JP2009156042A - ベーンポンプ - Google Patents
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Abstract
【課題】より簡素な構成によってベーンに径外方向への力を作用させることが可能なベーンポンプを得る。
【解決手段】ベーン8のスリット7と摺動する側面8b1,8b2のうち、回転方向RDの先方側に位置する側面8b2を、回転方向RDの手前側に向けて凹設して凹部8cを形成し、この凹部8cの径外方向に隣接して傾斜面8dを形成してある。傾斜面8dは、回転方向RDの手前側から先方側に向かうにつれて径外側に向けて傾斜しており、回転部4およびベーン8の回転に伴って生じる作動流体の相対流は、傾斜面8dに当たると、ベーン8に径外方向への流体力Frを作用させる。
【選択図】図6
【解決手段】ベーン8のスリット7と摺動する側面8b1,8b2のうち、回転方向RDの先方側に位置する側面8b2を、回転方向RDの手前側に向けて凹設して凹部8cを形成し、この凹部8cの径外方向に隣接して傾斜面8dを形成してある。傾斜面8dは、回転方向RDの手前側から先方側に向かうにつれて径外側に向けて傾斜しており、回転部4およびベーン8の回転に伴って生じる作動流体の相対流は、傾斜面8dに当たると、ベーン8に径外方向への流体力Frを作用させる。
【選択図】図6
Description
本発明は、ベーンポンプに関する。
従来のベーンポンプと同様の構成を有するポンプとして、特許文献1に開示されるものが知られている。特許文献1に開示されるポンプでは、リング状のガイド内室の中心から偏心した回転軸を中心として当該ガイド内室で回転するロータが設けられており、このロータに形成された径方向外側に向けて伸びるスリットに羽根板を突没可能に収容してある。羽根板はバネによって径外方向に向けて付勢されており、ロータが回転すると、羽根板はガイドの内周面に摺接しながら回転することになる。したがって、羽根板によって区画されたポンプ室の容積が周期的に増減し、これにより、ガイド内室に流体が吸入されかつ吐出されるようになっている。上記バネは、羽根板がガイドの内周面から浮き上がるのを抑制し、羽根板の先端部におけるポンプ室間での作動流体のリークを減らして、当該リークによるポンプ効率の低下を抑制している。
特開昭62−291488号公報
しかしながら、上記特許文献1に開示されるポンプでは、羽根板を径外方向に付勢するバネを備える分、部品点数が増大し、組付の手間が増えることと相俟って、製造コスト増大の一因となっていた。
そこで、本発明は、より簡素な構成によってベーンに径外方向への力を作用させることが可能なベーンポンプを得ることを目的とする。
請求項1の発明にあっては、ケーシング内で回転する回転部の基体部に当該回転部の回転軸に対して放射状に伸びて径外方向に開口する複数のスリットを形成し、各スリットにベーンを突没可能に収容し、ケーシング内で上記基体部の周囲に形成された環状室を上記複数のベーンで区画して複数のポンプ室を形成し、回転部を回転させることで上記ポンプ室の容積を周期的に増減させて当該ポンプ室に吸入した流体を吐出するように構成したベーンポンプにおいて、上記ベーンの表面に、上記回転部の回転に伴って上記回転軸の径外方向への流体力を当該ベーンに作用させる傾斜面を設けたことを特徴とする。
請求項2の発明にあっては、上記傾斜面は、上記回転方向手前側から先方側へ向かうにつれて径外側へ向かうように形成されていることを特徴とする。
請求項3の発明にあっては、上記ベーンの回転方向先方側の側面を回転方向手前側に向けて凹設して凹部を形成し、上記傾斜面を、上記凹部の径外側に隣接して設けたことを特徴とする。
請求項4の発明にあっては、上記ベーンの表面に、上記回転部の回転に伴って上記回転軸の軸方向一方側への流体力を当該ベーンに作用させる第2の傾斜面を設けたことを特徴とする。
請求項5の発明にあっては、上記第2の傾斜面は、上記回転方向手前側から先方側に向かうにつれて軸方向一方側へ向かうように形成されていることを特徴とする。
請求項6の発明にあっては、ケーシング内で回転する回転部の基体部に当該回転部の回転軸に対して放射状に伸びて径外方向に開口する複数のスリットを形成し、各スリットにベーンを突没可能に収容し、ケーシング内で上記基体部の周囲に形成された環状室を上記複数のベーンで区画して複数のポンプ室を形成し、回転部を回転させることで上記ポンプ室の容積を周期的に増減させて当該ポンプ室に吸入した流体を吐出するように構成したベーンポンプにおいて、上記ベーンの表面に、上記回転部の回転に伴って上記回転軸の径外方向への流体力ならびに上記回転軸の軸方向一方側への流体力を当該ベーンに作用させる第3の傾斜面を設けたことを特徴とする。
請求項7の発明にあっては、上記第3の傾斜面は、上記回転軸と垂直な平面との交線が回転方向手前側から先方側に向かうにつれて径外側へ向かうように形成されるとともに、上記回転軸と同心の円筒面との交線が回転方向手前側から先方側に向かうにつれて軸方向一方側へ向かうように形成されていることを特徴とする。
請求項1の発明によれば、上記傾斜面によって、ベーンに回転軸の径外方向への流体力を作用させることができるため、比較的簡素な構成によって、ベーンの径外方向端部におけるポンプ室間での作動流体のリークを抑制することができる。
請求項2の発明によれば、ベーンの表面に上記傾斜面を加工するだけで済むため、上記効果を比較的安価な構成によって得ることができる。
請求項3の発明によれば、上記凹部を設けることで、上記傾斜面を比較的容易に形成することができる。
請求項4の発明によれば、上記第2の傾斜面によって、ベーンに回転軸一方側へ向かう流体力を作用させて、当該ベーンの軸方向の往復動を抑制し、当該往復動に伴う振動や騒音を抑制することができる。
請求項5の発明によれば、ベーンの表面に上記第2の傾斜面を加工するだけで済むため、上記効果を比較的安価な構成によって得ることができる。
請求項6の発明によれば、上記第3の傾斜面によって、ベーンの径外方向端部におけるポンプ室間での作動流体のリークを抑制するとともに、当該ベーンの軸方向の往復動を抑制し、当該往復動に伴う振動や騒音を抑制することができる。一つの傾斜面によって、これら効果を得ることができるため、傾斜面を複数設ける場合に比べて安価な構成となる。
請求項7の発明によれば、ベーンの表面に上記第3の傾斜面を加工するだけで済むため、上記効果を比較的安価な構成によって得ることができる。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の複数の実施形態および変形例には、同様の構成要素が含まれている。よって、以下では、それら同様の構成要素については、重複する説明を省略し、共通の符号を付与することとする。
(第1実施形態)図1は、本発明の第1実施形態にかかるベーンポンプの回転軸と直交する断面での断面図、図2は、ベーンポンプの回転軸を含む断面での断面図、図3は、ベーンポンプの分解斜視図、図4は、図2の一部の拡大図、図5は、ベーンポンプに含まれる回転部を示す側面図である。なお、以下では、図2,図3,図4の下側を回転軸Axの軸方向一方側、上側を軸方向他方側とする。
まずは、図1を参照して、ベーンポンプ1の作動流体の吸入および吐出に関わる構成について説明する。
本実施形態にかかるベーンポンプ1では、図1に示すように、ケーシング2内で、円環状のリング3の略円筒状の内周面3aと回転軸Axを中心に回転する回転部4の略円柱状の基体部5の外周面5aとの間に、作動流体(液体)を収容する環状室6が形成されている。環状室6の幅wは、回転軸Axの周方向に沿って変化している。本実施形態では、内周面3aの中心Cと回転軸Axとを平行にずらして、リング3の内周面3aと回転部4の基体部5とを偏心させてある。このため、環状室6の幅wは、図1の右端の位置で最小となり、当該右端の位置から時計回り方向に徐々に拡がって左端の位置で最大となり、当該左端の位置から右端の位置に向けて時計回り方向に徐々に狭まって最小となっている。
基体部5には、回転部4の回転軸Axに対して放射状に伸びて径外方向に開口する複数(本実施形態では4つ)のスリット7が形成されており、各スリット7には略角棒状または略帯板状のベーン8が突没可能に収容されている。ベーン8は、回転部4の回転に伴って生じる遠心力とスリット7内の回転軸Ax側に導入される作動流体の与圧によって、スリット7内で径外方向に付勢されている。このため、ベーン8は内周面3aと摺接しながら回転部4とともに回転することになる。
環状室6は、周方向に一定のピッチで配置された複数のベーン8によって、同数(本実施形態では4つ)のポンプ室9に区画されている。回転部4およびベーン8の回転に伴い、ポンプ室9の容積は、環状室6の幅wの変化に従って変化することになる。すなわち、各ポンプ室9の容積は、図1の右端の位置で最小となっている。そして、回転部4の回転方向RD(図1の時計回り方向)への回転に伴って漸増し、左端の位置で最大となる。その位置からさらに回転部4が時計回り方向に回転すると、ポンプ室9の容積は漸減し、右端の位置で最小となる。つまり、本実施形態では、回転部4の1周回のうち図1の下半分の区間でポンプ室9の容積が拡大し、上半分の区間でポンプ室9の容積が縮小する。このため、リング3の内周面3aおよびケーシング2(第1のケーシング10)に、ポンプ室9の容積が拡大する区間に臨ませて吸入開口11を設けるとともに、ポンプ室9の容積が縮小する区間に臨ませて吐出開口12を設けてある。吸入開口11は、第1のケーシング10の側面上に突設された吸入パイプ13内の吸入通路14と連通し、吐出開口12は、吸入パイプ13と平行に突設された吐出パイプ15内の吐出通路16と連通している。
したがって、図1において、回転部4が回転方向RDに回転すると、隣接する2枚のベーン8によって区画されるポンプ室9は、右端の位置から容積を拡大させながら左端の位置まで移動する。このため、吸入通路14から吸入開口11を介してポンプ室9内に作動流体が流入する。そして、ポンプ室9は、左端の位置から容積を縮小しながら右端の位置まで移動する。このため、当該ポンプ室9から吐出開口12を介して吐出通路16に作動流体が流出する。複数のポンプ室9についてこのような作動流体の流入および流出が順次行われ、以て、ベーンポンプ1による連続的な作動流体の吸入および吐出が実現されている。
次に、図1〜図5を参照して、本実施形態にかかるベーンポンプ1の各部の構成を詳細に説明する。
図2に示すように、回転部4の基体部5に形成されたスリット7は、軸方向一方側で、底壁部17によって塞がれており、ベーン8は、この底壁部17と摺接しながらスリット7内を往復動するようになっている。すなわち、本実施形態では、この底壁部17がガイド壁部に相当するものである。なお、底壁部17には、スリット7の径内側に連通する連通孔17aが形成されており、この連通孔17aを介してスリット7内に、底壁部17の裏側(軸方向一方側)から作動流体の与圧が導入されるようになっている。
底壁部17は、回転軸Axを中心とし当該回転軸Axと直交する円板状に形成されており、基体部5の外周面5aより外側までフランジ状に張り出している。そして、この底壁部17の外周縁に、略円筒状のスカート部18が突設されている。スカート部18は、回転軸Axと同心となっており、基体部5から離間する側(軸方向一方側)に向けて略一定の厚みで突出している。
このスカート部18は、回転部4を駆動するモータ19の回転子(ロータ)として機能するものであり、コイルの巻回されたステータコア20の周方向に沿ってN極S極が交互に着磁された着磁部18aを含んでいる。スカート部18のうち少なくとも着磁部18aとして機能する部分は、磁性材料によって構成される。この場合、スカート部18のうちティース20aに対向する部分のみを磁性材料(例えばフェライト磁石やサマリウムコバルト磁石等の硬磁性材料)によって構成してもよいし、スカート部18全体を磁性材料によって構成しても良いし、回転部4全体を磁性材料によって構成してもよい。この場合、樹脂材料に磁性材料からなる粉状や粒状の磁性フィラーを混合して、回転部4やスカート部18を成形することも可能である。
また、図1,図3に示すように、基体部5の外周面5aは一定のピッチで径内方向に凹設され、これにより羽根部5bが形成されている。この羽根部5bは、基体部5(回転部4)とともに回転し、吐出開口12と対峙するときにポンプ室9からの作動流体の排出性能を高めている。
また、図2に示すように、基体部5(回転部4)の中央部には、シャフト21を回転自在に支持する軸受部22が固定されている。この軸受部22は、メタルブッシュ等の滑り軸受としてもよいし、ニードルベアリング等の転がり軸受としてもよい。
そして、回転部4は、ケーシング2によって形成される内部空間2a(図2参照)内で回転軸Ax回りに回転するように構成されている。本実施形態では、ケーシング2は、軸方向他方側(図2および図3の上側)に位置する第1のケーシング10と、軸方向一方側(図2および図3の下側)に位置する第2のケーシング23と、環状室6の外周面(リング3の内周面3a)を形成するリング3と、を備えている。
リング3は、図3にも示すように、環状室6の外周面を形成する筒状部3bと、筒状部3bの軸方向一方側から回転軸Axの径外方向に張り出すフランジ部3cとを備え、さらに、吸入通路14および吐出通路16の側壁の一部を成すリブ3dを備えている。円板環状のフランジ部3cから回転軸Axの軸方向に筒状部3bとリブ3dとが略同じ高さで立設された形状となっている。
このリング3は、図2に示すように、第1のケーシング10に形成された凹部10b内に収容される。すなわち、この凹部10bは、リング3の筒状部3bとリブ3dを嵌合する形状に凹設されている。また、リング3のフランジ部3cの外周部3eは、凹部10bの反対側で第2のケーシング23の環状壁部23aと接触しており、この部分が第1のケーシング10と第2のケーシング23とによって挟持されることで、リング3が回転軸Axの軸方向に固定されている。
第2のケーシング23には、回転部4のスカート部18を収容する略円環状の凹部23bと、回転部4の軸受部22のうち第2のケーシング23側(軸方向一方側、図2および図3の下側)に突出する部分を収容する凹部23cとが形成されている。
凹部23bの外周にある環状壁部23aより径外側の領域は、第1のケーシング10との当接面となる。この当接面には、Oリング34用の溝部23dを略円環状に形成し、この溝部23d内に装着したOリング34によって、第1のケーシング10と第2のケーシング23との境界部分でのシールを確保してある。なお、この境界部分以外の部材同士の境界部分(例えばリング3のフランジ部3cと第1のケーシング10との間の境界面等)にも適宜にシール部材(例えばガスケットやOリング等)を介在させ、各境界部分のシール性能を向上させるようにしてもよい。
凹部23cの底壁部23eと、第1のケーシング10の突起部10cとの間にはシャフト21が架設され、このシャフト21の中心が回転軸Axとなっている。シャフト21は、回転部4の中心に設けた軸受部22を貫通し、当該軸受部22に回転自在に支持されている。
また、図2に示すように、凹部23bと凹部23cとの間には、回転部4の反対側(軸方向一方側、図2の下側)から回転部4側に向けて突設された環状の突起部23fが形成されており、この突起部23fの裏側となる環状の凹部23j内にモータ19をなすステータコア20が収容されている。
ステータコア20は、図2,図3に示すように、基板24の表面24aの中央に取り付けられており、回転軸Axと同心で中央に位置する円筒部20bと、円筒部20bから放射状に伸びてコイルが巻回された複数のティース20aとを備えている。
そして、基板24のステータコア20を設けた表面24aに、各種電子部品(図示せず)が実装され、モータ19の駆動回路やその他の回路が形成されている。本実施形態では、基板24に形成された駆動回路によって各ティース20aに巻回されたコイルの通電状態を適宜に切り替えてティース20aの外周部分における極性を切り替え、これにより、ティース20aに対して径外方向に対向する着磁部18a(スカート部18)に周方向の推力を与え、以て、回転部4を回転させるようになっている。よって、第2のケーシング23のうち、少なくとも、ステータコア20(ティース20a)の外周部とスカート部18との間に介在する隔壁部23gは、透磁性を有するものとする必要がある。このため、隔壁部23gあるいは第2のケーシング23の全体が、透磁性を有する材料(例えばステンレススチールや、樹脂材料等)で形成される。
基板24は、凹部23cを回転部4の反対側(軸方向一方側)から塞ぐようにして取り付けられており、さらに、基板24を、基板カバー25によって、回転部4の反対側(軸方向一方側)から覆ってある。基板カバー25には、基板24との間に電子部品を配置する間隔を確保するため、突条25aを設けてある。
第1のケーシング10および第2のケーシング23は、いずれも回転軸Axに沿う軸方向視で略正方形状の外形状を呈している。そして、これらケーシング10,23の四隅に、これらを締結するねじ26の貫通孔10a,23kを形成してある。これら貫通孔10a,23kおよび基板カバー25の四隅に形成された貫通孔25bにねじ26を挿通して、ナット27を螺結することで、ベーンポンプ1が組み立てられる。
なお、ベーンポンプ1をなす上記各構成部品の材料や製造方法は、上述した着磁性や透磁性の他、耐摩耗性、耐食性、耐膨潤性、成形性、部品精度等を考慮して適宜に選択される。
また、本実施形態では、回転部4に、その回転に伴って上記回転軸Axの軸方向他方側(図2,図3,図5では上側)への流体力を発生させる流体力発生部を設け、回転部4を、底壁部17を設けた側と反対側に位置する第1のケーシング10に押し付けるようにしている。
図5に示すように、本実施形態では、流体力発生部として、スカート部18の軸方向一方側の端面18bに、回転部4の回転方向RDに対して傾斜する傾斜面28を設けてある。傾斜面28は、回転方向RDの手前側から先方側にかけて軸方向一方側(図5で下側)から一方側(同上側)に向けて傾斜して設定してある。このため、回転部4の回転に伴ってこの傾斜面28に当たった作動流体は、回転部4に流体力Fを作用させ、軸方向他方側(図5の上側)に押し上げることになる。
そして、かかる軸方向他方側に向けて作用する流体力F(推力)を受けながら回転する回転部4を摺動可能に支持するため、第1のケーシング10には、図4に示すように、スラスト支持部29を設けてある。具体的には、第1のケーシング10においてシャフト21を嵌挿して支持する部分を軸方向一方側へ突出させて突起部10cを形成し、この突起部10cの頂面10dに、ワッシャ30を介して、回転部4(基体部5)の中央部に形成した凹部4aの底面4bを突き当てている。本実施形態では、スラスト支持部29にワッシャ30を介在させるとともに、このワッシャ30に回転部4の中央部に設けた軸受部22の軸方向端面22a(凹部4aの底面4bに一部露出させて設けてある)を突き当てることで、耐摩耗性を高め易くしている。すなわち、かかる構成により、この部分の耐摩耗性はワッシャ30と軸受部22との摺接部分のスペック(材質、寸法、硬化処理等)によって調整し、回転部4の本体部分(基体部5、底壁部17等)のスペックは、軽量化や、他の摺動部分の摺動性、耐食性等の観点から選定することができる。
そして、図4に示すように、スラスト支持部29における摺動部分の直径D2を、基体部5の直径D1より小さくしてある。傾斜面28等の流体力発生部を設けた場合に、特段スラスト支持する部分を設けないと、基体部5の端面5cが第1のケーシング10と摺接することになって、摺動抵抗が増大してしまう虞がある。この点、本実施形態では、摺動部分の直径D2を基体部5の直径D1より小さくしたため、摺動抵抗をより低減して、フリクションをより低減することができる。
なお、図2に示すように、底壁部17の軸方向他方側の端面17bとリング3の軸方向一方側の端面3fとの間の隙間31は狭く設定し、これら端面17b,3f間の隙間からのリーク流量を可及的に減らしてある。また、軸受部22の軸方向一方側にもワッシャ30を介在させてある。
図6は、本実施形態にかかるベーンポンプに含まれるベーンの斜視図、図7は、ベーンの平面図(軸方向他方側から見た図)である。この図6,図7に示すように、本実施形態では、ベーン8の表面に、回転部4の回転に伴って回転軸Axの径外方向への流体力Frを当該ベーンに作用させる傾斜面8d(35)を設けてある。具体的には、ベーン8のスリット7と摺動する側面8b1,8b2のうち、回転方向RDの先方側に位置する側面8b2を、回転方向RDの手前側に向けて凹設して凹部8cを形成し、この凹部8cの径外側に隣接して傾斜面8dを形成してある。この傾斜面8dは、回転方向RDの手前側から先方側に向かうにつれて径外側に向けて傾斜しており、回転部4およびベーン8の回転に伴って生じる作動流体の相対流は、傾斜面8dに当たると、ベーン8に径外方向への流体力Frを作用させる。
したがって、本実施形態によれば、傾斜面8d(35)によって、ベーン8に回転軸Axの径外方向への流体力Frを作用させることができるため、比較的簡素な構成によって、ベーン8の径外方向の端面8eとリング3の内周面3aとの間におけるポンプ室9,9間での作動流体のリークを抑制することができる。また、本実施形態によれば、凹部8cを設けることで、傾斜面8d(35)を比較的容易に形成することができる。
また、ベーン8の回転方向RDの先方側の側面8b2の、凹部8cより径内側となる部分には、スリット7と摺接する部分(回転方向RDの手前側の側面8b1と略平行な側面8b2)を残しておき、摺動する際のガイドとして機能させるのが好適である。
また、本実施形態では、回転部4の回転方向RDに対して傾斜する傾斜面28を設けたことで、極めて容易に回転部4に対して軸方向他方側への流体力を作用させることができる。特に、本実施形態にかかる傾斜面28を設けたスカート部18の軸方向一方側の端面18bは、面積を比較的広く確保しやすく、かつ第2のケーシング23との隙間を広く確保しやすいため、より容易に所望の流体力を生じさせることができる。なお、軸方向に流体力を発生させる機構としては、上記構成以外にも考えられる。例えば、回転部4の外周面を径方向に凹設し、その軸方向端部に上記と同様の傾斜面を形成してもよいし、回転部4に翼形状を設けてもよいし、回転部4に軸方向に対して螺旋状に巻回する凹溝あるいは突条を設けてもよい。
また、本実施形態では、図2に示すように、スカート部18と第2のケーシング23との間に、略筒状の隙間(環状隙間)32,33を設けてある。隙間32は、スカート部18の外周面18cと第2のケーシング23の環状壁部23aの内周面23hとの間の隙間であり、隙間33は、隔壁部23gの外周面23iとスカート部18の内周面18dとの間の隙間である。このようにスカート部18を設けて、第2のケーシングとの間に筒状の隙間32,33を回転軸Axの軸方向に所定区間に亘って形成し、クリアランスの大きさを適宜に設定する(比較的微少な隙間とする)ことで、吐出行程にあるポンプ室9(図1で上側にあるポンプ室9)から吸入行程にあるポンプ室9(図1で下側にあるポンプ室9)へ、基体部5の軸方向一方側を経由してリークする作動流体の通流抵抗を大きくしリーク流量を低減することができる。
また、これら隙間(微小隙間)32,33は回転軸Axと同心であるため、回転部4が軸方向他方側に移動した場合においても、回転部4の軸方向一方側の部分と第2のケーシング23との間における作動流体のリーク流量を低減することができる。
そして、このスカート部18は、モータ19を構成する回転子(ロータ)として機能する部分である。すなわち、本実施形態によれば、回転子として機能させるスカート部18ならびにその周囲の構造を有効に利用して、当該スカート部18の径外側および径内側の筒状の隙間(微小隙間)32,33によってリーク流量を効率良く減らすことができる。
(ベーンに設けた傾斜面の変形例)図8〜図10は、傾斜面の変形例を示すベーンの平面図(軸方向他方側から見た図)である。これら図8〜図10に示すように、傾斜面8d(35)の数、大きさ、曲率半径、形状、深さ、傾斜角度、平面度、位置等のスペックは、適宜に変更することができる。また、上記第1実施形態ならびにその変形例にかかるベーンでは、傾斜面8d(35)を、ベーン8の幅(高さ)全域に亘って形成したが、傾斜面8d(35)の幅(高さ)をより小さくしてもよい。
(第2実施形態)図11,図12は、本実施形態にかかるベーンポンプで用いられるベーンを示す図であって、図11は、ベーンを径内側から見た側面図、図12は、ベーンの斜視図である。
本実施形態では、ベーン8の表面に、回転部4の回転に伴って回転軸Axの軸方向一方側への流体力を当該ベーン8に作用させる第2の傾斜面8f(36)を設けた点以外は、上記第1実施形態と全く同様の構成となっている。具体的には、ベーン8の、回転軸Axの軸方向他方側(すなわち、図11,図12では上側)の表面となる端面8aに、回転方向RDの手前側から先方側に向かうにつれて軸方向一方側に向かう第2の傾斜面8f(36)を形成してある。したがって、回転部4およびベーン8の回転に伴って生じる作動流体の相対流は、第2の傾斜面8fに当たると、ベーン8に軸方向一方側への流体力Fbを作用させる。これにより、ベーン8の軸方向一方側の端面8gが、底壁部17の端面17bに押し付けられることになる。
したがって、本実施形態によれば、第2の傾斜面8f(36)によって、ベーン8に、回転軸Axの軸方向一方側へ向かう流体力Fbを作用させて、当該ベーン8の軸方向の往復動を抑制し、当該往復動に伴う振動や騒音を抑制することができる。また、ベーン8の軸方向他方側の表面となる端面8aに第2の傾斜面8f(36)を加工するだけで済むため、上記効果を比較的安価な構成によって得ることができる。
なお、第2の傾斜面8f(36)の大きさ、曲率半径、形状、傾斜角度、平面度、位置等のスペックは、適宜に変更することができる。ただし、第2の傾斜面8f(36)は、ベーン8の軸方向他方側の端面8aの一部に設け、軸方向一方側の端面8gと平行な端面8aを残しておくのが好適である。この端面8aによって、当該軸方向他方側でのポンプ室9,9間でのリークを減らすことができるからである。
特に、本実施形態では、当該流体力Fbにより、ベーン8を、当該ベーン8とともに回転する回転部4の底壁部17に押し付けるようにしたため、ベーン8をケーシング2(第1のケーシング10)に押し付けた場合に比べて回転摺動抵抗を減らすことができる。すなわち、本実施形態のように、ベーン8を軸方向一方側で摺動可能に支持するガイド壁部としての底壁部17を有する構成においては、当該流体力Fbを当該底壁部17側に向けて作用させるようにするのが好ましいのである。
(第3実施形態)図13は、本実施形態にかかるベーンポンプで用いられるベーンの斜視図である。
本実施形態では、ベーン8の表面に、回転部4の回転に伴って回転軸Axの径外方向への流体力FrならびにAx回転軸の軸方向一方側への流体力Fbを当該ベーン8に作用させる第3の傾斜面8h(37)を設けた点以外は、上記第1実施形態と全く同様の構成となっている。具体的には、ベーン8の、回転方向RDの先方側かつ径内側かつ軸方向他方側の角部を面取りして、第3の傾斜面8h(37)を形成してある。
この第3の傾斜面8h(37)は、回転軸Axと垂直な平面(端面8a,8gと平行な平面)との交線c1が回転方向手前側から先方側に向かうにつれて径外側(端面8e側)へ向かうように形成されるとともに、回転軸Axと同心の円筒面(端面8eと平行な円筒面)との交線c2が回転方向手前側から先方側に向かうにつれて軸方向一方側(図13の下側)へ向かうように形成されている。すなわち、第3の傾斜面8h(37)は、交線c1に沿って傾斜し、かつ交線c2に沿って傾斜していると言うことができる。ここで、第3の傾斜面8h(37)における交線c1に沿う傾斜は、上記第1実施形態の傾斜面35と同様の作用を生じる。すなわち、この第3の傾斜面8h(37)は、回転方向手前側から先方側に向かうにつれて径外方向へ向かう傾斜面35としての機能を有する。そして、第3の傾斜面8h(37)における交線c2に沿う傾斜は、上記第2実施形態の傾斜面36と同様の作用を生じる。すなわち、この第3の傾斜面8h(37)は、回転方向手前側から先方側に向かうにつれて軸方向一方側へ向かう傾斜面36としての機能を有する。つまり、この第3の傾斜面8h(37)は、これら傾斜面35および第2の傾斜面36の双方の機能を併せ持つものである。
したがって、回転部4およびベーン8の回転に伴って生じる作動流体の相対流は、第3の傾斜面8h(37)に当たると、ベーン8に径外方向への流体力Frと軸方向一方側への流体力Fbとを作用させる。
したがって、本実施形態によれば、第3の傾斜面8h(37)によって、ベーン8の径外方向の端面8eとリング3の内周面3aとの間におけるポンプ室9間での作動流体のリークを抑制するとともに、当該ベーン8の軸方向の往復動を抑制し、当該往復動に伴う振動や騒音を抑制することができる。また、ベーン8の、回転方向先方側かつ径内側かつ軸方向他方側の角部を面取りすることで、上記第3の傾斜面8h(37)を比較的容易に得ることができる。本実施形態によれば、上記第2実施形態に比べて、傾斜面の数を少なくできる分、同様の効果をより安価な構成によって得ることができる。
なお、第3の傾斜面8h(37)の大きさ、曲率半径、形状、傾斜角度、平面度、位置等のスペックは、適宜に変更することができる。本実施形態では、第3の傾斜面8h(37)を平面としたが、曲面状に形成してもよい。
以上、本発明の実施形態および変形例について説明したが、本発明は上記各実施形態や変形例には限定されず、種々の変形が可能である。例えば、ベーンポンプの回転部やリング、ケーシングの詳細な構成は上記実施形態には限定されない。
1 ベーンポンプ
2 ケーシング
2a 内部空間
3 リング(ケーシング)
3a 内周面
4 回転部
5 基体部
5a 外周面
6 環状室
7 スリット
8 ベーン
8c 凹部
8d(35) 傾斜面
8f(36) 第2の傾斜面
8h(37) 第3の傾斜面
9 ポンプ室
10 第1のケーシング(ケーシング)
23 第2のケーシング(ケーシング)
35,37 傾斜面
36,37 第2の傾斜面
Ax 回転軸
Fr 径外方向への流体力
Fb 軸方向一方側への流体力
c1,c2 交線
2 ケーシング
2a 内部空間
3 リング(ケーシング)
3a 内周面
4 回転部
5 基体部
5a 外周面
6 環状室
7 スリット
8 ベーン
8c 凹部
8d(35) 傾斜面
8f(36) 第2の傾斜面
8h(37) 第3の傾斜面
9 ポンプ室
10 第1のケーシング(ケーシング)
23 第2のケーシング(ケーシング)
35,37 傾斜面
36,37 第2の傾斜面
Ax 回転軸
Fr 径外方向への流体力
Fb 軸方向一方側への流体力
c1,c2 交線
Claims (7)
- ケーシング内で回転する回転部の基体部に当該回転部の回転軸に対して放射状に伸びて径外方向に開口する複数のスリットを形成し、各スリットにベーンを突没可能に収容し、ケーシング内で前記基体部の周囲に形成された環状室を前記複数のベーンで区画して複数のポンプ室を形成し、回転部を回転させることで前記ポンプ室の容積を周期的に増減させて当該ポンプ室に吸入した流体を吐出するように構成したベーンポンプにおいて、
前記ベーンの表面に、前記回転部の回転に伴って前記回転軸の径外方向への流体力を当該ベーンに作用させる傾斜面を設けたことを特徴とするベーンポンプ。 - 前記傾斜面は、前記回転方向手前側から先方側へ向かうにつれて径外側へ向かうように形成されていることを特徴とする請求項1に記載のベーンポンプ。
- 前記ベーンの回転方向先方側の側面を回転方向手前側に向けて凹設して凹部を形成し、
前記傾斜面を、前記凹部の径外側に隣接して設けたことを特徴とする請求項2に記載のベーンポンプ。 - 前記ベーンの表面に、前記回転部の回転に伴って前記回転軸の軸方向一方側への流体力を当該ベーンに作用させる第2の傾斜面を設けたことを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか一つに記載のベーンポンプ。
- 前記第2の傾斜面は、前記回転方向手前側から先方側に向かうにつれて軸方向一方側へ向かうように形成されていることを特徴とする請求項4に記載のベーンポンプ。
- ケーシング内で回転する回転部の基体部に当該回転部の回転軸に対して放射状に伸びて径外方向に開口する複数のスリットを形成し、各スリットにベーンを突没可能に収容し、ケーシング内で前記基体部の周囲に形成された環状室を前記複数のベーンで区画して複数のポンプ室を形成し、回転部を回転させることで前記ポンプ室の容積を周期的に増減させて当該ポンプ室に吸入した流体を吐出するように構成したベーンポンプにおいて、
前記ベーンの表面に、前記回転部の回転に伴って前記回転軸の径外方向への流体力ならびに前記回転軸の軸方向一方側への流体力を当該ベーンに作用させる第3の傾斜面を設けたことを特徴とするベーンポンプ。 - 前記第3の傾斜面は、前記回転軸と垂直な平面との交線が回転方向手前側から先方側に向かうにつれて径外側へ向かうように形成されるとともに、前記回転軸と同心の円筒面との交線が回転方向手前側から先方側に向かうにつれて軸方向一方側へ向かうように形成されていることを特徴とする請求項5に記載のベーンポンプ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2007332117A JP2009156042A (ja) | 2007-12-25 | 2007-12-25 | ベーンポンプ |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2007332117A JP2009156042A (ja) | 2007-12-25 | 2007-12-25 | ベーンポンプ |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2009156042A true JP2009156042A (ja) | 2009-07-16 |
Family
ID=40960334
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2007332117A Withdrawn JP2009156042A (ja) | 2007-12-25 | 2007-12-25 | ベーンポンプ |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2009156042A (ja) |
-
2007
- 2007-12-25 JP JP2007332117A patent/JP2009156042A/ja not_active Withdrawn
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A621 | Written request for application examination |
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