二次再結晶および純化焼鈍後に表面被膜を除去した板厚0.18mmの方向性電磁鋼板 (以下、二次再結晶板と称す)と、二次再結晶および純化焼鈍後に表面被膜を除去した板厚0.20〜0.35mmの素材を冷間圧延して板厚0.05〜0.20mmとした素材(以下、リロール板と称す)と、熱延焼鈍板に50〜70%の冷間圧延と900〜1000℃の中間焼鈍を繰り返して行い板厚0.08mmとした素材(以下、冷延板と称す)を、それぞれ窒素雰囲気中1200℃で1分間加熱した後、濃度15%のSiCl4を含む窒素ガスで所定の時間浸珪処理を行い、表面でのSi濃度が5〜8%、板厚中央でのSi濃度が3〜5%の試料を作製した。
その後、上記各試料をレーザー加工機で30mm×280mmに切り出し、Ar雰囲気中750℃×2時間の歪取り焼鈍を行った。以上より得られた試料について、単板磁気測定を行った。得られた結果を表1に示す。なお、磁気測定はJIS-C2556に記載の電磁鋼板単板磁気特性試験方法により行った。
Figure 2009164542
表1より、素材Al量が0.015mass%以下の場合に優れた浸珪速度が得られ、また、圧延直角方向の高周波鉄損特性に優れていることがわかる。
また、板厚0.05mm以上0.2mm以下、Al:0.015mass%以下で板面主方位が(110)である珪素鋼板に対して浸珪処理を行う試験を繰り返したところ、板厚中心のSi量に対して鋼板表層から板厚×0.3の深さ(以下、30%板厚と称す)位置でのSi量は常に0.3mass%以上多い状態が得られていることがわかった。
これらの結果より、本発明による圧延直角方向の優れた高周波鉄損特性は、このようなSi量分布と、表面付近にAl化合物の偏析が少ないこと、および均熱時間の短時間化に起因して鋼板の内部応力が大きい状態にある、これらの相乗的な効果によって与えられたものと考えられる。
以上のように、本発明は、上記実験結果および知見に基づきなされたもので、その要旨は以下のとおりである。
[1]mass%で、Al:0.015%以下、Si:3.0%以上を含み、残部Feおよび不可避不純物からなり、板厚:0.05mm以上0.2mm以下で、B50が1.75T以上の板面主方位が(110)である珪素鋼板に対して、1100℃以上1250℃以下のSiCl4ガスを含む雰囲気で浸珪処理を行い、鋼板表面の平均Si濃度を5.5〜7mass%、板厚中心の平均Si濃度を3〜5.5mass%とすることを特徴とする一方向性電磁鋼板の製造方法。
なお、鋼板表面の平均Si濃度とは、鋼板表層から板厚×0.1の深さまでの領域の平均濃度であり、板厚中心の平均Si濃度とは、板厚中心での板厚×0.1の領域の平均濃度である。
[2]前記[1]において、さらに、mass%で、成分組成として、Mn:0.01〜0.50%、N:0.002〜0.03%、Se:0.001〜0.03%、S:0.001〜0.03%の1種または2種以上を含有することを特徴とする一方向性電磁鋼板の製造方法。
[3]前記[1]または[2]において、さらに、mass%で、成分組成として、Sn:0.001〜0.3%、Sb:0.001〜0.3%、Ni:0.001〜0.3%、Cu:0.001〜0.3%、Mo:0.001〜0.3%の1種または2種以上を含有することを特徴とする一方向性電磁鋼板の製造方法。
[4]前記[1]〜[3]のいずれかに記載の製造方法により製造された一方向性電磁鋼板であり、圧延方向のB50が1.55T以上であることを特徴とする一方向性電磁鋼板。
[5]前記[4]において、板厚中心と30%板厚とのSi濃度差が0.3%以上であることを特徴とする一方向性電磁鋼板。
なお、30%板厚とは、鋼板表層から板厚×0.3の深さである。
[6]前記[4]または[5]において、鋼板表面から20%板厚までのSi濃度勾配が0.01mass%/μm以上であることを特徴とする一方向性電磁鋼板。
なお、20%板厚とは、鋼板表層から板厚×0.2の深さである。
なお、本明細書において、鋼の成分を示す%、ppmは、すべてmass%、mass ppmである。
本発明によれば、圧延直角方向の高周波鉄損特性に優れ、圧延方向のB8の高い、Si濃度勾配を持つ一方向性電磁鋼板を生産性が低下することなく製造できる。
以下に本発明を詳細に説明する。
まず、浸珪処理を行う対象である珪素鋼板素材について、説明する。
本発明においては、Al:0.015mass%以下、Si:3.0mass%以上を含み、板厚:0.05mm以上0.2mm以下で、B50が1.75T以上の板面主方位が(110)である珪素鋼板を素材とする。
成分組成
Al:0.015mass%以下
Al量を0.015%以下に制限することは、本発明において重要な要件であり、Al量により浸珪速度や板厚方向のSi濃度分布の変動が大きく支配されるため、非常に重要である。Al量が0.015%を超える場合には、浸珪速度が急激に低下して充分なSi濃度勾配が得られなくなるとともに、その結果としてC方向の鉄損値の劣化が生じる。よって、Al量は0.015%以下とする。
Si:3.0mass%以上
素材のSi量は、低すぎると浸珪に必要な時間が長時間化し、製造性の向上のために浸珪速度を増大させた効果が生かされない。そのため、3.0mass%以上とする。一方、板厚方向にSi濃度勾配を充分に持たせるためには、4.5mass%以下が望ましい。
以上の必須添加元素で本発明鋼は目的とする特性が得られるが、上記の必須添加元素に加えて、下記の理由によりMn、N、Se、S、他公知の添加成分(Sn、Sb、Ni、Cu、Mo)の1種または2種以上を下記の範囲で含有することが好ましい。
Mn:0.01〜0.50%
熱間加工性や皮膜性状を改善することや、硫化析出物を制御するために0.01%以上を含有することが好ましい。一方が、添加量が多いと飽和磁束密度が低下する傾向にあるので0.50%以下とすることが好ましい。
N:0.002〜0.03%
窒化物を形成することにより二次再結晶が促進されるので、0.002%以上含有することが好ましい。一方、添加量が多いとブリスター状の表面疵が生じるおそれがあり、0.03%以下とすることが好ましい。
Se:0.001〜0.03%
セレン化物を形成することにより二次再結晶が促進されるので、0.001%以上含有することが好ましい。一方、添加量が多いとヘゲと称される表面疵が生じるおそれがあり、0.03%以下とすることが好ましい。
S:0.001〜0.03%
硫化物を形成することにより二次再結晶が促進されるので、0.001%以上含有することが好ましい。一方、添加量が多いとヘゲと称される表面疵が生じるおそれがあり、0.03%以下とすることが好ましい。
Sn、Sb、Ni、Cu、Mo:0.001〜0.3%
粒界に偏析等による効果で、粒成長性や集合組織を制御するためにそれぞれ0.001%以上含有させることが好ましい。一方、添加量が多いと熱間脆性・冷間脆性を生じるおそれがあり、それぞれ0.3%以下とすることが好ましい。
なお、上記以外の残部はFe及び不可避的不純物からなる。不可避的不純物として、例えば、Oは非金属介在物を形成し品質に悪影響を及ぼすため、0.003%以下に低減するのが望ましい。また、本発明では、本発明の作用効果を害さない微量元素として、W、V、Zrを0.1%以下の範囲で不純物として含有してもよい。
板厚:0.05mm以上0.2mm以下
本発明の効果が有効に奏される範囲として、板厚は0.05mm以上0.2mm以下とする。本発明の効果は特に板厚が薄い場合に顕著である。板厚0.2mmを超える場合にはたとえ浸珪速度が低下しても、Si拡散に必要な熱処理時間が長時間であるために、全体として製造時間に与える影響は小さい。しかし、板厚0.2mm以下の場合には、浸珪速度が低下すると、製造時間が長くなると同時に、この間のSiの拡散により、板厚中心付近での充分なSi濃度勾配が確保できなくなる。この理由から本発明の効果が有効に奏される板厚範囲として0.2mm以下に限定する。
一方、0.05mm未満の場合は冷延による製造が困難となる。また、板厚方向にSi濃度傾斜をつけることが困難になる。よって、0.05mm以上とする。
B50が1.75T以上の板面主方位が(110)である
素材としては、以上の成分組成および板厚であれば、公知の方法で作製された方向性電磁鋼板(二次再結晶板)が適用可能である。その他、複数回の冷延焼鈍繰り返し法(冷延法)や二次再結晶板を再圧延して焼鈍する方法(リロール法)で作製された方向性電磁鋼板(冷延板やリロール板)も利用できる。
しかしながら、本発明では、表面を(110)面とした場合においてAl量を低減する効果が得られるため、素材としては、板面主方位を(110)面とする必要がある。
そして、そのような集積度の顕れであり、また浸珪処理後の圧延方向B50を確保するためには、素材の圧延方向B50を1.75T以上とすることが必要である。浸珪処理後の圧延方向のB50は浸珪量によって若干の変動はあるものの、圧延方向のB50で1.55T以上の場合に安定してC方向の鉄損低減効果が得られるので、浸珪処理後の圧延方向のB50は1.55T以上が好ましい。
次に、本発明の一方向性電磁鋼板の製造方法について説明する。
本発明の一方向性電磁鋼板は、上記の成分組成、板厚からなり、B50が1.75T以上の板面主方位が(110)である珪素鋼板を素材とし、1100℃以上1250℃以下のSiCl4ガスを含む雰囲気で浸珪処理を行うことにより得られる。中でも、二次再結晶・被膜除去板を冷間圧延した素材(リロール板)について浸珪処理・拡散処理する方法や、熱延焼鈍板から60〜70%の冷間圧延と900〜1000℃の中間焼鈍を繰り返した素材(冷延板)について浸珪処理・拡散処理する方法が好ましい。
浸珪処理は常法に従って行う。その際、必ずしもSiCl4+2Fe→2FeCl2+Siという反応を利用した方法に従う必要はないが、処理温度としては工業的な浸珪処理のためには1100℃以上とすることが必要である。一方で、過拡散により板厚方向のSi濃度傾斜が失われることを防ぐために概ね1250℃以下とすることが必要である。
SiCl4ガスの濃度は特に限定しないが5%〜50%程度が望ましい。低すぎると反応性に乏しく本発明の効果が得られにくい。高すぎると余剰のガスを使用することになり経済性が劣る。
以上により、鋼板表面の平均Si濃度が5.5〜7mass%、板厚中心の平均Si濃度が3〜5.5mass%である一方向性電磁鋼板が得られることになる。鋼板表面の平均Si濃度が5.5〜7mass%、板厚中心の平均Si濃度が3〜5.5mass%とすることにより、優れた高周波鉄損特性が得られる。鋼板表面の平均Si濃度が7%を超えると磁歪および騒音が上昇する傾向を示し、加工性にも好ましくない。一方、鋼板表面の平均Si濃度が5.5%未満となると、板厚方向にSiが6.5%で均一な鋼板の高周波鉄損に及ばない。
板厚中心の平均Si濃度が5.5%を超えた場合、加工性劣化が懸念される。逆に、板厚中心の平均Si濃度が3%未満の場合は板厚方向にSiが6.5%で均一な鋼板の高周波鉄損に及ばない。なお、本発明において、鋼板表面の平均Si濃度とは、鋼板表層から板厚×0.1の深さまでの領域の平均濃度である。また、板厚中心の平均Si濃度とは、板厚中心での板厚×0.1の領域の平均濃度である。
前述した通り、上記のようなSi濃度勾配を持つことにより、浸珪処理後の圧延方向のB50は1.55T以上となる。また、圧延方向は勿論のこと、圧延直角方向の高周波特性についても改善される。
さらに、板厚中心と30%板厚とのSi濃度差が0.3%以上であることが優れた圧延直角方向の高周波鉄損特性を得るため、好ましい。
なお、30%板厚とは、鋼板表層から板厚×0.3の深さである。
さらに、鋼板表面から20%板厚までのSi濃度勾配は0.01mass%/μm以上であることが好ましい。表層に大きな濃度勾配を有することで、鋼板の内部応力がより大きい状態となり、圧延直角方向の高周波鉄損特性がより一層改善される。
なお、20%板厚とは、鋼板表層から板厚×0.2の深さである。
また、Si濃度勾配は、試料断面について、表面から板厚を約100分割して各点でのSi濃度をEPMA法により測定して求め、各Si濃度をなめらかな曲線で結んだのち、曲線上の表面と板厚×0.2の深さにあたる位置を結び、その直線の傾きから求める。
(本発明例)
表2に示す成分を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなる鋼スラブを1400℃に加熱し、熱間圧延し、2.5mmの熱延コイルとした。次いで、1000℃で1分間の熱延板焼鈍を施し、その後、板厚1.5mmまで一回目の冷間圧延を施し、1100℃で1分間の中間焼鈍後、板厚0.18mmまで二回目の冷間圧延を施した。
その後、850℃の湿H2中で脱炭・一次再結晶焼鈍を行った後、鋼板表面に、MgOを主成分とし塩化マグネシウム1%と塩化アンチモン1%を含有させた焼鈍分離剤をスラリー塗布し、最終仕上げ焼鈍を施した。最終仕上げ焼鈍は、850℃で15時間保持した後、1200℃に昇温して、乾H2中で純化処理を行う方法を採った。以上より、表面のフォルステライト被膜が剥落した膜なし珪素鋼板を作製した。得られた珪素鋼板は、Goss方位からなる2次再結晶組織(板面主方位が(110)方位)を呈し、そのAl量、およびSi量は表2に示すとおりであった。
次いで、上記珪素鋼板に対して、1200℃窒素中で30秒加熱後、15%のSiCl4を含む窒素で150sの浸珪処理と80sの拡散処理を行った。
以上により得られた一方向性電磁鋼板に対して、板厚中心の平均Si濃度、鋼板表面の平均Si濃度、板厚方向の濃度プロファイル(勾配)および磁気特性を測定した。なお、磁気特性はJIS-C2556に記載の単板測定法で行った。また、板厚方向の濃度プロファイル(勾配)は、表面から板厚を約100分割して各点でのSi濃度をEPMA法により測定して求め、各Si濃度をなめらかな曲線で結んだのち、曲線上の表面と板厚×0.2の深さにあたる位置を結び、その直線の傾きから求めた。
得られた結果を、成分と併せて、表2に示す。
(比較例)
表2に示す成分組成からなる鋼スラブを実施例と同様の方法、条件にて、熱延板焼鈍、冷間圧延、中間焼鈍、冷間圧延を施した。その後、850℃の湿H2中で脱炭・一次再結晶焼鈍を行った後、鋼板表面に、アルミナを主成分とする焼鈍分離剤をスラリー塗布し、最終仕上げ焼鈍を施した。最終仕上げ焼鈍は、850℃で15時間保持した後、1050℃に昇温して、乾H2中で2次再結晶処理を行った。以上より、表面のフォルステライト被膜が剥落した膜なし珪素鋼板を作製した。得られた珪素鋼板は、Goss方位からなる2次再結晶組織(板面主方位が(110)方位)を呈し、Al量、およびSi量は表2に示すとおりであった。
次いで、上記珪素鋼板に対して、実施例と同様の方法にて、浸珪処理と拡散処理を行った。
以上により得られた一方向性電磁鋼板に対して、板厚中心の平均Si濃度、鋼板表面の平均Si濃度、板厚方向のSi濃度プロファイル(勾配)および磁気特性を測定した。なお、磁気特性の測定および、板厚方向のSi濃度プロファイル(勾配)は実施例と同様の方法である。
得られた結果を、実施例と併せて、表2に示す。また、板厚方向のSi濃度プロファイル(勾配)を図1に示す。
なお、発明例では板厚中心のSi量に対して鋼板表層から板厚×0.3の深さ(以下、30%板厚と称す)位置でのSi量は常に0.3mass%以上多い状態が得られていた。
Figure 2009164542
表2より、本発明例では、圧延方向のB50は1.70T〜1.74T程度、圧延直角方向の鉄損値W10/1kは29〜35W/kg程度となり、良好であった。
一方、比較例では、圧延方向のB50は1.72Tであるものの、圧延直角方向の鉄損値はW10/1k=48W/kgとなり十分な特性は得られなかった。
Alの濃度が高いために圧延直角方向の鉄損値が十分に低減しなかった理由は必ずしもあきらかではないが、以下の理由で差異が生じたものと考えている。
すなわち珪素鋼板の(110)面上には少量のAlが偏析するか、もしくは雰囲気との反応で(110)面上に極薄層のAl化合物が形成し易い。これにより、SiCl4+2Fe→2FeCl2+Siなどの化学気相反応(浸珪反応)を阻害する傾向が生じる。そして、これらは、一定量のAlを含有し、板面主方位が(110)である珪素鋼板(素材)に対して浸珪処理を行った場合、浸珪速度が低下し、浸珪処理時に同時に生じる素材内部でのSi拡散が素材表面での浸珪反応に勝り、表面付近に高Si濃度の領域が形成される前に、Siの素材内部への拡散が進んでしまう事態を招くものと考えられる。したがって、表面のSi濃度と板厚中心のSi濃度が同程度であったとしても、図1に示すように、比較例では表層の濃度勾配が小となり、発明例では表層の濃度勾配がより大きくなる傾向となる。
したがって、Alを低減させて珪素濃度勾配を持つ一方向性電磁鋼板を製造することにより、前記したような板厚方向のSi濃度分布自体と、表面付近にAl化合物の偏析が少ないこと、および均熱時間の短時間化で表層に大きな濃度勾配ができることに起因した鋼板の内部応力が大きい状態にあること、の相乗的な効果によって、圧延直角方向の高周波鉄損特性が大きく改善したものと思慮される。
本発明の高珪素鋼板は、高周波特性に優れる上、製造性も良好であるため、変圧器、モータ、リアクトル等を中心に鉄心材料として多様な用途に用いることができる。
板厚方向のSi濃度プロファイル(勾配)を示す図である。(実施例1)

Claims (6)

  1. mass%で、Al:0.015%以下、Si:3.0%以上を含み、残部Feおよび不可避不純物からなり、板厚:0.05mm以上0.2mm以下で、B50が1.75T以上の板面主方位が(110)である珪素鋼板に対して、1100℃以上1250℃以下のSiCl4ガスを含む雰囲気で浸珪処理を行い、鋼板表面の平均Si濃度を5.5〜7mass%、板厚中心の平均Si濃度を3〜5.5mass%とすることを特徴とする一方向性電磁鋼板の製造方法。
    なお、鋼板表面の平均Si濃度とは、鋼板表層から板厚×0.1の深さまでの領域の平均濃度であり、板厚中心の平均Si濃度とは、板厚中心での板厚×0.1の領域の平均濃度である。
  2. さらに、mass%で、成分組成として、Mn:0.01〜0.50%、N:0.002〜0.03%、Se:0.001〜0.03%、S:0.001〜0.03%の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の一方向性電磁鋼板の製造方法。
  3. さらに、mass%で、成分組成として、Sn:0.001〜0.3%、Sb:0.001〜0.3%、Ni:0.001〜0.3%、Cu:0.001〜0.3%、Mo:0.001〜0.3%の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の一方向性電磁鋼板の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法により製造された一方向性電磁鋼板であり、圧延方向のB50が1.55T以上であることを特徴とする一方向性電磁鋼板。
  5. 板厚中心と30%板厚とのSi濃度差が0.3%以上であることを特徴とする請求項4に記載の一方向性電磁鋼板。
    なお、30%板厚とは、鋼板表層から板厚×0.3の深さである。
  6. 鋼板表面から20%板厚までのSi濃度勾配が0.01mass%/μm以上であることを特徴とする請求項4または5に記載の一方向性電磁鋼板。
    なお、20%板厚とは、鋼板表層から板厚×0.2の深さである。
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