JP2009155358A - シリコーンゴムと基材との接着方法及び接着物品 - Google Patents

シリコーンゴムと基材との接着方法及び接着物品 Download PDF

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Abstract

【課題】湿気硬化型シリコーンゴム組成物の硬化物と基材とを強固に接着させる方法、及びこの方法により接着させた物品を提供する。
【解決手段】
湿気硬化型シリコーンゴム組成物の硬化物と基材とを有機ケイ素化合物の燃焼により形成させた酸化ケイ素皮膜を介して接着させることを特徴とするシリコーンゴムと基材との接着方法、及び湿気硬化型シリコーンゴム組成物の硬化物(シリコーンゴム)と基材とが、有機ケイ素化合物の燃焼により形成された酸化ケイ素皮膜を介して接着、一体化されてなるシリコーンゴムと基材とが接着した物品。
【選択図】なし

Description

本発明は、湿気硬化型シリコーンゴム組成物の硬化物(シリコーンゴム)と基材とを強固に接着する方法に関するものであり、より詳しくは、金属、有機樹脂等の基材の表面に、有機ケイ素化合物の燃焼による酸化ケイ素皮膜を形成し、その後、この酸化ケイ素皮膜上に湿気硬化型シリコーンゴム組成物を塗布、硬化させて接着させる方法、及びこの方法により接着された物品に関するものである。
湿気硬化型シリコーン系シーリング剤、接着剤、コーティング剤、ポッティング剤組成物は、建築、電気電子、輸送機、電装部品、家電製品等の非常に多くの分野で使用されている。一液型で使用が簡便であり、常温で硬化して優れた耐候性、耐久性、耐寒性等を具備した硬化物を与え、更に各種の被着体に対する優れた接着性を有する材料である。しかし、ポリオレフィン系樹脂被着体(ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等)は、自己接着が不可能な樹脂であることが知られている。また、PBT(ポリブチレンテレフタレート)樹脂、PPS(ポリフェニレンスルヒド)樹脂、SPS(シンジオタクチックポリスチレン)樹脂、液晶ポリマー樹脂等の結晶性の高い樹脂被着体は、表面官能基が少ないため自己接着性の付与が非常に困難であることが判っている。
これは、湿気硬化型シリコーンゴム組成物の接着機構に起因するものである。湿気硬化型シリコーンゴム組成物には、シリコーンと基材表面とを結びつけるための接着性向上剤としてシランカップリング剤が配合されている。接着性向上剤は、有機基と加水分解性ケイ素基を有するケイ素化合物であるが、有機基は基材表面の官能基との水素結合により接着性を発現する。上記の被着体は表面官能基が非常に少ないため、自己接着性を有する湿気硬化型シリコーンゴム組成物の開発は非常に困難であった。また、架橋密度、架橋方法等の調整により接着性を向上させると、基本特性である耐候性、耐久性、耐寒性等に悪影響を及ぼすことが多かった。
基材表面をプライマーで改質する方法は、プライマー塗布工程での塗りむらや乾燥むらによる接着不良だけでなく、近年注目されている溶剤による作業環境の悪化が大きな問題となる。他の基材表面の改質方法としては、ヤスリ掛け、紫外線照射、コロナ処理、プラズマ処理、サンドブラスト処理、クロム酸混液処理等が挙げられるが、これらはいずれも表面改質としては不十分なものであった。
新規な表面改質方法として、特開2003−238710号公報(特許文献1)には、特定の沸点を有する改質剤化合物を含む燃料ガスの火炎を吹き付け処理することが提案されている。また、特開2003−326845号公報(特許文献2)では、ガラス基材に同処理を行い、紫外線硬化型有機接着剤を適用することが提案されている。更に、特開2006−159819号公報(特許文献3)では、各種基材に同処理を行い、付加硬化、有機過酸化物硬化型シリコーンゴム組成物を適用することが提案されている。しかし、湿気硬化型シリコーンゴム組成物に有効に適用する方法が望まれていた。
特開2003−238710号公報 特開2003−326845号公報 特開2006−159819号公報
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、湿気硬化型シリコーンゴム組成物の硬化物と基材とを強固に接着させる方法、及びこの方法により接着させた物品を提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、金属、樹脂等の基材表面で有機ケイ素化合物を燃焼させることにより表面にシラノール基を有する酸化ケイ素皮膜を形成し、この皮膜上に湿気硬化型シリコーンゴム組成物を塗布、硬化させることで、基材とシリコーンゴムとが強固に接着することを見出し、本発明をなすに至った。
従って、本発明は、下記に示すシリコーンゴムと基材との接着方法及び接着物品を提供する。
〔1〕 湿気硬化型シリコーンゴム組成物の硬化物と基材とを有機ケイ素化合物の燃焼により形成させた酸化ケイ素皮膜を介して接着させることを特徴とするシリコーンゴムと基材との接着方法。
〔2〕 基材が、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、及び金属から選ばれる材料から形成されているものである〔1〕記載の接着方法。
〔3〕 基材が、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンスルヒド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル系共重合体樹脂、又はステンレススチールから形成されているものである〔1〕記載の接着方法。
〔4〕 基材が、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、又はポリフェニレンスルヒド樹脂製のカバーであり、該カバーを湿気硬化型シリコーンゴム組成物の硬化物と上記酸化ケイ素皮膜を介して接着すると共に、該シリコーンゴム組成物の硬化物と金属製の筐体とを直接又は上記酸化ケイ素皮膜を介して接着することを特徴とする〔1〕記載の接着方法。
〔5〕 樹脂製カバー基材と金属筐体からなる成形体が、車載電子機器のケースである〔4〕記載の接着方法。
〔6〕 基材が、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、又はアクリル樹脂製の建築部材であり、これを酸化ケイ素皮膜を介して湿気硬化型シリコーンゴム組成物の硬化物と接着することを特徴とする〔1〕記載の接着方法。
〔7〕 湿気硬化型シリコーンゴム組成物が、
(A)下記式(1)及び/又は(2)で示されるオルガノポリシロキサン:100質量部
Figure 2009155358
(式中、Rはそれぞれ独立に、炭素数1〜20の非置換又は置換一価炭化水素基、R1は同一又は異種の炭素数1〜6のアルキル基又はアルコキシアルキル基、Xは酸素原子、又は炭素数1〜12のアルキレン基、mは0又は1、nは10以上の整数である。)
(B)下記式(3)で示される一分子中に少なくとも2個の加水分解性基を有するシラン及び/又はその部分加水分解縮合物:0.1〜30質量部
LSiY4-L (3)
(式中、Rは上記の通り、Yは加水分解性基、Lは0、1又は2である。)
(C)縮合反応触媒:有効量
(D)接着性向上剤:有効量
を必須成分とする液状又はペースト状の組成物であり、常温で空気中の湿気と反応してゴム状弾性体になるものである〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の接着方法。
〔8〕 湿気硬化型シリコーンゴム組成物の硬化物(シリコーンゴム)と基材とが、有機ケイ素化合物の燃焼により形成された酸化ケイ素皮膜を介して接着、一体化されてなるシリコーンゴムと基材とが接着した物品。
本発明の接着方法によれば、湿気硬化型シリコーンゴム組成物の硬化物と基材とが強固に接着した物品が得られ、この接着物品は、車載電子機器のケースシール、各種液状ガスケット等による自動車用部品接着・シール、建築用樹脂部材の接着防水シール、防水・保護コーティング、家電等の電気電子機器部品の接着シールなど、幅広い分野で有効に利用することができる。
本発明の湿気硬化型シリコーンゴム組成物の硬化物と基材との接着方法において、基材としては、金属、その他無機物質、有機樹脂が挙げられる。具体的に、金属としては、鉄、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、クロム、金、銀、銅、亜鉛、ステンレススチール等が挙げられ、無機物質としては、陶磁器、酸化アルミニウム、酸化チタン等が挙げられる。
また、有機樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれでもよく、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリフェニレンスルヒド(PPS)樹脂、ポリフェニレンオキサイド(PPO)樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル−スチレン(AS)樹脂、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体樹脂、ポリフッ化ビニル樹脂、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル系共重合体(PFA)樹脂、テトラフルオロエチレン−パーフルオロエーテル共重合体樹脂、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、エチレンポリトリフルオロクロロエチレン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、特に難接着な被着体であるポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、PC樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、PBT樹脂、PPS樹脂、PET樹脂、PFA樹脂や、ステンレススチール等への適用が有効である。なお、基材は、これら材料の1種からなるものでもよく、また2種以上の複数種から形成されたものでもよい。
これら基材と接着させるシリコーンゴムを形成するための湿気硬化型シリコーンゴム組成物としては、
(A)下記式(1)及び/又は(2)で示されるオルガノポリシロキサン:100質量部
Figure 2009155358
(式中、Rはそれぞれ独立に、炭素数1〜20の非置換又は置換一価炭化水素基、R1は同一又は異種の炭素数1〜6のアルキル基又はアルコキシアルキル基、Xは酸素原子、又は炭素数1〜12のアルキレン基、mは0又は1、nは10以上の整数である。)
(B)下記式(3)で示される一分子中に少なくとも2個の加水分解性基を有するシラン及び/又はその部分加水分解縮合物:0.1〜30質量部
LSiY4-L (3)
(式中、Rは上記の通り、Yは加水分解性基、Lは0、1又は2である。)
(C)縮合反応触媒:有効量
(D)接着性向上剤:有効量
を必須成分とする硬化前は液状又はペースト状の組成物であり、常温で空気中の湿気と反応してゴム状弾性体になるものが好適である。
(A)成分のオルガノポリシロキサンは、湿気硬化型シリコーンゴム組成物のベースポリマーであり、下記式(1)及び/又は(2)で示されるものである。
Figure 2009155358
(式中、Rはそれぞれ独立に、炭素数1〜20の非置換又は置換一価炭化水素基、R1は同一又は異種の炭素数1〜6のアルキル基又はアルコキシアルキル基、Xは酸素原子、又は炭素数1〜12のアルキレン基、mは0又は1、nは10以上の整数である。)
このオルガノポリシロキサンのケイ素原子に結合する有機基Rは、炭素数1〜20、好ましくは1〜12の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、具体的にはメチル、エチル、プロピル、ブチル、オクチル、デシル、ドデシル等のアルキル基などの脂肪族飽和炭化水素基、ビニル、アリル、プロペニル、ブテニル等のアルケニル基などの脂肪族不飽和炭化水素基、フェニル、キシリル等のアリール基、ベンジル等のアラルキル基、3,3,3−トリフルオロプロピル等のハロゲン置換、シアノ基置換炭化水素基などから選ばれる。R1は炭素数1〜6、好ましくは1〜3のアルキル基、アルコキシアルキル基であり、具体的にはメチル、エチル、プロピル、ブチル等のアルキル基、メトキシメチル、エトキシメチル、メトキシエチル、エトキシエチル等のアルコキシアルキル基が例示でき、好ましくはメチル基、エチル基である。Xは酸素原子、又は炭素数1〜12のメチレン、エチレン、プロピレン等のアルキレン基であり、好ましくは酸素原子又は炭素数2〜3のアルキレン基、更に好ましくは酸素原子又はエチレン基である。
上記オルガノポリシロキサンの回転粘度計により測定される25℃における粘度は10mPa・s〜1,000,000mPa・s、好ましくは100mPa・s〜500,000mPa・s、更に好ましくは300mPa・s〜200,000mPa・sであり、nは10以上の整数で、上記粘度範囲を満たす数値である。
(B)成分の加水分解性シラン及び/又はその部分加水分解縮合物は、湿気硬化型シリコーンゴム組成物の硬化剤であり、下記式(3)で示される一分子中に少なくとも2個の加水分解性基を有するシラン及び/又はその部分加水分解縮合物である。
LSiY4-L (3)
(式中、Rは上記の通り、Yは加水分解性基、Lは0、1又は2である。)
このシラン及び/又はその部分加水分解縮合物のケイ素原子に結合する有機基Rは、炭素数1〜20、好ましくは1〜12の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、具体的にはメチル、エチル、プロピル、ブチル、オクチル、デシル、ドデシル等のアルキル基などの脂肪族飽和炭化水素基、ビニル、アリル、プロペニル、ブテニル等のアルケニル基などの脂肪族不飽和炭化水素基、フェニル、キシリル等のアリール基、ベンジル等のアラルキル基、3,3,3−トリフルオロプロピル等のハロゲン置換、シアノ基置換炭化水素基などから選ばれる。好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、デシル基、ビニル基、フェニル基である。Yは加水分解性基であり、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基、メチルエチルケトオキシム基、メチルイソブチルケトオキシム基等のオキシム基、イソプロペノキシ基等のアルケノキシ基、アセトキシ基等のアシル基等が好適に使用される。
具体的には、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン等のアルコキシシラン、ジビニルテトラメトキシジシロキサン、トリメチルペンタメトキシトリシロキサン等のアルコキシシロキサン、テトラメチルエチルケトオキシムシラン、メチルトリメチルエチルケトオキシムシラン、ビニルトリメチルエチルケトオキシムシラン、テトラメチルイソブチルケトオキシムシラン、ビニルトリメチルイソブチルケトオキシムシラン等のオキシムシラン、メチルトリイソプロペノキシシラン、ビニルトリイソプロペノキシシラン、フェニルトリイソプロペノキシシラン等のイソプロペノキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン等のアセトキシシラン等が例示される。
(B)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して0.1〜30質量部が好ましく、より好ましくは0.5〜20質量部、更に好ましくは1〜15質量部である。0.1質量部未満では組成物の保存安定性が低下する場合があり、30質量部を超える量では機械的強度が低下する場合がある。
(C)成分の縮合反応触媒は、湿気硬化型シリコーンゴム組成物の硬化触媒である。本縮合反応触媒は、当業界で公知の触媒を使用することができる。具体的には、ジメチルスズジネオデカノエート、ジブチルスズジオクトエート、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズジオクトエート、ジオクチルスズジネオデカノエート等のジアルキルスズジエステル化合物、スズジオクトエート等のスズジエステル化合物、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタン等のチタン酸エステル、ジイソプロポキシビスアセチルアセトナト、ジイソプロポキシビスエチルアセトアセテート等のチタンキレート化合物、テトラメチルグアニジルプロピルトリメトキシシラン等のシラン化合物等が例示される。
(C)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して有効量でよいが、好ましくは0.01〜20質量部、より好ましくは0.02〜10質量部、更に好ましくは0.03〜5質量部である。0.01質量部未満では組成物の硬化性が低下する場合があり、20質量部を超える量では組成物の安定性が低下する場合がある。
(D)成分の接着性向上剤は、湿気硬化型シリコーンゴム組成物に接着性を付与する成分である。本接着性向上剤は、各種のシランカップリング剤が好適に用いられ、当業界で公知の化合物を使用することができる。具体的には、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、エチレンジアミノプロピルトリメトキシシラン、エチレンジアミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、クロロプロピルトリメトキシシラン等が例示される。
(D)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して有効量でよいが、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは0.3〜5質量部、更に好ましくは0.5〜3質量部である。0.1質量部未満では組成物の接着性が発現しない場合があり、10質量部を超える量では組成物の安定性が低下する場合があり、コスト的に不利になる。
上述した成分の他、本発明のシリコーンゴム組成物には、ヒュームドシリカ、沈降シリカ、カーボンブラック等の補強性充填剤、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、酸化亜鉛等の塩基性充填剤、珪藻土、石英粉末、溶融石英粉末、クレー、アルミナ、タルク等の無機充填剤、両末端がトリメチルシリル基で封鎖されたジメチルポリシロキサン、イソパラフィン等の可塑剤、ポリエーテル等のチクソ性付与剤、ベンガラ、酸化チタン、酸化セリウム、酸化マグネシウム等の耐熱、耐油向上剤、群青等の着色顔料、アゾ系等の染料、そのほか通常のシリコーンゴム組成物に添加される添加剤を用途等に応じて適宜配合することができる。
本発明においては、各種基材と上記湿気硬化型シリコーンゴム組成物の硬化物であるシリコーンゴムとを有機ケイ素化合物の燃焼により形成された酸化ケイ素皮膜を介して接着するもので、この場合、酸化ケイ素皮膜の形成は、好適には基材の表面に有機ケイ素化合物を含む燃料ガスの火炎で吹き付け処理することにより、基材表面の改質を行う方法が挙げられ、この酸化ケイ素皮膜上に上記湿気硬化型シリコーンゴム組成物を塗布、硬化することにより、シリコーンゴムと基材とが一体化されてなる接着物品を得ることができる。
このような有機ケイ素化合物としては、テトラメチルシラン、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、テトラメトキシシラン、トリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン等が挙げられる。なお、これら有機ケイ素化合物に加え、火炎のコントロールを容易にするためにプロパンガスや天然ガス等の炭化水素ガス、水素、酸素、空気等の引火性ガスを混合してもよい。
上記燃焼ガスの火炎を基材表面に吹き付ける時間としては、0.1〜50秒の範囲が好ましく、より好ましくは0.3〜30秒の範囲である。0.1秒未満では、表面処理が不十分かつ不均一となる場合があり、50秒を超えると、表面改質する基材にダメージを与えてしまうおそれがある。この場合、形成される酸化ケイ素皮膜の厚さは、表面の分子官能基に変化が生じる程度であれば特に制限はなく、通常10μm以下(例えば0.001〜10μm、特に0.002〜5μm程度)の皮膜で十分であり、10μmを超えるような厚い皮膜を形成する必要はない。なお、上記表面の分子官能基は、基材によっても異なるが、水酸基、アルコキシ基、カルボニル基、アミノ基等が挙げられ、生成する酸化ケイ素皮膜表面には、主として水酸基が生成する。
このようなケイ素化合物の燃焼による表面改質方法としては、特に特開2003−238710号公報で開示されているような方法が効果的である。
上記シリコーンゴム組成物の塗布方法としては、酸化ケイ素皮膜が形成された基材表面にシリコーンゴム組成物をビート状に塗布して他基材と貼り合わせる、酸化ケイ素皮膜が形成された目地にシリコーンゴム組成物を充填塗布してから表面をツーリングする、酸化ケイ素皮膜が形成された基材表面にシリコーンゴム組成物を刷毛塗り、浸漬して取り出し、スプレー等によるコーティング等が挙げられる。
また、シリコーンゴム組成物の塗布厚みは、一般にビート塗布では0.5〜5mmφのノズルからシリコーンゴム組成物をビート状に押し出し、他基材と貼り合わせて押しつけるため、密着と表現される20〜100μm厚さから、それ以上の塗布厚さが確保される。また、シーリングと称される目地充填では目地設計にもよるが通常幅3〜20mmのシール材塗布幅を取ることが多い。但し、湿気硬化性の材料のため深部硬化には時間を要する点に注意が必要である。実用的に使用される目地深さは20mm以下である。
シリコーンゴム組成物の硬化条件としては、接着部分の形状にもよるが通常、常温常湿(5〜40℃,20〜80%RH)で1〜7日間放置することで十分である。湿気硬化性のため低温低湿では硬化が遅れ、高温高湿では硬化が早まるが、極端な高温高湿では硬化前の組成物が変質するおそれがある。加温は80℃、加湿は90%RHを上限とすることが望ましい。なお、JISで決められた環境条件は23℃,50%RHである。
本発明のシリコーンゴムと基材との接着方法は、既存の湿気硬化性シリコーンゴム組成物による金属、樹脂の接着のほぼすべての用途に適用可能であり、これにより得られる接着物品は、特に車載電子機器のケースシール、各種液状ガスケット等による自動車用部品接着・シール、建築用樹脂部材の接着防水シール、防水・保護コーティング、家電等の電気電子機器部品の接着シール等に好適である。
車載電子機器は、120℃を超える高温に晒されるため、ポリアミド樹脂、PBT樹脂、PPS樹脂のような耐熱性を有する樹脂が多く用いられる。近年では、ポリエチレン、ポリプロピレン等の部材も使用されつつある。耐熱性の良いシリコーンゴムが好適に使用される用途であるが、これらの樹脂は接着に係わる表面官能基が少ないため自己接着性の付与は困難であった。これらの樹脂からなるケースカバーを有機シラン化合物の燃焼による表面処理後、湿気硬化型シリコーンゴム組成物の硬化物によりアルミダイカスト等の金属製の筐体に接着することで、防水性、密封性に優れた車載電子機器を搭載するケースを得ることができる。
この場合、上記樹脂製ケースカバーの上記筐体に対向する表面上には酸化ケイ素皮膜を形成し、これに湿気硬化型シリコーンゴム組成物層を形成し、これを硬化させることにより、上記樹脂製ケースカバーに上記シリコーンゴム組成物の硬化物(シリコーンゴム)を強固に接着させることができる。一方、金属製筐体とシリコーンゴム組成物の硬化物との接着も、より好ましくは上記酸化ケイ素皮膜を介することが更に有効であるが、金属あるいは金属表面によっては、シリコーンゴム組成物の硬化物と直接強固に接着する場合があり、このような場合は、上記酸化ケイ素皮膜を介することなく接合する。なお、このように直接シリコーンゴム組成物が接合し得る金属としては、アルミニウム、銅等が挙げられ、特に表面に強固な酸化皮膜、窒化皮膜、硫化物皮膜等が形成されている場合にシリコーンゴム組成物の硬化物と直接接合し得る。この点で、金属製筐体の上記ケースカバーと対向する表面にその金属の酸化物皮膜等を予め形成しておくことができる。
なお、上記樹脂製ケースカバーと金属製筐体との間に湿気硬化型シリコーンゴム組成物を介在させてこれらを互いに接着させる場合は、上述したように、上記樹脂製ケースカバーの上記筐体に対向する表面上に酸化ケイ素皮膜を形成する一方、上記金属製筐体のケースカバーと対向する表面に酸化ケイ素皮膜を形成し、これら両酸化ケイ素皮膜間に湿気硬化型シリコーンゴム組成物を介在させ、これを硬化させることがより推奨される。
建築用部材では、意匠性、防水性の観点から任意に着色、表面処理したポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂などの樹脂部材が用いられる。耐侯性の良いシリコーンゴムが好適に使用される用途であり、同様に樹脂表面を有機シラン化合物の燃焼による表面処理後、湿気硬化型シリコーンゴム組成物の硬化物によりシールすることで、防水性、防水耐久性に優れた建築物構造体を得ることができる。
家電等では、給湯器、炊飯器、電子レンジ、スチームオーブンレンジ等の高温に晒される用途がある。耐熱性、意匠性の面から樹脂部材が用いられる。また、これらの家電は食品と接触する可能性も多い。耐熱性、密封性に加えて安全性に優れるシリコーンゴムが好適に使用される用途である。同様に樹脂表面を有機シラン化合物の燃焼による表面処理後、湿気硬化型シリコーンゴム組成物の硬化物によりシールすることで、耐熱性、密封性、安全性に優れた家電機器を得ることができる。
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において、粘度はB型回転粘度計により測定した25℃における値を示す。
[実施例及び比較例]
下記に示すように組成物1〜5を調製し、接着性試験を行った。
[組成物1]
両末端に水酸基を有する粘度20,000mPa・sのジメチルポリシロキサン100質量部、両末端にトリメチルシリル基を有する粘度100mPa・sのジメチルポリシロキサン20質量部、表面をジメチルジクロロシランで処理したBET法による比表面積130m2/gの煙霧質シリカ10質量部を減圧下で混練りした。次いで、混合物にメチルトリメチルエチルケトオキシムシラン2質量部、ビニルトリメチルエチルケトオキシムシラン3質量部、ジオクチルスズジラウレート0.1質量部、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン0.6質量部を添加し、減圧下で混合して組成物1を得た。
[組成物2]
両末端に水酸基を有する粘度50,000mPa・sのジメチルポリシロキサン100質量部、両末端にトリメチルシリル基を有する粘度100mPa・sのジメチルポリシロキサン15質量部、表面をロジン酸で処理したコロイダル炭酸カルシウム60質量部を減圧下で混練りした。次いで、混合物にメチルトリメチルエチルケトオキシムシラン4質量部、ビニルトリメチルエチルケトオキシムシラン1質量部、ジオクチルスズジラウレート0.1質量部、エチレンジアミノプロピルトリメトキシシラン1質量部を添加し、減圧下で混合して組成物2を得た。
[組成物3]
両末端に水酸基を有する粘度20,000mPa・sのジメチルポリシロキサン100質量部、両末端にトリメチルシリル基を有する粘度100mPa・sのジメチルポリシロキサン20質量部、表面をジメチルジクロロシランで処理したBET法による比表面積130m2/gの煙霧質シリカ10質量部を減圧下で混練りした。次いで、混合物にビニルトリイソプロペノキシシラン6質量部、テトラメチルグアニジルプロピルトリメトキシシラン0.7質量部、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン1質量部を添加し、減圧下で混合して組成物3を得た。
[組成物4]
両末端に酸素原子を介してトリメトキシシリル基を有する粘度60,000mPa・sのジメチルポリシロキサン100質量部、両末端にトリメチルシリル基を有する粘度500mPa・sのジメチルポリシロキサン100質量部、表面をロジン酸で処理したコロイダル炭酸カルシウム100質量部、表面無処理の重質炭酸カルシウム100質量部を減圧下で混練りした。次いで、混合物にメチルトリメトキシシラン5質量部、デシルトリメトキシシラン2質量部、ジイソプロポキシビスエチルアセトアセテート2質量部、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン1質量部を添加し、減圧下で混合して組成物4を得た。
[組成物5]
両末端にエチレン基を介してトリメトキシシリル基を有する粘度30,000mPa・sのジメチルポリシロキサン100質量部、両末端にトリメチルシリル基を有する粘度5,000mPa・sのジメチルポリシロキサン100質量部、表面をロジン酸で処理したコロイダル炭酸カルシウム100質量部、表面無処理の重質炭酸カルシウム100質量部を減圧下で混練りした。次いで、混合物にビニルトリメトキシシラン5質量部、デシルトリメトキシシラン2質量部、ジイソプロポキシビスエチルアセトアセテート2質量部、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン1質量部を添加し、減圧下で混合して組成物5を得た。
[接着性試験]
ポリアミド樹脂、PET樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ステンレススチール製テストピース(市販品、長さ50mm×幅25mm)について、テトラメチルシラン、テトラメトキシシランと空気の混合ガス(モル比=0.00001:0.000001:1、即ち、テトラメチルシランを0.001モル%、テトラメトキシシランを0.0001モル%濃度で含有する空気混合ガス)を基材(テストピース)表面上でガス流量:1m3/hrで約0.5秒間燃焼処理を実施した。
この表面処理された基材の先端25mm×10mm以外の部分をテフロン(登録商標)テープでシールした。このテストピース上に上記組成物を硬化後の厚さが2mmとなるように塗布し、23℃,50%RHで3日間硬化させてテストピースを作製し、これについて接着性を確認した。接着性試験は、ゴムと基材を引っ張る180度ピール試験によって行い、ゴム破壊100%を○、ゴム破壊と界面剥離混在を△、界面剥離100%を×とした。比較例として、燃焼処理を実施せずに同様の接着性試験を実施した。結果を表1に示す。
Figure 2009155358

Claims (8)

  1. 湿気硬化型シリコーンゴム組成物の硬化物と基材とを有機ケイ素化合物の燃焼により形成させた酸化ケイ素皮膜を介して接着させることを特徴とするシリコーンゴムと基材との接着方法。
  2. 基材が、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、及び金属から選ばれる材料から形成されているものである請求項1記載の接着方法。
  3. 基材が、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンスルヒド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル系共重合体樹脂、又はステンレススチールから形成されているものである請求項1記載の接着方法。
  4. 基材が、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、又はポリフェニレンスルヒド樹脂製のカバーであり、該カバーを湿気硬化型シリコーンゴム組成物の硬化物と上記酸化ケイ素皮膜を介して接着すると共に、該シリコーンゴム組成物の硬化物と金属製の筐体とを直接又は上記酸化ケイ素皮膜を介して接着することを特徴とする請求項1記載の接着方法。
  5. 樹脂製カバー基材と金属筐体からなる成形体が、車載電子機器のケースである請求項4記載の接着方法。
  6. 基材が、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、又はアクリル樹脂製の建築部材であり、これを酸化ケイ素皮膜を介して湿気硬化型シリコーンゴム組成物の硬化物と接着することを特徴とする請求項1記載の接着方法。
  7. 湿気硬化型シリコーンゴム組成物が、
    (A)下記式(1)及び/又は(2)で示されるオルガノポリシロキサン:100質量部
    Figure 2009155358
    (式中、Rはそれぞれ独立に、炭素数1〜20の非置換又は置換一価炭化水素基、R1は同一又は異種の炭素数1〜6のアルキル基又はアルコキシアルキル基、Xは酸素原子、又は炭素数1〜12のアルキレン基、mは0又は1、nは10以上の整数である。)
    (B)下記式(3)で示される一分子中に少なくとも2個の加水分解性基を有するシラン及び/又はその部分加水分解縮合物:0.1〜30質量部
    LSiY4-L (3)
    (式中、Rは上記の通り、Yは加水分解性基、Lは0、1又は2である。)
    (C)縮合反応触媒:有効量
    (D)接着性向上剤:有効量
    を必須成分とする液状又はペースト状の組成物であり、常温で空気中の湿気と反応してゴム状弾性体になるものである請求項1〜6のいずれか1項記載の接着方法。
  8. 湿気硬化型シリコーンゴム組成物の硬化物(シリコーンゴム)と基材とが、有機ケイ素化合物の燃焼により形成された酸化ケイ素皮膜を介して接着、一体化されてなるシリコーンゴムと基材とが接着した物品。
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