JP2009140756A - 電解質膜または膜電極接合体の製造方法および燃料電池の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】加水分解処理によりプロトン伝導性を発揮する電解質前駆体樹脂を用いる電解質膜または膜電極接合体を備えた燃料電池の製造方法において、撥水性の高い部材が存在する場合であっても、電解質前駆体樹脂の加水分解処理を短時間で行えるようにする。
【解決手段】例えば膜電極接合体4aの電解質膜1aを形成することとなる電解質前駆体樹脂に予めアルカリ金属水酸化物17を混合しておくか、塗布した電解質前駆体樹脂の上に配置しておく。その状態で、セパレータ6のガス流路5に過熱水蒸気を供与する。加熱水蒸気はガス体であり、撥水性を持つ拡散層3を容易に通過して膜電極接合体前駆体4に到達し、膜電極接合体前駆体4内で凝縮して局所的に高温高濃度のアルカリ水溶液を生成する。そのアルカリ水溶液により電解質前駆体樹脂の加水分解処理が迅速に進行する。
【選択図】図1
【解決手段】例えば膜電極接合体4aの電解質膜1aを形成することとなる電解質前駆体樹脂に予めアルカリ金属水酸化物17を混合しておくか、塗布した電解質前駆体樹脂の上に配置しておく。その状態で、セパレータ6のガス流路5に過熱水蒸気を供与する。加熱水蒸気はガス体であり、撥水性を持つ拡散層3を容易に通過して膜電極接合体前駆体4に到達し、膜電極接合体前駆体4内で凝縮して局所的に高温高濃度のアルカリ水溶液を生成する。そのアルカリ水溶液により電解質前駆体樹脂の加水分解処理が迅速に進行する。
【選択図】図1
Description
本発明は、固体高分子型燃料電池で用いる電解質膜または膜電極接合体の製造方法と、固体高分子型燃料電池の製造方法に関する。
燃料電池の一形態として固体高分子型燃料電池が知られている。固体高分子型燃料電池は他の形態の燃料電池と比較して作動温度が低く(−30℃〜100℃程度)、低コスト、コンパクト化が可能なことから、自動車の動力源等として期待されている。
図5に示すように、固体高分子型燃料電池は、膜電極接合体(MEA)4を主要な構成要素とし、それをガス流路5を備えたセパレータ6,6で挟持することにより、単セルと呼ばれる1つの燃料電池10を形成している。膜電極接合体4aは、イオン交換膜である固体電解質樹脂膜1aの両面にアノード側およびカソード側触媒層2,2を積層した構造を持つ。触媒層2は、電解質樹脂と触媒担持導電体とを含む触媒混合物で形成される。触媒には主に白金系の金属が用いられ、該触媒を担持する導電体にはカーボン粉末が主に用いられる。通常、触媒層2の外面にカーボンペーパーまたはカーボンクロス等からなる拡散層3,3が形成され、触媒層2と拡散層3とを合わせて電極と呼ぶ場合もある。
電解質膜と触媒層の積層は、例えば、シート状に作成した触媒層と電解質膜とを積層し、それを熱圧プレスすることにより行われる。しかし、一般的に用いられている電解質樹脂であるH型電解質樹脂(プロトン伝導性を持つ)は、耐熱性が充分でなく熱劣化することから、100℃前後の温度で熱圧プレスするようにしており、電解質膜と触媒層との間に充分な結合力が得られない不都合がある。
電解質膜用の樹脂および触媒層を形成する樹脂として、電解質前駆体樹脂を用いる場合がある。電解質前駆体樹脂はF型電解質樹脂と通称されており、そのままでは側鎖末端がF型でありプロトン伝導性を備えないが、加水分解処理により側鎖末端をF型からH型に変換することでプロトン伝導性が付与される。
F型電解質樹脂は、H型電解質樹脂と比較して熱的安定性に優れており、高い温度での熱圧プレス等が可能なことから、発電性能および耐久性に優れた膜電極接合体が得られる。電解質前駆体樹脂と触媒層との積層体である膜電極接合体前駆体を作り、それに加水分解処理を施して膜電極接合体とすることもすでに提案されており、例えば、特許文献1には、電解質前駆体樹脂膜と触媒層との間に熱可塑性薄膜を有する積層体を熱圧プレスにより一体化した後に、その積層体をアルカリ水溶液に浸漬して加水分解処理を施し、電解質前駆体樹脂膜をイオン伝導性を備えた電解質膜とする電極接合体の製造方法が記載されている。
また、膜電極接合体を連続して製造する方法も提案されており、特許文献2には、一方のロールから巻き出されて他方のロールに向けて送られる帯状の電解質膜に、その長手方向に触媒層および拡散層を熱転写等によって連続的に形成することにより、帯状の電解質膜を繋ぎ材として、多数個の膜電極接合体を連続的に製造することが記載されている。
さらに、延伸したPTFE薄膜等である帯状の多孔質補強膜を連続して送る途中において、溶融した電解質前駆体樹脂を加圧含浸し、加圧含浸した電解質前駆体樹脂に加水分解処理を施してプロトン伝導性を付与した後、形成された補強膜型電解質膜を巻き取るようにした補強膜型電解質膜の連続製造方法も知られている(特許文献3等参照)。
従来の、電解質前駆体樹脂(F型電解質樹脂)を用いる電解質膜または膜電極接合体の製造方法において、電解質膜を構成する電解質前駆体樹脂、または触媒層において触媒担持導電体とともに添加される電解質前駆体樹脂に対する加水分解処理は、電解質膜前駆体あるいは膜電極接合体前駆体をアルカリ水溶液中に浸漬して行うようにしており、電解質前駆体樹脂は撥水性であることから、その処理に長い時間を要している。電解質膜前駆体がPTFE薄膜のような多孔質補強膜を備えた補強膜型電解質膜前駆体の場合、さらには、膜電極接合体前駆体が拡散層を備えた膜電極接合体前駆体の場合、多孔質補強膜や拡散層も撥水性を備えることから、アルカリ水溶液の内部への浸透速度がさらに遅くなり、加水分解処理に要する時間は、さらに長くなっている。
前記したように、帯状の電解質膜に対して一連の連続した処理を施して膜電極接合体を連続製造することが行われるが、電解質樹脂として電解質前駆体樹脂を用いる場合に、長い処理時間を要する加水分解処理工程が全体を律速することとなり、連続製造の利点が十分に発揮されているとはいえない。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、加水分解処理によりプロトン伝導性を発揮する電解質前駆体樹脂を用いる電解質膜または膜電極接合体の製造方法において、撥水性の高い部材が存在する場合であっても、電解質前駆体樹脂の加水分解処理を短時間で行えるようにすることを課題とする。
また、加水分解処理によりプロトン伝導性を発揮する電解質前駆体樹脂を用いる電解質膜または膜電極接合体を備えた燃料電池の製造方法において、撥水性の高い部材が存在する場合であっても、電解質前駆体樹脂の加水分解処理を短時間で行えるようにすることを課題とする。
本発明者らは、燃料電池を構成する電解質膜や膜電極接合体で用いられる撥水性材料は、水あるいは水溶液に対しては高い撥水性を示すが、ガス体である水蒸気は容易に通過できることに着目して、本発明をなすに至った。
すなわち、本発明による電解質膜または膜電極接合体の製造方法は、少なくとも電解質膜用樹脂として加水分解処理によりプロトン伝導性を発揮する電解質前駆体樹脂を用いる電解質膜または膜電極接合体の製造方法であって、前記電解質前駆体樹脂に予めアルカリ金属水酸化物を混合または配置する工程と、アルカリ金属水酸化物を混合または配置した電解質前駆体樹脂に過熱水蒸気を供与して電解質前駆体樹脂の加水分解処理を進行させてプロトン伝導性を付与する工程とを少なくとも含むことを特徴とする。
本発明では、電解質前駆体樹脂に対して供与された過熱水蒸気が凝縮し、凝縮した水が予め混合または配置したアルカリ金属水酸化物を溶解し、局所的に高温かつ高濃度のアルカリ水溶液を発生させる。発生したアルカリ水溶液によって電解質前駆体樹脂に対する加水分解処理が進行する。加水分解処理をうける電解質前駆体樹脂は、電解質膜前駆体を構成する電解質前駆体樹脂であってもよく、膜電極接合体前駆体の触媒層を構成する電解質前駆体樹脂であってもよい。双方の電解質前駆体樹脂であってもよい。撥水性材料を備える電解質前駆体樹脂あるいは膜電極接合体前駆体であっても、過熱水蒸気は撥水性材料を容易に通過できるので、前記の加水分解処理は迅速に進行する。
本発明による電解質膜または膜電極接合体の製造方法の一態様では、前記電解質前駆体樹脂は、前記電解質前駆体樹脂を多孔質補強膜に一体化した補強膜型電解質膜前駆体における電解質前駆体樹脂を含むことを特徴とする。補強膜型電解質膜における多孔質膜は、延伸PTFE樹脂等の撥水性の高い材料で作られるのが通常であり、その場合でも、本発明によれば、電解質前駆体樹脂に対する加水分解処理は迅速に進行する。
また、本発明による膜電極接合体の製造方法の一態様では、拡散層を備えかつ加水分解処理が未処理の状態の膜電極接合体に対して前記過熱水蒸気の供与を行うようにする。膜電極接合体で用いられる拡散層は、撥水性の高い材料で作られるのが通常であるが、前記のように、過熱水蒸気は撥水性の高い拡散層を容易に通過できるので、膜電極接合体前駆体を構成する電解質前駆体樹脂に対する加熱分解処理は迅速に進行する。
本発明による膜電極接合体の製造方法の一態様では、前記過熱水蒸気の供与を加水分解処理が未処理の状態の膜電極接合体の一方の面に対してのみ行い、他方の面に対しては温水の供与を行うようにする。この態様では、双方の面に過熱水蒸気を供与する態様と比較して、膜電極接合体の上下面方向により大きな温度勾配が形成される。それにより、ケルビン凝縮による凝縮水を膜電極接合体内により多く生成させることができ、加水分解処理反応の更なる高速化が図られる。
本発明は、さらに、上記の膜電極接合体の製造方法を用いた燃料電池を製造する方法であって、前記拡散層を備えかつ加水分解処理が未処理の状態の膜電極接合体の両側にセパレータを取り付けて燃料電池セルを作成し、該燃料電池セルのガス流路に過熱水蒸気を供給して前記電解質前駆体樹脂に対する加水分解処理を進行させる工程を少なくとも含むことを特徴とする燃料電池の製造方法を開示する。
さらに、前記拡散層を備えかつ加水分解処理が未処理の状態の膜電極接合体の両側にセパレータを取り付けて燃料電池セルを作成し、該燃料電池セルの一方の面におけるガス流路に過熱水蒸気を供給し、他方の面におけるガス流路に温水を供給して、前記電解質前駆体樹脂に対する加水分解処理を進行させる工程を少なくとも含むことを特徴とする燃料電池の製造方法をも開示する。
上記の製造方法を採用することにより、少なくとも電解質膜用樹脂として加水分解処理によりプロトン伝導性を発揮する電解質前駆体樹脂を用いる電解質膜または膜電極接合体を持つ燃料電池の製造時間を短縮することができる。そのために、帯状の電解質膜に対して一連の連続した処理を施して膜電極接合体を連続製造する製造態様において、電解質樹脂として電解質前駆体樹脂(F型電解質樹脂)を用いる場合であっても、加水分解処理に要する時間に律速されることなく、短時間での燃料電池の製造が可能となる。
なお、本発明において「加水分解処理」とは、電解質前駆体樹脂における末端基、例えば、−SO2Fを−SO3Naあるいは−SO3Kに置換するアルカリ処理と、置換された−SO3Na末端基あるいは−SO3K末端基をさらに−SO3Hに置換する酸処理の双方を含むものとして用いている。従って、前記酸処理するときに供与する過熱水蒸気には酸ガス(HCl等)が混合される。また、「アルカリ金属水酸化物」には、NaOH,KOH等が例として挙げられる。
本発明によれば、加水分解処理によりプロトン伝導性を発揮する電解質前駆体樹脂を用いる電解質膜、膜電極接合体および燃料電池の製造方法において、部材の一部に撥水性の高い部材が存在する場合であっても、電解質前駆体樹脂の加水分解処理に要する時間を短縮することができ、生産性の向上およびコスト低減が可能となる。
以下、図面を参照して、本発明をより具体的に説明する。図1および図2は、本発明の方法により燃料電池を製造する第1および第2の態様を説明するための図である。図3は本発明の方法により膜電極接合体を製造する一態様を説明する図であり、図4は本発明の方法により電解質膜を製造する一態様を説明する図である。
[第1の態様]
この態様では、拡散層を備えかつ加水分解処理が未処理の状態の膜電極接合体の両側にセパレータを取り付けて燃料電池の単セルとし、その複数個を一体に組み付けたスタックに対して、本発明による処理を施して、燃料電池とする。
この態様では、拡散層を備えかつ加水分解処理が未処理の状態の膜電極接合体の両側にセパレータを取り付けて燃料電池の単セルとし、その複数個を一体に組み付けたスタックに対して、本発明による処理を施して、燃料電池とする。
すなわち、図1(b)に示すように、補強膜としての延伸PTFE膜に、溶融した電解質前駆体樹脂(以下、「F型電解質樹脂」という)を含浸させて、あるいはF型電解質樹脂層を熱プレスして一体化して、補強膜型電解質膜前駆体1を形成し、その両側に、F型電解質樹脂と触媒担持導電体とを含む触媒混合物からなる触媒層2,2が形成され、その外側面にカーボンペーパーまたはカーボンクロス等からなる拡散層3,3が積層されて、膜電極接合体前駆体4とされている。
前記F型電解質樹脂にはNaOHあるいはKOHのようなアルカリ金属水酸化物が混合されている。補強膜型電解質膜前駆体1の場合に、アルカリ金属水酸化物が混合したF型電解質樹脂を用いるのではなく、F型電解質樹脂を用いて補強膜型電解質膜前駆体1を作った後に、その上や周囲にアルカリ金属水酸化物を配置した構成でもよい。
前記膜電極接合体前駆体4は、ガス流路5を備えたセパレータ6,6で挟持されて1つの単セル10とされ、その複数個が一体に組み付けられて図1(a)に示す燃料電池スタック20とされている。
図1(a)に示すように、本発明の方法を実施するための装置30は、この例では、水蒸気発生装置31,有機溶媒ガス発生装置32、および酸ガス発生装置33を有し、各装置31,32,33から供給されるガスは、混合過熱部34において、選択的に混合されて、前記スタック20のアノード側ガス流路とカソード側ガス流路に送られる。
上記の装置を用いての処理手順を説明する。最初に電解質前駆体樹脂に対するアルカリ処理を行う。過熱水蒸気発生装置31からの過熱水蒸気と有機溶媒ガス発生装置32からの有機溶媒ガス(沸点の低いエタノールガスが好適である)の混合ガスを混合過熱部34で120℃程度に過熱し、それを前記スタック20のアノード側ガス流路とカソード側ガス流路に送給する。それにより、過熱混合ガスは図1(b)に示す単セル10の2つのセパレータ6,6のガス流路5,5内に流入する。なお、有機溶媒ガス(エタノールガス)は、その界面活性作用により、撥水性のF型電解質樹脂に後記するアルカリ水溶液が浸透し易くするために混合するが、省略することもできる。
ガス流路5,5内に流入した過熱混合ガスは、一部はセパレータ6の流路壁等に凝縮するが、一部は概して撥水性である拡散層3を通り抜けて、膜電極接合体の触媒層2および補強膜型電解質膜前駆体1にまで達する。そして、過熱混合ガスは、触媒層2および補強膜型電解質膜前駆体1で冷却を受け凝縮する。図1(c)に示すように、一般的に、親水性かつ細孔径が小さいほど過熱水蒸気は凝縮し易いので、拡散層3においてよりも、触媒層2および電解質膜1aにおいて優先的に凝縮する。なお、図1(c)では、凝縮物11を水溜まりのように描いているが、実際は、触媒層2および電解質膜1aの細孔に浸潤している。
凝縮した水とエタノールは予め混合あるいは配置してあるアルカリ金属水酸化物を溶解し、局所的に高温高濃度のNaOH/エタノール/水溶液を発生させる。その結果、補強膜型電解質膜前駆体1および触媒層2内のF型電解質樹脂に以下の反応が起こり、電解質膜前駆体の末端基が−SO3Naに変化する。
−SO3F + 2NaOH → −SO3Na + NaF +H2O
−SO3F + 2NaOH → −SO3Na + NaF +H2O
アルカリ処理の終了後、洗浄処理を行う。洗浄処理は、混合部34を操作して、有機溶媒ガスの供給を停止し、過熱水蒸気の供給のみを継続する。それにより、純水のみが凝縮し、その流出(セパレータ6のガス流路5から容易に流出する)により、NaOH残留物、エタノールおよび反応生成物であるNaFが排出される。
次に、酸処理を行う。酸処理は、混合過熱部34を操作して、水蒸気発生装置31からの過熱水蒸気と酸ガス発生装置33からのHClの混合ガスを混合過熱部34で120℃程度に過熱し、それを前記スタック20のアノード側ガス流路とカソード側ガス流路に送給する。それにより、過熱水蒸気とHClの過熱混合ガスは単セル10の2つのセパレータ6,6のガス流路5,5内に流入する。
ガス流路5,5内に流入した過熱水蒸気とHClの過熱混合ガスは、拡散層3を通り抜けて、膜電極接合体前駆体4の触媒層2および補強膜型電解質膜前駆体1にまで達し、水蒸気は凝縮水となる。そして、凝縮水中にHClが溶けて局所的に高温高濃度のHCl水溶液が発生する。その結果、補強膜型電解質膜前駆体1および触媒層2内で以下の反応が起こり、前記した末端基が−SO3Hが変換され、電解質前駆体はプロトン伝導性を得て、電解質樹脂となる。
−SO3Na + HCl → −SO3H +NaCl
−SO3Na + HCl → −SO3H +NaCl
その後、最終洗浄を行う。最終洗浄は、混合過熱部34を操作して、HClの供給を止め、過熱水蒸気の供給のみを継続する。それにより、純水のみが凝縮し、その流出により、HCl在留物および反応生成物であるNaClが排出される。
上記のように、本発明によるアルカリ金属水酸化物と過熱水蒸気を用いた処理方法を採用することにより、本来撥水性であるF型電解質樹脂の加水分解処理は、撥水性である拡散層3や多孔質補強膜が存在していても、アルカリ水溶液を使用する場合と比較して、迅速に進行する。
[第2の態様]
この態様は、図1に示した第1の態様と、水加熱装置35を設けた点、および混合過熱部34からの過熱混合ガスは前記スタック20のアノード側ガス流路とカソード側ガス流路のいずれか一方にのみ送られ、前記水加熱装置35からの温水はアノード側ガス流路とカソード側ガス流路の他方にのみ送られる点で、相違する。図示の例では、混合過熱部34からの過熱混合ガスがアノード側ガス流路に送られ、水加熱装置35からの温水はカソード側ガス流路に送られるが、逆であってもよい。
この態様は、図1に示した第1の態様と、水加熱装置35を設けた点、および混合過熱部34からの過熱混合ガスは前記スタック20のアノード側ガス流路とカソード側ガス流路のいずれか一方にのみ送られ、前記水加熱装置35からの温水はアノード側ガス流路とカソード側ガス流路の他方にのみ送られる点で、相違する。図示の例では、混合過熱部34からの過熱混合ガスがアノード側ガス流路に送られ、水加熱装置35からの温水はカソード側ガス流路に送られるが、逆であってもよい。
この装置を用いての処理手順は、処理期間中、一方のガス流路(この例ではカソード側ガス流路)に、水加熱装置35で80℃程度に加熱された温水を送給し続けること、および、混合過熱部34からの120℃程度に過熱された過熱ガスは他方のガス流路(この例ではアノード側ガス流路)にのみ送給されること、を除いて、前記第1の態様の場合と同じである。従って、図1で説明した部材と同じ部材には、図2において、図1と同じ符号を付して説明は省略する。
第2の態様では、図2(b)に示されるように、膜電極接合体前駆体4を構成していアノード側触媒層2と電解質膜前駆体1とカソード側触媒層2との間に、温度勾配が生じる。すなわち、アノード側には120℃程度に過熱された過熱ガスが供給され、カソード側には80℃程度に加温された温水が供給されるので、アノード側で高く(120℃)、カソード側で低い(80℃)温度勾配が形成される。その結果、ケルビン凝縮による過熱水蒸気の凝縮が促進され、膜電極接合体前駆体4内にはより多くの凝縮水が生成される。それにより、上記した加水分解処理の反応速度を更に高速化することができる。
[第3の態様]
第3の態様は、本発明の方法を用いて、補強膜型電解質膜1aを製造する。ここでは、ロール上に巻き込んである補強膜としての延伸PTFE薄膜15が、巻取ロール16側に連続して送り出される。その送り経路において、PTFE薄膜15に溶融したF型電解質樹脂を含浸させるか、あるいはF型電解質樹脂層を熱圧プレスして一体化して、補強膜型電解質膜前駆体1を形成する。次に、補強膜型電解質膜前駆体1の表面や周囲に前記したアルカリ金属水酸化物17を配置する。
第3の態様は、本発明の方法を用いて、補強膜型電解質膜1aを製造する。ここでは、ロール上に巻き込んである補強膜としての延伸PTFE薄膜15が、巻取ロール16側に連続して送り出される。その送り経路において、PTFE薄膜15に溶融したF型電解質樹脂を含浸させるか、あるいはF型電解質樹脂層を熱圧プレスして一体化して、補強膜型電解質膜前駆体1を形成する。次に、補強膜型電解質膜前駆体1の表面や周囲に前記したアルカリ金属水酸化物17を配置する。
アルカリ金属水酸化物17を配置した補強膜型電解質膜前駆体1は、加水分解処理部40に送られる。加水分解処理部40には、図1および図2で説明したと同じ、水蒸気発生装置31,有機溶媒ガス発生装置32、酸ガス発生装置33、および水加熱装置35が備えられる。そして、加水分解処理部40内において、補強膜型電解質膜前駆体1に対して、第1の態様で説明したと同じ処理、あるいは第2の態様で説明したと同じ処理が施される。補強膜型電解質膜前駆体1は、加水分解処理部40を通過することにより、プロトン伝導性を備えた補強膜型電解質膜1aに変化する。補強膜であるPTFE薄膜15上を繋ぎ材として連続形成された補強膜型電解質膜1aは、最後に巻取ロール16に巻き取られる。
なお、この態様において、アルカリ金属水酸化物17を予め混入した電解質前駆体樹脂を用いることもできる。その場合には、アルカリ金属水酸化物17を配置する工程は省略できる。
[第4の態様]
第4の態様は、本発明の方法を用いて、膜電極接合体4aを製造する。ここでは、第3の形態におけるアルカリ金属水酸化物17を配置した電解質膜前駆体1に対して、F型電解質樹脂と触媒担持導電体とを含む触媒混合物からなる触媒層2を積層して膜電極接合体前駆体4とする。そして、その膜電極接合体前駆体4が前記した加水分解処理部40に送られる。加水分解処理部40内においては、膜電極接合体前駆体4に対して、第1の態様で説明したと同じ処理、あるいは第2の態様で説明したと同じ処理が施される。そして、膜電極接合体前駆体4は、加水分解処理部40を通過することにより、プロトン伝導性を備えた補強膜型電解質膜1aを持つ膜電極接合体4aに変化する。補強膜であるPTFE薄膜15を繋ぎ材として連続形成された膜電極接合体4aは、適宜裁断されて、1つ1つの膜電極接合体4aとされる。
第4の態様は、本発明の方法を用いて、膜電極接合体4aを製造する。ここでは、第3の形態におけるアルカリ金属水酸化物17を配置した電解質膜前駆体1に対して、F型電解質樹脂と触媒担持導電体とを含む触媒混合物からなる触媒層2を積層して膜電極接合体前駆体4とする。そして、その膜電極接合体前駆体4が前記した加水分解処理部40に送られる。加水分解処理部40内においては、膜電極接合体前駆体4に対して、第1の態様で説明したと同じ処理、あるいは第2の態様で説明したと同じ処理が施される。そして、膜電極接合体前駆体4は、加水分解処理部40を通過することにより、プロトン伝導性を備えた補強膜型電解質膜1aを持つ膜電極接合体4aに変化する。補強膜であるPTFE薄膜15を繋ぎ材として連続形成された膜電極接合体4aは、適宜裁断されて、1つ1つの膜電極接合体4aとされる。
10…固体高分子型燃料電池(単セル)、1…(補強膜型)電解質膜前駆体、1a…(補強膜型)電解質膜、2…触媒層、3…拡散層、4…膜電極接合体前駆体、4a…膜電極接合体、5…流路、6…セパレータ、11…凝縮水、15…補強膜である延伸PTFE薄膜、17…アルカリ金属水酸化物、20…燃料電池スタック、30…本発明の方法を実施するための装置、31…水蒸気発生装置、32…有機溶媒ガス発生装置、33…酸ガス発生装置、34…混合過熱部、35…水加熱装置
Claims (6)
- 少なくとも電解質膜用樹脂として加水分解処理によりプロトン伝導性を発揮する電解質前駆体樹脂を用いる電解質膜または膜電極接合体の製造方法であって、
前記電解質前駆体樹脂に予めアルカリ金属水酸化物を混合または配置する工程と、アルカリ金属水酸化物を混合または配置した電解質前駆体樹脂に過熱水蒸気を供与して電解質前駆体樹脂の加水分解処理を進行させてプロトン伝導性を付与する工程とを少なくとも含むことを特徴とする電解質膜または膜電極接合体の製造方法。 - 前記電解質前駆体樹脂は、前記電解質前駆体樹脂を多孔質補強膜に一体化した補強膜型電解質膜前駆体における電解質前駆体樹脂を含むことを特徴とする請求項1に記載の電解質膜または膜電極接合体の製造方法。
- 請求項1または2における膜電極接合体の製造方法であって、拡散層を備えかつ加水分解処理が未処理の状態の膜電極接合体に対して前記過熱水蒸気の供与を行うことを特徴とする膜電極接合体の製造方法。
- 請求項3に記載の膜電極接合体の製造方法であって、前記過熱水蒸気の供与を前記加水分解処理が未処理の状態の膜電極接合体の一方の面に対してのみ行い、他方の面に対しては温水の供与を行うことを特徴とする膜電極接合体の製造方法。
- 請求項3に記載の膜電極接合体の製造方法を用いた燃料電池を製造する方法であって、前記拡散層を備えかつ加水分解処理が未処理の状態の膜電極接合体の両側にセパレータを取り付けて燃料電池セルを作成し、該燃料電池セルのガス流路に過熱水蒸気を供給して前記電解質前駆体樹脂に対する加水分解処理を進行させる工程を少なくとも含むことを特徴とする燃料電池の製造方法。
- 請求項4に記載の膜電極接合体の製造方法を用いた燃料電池を製造する方法であって、前記拡散層を備えかつ加水分解処理が未処理の状態の膜電極接合体の両側にセパレータを取り付けて燃料電池セルを作成し、該燃料電池セルの一方の面におけるガス流路に過熱水蒸気を供給し、他方の面におけるガス流路に温水を供給して、前記電解質前駆体樹脂に対する加水分解処理を進行させる工程を少なくとも含むことを特徴とする燃料電池の製造方法。
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JP2009245934A (ja) * | 2008-03-10 | 2009-10-22 | Toray Ind Inc | 電解質膜の製造方法 |
JP2013069689A (ja) * | 2011-09-22 | 2013-04-18 | Eaglepicher Technologies Llc | 中間温度適用のための電解質材料、熱電池要素、および熱電池 |
JP2014026901A (ja) * | 2012-07-30 | 2014-02-06 | Toyota Motor Corp | 電解質膜の製造方法および電解質膜製造装置 |
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