JP2009126854A - トランス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルの製造方法 - Google Patents

トランス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル(HDMT)のシス体からトランス体への異性化反応において、高収率で生産性に優れ、工業的に実用性の高いトランス−HDMTの製造方法を提供する。
【解決手段】異性化触媒として強塩基性3級アミン化合物を用いる。上記強塩基性3級アミン化合物の塩基解離定数は、9.0以上であることがより好ましい。また、上記強塩基性3級アミン化合物は、1,5−ジアザビシクロ〔4,3,0〕ノナン−5−エン、1,8−ジアザビシクロ〔5,4,0〕ウンデカ−7−エン、4−ジメチルアミノピリジンからなる群より選ばれる少なくとも一つであることがより好ましい。
【選択図】なし

Description

本発明は、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルのシス体を異性化してトランス体を製造するトランス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルの製造方法に関するものである。
トランス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルは、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂およびポリカーボネート樹脂等の製造原料における二塩基酸成分として用いることにより、これら樹脂の耐熱性、耐衝撃性および成型性等を向上させることができる。つまり、トランス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルは、上記樹脂の耐熱性、耐衝撃性および成型性等の向上に有効に作用する。尚、本件特許出願においては、「1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル」を、適宜、「HDMT」と表記する。
HDMTのトランス体(トランス−HDMT)の製造方法としては、HDMTのシス体(シス−HDMT)を異性化してトランス体に変換する方法が一般的である。そして、古典的には、触媒としてアルカリ金属またはアルカリ土類金属のアルコラ−トを使用して製造する方法が知られている。
また、特許文献1には、ZrO、TiO、AlおよびHfOから選ばれる金属酸化物をHPOまたはメタタングステン酸アンモニウムで処理してなる固体酸触媒を用いて、220〜265℃の範囲で反応させる方法が開示されている。
特許文献2には、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を触媒として用いて、200〜300℃の範囲で反応を行なう方法が開示されている。
特許文献3には、シリカゲルや変性アルミナ等の担体にケイタングステン酸やリンモリブデン酸を担持した固体酸やシリカ−アルミナ複合金属酸化物を固体酸として用い、200〜265℃の範囲で反応を行なう方法が開示されている。
非特許文献1には、塩化リチウムを触媒として、280℃にて反応を行なう方法が開示されている。
また、特許文献4には、塩基性複合酸化物を触媒として、240〜300℃にて反応を行なう方法が開示されている。
米国特許第5231218号明細書(1993年7月27日公開) 米国防衛出願公告第T911020号(1973年6月26日公開) 米国防衛出願公告第T892024号(1971年11月30日公開) 特開2000−191602号公報(2000年7月11日公開) Makromol.Chem., 188,1281(1987)
しかしながら、上記古典的な方法では触媒を除去することが困難であり、しかも、触媒を再使用することができない。
また、固体酸触媒や固体酸等の触媒を使用した異性化反応では、原料であるHDMTの加水分解等の副反応が顕著に起こるため、高沸点化合物の副生が多くなり、収率が低下する原因となる。さらに、酸である触媒に起因する反応装置の腐食が問題となるので、工業的に不利である。また、原料に混入しているカルボン酸や、異性化反応時の副反応によって生じるカルボン酸によって、触媒から金属イオンが溶出する。このため、溶出した金属イオンが、トランス−HDMTを原料として用いた樹脂の製造時の重合特性や、製造された樹脂の電気特性に悪影響を及ぼす。それゆえ、触媒から溶出した金属イオンを除去する工程が必要となる。
一方、塩基性複合酸化物等の触媒を使用した異性化反応でも、原料であるHDMTの加水分解等の副反応で生じるカルボン酸によって、触媒から金属イオンが溶出することは否めない。そのため、触媒から溶出した金属イオンを除去する工程がやはり必要となる。
即ち、上記従来の製造方法では、副反応が起こり易い;反応装置の腐食が問題となる;金属イオンが混入する;等の問題を有しており、それゆえ、これら問題が解決された、高収率で生産性に優れ、工業的に実用性の高いトランス−HDMTの製造方法が求められている。
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、シス−HDMTからトランス−HDMTへの異性化反応において、副反応が起こり難く、反応装置の腐食が少なく、かつ、金属イオンが混入しない方法、つまり、高収率で生産性に優れ、工業的に実用性の高いトランス−HDMTの製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記問題を解決すべく鋭意研究を行った結果、異性化触媒として強塩基性3級アミン化合物を用いることにより、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明に係るトランス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルの製造方法は、上記の課題を解決するために、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルのシス体を異性化してトランス体を製造する方法において、異性化触媒として強塩基性3級アミン化合物を用いることを特徴としている。
上記の方法によれば、副反応が起こり難く、トランス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルを高収率で生産性良く製造することができる。また、異性化触媒には金属が含まれていないので、反応装置の腐食が問題となる;金属イオンが混入する;等の問題を生じることはない。従って、上記の方法によれば、副反応が起こり難く、反応装置の腐食が少なく、かつ、金属イオンが混入しない方法、つまり、高収率で生産性に優れ、工業的に実用性の高いトランス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルの製造方法を提供することができる。
そして、本発明に係るトランス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルの製造方法は、上記強塩基性3級アミン化合物の塩基解離定数が、9.0以上であることがより好ましい。また、本発明に係るトランス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルの製造方法は、上記強塩基性3級アミン化合物が、1,5−ジアザビシクロ〔4,3,0〕ノナン−5−エン、1,8−ジアザビシクロ〔5,4,0〕ウンデカ−7−エン、4−ジメチルアミノピリジンからなる群より選ばれる少なくとも一つであることがより好ましい。さらに、本発明に係るトランス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルの製造方法は、溶媒として炭素数5〜8の直鎖状、分枝状或いは環状のアルカンを用いることがより好ましい。また、本発明に係るトランス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルの製造方法は、シス体/トランス体の比率が99/1〜35/65の範囲である1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルのシス体/トランス体混合物を原料として用いることがより好ましい。
本発明に係る製造方法は、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルのシス体を異性化してトランス体を製造する方法において、異性化触媒として強塩基性3級アミン化合物を用いる方法である。
これにより、副反応が起こり難く、反応装置の腐食が少なく、かつ、金属イオンが混入しない方法、つまり、高収率で生産性に優れ、工業的に実用性の高いトランス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルの製造方法を提供することができるという効果を奏する。
本発明に係るトランス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルの製造方法の好適な実施形態について、以下に説明する。
当該製造方法は、HDMTのシス体を異性化してトランス体を製造する方法であり、異性化触媒として強塩基性3級アミン化合物を用いる方法である。
本発明において異性化反応の原料となるHDMTは、通常、テレフタル酸ジメチルの核水素化により得ることができる。HDMTの製造方法は特に限定されるものではなく、公知の何れの製造方法を採用してもよい。そのような製造方法としては、例えば、特開昭54−163554号、特開平6−192146号、特開平7−149694号、特開平8−187432号、特開平10−45645号、特開2000−1447、WO9429261号、WO9800383号、米国特許第5286898号、米国特許第5399742号等が知られている。公知の何れの製造方法で得られたHDMTであっても、本発明における異性化反応の原料として用いることができる。
異性化反応の原料となる上記HDMTは、HDMTのシス体(シス−HDMT)であってもよく、シス−HDMTとHDMTのトランス体(トランス−HDMT)との混合物であってもよい。HDMTがシス体とトランス体との混合物である場合には、両者の比率(シス体/トランス体)は、99/1〜35/65の範囲内であることがより好ましい。HDMTの異性化反応は平衡反応であり、シス体とトランス体との混合物におけるトランス体の平衡組成は65%程度である。従って、トランス体の比率が65%を越えるものは、その比率以上に異性化させることが困難である。
本発明において用いる異性化触媒としての強塩基性3級アミン化合物は、シス−HDMTの異性化反応に対して触媒活性を示す化合物であればよいが、塩基解離定数(pKa)が、9.0以上であることがより好ましく、9.5以上であることがさらに好ましく、11.0以上であることが特に好ましい。上記塩基解離定数が9.0未満であると、異性化率が小さくなる場合があると共に、異性化反応を高温で行わなければならないので、副反応が起こり易く、その結果、副生成物が多量に生成して生産性に劣る場合がある。つまり、塩基解離定数が9.0未満であると、経済的ではないので、工業的に実用性が低くなるおそれがある。
強塩基性3級アミン化合物は、一種類の化合物のみを用いてもよく、複数種類の化合物を併用してもよい。また、複数種類の化合物を併用する場合において、それらの混合比や混合方法は、特に限定されるものではない。但し、複数種類の化合物を併用する場合において、互いの塩基解離常数に大きな差がある場合には、塩基解離定数がより大きい化合物が主に触媒として作用し、塩基解離定数がより小さい化合物は触媒として機能しない。従って、複数種類の化合物を併用する場合には、互いの塩基解離常数の差が少ない化合物を組み合わせることが望ましい。
上記強塩基性3級アミン化合物としては、具体的には、例えば、1,5−ジアザビシクロ〔4,3,0〕ノナン−5−エン(pKa=12.7;以下、「DBN」と表記する)、1,8−ジアザビシクロ〔5,4,0〕ウンデカ−7−エン(pKa=12.5;以下、「DBU」と表記する)、4−ジメチルアミノピリジン(pKa=9.65;以下、「4−DMAP」と表記する)等が挙げられる。上記例示のなかでもビシクロ構造を有する3級アミン化合物がより好適である。強塩基性3級アミン化合物は、重合反応や縮合反応の触媒等として一般的に使用されており、従って容易に入手することができる。
強塩基性3級アミン化合物は、HDMTや一般的な有機溶媒に容易に溶解する。また、強塩基性3級アミン化合物は、HDMTの副反応によって生じるカルボン酸と塩を形成することができ、形成された塩はHDMTや一般的な有機溶媒に容易に溶解する。このため、上記塩は、異性化反応後の反応液に対して蒸留操作若しくは晶析操作を行うことにより、目的物であるトランス−HDMTから容易に除去することができる。
強塩基性3級アミン化合物の使用量は、原料となるHDMTに対して、0.05質量%以上、10質量%以下の範囲内がより好ましく、0.1質量%以上、5質量%以下の範囲内がさらに好ましい。上記使用量が0.05質量%未満であると、反応速度が非常に遅くなるので効率的ではない。一方、上記使用量を10質量%より多くしても、反応速度はそれほど向上しないので合理的ではない。
また、本発明に係る製造方法における、シス−HDMTからトランス−HDMTへの異性化反応は、溶媒を用いなくても進行するが、必要に応じて溶媒を用いてもよい。上記溶媒は、HDMTを溶解するものであれば任意に使用することができるが、有機溶媒であることがより好ましく、HDMTとエステル交換反応を行わない有機溶媒がさらに好ましい。特に、トランス−HDMTをより効率的に製造するには、異性化反応後、晶析によってトランス−HDMTからシス−HDMTおよび強塩基性3級アミン化合物を除去することができる溶媒を選択することが望ましい。即ち、トランス−HDMTの溶解度に温度依存性があって当該トランス−HDMTを晶析させ易く(回収し易く)、かつ、シス−HDMTおよび強塩基性3級アミン化合物の溶解度に温度依存性があまりなく容易に溶解させることのできる溶媒が最適である。これにより、シス−HDMTと共に分離した強塩基性3級アミン化合物を再利用することができるので、当該強塩基性3級アミン化合物を有効に活用することができる。
上記溶媒としては、炭化水素系溶媒が好適であり、具体的には、例えば、n−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、n−ヘキサン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n−ヘプタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、3−エチルペンタン、2,2−ジメチルペンタン、2,3−ジメチルペンタン、2,4−ジメチルペンタン、3,3−ジメチルペンタン、2,2,3−トリメチルブタン、ジメチルシクロヘキサン類等の、炭素数5〜8の直鎖状、分枝状或いは環状のアルカンが挙げられる。これら溶媒は、一種類だけを用いてもよく、複数種類を適宜混合して用いてもよい。
溶媒の使用量は、原料となるHDMTに対して、0.5質量倍以上、10質量倍以下の範囲内がより好ましい。上記使用量が0.5質量倍未満であると、シス−HDMTに対するトランス−HDMTの溶解度が高いことに加えて、冷却時に析出するスラリーの濃度が高くなり過ぎるので、晶析によってトランス−HDMTからシス−HDMTおよび強塩基性3級アミン化合物を除去することが難しくなるおそれがある。一方、上記使用量を10質量倍より多くすると、溶媒にトランス−HDMTが多く溶解することになるので、当該トランス−HDMTの晶析が難しくなり、生産性が低下するので合理的ではない。
本発明に係る製造方法においては、原料となるHDMTと、強塩基性3級アミン化合物と、必要に応じて溶媒とを混合して加熱するだけで、異性化反応を進行させることができる。従って、副反応が起こり難く、反応装置の腐食が少なく、かつ、金属イオンが混入することがない。上記HDMT、強塩基性3級アミン化合物、および溶媒(必要に応じて)の混合順序は、特に制限されるものではない。また、上記製造方法の形態は、バッチ式であってもよく、連続式であってもよい。
反応温度は、150〜300℃がより好ましく、180〜250℃が特に好ましい。反応温度が150℃未満であると、反応速度が非常に遅くなるので効率的ではない。一方、反応温度が300℃を超えると、HDMTの熱安定性が低下して副反応が顕著に起こるため、副生成物が多くなり、収率が低下する。また、反応装置の耐熱性および耐圧性を向上させる必要があるので装置の負荷が大きくなり、工業的に不利である。
反応時間は、反応温度に依存するものの、通常、1〜10時間である。反応時間が1時間未満であると、異性化反応が充分に進行しないおそれがある。一方、反応時間を10時間より長くしても、異性化反応が平衡に達するとトランス−HDMTの比率がそれ以上高くならないので合理的ではない。
上記異性化反応は、加熱下で進行させるので、HDMT、強塩基性3級アミン化合物、および溶媒(用いる場合)の酸化反応(劣化)を防止するために、窒素ガス等の不活性ガスの雰囲気下で実施することが好ましい。また、HDMTや強塩基性3級アミン化合物、溶媒(用いる場合)に水が混入していると、HDMTの加水分解が起こると共に、反応装置が腐食する。従って、異性化反応を進行させるのに先立ち、反応装置内から水を除去することが好ましい。水の除去方法としては、例えば、水と共沸する性質を有する溶媒を用いて、異性化反応を進行させる温度よりも低い温度である共沸温度に反応液を加熱し、溶媒の一部を抜き出す(留去する)操作を行えばよい。これにより、共沸組成物として水を除去することができる。尚、前述したアルカンは、水と共沸する性質を有している。
異性化反応は、通常、常圧(大気圧)で行えばよいが、必要に応じて加圧してもよい。例えば、低沸点溶媒を用いて当該溶媒の沸点よりも高い反応温度で異性化反応を進行させる場合には、耐圧性の反応装置を用い、当該装置を加圧すればよい。尚、反応装置を加圧する場合には、装置を密閉するか、或いは、窒素ガス等の不活性ガスを装置内に導入すればよい。
上記異性化反応において、溶媒を用いた場合には、異性化反応後、反応液を冷却して固体を析出させる。そして、遠心分離や濾過等の分離操作を行って、析出してきた固体を溶液から分離する。即ち、晶析を行った後、分離操作を行うことによって、トランス−HDMTと、シス−HDMTおよび強塩基性3級アミン化合物とを分離する。これにより、純度90%以上のトランス−HDMTが得られる。
分離操作後の溶液には、シス−HDMTとトランス−HDMTとの混合物(通常、シス体が多く含まれている)、および、強塩基性3級アミン化合物が含まれている。従って、この溶液に原料となるHDMTを加えて再度、異性化反応を行うことにより、溶液に含まれているHDMTおよび強塩基性3級アミン化合物を再利用することができる。つまり、トランス−HDMTを効率的に得ることができる。
一方、上記異性化反応において、溶媒を用いない場合には、異性化反応後、トランス体の比率が約65%のHDMTが得られるので、当該HDMTに対して蒸留等の操作を行って、トランス−HDMTと、シス−HDMTおよび強塩基性3級アミン化合物とを分離すればよい。これにより、純度の高いトランス−HDMTが得られる。
本発明に係る製造方法によれば、従来の製造方法よりも簡便にかつ高い選択率で、シス−HDMTをトランス−HDMTに異性化することができる。また、溶媒を用いることによって、より高純度のトランス−HDMTを簡便に得ることができる。従って、本発明によれば、高収率で生産性に優れ、工業的に実用性の高いトランス−HDMTの製造方法を提供することができる。
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に記載された製造方法に限定されるものではない。
実施例における反応後の生成物の分析は、ガスクロマトグラフィーによって行った。そして、以下の実施例において、「純度」とは、HDMT(シス体、トランス体、および不純物を含む)に含まれるHDMTの含有率(面積%)を指し、「トランス体純度」とは、HDMT(シス体、トランス体、および不純物を含む)に含まれるトランス−HDMTの含有率(面積%)を指し、「トランス体比率」とは、シス−HDMTとトランス−HDMTとの合計量に占めるトランス−HDMTの比率(面積%)を指し、「シス体純度」とは、HDMT(シス体、トランス体、および不純物を含む)に含まれるシス−HDMTの含有率(面積%)を指す。
(実施例1)
攪拌機を備えた内容積50Lのハステロイ製オートクレーブに、テレフタル酸ジメチル(以下、「DMT」と表記する)5.0kg、酢酸エチル15.0kg、および5%Rh/C触媒600g(エヌ・イー ケムキャット製)を仕込んだ。そして、上記オートクレーブ内を、圧力0.5MPaの窒素ガスを用いて5回置換した後、圧力0.5MPaの水素ガスを用いて5回置換した。次いで、このオートクレーブ内に水素ガスを導入して、5MPa,150℃で2時間、攪拌してDMTの水素化反応を行った。
次に、上記水素化反応後の反応物を室温まで冷却し、上記Rh/C触媒を濾別した後、溶媒である酢酸エチルをトッピングして異性化反応の原料となるHDMT6.0kgを得た。得られたHDMTをガスクロマトグラフィーで分析したところ、純度99.0%、トランス体純度17.5%であった。
次に、上記HDMTの異性化反応を以下のようにして行った。
コンデンサー、攪拌機および温度計を備えた容量3Lの3つ口フラスコに、原料である純度99.0%の上記HDMT(トランス体純度17.5%、トランス体比率17.7%)1.0kgと、強塩基性3級アミン化合物(異性化触媒)であるDBU40gとを仕込み、フラスコ内を窒素ガスで置換した。その後、攪拌しながら窒素気流下、200℃で4時間、異性化反応を行った。反応終了後、得られた生成物を分析した。結果を表1に示す。
(実施例2)
DBU40gの代わりにDBN34gを用いた以外は、実施例1と同様の異性化反応を行った。結果を表1に示す。
(実施例3)
電磁攪拌機および温度計を備えた内容積5LのSUS316製オートクレーブに、実施例1で用いたHDMTと同じ組成のHDMT1.0kgと、DBU40gと、溶媒であるメチルシクロヘキサン1.5kgとを仕込んだ。そして、圧力0.5MPaの窒素ガスを用いてオートクレーブ内を5回ガス置換した後、200℃で4時間、異性化反応を行った。反応終了後、得られた生成物を分析した。結果を表1に示す。
次いで、上記生成物を10℃まで冷却してトランス体を析出させた後、遠心分離を行って白色結晶を回収した。回収した白色結晶を、1kPa以下の減圧下、50℃で4時間、減圧乾燥させた。その結果、純度99.9面積%、トランス体純度98.7面積%、トランス体比率98.7%の白色結晶0.5kgを得ることができた。上記結晶の融点は67.0℃であった。また、仕込んだHDMTに対する結晶の収率は53.5%であった。
一方、遠心分離を行って回収した濾液は1.9kgであり、当該濾液には、21.5質量%のHDMT(トランス体純度25.6面積%)が含まれていた。また、濾液にはDBUが含まれていた。
(実施例4)
電磁攪拌機および温度計を備えた内容積200mlのSUS316製オートクレーブに、実施例3で回収した濾液(HDMT21.5質量%を含む、トランス体純度25.6面積%)100gを仕込んだ。そして、圧力0.5MPaの窒素ガスを用いてオートクレーブ内を5回ガス置換した後、200℃で4時間、異性化反応を行った。反応終了後、得られた生成物を分析した。結果を表1に示す。
上記実施例4の結果から明らかなように、実施例3で回収した濾液中に含まれるDBUだけで異性化反応が進行しており、従って、濾液中に含まれる強塩基性3級アミン化合物を異性化触媒として繰り返し使用できることが判った。
(実施例5)
DBU40gの代わりに4−DMAP31gを用いた以外は、実施例1と同様の異性化反応を行った。結果を表1に示す。
(比較例1)
DBU40gの代わりに2,6−ルチジン(pKa=6.96)31gを用いると共に、反応温度を250℃に変更した以外は、実施例1と同様の異性化反応を行った。結果を表1に示す。
上記比較例1の結果から明らかなように、塩基解離定数が9.0未満である2,6−ルチジンを異性化触媒として用いた場合には、異性化反応が殆ど進行しないことが判った。また、副生成物である高沸点化合物が副生し易いことも判った。
Figure 2009126854
実施例1〜5と、比較例1との対比から明らかなように、本発明によれば、副反応が起こり難く、高収率で生産性に優れたトランス−HDMTの製造方法を提供することができることが判る。
本発明によれば、副反応が起こり難く、反応装置の腐食が少なく、かつ、金属イオンが混入しない方法、つまり、高収率で生産性に優れ、工業的に実用性の高いトランス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルの製造方法を提供することができる。
トランス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルは、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂およびポリカーボネート樹脂等の製造原料における二塩基酸成分として有用である。トランス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルを用いることにより、上記樹脂の耐熱性、耐衝撃性および成型性等を向上させることができる。つまり、トランス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルは、上記樹脂の耐熱性、耐衝撃性および成型性等の向上に有効に作用する。

Claims (5)

  1. 1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルのシス体を異性化してトランス体を製造する方法において、
    異性化触媒として強塩基性3級アミン化合物を用いることを特徴とするトランス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルの製造方法。
  2. 上記強塩基性3級アミン化合物の塩基解離定数が、9.0以上であることを特徴とする請求項1に記載のトランス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルの製造方法。
  3. 上記強塩基性3級アミン化合物が、1,5−ジアザビシクロ〔4,3,0〕ノナン−5−エン、1,8−ジアザビシクロ〔5,4,0〕ウンデカ−7−エン、4−ジメチルアミノピリジンからなる群より選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする請求項1または2に記載のトランス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルの製造方法。
  4. 溶媒として炭素数5〜8の直鎖状、分枝状或いは環状のアルカンを用いることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載のトランス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルの製造方法。
  5. シス体/トランス体の比率が99/1〜35/65の範囲である1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルのシス体/トランス体混合物を原料として用いることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載のトランス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルの製造方法。
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