JP2009108109A - 熱硬化性樹脂組成物、当該硬化物、およびこれらから誘導される発光ダイオード - Google Patents

熱硬化性樹脂組成物、当該硬化物、およびこれらから誘導される発光ダイオード Download PDF

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Abstract

【目的】加熱によって容易に硬化し、透明性、耐熱性、耐薬品性、機械的特性、電気特性などの諸特性を満足しうる硬化物を実現することができる熱硬化性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】一般式(1):RSi(OR(式中、Rは少なくとも1つのエポキシ基を有する炭素数1〜12の炭化水素基を表し、Rは水素原子、炭素数1〜8の炭化水素基、または芳香族炭化水素基を表す。)で示されるエポキシ基含有アルコキシシラン類(a1)を加水分解および縮合して得られる縮合物(A)ならびにエポキシ樹脂用硬化剤(B)を必須成分として含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物を用いる。
【選択図】なし

Description

本発明は、熱硬化性樹脂組成物、当該組成物を熱硬化させて得られる硬化物、およびこれらから誘導される発光ダイオードに関する。
発光ダイオード(LED)に代表される半導体発光素子の封止には、脂環式エポキシ樹脂を主剤とし、酸無水物を硬化剤として配合した組成物が賞用されている。該組成物より得られる硬化物は、耐熱性、機械的特性、電気特性等が良好で、かつ透明性にも優れている。しかしながら、青色や紫外光などの短波長の光を発光するLEDや、発光効率のよい大出力のLEDが近年開発されており、これらを封止する透明材料として、前記組成物では耐久性が不十分であり、劣化による着色やクラックの発生が問題となっている。
この問題を解決するため、例えば無機微粒子を充填剤としたエポキシ樹脂材料などが提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、用いるエポキシ樹脂は従来公知のものであって樹脂本来の特性を向上させているとは言えず、本質的に高い耐久性を持つエポキシ樹脂からなる組成物が求められている。
特開2002−80698号公報
本発明は、加熱によって容易に硬化し、透明性、耐熱性、耐薬品性、機械的特性、電気特性などの諸特性を満足しうる硬化物を実現することができる熱硬化性樹脂組成物を提供すること、および当該組成物から得られる硬化物を提供することを目的とする。
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、エポキシ基含有アルコキシシラン類の加水分解縮合物とエポキシ樹脂用硬化剤とからなる組成物、およびその熱硬化物によって上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、一般式(1):RSi(OR
(式中、Rは少なくとも1つのエポキシ基を有する炭素数1〜12の炭化水素基を表し、Rは水素原子、炭素数1〜8の炭化水素基、または芳香族炭化水素基を表す。)で示されるエポキシ基含有アルコキシシラン類(a1)を加水分解および縮合して得られる縮合物(A)(以下、成分(A)という)ならびにエポキシ樹脂用硬化剤(B)(以下、成分(B)という)を必須成分として含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物に関する。また本発明は、当該組成物を熱によって硬化してなる硬化物に関する。さらに本発明は、これらから誘導される各種物品に関する。
本発明によれば、透明性、耐熱性、耐薬品性、機械的特性、電気特性などの諸特性が改善された硬化物を提供しうる熱硬化性樹脂組成物を提供できる。また該熱硬化性樹脂組成物から得られる本発明の硬化物は、特に発光ダイオード用の透明封止材などとして有用である。
本発明で用いられる成分(A)は、一般式(1):RSi(OR
(式中、Rは少なくとも1つのエポキシ基を有する炭素数1〜12の炭化水素基を表し、Rは水素原子、炭素数1〜8の炭化水素基、または芳香族炭化水素基を表す。)で示されるエポキシ基含有アルコキシシラン類(a1)を加水分解および縮合して得られる化合物である。エポキシ基含有アルコキシシラン類(a1)(以下、成分(a1)という)の具体例としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリプロポキシシランなどのグリシドキシプロピルトリアルコキシシラン類、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリプロポキシシランなどの(エポキシシクロヘキシル)エチルトリアルコキシシラン類などが挙げられ、該例示化合物はいずれか単独で、または適宜に組み合わせて使用できる。該例示化合物のうち、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランは、加水分解反応の反応性が高く、かつ入手が容易であるため特に好ましい。
また、成分(a1)に加えて、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシランなどのトリアルキルアルコキシシラン類、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシランなどのジアルキルジアルコキシシラン類、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランなどのアルキルトリアルコキシシラン類、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシランなどのテトラアルコキシシラン類、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトラブトキシチタンなどのテトラアルコキシチタン類、テトラエトキシジルコニウム、テトラプロポキシジルコニウム、テトラブトキシジルコニウムなどのテトラアルコキシジルコニウム類などの金属アルコキシド類(a2)(以下、成分(a2)という)を使用しうる。成分(a2)は、いずれか単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、トリアルキルアルコキシシラン類、ジアルキルジアルコキシシラン類、テトラアルコキシシラン類を用いることで、成分(A)の架橋密度を調整することができる。アルキルトリアルコキシシラン類を用いることで、成分(A)中に含まれるエポキシ基の量を調整することができる。テトラアルコキシチタン類、テトラアルコキシジルコニウム類を用いることで、最終的に得られる熱硬化物の屈折率を高くすることができる。
成分(a1)と成分(a2)を併用する場合は、[成分(a1)に含まれるエポキシ基のモル数]/[成分(a1)と成分(a2)の合計モル数](モル比:1分子あたりに含まれるエポキシ基の平均個数を示す)が0.2以上であることが好ましい。0.2未満である場合、得られる成分(A)中に含まれるエポキシ基の数が少なくなるため、熱硬化性が低下するとともに、硬化物の硬度などの物性についての改善効果も不十分となる傾向がある。また、[成分(a1)と成分(a2)に含まれる各アルコキシ基の合計モル数]/[成分(a1)と成分(a2)の合計モル数](モル比:1分子あたりに含まれるアルコキシ基の平均個数を示す)が2.5以上3.5以下であることが好ましく、2.7以上3.2以下であることがより好ましい。2.5未満の場合、得られる成分(A)の架橋密度が低く、硬化物の耐熱性が低下する傾向がある。また、3.5を超える場合、成分(A)を製造する際、ゲル化しやすくなる。
本発明に用いられる成分(A)は、成分(a1)単独やこれに成分(a2)を併用して、それらを加水分解後、縮合させて得ることができる。加水分解反応によって、成分(a1)や成分(a2)に含まれるアルコキシ基が水酸基となり、アルコールが副生する。加水分解反応に必要な水の量は、[加水分解反応に用いる水のモル数]/[成分(a1)と成分(a2)に含まれる各アルコキシ基の合計モル数](モル比)が0.4以上10以下であればよく、好ましくは1である。0.4未満の場合、成分(A)中に加水分解されずに残るアルコキシ基があるため好ましくない。また、10を超える場合、後に行う縮合反応(脱水反応)の際に除くべき水の量が多くなるため、経済的に不利である。
また、成分(a2)としてテトラアルコキシチタン類、テトラアルコキシジルコニウム類等、特に加水分解性および縮合反応性の高い金属アルコキシド類を併用する場合には、急速に加水分解および縮合反応が進行し、系がゲル化してしまう場合がある。この場合、成分(a1)の加水分解反応を終了させ、実質的にすべての水が消費された状態にした後、該成分(a2)を添加することによって、ゲル化を避けることができる。
加水分解反応に用いる触媒としては、格別限定はされず、従来公知の加水分解触媒を任意に用いることができる。加水分解触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸類、ギ酸、酢酸などの有機酸類、アンモニア、水酸化ナトリウムなどの無機塩基、1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、2−エチル−4−メチルイミダゾールなどの有機塩基類が挙げられる。これらのうちギ酸は、触媒活性が高く、また引き続く縮合反応の触媒としても機能するので好ましい。加水分解触媒の添加量は、特に限定されないが、成分(a1)および成分(a2)の合計100重量部に対して0.1〜25重量部であることが好ましく、1〜10重量部であることがより好ましい。25重量部よりも多いと、反応中にエポキシ基と加水分解触媒との反応が進行しやすくなったり、得られる熱硬化性樹脂組成物の安定性が低下する傾向があったり、後工程で加水分解触媒を除去できるとしても該除去量が多くなったりする。また0.1重量部よりも少ないと、実質的に反応が進行しなかったり、反応時間が長くなったりする傾向がある。反応温度、時間は、成分(a1)や成分(a2)の反応性に応じて任意に設定できるが、通常0〜100℃程度、好ましくは20〜60℃、1分〜2時間程度である。該加水分解反応は、溶剤の存在下または不存在下に行うことができる。溶剤の種類は格別限定されず、任意の溶剤を1種類以上選択して用いることができるが、後述の縮合反応に用いる溶剤と同一のものを用いることが好ましい。成分(a1)や成分(a2)の反応性が低い場合は、無溶剤で行うことが好ましい。
上記方法で加水分解反応を行うが、[加水分解されて生じた水酸基のモル数]/[成分(a1)と成分(a2)に含まれる各アルコキシ基の合計モル数](モル比)が0.5以上になるように進行させることが好ましく、0.8以上に調整することがさらに好ましい。加水分解反応に続く縮合反応は、加水分解で生じた水酸基間だけでなく、該水酸基と残存アルコキシ基との間でも進行するため、少なくとも半分(モル比が0.5以上)が加水分解されていればよい。
縮合反応においては、前記の水酸基間で水が副生し、また水酸基とアルコキシ基間ではアルコールが副生して、シロキサン結合(Si−O−Si)を生成する。縮合反応には、従来公知の脱水縮合触媒を任意に用いることができる。前記のように、ギ酸は触媒活性が高く、加水分解反応の触媒と共用できるため好ましい。反応温度、時間は成分(a1)や成分(a2)の反応性に応じてそれぞれ任意に設定できるが、通常は40〜150℃程度、好ましくは60〜100℃、30分〜12時間程度である。
上記方法で縮合反応を行うが、[未反応の水酸基および未反応のアルコキシ基の合計モル数]/[成分(a1)や成分(a2)に含まれる各アルコキシ基の合計モル数](モル比)が0.3以下になるように進行させることが好ましく、0.2以下に調整することがさらに好ましい。0.3を超える場合、未反応の水酸基およびアルコキシ基が熱硬化性樹脂組成物の保管中に縮合反応してゲル化したり、硬化後に縮合反応し揮発分が発生してクラックが発生するなど、硬化物の性能を損なったりするため好ましくない。
当該縮合反応は、成分(a1)(成分(a2)を併用する場合は両者)の濃度が2〜80重量%程度になるよう溶剤希釈して行うことが好ましく、15〜60重量%であることがより好ましい。該濃度が2重量%未満である場合は、得られる熱硬化性組成物に含まれる成分(A)が少なくなるため好ましくない。80重量%を超える場合は、反応中にゲル化したり、生成する成分(A)の分子量が大きくなり過ぎ、得られる熱硬化性組成物の保存安定性が悪くなったりする傾向がある。溶剤としては、任意の溶剤を1種類以上選択して用いることができる。縮合反応によって生成する水およびアルコールより高い沸点を有する溶剤を用いれば、反応系中よりこれらを留去することができるため好ましい。このような溶剤としては、トルエン、キシレン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸ブチルなどが挙げられる。
当該縮合反応の終了後、用いた触媒を除去すると、最終的に得られる熱硬化性樹脂組成物の安定性が向上するため好ましい。除去方法は、用いた触媒に応じて公知各種の方法から適宜に選択できる。例えば、ギ酸を用いた場合は、縮合反応の終了後、該沸点以上に加熱したり、減圧したりして容易に除去でき、この点からもギ酸の使用が好ましい。
本発明で用いられる成分(B)は、格別限定されず、従来公知のエポキシ樹脂用硬化剤を適宜に用いることができる。透明性の高い硬化物を得たい場合には、たとえば、無水フタル酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水ナジック酸、無水メチルナジック酸、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、ビフェニルテトラカルボン酸2無水物、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸、などの不飽和結合を持つ酸無水物、4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸、ブタンテトラカルボン酸2無水物などの不飽和結合を持たない酸無水物を好ましく用いることができる。これらの化合物は、単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。該例示化合物のうち不飽和結合を持たない酸無水物は、最終的に得られる硬化物が無色透明性、耐熱性等に優れるため好ましい。中でもヘキサヒドロ無水フタル酸と4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸との混合物(新日本理化(株):商品名「リカシッドMH−700」)は、最終的に得られる硬化物が無色透明性に特に優れ、かつ入手が容易であるため特に好ましい。
本発明の熱硬化性樹脂組成物の調製に際しての成分(A)と(B)との使用割合は、特に限定されないが、 [成分(A)に含まれるエポキシ基のモル数]/[成分(B)に含まれるエポキシ基と反応する官能基のモル数](モル比)が、0.8〜2.0となるよう配合することが好ましく、より好ましくは1.0〜1.5である。0.8未満である場合は、熱硬化後に未反応の成分(B)が残存し、耐候性が低下する傾向がある。また、2.0を超える場合はエポキシ基が残存し、やはり耐候性が低下する傾向がある。
本発明の熱硬化性樹脂組成物を調製する際に使用可能な触媒としては、格別限定されず、従来公知のエポキシ硬化触媒を用いることができる。例えば酸無水物で硬化を行う場合、1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどの三級アミン類;2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾールなどのイミダゾール類などをあげることができる。硬化触媒の使用量は特に限定されないが、硬化促進剤を熱硬化性樹脂組成物100重量部に対し、0.01〜5重量部の割合で使用するのが好ましい。
熱硬化性樹脂組成物の成分(A)と成分(B)の濃度は、用途に応じて適宜に決定でき、必要に応じて溶剤を配合することができる。溶剤としては、当該成分と非反応性であればよく、各種従来公知のものを適宜選択して用いることができる。このような溶剤としては、トルエン、キシレン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸エチル、酢酸ブチルなどが挙げられる。熱硬化性樹脂組成物をコーティング剤として用いる場合は、溶剤で希釈し、所望の粘度とすればよい。また、熱硬化性樹脂組成物を1mm以上の厚膜に硬化させる場合や、接着剤として用いる場合には、成分(A)、成分(B)の合計濃度を90重量%以上にすることが好ましく、95重量%以上にすることがより好ましい。該合計濃度は、成分(A)と成分(B)の濃度と熱硬化性組成物の仕込み時に加えた溶剤の量とより計算で求めてもかまわないし、熱硬化性組成物に含まれる溶剤の沸点以上で2時間程度加熱し、加熱前後の重量変化により求めることもできる。該用途では、90重量%未満の場合、硬化、成形時に発泡したり、硬化物中に溶剤が残存したりして、硬化物の物性が低下する傾向がある。なお、成分(A)合成の際に溶剤を必須使用しているため、該用途に用いる際には、反応終了後、不揮発分含有量が90重量%以上となるよう溶剤を揮発させておけばよい。また、熱硬化性樹脂組成物を調製した後、用いた溶剤を揮発させて、有効成分(A)、成分(B)の合計濃度を高めることもできる。
また、熱硬化性樹脂組成物には、用途に応じ、前記成分(a1)および/またはその加水分解物(但し、該縮合物は除く)[以下、併せて成分(C)という]を配合できる。成分(C)は、成分(A)の合成に際して用いた成分(a1)をそのままで用いるか、その加水分解物を用いるか、また、これらを組み合わせて使用できる。成分(C)を含有する熱硬化性樹脂組成物を、ガラス、金属等の無機基材に対するコーティング剤として用いると、該密着性をより向上できる利点がある。成分(C)の配合量は、特に限定されないが、該組成物100重量部に対して、0.1〜20重量部程度であることが好ましい。0.1重量部未満の場合は、該熱硬化性樹脂組成物の無機基材に対する密着性向上効果が不十分となる傾向がある。また、20重量部を超える場合、成分(C)が加水分解、縮合反応する際の揮発分が多くなるため、該熱硬化性樹脂組成物が厚膜硬化できなくなったり、得られる硬化物が脆くなったりする傾向がある。このような成分(C)としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランが、当該密着性向上効果の点で特に好ましい。
また、熱硬化性樹脂組成物には、用途に応じ、前記成分(a2)である金属アルコキシド類および/またはその加水分解物(但し、縮合物は含まず)(D)[以下、併せて成分(D)という]を配合できる。成分(D)は、成分(A)の合成に際して用いた金属アルコキシド類をそのままで用いるか、その加水分解物を用いるか、これらを組み合わせて使用できる。成分(D)を含有する熱硬化性樹脂組成物を用いることで、得られる硬化物の屈折率を調整することができる。該熱硬化性樹脂組成物を高屈折率のコーティング剤として用いる場合には、成分(D)としてアルコキシチタン類、アルコキシジルコニウム類が好適である。成分(D)の配合量は、特に限定されないが、熱硬化性樹脂組成物100重量部に対して、0.1〜20重量部程度であることが好ましい。0.1重量部に満たない場合には、屈折率向上効果が不十分となる傾向がある。また、20重量部を超える場合は、成分(D)が加水分解、縮合反応する際の揮発分が多くなるため、熱硬化性樹脂組成物が硬化時に発泡したり、反りやクラックが発生したり、得られる硬化物が脆くなったりする傾向がある。
さらに、本発明の熱硬化性樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、各種用途での必要性に応じて、可塑剤、耐候剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、増白剤、着色剤、導電剤、離型剤、表面処理剤、粘度調節剤、フィラー等を配合してもよい。
本発明の熱硬化性組成物を硬化物として使用する一態様を例示する。当該熱硬化組成物をテフロン(登録商標)コーティングした容器に流し込み、加熱して溶剤乾燥および硬化させることにより、所望の硬化物が得られる。硬化温度および加熱時間は、使用した成分(B)の種類、および溶剤の種類、硬化物の厚みなどを考慮して、適宜決定する。通常は80〜180℃程度で1分〜24時間程度加熱することが好ましい。また、硬化終了後さらに100℃〜300℃程度、好ましくは120℃以上250℃未満で、1分〜6時間程度加熱することにより、残存溶剤を完全に除くとともに硬化反応をさらに進行させる。
(封止材への適用)
熱硬化性樹脂組成物を厚膜塗布し、または所定の型枠に流し込んだ後、熱硬化させることで、透明な硬化物で封止された成形材料を得ることができる。このような材料は、発光素子、受光素子、光電変換素子、光伝送関連部品等の光学部品用途に、特に好適である。
以下、実施例および比較例をあげて本発明を具体的に説明する。なお、各例中、部および%は特記しない限り重量基準である。
製造例1(縮合物(A−1)の製造)
攪拌機、冷却管、分水器、温度計、窒素吹き込み口を備えた反応装置に、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製:商品名「KBM−403」)1000部、イオン交換水240部([加水分解反応に用いる水のモル数]/[成分(a1)に含まれるアルコキシ基のモル数](モル比)=1.05)、95%ギ酸9.0部、トルエン800部を仕込み、室温で30分間加水分解反応させた。反応後、加熱し、70℃まで昇温したところで、加水分解によって発生したメタノールが留去され始めた。30分かけて75℃まで昇温し、縮合反応によって発生した水を留去した。さらに30分、75℃で反応させた後、50℃で3時間、段階的に圧力を下げながら減圧して、残存するメタノール、水、ギ酸、トルエンを留去することで、縮合物(A−1)を765g得た。[未反応の水酸基およびアルコキシ基のモル数]/[成分(a1)に含まれるアルコキシ基のモル数](モル比)は0.15、濃度は94.1%、エポキシ当量は200g/eqであった。
製造例2(縮合物(A−2)の製造)
攪拌機、冷却管、分水器、温度計、窒素吹き込み口を備えた反応装置に、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン800部、メチルトリメトキシシラン(多摩化学(株)製:商品名「メチルトリメトキシシラン」)92.2部、イオン交換水192部([加水分解反応に用いる水のモル数]/[成分(a1)に含まれるアルコキシ基のモル数](モル比)=1.05)、95%ギ酸8.0部、トルエン714部を仕込み、室温で30分間加水分解反応させた。反応後、加熱し、70℃まで昇温したところで、加水分解によって発生したメタノールが留去され始めた。30分かけて75℃まで昇温し、縮合反応によって発生した水を留去した。さらに30分、75℃で反応させた後、50℃で3時間、段階的に圧力を下げながら減圧して、残存するメタノール、水、ギ酸、トルエンを留去することで、縮合物(A−2)を664g得た。[未反応の水酸基およびアルコキシ基のモル数]/[成分(a1)に含まれるアルコキシ基のモル数](モル比)は0.16、濃度は93.1%、エポキシ当量は210g/eqであった。
実施例1〜4(熱硬化性組成物の製造)
製造例1で得られた縮合物(A−1)10部に対し、成分(B)としてヘキサヒドロ無水フタル酸と4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸との混合物(新日本理化(株):商品名「リカシッドMH−700」)8.20部([成分(A)に含まれるエポキシ基のモル数]/[成分(B)に含まれる反応性基のモル数](モル比)=1.0)、1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(サンアプロ(株)製:商品名「DBU」)0.018部を配し、熱硬化性組成物とした。同様に、表1に示すように実施例2〜4の熱硬化性組成物を調製した。
比較例1および2(熱硬化性組成物の製造)
成分(A)の代わりとなる3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(ダイセル化学工業(株)製:商品名「セロキサイド2021P」、エポキシ当量126g/eq)10部に対し、リカシッドMH−700 12.7部([成分(A)に含まれるエポキシ基のモル数]/[成分(B)に含まれる反応性基のモル数](モル比)=1.0)、1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(サンアプロ(株)製:商品名「DBU」)0.023部を配し、熱硬化性組成物とした。同様に、表1に示すように比較例2の熱硬化性組成物を調製した。
(硬化膜の耐候性)
実施例1〜4、比較例1、2で得られた熱硬化性組成物をガラス板上に、硬化後膜厚が約250ミクロンとなるようコーティングし、100℃で1時間、150℃で2時間硬化反応を行った。本硬化条件では、比較例2の硬化物は得られなかった。得られた硬化物に対し、紫外線照射装置(ウシオ電機(株)製:商品名「UV−152」)を用い、365nmの紫外線検出器で積算光量が20000mJ/cmとなるよう紫外線を照射し、照射前後の460nmでの光線透過率の変化を分光光度計(日本分光製:商品名「V−560」)で評価した。また、160℃で24時間加熱し、加熱前後の460nmでの光線透過率の変化を分光光度計で評価した。
表1から明らかなように、比較例1の硬化物対比、実施例1〜4の硬化物の紫外線照射または加熱による透過率の低下が抑えられており、本願発明の硬化物はより耐候性に優れることが分かる。このため、LED等の封止材として用いるのにより好適であると認められる。
(耐熱性)
実施例1〜4、比較例1、2で得られた熱硬化性組成物を、硬化後膜厚が約1mmとなるようアルミカップに流し込み、100℃で1時間、150℃で2時間硬化反応を行った。本硬化条件では、比較例2の硬化物は得られなかった。該硬化物を5mm×25mmにカットし、粘弾性測定器(セイコーインスツル(株)製、商品名「DMS6100」、測定条件:振動数1Hz、スロープ3℃/分)を用いて動的貯蔵弾性率を測定して、耐熱性を評価した。
表1から明らかなように、比較例1の硬化物対比、実施例1〜4の硬化物は高温でも弾性率の低下が少なく、耐熱性に優れていることが認められる。
Figure 2009108109
表中、2021P:3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、MH−700:ヘキサヒドロ無水フタル酸と4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸との混合物、DBU:1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7を示す。

Claims (6)

  1. 一般式(1):RSi(OR
    (式中、Rは少なくとも1つのエポキシ基を有する炭素数1〜12の炭化水素基を表し、Rは水素原子、炭素数1〜8の炭化水素基、または芳香族炭化水素基を表す。)で示されるエポキシ基含有アルコキシシラン類(a1)を加水分解および縮合して得られる縮合物(A)ならびにエポキシ樹脂用硬化剤(B)を必須成分として含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
  2. 縮合物(A)が、アルコキシシラン類(a1)をギ酸の存在下に加水分解した後、溶剤の存在下に縮合反応させて得られたものである請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  3. 化合物(B)が酸無水物である請求項1または2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  4. 不揮発分含有率が90重量%以上である請求項1〜3のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物を熱硬化させて得られることを特徴とする硬化物。
  6. 請求項1〜4のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物を熱硬化させて封止成形されたことを特徴とする発光ダイオード。
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