JP2009129603A - 有機電界発光素子の製造方法及び製造装置 - Google Patents

有機電界発光素子の製造方法及び製造装置 Download PDF

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Abstract

【課題】UV光を照射したときに、UV光照射前の材料の特性を維持しつつ、当該材料で構成される電荷輸送層を不溶化することを可能にする有機電界発光素子の製造方法及び製造装置を提供する。
【解決手段】電荷輸送層12を構成する有機化合物を含む溶液を塗布する工程と、該塗布により成膜される薄膜に、UV光を照射すると共に該薄膜を加熱して、該薄膜を不溶化することにより、該電荷輸送層を形成する工程と、を含み、該UV光の光源がUV−LED11であることを特徴とする、有機電界発光素子の製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、有機電界発光素子の製造方法及び製造装置に関する。
有機電界発光素子(OLED;Organic Light Emitting Diode)は、蛍光又は燐光発光性有機化合物、電荷輸送性有機物等をそれぞれ薄膜状にして、この薄膜を電極で挟み込んだ構造の発光素子である。また有機電界発光素子は、電極間に電圧を印加することにより、電子と正孔とが有機薄膜中に注入され再結合し、発光性有機化合物内に励起子が生成し、この励起子が基底状態に戻る際に光が放出される。
有機電界発光素子は、低電圧駆動、高発光効率、高速応答、自発光で視野角制限がないこと、多様な発光波長及び軽量といった特徴を有する。このため、有機電界発光素子は薄型ディスプレイから照明まで、幅広い分野において次世代の発光デバイスとして期待されている。
ところで有機電界発光素子を構成する機能層、即ち、正孔輸送層、発光層、電子輸送層等の各機能層は、それぞれの膜厚が約10nm乃至100nm程度の非常に薄い層である。これらの機能層を形成する方法としては、真空蒸着法、レーザー転写法、印刷法、塗布法等の方法が知られている。中でも塗布法は、低コスト、大面積対応といった可能性をもつため、盛んに検討が進められている。
ここで塗布法による有機電界発光素子を構成する機能層の形成において、特に、二層以上の積層構造を塗布法により順次形成する際には、上の層を塗布するときに下の層が溶け出さないように材料・溶媒を選択する必要がある。例えば、陽極であるITO上に正孔注入層と正孔輸送層(又は発光層)とからなる二層を塗布により形成するときには、正孔注入層の構成材料としてポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホネート(PEDOT/PSS)を使用する。ここでPEDOT/PSSは、水溶性のポリマーで耐有機溶剤性に優れる。このため、PEDOT/PSS水溶液をITO基板上に塗布してPEDOT/PSSからなる正孔注入層を形成した上で、正孔輸送層(又は発光層)の構成材料を有機溶媒に溶解した溶液を塗布することにより、積層構造を形成することが可能である。
しかし、塗布法を用いて三層以上の積層構造を形成する場合、上記のように水と有機溶媒(非水溶性溶媒)とを使い分けて塗布していく方式は、各機能層を構成する有機材料の選択を非常に限定することになるので、実用的ではない。また、塗布法により二層の積層構造を形成する場合においても、積層する各層がいずれも非水溶性溶媒にのみ溶解する場合は、上記の方法が使用できない。
一方で、塗布法で二層以上を積層する具体的な方法の一つとして、第一層目を塗布した後、UV光を照射することにより塗布膜を硬化して膜全体を不溶化してから、その上に第二層目を塗布形成する方法がある。特許文献1では、電荷輸送性ポリマーと低分子架橋剤とを含む混合溶液を塗布・成膜した薄膜にUV光を照射して、電荷輸送性ポリマーと架橋剤との反応により架橋構造を形成させることにより、当該薄膜を不溶化させることが開示されている。特許文献2では、架橋性の官能基を付与した芳香族有機アミンを使用し、この芳香族有機アミンからなる薄膜にUV光を照射して、芳香族有機アミン同士の重合反応を誘起させ架橋構造を形成することにより、不溶化した正孔輸送層を形成することが開示されている。
ところで塗布法により形成された薄膜を、UV光を照射して硬化させる技術自体は、以前から電子デバイスの封止部材等においても利用されていた。しかし、電子デバイスの機能部に対してUV光を照射して対象となる部材を不溶化する際には、最終的なデバイス特性への影響も考慮した上で、硬化の手法を検討する必要がある。特に有機電界発光素子の電荷輸送層を形成する機能性有機化合物又はポリマーは、UV光に対する耐性が乏しいことを考慮しなければならない。
従来、UV光によって不溶化した薄膜を形成するときには、UV光の光源として水銀ランプが用いられていた。しかし特許文献1及び特許文献2のような系において、電荷輸送性材料又は電荷輸送性部位を有する分子からなる薄膜について水銀ランプを用いてUV光照射すると、当該電荷輸送性材料等が当該UV光によって劣化する現象が生じていた。この場合、実際にデバイスを構成する際に、当該電荷輸送性材料等に期待され得る電荷輸送特性が十分に発揮されない可能性がある。
上記の劣化の原因としては、水銀ランプ中に含まれる300nm以下の短波長成分が電荷輸送性材料の劣化を招いていることが考えられるが、これまでは十分な対策がとられていなかった。また水銀ランプは、UV光の照射に伴う光源からの発熱が著しく、硬化時の塗布膜の温度制御が困難であった。
一方、近年、新たなUV光源としてUV−LEDの開発が進みつつある(特許文献3参照)。UV−LEDは特定の波長にのみ急峻な発光ピークを持つ。例えば、発光ピーク波長が365nmのUV−LEDの場合、350nm以下の波長の発光はほとんど無い。
そこで本発明者らは、有機電界発光素子を構成する塗布により形成した電荷輸送層となる薄膜について、UV光の照射によりその薄膜を不溶化させる際に、UV光の光源としてUV−LEDを使用することに着目した。
特開2005−243300号公報 特開2005−340042号公報 特開2000−294884号公報
しかし、従来と同様の反応系において、UV光の光源を水銀ランプからUV−LEDに変えただけでは、当該電荷輸送層となる薄膜を不溶化させるのに十分な架橋反応が電荷輸送層内で進行せず、不溶化膜としての機能を満たすことができなかった。
本発明の目的は、UV光を照射したときに、UV光照射前の材料の特性を維持しつつ、当該材料で構成される電荷輸送層を不溶化することを可能にする有機電界発光素子の製造方法及び製造装置を提供することにある。
本発明の有機電界発光素子の製造方法は、電荷輸送層を構成する有機化合物を含む溶液を塗布する工程と、該塗布により成膜される薄膜に、UV光を照射すると共に該薄膜を加熱して、該薄膜を不溶化することにより、該電荷輸送層を形成する工程と、を含み、該UV光の光源がUV−LEDであることを特徴とする。
本発明によれば、UV光を照射したときに、UV光照射前の材料の特性を維持しつつ、当該材料で構成される電荷輸送層を不溶化することを可能にする有機電界発光素子の製造方法及び製造装置を提供することができる。
以下、本発明の有機電界発光素子の製造方法について説明する。本発明の有機電界発光素子の製造方法は、以下の第一の工程と第二の工程とを含むものである。
(i)電荷輸送層を構成する有機化合物を含む溶液を塗布する工程(以下、第一の工程という。)
(ii)該塗布により成膜される薄膜に、UV光を照射すると共に該薄膜を加熱して、該薄膜を不溶化することにより、該電荷輸送層を形成する工程(以下、第二の工程という。)
以下に第一の工程について説明する。
第一の工程において、電荷輸送層とは、有機電界発光素子に電圧を印加した際に電荷移動が起こる層をいう。具体的には正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層、発光層、正孔ブロック層、電子輸送層又は電子注入層が挙げられる。好ましくは、正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層又は発光層である。塗布法により形成される電荷輸送層が正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層又は発光層であれば、低コストかつ高効率な有機電界発光素子の製造が可能となる。また、電荷輸送層として、より好ましくは、正孔注入層、正孔輸送層又は電子ブロック層である。
第一の工程において、電荷輸送層を構成する有機化合物とは、電荷輸送性ポリマー材料と架橋性低分子材料との混合物又は架橋性官能基を有する電荷輸送性材料をいう。いずれの材料系においても、UV光を照射すると架橋重合反応が起こり、当該材料からなる薄膜は不溶化する。
まず、電荷輸送性ポリマー材料と架橋性低分子材料との混合物系について説明する。
当該混合物系で使用される電荷輸送性ポリマー材料として、特に制限はないが、具体的には下記に示される公知の電荷輸送性ポリマー材料が挙げられる。ただし本発明はこれらに限定されない。
Figure 2009129603
また当該混合物系で使用される架橋剤としては、UV光を照射し分子間で起こる架橋重合反応により架橋構造を形成するもの、もしくはUV光を照射することにより活性化された重合開始剤を介して架橋重合反応を受けるものを使用する。また使用される架橋剤は、その分子内に架橋重合を形成する官能基が少なくとも1つ以上有することを必要とする。ここで架橋剤の具体的な構造としては、下記式に示されるものが挙げられる。
Figure 2009129603
(式中、Aは、分子骨格を表し、Bは、架橋重合を形成する官能基を表す。)
ここで、Aで表される分子骨格として、アルキル骨格、エーテル系骨格、π共役骨格等が例示されるが特に限定されない。好ましくは、下記に示される部分構造、又はこれらの部分構造を二種類以上組み合わせてなる部分構造である。尚、Aで表される分子骨格には同一種の部分構造を2個以上連結してなる部分構造も含まれる。
Figure 2009129603
(式中、n及びmは、それぞれ1以上、好ましくは、1以上12以下の整数を表す。Arは芳香族基、アリールアミノ基、縮合多環基、ヘテロ環基等のアリール基を表す。)
一方、Bで表される架橋重合を形成する官能基は、重合方法を適宜選択すれば特に制限はないが、加熱や紫外線照射等、硬化の容易さから、特に下記に示される官能基が望ましい。
Figure 2009129603
(式中、Rは水素原子又はメチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基を表す。)
上記の分子骨格A及び官能基Bを組み合わせた架橋剤である化合物として、好ましくは、アクリル化合物、スチレン化合物、エポキシ化合物又はオキセタン化合物である。これらの化合物は、塗布法により薄膜を形成した後、UV光を照射することにより、容易に架橋重合反応を進行させることができる。これらの化合物は一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を組み合わせて使用してもよい。架橋剤として使用されるアクリル化合物、スチレン化合物、エポキシ化合物及びオキセタン化合物の具体例を以下に示す。ただし本発明はこれに限定されない。
Figure 2009129603
Figure 2009129603
Figure 2009129603
Figure 2009129603
当該混合物系で薄膜を形成する場合は、電荷輸送層を塗布形成する際に使用する溶液(塗布液)を調製する段階で、電荷輸送性ポリマー材料と、架橋剤となる低分子材料とを一緒に溶解しておく。その上で、この塗布液を基板上に塗布し形成した薄膜に対してUV光を照射する。こうすることにより、電荷輸送性ポリマー材料と低分子架橋剤との間で架橋重合反応が進行し、電荷輸送性材料が架橋構造中に含まれる膜、即ち、電荷輸送性を有する不溶化膜を形成することができる。尚、必要に応じて別途重合開始剤を当該塗布液中に混合してもよい。
次に、架橋性官能基を有する電荷輸送性材料系について説明する。この系で使用される材料は、架橋剤分子の分子骨格に電荷輸送性の構造が導入されることを特徴とする。ここで電荷輸送性の構造としては、芳香族環、アリールアミン、縮合多環、ヘテロ環等の構造が挙げられる。特に、アリールアミン、チオフェン、カルバゾールといった構造を有することが、電荷輸送能の観点から望ましい。以下に架橋性官能基を有する電荷輸送性材料の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
Figure 2009129603
架橋性官能基を有する電荷輸送性材料系においては、上記の架橋性官能基を有する電荷輸送性材料を適当な溶媒に溶解して調製した塗布液を基板上に塗布し、薄膜を形成する。次いで当該薄膜にUV光を照射することにより、不溶化した電荷輸送層が得られる。尚、架橋性官能基を有する電荷輸送性材料に、さらに電荷輸送性のポリマー材料等を混合してUV光を照射することで、不溶化した電荷輸送層を形成してもよい。
第一の工程において、電荷輸送性材料等を溶解させるために使用される溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、n−ドデシルベンゼン、メチルナフタレン等の炭化水素系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジグライム等のエーテル系溶剤、クロロホルム、モノクロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン等のハロゲン系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶剤、メタノール、エタノール、n−プロパノール等のアルコール系溶剤等が挙げられる。これらの溶媒は一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を混合して使用してもよい。また、これらの溶媒の粘度や、溶質の濃度を調整することにより、形成される薄膜の膜厚を調整することができる。
次に、第二の工程について、説明する。
第一の工程により成膜される薄膜に照射するUV光の光源は、UV−LEDである。
UV光照射光源としてUV−LEDを用いることにより、従来の水銀ランプによる照射に見られた電荷輸送性材料の劣化を抑制した上で、電荷輸送層の不溶化に必要な架橋重合を形成することができる。また、UV−LEDは水銀ランプに比べて光源からの発熱が少ないため、UV光照射時の電荷輸送層の温度調整を独立で行うことが可能になる。この際、UV−LEDによるUV光照射と同時に、適切な温度で電荷輸送層を加熱することで、電荷輸送層の十分な不溶化と電荷輸送性材料の劣化抑制を両立することができる。
UV光を照射することによって薄膜を硬化・不溶化するときは、従来、UV光の照射光源として高圧水銀ランプが主流であった。高圧水銀ランプは出力が比較的高いために、UV光照射による架橋重合反応を短時間で進行することが可能であるからである。
しかし、高圧水銀ランプの発光波長は200nm乃至600nmに及び、特に200nm乃至300nmの範囲のUV光は、有機電界発光素子の電荷輸送機能を担う電荷輸送性材料のバンドギャップよりも高いエネルギーを有するものである。このため、高圧水銀ランプを用いてUV光を照射すると、電荷輸送性材料の分解・劣化等を誘発し、電荷輸送性材料に本来期待される物性が得られない可能性がある。
また、高圧水銀ランプは、発光しているときに光源から発生する発熱も著しいため、電荷輸送層へUV光を照射する際に、電荷輸送層自体も温度が急激に上昇するので、電荷輸送層自体の温度制御が困難である。特に、電荷輸送性材料のガラス転移点以上に温度が上昇すると、良好なアモルファス膜が得られず、結果としてデバイス特性が著しく落ちる。このように、高圧水銀ランプを光源としたUV光照射プロセスは、短波長成分の混在及び異常な温度上昇という、電荷輸送性材料に対する二つの大きな劣化要因を含んでいる。
一方、近年開発が進んでいるUV−LEDは、例えば365nmに発光中心を持つタイプのUV−LEDの場合、発光スペクトルの半値幅は10nm乃至20nm程度であり、300nm以下の波長のUV光は含まれない。また、発光に伴う光源からの発熱も高圧水銀ランプに比べると著しく低い。これらの特徴を有することによって、UV−LEDは、有機電界発光素子の電荷輸送層をUV光照射により不溶化する際に、従来の高圧水銀ランプを光源とするときに問題となっていた上記の二つの劣化要因を解決し得る。
第二の工程に用いられるUV−LEDとしては、特に制限は無く、市販のものを用いることができる。具体的には、日亜化学工業株式会社製の紫外発光チップタイプLED等が挙げられる。ここでUV光を照射することで電荷輸送層内での架橋重合反応を進行させるために、電荷輸送層内に含まれる架橋剤、架橋部位を含む電荷輸送性材料又は重合開始剤が吸収を持つ波長に発光ピークを有するUV−LEDを用いる。また第二の工程に用いられるUV−LEDは、点光源でもよいし、面光源でもよい。
UV−LEDからの出力光強度は、使用する架橋剤、電荷輸送性材料等により最適な条件が異なる。一般にはUV−LEDからの出力は10mW/cm2乃至200mW/cm2の範囲が望ましい。10mW/cm2以下ではUV光の照射強度が弱く、架橋重合反応が十分に行われない場合がある。また200mW/cm2以上ではUV光の照射強度が強すぎて電荷輸送性材料の分解が起こる場合がある。ここでUV−LEDの出力強度については、UV−LED自体の電源によりコントロールするほか、光源と基板との距離を調整することによってもコントロールすることができる。またUV−LEDの照射形態は、連続照射でもよく、またパルス状の照射でもよい。
ところで上述したようにUV−LEDは発熱が水銀ランプに比べて非常に少ない。このため、塗布・成膜した電荷輸送層となる薄膜にUV光を照射すると共に、電荷輸送層が塗布された基板を別途加熱する。こうすることにより、電荷輸送層の不溶化を効率的に進行させることができると共に、最適な温度条件で架橋反応を進めることが可能となる。
ここで基板を加熱するための装置(加熱機構)としては、ホットプレート、マイクロ波源等、温度制御が可能なものであれば特に制限はない。
基板を加熱するときの加熱温度は、使用する架橋剤、電荷輸送性材料等により最適な条件が異なる。加熱温度として一般には、30℃乃至250℃が望ましい。30℃以下では架橋重合反応の進行が十分でない場合がある。また、250℃以上では、電荷輸送性材料や架橋材等の熱分解や結晶化が起こる場合がある。
以下、図面を参照しながら第二の工程の具体的な方法を説明する。ただし、本発明はこれらに限られるものではない。
図1は、第二の工程を行う具体的な方法における第一の形態を示す図である。図1で示される第一の形態は、ホットプレート等の加熱機構14上に電荷輸送層12となる薄膜を塗布したITO電極付基板13が配置されている。この形態では、ITO電極付基板13を基板下面側から加熱機構14で加熱しながら、基板上面側からUV−LED11からのUV光を照射して架橋重合反応を進める。これにより、当該薄膜を不溶化して電荷輸送層12を形成することができる。
図2は、第二の工程を行う具体的な方法における第二の形態を示す図である。図2で示される第二の形態は、透明な支持台15上に電荷輸送層12となる薄膜を塗布したITO電極付基板13が配置されている。この形態では、ITO電極付基板13を基板上面側から加熱機構14で加熱しながら、基板下面側からUV−LED11によるUV光を照射して架橋重合反応を進める。これにより、当該薄膜を不溶化し電荷輸送層12を形成することができる。
図3は、第二の工程を行う具体的な方法における第三の形態を示す図である。図3で示される第三の形態は、図1で示される第一の形態において、UV−LED11と電荷輸送層12との間にマスク16が設けられている。この形態では、マスク16によって、UV光をパターニング照射することが可能である。
図4は、第二の工程を行う具体的な方法における第四の形態を示す図である。図4で示される第四の形態は、加熱機構14上に電荷輸送層12となる薄膜を塗布したITO電極付基板13が配置されている点においては第一の形態と同様である。この形態では、UV−LED11から光ファイバー17を介してUV光を照射する。光ファイバー17を介してUV光を照射することにより、塗布により形成された電荷輸送層12となる薄膜の局所部分にUV光が照射され、当該薄膜を局所的に不溶化するものである。
また、第二の工程を行うにあたり、好ましくは、不活性気体雰囲気下で行う。不活性雰囲気下で行うことにより、効率的なUV硬化反応の進行が可能となると共に有機電界発光素子への不純物の混入も抑制することができる。また、第二の工程を不活性気体雰囲気下で行うのは、電荷輸送性材料が化学反応によって劣化するのを防ぐためであり、水分が素子中へ混入するのを防ぐためであり、酸素等により架橋重合反応が抑制されるのを防ぐためである。
不活性気体としては具体的には、窒素、アルゴン等が望ましい。
不活性気体で充填された環境下(不活性気体雰囲気下)で第二の工程を行う場合、基板温度が熱の滞留により設定以上に上昇するのを防ぐ目的で、不活性気体をフローしながら第二の工程を行ってもよい。また、第二の工程を行った後に、電荷輸送層内に残存する溶媒を除去する目的で追加熱処理を行ってもよい。
本発明の製造方法によって製造される有機電界発光素子について、図面を参照しながら説明する。図5は、本発明の製造方法によって製造される有機電界発光素子の具体例を示す断面図である。図5の有機電界発光素子1は、ITO電極(陽極)付基板18上に、正孔注入層19、正孔輸送層20、発光層21、電子輸送層22、電子注入層23及び陰極24が順次設けられている。ただし本発明はこの具体例に限定されるものではない。必要に応じて正孔輸送層20、電子輸送層22及び電子注入層23のいずれかを省略してもよい。
図5の有機電界発光素子1は、例えば、以下に示す方法により製造される。即ち、ITO電極付基板18上に、正孔注入層19を塗布形成した後、正孔注入層19上に上記の第一の工程及び第二の工程を経て不溶化した正孔輸送層20を形成する。次いで不溶化した正孔輸送層20の上に、発光層21を塗布形成した後、電子輸送層22、電子注入層23、陰極24を真空蒸着法により順次形成することにより、有機電界発光素子1を得る。
ただし、図5の有機電界発光素子1の製造方法は、これに限定されるものではない。別法として、ITO電極付基板18上に上記の第一の工程及び第二の工程を経て不溶化した正孔注入層19を形成する方法がある。この方法では、正孔注入層19を形成した後、例えば、正孔注入層19上に正孔輸送層20を塗布形成し、発光層21、電子輸送層22、電子注入層23及び陰極24を真空蒸着法により順次形成する。
他方で、ITO電極付基板18上に水溶性の正孔注入材料を塗布し正孔注入層19を形成した後、正孔注入層19上に上記の第一の工程及び第二の工程を経て不溶化した正孔輸送層20を形成する方法もある。この方法では、正孔輸送層20を形成した後、例えば、正孔輸送層20上に発光層21を塗布形成し、電子輸送層22、電子注入層23及び陰極24を真空蒸着法により順次形成する。
さらに、これらの系において、正孔輸送層20は電子ブロック層としての機能を有していてもよい。
一方で、ITO電極付基板上に、正孔注入層、発光層、電子輸送層、電子注入層及び陰極が順次設けられている有機電界発光素子においては、発光層を上記の第一の工程及び第二の工程を経て不溶化してもよい。このとき正孔注入層は、例えば、水溶性の正孔注入性材料を塗布することにより形成される。発光層を上記の第一の工程及び第二の工程を経て不溶化した場合は、当該発光層上に電子輸送層を塗布形成し、電子注入層及び陰極を真空蒸着法によりそれぞれ形成する。
いずれの系においても、特定の電荷輸送層を上記の第一の工程及び第二の工程を経て不溶化することで、電荷輸送性材料に本来期待される物性を損なうことなく、不溶化した機能層を形成することができる。
次に、本発明の製造方法によって製造される有機電界発光素子を構成する部材について説明する。尚、不溶化する電荷輸送層を構成する材料については既に述べたので省略する。
基板としては、特に限定はないが、金属製基板、セラミックス製基板等の不透明性基板、ガラス、石英、プラスチックシート等の透明性基板が用いられる。また、基板にカラーフィルター膜、蛍光色変換フィルター膜、誘電体反射膜等を用いて発色光をコントロールする事も可能である。
陽極を構成する材料としては、仕事関数がなるべく大きなものがよい。例えば、金、銀、白金、ニッケル、パラジウム、コバルト、セレン、バナジウム等の金属単体あるいはこれら金属単体を組み合わせた合金、酸化錫、酸化亜鉛、酸化錫インジウム(ITO)、酸化亜鉛インジウム等の金属酸化物が使用できる。また、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフェニレンスルフィド等の導電性ポリマーも使用できる。これらの電極物質は単独で用いてもよく、複数併用することもできる。また、陽極は単一の層で構成されていてもよいし、複数の層で構成されていてもよい。
発光層を構成する材料として、公知の材料を使用することができる。例えば、公知のアリールアミンポリマーを発光層のホストとして使用する場合、ゲストとして、一般的に知られている蛍光性発光化合物及び燐光性発光化合物を使用することができる。
蛍光性発光化合物として、例えば、ベンゾオキサゾール及びその誘導体、ベンゾイミダゾール及びその誘導体、ベンゾチアゾール及びその誘導体、スチリルベンゼン及びその誘導体、ポリフェニル及びその誘導体、ジフェニルブタジエン及びその誘導体、テトラフェニルブタジエン及びその誘導体、ナフタルイミド及びその誘導体、クマリン及びその誘導体、縮合芳香族化合物、ペリノン及びその誘導体、オキサジアゾール及びその誘導体、オキサジン及びその誘導体、アルダジン及びその誘導体、ピラリジン及びその誘導体、シクロペンタジエン及びその誘導体、ビススチリルアントラセン及びその誘導体、キナクリドン及びその誘導体、ピロロピリジン及びその誘導体、チアジアゾロピリジン及びその誘導体、シクロペンタジエン及びその誘導体、スチリルアミン及びその誘導体、ジケトピロロピロール及びその誘導体、芳香族ジメチリディン化合物、8−キノリノール及びその誘導体の金属錯体やピロメテン及びその誘導体の金属錯体、希土類錯体、遷移金属錯体に代表される各種金属錯体等、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン等のポリマー化合物、有機シラン及びその誘導体等が挙げられる。
燐光性発光化合物として、例えば、遷移金属錯体が挙げられる。中心金属は特に限定されないが、好ましくは、イリジウム錯体、白金錯体、レニウム錯体、銅錯体、ルテニウム錯体等であり、より好ましくはイリジウム錯体である。
電子注入・輸送層を構成する材料は特に限定されないが、公知の電子輸送性材料又は電荷輸送性材料から選ぶことができる。具体的には、オキサジアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、チアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、ピラジン誘導体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、ペリレン誘導体、キノリン誘導体、キノキサリン誘導体、フルオレノン誘導体、アントロン誘導体、フェナントロリン誘導体、キノリノールアルミニウム錯体等の有機金属錯体等の有機化合物が挙げられる。その他、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、インジウム、銀、鉛、錫、クロム等の金属、フッ化リチウム等の金属フッ化物又は炭酸セシウム等の金属酸化物を単独、もしくは上記有機化合物と混合して使用できる。
一方、陰極を構成する材料としては仕事関数の小さなものがよい。例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、インジウム、銀、鉛、錫、クロム等の金属単体あるいはこれら金属単体を複数組み合わせた合金又はこれらの塩等を用いることができる。また、陰極は単層でも複数層でも構わない。酸化錫インジウム(ITO)等の金属酸化物の利用も可能である。また、陰極は単一の層で構成されていてもよいし、複数の層で構成されていてもよい。
尚、作製した素子に対して、酸素や水分等との接触を防止する目的で、保護層又は封止層を設けることもできる。保護層としては、ダイヤモンド薄膜、金属酸化物、金属窒化物等の無機材料膜、フッ素樹脂、ポリパラキシレン、ポリエチレン、シリコーン樹脂、ポリスチレン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂等の高分子膜又は光硬化性樹脂等が挙げられる。また、ガラス、気体不透過性フィルム、金属等をカバーし、適当な封止樹脂により素子自体をパッケージングすることもできる。
次に、本発明の有機電界発光装置の製造装置について説明する。本発明の有機電界発光素子の製造装置は、電荷輸送層を構成する有機化合物を含む溶液を塗布し、薄膜を形成する機構と、該薄膜にUV光を照射する機構と、該薄膜を加熱する機構と、を具備することを特徴とする。
以下、図面を参照しながら本発明の有機電界発光素子の製造装置について説明する。
図6は、本発明の有機電界発光素子の製造装置の概略を示す図である。図6において、矢印は、有機電界発光素子の流れを示すものである。
図6の製造装置を用いて有機電界発光素子を製造するときは、まず、ITO等の電極と必要に応じてTFT等の駆動回路とを有する基板を、表面処理機構25により表面処理する。ここでいう表面処理として、具体的には、溶媒を使用した溶剤処理、プラズマ処理、オゾン処理、加熱処理等公知の技術が挙げられるが、これらに限定されない。表面処理機構25において表面処理を施すことにより、基板表面の汚染物質を除去したり、基板表面の塗布溶液に対する濡れ性を向上させたりすることができる。
次に、表面処理された基板を塗布機構26に導入し、正孔注入層、正孔輸送層、発光層等の塗布形成を行う。塗布機構26において、各層を塗布形成するときは、公知の技術を用いることができる。具体的には、インクジェット法、印刷法、ノズルディスペンス法、LB法等が挙げられるがこれらに限定されない。尚、塗布機構26の中に、塗布溶媒を蒸発させる目的で加熱機構を含んでいてもよい。
塗布機構26において塗布形成される塗布膜のうち、本発明の製造方法を用いて不溶化する電荷輸送層の塗布膜に関しては、塗布後にUV光照射機構及び加熱機構を有する複合機構27へ導入する。複合機構27において、不溶化した電荷輸送層を形成した後、さらに上の層を塗布形成するために再度塗布機構26に戻してもよい。尚、塗布機構26は同一のものを繰り返し用いてもよいし、また複数の塗布機構を交互に用いてもよい。また、塗布機構26と複合機構27とが一体となっていてもよい。このように塗布機構26とUV光照射機構及び加熱機構を有する複合機構27とを具備することにより、有機電界発光素子を効率よく製造することができる。
有機電界発光素子を構成する層のうち塗布により形成する層を上記の塗布機構26及び複合機構27で形成した後、電子輸送層、電子注入層、陰極等の残りの層を成膜機構28にて形成する。成膜機構28とは、具体的には、真空蒸着法、レーザー転写法等の手法を利用して当該残りの層を順次形成する機構である。尚、利用する手法は、一つであってもよいし二つ以上を組み合わせたものであってもよいが、これらの手法に限定されるものではない。
製膜機構28により有機電界発光素子の積層構造を一通り作製した後、封止機構29にて素子を封止することによって、有機電界発光素子が得られる。
ここで図6における複合機構27について詳細に説明する。図7は、図6における複合機構27の具体例を示す図である。図7の複合機構27は、加熱機構36とUV光照射機構であるUV−LED35とが装置筐体38に内蔵されている。また、装置筐体38の上部には不活性気体を導入するガス導入口30が、下部には、不活性ガスを排出するガス排出口31がそれぞれ設けられている。さらに、装置筐体38の両側面には、それぞれ基板導入口32と基板搬出口33が設けられ、装置筐体38の内部には加熱機構36上に素子基板39を輸送させるための基板輸送機構34が設けられている。図7の複合機構27において、UV−LED35及び加熱機構36は、好ましくは、装置筐体38の外部に設けられている制御装置37にて制御される。また制御装置37はUV光の照射と加熱とを同時に行うことができる機構である。
図7の複合機構27において、素子基板39は、基板搬入口32から装置筐体38内部へ搬入され、基板輸送機構34を介して加熱機構36へ搬送される。その後、UV−LED35によるUV光の照射と加熱機構36による加熱処理とを行うことにより、素子基板39上に塗布形成された電荷輸送層となる薄膜が不溶化される。その後、素子基板39は、基板輸送機構34を介して、基板搬出口33から装置筐体38の外部へ搬出され、他の機構へ搬送される。この一連の操作を行うにあたり、装置筐体38内を不活性気体環境にし、さらに不活性気体のフローを可能にするため、装置筐体38には不活性気体導入口30及び不活性気体排出口31を備えることが望ましい。また、UV−LED35及び加熱機構36のそれぞれを制御する制御装置37を、装置筐体38の外部もしくは内部に設置する。制御装置37は1台でUV−LED35と加熱機構36の両方を制御してもよく、また各々について制御装置37を用意してもよい。
UV−LED35によるUV光照射工程と、加熱機構36による加熱工程の順序に特に制限はない。あらかじめ基板を加熱した上でUV光照射してもよく、またUV光照射開始後一定時間経過してから加熱を開始してもよい。
(実施例1)
表面にITO電極を有するガラス基板の表面をイソプロピルアルコールにて溶媒洗浄した後、UVオゾン洗浄を40分間施し、基板表面の付着物を除去した。
次に、PEDOT/PSS水溶液をITO表面上に滴下しスピンコートした後、大気下で200℃10分加熱処理を施し、次いで窒素雰囲気下で200℃10分加熱処理を施すことにより、PEDOT/PSS薄膜を形成した。
次に、以下に示す試薬、溶媒を混合して塗布液を調製した。
電荷輸送性ポリマー(例示化合物No.1):20mg
架橋剤(例示化合物No.7):12mg
下記式に示される重合開始剤(ベンゾインエチルエーテル(例示化合物No.27)):1mg
Figure 2009129603
トルエン:5ml
次に、窒素雰囲気下でこの塗布液を上記PEDOT/PSS薄膜上に滴下し、スピンコートすることにより、薄膜を形成した。次に、窒素雰囲気下にて、この薄膜を200℃で加熱しながら、UV−LEDを光源とするUV光をこの薄膜に照射して電荷輸送性ポリマーと架橋剤との反応を進行させることで、当該薄膜を不溶化することにより正孔輸送層を形成した。
ここで正孔輸送層を形成するにあたり、UV光照射時間に対する電荷輸送性ポリマー由来の発光(PL)スペクトルを測定し評価した。図8は、本実施例におけるUV光照射時間とPLスペクトルの形状変化を示す図である。図8より、PLスペクトルの形状及びPL発光強度の変化は顕著には現れず、UV光照射前後における電荷輸送性ポリマーの物性が維持されていることが示唆された。また、UV光照射による不溶化処理前後において、電荷輸送性ポリマー由来の吸光スペクトルを測定し評価した。具体的には、正孔輸送層上をトルエンでスピンコートする前後の吸光スペクトルのピーク比を硬化度と定義して、UV光照射に伴う硬化度の時間変化を評価した。図9は、UV光照射時間に対する硬化度を示す図である。図9より、本実施例においては、照射時間を5分以上とすると正孔輸送層の硬化が進行していることが確認された。
(比較例1)
実施例1において、正孔輸送層となる薄膜に高圧水銀ランプを照射して当該薄膜を不溶化した以外は、実施例1と同様の方法によりITO電極を有するガラス基板にPEDOT/PSS及び正孔輸送層をこの順で積層した。
また、実施例1と同様の方法でPLスペクトルの測定・評価を行った。図10は、本比較例におけるUV光照射時間とPLスペクトルの形状変化を示す図である。その結果、高圧水銀ランプを照射することにより確かに正孔輸送層となる薄膜を不溶化することができた。しかし図10よりUV光の照射に伴い、電荷輸送性ポリマー由来のPLスペクトルが著しく長波長化し発光強度が減少する様子が確認されたので、高圧水銀ランプの照射により電荷輸送性ポリマーが劣化することが示唆された。
(比較例2)
実施例1において、正孔輸送層となる薄膜を加熱させずに当該薄膜の不溶化を行った以外は、実施例1と同様の方法によりITO電極を有するガラス基板にPEDOT/PSS及び正孔輸送層をこの順で積層した。
ここで、本比較例において、実施例1と同様の方法で当該薄膜の硬化度を評価した。図9は、UV光照射時間に対する硬化度を示す図である。図9より、当該薄膜を加熱しないと、20分以上UV−LEDによるUV光の照射を行ったとしても、硬化度がほとんど増加せず架橋反応が十分に進行しないことがわかった。
(実施例2)
以下に示す方法で、基板上に、陽極、正孔注入層、発光層、電子注入層及び陰極がこの順に設けられている有機発光素子を作製した。
表面にITO電極(陽極)を有するガラス基板の表面をイソプロピルアルコールにて溶媒洗浄した後、UVオゾン洗浄を40分間施し、基板表面の付着物を除去した。
次に、以下に示す試薬、溶媒を混合し第一の塗布液を調製した。
電荷輸送性ポリマー(例示化合物No.1):20mg
架橋剤(例示化合物No.7):12mg
重合開始剤(例示化合物No.27):1mg
トルエン:5ml
次に、窒素雰囲気下でこの第一の塗布液を上記ITO電極上に滴下しスピンコートすることで、薄膜を形成した。次に、窒素雰囲気下にて、この薄膜を200℃で加熱しながら、UV−LEDを光源とするUV光を照射して電荷輸送性ポリマーと架橋剤との反応を進行させることで、当該薄膜を不溶化することにより正孔注入層を形成した。尚、この正孔注入層は電子ブロック層としての機能を兼ねていてもよい。
次に、下記式に示される試薬、溶媒を混合し第二の塗布液を調製した。尚、下記に示されるIr(ppy)3、PBD及びPVKは、それぞれ第一ゲスト、第二ゲスト及びホストである。
Ir(ppy)3(トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム、トスコ社製):0.01質量部
PBD(商品名:2−(4−tert−ブチルフェニル)−5−(4−ビフェニリル)−1,3,4−オキサジアゾール、アルドリッチ社製):0.3質量部
PVK(商品名:ポリ(9−ビニルカルバゾール)、Mn=35000、アルドリッチ社製):0.7質量部
Figure 2009129603
1,2−ジクロロベンゼン(キシダ化学社製):99質量部
次に、この第二の塗布液を上記正孔注入層上に滴下しスピンコートすることにより、薄膜を形成した。次に、80℃で30分間加熱し薄膜中の溶媒を蒸発させることにより発光層を形成した。
次に、フッ化リチウムを蒸着し電子注入層を形成した。次に、アルミニウムを蒸着し陰極を形成した。最後に、窒素雰囲気下にて、保護用ガラス板を被せてアクリル樹脂系接着剤で封止した。以上のようにして有機電界発光素子を得た。この素子に8Vの印加電圧をかけると、2000cd/m2の強度で発光した。
(実施例3)
以下に示す方法で、基板上に、陽極、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子注入層及び陰極がこの順に設けられている有機発光素子を作製した。
表面にITO電極(陽極)を有するガラス基板の表面をイソプロピルアルコールにて溶媒洗浄した後、UVオゾン洗浄を40分間施し、基板表面の付着物を除去した。
次に、PEDOT/PSS水溶液をITO表面上に滴下しスピンコートした後、大気下で200℃10分加熱処理を施し、次いで窒素雰囲気下で200℃10分加熱処理を施すことにより、PEDOT/PSS薄膜(正孔注入層)を形成した。
次に、以下に示す試薬、溶媒を混合し第一の塗布液を調製した。
電荷輸送性ポリマー(例示化合物No.1):20mg
架橋剤(例示化合物No.7):12mg
重合開始剤(例示化合物No.27):1mg
トルエン:5ml
次に、窒素雰囲気下でこの第一の塗布液を上記ITO電極上に滴下しスピンコートすることで、薄膜を形成した。次に、窒素雰囲気下にて、この薄膜を200℃で加熱しながら、UV−LEDを光源とするUV光を照射して電荷輸送性ポリマーと架橋剤との反応を進行させることで、当該薄膜を不溶化することにより正孔輸送層を形成した。尚、この正孔輸送層は電子ブロック層としての機能を兼ねていてもよい。
次に、実施例2と同様の方法で第二の塗布液を調製し、この第二の塗布液を上記正孔輸送層上に滴下しスピンコートすることにより、薄膜を形成した。次に、80℃で30分間加熱し薄膜中の溶媒を蒸発させることにより発光層を形成した。
次に、フッ化リチウムを蒸着し電子注入層を形成した。次に、アルミニウムを蒸着し陰極を形成した。最後に、窒素雰囲気下にて、保護用ガラス板を被せてアクリル樹脂系接着剤で封止した。以上のようにして有機電界発光素子を得た。この素子に8Vの印加電圧をかけると、3000cd/m2の強度で発光した。
(実施例4)
以下に示す方法で、基板上に、陽極、正孔注入層、発光層、電子輸送層、電子注入層及び陰極がこの順に設けられている有機発光素子を作製した。
表面にITO電極を有するガラス基板の表面をイソプロピルアルコールにて溶媒洗浄した後、UVオゾン洗浄を40分間施し、基板表面の付着物を除去した。
次に、PEDOT/PSS水溶液をITO表面上に滴下しスピンコートした後、大気下で200℃10分加熱処理を施し、次いで窒素雰囲気下で200℃10分加熱処理を施すことにより、PEDOT/PSS薄膜(正孔注入層)を形成した。
次に、以下に示す試薬、溶媒を混合し第一の塗布液を調製した。
電荷輸送性ポリマー(例示化合物No.1):20mg
架橋剤(例示化合物No.7):12mg
重合開始剤(例示化合物No.27):1mg
トルエン:5ml
次に、窒素雰囲気下でこの第一の塗布液を上記ITO電極上に滴下しスピンコートすることで、薄膜を形成した。次に、窒素雰囲気下にて、この薄膜を200℃で加熱しながら、UV−LEDを光源とするUV光を照射して電荷輸送性ポリマーと架橋剤との反応を進行させることで、当該薄膜を不溶化することにより発光層を形成した。
次に、下記式に示されるトリス(8−ヒドロキシキノリノール)アルミニウム錯体(例示化合物No.31)の0.1重量%トルエン溶液を、上記発光層上に滴下しスピンコートすることにより、薄膜を形成した。次に、80℃で30分間加熱し薄膜中の溶媒を蒸発させることにより電子輸送層を形成した。
Figure 2009129603
次に、フッ化リチウムを蒸着し電子注入層を形成した。次に、アルミニウムを蒸着し陰極を形成した。最後に、窒素雰囲気下にて、保護用ガラス板を被せてアクリル樹脂系接着剤で封止した。以上のようにして有機電界発光素子を得た。この素子に8Vの印加電圧をかけると、1800cd/m2の強度で発光した。
(比較例3)
実施例2において、第一の塗布液により形成された薄膜を、UV−LED及び加熱機構を用いずに、水銀ランプにて不溶化したことを除いては、実施例2と同様の方法により有機電界発光素子を得た。この素子に8Vの印加電圧をかけると、1500cd/m2の強度で発光した。
(実施例5)
図6に示す有機電界発光素子の製造装置を用いて、実施例2と同様の有機電界発光素子を得た。尚、図6に示す有機電界発光素子の製造装置は図7に示す装置を有するものであり、図7に示す装置を用いて、正孔注入層を形成した。この素子に8Vの印加電圧をかけると、2000cd/m2の強度で発光した。
第二の工程を行う具体的な方法における第一の形態を示す概略図である。 第二の工程を行う具体的な方法における第二の形態を示す概略図である。 第二の工程を行う具体的な方法における第三の形態を示す概略図である。 第二の工程を行う具体的な方法における第四の形態を示す概略図である。 本発明の製造方法によって製造される有機電界発光素子の具体例を示す断面図である。 本発明の有機電界発光素子の製造装置の概略を示す図である。 図6における複合機構の具体例を示す図である。 実施例1における、電荷輸送性ポリマーのPLスペクトルの時間変化を示す図である。 実施例1及び比較例2における、UV光照射時間と硬化度との関係を示す図である。 比較例1における、電荷輸送性ポリマーのPLスペクトルの時間変化を示す図である。
符号の説明
1 有機電界発光素子
11,35 UV−LED
12 電荷輸送層
13,18 ITO電極付基板
14 加熱機構
15 支持台
16 フォトマスク
17 光ファイバー
19 正孔注入層
20 正孔輸送層
21 発光層
22 電子輸送層
23 電子注入層
24 陰極
25 表面処理機構
26 塗布機構
27 複合機構
28 成膜機構
29 封止機構
30 不活性気体導入口
31 不活性気体排出口
32 基板導入口
33 基板搬出口
34 基板輸送機構
36 加熱機構
37 制御装置
38 装置筐体
39 素子基板

Claims (6)

  1. 電荷輸送層を構成する有機化合物を含む溶液を塗布する工程と、
    該塗布により成膜される薄膜に、UV光を照射すると共に該薄膜を加熱して、該薄膜を不溶化することにより、該電荷輸送層を形成する工程と、を含み、
    該UV光の光源がUV−LEDであることを特徴とする、有機電界発光素子の製造方法。
  2. 前記電荷輸送層が、正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層又は発光層であることを特徴とする、請求項1に記載の有機電界発光素子の製造方法。
  3. 前記電荷輸送層が、正孔注入層、正孔輸送層又は電子ブロック層であることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機電界発光素子。
  4. 前記電荷輸送層を形成する工程を不活性気体雰囲気下で行うことを特徴とする、請求項1に記載の有機電界発光素子の製造方法。
  5. 電荷輸送層を構成する有機化合物を含む溶液を塗布し、薄膜を形成する機構と、
    該薄膜にUV光を照射する機構と、
    該薄膜を加熱する機構と、を具備することを特徴とする、有機電界発光素子の製造装置。
  6. さらに前記UV光の照射と前記加熱とを同時に行う機構を具備することを特徴とする、請求項5に記載の有機電界発光素子の製造装置。
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