JP2009155895A - 陶器釉薬瓦 - Google Patents

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Abstract

【課題】陶器釉薬瓦の持つ色調や光沢などの意匠性を損なうことなく、熱線の反射率を増大又は減少させて屋根材の温度上昇又は下降を抑制し、一般住宅での冷房負荷又は暖房負荷を軽減させること。
【解決手段】本発明では、陶器製の瓦の表面に釉薬層を形成した陶器釉薬瓦において、釉薬層の表面に熱線の反射率を変更するための透明の熱線反射率変更層を形成することにした。前記熱線反射率変更層は、ペルオキソチタン酸系アナターゼ型酸化チタンのペルオキソ改質アナターゼゾルにアモルファスのペルオキソチタン酸水和物を配合したコート材で形成することにした。また、前記熱線反射率変更層は、ペルオキソチタン酸系アナターゼ型酸化チタンのペルオキソ改質アナターゼゾルにリチウムシリケートを配合したコート材で形成することにした。
【選択図】なし

Description

本発明は、陶器製の瓦の表面に釉薬層を形成した陶器釉薬瓦に関するものである。
従来より、一般住宅用の屋根材としては、スレート系屋根材や陶器製屋根材が多く用いられている。これらのうちスレート系屋根材は、廉価で軽量であるものの、表面の塗装が劣化することから表面の塗り替えを行う必要がある。そのため、最近では、耐久性に優れ色調や光沢などの意匠性に優れる陶器製屋根材として陶器釉薬瓦が注目されている。
一方、地球温暖化が叫ばれる今日、一般住宅においても冷暖房の負荷を軽減する必要があり、直射日光を受ける屋根材についても熱反射性に優れた屋根材の開発が行われている。たとえば、特許文献1に開示された熱反射性屋根材では、屋根材の表面に熱反射性に優れる塗料を塗布する技術が開発されている。
特開2005−90042号公報
ところが、上記特許文献1に開示された技術は、屋根材の表面に熱反射性に優れる塗料を塗布するものであるために、陶器釉薬瓦に適用すると、表面の釉薬層の色調や光沢が損なわれてしまい、商品価値を著しく低下させてしまうので、上記特許文献1に開示された技術を陶器釉薬瓦に適用することができなかった。
そこで、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、陶器釉薬瓦の持つ色調や光沢などの意匠性を損なうことなく、熱線の反射率を増大又は減少させて屋根材の温度上昇又は下降を抑制し、一般住宅での冷房負荷又は暖房負荷を軽減させる技術を開発するに至った。
すなわち、請求項1に係る本発明では、陶器製の瓦の表面に釉薬層を形成した陶器釉薬瓦において、釉薬層の表面に熱線の反射率を変更するための透明の熱線反射率変更層を形成することにした。
また、請求項2に係る本発明では、前記請求項1に係る本発明において、前記熱線反射率変更層は、熱線の反射率を増大させることにした。
また、請求項3に係る本発明では、前記請求項2に係る本発明において、前記熱線反射率変更層は、ペルオキソチタン酸系アナターゼ型酸化チタンのペルオキソ改質アナターゼゾルにアモルファスのペルオキソチタン酸水和物を配合したコート材で形成することにした。
また、請求項4に係る本発明では、前記請求項2に係る本発明において、前記熱線反射率変更層は、ペルオキソチタン酸系アナターゼ型酸化チタンのペルオキソ改質アナターゼゾルにアモルファスのペルオキソチタン酸水和物を配合するとともに、分散媒と湿潤材と高沸点溶剤を配合したコート材で形成することにした。
また、請求項5に係る本発明では、前記請求項1に係る本発明において、前記熱線反射率変更層は、熱線の反射率を低下させることにした。
また、請求項6に係る本発明では、前記請求項5に係る本発明において、前記熱線反射率変更層は、ペルオキソチタン酸系アナターゼ型酸化チタンのペルオキソ改質アナターゼゾルにリチウムシリケートを配合したコート材で形成することにした。
また、請求項7に係る本発明では、前記請求項5に係る本発明において、前記熱線変更層は、ペルオキソチタン酸系アナターゼ型酸化チタンのペルオキソ改質アナターゼゾルにリチウムシリケートを配合するとともに、分散媒と湿潤材と高沸点溶剤を配合したコート材で形成することにした。
そして、本発明では、以下に記載する効果を奏する。
すなわち、本発明では、陶器製の瓦の表面に釉薬層を形成した陶器釉薬瓦において、釉薬層の表面に熱線の反射率を変更するための透明の熱線反射率変更層を形成しているために、陶器釉薬瓦の持つ色調や光沢などの意匠性を損なうことなく、熱線の反射率を増大又は減少させて屋根材の温度上昇又は下降を抑制し、一般住宅での冷房負荷又は暖房負荷を軽減させることができる。
当初、陶器釉薬瓦自体に、熱線反射ガラスと同様にして熱カット機能を付与できないかを検討した。しかしながら、熱線反射ガラスでは、板ガラス面上に金属酸化物の熱線反射被膜を薄膜で形成するが、成形された陶器釉薬瓦においてガラスと同じ金属酸化物の被膜化は技術的に難しく、またコスト的にも高価となることから、単価的に安い瓦市場には受け入れられないとの判断に至った。そのため、高度な技術や高価な設備を必要とせず、比較的簡易に熱線反射被膜を陶器釉薬瓦の釉薬層上に形成できる素材と方法を模索した。
しかし、陶器釉薬瓦においては釉薬の色調を損なわないことが大前提となる。そのため、釉薬層上に形成する塗膜は、透明クリアであることも重要な要素となってくる。
光の反射には正反射と乱反射があり、正反射率が高いと塗膜の光沢度が高まり、且つ透明性も高くなる。そのため、熱線反射ガラスは、正反射率が高いことから、高い透明度を確保しつつハーフミラー効果により高光沢でキラキラと輝いて見える。逆に、乱反射率が高いと、塗膜に光沢がなくなり透明度も低下することになる。したがって、透明性を確保しつつより高光沢の塗膜を形成することで、熱線反射ガラスのように、光の反射率が高められ熱線反射率も高められるとの考えに至った。
そこで、陶器釉薬瓦においても、透明で釉薬の色調を損なわず、釉薬面をさらに高光沢化させることができれば、光反射率が高まり、結果として熱線反射機能を付与できるのではないかとの考えを持つに至った。
但し、熱線反射は、反射被膜面が径時的な劣化を起こさないことが重要である。また、反射被膜面への汚れ付着も、当然機能低下の原因となり、どちらも熱線反射機能が維持できず、一過性の機能となってしまうことは容易に想像できる。熱線反射機能を持つ窓ガラスにおいては、金属酸化物の無機被膜であることから反射被膜面の径時的な劣化がないことと、清掃メンテが定期的に行われることから汚れ付着による熱線反射機能の低下も防止できる。また、熱線反射被膜面が屋内側になることも多く、その場合は反射面への汚れ付着もなく熱線反射率の低下もないものと考えられる。しかし、屋根材である陶器釉薬瓦においては必ず屋外であり、一般的に清掃メンテは行われないのが実情である。
そのため、熱線反射ガラスのように陶器釉薬瓦の表面を高光沢化させ光反射を高めながら、長期耐久性に優れる無機塗膜を釉薬層上に形成する方法を模索した。併せて、釉薬層上に形成する塗膜には、熱反射機能維持のため塗膜に防汚性を付与し、且つ実用性の点から透明な塗膜であることを開発条件として研究した。
そこで、金属酸化物の被膜と同様に透明で且つ高光沢の光反射被膜が形成可能な素材として、セラミックスの一種である酸化チタンに着目した。
しかし、通常の粉体酸化チタンでは、球体形状の結晶形であることと光の反射率も高いが高屈折率であることから、白色顔料として使用されることからもわかるように、塗膜が凸凹となるため乱反射して白く見える。そのため、釉薬層上が必ずしも高光沢とはならず、光の乱反射により白濁して見え透明性にも欠ける。したがって、陶器釉薬瓦の釉薬面の色調が大きく損なわれることになり、意匠性の点で実用に値しない。
そこで、独特の扁平結晶形状で高い透明性を持つペルオキソチタン酸系アナターゼ型酸化チタンに着目した。
また、酸化チタンの塗膜形成における結晶結合手段として、ペルオキソチタン酸系アナターゼ型酸化チタンの前駆体であり高い透明性を持つアモルファスのペルオキソチタン酸水和物とシリカ化合物であるリチウムシリケートの二つに着目した。
酸化チタン被膜を光学膜と考えるとき、この酸化チタンであれば、塗膜を薄膜で平滑に形成すれば高屈折率であっても乱反射が抑えられ、また、そもそもが高い透明性を持つことから、透明で高光沢の塗膜形成が可能ではないかと考えた。塗膜が薄膜で平滑な光学膜ができていることが前提であるが、光が入射角に対し同角度で反射される正反射率も高くなることから、塗膜は高光沢となり反射率も高くなり、熱線の領域においても反射が高まるという図式が成り立つと判断した。
したがって、上記ペルオキソチタン酸系アナターゼ型酸化チタンを主成分とする無機塗膜を、透明・高光沢で釉薬層上に薄膜で平滑に形成することで、光反射率が高まり熱線反射機能を高めることができ、また塗膜の長期安定性も確保できる。また、ペルオキソチタン酸系アナターゼ型酸化チタンは、光触媒機能も有することから、防汚性も発揮され熱線反射率維持にもつなげられると考えた。なお、屋根材そのものの熱線反射に着目して、酸化チタンを活用した特許を出しているところはない。
さらに、本発明は、陶器釉薬瓦の釉薬層上に酸化チタンのセラミックス層の被膜を形成するにおいて、透明で且つ釉薬面の光沢をさらに高め光反射を高める、また逆に透明で釉薬面の光沢を下げ乱反射を抑えることで、陶器釉薬瓦そのものの熱線反射率を変化させることができることを発見したことによる。
したがって、陶器釉薬瓦の釉薬面において、光沢をさらに高め光反射を高めることで熱線はより反射される方向に働き、光沢を低下させて乱反射を抑えることで現状の陶器釉薬瓦より熱線反射率が下がる、すなわち熱線が基材よりも吸収される方向に働くことを見出したことによる。
即ち、独特の扁平結晶形状で高い透明性を持つペルオキソチタン酸系アナターゼ型酸化チタンの被膜を、直接陶器釉薬瓦の釉薬層上に薄膜で平滑に形成することで、熱線反射率を変化させるに至った。
しかし、アナターゼ型酸化チタンは結晶化していることから、そのものだけでは塗膜形成した際、結合性に弱く、塗膜強度がなく耐久性のある塗膜はできない。
そのため、ペルオキソチタン酸系アナターゼ型酸化チタン結晶を、結合硬化させて被膜形成する手段として、透明で高光沢を持つアモルファスのペルオキソチタン酸水和物と、同様に透明で高光沢のシリカ化合物であるリチウムシリケートに着目した。
釉薬層上の酸化チタンセラミックス層が熱線反射率を変化させるにおいては、酸化チタン結晶を結合硬化させる手段として使用した、アモルファスのペルオキソチタン酸水和物とリチウムシリケートの二種類の結晶結合硬化材によるところが大きい。
具体的には、熱線反射率を高める方法として、ペルオキソチタン酸系アナターゼ型酸化チタンのペルオキソ改質アナターゼゾルを主成分とし、結晶結合硬化材として透明で高光沢のアモルファスのペルオキソチタン酸水和物を配合したコート材を、陶器釉薬瓦の釉薬層上に透明で高光沢で平滑に塗膜形成することで、光反射率が高まり熱線反射率も高めることができる。このことから、ペルオキソチタン酸水和物が塗膜をより高光沢化させることもわかった。
したがって、本発明の上記酸化チタン塗膜においては、塗膜が薄膜で平滑に形成されれば、基材釉薬面よりも光沢度が高まることで屈折率も高まり光反射率も高まるという図式となる。
熱線反射率の初期データとして、基材釉薬面に較べて、コート面は5%強熱線の反射が高まった。
また、熱線反射率を低下させる方法すなわち熱線吸収率を高める方法としては、ペルオキソチタン酸系アナターゼ型酸化チタンのペルオキソ改質アナターゼゾルを主成分とし、結晶結合硬化材として透明で高光沢の水酸化リチウムとアモルファスシリカのモル比が6.0に調製されたリチウムシリケートを配合したコート材を、陶器釉薬瓦の釉薬層上に透明で低光沢の塗膜形成することで、光反射率が低下して熱線吸収率を高めることができる。このことから、リチウムシリケートが塗膜の光の屈折をより低下させることもわかった。
したがって、本発明の上記酸化チタン塗膜においては、塗膜が薄膜で平滑に形成されれば、基材釉薬面よりも光沢度が低下することで屈折率も低下し光反射率も低下するという図式となる。
熱線吸収率の初期データとして、基材釉薬面に較べて、コート面は3〜5%程度の熱線反射の低下が見られた。
上記コート材は、分散媒としてアルコールを添加してもよく、その場合には基材に塗布したときの膜密度を向上させて、仕上りの質感を向上させることができる。分散媒としてのアルコールは、エタノール、イソプロパノールが有効である。
また、上記コート材は、湿潤材を添加してもよく、その場合には基材に塗布したときの成膜性を高め、塗膜の透明性を向上させることができる。湿潤材としては、フッ素系のパープルオロ化合物が有効である。
また、上記コート材は、高沸点溶剤を添加してもよく、その場合には基材に塗布したときの透明性をさらに向上させて、チタン結晶の粒状感を消すことができる。高沸点溶剤としては、Nメチル−2−ピロドリンが有効である。
陶器釉薬瓦の釉薬層上に酸化チタンのセラミックス被膜を形成する方法としては、より少ない設備投資で済むことからスプレーコート方式とした。また、水溶性コート材のため、ガンのノズル口径を小さくしてより微霧化を図り塗布することとした。
また、陶器釉薬瓦の釉薬層は、無機原料と粘土と無機顔料と無機薬品と水の混合物で構成され、1070℃で10時間焼成することで形成している。
熱線反射・吸収率の機能は、長期に亘って維持されることが重要であることから、熱線反射率を徐々に低下させる要因として、汚れ付着と塗膜劣化が考えられる。この発明の陶器釉薬瓦の釉薬層上の被膜化に用いるペルオキソチタン酸系アナターゼ型酸化チタンは、光触媒機能を有することから、汚れ成分の有機物を分解することと親水性によりセルフクリーニング機能を発揮して、陶器釉薬瓦表面の汚れを防止して初期の熱線反射率を維持することができる。
しかし、形成した塗膜が強い有機物分解能と高親水性を両立していないと、長期に亘っての汚れ防止にはならない。
この発明の釉薬層上に形成される酸化チタン被膜は、光触媒機能を有するアナターゼ型酸化チタンの塗膜に占める割合が65〜70%と高い比率で成膜され、透明薄膜でありながら高膜密度であるため、強い有機物分解能と高親水性を両立していることを特徴としている。
そのため、汚れ付着の要因である油分等の有機物を分解して、雨により汚れ分を流し落とす強い防汚力を発揮して、長期に亘って汚れ付着を防止してくれる。
また、形成される塗膜は安定性に優れた無機塗膜であることと耐久性に優れることから、長期に亘って初期の熱線反射率を維持することを特徴としている。
したがって、上記コート材が塗布されてなる陶器釉薬瓦は、長期に亘って初期の熱線反射率が維持され、且つ優れた防汚性を示すと共にNOx等の大気汚染物も効果的に分解してくれる。
また、釉薬面上に膜密度ほぼ100%の被膜を形成することから、雨水の含浸をガードして陶器釉薬瓦そのものの劣化を抑制してくれる二次的効果も得られる。
しかも、被膜形成のための焼成工程を要さず、釉薬面上に直接塗膜を形成することで、製造工程の簡素化と低コスト化が図れ、低価格のセラミクス被膜陶器釉薬瓦を提供することができる。
以下、本発明の実験例について説明する。
[実験例1]
まず、陶器釉薬瓦の釉薬層上に酸化チタンのセラミックス被膜を形成するコート材として、ペルオキソチタン酸系アナターゼ型酸化チタンのペルオキソ改質アナターゼゾルのみを釉薬面上への塗布を試みた。ペルオキソチタン酸系アナターゼ酸化チタンのペルオキソ改質アナターゼゾルは、具体的には、四塩化チタンにアンモニア水を滴下し水酸化チタンを沈殿させた後、過酸化水素水を滴下して得られるアモルファスのペルオキソチタン酸水和物を加熱していくことによって得られる。かかるペルオキソ改質アナターゼゾルのチタン含有量を0.85重量w%に調製し、試料基材に塗布して釉薬面の成膜性と意匠性と塗膜強度を確認した。試料基材は黒系、グリーン系、茶系陶器釉薬瓦の3種類とした。塗布方法は、製造ラインを考慮してスプレーコートとし、基材の陶器釉薬瓦上に33cc/m2の塗布量で塗布し、常温で乾燥させて試料の表面上に塗膜を形成した。成膜性は成膜していく過程を目視で確認し、意匠性は透明度、光沢度を基材との差異を目視とルーペで確認し、塗膜強度は完全乾燥の後テープ剥離試験(JIS Xカットテープ法)による密着性で確認した。
成膜性の点では、いずれの基材においても、アナターゼ型酸化チタンのペルオキソ改質アナターゼゾルのみでは、スプレーコートにより釉薬面上に塗布された際、大きめの水玉状態となり、それがそのまま乾燥していく形で釉薬面に成膜された。
意匠性の点では、塗膜に白く見えるムラが認められ、特に黒系、グリーン系の濃色の陶器釉薬瓦に顕著であった。
また、塗膜は全体的に基材釉薬面の光沢よりも、全般的に光沢度が低下する傾向にあった。したがって、塗膜の透明性と光沢を高めることには繋がらなかった。
また、テープ剥離試験による密着性試験では、塗膜に剥離が見られ塗膜の結合性は弱いものであった。
塗膜検証の結果、アナターゼ型酸化チタンの扁平形の結晶の一次粒子が釉薬面上に塗布された段階で二次粒子となって成膜されるが、その段階で分散性、レベリング性に問題を残した為、扁平形結晶が均一に横方向に平滑に配列されていない、すなわち二次粒子が釉薬面上で凹凸の状態で不均一に成膜した為、塗膜に屈折による白いムラが出たものと判断された。
また、基材の釉薬面よりも光沢が低下したことについては、陶器釉薬瓦の釉薬層上は微細な凹凸面であることから、その表面を扁平形の酸化チタンが覆うことにより、屈折を低減させたことで反射する光が少なくなった為と判断された。
また、塗膜強度においては、アナターゼ型酸化チタンは結晶化していることから、そのものだけでは塗膜形成した際、結合性に弱く耐久性のある塗膜はできない点も問題として残った。
そこで、酸化チタン結晶を結合硬化させ且つ光沢を高める手段として、透明で高い光沢性を持つアモルファスのペルオキソチタン酸水和物と、同様に透明で高い光沢性のシリカ化合物であるリチウムシリケートに着目した。
[実験例2]
陶器釉薬瓦の釉薬面上に酸化チタンのセラミックス被膜を形成するコート材として、ペルオキソチタン酸系アナターゼ型酸化チタンのペルオキソ改質アナターゼゾルと結晶結合硬化を目的としてペルオキソチタン酸水和物を重量比7:3の混合比で、含有量0.85w%に調製してコート材を製造した。ペルオキソチタン酸水和物は、具体的には、四塩化チタンにアンモニア水を滴下し水酸化チタンを沈殿させた後、過酸化水素水を滴下して得られる。上記コート材を、試料基材に塗布し、成膜性と意匠性と塗膜強度を確認した。試料基材は黒系、グリーン系、茶系陶器釉薬瓦の3種類とした。塗布方法は、製造ラインを考慮してスプレーコートとし、基材の陶器釉薬瓦上に33cc/m2の塗布量で塗布し、常温で乾燥させて試料の表面上に塗膜を形成した。成膜性は成膜していく過程を目視で確認し、意匠性は透明度、光沢度を基材との差異を目視とルーペと光沢計で確認し、塗膜強度は完全乾燥の後テープ剥離試験(JIS Xカットテープ法)による密着性で確認した。光沢計による光沢度測定は、受光角を75°とし三点計測の平均を数値とし、茶系陶器釉薬瓦においては釉薬面の凹凸が大きいため測定を除いた。
成膜性の点では、いずれの基材においても、上記コート材ではスプレーコートにより釉薬面上に塗布された際、実験例1と同様に大きめの水玉状態となり、それがそのまま乾燥していく形で釉薬面に成膜された。
光沢度は、黒系陶器釉薬瓦はブランクで16.7、コート面で20.8、またグリーン系陶器釉薬瓦はブランクで8.3、コート面で9.6であった。
意匠性の点では、塗膜の光沢度は高まったが、ペルオキソ改質アナターゼゾルのみよりも白く見えるムラが顕著で、またペルオキソチタン酸水和物による干渉ムラも見られ、全体的に白濁した感じで基材釉薬面の色調を大きく損なうものであった。結果として、目指す透明で高光沢を併せ持つ塗膜には至らなかった。
また、テープ剥離試験による密着性試験では、塗膜に剥離は見られず塗膜の結合性は十分と云えるものであった。
塗膜検証の結果、アナターゼ型酸化チタンの扁平形の結晶の一次粒子が釉薬面上に塗布された段階で二次粒子となって成膜されるが、その段階で実験例1と同様に分散性、レベリング性に問題を残した為、扁平形結晶が均一に横方向に平滑に配列されていない、すなわち二次粒子が釉薬面上で凹凸の状態で不均一に成膜した為、アモルファスのペルオキソチタン酸水和物の光の乱反射と相俟って、塗膜が乱反射と屈折でより白く見え干渉ムラも顕著に出たものと判断された。
塗膜強度については、ペルオキソチタン酸の結晶結合性が十分発揮されたことによるものと推察された。
したがって、扁平形の酸化チタン一次粒子がスプレーコートされる段階で二次粒子となって釉薬層上に付着するが、その段階ですべての結晶が均一で扁平状の横方向に平滑になる形、すなわち鱗の状態のように成膜されれば、目標とする透明で高光沢の塗膜となり、光反射率が高まり熱線反射率も高めることができるとの見解に至った。
[実験例3]
塗膜の均一化・成膜性改善の対策として、まずペルオキソ改質アナターゼゾルとペルオキソチタン酸水和物を重量比7:3の混合比で、コート材の分散性を高めることを目的としてアルコールが配合されてなるコート材を、含有量0.85w%に調製して製造した。アルコールの配合割合は、アモルファスのペルオキソチタン酸水和物が、ゲル化せず安定しており、且つ結晶結合性を損なわない範疇である15vol%とした。上記コート材を、実験例2と同様にして基材に塗布し、成膜性と意匠性を確認した。
成膜性の点では、いずれの基材においても、スプレーコートにより釉薬面上に塗布された際、スプレー霧が微霧化されて付着し水玉状態も細かく緻密にはなったが、それがそのまま乾燥していく形で釉薬面に被膜化された。
光沢度は、黒系陶器釉薬瓦はコート面で21.9、グリーン系陶器釉薬瓦はコート面で9.9と実験例2よりも高まった。
意匠性の点では、塗膜のムラやペルオキソチタン酸による干渉ムラも解消された。
しかし、塗膜の光沢は高くなったが透明度が低いため、全体的に塗膜が白く見え基材釉薬面の色調はやはり大きく損なうものであった。したがって、目指す透明で高光沢を併せ持つ塗膜には至らなかった。
塗膜検証の結果、アルコールによる霧の分散効果で、塗膜がより均一化され膜密度が高まったことでムラのない塗膜とはなったが、レベリング性に問題を残した為、扁平形結晶が横方向に平滑に配列されていない、すなわち二次粒子が釉薬面上で凹凸の状態でまだ成膜している為、アモルファスのペルオキソチタン酸水和物の光の乱反射と相俟って、塗膜が屈折で白く見えたものと判断された。
[実験例4]
成膜性・レベリング性改善の対策として、まずペルオキソ改質アナターゼゾルとペルオキソチタン酸水和物を重量比7:3の混合比で、分散媒としてアルコールと、コート材の水分の表面張力の低下とレベリング性向上を目的として湿潤材が混合されてなるコート材を、含有量0.87w%に調製して製造した。湿潤材の配合割合は、塗膜の結合性を損なわない範疇である0.02重量%とした。上記コート材を、実験例2と同様にして基材に塗布し、成膜性と意匠性を確認した。
成膜性の点では、いずれの基材においても、スプレーコートにより釉薬面上に塗布された際、スプレー霧が微霧化されて付着したコート材が、乾燥していく過程でよりレベリングされ釉薬面に被膜化された。但し、微霧化されて付着したコート材の粒状態が、完全になくなった状態での被膜化には至らなかった。
光沢度は、黒系陶器釉薬瓦はコート面で20.9、グリーン系陶器釉薬瓦はコート面で9.5と実験例3よりもやや低下した。
意匠性の点では、屈折による白濁感がより解消され、高光沢の塗膜形成に至つたが、透明度においては実験例3よりは改善したがまだ十分とは云えないものであつた。そのため、黒系、グリーン系の濃色釉薬面においては、見る角度によっては屈折により色調がやや損なわれるものであった。
また、塗膜強度については、チタン同士の結合もより促進され、密着性も強く十分なものであった。
塗膜検証の結果、微霧化とレベリング性向上により、二次粒子の段階でも、チタン結晶が均一で横方向に平滑に鱗の状態でほぼ成膜されたことにより、白濁感が解消され高光沢の塗膜形成に至ったと判断された。
但し、レベリング性にまだ問題を残すことから、アモルファスのペルオキソチタン酸水和物の光の乱反射と透明度がまだ不十分なため、見る角度によって塗膜が屈折で白く見えたものと判断された。
[実験例5]
成膜性と釉薬面の色調改善の対策として、ペルオキソ改質アナターゼゾルとペルオキソチタン酸水和物を重量比7:3の混合比で、分散媒としてアルコールと、コート材の水分の表面張力の低下とレベリング性向上を目的として湿潤材と、成膜性改善を目的として高沸点溶剤が混合されてなるコート材を、含有量0.87w%に調製して製造した。高沸点溶剤の配合割合は、配合成分の性状を損なわない範疇である1vol%とした。上記コート材を、実験例2と同様にして基材に塗布し、成膜性と意匠性を確認した。
成膜性の点では、いずれの基材においても、スプレーコートにより釉薬面上に塗布された際、スプレー霧が微霧化されて付着したコート材が、乾燥していく過程でレベリングされ完全に粒状感がなくなった状態で釉薬面に被膜化された。
光沢度は、黒系陶器釉薬瓦はコート面で19.0、グリーン系陶器釉薬瓦はコート面で7.6と実験例4よりもやや低下した。
意匠性の点では、光沢度がやや低下したが、透明感も高まりさらに光沢度を確保しながら釉薬の色調変化もほとんど見られない塗膜となった。
塗膜検証の結果、二次粒子の段階でも、すべての結晶が均一で横方向に平滑になる形、すなわち鱗の状態がより完璧に近い形で成膜されたことにより、塗膜の透明度がさらに増し、またぺルオキソチタン酸水和物の光の乱反射も改善されたことにより、釉薬面の色調変化が少なく高品位の塗膜形成に至ったと判断された。
また、電子顕微鏡写真で見られる膜密度はほぼ100%で形成されていると判断できるものであつた。塗布量から推定される膜厚は、0.2μと薄膜であった。
[実験例6]
次に、陶器釉薬瓦の釉薬面上に酸化チタンのセラミックス被膜を形成するコート材として、ペルオキソチタン酸系アナターゼ型酸化チタンのペルオキソ改質アナターゼゾルと結晶結合硬化を目的としてリチウムシリケートを重量比7:3の混合比で、含有量0.835w%に調製してコート材を製造した。尚、酸化チタンの結晶結合硬化材として使用するリチウムシリケートは、水酸化リチウムとアモルファスシリカとのモル比を6.0に調製した。このモル比は、塗膜の質感を確保しながら、且つペルオキソチタン酸系酸化チタンの結晶結合性を高めるに有効な機能を発揮する最適なモル比として導き出したものである。上記コート材を、実験例2と同様にして基材に塗布し、成膜性と意匠性と塗膜強度を確認した。
成膜性の点では、いずれの基材においても、上記コート材ではスプレーコートにより釉薬面上に塗布された際、大きめの水玉状で付着し、それがそのまま乾燥していく状態で釉薬面に被膜化された。
光沢度は、黒系陶器釉薬瓦はコート面で16.6、グリーン系陶器釉薬瓦はコート面で9.1であった。
意匠性の点では、、酸化チタンによる白く見えるムラとリチウムシリケート分による干渉ムラが全体的に認められた。したがって、目指す透明で高光沢を併せ持つ塗膜には至らなかった。
また、テープ剥離試験による密着性試験では、塗膜に剥離は見られず塗膜の結合性は十分と云えるものであった。
塗膜検証の結果、アナターゼ型酸化チタンの扁平形の結晶の一次粒子が釉薬面上に塗布された段階で二次粒子となって成膜されるが、その段階で分散性、レベリング性に問題を残した為、扁平形結晶が均一に横方向に平滑に配列されていない、すなわち二次粒子が釉薬面上で凹凸の状態で不均一に成膜した為、リチウムシリケート分の光の乱反射と相俟って、塗膜が屈折でより白く見え、干渉ムラも顕著に出たものと判断された。
[実験例7]
成膜性・意匠性改善の対策として、まずペルオキソ改質アナターゼゾルとリチウムシリケートを重量比7:3の混合比で、コート材の分散性を高めることを目的としてアルコールが混合されてなるコート材を、含有量0.835w%に調製して製造した。アルコールの配合割合は、モル比6.0に調整されたリチウムシリケートがゲル化せず安定する範疇である40vol%とした。上記コート材を、実験例2と同様にして基材に塗布し、成膜性と意匠性を確認した。
成膜性の点では、いずれの基材においても、スプレーコートにより釉薬面上に塗布された際、スプレー霧が微霧化されて付着し水玉状も細かくはなったが、それがそのまま乾燥していく状態で釉薬面に被膜化された。
意匠性の点では、リチウムシリケート分の干渉ムラは解消されたが、塗膜に白濁がやや認められた。
光沢度は、黒系陶器釉薬瓦はコート面で15.5、グリーン系陶器釉薬瓦はコート面で8.1とブランクよりも低下した。
そのため、基材釉薬面の光沢よりも光沢度が低下したこともあり、塗膜の色調も全体的にブランクよりも濃くなった。
塗膜検証の結果、アルコールによる霧の分散効果で、塗膜がより均一化され膜密度が高まったことでムラのない塗膜とはなったが、レベリング性に問題を残した為、扁平形結晶が横方向に平滑に配列されていない、すなわち二次粒子が釉薬面上で凹凸の状態で成膜した為、塗膜が屈折でやや白く見えたものと判断された。
また、塗膜の色調が全体的に濃く見えるようになった点は、陶器釉薬瓦の釉薬層上は微細な凹凸面であることから、その表面を扁平結晶形状のペルオキソチタン酸アナターゼ型酸化チタンが薄膜で覆うことにより、またリチウムシリケート分が光の乱反射を抑える方向に働いたため、基材よりも光の屈折・反射が減少したことによるものと判断された。
[実験例8]
成膜性・意匠性改善の対策として、ペルオキソ改質アナターゼゾルとリチウムシリケートを重量比7:3の混合比で、分散媒としてアルコールとコート材の水の表面張力の低下とレベリング性向上を目的として湿潤材が混合されてなるコート材を、含有量0.84w%に調製して製造した。
湿潤材の配合割合は、塗膜の結合硬化性を損なわない範疇である0.005重量%とした。上記コート材を、実験例1と同様にして基材に塗布し、意匠性と成膜性を確認した。
成膜性の点では、いずれの基材においても、スプレーコートにより釉薬面上に塗布された際、スプレー霧が微霧化されて付着したコート材が、乾燥していく過程でレベリングされ釉薬面に被膜化された。但し、微霧化されて付着したコート材の粒状態が、完全になくなった状態での被膜化には至らなかった。
光沢度は、黒系陶器釉薬瓦はコート面で13.7、グリーン系陶器釉薬瓦はコート面で7.2と実験例7よりもさらに低下した。
意匠性の点では、塗膜に白濁がほとんど認められず、透明性もかなり高まった。
また、基材釉薬面の光沢よりも光沢度と屈折率が低下したこともあり、塗膜の色調も全体的にブランクよりも濃くなった。特に黒系とグリーン系陶器釉薬瓦においてはより鮮やかな色調となった。
また、塗膜の結合もより促進され、密着性も強く塗膜強度も十分なものであった。
塗膜検証の結果、微霧化とレベリング性向上により、二次粒子の段階でも、チタン結晶が均一で横方向に平滑に鱗の状態でほぼ成膜されことにより、白濁感が解消されより透明性の高い塗膜形成に至ったと判断された。
さらに、光沢度が低下したことことから屈折も減少し、黒系とグリーン系陶器釉薬瓦においてもより濃く鮮やかな色調となったものと判断された。
[実験例9]
成膜性改善の対策として、まずペルオキソ改質アナターゼゾルとリチウムシリケートを重量比7:3の混合比で、分散媒としてアルコールと、コート材の水の表面張力の低下とレベリング性向上を目的として湿潤材と、さらに成膜性改善を目的として高沸点溶剤が混合されてなるコート材を、含有量0.84w%に調製して製造した。高沸点溶剤の配合割合は、配合成分の性状を損なわない範疇である1vol%とした。上記コート材を、実験例2と同様にして基材に塗布し、成膜性と意匠性を確認した。
成膜性の点では、いずれの基材においても、スプレーコートにより釉薬面上に塗布された際、スプレー霧が微霧化されて付着したコート材が、乾燥していく過程でレベリングされ完全に粒状感がなくなった状態で釉薬面に被膜化された。
光沢度は、黒系陶器釉薬瓦はコート面で12.9、グリーン系陶器釉薬瓦はコート面で6.8と実験例8よりもさらに低下した。
意匠性の点では、高い透明性をもつ塗膜の形成に至った。
また、基材釉薬面の光沢よりも光沢度がさらに低下したこともあり、塗膜の色調も全体的にブランクよりも濃くなり、いずれの基材もさらに鮮やかな色調となった。
また、塗膜の結合も問題なく、密着性も強く塗膜強度も十分なものであった。
塗膜検証の結果、二次粒子の段階でも、すべての結晶が均一で横方向に平滑になる形、すなわち鱗の状態がより完璧に近い形で成膜されたことにより、塗膜の透明度がさらに増し、、また光の屈折が抑えられたことで、釉薬面の色調も鮮やかで高品位の塗膜形成に至ることを見出した。
また、電子顕微鏡写真で見られる膜密度はほぼ100%で形成されていると判断できるものであつた。塗布量から推定される膜厚は、0.2μと薄膜であった。
[実験例10]
上記実験例で、透明性が高く且つ高光沢を併せ持つ塗膜が形成された実験例5と、透明性が高く低光沢で鮮やかな色調の塗膜が形成された実験例9について、基材釉薬面と釉薬層上に形成した酸化チタンセラミックス層の熱線反射率を測定した。試料基材は黒系陶器釉薬瓦とグリーン系陶器釉薬瓦の二種類とした。測定方法は、日本のJIS基準に相当するアメリカのASTM C1549で1カ月に亘り測定した。尚、実施方法は1週間ごとに1カ月間に亘って測定した。
基材釉薬面と実験例5のコート面の熱線反射率の測定結果を表1に示す。
Figure 2009155895
熱線反射率は、初期データにおいては、黒系陶器釉薬瓦で基材釉薬面よりもコートした陶器釉薬瓦が5%強熱線反射率が高まり、グリーン系陶器釉薬瓦においても3%弱熱線反射率が高まった。
コートした陶器釉薬瓦における黒系陶器釉薬瓦とグリーン系陶器釉薬瓦の熱線反射率の差は、それぞれの陶器釉薬瓦の基材釉薬面の色調の違いとコート面の光沢度の差からくるものと判断される。
また、いずれの測定サンプルも熱線反射率が日数経過と共にやや低下している点については、測定期間中雨に恵まれなかったため測定面への汚れ成分の付着が要因として挙げられる。
しかし、実験例5のサンプルについて、5週間後の測定数値が上がったのは、測定間隔内に降雨があったためセルフクリーニング機能が発揮されたことによるものと判断された。
結果として、実験例5のコート面においては、1カ月経過しても熱線反射率の変化はほとんど見られず安定したものであった。
基材釉薬面と実験例9のコート面の熱線反射率の測定結果を表2に示す。
Figure 2009155895
熱線反射率は、初期データにおいては、黒系陶器釉薬瓦で基材釉薬面よりもコートした陶器釉薬瓦が3%強熱線反射率が低下し、グリーン系陶器釉薬瓦においても5%強熱線反射率が低下している。
コートした陶器釉薬瓦における黒系陶器釉薬瓦とグリーン系陶器釉薬瓦の熱線反射率の差は、それぞれの陶器釉薬瓦の基材釉薬面の色調の違いとコート面の光沢度の差からくるものと判断される。
また、いずれの測定サンプルも熱線反射率が日数経過と共にやや低下している点については、測定期間中雨に恵まれなかったため測定面への汚れ成分の付着が要因として挙げられる。
しかし、実験例9のサンプルについて、5週間後の測定数値が上がったのは、測定間隔内に降雨があったため、表1の実験例5のデータと同様に、セルフクリーニング機能が発揮されたことによるものと判断された。
結果として、実験例9のコート面においても、熱線反射率の変化は1カ月経過しても、ほとんど見られず安定したものであった。
[実施例11]
上記実験例で、透明性が高く且つ高光沢を併せ持つ塗膜が形成された実験例5と、透明性が高く低光沢で鮮やかな色調の塗膜が形成された実験例9について、釉薬層上に形成した酸化チタンセラミックス層の促進耐候性試験を実施して塗膜の変化を測定した。試料基材は黒系瓦とグリーン系瓦の二種類とした。測定試験機は、メタルハライド型促進耐候性試験機(岩崎電気SUV−W151)で、試験時間は500時間とし、塗膜存続と親水性と光沢保持率を測定した。
塗膜存続については、光学顕微鏡による確認とし、塗膜に落剥が認められない場合を○、落剥箇所が認められる場合を×とした。
親水性は水を滴下して弾きがないかで確認し、弾く箇所が認められない場合を○、弾く箇所が部分的にも認められる場合を×とした。
なお、光沢保持率は光沢計で試験前の光沢度と500時間経過後の光沢度で算出し、受光角は60°で三点計測の平均を数値とし、測定器は堀場製作所製G−331を使用した。
実験例5と実験例9のコート面の促進耐候性の測定結果を表3に示す。
Figure 2009155895
促進耐候性試験結果は、塗膜の存続については、いずれの試料にも塗膜の落剥も見られず安定したものであった。
親水性についても、塗膜が安定していることから、水を弾く箇所もなく良好であった。
また、光沢度は試験前と500時間経過後で変化がなく、光沢保持率は100%であった。
メタルハライド型促進耐候性試験機は、カーボンアーク方式の促進耐候性試験機のサンシャインウェザーメーターと較べて10倍の加速度があるとされている。従って、メタルハライド型促進耐候性試験機で500時間の試験は、サンシャインウェザーメーターでは5000時間に相当する。通常塗料メーカーでは、サンシャインウェザーメーターで2000〜2500時間が屋外暴露10年としていることから、メタルハライド型促進耐候性試験機での500時間は20〜25年に相当することになる。結果として、陶器釉薬瓦上に形成された酸化チタンセラミックス層は、初期光沢度の低下も見られず、長期に亘り非常に安定したものと云える。
以上に説明した実験例から、ペルオキソチタン酸系アナターゼ型酸化チタンのペルオキソ改質アナターゼゾルにアモルファスのペルオキソチタン酸水和物を配合するとともに、分散媒と湿潤材と高沸点溶剤を配合したコート材で形成したコート面は、熱線の反射率を増大させる熱線反射率変更層として機能し、一方、ペルオキソチタン酸系アナターゼ型酸化チタンのペルオキソ改質アナターゼゾルにリチウムシリケートを配合するとともに、分散媒と湿潤材と高沸点溶剤を配合したコート材で形成したコート面は、熱線の反射率を低下させる熱線反射率変更層として機能することがわかる。
本発明では、これら熱線の反射率を増大又は低下させる(変更させる)ための透明の熱線反射率変更層を釉薬層の表面に形成したものであり、陶器釉薬瓦の持つ色調や光沢などの意匠性を損なうことなく、熱線の反射率を増大又は減少させて屋根材の温度上昇又は下降を抑制し、一般住宅での冷房負荷又は暖房負荷を軽減させることができるものである。

Claims (7)

  1. 陶器製の瓦の表面に釉薬層を形成した陶器釉薬瓦において、
    釉薬層の表面に熱線の反射率を変更するための透明の熱線反射率変更層を形成したことを特徴とする陶器釉薬瓦。
  2. 前記熱線反射率変更層は、熱線の反射率を増大させることを特徴とする請求項1に記載の陶器釉薬瓦。
  3. 前記熱線反射率変更層は、ペルオキソチタン酸系アナターゼ型酸化チタンのペルオキソ改質アナターゼゾルにアモルファスのペルオキソチタン酸水和物を配合したコート材で形成したことを特徴とする請求項2に記載の陶器釉薬瓦。
  4. 前記熱線反射率変更層は、ペルオキソチタン酸系アナターゼ型酸化チタンのペルオキソ改質アナターゼゾルにアモルファスのペルオキソチタン酸水和物を配合するとともに、分散媒と湿潤材と高沸点溶剤を配合したコート材で形成したことを特徴とする請求項2に記載の陶器釉薬瓦。
  5. 前記熱線反射率変更層は、熱線の反射率を低下させることを特徴とする請求項1に記載の陶器釉薬瓦。
  6. 前記熱線反射率変更層は、ペルオキソチタン酸系アナターゼ型酸化チタンのペルオキソ改質アナターゼゾルにリチウムシリケートを配合したコート材で形成したことを特徴とする請求項5に記載の陶器釉薬瓦。
  7. 前記熱線変更層は、ペルオキソチタン酸系アナターゼ型酸化チタンのペルオキソ改質アナターゼゾルにリチウムシリケートを配合するとともに、分散媒と湿潤材と高沸点溶剤を配合したコート材で形成したことを特徴とする請求項5に記載の陶器釉薬瓦。
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