本発明の実施の形態を、図1〜図8を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
図1は無限移行する無端支持体を使用し、減圧チャンバを有するダイスを用いた光学用フィルムの製造装置の概略図である。図1(a)は無限移行する無端支持体して無端ベルト支持体を使用し、減圧チャンバを有するダイスを用いた光学用フィルムの製造装置の概略図である。図1(b)は無限移行する無端支持体してドラム支持体を使用し、減圧チャンバを有するダイスを用いた光学用フィルムの製造装置の概略図である。
図1(a)に示される製造装置に付き説明する。図中、1aは光学用フィルムの溶液流延法の製造装置を示す。製造装置1aは、流延工程101と、第1乾燥工程102と延伸工程103と、第2乾燥工程104と、巻き取り工程105とを有している。
流延工程101は、鏡面の無端ベルト支持体101aと、樹脂を溶媒に溶解したドープを無端ベルト支持体101aに流延するダイス101bと、減圧チャンバ101cと加熱装置101dとを有している。無端ベルト支持体101aはロール101a1とロール101a2とで保持され、回動(図中の矢印方向)が可能となっている。3はダイス101bから吐出されたドープのリボン2を無端ベルト支持体101aの上に流延したウェブを示す。ウェブ3の厚さは、巻き取り工程105で回収された光学用フィルムの厚さが設定された膜厚になるように必要に応じて設定が可能となっている。4は無端ベルト支持体101aに流延されたウェブ3を剥離する剥離ロールを示す。減圧チャンバ101cはリボン2を安定に無端ベルト支持体101aの上に流延するために配設されている。
ドープは光学用フィルム用の樹脂材料を良溶媒と、貧溶媒からなる混合溶媒を使用して作製されている。本発明では、使用する樹脂を単独で溶解するものを良溶媒、単独で膨潤するか又は溶解しないものを貧溶媒と言う。
加熱装置101dは、無端ベルト支持体101aの上に流延されたウェブ3を無端ベルト支持体101aから剥離出来る状態に溶媒を除去するために配設されている。加熱装置101dは、乾燥箱101d1と、乾燥箱101d1に配設された乾燥風の第1供給装置101d2と、第2供給装置101d3と、排気管101d4とを有している。減圧チャンバ101cに関しては図3〜図5で詳細に説明する。
101d11は第1供給装置101d2への乾燥風の供給管を示す。101d21は第2供給装置101d3への乾燥風の供給管を示す。第1供給装置101d2と、第2供給装置101d3とは無端ベルト支持体101aの表面の両端部と中央部とに供給する乾燥風の温度を別々に供給する様に配設してもよいし、無端ベルト支持体101aの全面を同じ温度の乾燥風を供給する様に配設してもよく、必要に応じて適宜選択することが可能である。第1供給装置101d2から供給される乾燥風の温度は、ウェブの有する溶媒の沸点、溶媒の蒸気圧に基づく乾燥速度等を考慮し、−20℃〜100℃であることが好ましい。
第2供給装置101d3とから供給される乾燥風の温度は、ウェブの有する溶媒の沸点、溶媒の蒸気圧に基づく乾燥速度等を考慮し、−20℃〜100℃であることが好ましい。使用する無端ベルト支持体101aとしては、表面を鏡面仕上げしたものが好ましく、例えば鋳物で表面をメッキ仕上げした金属ベルトが好ましく用いられる。無端ベルト支持体101aの幅は1700mm〜2700mmが好ましい。流延する幅は、無端ベルト支持体101aの幅に対して、80%〜99%とすることが好ましい。
第1乾燥工程102は、乾燥風取り入れ口102bと排出口102cとを有する乾燥箱102aと、ウェブ3を搬送する上部の搬送ロール102dと下部の搬送ロール102eとを有している。第1乾燥工程102で延伸工程103に入る前のウェブ3に含まれる溶媒量の調整が行うことが可能となっている。
延伸工程103は、乾燥風取り入れ口103bと排出口103cとを有する外箱103aと、外箱103aの中に入れられたテンター延伸装置103dとを有している。テンター延伸装置103dに使用するテンターは特に限定はなく、例えば、クリップテンター、ピンテンター等が挙げられ、必要に応じて選択し使用することが可能である。テンター延伸装置103dでは、ウェブ3の搬送方向(MD方向)、あるいは搬送方向と直角方向(TD方向)に必要に応じて一方、あるいは両方同時に延伸することが可能となっている。
第2乾燥工程104は、乾燥風取り入れ口104bと排出口104cとを有する乾燥箱104aと、ウェブ3を搬送する上部の搬送ロール104dと下部の搬送ロール104eとを有している。第2乾燥工程104では加熱空気、赤外線等単独又は加熱空気と赤外線乾燥を併用しても構わない。簡便さの点から加熱空気で行うのが好ましい。本図は加熱空気を使用した場合を示している。第2乾燥工程104で徐々に溶媒が除去され、全残留溶媒量が15質量%以下となったウェブを光学用フィルムと言う。
図1(b)に示される製造装置に付き説明する。図中、1bは光学用フィルムの溶液流延法の製造装置を示す。製造装置1bは、流延工程101′と、第1乾燥工程102と延伸工程103と、第2乾燥工程104と、巻き取り工程105とを有している。尚、第1乾燥工程102と延伸工程103と、第2乾燥工程104と、巻き取り工程105とは図1(a)に示される製造装置と同じであるため説明は省略する。
流延工程101′は、鏡面のドラム支持体101′aと、樹脂を溶媒に溶解したドープをドラム支持体101′aに流延するダイス101′bと、減圧チャンバ101′cと加熱装置101′dとを有している。ドラム支持体101′aは回動(図中の矢印方向)が可能に軸支されている。3′はダイス101′bから吐出されたドープのリボン2′をドラム支持体101′aの上に流延したウェブを示す。ウェブ3′の厚さは、巻き取り工程105で回収された光学用フィルムの厚さが設定された膜厚になるように必要に応じて設定が可能となっている。4′はドラム支持体101′aに流延されたウェブ3′を剥離する剥離ロールを示す。
減圧チャンバ101′cはリボン2′を安定にドラム支持体101′aの上に流延するために配設されている。
加熱装置101′dは、ドラム支持体101′aの上に流延されたウェブ3′をドラム支持体101′aから剥離出来る状態に溶媒を除去するために配設されている。加熱装置101′dは、乾燥箱101′d1と、乾燥箱101′d1に配設された乾燥風の供給装置101′d2と、排気管101′d3とを有している。供給装置101′d2から供給される乾燥風の温度は、ウェブの有する溶媒の沸点、溶媒の蒸気圧に基づく乾燥速度等を考慮し、−20℃〜100℃であることが好ましい。減圧チャンバ101′cは図1(a)に示す減圧チャンバ101cと同じ構造を有している。図1に示される製造装置は、幅1000mm〜2500mm、膜厚20μm〜100μmの光学用フィルムの製造に適している。
本発明は、図1に示される流延工程において、ダイスから吐出されたドープのリボンを無端支持体の上に流延する際、発生する同伴風、減圧チャンバの稼動に伴い発生する減圧風圧力の微変動による振動及び減圧チャンバ内の気流のリボンへの影響(リボンの揺れ)を抑制しを防止し膜厚のムラを防止した光学用フィルムの製造方法に関するものである。尚、本発明では膜厚のムラとは、膜厚自体のムラと発生したムラの間隔を含めて言う。
同伴風とは、無端支持体の移動に伴い無端支持体の移動方向に無端支持体に沿って発生する風を言い、ダイスの上流側からリボンにぶつかり、リボンを揺らし不安定にする。
減圧風とは、減圧チャンバの稼動に伴い発生する風を言い次に示す様な風が発生する。1)ダイスの下流側からウェブの流延方向とは逆方向に流れ、リボンに衝突する同伴風と衝突するように流れる風、2)リボンに衝突した減圧風がリボンの左端及び右端から減圧チャンバ内に流れる風、3)減圧チャンバと無端支持体の表面との間隙から減圧チャンバ内に流れる風がある。
減圧チャンバ内の気流とは、減圧チャンバの稼動に伴い減圧チャンバ内に吸引する同伴風、減圧風を言う。
図2は図1(a)のXで示される部分の概略図である。図2(a)は図1(a)のXで示される部分の概略斜視図である。図2(b)は図2(a)の概略平面図である。
図中、101b1はダイス101bに原料の樹脂を溶媒に溶解させたドープを供給する供給管を示す。101c1は減圧チャンバ101cの内部を減圧にするため吸引ポンプ(不図示)に繋がっている吸引管を示す。減圧チャンバ101cはウェブ3の流延方向(図中の矢印方向)に対して上流側に配設されている。減圧チャンバ101cは、天板101c2と、背板101c3と、側板101c4、側板101c5で構成されており、無端ベルト支持体101a側とダイス101b側とが開口部となっている。減圧チャンバ101cの内部は、ダイス101bから吐出されたドープのリボン2(図1参照)と平行に減圧チャンバ101cの内部を幅方向に分割するジャマ板101c6が配設されている。ジャマ板101c6は基板101c6aと、基板101c6aの中央に配設された凸部101c6bを有している。本図では凸部101c6bがダイス101b側に向けて配設されている。
Lは減圧チャンバ101cの幅を示す。幅Lは、減圧チャンバの稼動に伴い発生する減圧風のリボンへの影響、ウェブの移動に伴い発生する同伴風のリボンへの影響、減圧装置端部での減圧によるリボンへの影響、リボンの全幅にわたる減圧の偏差を抑える必要があること等を考慮し、リボン2(図1参照)の幅の80%〜150%が好ましい。尚、幅Lは、減圧チャンバ101cの内側の寸法を示す。他の符号は図1と同義である。
図3は図2に示すA−A′に沿った拡大概略断面図である。
図中、101b2はダイス101bのドープの吐出口を示す。Mは、吐出口101b2から吐出されたドープのリボン2が無端ベルト支持体101aの表面に接地した接地点を示す。Nは接地点Mから凸部101c6bが配設されているジャマ板101c6の基板101c6aの面101c6a1までの距離を示す。距離Nは、距離の増加と減圧の低下が比例すること、ジャマ板が作る減圧のリボン部全幅における減圧の均一性を維持すること、リボン部の風の流れが均一化する減圧装置とリボンまでの距離、生産速度とそれに伴う同伴風等を考慮し、20mm〜200mmが好ましい。
凸部101c6bの最も厚い部分の厚さは、整流する風の流れ、減圧の程度、生産速度等を考慮し、距離Nの1%〜50%が好ましい。
ジャマ板101c6により減圧チャンバ101cの内部は第1減圧室101c8と第2減圧室101c9とに分割されている。
Oは減圧チャンバ101cの背板101c3の内面から、ジャマ板101c6の基板101c6aの面101c6a1と反対の面101c6a2までの距離を示す。距離Oは、同伴風の吸引、減圧部位とリボン部との距離の増加と減圧の低下が比例すること、開口面積が狭いほど減圧の低下が少ないこと等を考慮し、100mm〜300mmであることが好ましい。
Pは減圧チャンバ101cの高さを示す。高さPは、減圧部位とリボン部との距離の増加と減圧の低下が比例すること、減圧のリボン部全幅における減圧の均一性を維持すること等を考慮し、100mm〜500mmであることが好ましい。
減圧チャンバ101cの側の開口部と無端支持体101aまでの距離は、無端支持体の搬送による振動幅、減圧の開口面積によるロス等を考慮し、0.5mm〜10.0mmであることが好ましい。
図4は図2に示すジャマ板の概略図である。図4(a)は図2に示すジャマ板の概略斜視図である。図4(b)は図4(a)に示すジャマ板の概略上面図である。
図中、Qはジャマ板101c6の幅を示す。幅Qは、中央と端部の減圧変化、乱流の発生、支持体進行方向と直行方向への減圧の長さ(流延方向)分布均一性等を考慮し、減圧チャンバ101cの幅L(図2参照)と同じであることが好ましい。
Rはジャマ板101c6の凸部101c6bが配設されている基板101c6aの面101c6a1の凸部101c6bの取り付け部の幅を示す。幅Rはジャマ板101c6の幅Qに対して、5%〜50%である。5%未満の場合は、減圧チャンバに入り込んでくる減圧風の整流、流延リボン端部の安定化、風向安定化が不十分となり膜厚ムラ防止に対して効果が得られなくなるため好ましくない。50%を超えた場合は、取り付けによる減圧チャンバ内部の整流効果が薄れてしまい、取り付けない場合とあまり変わらない挙動を示すこととなり膜厚ムラ防止に対して効果が得られなくなるため好ましくない。
本図に示す凸部101c6bは、側面101c6b1と、側面101c6b2と、上面101c6b3と下面101c6b4とを有する三角柱の形状をしている。三角柱の形状をしている凸部101c6bは基板101c6a1の幅方向の中央に左右対称の形状で表面101c6a1に配設されている。左右対称の形状にすることで次の効果が挙げられる。
1)リボンにさえぎられ、減圧チャンバの両端から減圧チャンバ101c(図2参照)の第1減圧室101c8(図3参照)に入った減圧風は凸部により左右に流れ、中央付近部への滞留、乱流の発生が減少する。
2)第1減圧室101c8(図3参照)内で左右の風圧と中央部の風圧との差が減少する。
3)整流するだけなので減圧はほとんどロスしない。
側面101c6b1及び側面101c6b2の表面は側面101c6b1及び側面101c6b2の表面に沿って流れる気流に乱流を生じさせないため、表面に深さ0.1mm〜3.0mmの凹部、高さ0.1mm〜3.0mmの凸部が形成されていないことが好ましい。
本図に示すジャマ板101c6は凸部101c6bがダイス101b(図2参照)側に配設されている場合を示したが、凸部を配設する位置は特に限定されることはなく、ダイス101b(図2参照)と反対側の方向、ダイス101b(図2参照)側とダイス101b(図2参照)と反対側の方向に同時に配設しても構わない。具体的に配設した状態を図6で説明する。
図2〜図4に示すジャマ板を使用することで次の効果が挙げられる。
1)ジャマ板により減圧チャンバの内部を第1減圧室と第2減圧室とに分割することで、第2減圧室の減圧度が上がるため、同伴風の吸引が容易になり、リボンへの影響を低減し安定した流延が可能となる。
2)減圧チャンバの内部に滞留する同伴風が減少することで、リボンの両端に接触する第1減圧室に流れ込む減圧風が流れ易くなり、リボンの下流側に減圧風の滞留がなくなるため減圧風の滞留で発生する、膜厚ムラ、同伴風の巻き込み、端部の波打ち等の故障がなくなる。
3)減圧チャンバの内部に滞留する同伴風が減少し、減圧風が中央部まで入りやすくなることで滞留する風による減圧変動が減少し、リボンへの影響が減少し安定した流延が可能となる。
4)凸部により、減圧チャンバの内部に入った減圧風が左右に分離するため、中央部と左右とで風圧の差が減少することでリボンの無端支持体との接地位置が中央と端部で揃うのでの揺れが減少し、膜厚が安定した流延が可能となる。
図5は他の凸部の形状を示すジャマ板の上面図である。
図4では三角柱の凸部101c6b(上面図では三角形状)の場合を示したが、凸部の形状は表面に深さ0.1mm〜3.0mmの凹部、高さ0.1mm〜3.0mmの凸部が形成されていなければ特に限定はなく、例えば(a)に示す様な台形の形状、(b)に示す様な半円の形状、(c)に示す様な角形の形状が挙げられる。尚、何れも上面図での形状を示している。
(a)〜(c)に示される凸部の幅、最も厚い部分の厚さは図2〜図4に示される三角形状の凸部と同じである。又、ジャマ板101c6の基板101c6aの中心から左右対称形状で配設することが好ましい。図中の符号は図4と同義である。
図6は減圧チャンバ内に配設した他のジャマ板の状態を示す概略上面図である。図6(a)はダイス側とダイスと反対側に凸部を配設した減圧チャンバ内のジャマ板の状態を示す概略上面図である。図6(b)はダイスと反対側に凸部を配設した減圧チャンバ内のジャマ板の状態を示す概略上面図である。
図6(a)の場合に付き説明する。図中、101c6b′はジャマ板101c6′の基板101c6a′のダイス101b側に配設された凸部を示す。101c6b″はジャマ板101c6′の基板101c6a′のダイス101bの反対側(減圧チャンバの背板101c3側)に配設した凸部を示す。図6(a)の場合は、ジャマ板101c6′の基板101c6a′の両面に凸部が配設されている状態を示す。この場合、基板101c6a′の面101c6a′2と減圧チャンバ101c(図2参照)の背板101c3までの距離O′は、50mm〜450mmであることが好ましい。凸部101c6b′の最も厚い部分の厚さ、基板101c6a′への取り付け部の幅は、図3に示される凸部101c6bと同じであることが好ましい。凸部101c6b″の最も厚い部分の厚さ、基板101c6a′への取り付け部の幅は凸部101c6b′と同じであることが好ましい。
図6(a)に示す様なジャマ板101c6′を使用したことによる効果として、減圧の変化による影響が直接リボン部に伝わるのではなく、一度外部からの吸引をとおすことでリボン部に伝わる減圧の変化が緩やかになり、生産条件に調整するときや減圧を変化させる時にリボン部に変化が伝わり難くなることが挙げられる。
図6(b)の場合に付き説明する。ダイス101bの反対側(減圧チャンバの背板101c3側)に凸部101c6b″を基板101c6a″に配設したジャマ板101c6″が減圧チャンバ101c(図2参照)内に配設されている状態を示す。この場合、ジャマ板101c6″の基板101c6a″の面101c6a″2と減圧チャンバ101c(図2参照)の背板101c3までの距離O″は、50mm〜450mmであることが好ましい。凸部101c6b″の最も厚い部分の厚さ、ジャマ板101c6″の取り付け部の幅は図3に示される凸部101c6bと同じであることが好ましい。図6(b)に示す様なジャマ板101c6″を使用したことにより次の効果が挙げられる。
1)減圧を変化させた際のリボン部への影響が抑制され、減圧条件変更の際にリボンの振動が発生することを抑制する。
2)減圧チャンバの構造上、リボンの中央は端部よりも減圧が強くなる傾向があるが、中央部の減圧が抑制され、端部の減圧との差が減少する。
図2〜図6に示されるジャマ板に使用する材料としては、熱、ドープに使用している溶媒等により、変形、変質しなければ特に限定はなく、例えばアルミニウム、ステンレス等が挙げられる。
図7は本発明の製造方法で製造した光学用フィルムを保護フィルムとして用いて作製した偏光板の模式図である。
図中、6は偏光板を示す。偏光板6は偏光子601の両側に保護フィルム602を配置した構成を有している。本図に示す偏光板は一般的な方法で作製することが出来る。保護フィルム602の裏面側をアルカリ鹸化処理し、偏光子の両面に、完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせることが好ましい。偏光子とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光子は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがある。偏光膜は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられている。本発明の偏光板は、TN、VA、OCB、HAN、IPS等の各種駆動方式を採用した液晶表示装置の視野角特性を最適化することが出来る。
図8は本発明で製造した光学用フィルムを用いて作製した偏光板を使用した液晶表示装置の模式分解構成図である。
図中、7は液晶表示装置を示す。液晶表示装置7は、液晶セル701の両側に偏光板702を有する構成となっている。偏光板702は偏光子702aの両側に保護フィルム702bを有する構成となっている。本発明の偏光板を組み込んだ液晶表示装置は、画面が30型以上、特に30型〜54型の大画面の液晶表示装置でも、コントラストが高く、特に視角による色味変化を抑制し、長時間の鑑賞でも目が疲れないという効果がある。
次に、本発明の光学用フィルムの製造方法に使用する材料に付き説明する。
(樹脂材料)
本発明の光学用フィルムの製造方法に使用する樹脂は特に限定はなく、一般に溶液流延法で使用する樹脂の使用が可能である。光学用フィルムを製造する樹脂材料としては、例えば偏光子との接着性がよいこと、光学的に透明であること等が好ましい要件として挙げられる。可視光の透過率60%以上であることを言い、好ましくは80%以上であり、特に好ましくは90%以上である。上記の性質を有している樹脂材料を使用し、本発明の光学用フィルムの製造方法により製造する光学用フィルムとしては特に限定はない。例えば、セルロースジアセテートフィルム、セルローストリアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム等のセルロースエステル系フィルム、ポリエステル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリアリレート系フィルム、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンも含む)系フィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、シンジオタクティックポリスチレン系フィルム、ポリカーボネートフィルム、シクロオレフィン系熱可塑性樹脂フィルム(アートン(JSR社製))、ゼオネックス、ゼオノア(以上、日本ゼオン社製)、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、アクリルフィルム又はガラス板等を挙げることが出来る。中でも、セルロースエステル系フィルム、シクロオレフィン熱可塑性樹脂フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンを含む)系フィルムが好ましく、本発明においては、特にセルロースエステル系フィルム、シクロオレフィン熱可塑性樹脂フィルム、ポリカーボネート系フィルムが、製造上、コスト面、透明性、接着性等の観点から好ましく用いられる。
又、本発明の光学用フィルムは、特開2000−190385号公報、特開2004−4474号公報、特開2005−195811号公報等に記載の上記フィルム上にポリマー層としてポリアミド又はポリイミド等の光学異方性層を設けた熱可塑性樹脂フィルムであることも好ましい。
(セルロースエステルフィルム)
本発明の光学用フィルムの主成分として好ましいセルロースエステルは、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートが好ましく、中でもセルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートプロピオネートが好ましく用いられる。
特に、アセチル基の置換度をX、プロピオニル基又はブチリル基の置換度をYとした時、XとYが下記の範囲にあるセルロースの混合脂肪酸エステルを有する透明フィルム基板が好ましく用いられる。
本発明の光学用フィルムとして、セルロースエステルを用いる場合、セルロースエステルの原料のセルロースとしては、特に限定はないが、綿花リンター、木材パルプ(針葉樹由来、広葉樹由来)、ケナフ等を挙げることが出来る。又それらから得られたセルロースエステルはそれぞれ任意の割合で混合使用することが出来る。これらのセルロースエステルは、アシル化剤が酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸)である場合には、酢酸のような有機酸やメチレンクロライド等の有機溶媒を用い、硫酸のようなプロトン性触媒を用いてセルロース原料と反応させて得ることが出来る。
アシル化剤が酸クロライド(CH3COCl、C2H5COCl、C3H7COCl)の場合には、触媒としてアミンのような塩基性化合物を用いて反応が行われる。具体的には、特開平10−45804号公報に記載の方法等を参考にして合成することが出来る。又、本発明の光学用フィルムの製造方法に用いられるセルロースエステルは各置換度に合わせて上記アシル化剤量を混合して反応させたものであり、セルロースエステルはこれらアシル化剤がセルロース分子の水酸基に反応する。セルロース分子はグルコースユニットが多数連結したものからなっており、グルコースユニットに3個の水酸基がある。この3個の水酸基にアシル基が誘導された数を置換度(モル%)と言う。例えば、セルローストリアセテートはグルコースユニットの3個の水酸基全てにアセチル基が結合している(実際には2.6〜3.0)。
本発明の光学用フィルムの製造方法に用いられるセルロースエステルとしては、前述のようにセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、又はセルロースアセテートプロピオネートブチレートのようなアセチル基の他にプロピオネート基又はブチレート基が結合したセルロースの混合脂肪酸エステルが特に好ましく用いられる。尚、プロピオネート基を置換基として含むセルロースアセテートプロピオネートは耐水性に優れ、液晶画像表示装置用のフィルムとして有用である。アシル基の置換度の測定方法はASTM−D817−96の規定に準じて測定することが出来る。
セルロースエステルの数平均分子量は、40000〜200000が、成型した場合の機械的強度が強く、且つ、溶液流延法の場合は適度なドープ粘度となり好ましく、更に好ましくは、50000〜150000である。又、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が1.4〜4.5の範囲であることが好ましい。
これらセルロースエステルは、一般的に溶液流延製膜法と呼ばれるセルロースエステル溶解液(ドープ)を、例えば、無限に移送する無端の金属ベルト又は回転する金属ドラムの流延用支持体上に加圧ダイからドープを流延(キャスティング)し製膜する方法で製造されることが好ましい。
(ドープ)
ドープの調製に用いられる有機溶媒としては、セルロースエステルを溶解出来、且つ、適度な沸点であることが好ましく、例えば、メチレンクロライド、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセト酢酸メチル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、蟻酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等を挙げることが出来るが、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物、ジオキソラン誘導体、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン、アセト酢酸メチル等が好ましい有機溶媒(即ち、良溶媒)として挙げられる。
又、下記の製膜工程に示すように、溶媒蒸発工程において流延用支持体上に形成されたウェブ(ドープ膜)から溶媒を乾燥させる時に、ウェブ中の発泡を防止する観点から、用いられる有機溶媒の沸点としては、30〜80℃が好ましく、例えば、上記記載の良溶媒の沸点は、メチレンクロライド(沸点40.4℃)、酢酸メチル(沸点56.32℃)、アセトン(沸点56.3℃)、酢酸エチル(沸点76.82℃)等である。
上記記載の良溶媒の中でも溶解性に優れるメチレンクロライドあるいは酢酸メチルが好ましく用いられる。上記有機溶媒の他に、0.1質量%〜40質量%の炭素原子数1〜4のアルコールを含有させることが好ましい。特に好ましくは5〜30質量%で前記アルコールが含まれることが好ましい。これらは上記記載のドープを流延用支持体に流延後、溶媒が蒸発を始めアルコールの比率が多くなるとウェブ(ドープ膜)がゲル化し、ウェブを丈夫にし流延用支持体から剥離することを容易にするゲル化溶媒として用いられたり、これらの割合が少ない時は非塩素系有機溶媒のセルロースエステルの溶解を促進する役割もある。
炭素原子数1〜4のアルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール等を挙げることが出来る。これらの溶媒の内、ドープの安定性がよく、沸点も比較的低く、乾燥性もよいことからエタノールが好ましい。好ましくは、メチレンクロライド70質量%〜95質量%に対してエタノール5質量%〜30質量%を含む溶媒を用いることが好ましい。メチレンクロライドの代わりに酢酸メチルを用いることも出来る。このとき、冷却溶解法によりドープを調製してもよい。
(可塑剤)
本発明の本発明の光学用フィルムの製造方法では、可塑剤が好ましく用いられる。可塑剤としては、リン酸エステル系可塑剤、非リン酸エステル系可塑剤が好ましく用いられる。リン酸エステル系可塑剤としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等が挙げられる。非リン酸エステル系可塑剤としては、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、多価アルコール系可塑剤、グリコレート系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、脂肪酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤等を好ましく用いることが出来、好ましくは多価アルコール系可塑剤、ポリエステル系可塑剤及び多価カルボン酸系可塑剤を使用することが好ましい。多価アルコールエステルは2価以上の脂肪族多価アルコールとモノカルボン酸のエステルよりなり、分子内に芳香環又はシクロアルキル環を有することが好ましい。
多価アルコールは次の一般式(1)で表される。
R1−(OH)n (1)
式中、R1はn価の有機基、nは2以上の正の整数を表す。
好ましい多価アルコールの例としては、例えば以下のようなものを挙げることが出来るが、これらに限定されるものではない。アドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等を挙げることが出来る。中でも、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが好ましい。
多価アルコールエステルに用いられるモノカルボン酸としては、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることが出来る。脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いると、透湿性、保留性を向上させる点で好ましい。好ましいモノカルボン酸の例としては、以下のようなものを挙げることが出来るが、これに限定されるものではない。
脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜32の直鎖又は側鎖を持った脂肪酸を好ましく用いることが出来る。炭素数1〜20であることが更に好ましく、炭素数1〜10であることが特に好ましい。酢酸を用いるとセルロースエステルとの相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることが出来る。好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることが出来る。好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上持つ芳香族モノカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることが出来る。特に、安息香酸が好ましい。
多価アルコールエステルの分子量300〜1500の範囲であることが好ましく、350〜750の範囲であることが更に好ましい。分子量が大きい方が揮発し難くなるため好ましく、透湿性、セルロースエステルとの相溶性の点では小さい方が好ましい。多価アルコールエステルに用いられるカルボン酸は一種類でもよいし、2種以上の混合であってもよい。又、多価アルコール中のOH基は全てエステル化してもよいし、一部をOH基のままで残してもよい。以下に、多価アルコールエステルの具体的化合物を示す。
多価アルコールエステルの含有量は、セルロースエステルフィルム中に1〜15質量%含有することが好ましく、特に3〜10質量%含有することが好ましい。
(ポリエステル系可塑剤)
ポリエステル系可塑剤は特に限定されないが、分子内に芳香環又はシクロアルキル環を有するポリエステル系可塑剤を好ましく用いることが出来る。好ましいポリエステル系可塑剤としては、特に限定されないが、例えば、下記一般式(2)で表せる芳香族末端エステル系可塑剤が好ましい。
B−(G−A)n−G−B (2)
式中、Bはベンゼンモノカルボン酸残基、Gは炭素数2〜12のアルキレングリコール残基又は炭素数6〜12のアリールグリコール残基又は炭素数が4〜12のオキシアルキレングリコール残基、Aは炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸残基又は炭素数6〜12のアリールジカルボン酸残基を表し、又nは1以上の整数を表す。
一般式(2)の式中、Bで示されるベンゼンモノカルボン酸残基とGで示されるアルキレングリコール残基又はオキシアルキレングリコール残基又はアリールグリコール残基、Aで示されるアルキレンジカルボン酸残基又はアリールジカルボン酸残基とから構成されるものであり、通常のポリエステル系可塑剤と同様の反応により得られる。
ポリエステル系可塑剤のベンゼンモノカルボン酸成分としては、例えば、安息香酸、パラターシャリブチル安息香酸、オルソトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、ジメチル安息香酸、エチル安息香酸、ノルマルプロピル安息香酸、アミノ安息香酸、アセトキシ安息香酸等があり、これらはそれぞれ1種又は2種以上の混合物として使用することが出来る。
ポリエステル系可塑剤の炭素数2〜12のアルキレングリコール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール、2−メチル1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル1,3−ペンタンジオール、2−エチル1,3−ヘキサンジオール、2−メチル1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール等があり、これらのグリコールは、1種又は2種以上の混合物として使用される。特に炭素数2〜12のアルキレングリコールがセルロースエステルとの相溶性に優れているため、特に好ましい。
又、芳香族末端エステルの炭素数4〜12のオキシアルキレングリコール成分としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等があり、これらのグリコールは、1種又は2種以上の混合物として使用出来る。
芳香族末端エステルの炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸成分としては、例えば、コハク酸、マレイン酸、フマール酸、グルタール酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等があり、これらは、それぞれ1種又は2種以上の混合物として使用される。炭素数6〜12のアリーレンジカルボン酸成分としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5ナフタレンジカルボン酸、1,4ナフタレンジカルボン酸等がある。
ポリエステル系可塑剤は、数平均分子量が、好ましくは300〜1500、より好ましくは400〜1000の範囲が好適である。又、その酸価は、0.5mgKOH/g以下、水酸基価は25mgKOH/g以下、より好ましくは酸価0.3mgKOH/g以下、水酸基価は15mgKOH/g以下のものが好適である。以下、芳香族末端エステル系可塑剤の合成例を示す。
〈サンプルNo.1(芳香族末端エステルサンプル)〉
反応容器にフタル酸410部、安息香酸610部、ジプロピレングリコール737部、及び触媒としてテトライソプロピルチタネート0.40部を一括して仕込み窒素気流中で攪拌下、還流凝縮器を付して過剰の1価アルコールを還流させながら、酸価が2以下になるまで130〜250℃で加熱を続け生成する水を連続的に除去した。次いで200〜230℃で100〜最終的に4×102Pa以下の減圧下、留出分を除去し、この後濾過して次の性状を有する芳香族末端エステル系可塑剤を得た。
粘度(25℃、mPa・s):43400
酸価 :0.2
〈サンプルNo.2(芳香族末端エステルサンプル)〉
反応容器に、フタル酸410部、安息香酸610部、エチレングリコール341部、及び触媒としてテトライソプロピルチタネート0.35部を用いる以外はサンプルNo.1と全く同様にして次の性状を有する芳香族末端エステルを得た。
粘度(25℃、mPa・s):31000
酸価 :0.1
〈サンプルNo.3(芳香族末端エステルサンプル)〉
反応容器に、フタル酸410部、安息香酸610部、1,2−プロパンジオール418部、及び触媒としてテトライソプロピルチタネート0.35部を用いる以外はサンプルNo.1と全く同様にして次の性状を有する芳香族末端エステルを得た。
粘度(25℃、mPa・s):38000
酸価 :0.05
〈サンプルNo.4(芳香族末端エステルサンプル)〉
反応容器に、フタル酸410部、安息香酸610部、1,3−プロパンジオール418部、及び触媒としてテトライソプロピルチタネート0.35部を用いる以外はサンプルNo.1と全く同様にして次の性状を有する芳香族末端エステルを得た。
粘度(25℃、mPa・s):37000
酸価 :0.05
以下に、芳香族末端エステル系可塑剤の具体的化合物を示すが、これに限定されない。
多価カルボン酸系可塑剤は2価以上、好ましくは2価〜20価の多価カルボン酸とアルコールのエステルよりなる。又、脂肪族多価カルボン酸は2〜20価であることが好ましく、芳香族多価カルボン酸、脂環式多価カルボン酸の場合は3価〜20価であることが好ましい。
本発明に係わる多価カルボン酸は次の一般式(3)で表される。
R5(COOH)m(OH)n (3)
式中、R5は(m+n)価の有機基、mは2以上の正の整数、nは0以上の整数、COOH基はカルボキシル基、OH基はアルコール性又はフェノール性水酸基を表す。
好ましい多価カルボン酸の例としては、例えば以下のようなものを挙げることが出来るが、これらに限定されるものではない。トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸のような3価以上の芳香族多価カルボン酸又はその誘導体、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、テトラヒドロフタル酸のような脂肪族多価カルボン酸、酒石酸、タルトロン酸、リンゴ酸、クエン酸のようなオキシ多価カルボン酸等を好ましく用いることが出来る。特にオキシ多価カルボン酸を用いることが、保留性向上等の点で好ましい。
多価カルボン酸エステル化合物に用いられるアルコールとしては特に制限はなく公知のアルコール、フェノール類を用いることが出来る。例えば炭素数1〜32の直鎖又は側鎖を持った脂肪族飽和アルコール又は脂肪族不飽和アルコールを好ましく用いることが出来る。炭素数1〜20であることが更に好ましく、炭素数1〜10であることが特に好ましい。又、シクロペンタノール、シクロヘキサノール等の脂環式アルコール又はその誘導体、ベンジルアルコール、シンナミルアルコール等の芳香族アルコール又はその誘導体等も好ましく用いることが出来る。
多価カルボン酸としてオキシ多価カルボン酸を用いる場合は、オキシ多価カルボン酸のアルコール性又はフェノール性の水酸基をモノカルボン酸を用いてエステル化してもよい。好ましいモノカルボン酸の例としては以下のようなものを挙げることが出来るが、本発明はこれに限定されるものではない。
脂肪族モノカルボン酸としては炭素数1〜32の直鎖又は側鎖を持った脂肪酸を好ましく用いることが出来る。炭素数1〜20であることが更に好ましく、炭素数1〜10であることが特に好ましい。
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることが出来る。
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることが出来る。
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上持つ芳香族モノカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることが出来る。特に酢酸、プロピオン酸、安息香酸であることが好ましい。
多価カルボン酸エステル化合物の分子量は、特に制限はないが、分子量300〜1000の範囲であることが好ましく、350〜750の範囲であることが更に好ましい。保留性向上の点では大きい方が好ましく、透湿性、セルロースエステルとの相溶性の点では小さい方が好ましい。
多価カルボン酸エステルに用いられるアルコール類は一種類でもよいし、2種以上の混合であってもよい。
多価カルボン酸エステル化合物の酸価は1mgKOH/g以下であることが好ましく、0.2mgKOH/g以下であることが更に好ましい。
特に好ましい多価カルボン酸エステル化合物の例を以下に示すが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、トリエチルシトレート、トリブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート(ATEC)、アセチルトリブチルシトレート(ATBC)、ベンゾイルトリブチルシトレート、アセチルトリフェニルシトレート、アセチルトリベンジルシトレート、酒石酸ジブチル、酒石酸ジアセチルジブチル、トリメリット酸トリブチル、ピロメリット酸テトラブチル等が挙げられる。
これらの可塑剤は単独あるいは2種以上混合して用いることが出来る。可塑剤の使用量は、セルロース誘導体に対して1質量%未満ではフィルムの透湿度を低減させる効果が少ないため好ましくなく、20質量%を越えるとフィルムから可塑剤がブリードアウトし、フィルムの物性が劣化するため、1〜20質量%が好ましい。6〜16質量%が更に好ましく、特に好ましくは8〜13質量%である。
(紫外線吸収剤)
本発明の光学用フィルムの製造方法には、紫外線吸収剤が好ましく用いられる。紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、且つ良好な液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましく用いられる。好ましく用いられる紫外線吸収剤の具体例としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等が挙げられるが、これらに限定されない。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば下記の紫外線吸収剤を具体例として挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
UV−1:2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−2:2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−3:2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−4:2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
UV−5:2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−6:2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)
UV−7:2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
UV−8:2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール(TINUVIN171、Ciba製)
UV−9:オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物(TINUVIN109、Ciba製)
又、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては下記の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
UV−10:2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン
UV−11:2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン
UV−12:2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン
UV−13:ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)
好ましく用いられる紫外線吸収剤としては、透明性が高く、偏光板や液晶の劣化を防ぐ効果に優れたベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やベンゾフェノン系紫外線吸収剤が好ましく、不要な着色がより少ないベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が特に好ましく用いられる。
又、特開2001−187825号に記載されている分配係数が9.2以上の紫外線吸収剤は、長尺フィルムの面品質を向上させ、塗布性にも優れている。特に分配係数が10.1以上の紫外線吸収剤を用いることが好ましい。
又、特開平6−148430号公報に記載の一般式(1)又は一般式(2)、特開2002−47357号公報の一般式(3)、(6)、(7)記載の高分子紫外線吸収剤(又は紫外線吸収性ポリマー)あるいは特開2002−169020号公報の段落番号[0027]〜[0055]記載の紫外線吸収性共重合ポリマーも好ましく用いられる。高分子紫外線吸収剤としては、PUVA−30M(大塚化学株式会社製)等が市販されている。
(酸化防止剤)
本発明の光学用フィルムの製造方法には酸化防止剤を用いることが出来る。高湿高温の状態に液晶画像表示装置等が置かれた場合には、偏光板保護フィルムの劣化が起こる場合がある。酸化防止剤は、例えば、偏光板保護フィルム中の残留溶媒量のハロゲンやリン酸系可塑剤のリン酸等により偏光板保護フィルムが分解するのを遅らせたり、防いだりする役割を有するので、前記偏光板保護フィルムに含有させるのが好ましい。
この様な酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系の化合物が好ましく用いられ、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト等を挙げることが出来る。特に、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好ましい。又、例えば、N,N′−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン等のヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト等のリン系加工安定剤を併用してもよい。これらの化合物の添加量は、セルロース誘導体に対して質量割合で1ppm〜1.0%が好ましく、10〜1000ppmが更に好ましい。
(微粒子)
本発明の光学用フィルムの製造方法では、製造された光学用フィルムに滑り性を付与するため、微粒子を用いることが好ましい。添加される微粒子の1次平均粒子径としては、20nm以下が好ましく、更に好ましくは、5〜16nmであり、特に好ましくは、5〜12nmである。これらの微粒子は0.1〜5μmの粒径の2次粒子を形成して光学用フィルムに含まれることが好ましく、好ましい平均粒径は0.1〜2μmであり、更に好ましくは0.2〜0.6μmである。これにより、フィルム表面に高さ0.1〜1.0μm程度の凹凸を形成し、これによってフィルム表面に適切な滑り性を与えることが出来る。
微粒子の1次平均粒子径の測定は、透過型電子顕微鏡(倍率50万〜200万倍)で粒子の観察を行い、粒子100個を観察し、粒子径を測定しその平均値を持って、1次平均粒子径とした。微粒子の見掛比重としては、70g/リットル以上が好ましく、更に好ましくは、90〜200g/リットルであり、特に好ましくは、100〜200g/リットルである。見掛比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましく、又、固形分濃度の高いドープを調製する際には、特に好ましく用いられる。
1次粒子の平均径が20nm以下、見掛比重が70g/リットル以上の二酸化珪素微粒子は、例えば、気化させた四塩化珪素と水素を混合させたものを1000〜1200℃にて空気中で燃焼させることで得ることが出来る。又例えばアエロジル200V、アエロジルR972V(以上、日本アエロジル株式会社製)の商品名で市販されており、それらを使用することが出来る。上記記載の見掛比重は二酸化珪素微粒子を一定量メスシリンダーに採り、この時の重さを測定し、下記式で算出したものである。
見掛比重(g/リットル)=二酸化珪素質量(g)/二酸化珪素の容積(リットル) 微粒子の分散液を調製する方法としては、例えば以下に示すような3種類が挙げられる。
《調製方法A》
溶剤と微粒子を攪拌混合した後、分散機で分散を行う。これを微粒子分散液とする。微粒子分散液をドープ液に加えて攪拌する。
《調製方法B》
溶剤と微粒子を攪拌混合した後、分散機で分散を行う。これを微粒子分散液とする。別に溶剤に少量のセルローストリアセテートを加え、攪拌溶解する。これに前記微粒子分散液を加えて攪拌する。これを微粒子添加液とする。微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する。
《調製方法C》
溶剤に少量のセルローストリアセテートを加え、攪拌溶解する。これに微粒子を加えて分散機で分散を行う。これを微粒子添加液とする。微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する。
調製方法Aは二酸化珪素微粒子の分散性に優れ、調製方法Cは二酸化珪素微粒子が再凝集しにくい点で優れている。中でも、上記記載の調製方法Bは二酸化珪素微粒子の分散性と、二酸化珪素微粒子が再凝集しにくい等、両方に優れている好ましい調製方法である。
《分散方法》
二酸化珪素微粒子を溶剤などと混合して分散する時の二酸化珪素の濃度は5質量%〜30質量%が好ましく、10質量%〜25質量%が更に好ましく、15〜20質量%が最も好ましい。分散濃度は高い方が、添加量に対する液濁度は低くなる傾向があり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
使用される溶剤は低級アルコール類としては、好ましくはメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられる。低級アルコール以外の溶媒としては特に限定されないが、セルロースエステルの製膜時に用いられる溶剤を用いることが好ましい。
セルロースエステルに対する二酸化珪素微粒子の添加量はセルロースエステル100質量部に対して、二酸化珪素微粒子は0.01質量部〜5.0質量部が好ましく、0.05質量部〜1.0質量部が更に好ましく、0.1質量部〜0.5質量部が最も好ましい。添加量は多い方が、動摩擦係数に優れ、添加量が少ない方が、凝集物が少なくなる。
分散機は通常の分散機が使用出来る。分散機は大きく分けてメディア分散機とメディアレス分散機に分けられる。二酸化珪素微粒子の分散にはメディアレス分散機がヘイズが低く好ましい。メディア分散機としてはボールミル、サンドミル、ダイノミルなどが挙げられる。メディアレス分散機としては超音波型、遠心型、高圧型などがあるが、本発明においては高圧分散装置が好ましい。高圧分散装置は、微粒子と溶媒を混合した組成物を、細管中に高速通過させることで、高剪断や高圧状態など特殊な条件を作りだす装置である。高圧分散装置で処理する場合、例えば、管径1〜2000μmの細管中で装置内部の最大圧力条件が9.807MPa以上であることが好ましい。更に好ましくは19.613MPa以上である。又その際、最高到達速度が100m/秒以上に達するもの、伝熱速度が420kJ/時間以上に達するものが好ましい。
上記のような高圧分散装置には、Microfluidics Corporation社製超高圧ホモジナイザ(商品名マイクロフルイダイザ)あるいはナノマイザ社製ナノマイザがあり、他にもマントンゴーリン型高圧分散装置、例えば、イズミフードマシナリ製ホモジナイザ、三和機械株式会社製UHN−01等が挙げられる。
又、微粒子を含むドープを流延支持体に直接接するように流延することが、滑り性が高く、ヘイズが低いフィルムが得られるので好ましい。又、流延後に剥離して乾燥されロール状に巻き取られた後、ハードコート層や反射防止層等の機能性薄膜が設けられる。加工若しくは出荷されるまでの間、汚れや静電気によるゴミ付着等から製品を保護するために通常、包装加工がなされる。この包装材料については、上記目的が果たせれば特に限定されないが、フィルムからの残留溶媒の揮発を妨げないものが好ましい。具体的には、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、ナイロン、ポリスチレン、紙、各種不織布等が挙げられる。繊維がメッシュクロス状になったものは、より好ましく用いられる。
(棒状化合物)
本発明の光学用フィルムの製造方法にはリタデーション制御剤を含有させてリタデーションの調整を行うことが好ましく、溶液の紫外線吸収スペクトルの最大吸収波長(λmax)が250nmより短波長である棒状化合物をリタデーション制御剤として含有することが好ましい。
リタデーション制御剤の機能の観点では、棒状化合物は、少なくとも一つの芳香族環を有することが好ましく、少なくとも二つの芳香族環を有することが更に好ましい。棒状化合物は、直線的な分子構造を有することが好ましい。直線的な分子構造とは、熱力学的に最も安定な構造において棒状化合物の分子構造が直線的であることを意味する。熱力学的に最も安定な構造は、結晶構造解析又は分子軌道計算によって求めることが出来る。例えば、分子軌道計算ソフト(例、WinMOPAC2000、富士通株式会社製)を用いて分子軌道計算を行い、化合物の生成熱が最も小さくなるような分子の構造を求めることが出来る。分子構造が直線的であるとは、上記のように計算して求められる熱力学的に最も安定な構造において、分子構造の角度が140度以上であることを意味する。棒状化合物は、液晶性を示すことが好ましい。棒状化合物は、加熱により液晶性を示す(サーモトロピック液晶性を有する)ことが更に好ましい。液晶相は、ネマティック相又はスメクティック相が好ましい。
棒状化合物としては、下記一般式(4)で表されるトランス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸エステル化合物が好ましい。
Ar1−L1−Ar2 …(4)
式中、Ar1及びAr2は、それぞれ独立に、芳香族基である。
芳香族基は、アリール基(芳香族性炭化水素基)、置換アリール基、芳香族性ヘテロ環基及び置換芳香族性ヘテロ環基を含む。アリール基及び置換アリール基の方が、芳香族性ヘテロ環基及び置換芳香族性ヘテロ環基よりも好ましい。芳香族性ヘテロ環基のヘテロ環は、一般には不飽和である。芳香族性ヘテロ環は、5員環、6員環又は7員環であることが好ましく、5員環又は6員環であることが更に好ましい。芳香族性ヘテロ環は一般に最多の二重結合を有する。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子又は硫黄原子が好ましく、窒素原子又は硫黄原子が更に好ましい。芳香族性ヘテロ環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、フラザン環、トリアゾール環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、及び1,3,5−トリアジン環が含まれる。芳香族基の芳香族環としては、ベンゼン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環及びピラジン環が好ましく、ベンゼン環が特に好ましい。
置換アリール基及び置換芳香族性ヘテロ環基の置換基の例には、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ、アミノ、アルキルアミノ基(例、メチルアミノ、エチルアミノ、ブチルアミノ、ジメチルアミノ)、ニトロ、スルホ、カルバモイル、アルキルカルバモイル基(例、N−メチルカルバモイル、N−エチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル)、スルファモイル、アルキルスルファモイル基(例、N−メチルスルファモイル、N−エチルスルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル)、ウレイド、アルキルウレイド基(例、N−メチルウレイド、N,N−ジメチルウレイド、N,N,N′−トリメチルウレイド)、アルキル基(例、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘプチル、オクチル、イソプロピル、s−ブチル、t−アミル、シクロヘキシル、シクロペンチル)、アルケニル基(例、ビニル、アリル、ヘキセニル)、アルキニル基(例、エチニル、ブチニル)、アシル基(例、ホルミル、アセチル、ブチリル、ヘキサノイル、ラウリル)、アシルオキシ基(例、アセトキシ、ブチリルオキシ、ヘキサノイルオキシ、ラウリルオキシ)、アルコキシ基(例、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ)、アリールオキシ基(例、フェノキシ)、アルコキシカルボニル基(例、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、ペンチルオキシカルボニル、ヘプチルオキシカルボニル)、アリールオキシカルボニル基(例、フェノキシカルボニル)、アルコキシカルボニルアミノ基(例、ブトキシカルボニルアミノ、ヘキシルオキシカルボニルアミノ)、アルキルチオ基(例、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、ブチルチオ、ペンチルチオ、ヘプチルチオ、オクチルチオ)、アリールチオ基(例、フェニルチオ)、アルキルスルホニル基(例、メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、ブチルスルホニル、ペンチルスルホニル、ヘプチルスルホニル、オクチルスルホニル)、アミド基(例、アセトアミド、ブチルアミド基、ヘキシルアミド、ラウリルアミド)及び非芳香族性複素環基(例、モルホリル、ピラジニル)が含まれる。
置換アリール基及び置換芳香族性ヘテロ環基の置換基としては、ハロゲン原子、シアノ、カルボキシル、ヒドロキシル、アミノ、アルキル置換アミノ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、アルコキシカルボニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基及びアルキル基が好ましい。アルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシ基及びアルキルチオ基のアルキル部分とアルキル基とは、更に置換基を有していてもよい。アルキル部分及びアルキル基の置換基の例には、ハロゲン原子、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ、アミノ、アルキルアミノ基、ニトロ、スルホ、カルバモイル、アルキルカルバモイル基、スルファモイル、アルキルスルファモイル基、ウレイド、アルキルウレイド基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アミド基及び非芳香族性複素環基が含まれる。アルキル部分及びアルキル基の置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシル、アミノ、アルキルアミノ基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニル基及びアルコキシ基が好ましい。
一般式(4)において、L1は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、二価の飽和ヘテロ環基、−O−、−CO−及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基である。アルキレン基は、環状構造を有していてもよい。環状アルキレン基としては、シクロヘキシレンが好ましく、1,4−シクロヘキシレンが特に好ましい。鎖状アルキレン基としては、直鎖状アルキレン基の方が分岐を有するアルキレン基よりも好ましい。アルキレン基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜15であることがより好ましく、1〜10であることが更に好ましく、1〜8であることが更に又好ましく、1〜6であることが最も好ましい。
アルケニレン基及びアルキニレン基は、環状構造よりも鎖状構造を有することが好ましく、分岐を有する鎖状構造よりも直鎖状構造を有することが更に好ましい。アルケニレン基及びアルキニレン基の炭素原子数は、2〜10であることが好ましく、2〜8であることがより好ましく、2〜6であることが更に好ましく、2〜4であることが更に又好ましく、2(ビニレン又はエチニレン)であることが最も好ましい。二価の飽和ヘテロ環基は、3員〜9員のヘテロ環を有することが好ましい。ヘテロ環のヘテロ原子は、酸素原子、窒素原子、ホウ素原子、硫黄原子、珪素原子、リン原子又はゲルマニウム原子が好ましい。飽和ヘテロ環の例には、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、ピロリジン環、イミダゾリジン環、テトラヒドロフラン環、テトラヒドロピラン環、1,3−ジオキサン環、1,4−ジオキサン環、テトラヒドロチオフェン環、1,3−チアゾリジン環、1,3−オキサゾリジン環、1,3−ジオキソラン環、1,3−ジチオラン環及び1,3,2−ジオキサボロランが含まれる。特に好ましい二価の飽和ヘテロ環基は、ピペラジン−1,4−ジイレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイレン及び1,3,2−ジオキサボロラン−2,5−ジイレンである。
組み合わせからなる二価の連結基の例を示す。
L−1:−O−CO−アルキレン基−CO−O−
L−2:−CO−O−アルキレン基−O−CO−
L−3:−O−CO−アルケニレン基−CO−O−
L−4:−CO−O−アルケニレン基−O−CO−
L−5:−O−CO−アルキニレン基−CO−O−
L−6:−CO−O−アルキニレン基−O−CO−
L−7:−O−CO−二価の飽和ヘテロ環基−CO−O−
L−8:−CO−O−二価の飽和ヘテロ環基−O−CO−
一般式(4)の分子構造において、L1を挟んで、Ar1とAr2とが形成する角度は、140度以上であることが好ましい。棒状化合物としては、下記一般式(5)で表される化合物が更に好ましい。
Ar1−L2−X−L3−Ar2 (5)
一般式(5)において、Ar1及びAr2は、それぞれ独立に、芳香族基である。芳香族基の定義及び例は、一般式(4)のAr1及びAr2と同様である。
一般式(5)において、L2及びL3は、それぞれ独立に、アルキレン基、−O−、−CO−及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基である。アルキレン基は、環状構造よりも鎖状構造を有することが好ましく、分岐を有する鎖状構造よりも直鎖状構造を有することが更に好ましい。アルキレン基の炭素原子数は、1〜10であることが好ましく、1〜8であることがより好ましく、1〜6であることが更に好ましく、1〜4であることが更に又好ましく、1又は2(メチレン又はエチレン)であることが最も好ましい。L2及びL3は、−O−CO−又は−CO−O−であることが特に好ましい。
一般式(5)において、Xは、1,4−シクロヘキシレン、ビニレン又はエチニレンである。
本発明の光学用フィルムの製造方法で製造された光学用フィルムは、固形分中に好ましくはセルロースエステルを70〜95質量%含有するものである。
(ドープの製造方法)
ドープ中のセルロースエステルの濃度は、濃度が高い方が金属支持体に流延した後の乾燥負荷が低減出来て好ましいが、セルロースエステルの濃度が高過ぎると濾過時の負荷が増えて、濾過精度が悪くなる。これらを両立する濃度としては、10〜35質量%が好ましく、更に好ましくは、15〜25質量%である。
本発明の光学用フィルムの製造方法で使用するドープに用いられる溶剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよいが、セルロースエステルの良溶剤と貧溶剤を混合して使用することが生産効率の点で好ましく、良溶剤が多い方がセルロースエステルの溶解性の点で好ましい。良溶剤と貧溶剤の混合比率の好ましい範囲は、良溶剤が70〜98質量%であり、貧溶剤が2〜30質量%である。良溶剤、貧溶剤とは、使用するセルロースエステルを単独で溶解するものを良溶剤、単独で膨潤するか又は溶解しないものを貧溶剤と定義している。そのため、セルロースエステルのアシル基置換度によっては、良溶剤、貧溶剤が変わり、例えばアセトンを溶剤として用いる時には、セルロースエステルの酢酸エステル(アセチル基置換度2.4)、セルロースアセテートプロピオネートでは良溶剤になり、セルロースの酢酸エステル(アセチル基置換度2.8)では貧溶剤となる。
本発明の光学用フィルムの製造方法に用いられる良溶剤は特に限定されないが、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物やジオキソラン類、アセトン、酢酸メチル、アセト酢酸メチル等が挙げられる。特に好ましくはメチレンクロライド又は酢酸メチルが挙げられる。
又、本発明光学用フィルムの製造方法に用いられる貧溶剤は特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、n−ブタノール、シクロヘキサン、シクロヘキサノン等が好ましく用いられる。又、ドープ中には水が0.01〜2質量%含有していることが好ましい。
上記記載のドープを調製する時の、セルロースエステルの溶解方法としては、一般的な方法を用いることが出来る。加熱と加圧を組み合わせると常圧における沸点以上に加熱出来る。溶剤の常圧での沸点以上で且つ加圧下で溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら攪拌溶解すると、ゲルやママコと呼ばれる塊状未溶解物の発生を防止するため好ましい。又、セルロースエステルを貧溶剤と混合して湿潤あるいは膨潤させた後、更に良溶剤を添加して溶解する方法も好ましく用いられる。
加圧は窒素ガス等の不活性気体を圧入する方法や、加熱によって溶剤の蒸気圧を上昇させる方法によって行ってもよい。加熱は外部から行うことが好ましく、例えばジャケットタイプのものは温度コントロールが容易で好ましい。
溶剤を添加しての加熱温度は、高い方がセルロースエステルの溶解性の観点から好ましいが、加熱温度が高過ぎると必要とされる圧力が大きくなり生産性が悪くなる。好ましい加熱温度は45〜120℃であり、60〜110℃がより好ましく、70℃〜105℃が更に好ましい。又、圧力は設定温度で溶剤が沸騰しないように調整される。又、冷却溶解法も好ましく用いられ、これによって酢酸メチルなどの溶媒にセルロースエステルを溶解させることが出来る。
次に、このセルロースエステル溶液を濾紙等の適当な濾過材を用いて濾過する。濾過材としては、不溶物等を除去するために絶対濾過精度が小さい方が好ましいが、絶対濾過精度が小さ過ぎると濾過材の目詰まりが発生し易いという問題がある。このため絶対濾過精度0.008mm以下の濾材が好ましく、0.001〜0.008mmの濾材がより好ましく、0.003〜0.006mmの濾材が更に好ましい。
濾材の材質は特に制限はなく、通常の濾材を使用することが出来るが、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等のプラスチック製の濾材や、ステンレススティール等の金属製の濾材が繊維の脱落等がなく好ましい。濾過により、原料のセルロースエステルに含まれていた不純物、特に輝点異物を除去、低減することが好ましい。
輝点異物とは、2枚の偏光板をクロスニコル状態にして配置し、その間にセルロースエステルフィルムを置き、一方の偏光板の側から光を当てて、他方の偏光板の側から観察した時に反対側からの光が漏れて見える点(異物)のことであり、径が0.01mm以上である輝点数が200個/cm2以下であることが好ましい。より好ましくは100個/cm2以下であり、更に好ましくは50個/m2以下であり、更に好ましくは0〜10個/cm2以下である。又、0.01mm以下の輝点も少ない方が好ましい。
ドープの濾過は通常の方法で行うことが出来るが、溶剤の常圧での沸点以上で、且つ加圧下で溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら濾過する方法が、濾過前後の濾圧の差(差圧という)の上昇が小さく、好ましい。好ましい温度は45〜120℃であり、45〜70℃がより好ましく、45〜55℃であることが更に好ましい。
濾圧は小さい方が好ましい。濾圧は1.6MPa以下であることが好ましく、1.2MPa以下であることがより好ましく、1.0MPa以下であることが更に好ましい。ここで、ドープの流延について説明する。流延(キャスト)工程における金属支持体は、表面を鏡面仕上げしたものが好ましく、金属支持体としては、ステンレススティールベルト若しくは鋳物で表面をメッキ仕上げしたドラムが好ましく用いられる。キャストの幅は1〜4mとすることが出来る。流延工程の金属支持体の表面温度は−50℃〜溶剤が沸騰して発泡しない温度以下に設定される。
温度が高い方がウェブの乾燥速度が速く出来るので好ましいが、あまり高過ぎるとウェブが発泡したり、平面性が劣化する場合がある。好ましい支持体温度としては0〜100℃で適宜決定され、5〜30℃が更に好ましい。あるいは、冷却することによってウェブをゲル化させて残留溶媒を多く含んだ状態でドラムから剥離することも好ましい方法である。金属支持体の温度を制御する方法は特に制限されないが、温風又は冷風を吹きかける方法や、温水を金属支持体の裏側に接触させる方法がある。温水を用いる方が熱の伝達が効率的に行われるため、金属支持体の温度が一定になるまでの時間が短く好ましい。温風を用いる場合は溶媒の蒸発潜熱によるウェブの温度低下を考慮して、溶媒の沸点以上の温風を使用しつつ、発泡も防ぎながら目的の温度よりも高い温度の風を使う場合がある。特に、流延から剥離するまでの間で支持体の温度及び乾燥風の温度を変更し、効率的に乾燥を行うことが好ましい。
セルロースエステルフィルムが良好な平面性を示すためには、金属支持体からウェブを剥離する際の残留溶媒量は10〜150質量%が好ましく、更に好ましくは20〜40質量%又は60〜130質量%であり、特に好ましくは、30〜40質量%又は60〜120質量%である。又、該金属支持体上の剥離位置における温度を−50〜40℃とするのが好ましく、10〜40℃がより好ましく、15〜30℃とするのが最も好ましい。
ウェブを金属支持体より剥離した後、ウェブ(フィルム)の乾燥工程においては、一般にロール乾燥方式(上下に配置した多数のロールをウェブを交互に通し乾燥させる方式)やテンター方式でウェブを搬送させながら、乾燥する方式が採られており、最終的に、残留溶媒量が0.5質量%以下となるまで乾燥される。
尚、延伸操作は多段階に分割して実施してもよく、流延方向、幅手方向に二軸延伸を実施することが好ましい。又、二軸延伸を行う場合にも同時二軸延伸を行ってもよいし、段階的に実施してもよい。この場合、段階的とは、例えば、延伸方向の異なる延伸を順次行うことも可能であるし、同一方向の延伸を多段階に分割し、且つ異なる方向の延伸をその何れかの段階に加えることも可能である。
金属支持体より剥離したウェブを乾燥させながら搬送し、更にウェブの両端をピンあるいはクリップ等で把持するテンター方式で幅方向に延伸を行うことが特に好ましく、これによって所定の位相差を付与することが出来る。この時、幅方向のみに延伸してもよいし、同時2軸延伸することも好ましい。好ましい延伸倍率は1.05〜2倍が好ましく、好ましくは1.15〜1.5倍である。同時2軸延伸の際に縦方向に収縮させてもよく、0.8〜0.99、好ましくは0.9〜0.99となるように収縮させてもよい。好ましくは、横方向延伸及び縦方向の延伸若しくは収縮により面積が1.12倍〜1.44倍となっていることが好ましく、1.15倍〜1.32倍となっていることが好ましい。これは縦方向の延伸倍率×横方向の延伸倍率で求めることが出来る。
又、本発明における「延伸方向」とは、延伸操作を行う場合の直接的に延伸応力を加える方向という意味で使用する場合が通常であるが、多段階に二軸延伸される場合に、最終的に延伸倍率の大きくなった方(即ち、通常遅相軸となる方向)の意味で使用されることもある。
本発明の光学用フィルムの製造方法で製造された光学用フィルムは、弾性率の関係を得る上で、陽電子消滅寿命法により求められる自由体積半径が0.250〜0.350nmであることが好ましく、特に0.250〜0.310nmであることが好ましい。ここで言う自由体積は、セルロース樹脂分子鎖に占有されていない空隙部分を表している。これは、陽電子消滅寿命法を用いて測定することが出来る。具体的には、陽電子を試料に入射してから消滅するまでの時間を測定し、その消滅寿命から原子空孔や自由体積の大きさ、数濃度等に関する情報を非破壊的に観察することにより求めることが出来る。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
以下に示す方法によりセルロースエステルフィルムを製造した。
(ドープの調製)
〈微粒子分散液〉
微粒子(アエロジルR972V(日本アエロジル株式会社製)) 11質量部
(1次粒子の平均径16nm、見掛比重90g/リットル)
エタノール 89質量部
以上をディゾルバーで50分間攪拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。
〈微粒子添加液〉
メチレンクロライドを入れた溶解タンクに下記セルロースエステル樹脂を添加し、加熱して完全に溶解させた後、これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過した。濾過後のセルロースエステル溶液を十分に攪拌しながら、ここに上記微粒子分散液をゆっくりと添加した。更に、2次粒子の粒径が所定の大きさとなるようにアトライターにて分散を行った。これを日本精線(株)製のファインメットNFで濾過し、微粒子添加液を調製した。
メチレンクロライド 99質量部
セルロースアセテートプロピオネート(アセチル基置換度1.5、プロピオニル基置換度1.0、総アシル基置換度2.5) 4質量部
微粒子分散液 11質量部
下記組成の主ドープを調製した。まず加圧溶解タンクにメチレンクロライドとエタノールを添加した。溶媒の入った加圧溶解タンクにセルロースエステル樹脂を攪拌しながら投入した。これを加熱し、攪拌しながら、完全に溶解し、更に可塑剤及び紫外線吸収剤を添加、溶解させた。これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、主ドープを調製した。
主ドープを100質量部と微粒子添加液5質量部となるように加えて、インラインミキサー(東レ静止型管内混合機 Hi−Mixer、SWJ)で十分に混合しドープとした。
〈主ドープの組成〉
メチレンクロライド 390質量部
エタノール 80質量部
セルロースアセテートプロピオネート(アセチル基置換度1.5、プロピオニル基置換度1.0、総アシル基置換度2.5) 100質量部
可塑剤:芳香族末端エステルサンプルNo.4 5質量部
可塑剤:トリメチロールプロパントリベンゾエート 5.5質量部
紫外線吸収剤:チヌビン109(チバスペシャルティケミカルズ(株)製)
1質量部
紫外線吸収剤:チヌビン171(チバスペシャルティケミカルズ(株)製)
1質量部
上記、主ドープの組成において、メチレンクロライドが良溶媒、エタノールが貧溶媒となる。
(減圧チャンバの準備)
図4に示すジャマ板の凸部の幅の寸法を表1に示す様に変えたジャマ板を配設した減圧チャンバを準備しNo.1−1〜1−7とした。尚、ジャマ板はステンレスを使用した。凸部の幅の寸法は、ジャマ板の全幅に対する割合(%)を示す。
減圧チャンバの寸法
減圧チャンバの幅 1700mm
減圧チャンバの高さ 200mm
減圧チャンバの長さ 500mm
第1減圧室の長さ 200mm
第2減圧室の長さ 300mm
減圧チャンバの無端支持体側の開口部と無端支持体までの距離5mm
ジャマ板の寸法
ジャマ板の高さ 200mm
ジャマ板の幅 1700mm
ジャマ板の基板の厚さ 10mm
凸部の最も厚い部分の厚さ 100mm(リボンの接地点から凸部の配設してあるジャマ板の面までの距離の50%)
(セルロースアセテートプロピオネートフィルムの製造)
準備したドープを図1(a)に示す製造装置を使用し、流延工程、第1乾燥工程、延伸工程、第2乾燥工程、巻き取り工程を経て、セルロースアセテートプロピオネートフィルムを作製する時、表1に示す凸部の幅の寸法を変えたジャマ板を配設した減圧チャンバNo.1−1〜1−7を使用し、幅1330mm、厚さ42μm、長さ1000mのセルロースアセテートプロピオネートフィルムを以下に示す条件で作製し試料No.101〜107とした。
流延開始の条件
準備したドープをダイスから吐出されるドープのリボンの幅を1600mmで、幅2000mmのステンレス無端ベルト支持体の上に、流延速度60m/minで均一に流延した。減圧チャンバの第1減圧室の減圧度350Pa、第2減圧室の減圧度450Paになるように吸引した。
流延工程の乾燥風の供給条件
ステンレス無端ベルト支持体上のウェブを乾燥するために第1供給装置より、温度50℃、風速30m/secの乾燥風を供給した。
第1乾燥工程の乾燥条件
ステンレス無端ベルト支持体からの剥離張力は130N/mの設定値で行い、第1乾燥工程の乾燥温度60℃、時間30秒間とした。
ステンレス無端ベルト支持体より剥離したウェブの全残留溶媒量は100質量%とした。全残留溶媒量は、下記の式により求めた値である。
全残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
ここで、Mはウェブの剥離時点での質量、Nは質量Mのものを115℃で1時間の加熱後のドープ質量である。
延伸工程の延伸条件
テンター延伸装置はクリップテンターを使用し、延伸工程の温度140℃、時間30秒間とした。
第2乾燥工程の乾燥条件
第2乾燥工程の乾燥温度145℃、時間15分とした。
巻き取り工程
巻き取り機は、定テンション法を使用し、張力40N/mで巻き取った。
評価
作製した各試料No.101〜107に付き、膜厚ムラ、膜厚ムラの間隔、を以下に示す方法で求め、以下に示す評価ランクに従って評価した結果を表2に示す。
膜厚ムラの測定方法
作製した試料の1000mの内、巻き取り終了から5mの部分を1m取り出し、ランプなどの光源を使用し、フィルムを透過した光を観察すると黒い部分と白い部分とでスジ状の影が確認される。長さ3m、全幅にわたって目視でフィルムを評価し、下記に示すように分類、評価した。
ムラの評価ランク
◎:ムラが確認されない
○:ムラは確認されるが製品化可能
△:ムラが確認され、製品化した際に微弱ながら確認される
×:ムラが強く製品化出来ない
膜厚ムラの間隔の測定方法
膜厚ムラの測定に使用したサンプルを使用し、発生した膜厚ムラの間隔を定規で測定した。
膜厚ムラの間隔の評価ランク
◎:膜厚ムラがなく測定できない
○:膜厚ムラの間隔が10cm以上
△:膜厚ムラの間隔が5cm以上、10cm未満
×:膜厚ムラの間隔が5cm未満
ジャマ板の全幅の5%〜50%の幅を持つ凸部を設けたジャマ板を設けた減圧チャンバを使用し作成した試料No.102〜106は何れも膜厚ムラ防止に対して優れた効果を示した。ジャマ板の全幅の4%の幅を持つ凸部を設けたジャマ板を設けた減圧チャンバを使用し作成した比較の試料No.101は、ジャマ板による減圧チャンバに入り込んでくる減圧風の整流、流延リボン端部の安定化、風向安定化が不十分となり、膜厚ムラ防止に対しては効果を示さなかった。又、ジャマ板の全幅の52%の幅を持つ凸部を設けたジャマ板を設けた減圧チャンバを使用し作成した比較の試料No.107は整流効果が発揮されず、安定したリボン全幅の減圧ができない結果となり、膜厚ムラ防止に対しては効果を示さなかった。本発明の有効性が確認された。
実施例2
以下に示す方法によりセルロースアセテートプロピオネートフィルムを製造した。
(ドープの調製)
実施例1と同じドープを調製した。
(減圧チャンバの準備)
図4、図5に示すジャマ板の凸部の最も厚い部分の厚さを表3に示す様に変えたジャマ板を配設した減圧チャンバを準備しNo.2−1〜2−28とした。尚、ジャマ板はステンレスを使用した。凸部の最も厚い部分の厚さは、リボンの接地点から凸部の配設してあるジャマ板の面までの距離に対する割合(%)を示す。
減圧チャンバの寸法
減圧チャンバの幅 1700mm
減圧チャンバの高さ 200mm
減圧チャンバの長さ 500mm
第1減圧室の長さ 200mm
第2減圧室の長さ 300mm
減圧チャンバの無端支持体側の開口部と無端支持体までの距離5mm
ジャマ板の寸法
ジャマ板の高さ 200mm
ジャマ板の幅 1700mm
ジャマ板の基板の厚さ 10mm
凸部の幅 30%(ジャマ板の全幅に対する割合(%)を示す。)
(セルロースアセテートプロピオネートフィルムの製造)
準備したドープを図1(a)に示す製造装置を使用し、流延工程、第1乾燥工程、延伸工程、第2乾燥工程、巻き取り工程を経て、セルロースアセテートプロピオネートフィルムを作製する時、表3に示す凸部の最も厚い部分の厚さを変えたジャマ板を配設した減圧チャンバNo.2−1〜2−28を使用した他は実施例1と同じ条件で幅1490mm、厚さ42μm、長さ1000mのセルロースアセテートプロピオネートフィルムを作製し試料No.201〜228とした。
評価
作製した各試料No.201〜228に付き、膜厚ムラ、膜厚ムラの間隔を実施例1と同じ方法で求め、実施例1と同じ評価ランクに従って評価した結果を表4に示す。
ジャマ板に設ける凸部の形状を三角形とし、凸部の最も厚い部分の厚さをリボン部が無端支持体の上に接地した接地点からジャマ板の凸部の配設してある面までの距離の1%〜50%としたジャマ板を設けた減圧チャンバを使用し作成した試料No.202〜206は何れも膜厚ムラ防止に対して優れた効果を示した。凸部の最も厚い部分の厚さを、リボン部が無端支持体の上に接地した接地点からジャマ板の凸部の配設してある面までの距離の0.8%としたジャマ板を設けた減圧チャンバを使用し作成した試料No.201、及び52%としたジャマ板を設けた減圧チャンバを使用し作成した試料No.207は試料No.202〜206に比べ多少劣るが膜厚ムラ防止に対して効果を示した。
ジャマ板に設ける凸部の形状を台形とし、凸部の最も厚い部分の厚さをリボン部が無端支持体の上に接地した接地点からジャマ板の凸部の配設してある面までの距離の1%〜50%としたジャマ板を設けた減圧チャンバを使用し作成した試料No.209〜213は何れも膜厚ムラ防止に対して優れた効果を示した。凸部の最も厚い部分の厚さを、リボン部が無端支持体の上に接地した接地点からジャマ板の凸部の配設してある面までの距離の0.8%としたジャマ板を設けた減圧チャンバを使用し作成した試料No.208、及び52%としたジャマ板を設けた減圧チャンバを使用し作成した試料No.214は試料No.209〜213に比べ多少劣るが膜厚ムラ防止に対して効果を示した。
ジャマ板に設ける凸部の形状を半円形とし、凸部の最も厚い部分の厚さをリボン部が無端支持体の上に接地した接地点からジャマ板の凸部の配設してある面までの距離の1%〜50%としたジャマ板を設けた減圧チャンバを使用し作成した試料No.216〜220は何れも膜厚ムラ防止に対して優れた効果を示した。凸部の最も厚い部分の厚さを、リボン部が無端支持体の上に接地した接地点からジャマ板の凸部の配設してある面までの距離の0.8%としたジャマ板を設けた減圧チャンバを使用し作成した試料No.215、及び52%としたジャマ板を設けた減圧チャンバを使用し作成した試料No.221は試料No.216〜220に比べ多少劣るが膜厚ムラ防止に対して効果を示した。
ジャマ板に設ける凸部の形状を角形とし、凸部の最も厚い部分の厚さをリボン部が無端支持体の上に接地した接地点からジャマ板の凸部の配設してある面までの距離の1%〜50%としたジャマ板を設けた減圧チャンバを使用し作成した試料No.223〜227は何れも膜厚ムラ防止に対して優れた効果を示した。凸部の最も厚い部分の厚さを、リボン部が無端支持体の上に接地した接地点からジャマ板の凸部の配設してある面までの距離の0.8%としたジャマ板を設けた減圧チャンバを使用し作成した試料No.222、及び52%としたジャマ板を設けた減圧チャンバを使用し作成した試料No.228は試料No.223〜227に比べ多少劣るが膜厚ムラ防止に対して効果を示した。本発明の有効性が確認された。
実施例3
以下に示す方法によりセルロースアセテートプロピオネートフィルムを製造した。
(ドープの調製)
実施例1と同じドープを調製した。
(減圧チャンバの準備)
図4に示す形状のジャマ板を配設した図2に示す減圧チャンバの幅をリボンの幅に対して表5に示す様に変えた減圧チャンバを準備しNo.3−1〜3−6とした。尚、ジャマ板はステンレスを使用した。
減圧チャンバの寸法
減圧チャンバの高さ 200mm
減圧チャンバの長さ 500mm
第1減圧室の長さ 200mm
第2減圧室の長さ 300mm
減圧チャンバの無端支持体側の開口部と無端支持体までの距離5mm
ジャマ板の寸法
ジャマ板の高さ 200mm
ジャマ板の幅 1700mm
ジャマ板の基板の厚さ 10mm
凸部の最も厚い部分の厚さ 50mm(リボンの接地点から凸部の配設してあるジャマ板の面までの距離の23.8%)
凸部の幅 30%(ジャマ板の全幅に対する割合(%)を示す。)
(セルロースアセテートプロピオネートフィルムの製造)
準備したドープを図1(a)に示す製造装置を使用し、流延工程、第1乾燥工程、延伸工程、第2乾燥工程、巻き取り工程を経て、セルロースアセテートプロピオネートフィルムを作製する時、表5に示すリボンの幅に対しの幅を変えた減圧チャンバNo.3−1〜3−6を使用した他は実施例1と同じ条件で幅1490mm、厚さ42μm、長さ1000mのセルロースアセテートプロピオネートフィルムを作製し試料No.301〜306とした。
評価
作製した各試料No.301〜306に付き、膜厚ムラ、膜厚ムラの間隔を実施例1と同じ方法で求め、実施例1と同じ評価ランクに従って評価した結果を表6に示す。
幅がリボンの幅の80%〜150%にした減圧チャンバを使用して作製した試料No.302〜305は、減圧チャンバの稼動に伴い発生する減圧風のリボンへの影響、ウェブの移動に伴い発生する同伴風のリボンへの影響、減圧装置端部での減圧によるリボンへの影響を防止し、又、リボンの全幅にわたる減圧の偏差を抑えることが出来、何れも膜厚ムラ防止に対して優れた効果を示した。幅がリボンの幅の70%、160%にした減圧チャンバを使用して作製した試料No.301、306は減圧チャンバの稼動に伴い発生する減圧風のリボンへの影響、ウェブの移動に伴い発生する同伴風のリボンへの影響、減圧装置端部での減圧によるリボンへの影響を多少受け、又、リボンの全幅にわたる減圧の偏差を抑えることが不十分となることから試料No.302〜305に比べ膜厚ムラ防止に対して多少劣る効果を示した。本発明の有効性が確認された。
実施例4
以下に示す方法によりセルロースアセテートプロピオネートフィルムを製造した。
(ドープの調製)
実施例1と同じドープを調製した。
図4に示すジャマ板の凸部の幅の寸法を表7に示す様に変えたジャマ板を配設した減圧チャンバを準備しNo.4−1〜4−7とした。尚、ジャマ板はステンレスを使用した。凸部の幅の寸法は、ジャマ板の全幅に対する割合(%)を示す。
減圧チャンバの寸法
減圧チャンバの幅 1700mm
減圧チャンバの高さ 200mm
減圧チャンバの長さ 500mm
第1減圧室の長さ 200mm
第2減圧室の長さ 300mm
減圧チャンバの無端支持体側の開口部と無端支持体までの距離5mm
ジャマ板の寸法
ジャマ板の高さ 200mm
ジャマ板の幅 1700mm
ジャマ板の基板の厚さ 10mm
凸部の最も厚い部分の厚さ 50mm(リボンの接地点から凸部の配設してあるジャマ板の面までの距離の23.8%)
凸部の幅 30%(ジャマ板の全幅に対する割合(%)を示す。)
(セルロースアセテートプロピオネートフィルムの製造)
準備したドープを図1(b)に示す製造装置を使用し、流延工程、第1乾燥工程、延伸工程、第2乾燥工程、巻き取り工程を経て、セルロースアセテートプロピオネートフィルムを作製する時、表7に示す凸部の幅の寸法を変えたジャマ板を配設した減圧チャンバNo.4−1〜4−7を使用し、幅1600mm、厚さ42μm、長さ1000mのセルロースアセテートプロピオネートフィルムを以下に示す条件で作製し試料No.401〜407とした。
流延開始の条件
準備したドープをダイスから吐出されるドープのリボンの幅を1600mmで、幅2000mmのステンレス製のドラム支持体の上に、流延速度60m/minで均一に流延した。減圧チャンバの第1減圧室の減圧度350Pa、第2減圧室の減圧度450Paになるように吸引した。
流延工程の乾燥風の供給条件
ステンレス製のドラム支持体上のウェブを乾燥するために第1供給装置より、温度50℃、風速20m/secの乾燥風を供給した。
第1乾燥工程の乾燥条件
ステンレス製のドラムベルト支持体からの剥離張力は130N/mの設定値で行い、第1乾燥工程の乾燥温度60℃、時間30秒間とした。
ステンレス製のドラム支持体より剥離したウェブの全残留溶媒量は100質量%とした。全残留溶媒量は、下記の式により求めた値である。
全残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
ここで、Mはウェブの剥離時点での質量、Nは質量Mのものを115℃で1時間の加熱後のドープ質量である。
延伸工程の延伸条件
テンター延伸装置はクリップテンターを使用し、延伸工程の温度140℃、時間30秒間とした。
第2乾燥工程の乾燥条件
第2乾燥工程の乾燥温度145℃、時間15分とした。
巻き取り工程
巻き取り機は、定テンション法を使用し、張力40N/mで巻き取った。
評価
作製した各試料No.401〜407に付き、膜厚ムラ、膜厚ムラの間隔を実施例1と同じ方法で求め、実施例1と同じ評価ランクに従って評価した結果を表8に示す。
ジャマ板の全幅の5%〜50%の幅を持つ凸部を設けたジャマ板を設けた減圧チャンバを使用し作成した試料No.402〜406は何れも膜厚ムラ防止に対して優れた効果を示した。ジャマ板の全幅の4%の幅を持つ凸部を設けたジャマ板を設けた減圧チャンバを使用し作成した比較の試料No.401は、ジャマ板による減圧チャンバに入り込んでくる減圧風の整流、流延リボン端部の安定化、風向安定化が不十分となり、膜厚ムラ防止に対しては効果を示さなかった。又、ジャマ板の全幅の52%の幅を持つ凸部を設けたジャマ板を設けた減圧チャンバを使用し作成した比較の試料No.407は整流効果が発揮されず、安定したリボン全幅の減圧ができない結果となり、膜厚ムラ防止に対しては効果を示さなかった。無端支持体がドラムであっても本発明の有効性が確認された。
実施例5
液晶表示装置の作製
(偏光板の作製)
厚さ、120μmのポリビニルアルコールフィルムを、一軸延伸(温度110℃、延伸倍率5倍)した。これをヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5g、水100gからなる水溶液に60秒間浸漬し、次いでヨウ化カリウム6g、ホウ酸7.5g、水100gからなる68℃の水溶液に浸漬した。これを水洗、乾燥し偏光子を得た。
次いで、下記工程1〜5に従って偏光子と実施例1で作製したセルロースアセテートプロピオネートフィルムNo.101〜107を貼り合わせて図7に示す構成の偏光板を作製しNo.5−1〜5−7とした。
工程1:50℃の1モル/Lの水酸化ナトリウム溶液に60秒間浸漬し、次いで水洗し乾燥して、偏光子と貼合する側を鹸化したセルロースアセテートプロピオネートフィルムを得た。
工程2:前記偏光子を固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤槽中に1〜2秒浸漬した。
工程3:工程2で偏光子に付着した過剰の接着剤を軽く拭き除き、上下側に工程1で処理したセルロースアセテートプロピオネートフィルムを積層し、配置した。
工程4:工程3で積層したセルロースアセテートプロピオネートフィルムと偏光膜とを圧力20〜30N/cm2、搬送スピードは約2m/分で貼合した後、2分間乾燥し、偏光板を作製した。
この後、市販の液晶TV(シャープ製 アクオス32AD5)の偏光板を剥離し、作製した各偏光板No.5−1〜5−7をそれぞれ液晶セルのガラス面に貼合し、液晶表示装置を作製しNo.501〜507とした。その際、上記作製した偏光板保護フィルムが液晶セル面側となるように、又偏光板の貼合の向きは予め貼合されていた偏光板と同一方向に吸収軸が向くように行った。
評価
作製した液晶表示装置No.501〜507に付き、画面の視認性を以下に示す方法で測定し、以下に示す評価ランクに従って評価した結果を表9に示す。
画面の視認性の評価方法
23℃55%RHの環境で、作製した液晶表示装置の液晶TV表示装置のバックライトを点灯して30分そのまま放置してから作製した液晶表示装置を明るい部屋で目視評価した。
画面の視認性の評価ランク
◎:ムラがない
○:注意するとフィルム時に確認されたものと同様のスジ状のムラが僅かに確認出来る
△:注意するとフィルム時に確認されたものと同様のスジ状のムラが確認出来る
×:フィルム時に確認されたものと同様のスジ状のムラが強く、目に付く
本発明の光学用フィルムの製造方法で製造したセルロースアセテートプロピオネートフィルムNo.102〜106を使用し製造した偏光板No.502〜506を用いた液晶表示装置No.502〜506は何れも視認性が優れた結果を得た。本発明の光学用フィルムの製造方法の条件から外れた条件で製造したセルロースアセテートプロピオネートフィルムNo.101、107を使用し製造した偏光板No.501、507を用いた液晶表示装置No.501、507は何れも視認性が劣る結果となった。本発明の有効性が確認された。