本発明を具体的に説明する前に、まず概要を述べる。本発明の実施例は、基地局装置と、端末装置と、制御装置によって構成される通信システムに関する。ここで、基地局装置には、マイクロセル基地局装置とナノセル基地局装置とが含まれている。マイクロセル基地局装置は、すべての端末装置を接続できるが、ナノセル基地局装置は、予め契約した端末装置のみを接続できる。マイクロセル基地局装置のサービスエリアとナノセル基地局装置のサービスエリアとは重複することがある。その際に、通信事業者にとってはナノセル基地局装置を優先的に選択して欲しい。また、端末装置の構成や変更を容易にするために、当該端末装置が契約しているナノセル基地局装置のリストは、当該端末装置に記憶したくない。これらに対応するために、本実施例に係る通信システムは、次のように構成される。
端末装置は、基地局装置から報知される報知信号を受信することによって、基地局装置を捕捉する。また、端末装置は、捕捉した基地局装置の一覧をリスト(以下、「基地局リスト」という)として生成する。端末装置は、捕捉した基地局装置のうち、報知信号の受信強度が最大の基地局装置を選択する。ここでは、マイクロセル基地局装置が選択されたものとする。端末装置は、選択したマイクロセル基地局装置へ位置登録要求を送信するとともに、基地局リストを送信する。マイクロセル基地局装置は、位置登録の処理を実行する。また、マイクロセル基地局装置は、基地局リストを制御装置へ出力する。制御装置は、当該端末装置と既に契約を済ませているナノセル基地局装置のリスト(以下、「契約リスト」という)を予め記憶しており、受けつけた基地局リストと契約リストとを比較する。さらに、制御装置は、当該端末装置によって捕捉された契約済のナノセル基地局装置を選択し、その結果をマイクロセル基地局装置へ通知する。マイクロセル基地局装置は、選択されたナノセル基地局装置へのハンドオーバを端末装置へ指示する。端末装置は、マイクロセル基地局装置からナノセル基地局装置へハンドオーバ処理を実行する。
図1は、本発明の実施例に係る通信システム100の構成を示す。通信システム100は、マイクロセル基地局装置10、端末装置12、ネットワーク14、制御装置16、ナノセル基地局装置50、ナノセルサーバ52を含む。
マイクロセル基地局装置10は、一端に無線ネットワークを介して端末装置12を接続し、他端に有線のネットワーク14を接続する。マイクロセル基地局装置10は、複数の端末装置12に対して通信チャネルを割り当てることによって、複数の端末装置12との通信を実行する。具体的には、マイクロセル基地局装置10は、報知信号を報知しており、端末装置12は、報知信号を受信することによって、マイクロセル基地局装置10の存在を認識する。その後、端末装置12がマイクロセル基地局装置10へ位置登録の要求信号を送信する。また、端末装置12は、マイクロセル基地局装置10へチャネル割当の要求信号を送信し、マイクロセル基地局装置10は、受信した要求信号に応答して、端末装置12に通信チャネルを割り当てる。
また、マイクロセル基地局装置10は、端末装置12に割り当てた通信チャネルに関する情報を送信し、端末装置12は、割り当てられた通信チャネルを使用しながら、マイクロセル基地局装置10との通信を実行する。その結果、端末装置12から送信されたデータは、マイクロセル基地局装置10を介して、ネットワーク14に出力され、最終的にネットワーク14に接続された図示しない通信装置に受信される。また、通信装置から端末装置12への方向にもデータは伝送される。ここで、通信システム100は、OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)方式に対応する。OFDMAとは、OFDMを利用しながら複数の端末装置を周波数多重する技術である。このようなOFDMAでは、複数のサブキャリアによってサブチャネルが形成されており、複数のサブチャネルが周波数分割多重されている。
また、TDMAと組み合わされることによって、マルチキャリア信号は、時間軸上において複数のタイムスロットに分割される。つまり、各フレームは、複数のタイムスロットが時間分割多重されることによって形成され、各タイムスロットは、複数のサブチャネルが周波数分割多重されることによって形成されている。また、各サブチャネルは、マルチキャリア信号によって形成されている。以上の説明において、通信チャネルは、前述のサブチャネルとタイムスロットの組合せによって特定される。その結果、マイクロセル基地局装置10は、少なくともひとつのタイムスロットにおけるサブチャネルを端末装置12に割り当てることによって、端末装置12との通信を実行する。
ナノセル基地局装置50、ナノセルサーバ52は、マイクロセル基地局装置10と同様の機能を有する。ここで、ナノセル基地局装置50、ナノセルサーバ52は、マイクロセル基地局装置10と比較して、送信信号の強度が小さいこと、契約済の端末装置12だけを接続可能であることについて相違する。また、マイクロセル基地局装置10においてなされる処理が、ナノセル基地局装置50とナノセルサーバ52に分離されており、ナノセルサーバ52は、ナノセル基地局装置50と比較して上位レイヤの処理を実行する。また、ナノセルサーバ52には、図示しない他のナノセル基地局装置50も接続されており、ナノセルサーバ52は、複数のナノセル基地局装置50に対する上位レイヤの処理を実行する。
端末装置12は、マイクロセル基地局装置10およびナノセル基地局装置50に接続可能であり、マイクロセル基地局装置10およびナノセル基地局装置50からの報知信号を受信することによって、マイクロセル基地局装置10およびナノセル基地局装置50を捕捉する。端末装置12は、捕捉した結果をもとに、前述の基地局リストを生成し、位置登録したマイクロセル基地局装置10へ基地局リストを送信する。端末装置12は、マイクロセル基地局装置10から、ナノセル基地局装置50へのハンドオーバの指示を受けつけると、ナノセル基地局装置50へハンドオーバを実行する。
制御装置16は、ネットワーク14を介して、マイクロセル基地局装置10およびナノセルサーバ52と接続する。なお、制御装置16には、図示しない他のマイクロセル基地局装置10やナノセル基地局装置50も接続される。その結果、制御装置16に接続された複数のマイクロセル基地局装置10およびナノセル基地局装置50によって、ひとつのページングエリアが形成される。また、制御装置16は、マイクロセル基地局装置10あるいはナノセル基地局装置50に接続された端末装置12に対する位置登録処理を実行する。なお、位置登録処理は、公知の技術でよいので、ここでは、説明を省略する。そのため、制御装置16は、ページングエリアを制御するともいえる。
また、詳細は後述するが、制御装置16は、前述の契約リストを記憶しており、マイクロセル基地局装置10を介して、端末装置12からの基地局リストを取得する。制御装置16は、基地局リストと契約リストとを比較することによって、端末装置12によって捕捉された契約済のナノセル基地局装置50を選択する。制御装置16は、選択したナノセル基地局装置50へのハンドオーバの指示をマイクロセル基地局装置10へ出力する。マイクロセル基地局装置10は、指示を受けつけると、端末装置12へハンドオーバを指示する。
図2(a)−(c)は、通信システム100におけるフレーム構成を示す。図の横方向が時間軸に相当する。フレームは、8つのタイムスロットの時間多重によって形成されている。また、8つのタイムスロットは、4つの下りタイムスロットと4つの上りタイムスロットから構成されている。ここでは、4つの上りタイムスロットを「第1上りタイムスロット」から「第4上りタイムスロット」として示し、4つの下りタイムスロットを「第1下りタイムスロット」から「第4下りタイムスロット」として示す。また、図示したフレームは、連続して繰り返される。
なお、フレームの構成は、図2(a)に限定されず、例えば、4つのタイムスロットや16個のタイムスロットによって構成されてもよいが、ここでは、説明を明瞭にするために、フレームの構成を図2(a)として説明する。また、説明を簡潔にするために、上りのタイムスロットと下りのタイムスロットの構成は、同一であるとする。そのため、上りタイムスロットと下りタイムスロットのいずれかについてのみ説明を行う場合もあるが、他方のタイムスロットも同様の説明が有効である。さらに、図2(a)に示されたフレームが複数連続することによって、スーパーフレームが形成される。ここでは、一例として、「20」個のフレームによって、スーパーフレームが形成されているものとする。
図2(b)は、図2(a)のうちのひとつのタイムスロットの構成を示す。図の縦方向が周波数軸に相当する。図示のごとく、ひとつのタイムスロットは、「第1サブチャネル」から「第16サブチャネル」までの「16」個のサブチャネルの周波数多重によって形成される。また、これらの複数のサブチャネルは、周波数分割多重されている。各タイムスロットが図2(b)のように構成されているので、タイムスロットとサブチャネルとの組合せによって、前述の通信チャネルが特定される。また、図2(b)のうちのひとつのサブチャネルに対応したフレーム構成が図2(a)であるとしてもよい。なお、ひとつのタイムスロットに配置されるサブチャネルの数は、「16」個でなくてもよい。ここで、上りタイムスロットにおけるサブチャネルの割当と、下りタイムスロットにおけるサブチャネルの割当とは、同一であるものとする。また、スーパーフレームを単位にして、少なくともひとつの報知信号が割り当てられるものとする。例えば、スーパーフレームに含まれた複数の下りタイムスロットのうち、ひとつのタイムスロットにおけるひとつのサブチャネルに報知信号が割り当てられる。
図2(c)は、図2(b)のうちのひとつのサブチャネルの構成を示し、図2(c)は、前述のパケット信号に相当する。図2(a)や図2(b)と同様に、図の横方向が時間軸に相当し、図の縦方向が周波数軸に相当する。また、周波数軸に対して、「1」から「29」の番号を付与しているが、これらは、サブキャリアの番号を示す。このように、サブチャネルは、マルチキャリア信号によって構成されており、特にOFDM信号によって構成されている。図中の「TS」は、トレーニングシンボルに相当し、既知の値によって構成される。また、「SS」は、シグナルシンボルに相当する。「GS」は、ガードシンボルに相当し、ここに実質的な信号は配置されない。「PS」は、パイロットシンボルに相当し、既知の値によって構成される。「DS」は、データシンボルに相当し、送信すべきデータである。「GT」は、ガードタイムに相当し、ここに実質的な信号は配置されない。
図3は、通信システム100におけるサブチャネルの配置を示す。図3では、横軸に周波数軸が示されており、図2(b)に示したタイムスロットに対するスペクトルが示される。ひとつのタイムスロットには、前述のごとく、第1サブチャネルから第16サブチャネルの16個のサブチャネルが周波数分割多重されている。各サブチャネルは、マルチキャリア信号、ここでは、OFDM信号によって構成されている。
図4は、マイクロセル基地局装置10の構成を示す。マイクロセル基地局装置10は、RF部20と総称される第1RF部20a、第2RF部20b、第NRF部20n、ベースバンド処理部22、変復調部24、IF部26、無線制御部28、記憶部30を含む。また、無線制御部28は、制御チャネル決定部32、無線リソース割当部38を含む。
RF部20は、受信処理として、図示しない端末装置12から受信した無線周波数のマルチキャリア信号に対して周波数変換を実行し、ベースバンドのマルチキャリア信号を生成する。ここで、マルチキャリア信号は、図3のごとく形成されており、また、図2(a)の上りタイムスロットに相当する。さらに、RF部20は、ベースバンドのマルチキャリア信号をベースバンド処理部22に出力する。一般的に、ベースバンドのマルチキャリア信号は、同相成分と直交成分によって形成されるので、ふたつの信号線によって伝送されるべきであるが、ここでは、図を明瞭にするためにひとつの信号線だけを示すものとする。また、RF部20には、AGCやA/D変換部も含まれる。
RF部20は、送信処理として、ベースバンド処理部22から入力したベースバンドのマルチキャリア信号に対して周波数変換を実行し、無線周波数のマルチキャリア信号を生成する。さらに、RF部20は、無線周波数のマルチキャリア信号を送信する。なお、RF部20は、受信したマルチキャリア信号と同一の無線周波数帯を使用しながら、マルチキャリア信号を送信する。つまり、図2(a)のごとく、TDD(Time Division Duplex)が使用されているものとする。また、RF部20には、PA(Power Amplifier)、D/A変換部も含まれる。
ベースバンド処理部22は、受信処理として、複数のRF部20のそれぞれからベースバンドのマルチキャリア信号を入力する。ベースバンドのマルチキャリア信号は、時間領域の信号であるので、ベースバンド処理部22は、FFTによって、時間領域の信号を周波数領域に変換し、周波数領域の信号に対してアダプティブアレイ信号処理を実行する。また、ベースバンド処理部22は、タイミング同期、つまりFFTのウインドウの設定を実行し、ガードインターバルの削除も実行する。タイミング同期等には、公知の技術が使用されればよいので、ここでは、説明を省略する。ベースバンド処理部22は、アダプティブアレイ信号処理の結果を変復調部24へ出力する。ベースバンド処理部22は、送信処理として、変復調部24から、周波数領域のマルチキャリア信号を入力し、ウエイトベクトルによる分散処理を実行する。
ベースバンド処理部22は、送信処理として、変復調部24から入力した周波数領域のマルチキャリア信号に対して、IFFTによって、周波数領域の信号を時間領域に変換し、変換した時間領域の信号をRF部20へ出力する。また、ベースバンド処理部22は、ガードインターバルの付加も実行するが、ここでは説明を省略する。ここで、周波数領域の信号は、図2(b)のごとく、複数のサブチャネルを含み、さらにサブチャネルのそれぞれは、図2(c)の縦方向のごとく、複数のサブキャリアを含む。図を明瞭にするために、周波数領域の信号は、サブキャリア番号の順に並べられて、シリアル信号を形成しているものとする。
変復調部24は、受信処理として、ベースバンド処理部22からの周波数領域のマルチキャリア信号に対して、復調を実行する。周波数領域に変換したマルチキャリア信号は、図2(b)や(c)のごとく、複数のサブキャリアのそれぞれに対応した成分を有する。また、復調は、サブキャリア単位でなされる。変復調部24は、復調した信号をIF部26に出力する。また、変復調部24は、送信処理として、変調を実行する。変復調部24は、変調した信号を周波数領域のマルチキャリア信号としてベースバンド処理部22に出力する。
IF部26は、受信処理として、変復調部24から復調結果を受けつけ、復調結果を端末装置12単位に分離する。つまり、復調結果は、図3のごとく、複数のサブチャネルによって構成されている。そのため、ひとつのサブチャネルがひとつの端末装置12に割り当てられている場合、復調結果には、複数の端末装置12からの信号が含まれている。IF部26は、このような復調結果を端末装置12単位に分離する。IF部26は、分離した復調結果を図示しないネットワーク14に出力する。その際、IF部26は、宛先を識別するための情報、例えば、IP(Internet Protocol)アドレスにしたがって送信を実行する。
また、IF部26は、送信処理として、図示しないネットワーク14から複数の端末装置12に対するデータを入力する。IF部26は、データをサブチャネルに割り当て、複数のサブチャネルからマルチキャリア信号を形成する。つまり、IF部26は、図3のごとく、複数のサブチャネルによって構成されるマルチキャリア信号を形成する。なお、データが割り当てられるべきサブチャネルは、図2(c)のごとく予め決められており、それに関する指示は、無線制御部28から受けつけるものとする。IF部26は、マルチキャリア信号を変復調部24に出力する。
無線制御部28は、マイクロセル基地局装置10の動作を制御する。無線制御部28は、図2(a)−(c)、図3のごとく、複数のサブチャネルの周波数多重によって形成されたタイムスロット、複数のタイムスロットの時間多重によって形成されたフレームを規定する。また、無線制御部28は、変復調部24等に対してパケット信号の形成を指示したり、変復調部24からRF部20を介して、報知信号を報知したりする。制御チャネル決定部32は、報知信号をサブチャネルに割り当てる。ここで、報知信号とは、端末装置12との通信を制御するために使用される情報が含まれた信号である。このような報知信号の重要性は、データが含まれたパケット信号よりも高いといえる。制御チャネル決定部32は、記憶部30を参照しながら、予め定めたサブチャネルを選択する。また、制御チャネル決定部32は、選択したサブチャネルを無線リソース割当部38に通知する。
無線リソース割当部38は、制御チャネル決定部32からの通知にしたがって、報知信号にサブチャネルを割り当てる。記憶部30は、無線制御部28と連携し、端末装置12に割り当てたサブチャネルの情報や、制御チャネルの情報を記憶する。また、無線リソース割当部38は、報知信号の送信後、RF部20から変復調部24を介して、図示しない端末装置12からの位置登録の要求やサブチャネルの割当要求を受けつける。無線リソース割当部38は、位置登録の要求や基地局リストを受けつけた場合、IF部26を介して、図示しない制御装置16へそれらを送信する。なお、サブチャネルの割当要求を受けつける前に、マイクロセル基地局装置10と端末装置12との間においてレンジング処理がなされるが、ここでは説明を省略する。サブチャネルの割当要求は、無線リソース獲得要求とも呼ばれる。無線リソース割当部38は、割当要求を受けつけた端末装置12にサブチャネルを割り当てる。
ここで、無線リソース割当部38は、上りタイムスロットおよび下りタイムスロットに含まれたサブチャネルを端末装置12に割り当てる。特に、上りタイムスロットにおけるサブチャネルの割当と、下りタイムスロットにおけるサブチャネルの割当は、対称になされるものとする。なお、無線リソース割当部38は、サブチャネルの割当の際に、無線リソース獲得要求に含まれたMACプロトコル種別、上位レイヤプロトコル種別等の情報を参照するが、ここでは、詳細を省略する。さらに、無線リソース割当部38は、当該端末装置12に対して、変復調部24からRF部20を介して、割当通知を送信する。割当通知は、無線リソース割当とも呼ばれる。
また、割当通知には、割り当てたサブチャネルおよびタイムスロットの情報が含まれている。以上の処理がなされた後、無線制御部28は、RF部20から変復調部24に、サブチャネルを割り当てた端末装置12との通信を実行させる。また、無線リソース割当部38は、IF部26を介して、図示しない制御装置16からハンドオーバの指示を受けつけると、ベースバンド処理部22、RF部20を介して、端末装置12へハンドオーバを指示する。なお、ハンドオーバの際に無線制御部28においてなされる処理は、公知の技術でよいので、ここでは説明を省略する。
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされた通信機能のあるプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
図5は、端末装置12の構成を示す。端末装置12は、RF部60、変復調部62、IF部64、制御部66を含む。また、制御部66は、捕捉部68、選択部70、リスト生成部72、信号生成部74、ハンドオーバ処理部76を含む。
RF部60は、図4のRF部20に対応した処理を実行し、変復調部62は、図4の変復調部24にFFTおよびIFFTを加えた処理を実行する。そのため、ここでは、RF部60および変復調部62についての説明を省略する。IF部64は、ユーザとのインターフェイスの機能を有している。例えば、IF部64は、ボタン等を含むことによって、ユーザからの指示を受けつける。また、IF部64は、受けつけた指示を信号として、変復調部62や制御部66に出力する。IF部64は、ディスプレイを含むことによって、変復調部62において復調されたデータを表示する。
制御部66は、端末装置12全体の動作を制御する。捕捉部68は、RF部60、変復調部62を介して、前述の制御チャネルにて、さまざまな基地局装置からの報知信号を受信する。ここで、基地局装置には、マイクロセル基地局装置10やナノセル基地局装置50が含まれる。また、捕捉部68は、受信した報知信号より、送信元になる基地局装置の識別番号(以下、「基地局ID」という)を取得する。また、捕捉部68は、RF部60から、当該報知信号を受信したときの受信強度の値を取得する。受信強度の値の一例は、RSSI(Received Signal Strength Indicator)である。さらに、捕捉部68は、報知信号を受信した時刻を確認する。また、捕捉部68は、基地局ID、受信強度の値、時刻をひとつのまとまり(以下、「基地局情報」という)にして、選択部70およびリスト生成部72へ出力する。なお、捕捉部68は、以上の処理を繰り返し実行することによって、複数の基地局装置からの報知信号を捕捉する。
選択部70は、捕捉部68から、複数の基地局装置に対する基地局情報を受けつけ、受信強度の値を比較する。また、選択部70は、最大の受信強度となる基地局装置を位置登録の対象として選択する。つまり、選択部70は、捕捉部68において捕捉した基地局装置の中から位置登録を要求すべき基地局装置を選択する。ここで、選択部70は、マイクロセル基地局装置10であるか、ナノセル基地局装置50であるかを区別せずに、基地局装置を選択する。なお、この処理は、ある定められた期間の中においてなされてもよい。選択部70は、選択した基地局装置についての基地局IDを信号生成部74へ出力する。
リスト生成部72は、捕捉部68から、複数の基地局装置に対する基地局情報を受けつけ、それらをまとめることによって基地局リストを生成する。図6は、リスト生成部72において生成された基地局リストのデータ構造を示す。基地局リストは、図示のごとく、基地局ID欄200、受信強度欄202、捕捉時刻欄204によって構成される。これらには、基地局情報に含まれた基地局ID、受信強度の値、時刻がそれぞれ対応づけられる。つまり、基地局リストは、捕捉部68によって捕捉された基地局装置が示されたリストといえる。なお、リスト生成部72は、マイクロセル基地局装置10であるか、ナノセル基地局装置50であるかを区別せずに基地局リストを生成する。図5に戻る。
信号生成部74は、位置登録の要求信号を生成する。ここで、位置登録の要求信号の送信先は、選択部70において選択した基地局装置である。前述のごとく、説明を明瞭にするために、選択部70では、マイクロセル基地局装置10が選択されたものとする。信号生成部74は、変復調部62、RF部60を介してマイクロセル基地局装置10へ位置登録の要求信号を送信する。その後、制御部66は、RF部60、変復調部62を介して、マイクロセル基地局装置10からの位置登録の完了通知を受けつける。その後、信号生成部74は、基地局リストが含まれた信号を生成し、変復調部62、RF部60を介してマイクロセル基地局装置10へ送信する。
ハンドオーバ処理部76は、RF部60、変復調部62を介して、マイクロセル基地局装置10から、ハンドオーバの指示を受けつける。例えば、ハンドオーバの指示において、ナノセル基地局装置50へのハンドオーバが指示されている。ハンドオーバ処理部76は、受けつけた指示をもとに、変復調部62、RF部60に対して、ナノセル基地局装置50へのハンドオーバを指示する。ハンドオーバの処理は、公知の技術でよいので、ここでは、説明を省略する。なお、制御部66は、サブチャネルの割当要求、データ通信の制御も実行するが、これらは、前述のマイクロセル基地局装置10での説明に対応するように実行されればよい。そのため、ここでは、これらの説明を省略する。
図7は、制御装置16の構成を示す。制御装置16は、IF部80、バッファ82、制御部84を含む。また、制御部84は、受付部86、選択部88、位置登録部90、指示部92を含む。制御装置16は、主として、位置登録、ハンドオーバの制御を実行する。まず、位置登録について説明する。
IF部80は、図示しないネットワーク14を介して、図示しないマイクロセル基地局装置10と接続する。受付部86は、IF部80を介して、図示しない端末装置12からの位置登録要求を受けつける。受付部86は、受けつけた位置登録要求を位置登録部90へ出力する。位置登録部90は、公知の技術を使用しながら、端末装置12に対する位置登録処理を実行する。位置登録部90は、位置登録の結果をバッファ82に記憶する。IF部80は、位置登録要求に対する位置登録応答を端末装置12に送信する。なお、位置登録の機能は、制御装置16に含まれずに、図示しない交換機等に含まれていてもよい。
次に、ハンドオーバの制御について説明する。受付部86は、IF部80を介して、端末装置12から基地局リストを受けつける。なお、基地局リストには、送信元になる端末装置12の情報が付加されている。このような基地局リストは、位置登録の要求に付随した情報であるといえる。受付部86は、受けつけた基地局リストと、送信元になる端末装置12の情報とを選択部88に出力する。一方、バッファ82は、端末装置12と予め契約したナノセル基地局装置50が示された契約リストを記憶する。
図8は、バッファ82に記憶された契約リストのデータ構造を示す。契約リストは、図示のごとく、端末装置ID欄210と契約済ナノセル基地局ID欄212によって構成されている。端末装置ID欄210には、処理の対象となる端末装置12に付与された識別番号が示されている。契約済ナノセル基地局ID欄212には、各端末装置12と既に契約がなされたナノセル基地局装置50の識別番号が示されている。なお、契約済ナノセル基地局ID欄212において示された識別番号は、図6の基地局ID欄200において示された識別番号と対応している。ここで、契約済ナノセル基地局ID欄212には、ページングエリアに関係なく、端末装置12と契約されたすべてのナノセル基地局装置50が示されているものとする。図7に戻る。
選択部88は、受付部86において受けつけた基地局リストと、バッファ82に記憶された契約リストとを比較し、端末装置12が捕捉した契約済のナノセル基地局装置50を選択する。具体的に説明すると、選択部88は、基地局リストに付加された端末装置12の情報を使用しながら、契約リストを参照することによって、当該端末装置12と契約されたナノセル基地局装置50を抽出する。契約されたナノセル基地局装置50が複数存在する場合、選択部88は、複数のナノセル基地局装置50を抽出する。選択部88は、基地局リストに含まれた基地局IDと、抽出した基地局IDとを比較して、一致する基地局IDを選択する。複数の基地局IDが選択される場合、選択部88は、基地局リストに含まれた受信強度の値を参照しながら、最大の受信強度の値に対応した基地局IDを選択する。選択された基地局IDが、端末装置12が捕捉した契約済のナノセル基地局装置50に相当する。指示部92は、選択部88において選択したナノセル基地局装置50へのハンドオーバをマイクロセル基地局装置10から端末装置12へ指示させる。
以上の構成による通信システム100の動作を説明する。図9は、通信システム100におけるハンドオーバ手順を示すシーケンス図である。マイクロセル基地局装置10は、報知信号を送信し(S10)、ナノセル基地局装置50も、報知信号を送信する(S12)。端末装置12は、報知信号を受信することによって、マイクロセル基地局装置10およびナノセル基地局装置50を捕捉する(S14)。端末装置12は、基地局リストを作成し(S16)、位置登録先となる基地局装置を選択する(S18)。端末装置12は、マイクロセル基地局装置10へ位置登録要求を送信する(S20)。マイクロセル基地局装置10は、位置登録処理を実行する(S22)。なお、位置登録処理は、マイクロセル基地局装置10の依頼をもとに制御装置16が実行する。
マイクロセル基地局装置10は、端末装置12へ位置登録の完了通知を送信する(S24)。端末装置12は、位置登録の完了に続いて、マイクロセル基地局装置10へ基地局リストを送信する(S26)。マイクロセル基地局装置10は、基地局リストを問い合わせとして制御装置16へ送信する(S28)。制御装置16は、問い合わせを受けつけると、契約済のナノセル基地局装置50を選択し(S30)、その結果を応答としてマイクロセル基地局装置10へ送信する(S32)。マイクロセル基地局装置10は、端末装置12に対して、ナノセル基地局装置50へのハンドオーバを指示する(S34)。端末装置12は、ナノセル基地局装置50へハンドオーバの要求を送信する(S36)。ナノセル基地局装置50は、位置登録処理を実行する(S38)。なお、位置登録処理は、ナノセル基地局装置50の依頼をもとに制御装置16が実行する。ナノセル基地局装置50は、端末装置12へ位置登録の完了通知を送信する(S40)。
図10は、端末装置12におけるハンドオーバ手順を示すフローチャートである。捕捉部68は、RF部60、変復調部62を介して、報知信号を受信する(S60)。リスト生成部72は、基地局リストを生成する(S62)。また、選択部70は、位置登録先となる基地局装置を選択する(S64)。信号生成部74は、変復調部62、RF部60を介して、位置登録要求を送信する(S66)。信号生成部74は、RF部60、変復調部62を介して、位置登録の完了通知を受信する(S68)。信号生成部74は、変復調部62、RF部60を介して、基地局リストを送信する(S70)。ハンドオーバ処理部76は、ハンドオーバ指示を受けつける(S72のY)と、ハンドオーバを実行する(S74)。一方、ハンドオーバ処理部76は、ハンドオーバ指示を受けつけなければ(S72のN)と、処理は終了される。
図11は、マイクロセル基地局装置10におけるハンドオーバ手順を示すフローチャートである。RF部20、ベースバンド処理部22は、端末装置12から位置登録要求を受信する(S90)と、IF部26は、制御装置16に位置登録処理を実行させる(S92)。制御装置16が制御装置16から位置登録の完了通知を受けつけると、ベースバンド処理部22、RF部20は、端末装置12へ位置登録の完了通知を送信する(S94)。また、RF部20、ベースバンド処理部22は、端末装置12から基地局リストを受信する(S96)と、IF部26は、制御装置16へ問い合わせを送信する(S98)。IF部26は、契約済のナノセル基地局装置50が制御装置16から知らされると(S100のY)、無線制御部28は、ベースバンド処理部22、RF部20を介して、端末装置12へハンドオーバを指示する(S102)。IF部26は、契約済のナノセル基地局装置50が制御装置16から知らされなければ(S100のN)、処理は終了される。
図12は、制御装置16におけるハンドオーバ手順を示すフローチャートである。受付部86は、基地局リストを問い合わせとして受けつける(S120)。選択部88は、基地局リストと契約リストとを比較する(S122)。選択部88が、契約済のナノセル基地局装置50を抽出すれば(S124のY)、指示部92は、応答を送信する(S126)。一方、選択部88が、契約済のナノセル基地局装置50を抽出しなければ(S124のN)、処理は終了される。
以下に変形例を説明する。これまでの実施例において、制御装置16は、契約リストを記憶しているが、当該契約リストには、端末装置12と予め契約されたすべてのナノセル基地局装置50に関する情報が含まれている。しかしながら、各制御装置16に記憶される契約リストのサイズを小さくするために、各制御装置16は、自らのページングエリアに設置されたナノセル基地局装置50のみを含んだ契約リストを記憶してもよい。これに対応するために、各基地局装置は、報知信号の中に、自らが属するページングエリアに関する情報を含める。端末装置12のリスト生成部72は、基地局リストを生成する際に、基地局リストの中に、各基地局装置に対応したページングエリアの情報を含める。信号生成部74は、このような基地局リストを送信する。
制御装置16のバッファ82は、契約リストを記憶するが、契約リストには、制御装置16に対応したページングエリアに属するナノセル基地局装置50のみが含まれる。また、バッファ82は、ページングエリアの情報と、それに属する制御装置16との対応が示されたリスト(以下、「対応リスト」という)を記憶する。受付部86は、基地局リストを受けつけるが、当該基地局リストには、前述のごとく、各基地局装置に対応したページングエリアの情報が含まれている。選択部88は、ページングエリアの情報をもとに、基地局リストの中から、自らのページングエリアに含まれた基地局IDを抽出する。また、選択部88は、抽出した基地局IDに対して、契約リストを使用して比較を実行する。
一方、基地局リストの中に、他のページングエリアに属した基地局IDが含まれる場合、選択部88は、対応リストを参照することによって、他の制御装置16を特定する。また、選択部88は、IF部80を介して、特定した他の制御装置16へ基地局IDを送信することによって、基地局IDに対応した基地局装置が、契約済のナノセル基地局装置50であるかを確認してもらう。つまり、選択部88は、他のページングエリアにおける制御装置16へ問い合わせることによって比較を実行する。以上の処理の結果、選択部88は、契約済のナノセル基地局装置50を選択する。
本発明の実施例によれば、端末装置において生成された基地局リストと、予め記憶した契約リストとをもとに、端末装置をナノセル基地局装置へハンドオーバさせるので、端末装置とナノセル基地局装置との通信を実行できる。また、端末装置がマイクロセル基地局装置を選択しても、ナノセル基地局装置へハンドオーバさせるので、マイクロセル基地局装置よりもナノセル基地局装置を優先的に選択させることができる。また、端末装置は、契約済のナノセル基地局装置を把握していなくてもよいので、マイクロセル基地局装置よりもナノセル基地局装置を優先的に選択させることを簡易に実現できる。また、契約リストは、制御装置に記憶され、端末装置に記憶されないので、セキュリティを向上できる。また、端末装置は、基地局リストを生成するが、基地局装置の捕捉結果をまとめるだけであるので、処理量の増加を抑制できる。また、制御装置は、自らのページングエリアに属するナノセル基地局装置50に対する契約リストを記憶すればよいので、契約リストのサイズの増加を抑制できる。
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
本発明の実施例において、制御装置16は、ページングエリアを制御するように、各ページングエリアに設けられている。しかしながらこれに限らず例えば、制御装置16は、センタとして、ひとつだけ設置されてもよい。その際、制御装置16は、サービス運用エリア内のマイクロセル基地局装置10およびナノセル基地局装置50を管理する。本変形例によれば、契約リストが一カ所に集中されるので、契約リストの管理を容易にできる。
また、制御装置16は、各マイクロセル基地局装置10内に設けられていてもよい。つまり、制御装置16での処理がマイクロセル基地局装置10によってなされる。本変形例によれば、マイクロセル基地局装置10によって、契約済のナノセル基地局装置50の選択がなされるので、ネットワーク14上のトラヒック量を低減できる。
本発明の変形例において、端末装置12は、位置登録の要求信号をマイクロセル基地局装置10へ送信した後に、基地局リストを当該マイクロセル基地局装置10へ送信している。しかしながらこれに限らず例えば、端末装置12は、基地局リストをマイクロセル基地局装置10へ送信した後に、位置登録の要求信号を当該マイクロセル基地局装置10へ送信してもよい。また、端末装置12は、位置登録の要求信号と基地局リストをひとつの信号としてマイクロセル基地局装置10へ送信してもよい。本変形例によれば、処理手順の自由度を向上できる。
10 マイクロセル基地局装置、 12 端末装置、 14 ネットワーク、 16 制御装置、 20 RF部、 22 ベースバンド処理部、 24 変復調部、 26 IF部、 28 無線制御部、 30 記憶部、 32 制御チャネル決定部、 38 無線リソース割当部、 50 ナノセル基地局装置、 52 ナノセルサーバ、 60 RF部、 62 変復調部、 64 IF部、 66 制御部、 68 捕捉部、 70 選択部、 72 リスト生成部、 74 信号生成部、 76 ハンドオーバ処理部、 80 IF部、 82 バッファ、 84 制御部、 86 受付部、 88 選択部、 90 位置登録部、 92 指示部、 100 通信システム。