JP2009158523A - 配線基板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 機械的強度の高いガラスセラミックス焼結体からなる絶縁基体を備えた配線基板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明は、アルカリ金属原子を含むガラスを有するガラスセラミック焼結体からなる絶縁基体1と、絶縁基体1の表面および内部に形成された金、銀および銅のうちの少なくともいずれか1種を主成分とする配線導体2とを備えた配線基板であって、絶縁基体1の表面および表面近傍領域には、前記アルカリ金属原子と置換された、前記アルカリ金属原子のイオン半径の0.8倍以上1.2倍未満のイオン半径を有するアルカリ土類金属原子が存在していることを特徴とする配線基板である。
【選択図】 図1
【解決手段】 本発明は、アルカリ金属原子を含むガラスを有するガラスセラミック焼結体からなる絶縁基体1と、絶縁基体1の表面および内部に形成された金、銀および銅のうちの少なくともいずれか1種を主成分とする配線導体2とを備えた配線基板であって、絶縁基体1の表面および表面近傍領域には、前記アルカリ金属原子と置換された、前記アルカリ金属原子のイオン半径の0.8倍以上1.2倍未満のイオン半径を有するアルカリ土類金属原子が存在していることを特徴とする配線基板である。
【選択図】 図1
Description
本発明は、1000℃以下の低温で絶縁基体と配線導体とが同時焼成されてなる機械的強度の高い配線基板およびその製造方法に関するものである。
近年における情報通信技術の急速な発展は、使用する周波数の高周波化をもたらし、情報通信用途に使用される配線基板では、高周波信号の伝送損失を低減するために、配線層の低抵抗化が求められている。
そこで、従来より用いられてきたアルミナ質セラミックスからなる絶縁基体を有する配線基板に代わり、ガラス成分とフィラー成分とを混合して形成されるガラスセラミックスからなる絶縁基体を有する配線基板が開発されている。絶縁基体をガラスセラミックスにより形成したものでは、金、銀、銅等の低抵抗金属を主成分とする配線導体との同時焼成が可能で、具体的には1000℃以下の焼成温度での焼成によって緻密化された配線基板である。
このような配線基板として、例えば、SiO2、Al2O3、B2O3、ZnO等を含有するガラス粉末と、アルミナ粉末およびコーディエライト粉末を含むフィラー粉末とを混練し、所定形状に成形したあと焼成することにより得られるガラスセラミック焼結体を絶縁基体とした配線基板が提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。
特開平7−58454号公報
しかしながら、特許文献1に記載されたようなガラスセラミック焼結体を絶縁基体とした配線基板は、機械的強度が低くなってしまうという問題があった。例えば、携帯電話に代表される携帯型の情報通信機器へ搭載される配線基板においては、携帯時の不意な落下や衝撃にも耐え得る充分な機械的強度を有する必要がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、機械的強度の高いガラスセラミックス焼結体からなる絶縁基体を備えた配線基板およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、アルカリ金属原子を含むガラスを有するガラスセラミック焼結体からなる絶縁基体と、該絶縁基体の表面および内部に形成された金、銀および銅のうちの少なくともいずれか1種を主成分とする配線導体とを備えた配線基板であって、前記絶縁基体の表面および表面近傍領域には、前記アルカリ金属原子と置換された、前記アルカリ金属原子のイオン半径の0.8倍以上1.2倍未満のイオン半径を有するアルカリ土類金属原子が存在していることを特徴とする配線基板である。
ここで、前記表面近傍領域の厚みが10μm以上20μm以下であるのが好ましい。
また本発明は、アルカリ金属原子を含むガラス粉末とセラミック粉末とを含むガラスセラミックグリーンシートを作製する工程と、前記ガラスセラミックグリーンシートの表面に配線用導体ペーストを塗布する工程と、前記配線用導体ペーストの塗布されたガラスセラミックグリーンシートを積層してガラスセラミックグリーンシート積層体を作製する工程と、前記ガラスセラミックグリーンシート積層体を焼結させたあと、前記アルカリ金属原子のイオン半径の0.8倍以上1.2倍未満のイオン半径を有するアルカリ土類金属原子を含む80℃以上沸点以下の酸性溶液に浸漬する工程とを有することを特徴とする配線基板の製造方法である。
本発明によれば、配線基板を80℃以上沸点以下の酸性溶液中に浸漬することで、配線基板の温度が高い状態で、絶縁基体の表面および表面近傍領域のガラスに含まれるアルカリ金属原子がガラスの網目構造から飛び出してイオン化されて、このイオン化されたアルカリ金属イオンがこのイオン半径の0.8倍以上1.2倍未満のイオン半径のアルカリ土類金属イオンと高温下でイオン交換され、濃度勾配の関係から、前記アルカリ金属原子の飛び出した位置にアルカリ土類金属原子が入り込む。すなわち、アルカリ金属原子がアルカリ土類金属原子と置換された構造となる。
ここで、アルカリ金属原子がガラス中に存在して周囲と結合していた状態の結合領域に比べて、アルカリ土類金属原子がガラス中に存在して周囲と結合している状態の結合領域のほうが、熱膨張係数が小さくなる。したがって、アルカリ金属原子がこのアルカリ金属原子のイオン半径の0.8倍以上1.2倍未満のイオン半径を有するアルカリ土類金属原子に高温の酸性溶液中で置換された後に、高温の酸性溶液中から配線基板が取り出されて冷却されると、アルカリ土類金属原子が周囲と結合している状態の結合領域は、アルカリ金属原子が周囲と結合している状態の結合領域に比べて縮まないため、その他の領域の網目構造を押し縮めることとなり、絶縁基体の表面および表面近傍領域に圧縮応力が発生する。これにより、絶縁基体の表面および表面近傍に存在するガラスに存在するクラックが押し縮められるので、破壊に対する抵抗性を高め、落下や衝撃にも耐え得る充分な機械的強度を有する配線基板が得られる。
また、表面近傍領域、すなわちアルカリ土類金属原子が入り込む領域の厚みが10μm以上20μm以下であることで、置換後も高い絶縁信頼性を維持しつつ、均一な表面圧縮層による安定した高い強度が得られる。
また、本発明の製造方法によれば、置換しようとするアルカリ金属原子のイオン半径の0.8倍以上1.2倍未満のイオン半径を有するアルカリ土類金属原子を含む80℃以上沸点以下の酸性溶液に浸漬することで、配線基板の洗浄とともに機械的強度を高めることができる。例えば、配線基板のめっき処理の前処理工程である洗浄工程において上記の酸性溶液を用いることで、従来と比べて製造工程が増えることなく、配線基板の機械的強度を上げることができる。
以下、本発明の配線基板の一実施形態について図面に基づいて説明する。
図1は本発明の配線基板の一実施形態の概略断面図であって、図1に示す配線基板は、ガラスセラミック焼結体からなる絶縁基体1と、この絶縁基体1の表面および内部に形成された配線導体2とを具備している。
絶縁基体1は複数の絶縁層1a、1b、1c、1d、1eから構成されていて、この絶縁基体1を形成するガラスセラミック焼結体は、アルカリ金属原子を含むガラスを有している。このガラスは、ガラスの網目構造を形成するSiの他に、Li、Naなどのアルカリ金属原子を含むものである。また、Mg、Caなどのアルカリ土類金属元素や、Zr、Ti、Snなどの4価金属元素、Al、B、Y、Laなどの3価金属元素、Zn、Pbなどの2価金属元素、遷移金属元素のうち少なくとも1種が含まれているのが好ましい。このようなガラスとして、SiO2−B2O3−Na2O系ガラス、SiO2−B2O3−Al2O3−Na2O系ガラスなどが挙げられる。
また、絶縁基体1を形成するガラスセラミック焼結体は、アルミナ、ジルコニア、クオーツ、クリストバライト、コーディエライト、ムライト、スピネル、ガーナイト、エンスタタイト、フォルステライト、アノーサイト、スラウソナイト、セルジアン、ディオプサイド、モンティセライト、アケルマナイト、ウイレマイト、窒化珪素、窒化アルミニウム、炭化珪素、炭化ホウ素やその固溶体、置換誘導体のうちの少なくともいずれか1種の結晶を有している。
これらの結晶のうち、抗折強度を向上させるという点では、アルミナ、ジルコニア、フォルステライト、エンスタタイト、スピネル、アノーサイト、スラウソナイト、セルジアンなどが好ましい。また、誘電率を低下させ高周波信号の伝送損失を低減させるという点では、フォルステライト、エンスタタイト、クオーツ、クリストバライト、コーディエライト、ムライトなどが好ましい。また、熱伝導率を向上させるという点では、窒化珪素、窒化アルミニウム、炭化珪素などが好ましい。
これらのガラスと結晶を適宜組み合わせることにより、ガラスセラミック焼結体の機械的特性や熱特性、誘電特性等の磁器特性を用途に応じて制御することが可能となる。
一方、絶縁基体1の表面および内部には、配線導体2(表面配線層21、内部配線層22、ビアホール導体23)が形成されている。この配線導体2は、金、銀および銅のうちの少なくとも1種を主成分とする低抵抗金属からなる。なお、絶縁基体1の表面に形成された配線導体2(表面配線層21)には、半田濡れ性や耐酸化性等を確保するために、その表面にNi、Au、Cuなどのめっき層が被着形成されていることが望ましい。
そして、絶縁基体1の表面および表面近傍領域には、置換前に表面および表面近傍領域に存在していたアルカリ金属原子と置換(イオン交換)された、この置換前のアルカリ金属原子のイオン半径の0.8倍以上1.2倍未満のイオン半径を有するアルカリ土類金属原子が存在していることが重要である。
アルカリ金属原子は、イオンの価数が小さいものであるため、ガラスの網目構造から飛び出しやすい。したがって、後述の80℃以上の酸性溶液(硝酸塩水溶液)に配線基板を浸漬すると、絶縁基体の表面および表面近傍領域に存在するアルカリ金属原子は、浸食を受けて容易にガラスの網目構造から飛び出してイオンとなる。このとき、飛び出したアルカリ金属イオンのイオン半径の0.8倍以上1.2倍未満のイオン半径を有するアルカリ土類金属原子が酸性溶液(硝酸塩水溶液)中に含まれていることで、濃度勾配のある状態となり、飛び出したアルカリ金属イオンと硝酸塩水溶液中に含まれているアルカリ土類金属イオンとは、熱エネルギーによる振動で相互拡散を繰り返しながら濃度を均一にしようとする。その結果、アルカリ金属原子が飛び出した位置にアルカリ土類金属原子が入り込むという、いわゆる置換(イオン交換)が行われる。
ここで、アルカリ金属原子がガラス中に存在して周囲と結合していた状態の結合領域に比べて、アルカリ土類金属原子がガラス中に存在して周囲と結合している状態の結合領域のほうが、熱膨張係数が小さくなる。したがって、アルカリ金属原子がこのアルカリ金属原子のイオン半径の0.8倍以上1.2倍未満のイオン半径を有するアルカリ土類金属原子に高温の酸性溶液中で置換された後に、高温の酸性溶液中から配線基板が取り出されて冷却されると、アルカリ土類金属原子が周囲と結合している状態の結合領域は、アルカリ金属原子が周囲と結合している状態の結合領域に比べて縮まないため、その他の領域の網目構造を押し縮めることとなり、絶縁基体の表面および表面近傍領域に圧縮応力が発生する。これにより、絶縁基体の表面および表面近傍に存在するガラスに存在するクラックが押し縮められるので、破壊に対する抵抗性を高め、落下や衝撃にも耐え得る充分な機械的強度を有する配線基板が得られる。
なお、置換されたアルカリ金属原子のイオン半径が、置換前のアルカリ金属原子のイオン半径の0.8倍未満1.2倍未満であることが、熱膨張係数が低いことによる絶縁基体1の表面および表面近傍領域に圧縮応力を発生させる効果が得られるとともに容易に置換させることができる点で重要である。イオン半径の大きな原子と置換することにより圧縮応力を発生させることもできるが、本発明は同等(0.8倍未満1.2倍未満)のイオン半径であったとしても、80℃以上沸点以下の酸性溶液に浸漬した状態でアルカリ金属原子に対しアルカリ土類金属原子を置換させることによって、熱膨張係数差を利用して圧縮応力を発生させたことが重要なのである。
ガラス中にLi原子(イオン半径0.76Å)が含まれている場合は、Mg原子(イオン半径0.71Å)が置換原子となる。また、ガラス中にNa原子(イオン半径1.13Å)が含まれている場合は、Ca原子(イオン半径1.16Å)およびSr(イオン半径1.29Å)が置換原子となる。また、ガラス中にK原子(イオン半径1.50Å)が含まれている場合は、Ba原子(イオン半径1.47Å)が置換原子となる。
ここで、ガラス中にアルカリ金属原子が複数種含まれている場合は、多く分布しているアルカリ金属原子に対して置換(イオン交換)されているのが望ましく、さらには全てのアルカリ金属原子に対して置換(イオン交換)されているのが望ましい。
そして、表面近傍領域、すなわち置換原子が入り込む領域の厚みが10μm以上20μm以下であるのが好ましい。さらに、表面および表面近傍領域において含まれるアルカリ金属原子の10%以上が、置換されるのが好ましい。これにより、原子置換後も高い絶縁信頼性を維持しつつ、均一な表面圧縮層による安定した高い強度が得られる。
なお、イオン半径は原子の配位数によっても変化するものであるが、ガラス中においては結晶構造(原子の配置)が定まっているものではないため、本発明でいうイオン半径とはshannonによる各配位数におけるイオン半径を平均化した数値を原子のイオン半径とする。
また、本発明においては、例えばアルカリ金属原子の飛び出した位置に価数の異なるアルカリ土類金属原子(第2のアルカリ土類金属原子)が入り込むかたちで置換されるが、ガラスにおける結合は様々な結合状態をとりうるので、同族原子に限らず置換することができる。
原子が置換されているかどうかは、波長分散型X線マイクロアナライザー(EPMA)を用いて原子分布状態を測定して判断できる。すなわち、絶縁基体1の内部領域に対して表面近傍領域の分布が少なく、表面近傍領域においても表面に近づくにしたがってさらに分布が少なくなっていくようなアルカリ金属原子は飛び出した原子と判断する。一方、絶縁基体1の内部領域に対して表面近傍領域の分布が多く、表面近傍領域においても表面から遠ざかるにしたがってさらに分布が少なくなっていくようなアルカリ土類金属原子は置換原子(置換により入り込む原子)と判断する。
次に、本発明の配線基板の製造方法について説明する。
まず、原料粉末としてのガラス粉末およびセラミック粉末を準備する。
ガラス粉末としては、SiO2−B2O3−Na2O系ガラス、SiO2−B2O3−Al2O3−Na2O系ガラスなどのガラス粉末が好適に用いられる。このとき、焼成により結晶化しない非晶質ガラス、逆に焼成により結晶化する結晶化ガラスのいずれを用いてもよいが、機械的強度を高くするためには結晶化ガラスを用いることが望ましい。
一方、セラミック粉末としては、アルミナ、ジルコニア、フォルステライト、エンスタタイト、スピネル、アノーサイト、スラウソナイト、セルジアンなどを有するものが好適に用いられるが、これに加えて石英ガラス等の非晶質粉末を用いることも可能である。
これらの原料粉末の粒径としては、焼成後のガラスセラミック焼結体が低いボイド率となるために、平均粒径(D50)が5.0μm以下、特に3.5μm以下、最適には2.0μm以下であることが望ましい。
こうして適宜選択したガラス粉末とセラミック粉末とを一定の量比で混合した混合粉末を用いて、成形用スラリーを調製する。
調製された成形用スラリーを用いて、例えば厚みが25〜500μmのガラスセラミックグリーンシートを成形する。
このガラスセラミックグリーンシートの所定位置にスルーホールを形成し、このスルーホール内に、銅や銀、金等の低抵抗金属を主成分とする導体ペーストを充填する。
また、ガラスセラミックグリーンシートの表面には、スクリーン印刷法、グラビア印刷法などの公知の印刷手法を用いて上記の導体ペーストを印刷塗布して、焼成後の配線層の厚みが2〜30μmとなるように配線パターンを形成する。
そして、上記のようにして作成された複数のガラスセラミックグリーンシートを位置合わせして積層圧着し、次いで、大気中あるいは水蒸気を含有した窒素雰囲気中にて450〜750℃の温度にて脱バインダ処理した後、1000℃以下の大気中または窒素雰囲気で焼成することにより、配線導体2(表面配線層21、内部配線層22およびビアホール導体23)を備えた配線基板が作製される。
なお、脱バインダ雰囲気や焼成雰囲気は、用いる低抵抗金属の種類に応じて適宜決定され、例えば、銅を配線導体2として用いた場合には大気中での焼成により酸化するため、窒素雰囲気中にて脱バインダ処理および焼成が行なわれる。
さらに、このようにして作製された配線基板を、80℃以上沸点以下の置換しようとするアルカリ金属原子のイオン半径の0.8倍以上1.2倍未満のイオン半径を有するアルカリ土類金属原子を含む(交換しようとするアルカリ土類金属イオンを含む)酸性溶液中に1〜5分間浸漬させることで、絶縁基体1の表面および表面近傍領域において、アルカリ金属原子のイオン半径の0.8倍以上1.2倍未満のイオン半径を有するアルカリ土類金属原子との置換が行われる。なお、80℃以上としているのは、置換反応のしやすい温度域であるとともに、置換前と置換後とのガラスの熱膨張係数の違いによる圧縮応力の発現する常温からの温度差として適当な値であるからである。また、酸性溶液としては、硝酸塩水溶液、硫酸塩水溶液などが挙げられるが、多数の元素が塩となりうる硝酸塩水溶液が好ましい。硝酸塩は水に溶け、また硝酸塩を含む水溶液中で元素(硝酸塩中の塩)は容易にイオン化される。
ここで、置換(イオン交換)に用いる酸性溶液は、配線基板の洗浄の際に用いられるものであってよく、例えば、絶縁基体1の表面の配線導体2(表面配線層21)をめっきする際の前処理工程で用いられるものであるのが好ましい。めっきの前処理工程と同時にイオン交換されるのが好ましい。めっきの際に必ず行われる前処理(洗浄)に用いられる酸性溶液を硝酸ではなく硝酸塩とし、この塩を置換させたい元素としておけば、別途イオン交換のみの工程を設けることなくめっきの前処理工程と同時にイオン交換され、本発明の配線基板を得ることができる。
なお、表面の配線導体2(表面配線層21)には、上記硝酸塩水溶液への浸漬(前処理工程)の後、Ni−Auめっきが形成される。
このようにして、絶縁基体1の表面および表面近傍領域には、アルカリ金属原子のイオン半径の0.8倍以上1.2倍未満のイオン半径を有するアルカリ土類金属原子が存在していることで、高い機械的強度の配線基板が得られる。
まず、表1に示す組成のガラス粉末を準備し、粒径(D50)2μmのガラス粉末60質量%およびセラミック粉末(クォーツ粉末)40質量%を秤量、混合し、この混合物にアクリル系樹脂からなるバインダ、可塑剤、トルエンを添加し、スラリーを調製した後、このスラリーを用いてドクターブレード法により焼成後の厚みが15〜100μmとなるようなガラスセラミックグリーンシート作製した。そして、このガラスセラミックグリーンシートを複数枚数熱圧着により積層して、焼成後の厚みが3mmとなるようにグリーンシート積層体をそれぞれ作製した。
これらのグリーンシート積層体を大気中、400℃で脱バインダ処理した後、900℃で1時間焼成して絶縁基体を作製した。
さらに、置換原子(Mg、Ca)を含む100℃に加温した10%の濃度に調整した硝酸塩水溶液中に2分間浸漬することで、ガラス中に含まれるLi(イオン半径0.76Å)、Na(イオン半径1.13Å)とイオン交換を行った。
こうして、表面および表面近傍領域のガラス中のアルカリ金属原子の一部が、このアルカリ金属原子のイオン半径の0.8倍以上1.2倍未満のイオン半径を有するアルカリ土類金属原子と置換された絶縁基体を作製した。
得られた厚さ3mmの絶縁基体から、平面方向に長さ40mm、幅4mmとなるように切り出して、長さ40mm、幅4mm、厚さ3mmの試験片を用意し、JIS−R1601に基づき、3点曲げ抗折強度を測定した。
また、表面近傍領域の厚みは、得られた焼結体の断面を鏡面研磨し、波長分散型X線マイクロアナライザー(EPMA)を用いて元素分布状態から表面近傍領域の厚みを算出した。なお、表面近傍領域とは、置換により入り込んだ元素が存在する領域のことをいう。
配線基板を構成する絶縁基体についての抗折強度を測定した表2の結果から明らかなように、本発明の配線基板を構成する絶縁基体であるNo.2〜4、6〜8では、絶縁基体の表面および表面近傍領域のアルカリ金属原子が、このアルカリ金属原子のイオン半径の0.8倍以上1.2倍未満のイオン半径を有するアルカリ土類金属原子と置換されていることで、抗折強度が向上していることがわかる。
1・・絶縁基体
2・・配線導体
21・・表面配線層
22・・内部配線層
23・・ビアホール導体
2・・配線導体
21・・表面配線層
22・・内部配線層
23・・ビアホール導体
Claims (3)
- アルカリ金属原子を含むガラスを有するガラスセラミック焼結体からなる絶縁基体と、該絶縁基体の表面および内部に形成された金、銀および銅のうちの少なくともいずれか1種を主成分とする配線導体とを備えた配線基板であって、前記絶縁基体の表面および表面近傍領域には、前記アルカリ金属原子と置換された、前記アルカリ金属原子のイオン半径の0.8倍以上1.2倍未満のイオン半径を有するアルカリ土類金属原子が存在していることを特徴とする配線基板。
- 前記表面近傍領域の厚みが10μm以上20μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の配線基板。
- アルカリ金属原子を含むガラス粉末とセラミック粉末とを含むガラスセラミックグリーンシートを作製する工程と、前記ガラスセラミックグリーンシートの表面に配線用導体ペーストを塗布する工程と、前記配線用導体ペーストの塗布されたガラスセラミックグリーンシートを積層してガラスセラミックグリーンシート積層体を作製する工程と、前記ガラスセラミックグリーンシート積層体を焼結させたあと、前記アルカリ金属原子のイオン半径の0.8倍以上1.2倍未満のイオン半径を有するアルカリ土類金属原子を含む80℃以上沸点以下の酸性溶液に浸漬する工程とを有することを特徴とする配線基板の製造方法。
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JP5633707B2 (ja) * | 2009-08-18 | 2014-12-03 | 株式会社村田製作所 | ガラスセラミック組成物、セラミックグリーンシートおよび多層セラミック基板 |
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