本発明の一実施形態を図1〜図15を参照して説明する。まず、図1および図2を参照して、本実施形態の脚式移動作業装置の全体の概略構成を説明する。図1および図2は、それぞれ脚式移動作業装置の側面図、平面図である。
図1および図2に示すように、本実施形態の脚式移動作業装置1は、作業機2と、これを搭載した基体3と、この基体3から延設された6個の脚体4fR,4mR,4rR,4fL,4mL,4rLとを備える。基体3は、大略平板状のものである。なお、以降の説明では、6個の脚体4fR,4mR,4rR,4fL,4mL,4rLを互いに区別する必要が無いときは、単に「脚体4」と表記する。
作業機2は、本実施形態では、一般的な油圧ショベルからクローラ式の下部走行体を取り外したような構造の建設用作業機である。すなわち、作業機2は、基体3上で上下方向の軸まわりに旋回し得るように該基体3に取り付けられた上部旋回体5と、この上部旋回体5の前部から延設されたフロントアタッチメント6とを備える。フロントアタッチメント6は、例えば上部旋回体5から延設されたブーム7と、このブーム7の先端部から延設された第1アーム8と、この第1アーム8の先端部から延設された第2アーム9と、この第2アーム9の先端部に取り付けられたバケットなどの作業用アタッチメント10とから構成される。そして、これらのブーム7、第1アーム8、第2アーム9、作業用アタッチメント10は、それぞれ油圧シリンダ(図示省略)によって駆動されるようになっている。
なお、図示は省略するが、上部旋回体5には、運転席や操縦用操作子が設けられていると共に、油圧ポンプやこれを駆動するエンジン、油圧回路などが搭載されている。
6個の脚体4は、基体3の左右の両側部からそれぞれ3個ずつ、前後方向に並ぶように延設されている。より具体的には、基体3の右側部の前側部分、中間部分および後側部分から3個の脚体4fR,4mR,4rRがそれぞれ延設され、これらの脚体4fR,4mR,4rRが、この順番で前側から前後方向に配列されている。同様に、基体3の左側部の前側部分、中間部分および後側部分から3個の脚体4fL,4mL,4rLがそれぞれ延設され、これらの脚体4fL,4mL,4rLが、この順番で前側から前後方向に配列されている。なお、右側の脚体4fR,4mR,4rRの配列と、左側の脚体脚体4fL,4mL,4rLの配列とは、左右対称の配列となっている。
各脚体4の構造は、詳細は後述するが、いずれの脚体4についても同じである。そして、各脚体4毎に、それを駆動するアクチュエータとしての3個の油圧シリンダ11,12,13が備えられている。
次に、各脚体4およびその駆動系の構造について、図3および図4を参照して説明する。図3は、脚体4のうちの1つ、例えば脚体4fRおよびその駆動系の側面図、図4は該脚体4fRおよびその駆動系の平面図である。
まず、脚体4fRの構造を説明する。図3および図4に示すように、脚体4fRは、基体3の側部に取り付けられた関節要素部材20と、この関節要素部材20から延設された第1フレーム21と、この第1フレーム21の先端部から延設された第2フレーム22と、この第2フレーム22の先端部に取り付けられた接地部材23とを備える。なお、第1フレーム21および第2フレーム22は、概ね同一平面上で延在するように設けられている。
関節要素部材20は、上下方向に軸心を向けて基体3に設けられた軸ピン24(図3参照)に軸支され、基体3に対して軸ピン24の軸心まわりに回転可能に設けられている。また、第1フレーム21は、概略L字形状の部材であり、その関節要素部材20側の端部が、基体3の左右方向に軸心を向けて関節要素部材20に設けられた軸ピン25に軸支されている。そして、第1フレーム21は、軸ピン25の軸心まわりに回転可能に設けられている。
従って、脚体4fRは、その基体3側の一端部(第1フレーム21の基体3側の端部)が、関節要素部材20および軸ピン24,25により構成される関節機構を介して基体3に連結されている。そして、脚体4fRは、基体3に対して、上下方向の軸(軸ピン24の軸心)と、基体3の左右方向の軸(軸ピン25の軸心)との2軸まわりに回転可能とされている。
第2フレーム22は、直線状に延在する部材であり、その第1フレーム21側の端部寄りの部分が、前記軸ピン25と同方向に軸心を向けて第1フレーム21の先端部に設けられた軸ピン26(図3参照)に軸支されている。そして、第2フレーム22は、第1フレーム21に対して軸ピン26の軸心まわりに回転可能に設けられている。これにより脚体4fRは、基体3側の一端部と他端部(第2フレーム22の先端部)との間の中間部としての軸ピン26の部分(換言すれば、軸ピン26により構成される関節機構)で屈伸可能とされている。
以降の説明では、軸ピン24,25,26の軸心をそれぞれ第1関節軸24、第2関節軸25、第3関節軸26ということがある。
接地部材23は、円板状のものであり、その中心部が関節機構としてのボールジョイント27を介して第2フレーム22の先端部に揺動自在に連結されている。この接地部材23の上面の周縁部は、付勢手段としての複数のバネ28を介して第2フレーム22の先端部の外周に連結されている。この場合、接地部材23は、これに外力が作用していない状態において、各バネ28が発生する弾性力によって所定の姿勢で平衡するように付勢されている。該所定の姿勢とは、本実施形態では、接地部材23が第2フレーム22の軸心と直交するような姿勢である。
以上が脚体4fRの構造である。このような構造の脚体4fRは、基体3側の端部で第1関節軸24および第2関節軸25の2軸まわりの回転が可能で、且つ、中間部で第3関節軸26の1軸まわりの回転が可能であるので、3自由度を有する構造となっている。このような脚体4fRの構造は、脚体4fR以外の他の脚体4についても同じである。ただし、本実施形態では、図1に示したように、最後部の脚体4rR,4rL以外の各脚体4は、基体3との連結箇所から前方側に延設されている。一方、最後部の脚体4rR,4rLは、基体3との連結箇所から後方側に延設されている。これにより、基体3の左右の両側でそれぞれ前後方向に並ぶ3個の脚体4どうしの干渉を回避しつつ、基体3の前後方向の長さが過剰に長くならないようにしている。
次に、各脚体4の駆動系の構造を、脚体4fRに関して代表的に説明する。脚体4fRの駆動系を構成する油圧シリンダ11,12,13のうち、第1の油圧シリンダ11は、脚体4fRを前記第1関節軸24のまわりに回転駆動するためのシリンダ、第2の油圧シリンダ12は、脚体4fRを前記第2関節軸25のまわりに回転駆動するためのシリンダである。また、第3の油圧シリンダ13は、脚体4の中間部を前記第3関節軸26のまわりに屈伸させる(第2フレーム22を第1フレーム21に対して第3関節軸回りに回転駆動する)ためのシリンダである。
油圧シリンダ11は、図4に示すように、その軸心方向を基体3の左右方向に向けて基体3上に配置されている。そして、油圧シリンダ11のピストンロッド11bが、第1関節軸24と平行に軸心を向けて前記関節要素部材20に設けられた軸ピン29に軸支され、該軸ピン29の軸心まわりに揺動可能に設けられている。また、油圧シリンダ11のチューブ11aのボトム側の端部が第1関節軸24と平行に軸心を向けて基体3に設けられた軸ピン30に軸支され、該軸ピン30の軸心まわりに揺動可能に設けられている。これにより、油圧シリンダ11のピストンロッド11bの伸縮動作を行なうと、関節要素部材20が脚体4fRと共に第1関節軸24のまわりに回転駆動されるようになっている。この場合、ピストンロッド11bの伸長動作と短縮動作とで、第1関節軸24のまわりの脚体4fRの回転方向は逆向きになる。
油圧シリンダ12は、そのチューブ12aのボトム側の端部が前記第2関節軸25と平行に軸心を向けて関節要素部材20に設けられた軸ピン31(図3参照)に軸支され、該軸ピン31の軸心まわりに揺動可能に設けられている。さらに、油圧シリンダ12のピストンロッド12bは、第1フレーム21の屈曲部分と先端部との間の部分で第2関節軸25と平行に軸心を向けて設けられた軸ピン32に軸支され、該軸ピン32の軸心回りに揺動可能に設けられている。これにより、油圧シリンダ12のピストンロッド12bの伸縮動作を行なうと、第1フレーム21が第2関節軸25のまわりに回転駆動されるようになっている。この場合、ピストンロッド12bの伸長動作と短縮動作とで、第2関節軸25のまわりの第1フレーム21の回転方向は逆向きになる。
油圧シリンダ13は、そのチューブ13aのボトム側の端部が第1フレーム21の屈曲部から突設された突出部21aに前記第3関節軸26と平行に軸心を向けて設けられた軸ピン33に軸支され、該軸ピン33の軸心まわりに揺動可能に設けられている。また、油圧シリンダ13のピストンロッド13bは、前記軸ピン26と第2フレーム22の延在方向に間隔を存し、且つ前記第3関節軸26と平行に軸心を向けて第2フレーム22の端部(第1フレーム21側の端部)に設けられた軸ピン34に軸支され、該軸ピン34の軸心まわりに揺動可能に設けられている。これにより、油圧シリンダ13のピストンロッド13bの伸縮動作を行なうと、第2フレーム22が第1フレーム21に対して第3関節軸26の軸心まわりに回転駆動されるようになっている。この場合、ピストンロッド13bの伸長動作によって、脚体4が軸ピン26の部分で屈曲する方向に第2フレーム22が第3関節軸26のまわりに回転し、ピストンロッド13aの短縮動作によって、脚体4が軸ピン26の部分で伸びる方向に第2フレーム22が第3関節軸26のまわりに回転する。
以上が脚体4fRの駆動系の構造である。この構造によって、脚体4fRの3自由度の運動が、油圧シリンダ11,12,13の動作によりなされる。このような脚体4fRの駆動系の構造は、脚体4fR以外の他の脚体4についても同じである。
補足すると、前記第1関節軸24のまわりの各脚体4の回転運動(以下、旋回運動ということがある)は、油圧シリンダ11のピストンロッド11bのストローク、あるいは、図示しないストッパにより規定される範囲内で行なわれる。この場合、脚体4の旋回運動によって、脚体4の基体3側の端部の第2関節軸25の方向は、基体3の前後方向の軸に完全に直交する左右方向に対して傾斜することとなるが、該旋回運動は、第2関節軸25の方向が基体3の前後方向の軸に完全に直交する左右方向に一致する状態を含む所定の角度範囲内(第2関節軸25の方向が大略、基体3の左右方向となる角度範囲内)で行ない得るようになっている。そして、いずれの脚体4についても、第2関節軸25の方向が基体3の前後方向の軸に完全に直交する左右方向に一致する状態(図2に示す状態)では、脚体4の第2関節軸25のまわりの回転運動(以下、脚振り運動ということがある)と、第3関節軸26のまわりの屈伸運動とは、当該左右方向に直交する平面上で行なわれるようになっている。この状態では、脚式移動作業装置1の全体の幅は、各脚体4の脚振り運動および屈伸運動によらずに、ほぼ一定の最小幅に保たれる。
なお、各脚体4の旋回運動の場合と同様に、各脚体4の脚振り運動は、油圧シリンダ12のピストンロッド12bのストローク、あるいは、図示しないストッパにより規定される所定の角度範囲内で行なわれるようになっている。さらに、各脚体4の屈伸運動も、油圧シリンダ13のピストンロッド13bのストローク、あるいは、図示しないストッパにより規定される所定の角度範囲内で行なわれるようになっている。
次に、図5を参照して、各脚体4を駆動する油圧シリンダ11,12,13の制御システムの構成を説明する。図5は、その制御システムの構成を概略的に示す図である。
本実施形態の脚式移動作業装置1は、前記した機構的構成のほか、図5に示す制御システムを備えている。なお、図5では、任意の1つの脚体4に関する制御システムを代表的に図示している。
各脚体4に対応する油圧シリンダ11,12,13のそれぞれのロッド側油室11c,12c,13cおよびボトム側油室11d,12d,13dは、各油圧シリンダ11,12,13に対応して設けられた油圧回路41,42,43を介して油圧ポンプ44および作動油タンク45に接続されている。これらの油圧回路41,42,43、油圧ポンプ44および作動油タンク45は、前記作業機2の上部旋回体5、あるいは、基体3に搭載されている。また、油圧ポンプ44は、上部旋回体5に搭載された図示しないエンジンにより駆動されるようになっている。なお、油圧ポンプ44は、6個の脚体4分の全ての油圧シリンダ11,12,13(総計18個の油圧シリンダ)に対して共通の単一のポンプでもよいが、個々の脚体4毎に各別に備えてもよい。あるいは、6個の脚体4または、総計18個の油圧シリンダ11,12,13を複数のグループに分類しておき、その各グループ毎に、油圧ポンプ44を備えるようにしてもよい。
各油圧シリンダ11に対応する油圧回路41には、図示を省略する方向切換弁や流量制御弁(サーボ弁や電磁比例制御弁など)が備えられ、これらの弁の動作が作業機2の上部旋回体5あるいは基体3に搭載された脚体制御装置40によって電気的に制御されるようになっている。そして、その制御によって、油圧ポンプ44から吐出される作動油の供給先とする油圧シリンダ11の油室(ロッド側油室11cまたはボトム側油室11d)の切り換えや、その供給先の油室への作動油の流量が調整されるようになっている。油圧シリンダ12に対応する油圧回路42および油圧シリンダ13に対応する油圧回路43についても同様である。
脚体制御装置40は、マイクロコンピュータを含む電子回路ユニットである。本実施形態では、脚体制御装置40は、6個の脚体4分の全ての油圧シリンダ11,12,13の動作(ひいては各脚体4の動作)をそれぞれに対応する油圧回路41,42,43を介して制御する。
この脚体制御装置40には、各脚体4の、前記第1関節軸24のまわりの回転角度、第2関節軸25のまわりの回転角度、並びに第3関節軸26のまわりの屈曲角度のそれぞれの検出値が各脚体4の運動状態を表す脚体運動状態検出データとして各脚体4に設けられた図示しない角度センサから入力されるようになっている。さらに、脚体制御装置40には、脚式移動作業装置1の移動時の動作モードを指示する動作モード指示データなどが入力されるようになっている。動作モードは、脚式移動作業装置1の移動形態を表すものであり、例えば階段昇降用の動作モード、平地移動用の動作モード等である。また、脚体制御装置40には、各動作モードでの各脚体4の運動パターン(各脚体4の動かし方)を規定するティーチングデータや、各脚体4の動作制御用のプログラムがあらかじめ実装されている。
そして、脚体制御装置40は、入力されたデータやティーチングデータを使用して、プログラムによる制御処理を実行することで、各脚体4に対応する油圧シリンダ11,12,13を操作するための制御入力(操作量)を逐次決定し、その制御入力によって油圧シリンダ11,12,13の動作をそれぞれに対応する油圧回路41,42,43を介して制御するようにしている。
なお、脚体制御装置40は、これが実行する制御処理によって、本発明における階段昇降用脚体運動制御手段と、平地移動用脚体運動制御手段としての機能を有する。
補足すると、各脚体4の、第1関節軸24のまわりの回転角度、第2関節軸25のまわりの回転角度、第3関節軸26のまわりの屈曲角度は、それぞれ油圧シリンダ11,12,13のピストンロッド11b,12b,13bの伸縮量(各チューブ11a,12a,13aからの突出量)によって一義的に定まる。従って、各脚体4の各関節軸24,25,26のまわりの角度の検出値に代えて、各油圧シリンダ11,12,13のピストンロッド11b,12b,13bの伸縮量の検出値を脚体運動状態検出データとして脚体制御装置40に入力するようにしてもよい。
次に、本実施形態の脚式移動作業装置1の作動を説明する。まず、図6および図7を参照して、脚式移動作業装置1の移動時における脚体2の基本的な動作を説明する。脚式移動作業装置1の移動時には、6個の脚体4のうちの所定数の脚体4を接地させた状態で、残りの脚体4を遊脚として、空中に持上げて移動させた後に着地させる。
図6(a)〜(d)は、例えば脚式移動作業装置1を前進させる場合における脚体4の動作状態を時系列的に示す図である。なお、図6(a)〜(d)では、1つの脚体4(例えば脚体4fR)の動作を代表的に記載している。
この場合、本実施形態では、遊脚となる脚体4(4fR)の先端部の接地部材23を、脚体4の前記脚振り運動および屈伸運動の複合運動によって図6(a)に破線の矢印Y600で示すように動かす。より具体的には、まず、図6(a)に示すように脚体4の接地部材23を接地させた状態から、図6(b)の矢印Y601で示すように脚体4の接地部材23を上昇させて空中に持上げる。この動作は、脚体4fRにあっては、油圧シリンダ12のピストンロッド12bを矢印Y602で示すように伸長させて、脚体4の第1フレーム21を前記第2関節軸25のまわりに矢印Y603で示す向きに回転させると共に、油圧シリンダ13のピストンロッド13bを矢印Y604で示すように短縮させて、脚体4の第2フレーム22を前記第3関節軸26のまわりに矢印Y605で示す向きに回転させることでなされる。
次いで、図6(c)に矢印Y606で示すように脚体4の接地部材23を空中で前方に動かす。この動作は、脚体4fRにあっては、油圧シリンダ12のピストンロッド12bを矢印Y607で示すように短縮させて、脚体4の第1フレーム21を第2関節軸25のまわりに矢印Y608で示す向きに回転させると共に、油圧シリンダ13のピストンロッド13bを矢印Y609で示すように短縮させて、脚体4の第2フレーム22を第3関節軸26のまわりに矢印Y610で示す向きに回転させることでなされる。
次いで、図6(d)に矢印Y611で示すように脚体4の接地部材23を下降させて接地させる。この動作は、脚体4fRにあっては、油圧シリンダ12のピストンロッド12bを矢印Y612で示すように短縮させて、脚体4の第1フレーム21を第2関節軸25のまわりに矢印Y613で示す向きに回転させると共に、油圧シリンダ13のピストンロッド13bを矢印Y614で示すように伸長させて、脚体4の第2フレーム22を第3関節軸26のまわりに矢印Y615で示す向きに回転させることでなされる。
上記のように、脚式移動作業装置1の移動時には、遊脚とする脚体4を空中に持上げて移動させた後に着地させるという脚体4の基本動作が行なわれる。このことは、脚式移動作業装置1を前進させる場合に限らず、どのような形態で移動させる場合でも同様である。ただし、脚式移動作業装置1を旋回させる場合や左右方向に移動させる場合には、遊脚とする脚体4の接地部材23を空中に持上げた状態で、該脚体4の脚振り運動および屈伸運動に加えて、旋回運動が付加される。
図7(a),(b)は、その旋回運動における1つの脚体4(例えば脚体4fR)の動作を示す図である。図7(a)は、脚体4の接地部材23を矢印Y701で示すように時計まわり方向に移動させる場合の該脚体4の動作を示している。この動作は、脚体4fRにあっては、油圧シリンダ11のピストンロッド11bを矢印Y702で示すように短縮させて、脚体4を第1関節軸24のまわりに矢印Y703で示す向きに回転させることでなされる。
また、図7(b)は、脚体4の接地部材23を矢印Y704で示すように反時計まわり方向に移動させる場合の該脚体4の動作を示している。この動作は、脚体4fRにあっては、油圧シリンダ11のピストンロッド11bを矢印Y705で示すように伸長させて、脚体4を第1関節軸14のまわりに矢印Y706で示す向きに回転させることでなされる。
補足すると、図6および図7に示した油圧シリンダ11,12,13の伸縮動作の形態は一例である。遊脚とする脚体4の接地部材23を動かすときの瞬時瞬時の油圧シリンダ11,12,13のそれぞれのピストンロッド11b,12b,13bの伸縮量は、一般には、各油圧シリンダ11,12,13と脚体4との連結構成や、脚体4の各フレーム21,21の長さ、脚体4の接地部材23の動かし方などに依存する。本実施形態では、各脚体4は3自由度を有するので、各脚体4に対応する油圧シリンダ11,12,13のそれぞれのピストンロッド11b,12b,13bの伸縮量(あるいは、各脚体4の各関節軸24,25,26のまわりの角度)は、基体3と各脚体4の接地部材23との間の相対的位置関係によって一義的に定まる。
次に、本実施形態の脚式移動作業装置1による階段の昇降動作について説明する。
まず、図8および図9を参照して、脚式移動作業装置1に階段を昇らせる場合における6個の脚体4の動作を説明する。図8(a)〜(d)は階段を昇る脚式移動作業装置1の瞬時的な動作状態を側面視で時系列的に示す図、図9(a)〜(d)は階段を昇る脚式移動作業装置1の瞬時的な動作状態を平面視で時系列的に示す図である。図9(a)〜(d)に示す動作状態は、それぞれ図8(a)〜(d)の動作状態に対応している。それぞれの動作状態は、いずれも6個の脚体4を全て接地させた状態である。なお、図8では、図を見やすくするために、便宜上、脚式移動作業装置1の前方に向かって左側の脚体4については破線で示している。
図8(a)および図9(a)は、脚式移動作業装置1に階段Sを昇らせる途中における基本動作状態(以下、昇り基本動作状態という)を示している。この昇り基本動作状態は、6個の脚体4のうちの最前列の左右の脚体4fR,4fLの組(以下、前脚体組4fR,4fLということがある)が階段Aの同一の段差面SS(n)に接地し、且つ、前側から2列目の左右の脚体4mR,4mLの組(以下、中脚体組4mR,4mLということがある)が階段Aの段差面SS(n)よりも低い同一の段差面SS(n-2)に接地し、且つ、前側から3列目(最後列)の左右の脚体4rR,4rLの組(以下、後脚体組4rR,4rLという)が階段Aの段差面SS(n-2)よりも低い段差面SS(n-4)に接地している状態である。すなわち、昇り基本動作状態は、前脚体組4fR,4fL、中脚体組4mR,4mL、および後脚体組4rR,4rLの各組に属する2つの脚体4,4が、各組別に階段Sの同一の段差面で基体3の左右方向に並んで接地している状態である。この昇り基本動作状態における基体3および作業機2の上部旋回体5の姿勢は水平姿勢(より詳しくは、基体3の前後方向の軸を階段Sの昇降方向に向けた水平姿勢)である。また、この昇り基本動作状態における第2関節軸25および第3関節軸26の方向は、基体3の左右方向である。
なお、本実施形態では、昇り基本動作状態で前脚体組4fR,4fL、中脚体組4mR,4mL、および後脚体組4rR,4rLをそれぞれ接地させる段差面SS(n),SS(n-2),SS(n-4)は、2段ずつ、段数が異なる段差面である。ただし、それらの段差面SS(n),SS(n-2),SS(n-4)は、1段ずつ、段数が異なる段差面でもよく、あるいは、3段以上の所定段数ずつ、段数が異なる段差面であってもよい。
本実施形態では、脚式移動作業装置1に階段Sを昇らせる場合には、まず、6個の脚体4が上記昇り基本動作状態で階段Sの段差面で接地するように、該脚式移動作業装置1を平坦な床面から階段Sに移動させる。その移動は、例えば、あらかじめ定められたティーチングデータに基づいて各脚体4を運動させることで行なわれる。そして、この昇り基本動作状態から、図8(b)および図9(b)に示す動作状態と、図8(c)および図9(c)に示す動作状態とを経て、図8(d)および図9(d)に示す動作状態に順次移行するように6個の脚体4の運動を制御することによって、脚式移動作業装置1に階段Sを所定段数(本実施形態では1段)だけ昇らせる。
この場合、図8(d)および図9(d)に示す動作状態は、図8(a)および図9(a)の昇り基本動作状態と同様の昇り基本動作状態、換言すれば、基体3と各脚体4の先端部(接地部材23)との相対的位置関係が、図8(a)および図9(a)の昇り基本動作状態における当該相対的位置関係と同じになるような動作状態である。ただし、図8(d)および図9(d)に示す昇り基本動作状態では、前脚体組4fR,4fL、中脚体組4mR,4mL、および後脚体組4rR,4rLがそれぞれ接地する段差面は、図8(a)および図9(a)に示す昇り基本動作状態において前脚体組4fR,4fL、中脚体組4mR,4mL、および後脚体組4rR,4rLがそれぞれ接地する段差面SS(n),SS(n-2),SS(n-4)よりも1段だけ高い段差面SS(n+1),SS(n-1),SS(n-3)である。
このように昇り基本動作状態から次の昇り基本動作状態に移行する6個の脚体4の運動を繰り返すことによって、脚式移動作業装置1が階段Sを昇っていく。
以下に、昇り基本動作状態から次の昇り基本動作状態までの脚体4の動作をより具体的に説明する。
脚式移動作業装置1に階段Sを昇らせる場合の昇り基本動作状態から次の昇り基本動作状態までの脚体4の動作においては、まず、6個の脚体4のうちの4個の脚体4を接地させた状態で、残りの2個の脚体4を遊脚として運動させ、その遊脚としての2個の脚体4を昇り基本動作状態で接地していた段差面よりも上側の段差面に着地させることによって、脚体4の動作状態を図8(b)および図9(b)に示す動作状態に移行させる。以下、図8(b)および図9(b)に示す動作状態を昇り第1過渡動作状態、昇り基本動作状態から昇り第1過渡動作状態への移行動作を昇り第1ステップ動作という。
この昇り第1ステップ動作において遊脚として運動させる2個の脚体4の組は、脚式移動作業装置1の右側の1つの脚体4と左側の1つの脚体4との組である。本実施形態では、昇り第1ステップ動作において遊脚とする2個の脚体4の組は、例えば脚体4fR,4mLの組(以下、昇り用第1組脚体4fR,4mLという)にあらかじめ定められている。
この昇り第1ステップ動作では、昇り用第1組脚体4fR,4mLに属する脚体4fR,4mLを除く4個の脚体4fL,4mR,4rR,4rLを接地状態に維持したまま、脚体4fR,4mLを上昇させて、昇り基本動作状態でそれぞれ接地していた段差面SS(n),SS(n-2)よりも1段だけ上側の段差面SS(n+1),SS(n-1)に着地させるように、前記脚体制御装置40が各脚体4に対応する油圧シリンダ11,12,13の動作を制御する。
より具体的には、脚体制御装置40は、あらかじめ入力されたティーチングデータなどに基づいて、昇り第1ステップ動作における各脚体4の先端部(接地部材23)の目標運動軌道と基体3の目標運動軌道とを生成する。各脚体4の先端部の目標運動軌道は、該先端部の代表点(接地部材23の中央点など)の空間的な目標位置の時系列として表される。また、基体3の目標運動軌道は、基体3の代表点(中央点など)の空間的な目標位置の時系列として表される。
この場合、遊脚とする脚体4fR,4mLのそれぞれの先端部の目標運動軌道は、脚体4fR,4mLのそれぞれの接地部材23を昇り基本動作状態で接地していた段差面SS(n),SS(n-1)から上昇させて、図9(a)に矢印Y91,Y92で示す如く1段だけ上側の段差面SS(n+1),SS(n-1)の上方に移動させ、さらに、該段差面SS(n+1),SS(n-1)上にそれぞれ下降させて着地させるような軌道である。また、その目標運動軌道は、基体3の左右方向に垂直な面上での軌道である。一方、接地状態に維持する脚体4fL,4mR,4rR,4rLのそれぞれの先端部の目標運動軌道は、脚体4fL,4mR,4rR,4rLのそれぞれの先端部の位置を図8(a)および図9(a)に示す昇り基本動作状態での位置に維持する軌道である。
また、昇り第1ステップ動作での基体3の目標運動軌道は、脚式移動作業装置1を上方から見た平面視において、脚式移動作業装置1の全体の重心が、接地状態に維持する4個の脚体4fL,4mR,4rR,4rLのそれぞれの接地部材23を結ぶ、所謂支持多角形(四角形)内に余裕をもって位置する(当該重心が支持多角形の境界に近づきすぎない)ような軌道である。その目標運動軌道は、本実施形態では、基体3の目標位置を昇り基本動作状態での位置に概ね保持するような軌道である。なお、本実施形態では、基体3の姿勢(空間的な向き)については、水平姿勢に保持する。
そして、脚体制御装置40は、各脚体4の目標運動軌道と基体3の目標運動軌道とから、各脚体4の、前記第1関節軸24のまわりの回転角度、第2関節軸25のまわりの回転角度、並びに第3関節軸26のまわりの屈曲角度の瞬時目標値の時系列を求める。なお、各脚体4のそれぞれの第1関節軸24のまわりの回転角度の瞬時目標値は、昇り基本動作状態における回転角度に維持される。さらに、脚体制御装置40は、その求めた各角度の瞬時目標値と検出値との偏差から、該偏差を0に近づけるようにPID則などのフィードバック制御則により各脚体4毎の各油圧シリンダ11,12,13の動作を規定する制御入力を逐次決定する。そして、脚体制御装置40は、その決定した制御入力によって各脚体4毎の油圧シリンダ11,12,13に対応する前記油圧回路41,42,43を制御する。
これにより、脚体4fL,4mR,4rR,4rLの接地状態を維持したまま、遊脚としての脚体4fR,4mLの先端部が目標運動軌道に追従するように運動すると共に、基体3が目標運動軌道に追従するように運動する。
以上説明した昇り第1ステップ動作によって、脚体4の動作状態は、図8(a)および図9(a)の昇り基本動作状態から図8(b)および図9(b)の昇り第1過渡動作状態に移行する。
次いで、昇り第1ステップ動作において遊脚とした脚体4fR,4mLを含む4個の脚体4を接地させた状態で、残りの2個の脚体4を遊脚として運動させ、その遊脚としての2個の脚体4を昇り第1過渡動作状態で接地していた段差面よりも上側の段差面に着地させることによって、脚体4の動作状態を図8(c)および図9(c)に示す動作状態に移行させる。以下、図8(c)および図9(c)に示す動作状態を昇り第2過渡動作状態、昇り第1過渡動作状態から昇り第2過渡動作状態への移行動作を昇り第2ステップ動作という。
この昇り第2ステップ動作において遊脚として運動させる2個の脚体4,4の組は、昇り第1ステップ動作において遊脚とした脚体4fR,4mLを除く4個の脚体4fL,4mR,4rR,4rLのうちの、右側の1つの脚体4と左側の1つの脚体4との組である。本実施形態では、昇り第2ステップ動作において遊脚とする2個の脚体4,4の組は、例えば脚体4mR,4rLの組(以下、昇り用第2組脚体4mR,4rLという)にあらかじめ定められている。
この昇り第2ステップ動作では、昇り用第2組脚体4mR,4rLに属する脚体4mR,4rLを除く4個の脚体4fR,4fL,4mL,4rRを接地状態に維持したまま、脚体4mR,4rLを上昇させて、図8(b)および図9(b)の昇り第1過渡動作状態でそれぞれ接地していた段差面SS(n-2),SS(n-4)よりも1段だけ上側の段差面SS(n-1),SS(n-3)に着地させるように、前記脚体制御装置40が各脚体4に対応する油圧シリンダ11,12,13の動作を制御する。
より具体的には、脚体制御装置40は、昇り第1ステップ動作の場合と同様に、各脚体4の先端部(接地部材23)の目標運動軌道と基体3の目標運動軌道とを生成する。
この場合、遊脚とする脚体4mR,4rLのそれぞれの先端部の目標運動軌道は、脚体4mR,4rLのそれぞれの接地部材23を昇り第1過渡動作状態で接地していた段差面SS(n-2),SS(n-4)から上昇させて、図9(b)に矢印Y93,Y94で示す如く1段だけ上側の段差面SS(n-1),SS(n-3)の上方に移動させ、さらに、該段差面SS(n-1),SS(n-3)上にそれぞれ下降させて着地させるような軌道である。また、その目標運動軌道は、基体3の左右方向に垂直な面上での軌道である。一方、接地状態に維持する脚体4fR,4fL,4mL,4rRのそれぞれの先端部の目標運動軌道は、脚体4fR,4fL,4mL,4rRのそれぞれの先端部の位置を図8(b)および図9(b)に示す昇り第1過渡動作状態での位置に維持する軌道である。
また、昇り第2ステップ動作での基体3の目標運動軌道は、昇り第1ステップ動作の場合と同様に、脚式移動作業装置1を上方から見た平面視において、脚式移動作業装置1の全体の重心が、接地状態に維持する4個の脚体4fR,4fL,4mL,4rRのそれぞれの接地部材23を結ぶ支持多角形内に余裕をもって位置するような軌道である。その目標運動軌道は、本実施形態では、基体3の目標位置を昇り第1過渡動作状態での位置に概ね保持するような軌道である。なお、本実施形態では、昇り第2ステップ動作においても基体3の姿勢は、水平姿勢に保持する。
そして、脚体制御装置40は、各脚体4の先端部の目標運動軌道と、基体3の目標運動軌道とに応じて、昇り第1ステップ動作と全く同様に、各油圧シリンダ11,12,13に対応する前記油圧回路41,42,43を制御する。
これにより、脚体4fR,4fL,4mL,4rRの接地状態を維持したまま、遊脚としての脚体4mR,4rLの先端部が目標運動軌道に追従するように運動すると共に、基体3が目標運動軌道に追従するように運動する。
以上説明した昇り第2ステップ動作によって、脚体4の動作状態は、図8(b)および図9(b)の昇り第1過渡動作状態から図8(c)および図9(c)の昇り第2過渡動作状態に移行する。
次いで、昇り第1ステップ動作において遊脚とした脚体4fR,4mLと昇り第2ステップ動作において遊脚とした脚体4mR,4rLとからなる4個の脚体4fR,4mL,4mR,4rLを接地させた状態で、残りの2個の脚体4rR,4fLを遊脚として運動させ、その遊脚としての2個の脚体4fL,4rRを昇り第2過渡動作状態で接地していた段差面よりも上側の段差面に着地させることによって、脚体4の動作状態を図8(d)および図9(d)に示す昇り基本動作状態に移行させる。以下、昇り第2過渡動作状態から次の昇り基本動作状態への移行動作を昇り第3ステップ動作という。また、この昇り第3ステップ動作で遊脚とする脚体4rR,4fLの組を昇り用第3組脚体4rR,4fLという。
この昇り第3ステップ動作では、昇り用第3組脚体4rR,4fLに属する脚体4rR,4fLを除く4個の脚体4fR,4mR,4mL,4rLを接地状態に維持したまま、脚体4rR,4fLを上昇させて、図8(c)および図9(c)の昇り第2過渡動作状態でそれぞれ接地していた段差面SS(n-4),SS(n)よりも1段だけ上側の段差面SS(n-3),SS(n+1)に着地させるように、前記脚体制御装置40が各脚体4に対応する油圧シリンダ12,13の動作を制御する。
より具体的には、脚体制御装置40は、昇り第1ステップ動作の場合と同様に、各脚体4の先端部(接地部材23)の目標運動軌道と基体3の目標運動軌道とを生成する。
この場合、遊脚とする脚体4rR,4fLのそれぞれの先端部の目標運動軌道は、脚体4rR,4fLのそれぞれの接地部材23を昇り第2過渡動作状態で接地していた段差面SS(n-4),SS(n)から上昇させて、図9(c)に矢印Y95,Y96で示す如く1段だけ上側の段差面SS(n-3),SS(n+1)の上方に移動させ、さらに、該段差面SS(n-3),SS(n+1)上にそれぞれ下降させて着地させるような軌道である。また、その目標運動軌道は、基体3の左右方向に垂直な面上での軌道である。一方、接地状態に維持する脚体4fR,4mR,4mL,4rLのそれぞれの先端部の目標運動軌道は、脚体4fR,4mR,4mL,4rLのそれぞれの先端部の位置を図8(c)および図9(c)に示す昇り第2過渡動作状態での位置に維持する軌道である。
また、昇り第3ステップ動作での基体3の目標運動軌道は、基体3の目標位置を昇り第2過渡動作状態での位置から、昇り第3ステップ動作の終了時に、基体3と各脚体4の先端部との相対的位置関係が図8(a)および図9(a)に示す昇り基本動作状態における相対的位置関係と同じになるような位置(図8(d)および図9(d)に示す位置)まで移動させるような軌道である。同時に、その目標運動軌道は、昇り第1ステップ動作の場合と同様に、脚式移動作業装置1を上方から見た平面視において、脚式移動作業装置1の全体の重心が、接地状態に維持する4個の脚体4fR,4mR,4mL,4rLのそれぞれの接地部材23を結ぶ支持多角形内に余裕をもって位置するような軌道である。なお、本実施形態では、昇り第3ステップ動作においても基体3の姿勢は、水平姿勢に保持する。
そして、脚体制御装置40は、各脚体4の先端部の目標運動軌道と、基体3の目標運動軌道とに応じて、昇り第1ステップ動作と全く同様に、各油圧シリンダ11,12,13に対応する前記油圧回路41,42,43を制御する。
これにより、脚体4fR,4mR,4mL,4rLの接地状態を維持したまま、遊脚としての脚体4rR,4fLの先端部が目標運動軌道に追従するように運動すると共に、基体3が目標運動軌道に追従するように運動する。
以上説明した昇り第3ステップ動作によって、脚体4の動作状態は、図8(c)および図9(c)の昇り第2過渡動作状態から図8(d)および図9(d)の昇り基本動作状態に移行する。
なお、本実施形態では、前記昇り第1ステップ動作、昇り第2ステップ動作、および昇り第3ステップ動作のいずれの動作においても、前記したように、各脚体4のそれぞれの第1関節軸24のまわりの回転角度の瞬時目標値は、昇り基本動作状態における回転角度に維持される。換言すれば、各脚体4の第2関節軸25および第3関節軸26の向きは、基体3の左右方向に維持される。このため、昇り第1ステップ動作、昇り第2ステップ動作、および昇り第3ステップ動作のいずれの動作においても、6個の脚体4のそれぞれの運動は、基体3の左右方向に垂直な面上での前記脚振り運動と屈伸運動との複合運動となる。
以上が、脚式移動作業装置1に階段Sを昇らせる場合における昇り基本動作状態から次の昇り基本動作状態までの脚体4の動作の詳細である。この動作の繰り返し(昇り第1ステップ動作、昇り第2ステップ動作および昇り第3ステップ動作の繰り返し)によって、脚式移動作業装置1が階段Sを1段ずつ、昇っていくこととなる。
次に、図10および図11を参照して、脚式移動作業装置1に階段を降らせる場合における6個の脚体4の動作を説明する。図10(a)〜(d)は階段を降る脚式移動作業装置1の瞬時的な動作状態を側面視で時系列的に示す図、図11(a)〜(d)は階段を降る脚式移動作業装置1の瞬時的な動作状態を平面視で時系列的に示す図である。図10(a)〜(d)に示す脚体4の動作状態は、それぞれ図11(a)〜(d)の動作状態に対応している。それぞれの動作状態は、いずれも6個の脚体4を全て接地させた状態である。なお、図10では、図を見やすくするために、便宜上、脚式移動作業装置1の前方に向かって右側の脚体4については破線で示している。
図10(a)および図11(a)は、脚式移動作業装置1に階段Sを降らせる途中における6個の脚体4の基本動作状態(以下、降り基本動作状態という)を示している。この降り基本動作状態は、前記昇り基本動作状態と同様に、前脚体組4fR,4fLが階段Sの同一の段差面SS(n)に左右方向に並んで接地し、且つ、中脚体組4mR,4mLが段差面SS(n)よりも上側の段差面SS(n+2)に左右方向に並んで接地し、且つ後脚体組4rR,4rLが段差面SS(n+2)よりも上側の段差面SS(n+4)に左右方向に並んで接地している状態である。この降り基本動作状態における基体3および作業機2の上部旋回体5の姿勢は水平姿勢(より詳しくは、基体3の前後方向の軸を階段Sの昇降方向に向けた水平姿勢)である。また、この昇り基本動作状態における第2関節軸ピン25および第3関節軸26の方向は、基体3の左右方向である。また、段差面SS(n),SS(n+2),SS(n+4)は、本実施形態では、2段ずつ、段数が異なる段差面である。
脚式移動作業装置1に階段Sを降らせる場合には、まず、6個の脚体4が上記降り基本動作状態で階段Sの段差面で接地するように、該脚式移動作業装置1を平坦な床面から階段Sに移動させる。その移動は、例えば、あらかじめ定められたティーチングデータに従って各脚体4を運動させることで行なわれる。そして、階段Sを昇らせる場合と同様に、降り基本動作状態から、図10(b)および図11(b)に示す動作状態(以下、降り第1過渡動作状態という)と、図10(c)および図11(c)に示す動作状態(以下、降り第2過渡動作状態という)とを経て、図10(d)および図11(d)に示す降り基本動作状態に順次移行するように6個の脚体4の運動を制御することによって、脚式移動作業装置1に階段Sを所定段数(本実施形態では1段)だけ降らせる。なお、図10(d)および図11(d)に示す降り基本動作状態は、基体3と各脚体4の先端部(接地部材23)との相対的位置関係が、図10(a)および図11(a)の降り基本動作状態における当該相対的位置関係と同じになるような動作状態である。ただし、図10(d)および図11(d)に示す降り基本動作状態では、前脚体組4fR,4fL、中脚体組4mR,4mL、および後脚体組4rR,4rLがそれぞれ接地する段差面は、図10(a)および図11(a)に示す降り基本動作状態において前脚体組4fR,4fL、中脚体組4mR,4mL、および後脚体組4rR,4rLがそれぞれ接地する段差面SS(n),SS(n+2),SS(n+4)よりも所定段数(本実施形態では1段)だけ低い段差面SS(n-1),SS(n+1),SS(n+3)である。
このように降り基本動作状態から次の降り基本動作状態に移行する6個の脚体4の運動を繰り返すことによって、脚式移動作業装置1が階段Sを降っていく。
以下に、降り基本動作状態から次の昇り基本動作状態までの脚体4の動作をより具体的に説明する。
脚式移動作業装置1に階段Sを降らせる場合の降り基本動作状態から次の降り基本動作状態までの脚体4の動作においては、まず、6個の脚体4のうちの4個の脚体4を接地させた状態で、残りの2個の脚体4を遊脚として運動させ、その遊脚としての2個の脚体4を降り基本動作状態で接地していた段差面よりも下側の段差面に着地させるという動作(以下、降り第1ステップ動作という)によって、脚体4の動作状態を図10(a)および図11(a)の降り基本動作状態から図10(b)および図11(b)に示す降り第1過渡動作状態に移行させる。
この降り第1ステップ動作において遊脚として運動させる2個の脚体4,4の組は、本実施形態では、例えば左右一対の脚体4fL,4mRの組(以下、降り用第1組脚体4fL,4mRということがある)にあらかじめ定められている。
この降り第1ステップ動作では、脚体制御装置40は、昇りの場合と同様の手法で、各脚体4に対応する油圧シリンダ11,12,13の動作を制御する。
すなわち、脚体制御装置40は、まず、各脚体4の先端部(接地部材23)の目標運動軌道と基体3の目標運動軌道とを生成する。
この場合、遊脚とする脚体4fL,4mRのそれぞれの先端部の目標運動軌道は、脚体4fL,4mRのそれぞれの接地部材23を降り基本動作状態で接地していた段差面SS(n),SS(n+1)から上昇させて、図11(a)の矢印Y111,Y112で示す如く1段だけ下側の段差面SS(n-1),SS(n+1)の上方に移動させ、さらに、該段差面SS(n-1),SS(n+1)上にそれぞれ下降させて着地させるような軌道である。また、その目標運動軌道は、基体3の左右方向に垂直な面上での軌道である。一方、接地状態に維持する脚体4fR,4mL,4rR,4rLのそれぞれの先端部の目標運動軌道は、脚体4fR,4mL,4rR,4rLのそれぞれの先端部の位置を図10(a)および図11(a)に示す降り基本動作状態での位置に維持する軌道である。
また、降り第1ステップ動作での基体3の目標運動軌道は、脚式移動作業装置1を上方から見た平面視において、脚式移動作業装置1の全体の重心が、接地状態に維持する4個の脚体4fR,4mL,4rR,4rLのそれぞれの接地部材23を結ぶ支持多角形内に余裕をもって位置するような軌道である。なお、本実施形態では、その目標運動軌道は、基体3の目標位置を降り基本動作状態での位置から、次の降り基本動作状態での位置に近い位置に移動させるような軌道である。また、本実施形態では、基体3の姿勢(空間的な向き)については、水平姿勢に保持する。
そして、脚体制御装置40は、各脚体4の先端部の目標運動軌道と、基体3の目標運動軌道とに応じて、前記昇り第1ステップ動作と全く同様に、各油圧シリンダ11,12,13に対応する前記油圧回路41,42,43を制御する。
これにより、脚体4fR,4mL,4rR,4rLの接地状態を維持したまま、遊脚としての脚体4fL,4mRの先端部が目標運動軌道に追従するように運動すると共に、基体3が目標運動軌道に追従するように運動する。その結果、脚体4の動作状態が、図10(a)および図11(a)の降り基本動作状態から図10(b)および図11(b)に示す降り第1過渡動作状態に移行する。
次いで、降り第1ステップ動作において遊脚とした脚体4fL,4mRを含む4個の脚体4,4,4,4を接地させた状態で、残りの2個の脚体4,4を遊脚として運動させ、その遊脚としての2個の脚体4,4を降り第1過渡動作状態で接地していた段差面よりも下側の段差面に着地させるという動作(以下、降り第2ステップ動作という)によって、脚体4の動作状態を降り第1過渡動作状態から図10(c)および図11(c)に示す第2過渡動作状態に移行させる。
この降り第2ステップ動作において遊脚として運動させる2個の脚体4,4の組は、本実施形態では、例えば左右一対の脚体4mL,4rRの組(以下、降り用第2組脚体4mL,4rRということがある)にあらかじめ定められている。
この降り第2ステップ動作においても、脚体制御装置40は、昇りの場合と同様の手法で、各脚体4に対応する油圧シリンダ11,12,13の動作を制御する。
すなわち、脚体制御装置40は、まず、各脚体4の先端部(接地部材23)の目標運動軌道と基体3の目標運動軌道とを生成する。
この場合、遊脚とする脚体4mL,4rRのそれぞれの先端部の目標運動軌道は、脚体4mL,4rRのそれぞれの接地部材23を降り第1過渡動作状態で接地していた段差面SS(n+2),SS(n+4)から上昇させて、図11(b)に矢印Y113,Y114で示す如く1段だけ下側の段差面SS(n+1),SS(n+3)の上方に移動させ、さらに、該段差面SS(n+1),SS(n+3)上にそれぞれ下降させて着地させるような軌道である。また、その目標運動軌道は、基体3の左右方向に垂直な面上での軌道である。一方、接地状態に維持する脚体4fR,4fL,4mR,4rLのそれぞれの先端部の目標運動軌道は、脚体4fR,4fL,4mR,4rLのそれぞれの先端部の位置を図10(b)および図11(b)に示す降り第1過渡動作状態での位置に維持する軌道である。
また、降り第2ステップ動作での基体3の目標運動軌道は、降り第1ステップ動作の場合と同様に、脚式移動作業装置1を上方から見た平面視において、脚式移動作業装置1の全体の重心が、接地状態に維持する4個の脚体4fR,4fL,4mR,4rLのそれぞれの接地部材23を結ぶ支持多角形内に余裕をもって位置するような軌道である。その目標運動軌道は、本実施形態では、基体3の目標位置を降り第1過渡動作状態での位置に概ね保持するような軌道である。なお、本実施形態では、降り第2ステップ動作においても基体3の姿勢は、水平姿勢に保持する。
そして、脚体制御装置40は、各脚体4の先端部の目標運動軌道と、基体3の目標運動軌道とに応じて、前記昇り第1ステップ動作と全く同様に、各油圧シリンダ11,12,13に対応する前記油圧回路41,42,43を制御する。
これにより、脚体4fR,4fL,4mR,4rLの接地状態を維持したまま、遊脚としての脚体4mL,4rRの先端部が目標運動軌道に追従するように運動すると共に、基体3が目標運動軌道に追従するように運動する。その結果、脚体4の動作状態が、図10(b)および図11(b)の降り第1過渡動作状態から図10(c)および図11(c)に示す降り第2過渡動作状態に移行する。
次いで、降り第1ステップ動作において遊脚とした脚体4fL,4mRと降り第2ステップ動作において遊脚とした脚体4mL,4rRとからなる4個の脚体4fL,4mR,4mL,4rRを接地させた状態で、残りの2個の脚体4rL,4fRを遊脚として運動させ、その遊脚としての2個の脚体4fL,4rRを昇り第2過渡動作状態で接地していた段差面よりも下側の段差面に着地させるという降り第3ステップ動作によって、脚体4の動作状態を降り第2過渡動作状態から図10(d)および図11(d)に示す降り基本動作状態に移行させる。以下、この降り第3ステップ動作で遊脚とする脚体4rL,4fRの組を降り用第3組脚体4rL,4fRということがある。
この降り第3ステップ動作においても、脚体制御装置40は、昇りの場合と同様の手法で、各脚体4に対応する油圧シリンダ11,12,13の動作を制御する。
すなわち、脚体制御装置40は、まず、各脚体4の先端部(接地部材23)の目標運動軌道と基体3の目標運動軌道とを生成する。
この場合、遊脚とする脚体4rL,4fRのそれぞれの先端部の目標運動軌道は、脚体4rL,4fRのそれぞれの接地部材23を降り第2過渡動作状態で接地していた段差面SS(n+4),SS(n)から上昇させて、図11(c)の矢印Y115,Y116で示す如く1段だけ下側の段差面SS(n+3),SS(n-1)の上方に移動させ、さらに、該段差面SS(n+3),SS(n-1)上にそれぞれ下降させて着地させるような軌道である。また、その目標運動軌道は、基体3の左右方向に垂直な面上での軌道である。一方、接地状態に維持する脚体4fL,4mR,4mL,4rRのそれぞれの先端部の目標運動軌道は、脚体4fL,4mR,4mL,4rRのそれぞれの先端部の位置を図10(c)および図11(c)に示す降り第2過渡動作状態での位置に維持する軌道である。
また、降り第3ステップ動作での基体3の目標運動軌道は、基体3の目標位置を降り第2過渡動作状態での位置から、降り第3ステップ動作の終了時に、基体3と各脚体4の先端部との相対的位置関係が図10(a)および図11(a)に示す昇り基本動作状態における相対的位置関係と同じになるような位置(図10(d)および図11(d)に示す位置)まで移動させるような軌道である。同時に、その目標運動軌道は、降り第1ステップ動作の場合と同様に、脚式移動作業装置1を上方から見た平面視において、脚式移動作業装置1の全体の重心が、接地状態に維持する4個の脚体4fL,4mR,4mL,4rRのそれぞれの接地部材23を結ぶ支持多角形内に余裕をもって位置するような軌道である。なお、本実施形態では、降り第3ステップ動作においても基体3の姿勢は、水平姿勢に保持する。
そして、脚体制御装置40は、各脚体4の先端部の目標運動軌道と、基体3の目標運動軌道とに応じて、前記降り第1ステップ動作と全く同様に、各油圧シリンダ11,12,13に対応する前記油圧回路41,42,43を制御する。
これにより、脚体4fL,4mR,4mL,4rRの接地状態を維持したまま、遊脚としての脚体4rL,4fRの先端部が目標運動軌道に追従するように運動すると共に、基体3が目標運動軌道に追従するように運動する。その結果、脚体4の動作状態が、図10(c)および図11(c)の降り第2過渡動作状態から図10(d)および図11(d)に示す降り基本動作状態に移行する。
なお、降り第1ステップ動作、降り第2ステップ動作、および降り第3ステップ動作のいずれの動作においても、昇りの場合と同様に、各脚体4の第2関節軸25および第3関節軸26の向きは、基体3の左右方向に維持される。このため、降り第1ステップ動作、降り第2ステップ動作、および降り第3ステップ動作のいずれの動作においても、6個の脚体4のそれぞれの運動は、基体3の左右方向に垂直な面上での前記脚振り運動と屈伸運動との複合運動となる。
以上が、脚式移動作業装置1に階段Sを降らせる場合における降り基本動作状態から次の降り基本動作状態までの脚体4の動作の詳細である。この動作の繰り返し(降り第1ステップ動作、降り第2ステップ動作および降り第3ステップ動作の繰り返し)によって、脚式移動作業装置1が階段Sを1段ずつ、降っていくこととなる。
補足すると、階段Sの踊り場においては、後述する平地での脚式移動作業装置1の旋回移動と同様の各脚体4の運動によって、脚式移動作業装置1の進行方向が変更される。
なお、本実施形態では、脚式移動作業装置1に階段Sを昇らせる場合には、前記昇り第1ステップ動作における脚体4の運動と、昇り第2ステップ動作における脚体4の運動と、昇り第3ステップ動作における脚体4の運動がそれぞれ本発明における第1脚体運動、第2脚体運動、第3脚体運動に相当している。同様に、脚式移動作業装置1に階段Sを降らせる場合には、前記降り第1ステップ動作における脚体4の運動と、降り第2ステップ動作における脚体4の運動と、降り第3ステップ動作における脚体4の運動がそれぞれ本発明における第1脚体運動、第2脚体運動、第3脚体運動に相当している。
また、前記階段Sの昇りまたは降りの場合の各ステップ動作における前記脚体制御装置40による油圧シリンダ11,12,13の動作制御処理によって、本発明における階段昇降用脚体運動制御手段が構成される。
以上説明した脚式移動作業装置1による階段Sの昇降動作では、各ステップ動作において、左右2個ずつの4個の脚体4を接地させた状態で、残りの左右1個ずつの2個の脚体4を遊脚として運動させるようにしている。このため、各ステップ動作において、前記支持多角形の面積が十分に広い面積に確保され、脚式移動作業装置1の全体の重心の位置(脚式移動作業装置1を上方から見た平面視での位置)を、支持多角形の境界に近づき過ぎないように、余裕をもって該支持多角形の内部に存在させることができる。その結果、脚式移動作業装置1の安定余裕が十分に確保され、階段Sの昇降時における脚式移動作業装置1の姿勢の安定性を高めることができる。
また、階段Sの昇降途中における各脚体4の運動は、基体3の左右方向に垂直な面上での脚振り運動および屈伸運動の複合運動(各脚体4の旋回運動を伴わない運動)であるので、脚体4を含めた脚式移動作業装置1の左右方向の幅を最小限の幅(前記昇り基本動作状態または降り基本動作状態での脚式移動作業装置1の幅)に維持することができる。この結果、階段Sが脚式移動作業装置1の最小限の幅よりも大きい幅を有する限り、狭い階段Sにおいても階段の昇降を行なうことができる。
また、階段Sの昇降時における前記昇り基本動作状態および降り基本動作状態は、いずれも、左側の3個の脚体4と右側の3個の脚体4とが左右対称な動作状態となる。このような状態では、前記前脚体組4fR,4fL、中脚体組4mR,4mL、および後脚体組4rR,4rLの各組に属する2つの脚体4にそれぞれ階段S側から作用する床反力のバランスがとれるので、脚式移動作業装置1の姿勢の安定性が高い状態となる。従って、階段Sの昇降時に、昇り第3ステップ動作または降り第3ステップ動作の終了時(昇り第1ステップ動作または降り第1ステップ動作の開始時)の前に脚式移動作業装置1の姿勢の安定性が多少低下しても、これらの第3ステップ動作の終了時に姿勢の安定性を回復することができる。
また、階段Sの昇降時に、基体3の姿勢、ひいては、作業機2の姿勢は、水平姿勢に維持されるので、作業機2の上部旋回体5の運転席(図示省略)に運転者が座った状態でも、脚式移動作業装置1による階段Sの昇降を行なうことができる。
なお、本実施形態では、階段Sの降りの場合における降り用第1組脚体、降り用第2組脚体、降り用第3組脚体を、それぞれ昇りの場合における昇り用第1組脚体、昇り用第2組脚体、昇り用第3組脚体と異ならせたが、同一としてもよい。
また、昇り用第1組脚体を脚体4fR,4mL、昇り用第2組脚体を脚体4mR,4rL、昇り用第3組脚体を脚体4fL,4rRとしたが、これらの各組脚体の組み合わせは、これに限定されるものではない。このことは、降り用第1組脚体、降り用第2組脚体、および降り用第3組脚体の組み合わせについても同様である。例えば、昇り用第1組脚体と、昇り用第2組脚体とを、前記実施形態の場合と逆にして、昇り用第1組脚体4mR,4rL、昇り用第2組脚体を脚体4fR,4mL、昇り用第3組脚体を脚体4fL,4rRとしてもよい。また、例えば、降り用第2組脚体と、降り用第3組脚体とを、前記実施形態の場合と逆にして、降り用第1組脚体を脚体4fL,4mR、降り用第2組脚体を脚体4fR,4rL、降り用第3組脚体を脚体4mL,4rRとしてもよい。昇り用第1組脚体、昇り用第2組脚体、および昇り用第3組脚体の組み合わせは、基本的には、昇り第1ステップ動作、昇り第2ステップ動作および昇り第3ステップ動作のそれぞれにおいて接地状態に維持する4個の脚体4によって形成される支持多角形の面積ができるだけ広くなるような組み合わせを選択することが望ましい。このことは、降り用第1組脚体、降り用第2組脚体、および降り用第3組脚体の組み合わせについても同様である。
次に、本実施形態の脚式移動作業装置1による平地(平坦な床面)での移動動作について説明する。
本実施形態の脚式移動作業装置1は、階段Sの昇降だけでなく、平地での前進(基体3の前方への直進移動)、後退(基体3の後方への直進移動)、旋回移動(ヨー軸まわりの回転運動を伴う移動)、横歩き移動(基体3の左右方向への移動)などが可能である。この場合、本実施形態では、脚式移動作業装置1を平地で移動させる場合には、階段Sの昇降の場合と異なり、6個の脚体4のうちの3個の脚体4を接地状態に維持しつつ、残りの3個の脚体4を遊脚として運動させる。
以下に、脚式移動作業装置1を前進させる場合と、旋回させる場合と、横歩き移動させる場合とを例に採って脚体4の動作を図12〜図15を参照して説明する。
まず、図12および図13を参照して、脚式移動作業装置1を平地Fで前進させる場合の動作を説明する。図12(a)〜(c)は平地で前進する脚式移動作業装置1の瞬時的な動作状態を側面視で時系列的に示す図、図13(a)〜(c)は平地で前進する脚式移動作業装置1の瞬時的な動作状態を平面視で時系列的に示す図である。図12(a)〜(c)に示す脚体4の動作状態は、それぞれ図13(a)〜(c)の動作状態に対応している。それぞれの動作状態は、いずれも6個の脚体4を全て接地させた状態である。なお、図13では、図を見やすくするために、便宜上、脚式移動作業装置1の前方に向かって左側の脚体4については破線で示している。
図12(a)および図13(a)は、脚式移動作業装置1を平地Fで移動させる場合における6個の脚体4の基本動作状態(以下、平地基本動作状態という)を示している。この平地基本動作状態は、前脚体組4fR,4fL、中脚体組4mR,4mL、および後脚体組4rR,4rLのそれぞれの組に属する2つの脚体4,4が左右対称に並んだ状態で、平地Fに接地している状態である。なお、この平地基本動作状態における基体3および作業機2の上部旋回体5の姿勢は水平姿勢である。また、この平地基本動作状態における第2関節軸25および第3関節軸26の方向は基体3の左右方向である。
脚式移動作業装置1を平地Fで前進させる場合には、上記平地基本動作状態から、図12(b)および図13(b)に示す動作状態(以下、前進過渡動作状態という)を経て、図12(c)および図13(c)に示す動作状態に移行するように6個の脚体4の運動を制御することによって、脚式移動作業装置1を前進させる。この場合、図12(c)および図13(c)に示す動作状態は、図12(a)および図13(a)の平地基本動作状態と同様の平地基本動作状態である。ただし、図12(c)および図13(c)に示す平地基本動作状態では、6個の脚体4の接地位置は、図12(a)および図13(a)の平地基本動作状態での接地位置から前方に移動している。
このように図12(a)平地基本動作状態から次の平地基本動作状態に移行する6個の脚体4の運動を繰り返すことによって、脚式移動作業装置1が前進する。
この平地基本動作状態から次の平地基本動作状態に移行は、具体的には次のように行なわれる。まず、6個の脚体4のうちの3個の脚体4を接地させた状態で、残りの3個の脚体4を遊脚として運動させ、その遊脚としての3個の脚体4を平地基本動作状態での接地位置よりも進行方向前方の平地Fに着地させるという平地移動第1ステップ動作によって、脚体4の動作状態を図12(b)および図13(b)に示す前進過渡動作状態に移行させる。
この平地移動第1ステップ動作において遊脚として運動させる3個の脚体4,4,4の組は、脚式移動作業装置1の左右の一方側の2つの脚体4,4(好ましくは最前部の脚体4と最後部の脚体4)と、他方側の1つの脚体4(好ましくは最前部の脚体4と最後部の脚体4との間の脚体4)との組である。本実施形態では、平地移動第1ステップ動作において遊脚とする3個の脚体4,4,4の組は、例えば基体3の右側の脚体4fR,4fRと左側の脚体4mLの組(以下、第4組脚体4fR,4mL,4rRということがある)にあらかじめ定められている。
この前進昇り第1ステップ動作では、階段Sの昇降の場合と同様の手法で、各脚体4に対応する油圧シリンダ11,12,13の動作を制御する。
すなわち、脚体制御装置40は、まず、各脚体4の先端部(接地部材23)の目標運動軌道と基体3の目標運動軌道とを生成する。
この場合、遊脚とする脚体4fR,4mL,4rRのそれぞれの先端部の目標運動軌道は、脚体4fR,4mL,4rRのそれぞれの接地部材23を平地基本動作状態での接地位置から上昇させて、図13(a)の矢印Y131,Y132,Y133で示す如く基体3の前方に移動させ、さらに、下降させて平地Fに着地させるような軌道である。また、その目標運動軌道は、基体3の左右方向に垂直な面上での軌道である。一方、接地状態に維持する脚体4fL,4mR,4rLのそれぞれの先端部の目標運動軌道は、脚体4fL,4mR,4rLのそれぞれの先端部の位置を図12(a)および図13(a)に示す平地基本動作状態での位置に維持する軌道である。
また、平地移動第1ステップ動作での基体3の目標運動軌道は、脚式移動作業装置1を上方から見た平面視において、脚式移動作業装置1の全体の重心が、接地状態に維持する3個の脚体4fL,4mR,4rLのそれぞれの接地部材23を結ぶ支持多角形(三角形)内に余裕をもって位置するような軌道である。また、その目標運動軌道は、平地移動第1ステップ動作の終了時に基体3の目標位置が図12(a)および図13(a)に示す平地基本動作状態での位置よりも、次の平地基本動作状態での位置により近づくような軌道である。なお、本実施形態では、基体3の姿勢は、水平姿勢に保持する。
そして、脚体制御装置40は、各脚体4の先端部の目標運動軌道と、基体3の目標運動軌道とに応じて、前記昇り第1ステップ動作と全く同様に、各油圧シリンダ11,12,13に対応する前記油圧回路41,42,43を制御する。
これにより、脚体4fL,4mR,4rLの接地状態を維持したまま、遊脚としての脚体4fR,4mL,4rRの先端部が目標運動軌道に追従するように運動すると共に、基体3が目標運動軌道に追従するように運動する。その結果、脚体4の動作状態が、図12(a)および図13(a)の平地基本動作状態から図12(b)および図13(b)に示す前進過渡動作状態に移行する。
次いで、平地移動第1ステップ動作において遊脚とした3個の脚体4fR,4mL,4rRを接地させた状態で、残りの3個の脚体4fL,4mR,4rLを遊脚として運動させ、その遊脚としての3個の脚体4fL,4mR,4rLを前進過渡動作状態での接地位置よりも進行方向前方に着地させるという動作(以下、平地移動第2ステップ動作という)によって、脚体4の動作状態を前進過渡動作状態から図12(c)および図13(c)に示す平地基本動作状態に移行させる。以下、この平地移動第2ステップ動作で遊脚とする脚体4fL,4mR,4rLの組を第5組脚体4fL,4mR,4rLという。
この平地移動第2ステップ動作においても、脚体制御装置40は、階段Sの昇降の場合と同様の手法で、各脚体4に対応する油圧シリンダ11,12,13の動作を制御する。
すなわち、脚体制御装置40は、まず、各脚体4の先端部(接地部材23)の目標運動軌道と基体3の目標運動軌道とを生成する。
この場合、遊脚とする脚体4fL,4mR,4rLのそれぞれの先端部の目標運動軌道は、脚体4fL,4mR,4rLのそれぞれの接地部材23を前進過渡動作状態での接地位置から上昇させて、図13(b)の矢印Y134,Y135,Y136で示す如く基体3の前方に移動させ、さらに、下降させて平地Fに着地させるような軌道である。また、その目標運動軌道は、基体3の左右方向に垂直な面上での軌道である。一方、接地状態に維持する脚体4fR,4mL,4rRのそれぞれの先端部の目標運動軌道は、脚体4fR,4mL,4rRのそれぞれの先端部の位置を前進過渡動作状態での位置に維持する軌道である。なお、遊脚とする脚体4fL,4mR,4rLのそれぞれの着地位置は、接地状態に維持する脚体4fR,4mL,4rRのそれぞれに対して左右方向に並列するような位置である。
また、平地移動第2ステップ動作での基体3の目標運動軌道は、脚式移動作業装置1を上方から見た平面視において、脚式移動作業装置1の全体の重心が、接地状態に維持する3個の脚体4fR,4mL,4rRのそれぞれの接地部材23を結ぶ支持多角形内に余裕をもって位置するような軌道である。また、その目標運動軌道は、基体3の目標位置が平地移動第2ステップ動作の終了時に、図12(a)および図13(a)に示す平地基本動作状態での位置に一致するような軌道である。なお、本実施形態では、基体3の姿勢は、平地移動第2ステップ動作においても、水平姿勢に保持する。
そして、脚体制御装置40は、各脚体4の先端部の目標運動軌道と、基体3の目標運動軌道とに応じて、前記昇り第1ステップ動作と全く同様に、各油圧シリンダ11,12,13に対応する前記油圧回路41,42,43を制御する。
これにより、脚体4fR,4mL,4rRの接地状態を維持したまま、遊脚としての脚体4fL,4mR,4rLの先端部が目標運動軌道に追従するように運動すると共に、基体3が目標運動軌道に追従するように運動する。その結果、脚体4の動作状態が、図12(b)および図13(b)の前進過渡動作状態から図12(c)および図13(c)に示す平地基本動作動作状態に移行する。
なお、平地移動第1ステップ動作および平地移動第2ステップ動作のいずれにおいても、6個の脚体4のそれぞれの運動は、基体3の左右方向に垂直な面上での前記脚振り運動と屈伸運動との複合運動である。
以上が、脚式移動作業装置1を前進させる場合における平地基本動作状態から次の平地移動基本動作状態までの脚体4の動作の詳細である。この動作の繰り返し(平地移動第1ステップ動作および平地移動第2ステップ動作の繰り返し)によって、脚式移動作業装置1が前進していくこととなる。
なお、平地移動第2ステップ動作において、前進過渡動作状態から平地基本動作状態に移行させるようにしたが、平地移動第2ステップ動作において遊脚とする3個の脚体4fL,4mR,4rLの先端部をそれぞれ、接地状態に維持する3個の脚体4fR,4mL,4rRのそれぞれの接地位置よりも前側に着地させるようにしてもよい。
補足すると、脚式移動作業装置1を後退させる場合も、前進の場合と同様に行なわれる。この場合には、平地移動第1ステップ動作および平地移動第2ステップ動作において、遊脚とする3個の脚体4を後方に移動させて着地させるようにすればよい。この場合、平地移動第1ステップ動作および平地移動第2ステップ動作のそれぞれにおいて遊脚とする3個の脚体4は、前進の場合と異なっていてもよい。例えば、後退の場合には、平地移動第1ステップ動作で遊脚とする3個の脚体の組を前記第5組脚体4fL,4mR,4rL、平地移動第2ステップ動作で遊脚とする3個の脚体の組を前記第4組脚体4fR,4mL,4rRとしてもよい。
次に、図14を参照して、脚式移動作業装置1を平地Fで旋回移動させる場合の動作を説明する。図14(a)〜(c)は例えば反時計まわりに旋回移動する脚式移動作業装置1の瞬時的な動作状態を平面視で時系列的に示す図である。それぞれの動作状態は、いずれも6個の脚体4を全て接地させた状態である。
図14(a)は前記図13(a)と同じ動作状態(平地基本動作状態)を示している。脚式移動作業装置1を平地Fで旋回移動させる場合には、図14(a)に示す平地基本動作状態から、図14(b)に示す動作状態(以下、旋回過渡動作状態という)を経て、図14(c)に示す動作状態に移行するように6個の脚体4の運動を制御することによって、脚式移動作業装置1を前進させる。この場合、図14(c)に示す動作状態は、図14(a)の平地基本動作状態と同様の平地基本動作状態である。ただし、図14(c)に示す平地基本動作状態では、6個の脚体4の接地位置は、図14(a)の平地基本動作状態での接地位置から、脚式移動作業装置1の進行方向前方としての反時計まわり方向に移動している。
このように図14(a)に示す平地基本動作状態から、図14(c)に示す次の平地基本動作状態に移行する6個の脚体4の運動を繰り返すことによって、脚式移動作業装置1が旋回移動する。
この場合、脚式移動作業装置1の前進の場合と同様に、前記第4組脚体4fR,4mL,4rRを遊脚として運動させる平地移動第1ステップ動作によって、図14(a)の平地基本動作状態から図14(b)の旋回過渡動作状態への移行を行なう。さらに、前記第5組脚体4fL,4mR,4rLを遊脚として運動させる平地移動第2ステップ動作によって、旋回過渡動作状態から図14(c)の平地基本動作状態への移行を行なう。
これらの平地移動第1ステップ動作および平地移動第2ステップ動作における各脚体4の動作制御においては、遊脚とする脚体4,4,4の先端部(接地部材23)の目標運動軌道と、基体3の目標運動軌道だけが脚式移動作業装置1の前進の場合と相違する。
すなわち、平地移動第1ステップ動作において遊脚とする脚体4fR,4mL,4rRのそれぞれの先端部の目標運動軌道は、脚体4fR,4mL,4rRのそれぞれの接地部材23を平地基本動作状態での接地位置から上昇させて、図14(a)の矢印Y141,Y142,Y143で示す如く反時計まわり方向に移動させ、さらに、下降させて平地Fに着地させるような軌道である。なお、接地状態に維持する脚体4fL,4mR,4rLのそれぞれの先端部の目標運動軌道は、脚体4fL,4mR,4rLのそれぞれの先端部の位置を図14(a)に示す平地基本動作状態での位置に維持する軌道である。
また、平地移動第1ステップ動作における基体3の目標運動軌道は、基体3の上下方向の軸まわり(ヨー軸まわり)の姿勢が、図14(a)の平地基本動作状態での姿勢よりも、図14(c)の平地基本動作状態での姿勢により近づくような軌道である。なお、脚式移動作業装置1の前進の場合と同様に、その目標運動軌道は、脚式移動作業装置1の全体の重心が、接地状態に維持する3個の脚体4fL,4mR,4rLのそれぞれの接地部材23を結ぶ支持多角形(三角形)内に余裕をもって位置するような軌道である。さらに、基体3の姿勢は、水平姿勢に保持する。
脚体制御装置40は、平地移動第1ステップ動作において、上記のような各脚体4の先端部の目標運動軌道と基体3の目標運動軌道とを生成する。そして、脚体制御装置40は、脚式移動作業装置1の前進の場合と同様に、これらの目標運動軌道に応じて各脚体4に対応する油圧シリンダ11,12,13の動作を制御する。これにより、脚体4の動作状態が、図14(a)の平地基本動作状態から図14(b)に示す旋回過渡動作状態に移行する。なお、この場合、各脚体4の運動は、旋回運動を伴う運動となる。
また、平地移動第2ステップ動作において遊脚とする脚体4fL,4mR,4rLのそれぞれの先端部の目標運動軌道は、脚体4fL,4mR,4rLのそれぞれの接地部材23を旋回過渡動作状態での接地位置から上昇させて、図14(b)の矢印Y144,Y145,Y146で示す如く反時計まわり方向に移動させ、さらに、下降させて平地Fに着地させるような軌道である。なお、接地状態に維持する脚体4fR,4mL,4rRのそれぞれの先端部の目標運動軌道は、脚体4fR,4mL,4rRのそれぞれの先端部の位置を旋回過渡動作状態での位置に維持する軌道である。また、遊脚とする脚体4fL,4mR,4rLのそれぞれの着地位置は、接地状態に維持する脚体4fR,4mL,4rRのそれぞれに対して平地基本動作状態と同じ位置関係で左右方向に並列するような位置である。
また、平地移動第2ステップ動作における基体3の目標運動軌道は、基体3の上下方向の軸まわり(ヨー軸まわり)の姿勢が、平地移動際2ステップ動作の終了時に、図14(c)に示す平地基本動作状態での姿勢に一致するような軌道である。なお、脚式移動作業装置1の前進の場合と同様に、その目標運動軌道は、脚式移動作業装置1の全体の重心が、接地状態に維持する3個の脚体4fR,4mL,4rRのそれぞれの接地部材23を結ぶ支持多角形(三角形)内に余裕をもって位置するような軌道である。さらに、平地移動第2ステップ動作においても、基体3の姿勢は水平姿勢に保持する。
脚体制御装置40は、平地移動第2ステップ動作において、上記のような各脚体4の先端部の目標運動軌道と基体3の目標運動軌道とを生成する。そして、脚体制御装置40は、脚式移動作業装置1の前進の場合と同様に、これらの目標運動軌道に応じて各脚体4に対応する油圧シリンダ11,12,13の動作を制御する。これにより、脚体4の動作状態が、旋回過渡動作状態から、図14(c)に示す平地基本動作状態に移行する。なお、この場合、各脚体4の運動は、旋回運動を伴う運動となる。
以上が、脚式移動作業装置1を旋回させる場合における平地基本動作状態から次の平地移動基本動作状態までの脚体4の動作の詳細である。この動作の繰り返し(平地移動第1ステップ動作および平地移動第2ステップ動作の繰り返し)によって、脚式移動作業装置1が旋回移動することとなる。
なお、平地移動第2ステップ動作において、前進過渡動作状態から平地基本動作状態に移行させるようにしたが、平地移動第2ステップ動作において遊脚とする3個の脚体4fL,4mR,4rLの先端部をそれぞれ、反時計まわり方向に、より大きく移動させて接地させるようにしてもよい。
補足すると、脚式移動作業装置1を時計まわりに旋回移動させる場合も、反時計まわり方向の旋回移動の場合と同様に行なわれる。この場合には、平地移動第1ステップ動作および平地移動第2ステップ動作において、遊脚とする3個の脚体4を時計まわり方向に移動させて着地させるようにすればよい。ただし、脚体4と基体3との干渉を避けるために、平地移動第1ステップ動作では、前記第5組脚体4fL,4mR,4rLを遊脚とし、平地移動第2ステップ動作では、前記第4組脚体4fR,4mL,4rRを遊脚とすることが望ましい。
また、上記した旋回移動における各脚体4の運動に、前記した前進または後退における各脚体4の運動を複合させることで、ある曲率を有する経路に沿って、脚式移動作業装置1を旋回移動させることもできる。
次に、図15を参照して、脚式移動作業装置1を平地Fで横歩き移動させる場合の動作を説明する。図15(a)〜(c)は例えば基体4の左右方向で左向きに横歩き移動する脚式移動作業装置1の瞬時的な動作状態を平面視で時系列的に示す図である。それぞれの動作状態は、いずれも6個の脚体4を全て接地させた状態である。
図15(a)は前記図13(a)と同じ動作状態(平地基本動作状態)を示している。脚式移動作業装置1を平地Fで横歩き移動させる場合には、図15(a)に示す平地基本動作状態から、図15(b)に示す動作状態(以下、横歩き過渡動作状態という)を経て、図15(c)に示す動作状態に移行するように6個の脚体4の運動を制御することによって、脚式移動作業装置1を横歩き移動させる。この場合、図15(c)に示す動作状態は、図15(a)の平地基本動作状態と同様の平地基本動作状態である。ただし、図15(c)に示す平地基本動作状態では、6個の脚体4の接地位置は、図15(a)の平地基本動作状態での接地位置から、脚式移動作業装置1の進行方向前方としての左向きに移動している。
このように図15(a)に示す平地基本動作状態から、図15(c)に示す次の平地基本動作状態に移行する6個の脚体4の運動を繰り返すことによって、脚式移動作業装置1が横歩き移動する。
この場合、脚式移動作業装置1の前進の場合と同様に、前記第4組脚体4fR,4mL,4rRを遊脚として運動させる平地移動第1ステップ動作によって、図15(a)の平地基本動作状態から図15(b)の横歩き過渡動作状態への移行を行なう。さらに、前記第5組脚体4fL,4mR,4rLを遊脚として運動させる平地移動第2ステップ動作によって、横歩き過渡動作状態から図15(c)の平地基本動作状態への移行を行なう。
これらの平地移動第1ステップ動作および平地移動第2ステップ動作における各脚体4の動作制御においては、遊脚とする3個の脚体4の先端部(接地部材23)の目標運動軌道と、基体3の目標運動軌道だけが脚式移動作業装置1の前進の場合と相違する。
すなわち、平地移動第1ステップ動作において遊脚とする脚体4fR,4mL,4rRのそれぞれの先端部の目標運動軌道は、脚体4fR,4mL,4rRのそれぞれの接地部材23を平地基本動作状態での接地位置から上昇させて、図15(a)の矢印Y151,Y152,Y153で示す如く反時計まわり方向に移動させ、さらに、下降させて平地Fに着地させるような軌道である。なお、接地状態に維持する脚体4fL,4mR,4rLのそれぞれの先端部の目標運動軌道は、脚体4fL,4mR,4rLのそれぞれの先端部の位置を図15(a)に示す平地基本動作状態での位置に維持する軌道である。
また、平地移動第1ステップ動作における基体3の目標運動軌道は、基体3の目標位置を、図15(a)の平地基本動作状態での位置から図15(c)の平地基本動作状態での位置に近づけるような軌道である。なお、脚式移動作業装置1の前進の場合と同様に、その目標運動軌道は、脚式移動作業装置1の全体の重心が、接地状態に維持する3個の脚体4fL,4mR,4rLのそれぞれの接地部材23を結ぶ支持多角形(三角形)内に余裕をもって位置するような軌道である。さらに、基体3の姿勢は、水平姿勢に保持する。
脚体制御装置40は、平地移動第1ステップ動作において、上記のような各脚体4の先端部の目標運動軌道と基体3の目標運動軌道とを生成する。そして、脚体制御装置40は、脚式移動作業装置1の前進の場合と同様に、これらの目標運動軌道に応じて各脚体4に対応する油圧シリンダ11,12,13の動作を制御する。これにより、脚体4の動作状態が、図15(a)の平地基本動作状態から図15(b)に示す横歩き過渡動作状態に移行する。なお、この場合、各脚体4の運動は、旋回運動を伴う運動となる。
また、平地移動第2ステップ動作において遊脚とする脚体4fL,4mR,4rLのそれぞれの先端部の目標運動軌道は、脚体4fL,4mR,4rLのそれぞれの接地部材23を横歩き過渡動作状態での接地位置から上昇させて、図15(b)の矢印Y154,Y155,Y156で示す如く反時計まわり方向に移動させ、さらに、下降させて平地Fに着地させるような軌道である。なお、接地状態に維持する脚体4fR,4mL,4rRのそれぞれの先端部の目標運動軌道は、脚体4fR,4mL,4rRのそれぞれの先端部の位置を横歩き過渡動作状態での位置に維持する軌道である。また、遊脚とする脚体4fL,4mR,4rLのそれぞれの着地位置は、接地状態に維持する脚体4fR,4mL,4rRのそれぞれに対して平地基本動作状態と同じ位置関係で左右方向に並列するような位置である。
また、平地移動第2ステップ動作における基体3の目標運動軌道は、基体3の目標位置を、横歩き過渡動作状態での位置から図15(c)に示す平地基本動作状態での位置まで移動させるような軌道である。なお、脚式移動作業装置1の前進の場合と同様に、その目標運動軌道は、脚式移動作業装置1の全体の重心が、接地状態に維持する3個の脚体4fR,4mL,4rRのそれぞれの接地部材23を結ぶ支持多角形(三角形)内に余裕をもって位置するような軌道である。さらに、平地移動第2ステップ動作においても、基体3の姿勢は水平姿勢に保持する。
脚体制御装置40は、平地移動第2ステップ動作において、上記のような各脚体4の先端部の目標運動軌道と基体3の目標運動軌道とを生成する。そして、脚体制御装置40は、脚式移動作業装置1の前進の場合と同様に、これらの目標運動軌道に応じて各脚体4に対応する油圧シリンダ11,12,13の動作を制御する。これにより、脚体4の動作状態が、横歩き過渡動作状態から、図14(c)に示す平地基本動作状態に移行する。なお、この場合、各脚体4の運動は、旋回運動を伴う運動となる。
以上が、脚式移動作業装置1を横歩き移動させる場合における平地基本動作状態から次の平地移動基本動作状態までの脚体4の動作の詳細である。この動作の繰り返し(平地移動第1ステップ動作および平地移動第2ステップ動作の繰り返し)によって、脚式移動作業装置1が横歩き移動することとなる。
なお、脚式移動作業装置1を右向きに横歩き移動させる場合も、左向きの横歩き移動の場合と同様に行なわれる。この場合には、平地移動第1ステップ動作および平地移動第2ステップ動作において、遊脚とする3個の脚体4を右向きに移動させて着地させるようにすればよい。ただし、脚体4と基体3との干渉を避けるために、平地移動第1ステップ動作では、前記第5組脚体4fL,4mR,4rLを遊脚とし、平地移動第2ステップ動作では、前記第4組脚体4fR,4mL,4rRを遊脚とすることが望ましい。
補足すると、本実施形態では、脚式移動作業装置1の平地移動の場合には、前記平地移動第1ステップ動作における脚体4の運動と、平地移動第2ステップ動作における脚体4の運動とがそれぞれ本発明における第4脚体運動、第5脚体運動に相当している。また、前記平地移動第1ステップ動作および平地移動第2ステップ動作における前記脚体制御装置40による油圧シリンダ11,12,13の動作制御処理によって、本発明における平地移動用脚体運動制御手段が構成される。
以上のように、脚式移動作業装置1の平地での移動は、前記平地移動第1ステップ動作と平地移動第2ステップ動作とを交互に繰り返すことで、行なわれる。この場合、各ステップ動作において、接地状態に維持する脚体4の個数が3個であるものの、平地での移動であるため、脚式移動作業装置1の重心の位置(平面視で見た重心の位置)が接地状態の3個の脚体4により形成される支持多角形の境界寄りに偏っても、脚式移動作業装置1の姿勢の安定性を十分に確保することができる。特に、本実施形態では、平地での移動時の各ステップ動作において接地状態に維持する3個の脚体4は、左右の一方側の最前部の脚体4と最後部の脚体4と、他方側の中間部の脚体4との組(前記第4組脚体4fR,4mL,4rRまたは第5組脚体4fL,4mR,4rL)であるので、これらの3個の脚体4に形成される支持多角形が比較的大きなものとなる。このため、脚式移動作業装置1の重心の位置が該支持多角形内に余裕をもって存在するように各脚体4を運動させることが容易になり、平地の移動時の脚式移動作業装置1の姿勢の安定性を高めることができる。
また、本実施形態の脚式移動作業装置1の各脚体4の先端部の接地部材23が、バネ28が発生する弾性力によって所定の姿勢(第2フレーム22の軸心と直交するような姿勢)で平衡するように付勢されているので、各脚体4を着地させようとする箇所が傾斜していたり、該箇所に多少の凹凸があっても、多少の凹凸が在っても、接地部材23をその接地箇所の形状になじませて安定に接地させることができる。
ところで、本実施形態では、階段の昇降時の各ステップ動作において、4個の脚体4にを接地させつつ、2個の脚体4を遊脚として運動させるようにしたが、階段の段差あるいは傾斜率が比較的低い場合には、3個の脚体4を接地させつつ、3個の脚体4を遊脚として運動させるようにしても、脚式移動作業装置1の姿勢の安定性を十分に確保しながら、階段の昇降を行なうことが可能である。
この場合、脚式移動作業装置1に階段を昇らせる場合における該脚式移動作業装置1の動作は、例えば以下に説明にするように行えばよい。
図16(a)〜(c)は、3個の脚体4を遊脚として脚式移動作業装置1に階段を昇らせる場合における脚式移動作業装置1の瞬時的な動作状態を側面視で時系列的に示す図、図17(a)〜(c)はその脚式移動作業装置1の瞬時的な動作状態を平面視で時系列的に示す図である。図17(a)〜(c)に示す動作状態は、それぞれ図16(a)〜(c)の動作状態に対応している。それぞれの動作状態は、いずれも6個の脚体4を全て接地させた状態である。なお、図17では、図を見やすくするために、便宜上、脚式移動作業装置1の前方に向かって左側の脚体4については破線で示している。
図16(a)および図17(a)の動作状態は、前記図8(a)および図9(a)に示した動作状態と同じ昇り基本動作状態を示し、図16(c)および図17(c)は前記図8(d)および図9(d)に示した動作状態と同じ昇り基本動作状態(図16(a)および図17(a)の昇り基本動作状態の次の昇り基本動作状態)を示している。
3個の脚体4を遊脚として脚式移動作業装置1に階段を昇らせる場合には、図16(a)および図17(a)の昇り基本動作状態から、図16(b)および図17(b)に示す動作状態(以下、昇り第3過渡動作状態という)を経て、図16(c)および図17(c)に示す次の基本動作状態に移行するように、6個の脚体4の運動を制御することによって、脚式移動作業装置1に階段Sを所定段数(本例では1段)だけ昇らせる。これを繰り返すことによって、脚式移動作業装置1が階段Sを昇っていく。
この場合、昇り基本動作状態から昇り第3過渡動作状態への移行動作(以下、昇り第4ステップ動作という)においては、例えば、前記第5組脚体4fL,4mR,4rLの3個の脚体4をそれぞれ階段Sの段差面SS(n),SS(n-2),SS(n-4)に接地させたまま、残りの3個の脚体4である前記第4組脚体4fR,4mL,4rRを遊脚として運動させる。このとき、遊脚としての第4組脚体4fR,4mL,4rRのそれぞれの先端部(接地部材23)を、図16(a)および図17(a)の昇り基本動作状態で接地していた段差面SS(n),SS(n-2),SS(n-4)から図17(a)中の矢印Y171,Y172,Y173で示す如く空中にて移動させ、1段だけ上側の段差面SS(n+1),SS(n-1),SS(n-3)に着地させる。これにより、脚式移動作業装置1の動作状態は、図16(a)および図17(a)の昇り基本動作状態から図16(b)および図17(b)の昇り第3過渡動作状態に移行する。
次いで、昇り第3過渡動作状態から次の昇り基本動作状態への移行動作(以下、昇り第5ステップ動作という)においては、前記昇り第4ステップ動作において遊脚とした第4組脚体4fR,4mL,4rRを接地させたまま、第5組脚体4fL,4mR,4rLをそれぞれ遊脚として運動させる。このとき、遊脚としての第5組脚体4fL,4mR,4rLのそれぞれの先端部(接地部材23)を、図16(b)および図17(b)の昇り第3過渡動作状態で接地していた段差面SS(n),SS(n-2),SS(n-4)から図17(b)中の矢印Y174,Y175,Y176で示す如く空中にて移動させ、1段だけ上側の段差面SS(n+1),SS(n-1),SS(n-3)に着地させる。これにより、脚式移動作業装置1の動作状態は、図16(b)および図17(b)の昇り第3過渡動作状態から図16(c)および図17(c)に示す次の昇り基本動作状態に移行する。
以上の昇り第4ステップ動作および昇り第5ステップ動作を繰り返すことによって、脚式移動作業装置1が階段Sを昇っていくこととなる。
なお、昇り第4ステップ動作および昇り第5ステップ動作における各脚体6の動作制御の仕方は、前記図8および図9を参照して説明した昇り第1ステップ動作おける各脚体6の動作制御と同様でよい。
また、3個の脚体4を遊脚として脚式移動作業装置1に階段を降らせる場合における該脚式移動作業装置1の動作は、例えば以下に説明にするように行なわれる。
図18(a)〜(c)は、3個の脚体4を遊脚として脚式移動作業装置1に階段を降らせる場合における脚式移動作業装置1の瞬時的な動作状態を側面視で時系列的に示す図、図19(a)〜(c)はその脚式移動作業装置1の瞬時的な動作状態を平面視で時系列的に示す図である。図19(a)〜(c)に示す動作状態は、それぞれ図18(a)〜(c)の動作状態に対応している。それぞれの動作状態は、いずれも6個の脚体4を全て接地させた状態である。なお、図19では、図を見やすくするために、便宜上、脚式移動作業装置1の前方に向かって右側の脚体4については破線で示している。
図18(a)および図19(a)の動作状態は、前記図10(a)および図11(a)に示した動作状態と同じ降り基本動作状態を示し、図18(c)および図19(c)は前記図10(d)および図11(d)に示した動作状態と同じ降り基本動作状態(図18(a)および図19(a)の降り基本動作状態の次の降り基本動作状態)を示している。
3個の脚体4を遊脚として脚式移動作業装置1に階段を降らせる場合には、図18(a)および図19(a)の昇り基本動作状態から、図18(b)および図19(b)に示す動作状態(以下、降り第3過渡動作状態という)を経て、図18(c)および図19(c)に示す次の基本動作状態に移行するように、6個の脚体4の運動を制御することによって、脚式移動作業装置1に階段Sを所定段数(本例では1段)だけ昇らせる。これを繰り返すことによって、脚式移動作業装置1が階段Sを降っていく。
この場合、降り基本動作状態から降り第3過渡動作状態への移行動作(以下、降り第4ステップ動作という)においては、例えば、前記第4組脚体4fR,4mL,4rRをそれぞれ階段Sの段差面SS(n),SS(n+2),SS(n+4)に接地させたまま、残りの3個の脚体4である第5組脚体4fL,4mR,4rLを遊脚として運動させる。このとき、遊脚としての第5組脚体4fL,4mR,4rLのそれぞれの先端部(接地部材23)を、図18(a)および図19(a)の降り基本動作状態で接地していた段差面SS(n),SS(n+2),SS(n+4)から図19(a)中の矢印Y191,Y192,Y193で示す如く空中にて移動させ、1段だけ下側の段差面SS(n-1),SS(n+1),SS(n+3)に着地させる。これにより、脚式移動作業装置1の動作状態は、図18(a)および図19(a)の降り基本動作状態から図18(b)および図19(b)の降り第3過渡動作状態に移行する。
次いで、降り第3過渡動作状態から次の降り基本動作状態への移行動作(以下、降り第5ステップ動作という)においては、前記降り第4ステップ動作において遊脚とした第5組脚体4fL,4mR,4rLを接地させたまま、第4組脚体4fR,4mL,4rRをそれぞれ遊脚として運動させる。このとき、遊脚としての第4組脚体4fR,4mL,4rRのそれぞれの先端部(接地部材23)を、図18(b)および図19(b)の降り第3過渡動作状態で接地していた段差面SS(n),SS(n+2),SS(n+4)から図19(a)中の矢印Y194,Y195,Y196で示す如く空中にて移動させ、1段だけ下側の段差面SS(n-1),SS(n+1),SS(n+3)に着地させる。これにより、脚式移動作業装置1の動作状態は、図18(b)および図19(b)の降り第3過渡動作状態から図18(c)および図19(c)に示す次の降り基本動作状態に移行する。
以上の降り第4ステップ動作および降り第5ステップ動作を順次繰り返すことによって、脚式移動作業装置1が階段Sを降っていくこととなる。
なお、降り第4ステップ動作および降り第5ステップ動作における各脚体6の動作制御の仕方は、前記図8および図9を参照して説明した昇り第1ステップ動作おける各脚体4の動作制御と同様でよい。
上記のように3個の脚体4を遊脚として階段の昇降を行なう場合には、前記図8および図9、あるいは、図10および図11に示したように2個の脚体4を遊脚とする場合よりも、各ステップ動作における支持多角形の面積が小さくなるものの、階段Sの段差や傾斜率が比較的小さい場合には、脚式移動作業装置1の姿勢の安定性を十分に確保することが可能である。
なお、図16および図17に示した例では、昇り第4ステップ動作における遊脚を第4組脚体4fR,4mL,4rRとし、昇り第5ステップ動作における遊脚を第5脚体4fL,4mR,4rLとしたが、これとは逆に、昇り第4ステップ動作における遊脚を第5脚体4fL,4mR,4rLとし、昇り第5ステップ動作における遊脚を第4脚体4fR,4mL,4rRとしてもよい。また、図18および図19に示した例では、降り第4ステップ動作における遊脚を第5組脚体4fL,4mR,4rLとし、降り第5ステップ動作における遊脚を第4組脚体4fR,4mL,4rRとしたが、これとは逆に、降り第4ステップ動作における遊脚を第4脚体4fR,4mL,4rRとし、降り第5ステップ動作における遊脚を第5組脚体4fL,4mR,4rLとしてもよい。
なお、以上説明した実施形態では、脚式移動作業装置1の平地での移動時に、3個の脚体4を遊脚として脚式移動作業装置1を移動させるようにしたが、荒地や、障害物がある床で脚式移動作業装置1を移動させる場合には、1個の脚体4、または2個の脚体4を遊脚とするような運動パターンで脚式移動作業装置1を移動させるようにしてもよい。
また、前記実施形態では、各脚体4の1つの中間部(軸ピン26の部分)だけが屈伸するようにしたが、各脚体の2つ以上の中間部で屈伸するように各脚体を構成してもよい。
また、前記実施形態では、各脚体4の目標運動軌道と基体3の目標運動軌道とを脚体制御装置40で生成するようにしたが、これらの目標運動軌道を脚式移動作業装置1の外部から無線もしくは有線によって脚体制御装置40に入力するようにしてもよい。
また、前記実施形態では、基体3に油圧ショベルのような構造の作業機2を搭載するようにしたが、例えばクレーンのような構造の作業機など、他の種類の作業機を基体3に搭載するようにしてもよい。
また、前記実施形態の説明では、脚式移動作業装置1の構造を簡略的に図示したが、より具体的な実施例として、例えば、図20および図21に示す構造形態を採用することができる。
図20は、その実施例における脚式移動作業装置1の斜視図である。また、図21(a)〜(c)は、それぞれ該実施例における脚式移動作業装置1の瞬時的な動作状態の例を側面視で示す図である。なお、図20および図21においては、図1および図2に示した脚式移動作業装置1と同一機能の構成要素には、図1および図2と同一の参照符号を付している。
この実施例の脚式移動作業装置1では、6個の脚体4を延設した基体3に搭載された作業機2の上部旋回体5は、基体3の上面の全体を覆うようにして該基体3上に旋回可能に搭載されている。そして、この上部旋回体5の後部に運転席シート50が搭載され、この運転席シート50の前方において、上部旋回体5の前部からフロントアタッチメント6が延設されている。フロントアタッチメント6の作業用アタッチメント10(図示例ではバケット)、第2アーム9、第1アーム10は、それぞれ図20に示す油圧シリンダ51,52,53によって駆動されるようになっている。なお、フロントアタッチメント6のブーム7は、図示を省略する油圧シリンダによって駆動される。
また、図21(a)に示す脚式移動作業装置1の動作状態は、該脚式移動作業装置1に階段を昇らせる場合に、平地Fから階段Sに移動させるときの瞬時的な動作状態の例を示している。また、図21(b)に示す脚式移動作業装置1の動作状態は、前記した平地基本動作状態に相当する動作状態であり、図21(c)に示す脚式移動作業装置1の動作状態は、図21(b)に示す平地基本動作状態から各脚体4を伸ばして、作業機2を上昇させた動作状態である。この図21(c)の動作状態では、フロントアタッチメント5により高所での作業を行なうことができる。
1…脚式移動作業装置、2…作業機、3…基体、4fR,4fL,4mR,4mL,4rR,4rL…脚体、5…上部旋回体、6…フロントアタッチメント、11,12,13…油圧シリンダ(アクチュエータ)、23…接地部材、27…ボールジョイント、28…バネ(付勢手段)、40…脚体制御装置(階段昇降用脚体運動制御手段、平地移動用脚体運動制御手段)。