JP2009101520A - インサート加飾成形品の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】2種以上の加飾シートを真空成形する真空成形工程と、真空成形された加飾シートの少なくとも2種を並べて雌金型に配し、該加飾シートに成形樹脂を射出する射出工程とを含むインサート加飾成形品の製造方法であって、隣接する加飾シートのうち第1の加飾シートの端部が第2の加飾シートの裏面に接するか又は該裏面の近傍に位置し、第1の加飾シートの端部の位置から第2の加飾シートの端部までの距離が、成形樹脂の肉厚の15〜100%であることを特徴とするインサート加飾成形品の製造方法である。
【選択図】図8
Description
しかしながら、この方法は絞りが浅い場合には有効であるが、絞りの深い成形品に適用する場合には絵柄の見当合わせが困難であり、意匠性の低いものとなってしまう。
また、水圧転写法により連続した2種以上の絵柄を付す方法があるが、マスク塗装をする必要があり、作業が煩雑である上に環境負荷の高い溶剤を使用する必要性があって好ましい方法とはいえない。
しかしながら、この方法は2種の加飾シートが離れた状態の場合には適用可能であるが、2種の絵柄を連続的に表現したい場合には適用が困難であった。すなわち、2枚の加飾シートは射出成形時に収縮するため、その端部を完全に接触した状態とすることが困難であり、図1に示すように、2種の加飾シート10a及び10bの境界部分に隙間Sができ、ここに溶融樹脂が流れ込む。このことにより、成形品となった場合に、連続した2種の絵柄の境界部分に樹脂の色が見えてしまい、意匠性が損なわれる。
すなわち、本発明は、
(1)2種以上の加飾シートを真空成形する真空成形工程と、真空成形された加飾シートの少なくとも2種を並べて雌金型に配し、該加飾シートに成形樹脂を射出する射出工程とを含むインサート加飾成形品の製造方法であって、隣接する加飾シートのうち第1の加飾シートの端部が第2の加飾シートの裏面に接するか又は該裏面の近傍に位置し、第1の加飾シートの端部の位置から第2の加飾シートの端部までの距離が、成形樹脂の肉厚の15〜100%であることを特徴とするインサート加飾成形品の製造方法、
(2)前記第1の加飾シートの端部の位置から第2の加飾シートの端部までの距離が、成形樹脂の肉厚の20〜50%である上記(1)に記載のインサート加飾成形品の製造方法、
(3)成形樹脂を射出するためのゲートが複数あり、複数のゲートから射出される樹脂の合流点が、前記第1の加飾シートの第2の加飾シートの裏面に接するか又はその近傍に位置する端部よりも、第1の加飾シートの内側にあることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のインサート加飾成形品の製造方法、
(4)前記成形樹脂の肉厚が2〜5mmである上記(1)〜(3)のいずれかに記載のインサート加飾成形品の製造方法、
(5)前記第1の加飾シートの第2の加飾シートの裏面に接するか又はその近傍に位置する端部が、雌金型から離れる方向にカールしている上記(1)〜(4)のいずれかに記載のインサート加飾成形品の製造方法、及び
(6)前記加飾シートが加飾層とバッカー層からなり、加飾層を構成する基材がアクリル樹脂であり、バッカー層がABS樹脂で構成される上記(1)〜(5)のいずれかに記載のインサート加飾成形品の製造方法、
を提供するものである。
真空成形工程において、図3に示すように、本発明の製造方法に用いられる加飾シート10は、真空成形に先立ち、ヒーター22及び22'により通常140〜180℃に加熱される。加熱され軟化した加飾シート10は、図4及び5に示すように、真空成形金型21に装着され、真空吸引により凸部101と凸部101に続く鍔状部102とを形成するように真空成形される。
また、加飾シート10の厚さは、通常200〜800μmであり、その内、バッカー層の厚さは通常100〜500μmである。
また、該端部13aの位置から第2の加飾シートの端部13bまでの距離xが、成形樹脂の肉厚の15〜100%であることを必須とする。該距離xが成形樹脂の肉厚の15%未満であると、加飾シート10の収縮によって、絵柄の境界部分から樹脂色が見え、加飾成形品の意匠性が悪化する場合がある。一方、距離xが成形樹脂の肉厚の100%を超えると、図8に示すように、加飾シート10bの端部13bを回り込むように、成形樹脂Pが流れ込む可能性があり、インサート加飾成形ができない場合がある。以上の観点から、距離xは成形樹脂の肉厚の20〜50%であることが好ましい。
なお、距離xは上述のように成形樹脂の肉厚によってその好ましい値は適宜決定されるが、通常は0.5〜3mmの範囲が好ましい。また、成形樹脂の肉厚は用途等に応じて適宜決定されるが、通常、2〜5mmの範囲であることが好ましい。肉厚が2mm以上であると、成形品としての形態が十分保持され、5mm以下であると成形品としての重量が過度に重くなく、ハンドリング容易となり、かつ、経済的にもメリットがある。以上の観点から、成形樹脂の肉厚は2.5〜4mmの範囲がより好ましい。
さらに、第1の加飾シート10aの端部13aは、雌金型31から離れる方向、すなわち図8においては右側の方向にカールしていることが好ましい。このようにカールさせることで、第1の加飾シートと第2の加飾シートが成形時に重なることがなく、第1の加飾シートと第2の加飾シートが浮くことがないため、成形樹脂と加飾シートの密着がさらに良好となる。
ゲートGの位置はゲートが1箇所の場合には、図9に示すように、第1の加飾シート10aの端部13aが第2の加飾シート10bの裏面に接する部分よりも、第2の加飾シート10bの内側にあることが好ましい。このような位置にゲートがあると、加飾シート10bを回り込むように、成形樹脂Pが流れ込む際に圧力がかかりにくく、加飾シートが成形品から剥がれる等の問題が起き難い。
また、成形樹脂を射出するためのゲートが複数ある場合には、複数のゲートから射出される成形樹脂の合流点が、第1の加飾シート側にあることが好ましい。すなわち、図10において、2ヶ所のゲートG1とG2から成形樹脂Pが射出される場合には、ゲートG1から射出される成形樹脂P1とゲートG2から射出される成形樹脂P2の合流点Jが、第1の加飾シート10aの端部13aと第2の加飾シート10bの裏面が接する部分よりも、第1の加飾シートの内側にあることが好ましい。ゲートが複数ある場合に、このような態様であると、第1の加飾シート10aと第2の加飾シート10bとの間に、成形樹脂Pが流れ込む際に圧力がかかりにくく、加飾シートが成形品から剥がれる等の問題が起き難い。
なお、射出成形の効率化の観点から、成形樹脂を射出するためのゲートは複数あることが好ましい。
本発明においては、アクリル樹脂が好ましく、より具体的には、例えば、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート−ブチル(メタ)アクリレート共重合体、メチル(メタ)アクリレート−スチレン共重合体等が挙げられる。なお、ここで、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを指す。
基材シートの厚みは、用途に応じて選定され、通常、20〜500μm程度であるが、コスト、印刷適性、表面平滑性等を考慮すると50〜300μm程度が好ましい。
絵柄層等のインキには、用途に合わせて公知のインキを使用すれば良い。バインダー樹脂には、アクリル樹脂、アクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体との混合物、ウレタン樹脂、セルロース系樹脂等が使用され、着色剤には、チタン白、カーボンブラック、弁柄、コバルトブルー等の無機顔料、フタロシアニンブルー、イソインドリノン、キナクリドン等の有機顔料、アルミニウム粉末等の金属顔料、二酸化チタン被覆雲母粉末等の真珠光沢(パール)顔料、或いは、染料等が使用される。
隠蔽層は、全面ベタ層であり、絵柄層と同様なバインダー樹脂や顔料、染料等が使用される。
絵柄層又は隠蔽層の印刷は、グラビア印刷、オフセット印刷、活版印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷等、従来公知の適宜方法が採用される。隠蔽層は、グラビア塗工、ロールコート等の塗工法により形成することが好ましい。
絵柄層の厚さは、絵柄模様に応じて適宜選択すればよい。また、隠蔽層の厚さは1〜10μm程度であり、通常グラビア印刷では1〜5μm 程度である。
本発明に用いられる加飾シート10は、通常、加飾層11とバッカー層12とを接着剤層を介してドライラミネーション又は、バッカー樹脂をTダイから押し出した直後にラミネートすること等により接着し一体化して製造される。
なお、インサート加飾成形品の外観は目視により評価した。
(1)第1の加飾シートの製造
ポリメチルメタクリレート樹脂からなる基材シート(厚さ75μm)に、アクリル樹脂及び塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂にフタロシアニンブルー、イソインドリノン、及びキナクリドンからなる有機着色顔料を含有させたインキ組成物を用い、グラビア印刷によって木目柄の絵柄層(厚さ1μm)を形成した。次いで、ポリメチルメタクリレート及びポリブチルメタクリレートの混合物及び無機顔料からなる隠蔽層(厚さ2μm)及び2液硬化型ウレタン樹脂系接着剤からなる接着剤層(厚さ10μm)を順次積層して得た加飾層11と、黒色のABS樹脂からなるバッカー層12とをドライラミネーションにより接着し一体化して、厚さ400μmの加飾シート10aを得た。
(2)第2の加飾シートの製造
上記第1の加飾シートの製造で用いたのと同様の基材シートに、アクリル樹脂及び塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂にアルミニウム粉末を顔料として含有させたインキ組成物を用い、グラビア印刷によってメタリック調の柄としたこと以外は上記(1)と同様にして加飾シート10bを得た。
(3)真空成形工程
上記加飾シート10a及び10bをそれぞれ加飾シートの温度が約160℃になるまで約300℃のヒーターで加熱した。加熱され軟化した加飾シート10a及び10bを真空成形金型21に装着し、真空吸引により凸部101と凸部101に続く鍔状部102とを形成するように真空成形した。
次に、真空成形された加飾シート10a及び10bを図6に示すようにトリミングして加飾シート10a及び10bを得た。
(4)射出成形工程
上記加飾シート10a及び10bを図8に示すように、加飾シート10aの端部13aが加飾シート10bの裏面に接するように雌金型31に配した。第1の加飾シートの端部13aの位置から第2の加飾シートの端部13bまでの距離xは1.5mmとした。次いで、図10に示すように雄金型32及び雌金型31で型締めをし、キャビティ内にゲートG1及びG2より、黒色のABS樹脂からなる成形樹脂P1及びP2を、射出温度240℃、射出圧100MPaで射出し、インサート加飾成形品を得た。なお、樹脂の肉厚は4mmとした。
(5)評価結果
木目模様とメタリック模様の境界部分から黒色のABS樹脂は見られず、意匠性の高いインサート加飾成形品が得られた。
実施例1において、第1の加飾シートの端部13aの位置から第2の加飾シートの端部13bまでの距離xを0.7mmとし、樹脂の肉厚を3mmとしたこと以外は実施例1と同様にしてインサート加飾成形品を得た。実施例1と同様に木目模様とメタリック模様の境界部分から黒色のABS樹脂は見られず、意匠性の高いインサート加飾成形品が得られた。
実施例1において、第1の加飾シートの端部13aの位置から第2の加飾シートの端部13bまでの距離xを2.0mmとし、樹脂の肉厚を3mmとしたこと以外は実施例1と同様にしてインサート加飾成形品を得た。実施例1と同様に木目模様とメタリック模様の境界部分から黒色のABS樹脂は見られず、意匠性の高いインサート加飾成形品が得られた。
実施例1において、第1の加飾シートの端部13aの位置から第2の加飾シートの端部13bまでの距離xを3.0mmとしたこと以外は実施例1と同様にしてインサート加飾成形品を得た。実施例1と同様に木目模様とメタリック模様の境界部分から黒色のABS樹脂は見られず、意匠性の高いインサート加飾成形品が得られた。
第1の加飾シート及び第2加飾シートの製造方法を以下の方法で製造したこと以外は実施例1と同様にして、インサート加飾成形品を得た。
(1)第1の加飾シートの製造
厚さ25μmのPET(ポリエチレンテレフタレート樹脂)フィルムに、アクリル樹脂を主成分とする剥離層を、乾燥後の厚さが3μmとなるように、グラビア印刷により形成した。次にアクリル樹脂及び塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂にフタロシアニンブルー、イソインドリノン、及びキナクリドンからなる有機着色顔料を含有させたインキ組成物を用い、グラビア印刷によって木目柄の絵柄層(厚さ1μm)を形成した。該絵柄層の上に、さらに、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体からなる感熱接着層を、乾燥後の厚さが2μmとなるように、グラビア印刷により形成し、加飾層となる転写箔を得た。
次に、Tダイ法により押し出された黒色ABS樹脂に、上記転写箔の感熱接着層面が接するようにラミネートし、押し出されたABS樹脂を冷却した後に、基材のPETフィルムを剥離して、厚さ400μmの第1の加飾シート10aを得た。
(2)第2の加飾シートの製造
上記第1の加飾シートの製造において、絵柄層を形成するためのインキ組成物として、アクリル樹脂及び塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂にアルミニウム粉末を顔料として含有させたインキ組成物を用い、メタリック調の柄としたこと以外は上記(1)と同様にして加飾シート10bを得た。
(5)評価結果
実施例1と同様に木目模様とメタリック模様の境界部分から黒色のABS樹脂は見られず、意匠性の高いインサート加飾成形品が得られた。
実施例1において、第1の加飾シートの端部13aと第2の加飾シートの端部13bの位置を合わせたこと以外は実施例1と同様にしてインサート加飾成形品を得た。すなわち、第1の加飾シートの端部13aの位置から第2の加飾シートの端部13bまでの距離xを0mmとした。木目模様とメタリック模様の境界部分から黒色のABS樹脂が見られ、意匠性に劣るものであった。
11 加飾層
12 バッカー層
13a、13b 加飾シートの端部
101 加飾シートの凸部
102 加飾シートの鍔状部
21 真空成形金型
22、22' ヒーター
31 射出成形金型(雌金型)
32 射出成形金型(雄金型)
S 隙間
L 2種の加飾シートの重なり部分
P、P1、P2 成形樹脂
G、G1、G2 ゲート
x 第1の加飾シートの端部13aの位置から第2の加飾シートの端部13bまでの距離
Claims (6)
- 2種以上の加飾シートを真空成形する真空成形工程と、真空成形された加飾シートの少なくとも2種を並べて雌金型に配し、該加飾シートに成形樹脂を射出する射出工程とを含むインサート加飾成形品の製造方法であって、隣接する加飾シートのうち第1の加飾シートの端部が第2の加飾シートの裏面に接するか又は該裏面の近傍に位置し、第1の加飾シートの端部の位置から第2の加飾シートの端部までの距離が、成形樹脂の肉厚の15〜100%であることを特徴とするインサート加飾成形品の製造方法。
- 前記第1の加飾シートの端部の位置から第2の加飾シートの端部までの距離が、成形樹脂の肉厚の20〜50%である請求項1に記載のインサート加飾成形品の製造方法。
- 成形樹脂を射出するためのゲートが複数あり、複数のゲートから射出される樹脂の合流点が、前記第1の加飾シートの第2の加飾シートの裏面に接するか又はその近傍に位置する端部よりも、第1の加飾シートの内側にあることを特徴とする請求項1又は2に記載のインサート加飾成形品の製造方法。
- 前記成形樹脂の肉厚が2〜5mmである請求項1〜3のいずれかに記載のインサート加飾成形品の製造方法。
- 前記第1の加飾シートの第2の加飾シートの裏面に接するか又はその近傍に位置する端部が、雌金型から離れる方向にカールしている請求項1〜4のいずれかに記載のインサート加飾成形品の製造方法。
- 前記加飾シートが加飾層とバッカー層からなり、加飾層を構成する基材がアクリル樹脂であり、バッカー層がABS樹脂で構成される請求項1〜5のいずれかに記載のインサート加飾成形品の製造方法。
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JPH09277302A (ja) * | 1996-04-08 | 1997-10-28 | Kanto Auto Works Ltd | 自動車用内装品の成形加工方法 |
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