JP2009093818A - 高耐熱フレキシブルフラットケーブル - Google Patents

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成人 吉田
Tetsuo Okuyama
哲雄 奥山
Atsushi Okamoto
淳 岡本
Satoshi Maeda
郷司 前田
Akira Nishimoto
晃 西本
Katsuya Shino
勝也 示野
Takeshi Matsuoka
豪 松岡
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Abstract

【課題】金属などの導電体と絶縁対との剥離がなく、変形の発生を抑制し、寸法安定性、可撓性、耐熱性に優れた高耐熱フレキシブルフラットケーブルを提供する。
【解決手段】導電体を、絶縁体で上下から挟んで保持するフレキシブルフラットケーブルにおいて、該絶縁体が芳香族テトラカルボン酸無水物類とベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類とを反応させて得られるポリイミドのフィルムであって、400℃で1時間加熱処理した際の熱収縮率が0.5%以下であるポリイミドフィルム外層と、5%重量減少温度が400℃以上のポリイミドまたはポリアミドイミドから選ばれた一種以上の接着剤内層とで構成の高耐熱フレキシブルフラットケーブル。
【選択図】なし

Description

本発明は、耐熱性と耐屈曲性を備えたフレキシブルフラットケーブルに関する。さらに詳細には、接着剤付き絶縁被覆体により、導電体を挟んで成型したフレキシブルフラットケーブルにおいて、該絶縁体の外層である被覆体が芳香族テトラカルボン酸無水物類と、ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類とを反応させて得られる特定物性のポリイミドのフィルムであり、かつ該絶縁体の内層である接着剤が耐熱性のポリアミドイミドまたはポリイミドである、高温環境での使用が可能であるフレキシブルフラットケーブルに関するものである。
家電製品や自動車部品の軽薄短小化に伴い回路基板同士の配線にはフレキシブルフラットケーブルが広く用いられている。フレキシブルフラットケーブルは錫めっき銅箔をはじめとする単数または複数の金属導体を、接着層の付いた絶縁フィルムで挟み成型されたものが一般的であり、その柔軟性から動的な、或いは静的ではあるが屈曲した回路接続の部材として用いられる。近年、フレキシブルフラットケーブルの用途は多様化し、耐屈曲性を維持しながら従来よりも一層優れた耐熱性、特に工業用加熱炉や原子炉施設周辺といった長期耐熱使用温度が300℃に至る高温使用環境での耐性を有するケーブルに対するニーズも生まれている。
例えば、絶縁性樹脂基材、接着剤層、及び難燃性接着剤層の順で積層されてなる、又は絶縁性樹脂基材、接着剤層、難燃性接着剤層順で積層されてなる積層体の2枚をもって、平行に並べられた複数本の導体を挟み、前記難燃性接着剤層又は接着剤層同士を貼り合せてなるフラットケーブル(特許文献1参照)、ポリエステル系樹脂とアルキルフェノール系樹脂とからなる耐熱性接着樹脂混和物を接着剤として使用した、高い耐熱性と優れた接着性のフラットケーブル(特許文献2参照)、接着剤層のないポリイミドフラットケーブルを製造するための方法であって、離型フィルム上に形成された半硬化ポリアミック酸フィルムのアミック酸フィルム面を重ね合わせて、その間に複数対並列配置した平角導体を挟み、加熱・圧着後、加熱・乾燥イミド化するフラットケーブルの製造方法(特許文献3参照)、さらにフラットケーブルの最外側の熱可塑性樹脂フィルムの外側表面にポリイミドを主成分とする樹脂塗布層を積層せしめるか、複数本の導体の両面に接着層が設けられており、該接着層の外側に熱可塑性樹脂フィルムが設けられているフラットケーブルにおいて、該フラットケーブル最外側の熱可塑性樹脂フィルムの外側表面にポリイミドを主成分とする樹脂塗布層を積層されているフラットケーブル(特許文献4参照などが提案されている。
特開2006−156243号公報 特開2004−067842号公報 特開平05−047222号公報 特開2006−120432号公報
これら従来の提案技術は、難燃性や屈曲性などにおいての効果は見られるものの、200℃を超えるような雰囲気での使用に耐えうる高耐熱性の点において、必ずしも満足し得るものではなかった。
本発明は、従来技術の課題である、高温耐性における課題、接着性の高温耐性、面状発熱体における反りなどの変形や、導電体と当該絶縁層樹脂との剥離などの発生を抑制し、寸法安定性、可撓性、耐熱性に優れた高耐熱フレキシブルフラットケーブルを提供せんとするものである。
構成部材として、従来、絶縁被覆体としてポリエステルフィルムが主に用いられ、これに合わせて適当な耐屈曲性、耐熱性を満たす接着剤が併用されてきた。しかしながらポリエステルフィルムを絶縁被覆体とするフラットケーブルは、主に使用環境温度が100℃以下であり、前述の高温使用環境に耐えるものではない。また、一部のフラットケーブルは耐熱性を向上させる目的で銅箔/接着剤/ポリイミドからなるフラットケーブルにおいても、100℃での屈曲寿命即ち耐屈曲回数を向上させること、または280℃で10秒のはんだ耐熱性を持たせることが主目的のものであり、連続使用環境温度は同様に100℃以下を想定したものである。
本発明は上記課題を解決すべく到達されたものであり、従来の絶縁被覆体では成し得なかった、200℃の使用環境温度においても優れた耐熱性を有するフレキシブルフラットケーブルを提供するものである。
本発明は、前記課題を解決せんとするものであり、以下の構成からなる。
1. 導電体を、絶縁体で上下から挟んで保持するフレキシブルフラットケーブルにおいて、該絶縁体が芳香族テトラカルボン酸無水物類とベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類とを反応させて得られるポリイミドのフィルムであって、400℃で1時間加熱処理した際の熱収縮率が0.5%以下であるポリイミドフィルム外層と、5%重量減少温度が400℃以上のポリイミドまたはポリアミドイミドから選ばれた一種以上の接着剤内層とで構成されてなることを特徴とする高耐熱フレキシブルフラットケーブル。
2. ポリイミドベンゾオキサゾール樹脂層に含まれるポリマー由来の分解物量が0.01ppm以上7ppm以下である1.の高耐熱フレキシブルフラットケーブル。
本発明における、芳香族テトラカルボン酸類とベンゾオキサゾール骨格を有するジアミン類との縮重合により得られるポリイミドベンゾオキサゾールフィルムであって400℃で1時間加熱処理した際の熱収縮率が0.5%以下であるフィルムを外層絶縁被覆体とし、5%重量減少温度が400℃以上のポリイミドまたはポリアミドイミドから選ばれた一種以上の接着剤内層とする絶縁体で、導電体を上下から挟んで保持するフレキシブルフラットケーブルとすることで、当該ポリイミドベンゾオキサゾールフィルムおよび接着剤は、前記した性能を保有していることで、本発明のフラットケーブルは、150℃以上、200℃以上の温度でも長期にわたって使用することができ、さらにこれらのポリイミドフィルムをポリマー由来の分解物量が0.01ppm以上7ppm以下であるものから選ぶことでこの効果はさらに高められる。寸法安定性、可撓性、耐熱性に優れた高耐熱フレキシブルフラットケーブルとなり、車のエンジン周りなどやコピー機やファクシミリ機などの高温に曝される装置などにおける絶縁導体として使用するのに好適である。
本発明において用いられる導電体とは、好ましい例として導電性金属の扁平箔や丸線、有機導電体などが挙げられる。
本発明に用いられる導電体は用途によって銅、銀、錫、インジウム、アルミニウム、モリブデン、これらの合金等を使い分けることができ特に制限されることはない。
これらの導電体の太さや厚みなどは特に限定されるものではないが、例えば厚みや太さ(直径)では20μm〜0.5mm程度である。
本発明における芳香族テトラカルボン酸類(酸、無水物、イミド結合性誘導体など、以下同)とベンゾオキサゾール骨格を有するジアミン類(ジアミン、イミド結合性誘導体など、以下同)との縮重合により得られるポリイミドベンゾオキサゾール(樹脂)は、例えば芳香族テトラカルボン酸類とベンゾオキサゾール骨格を有するジアミン類とを溶媒中で反応させて得られるポリアミド酸をイミド化させて得ることができる。
本発明で好ましく使用できるベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類として、下記の化合物が例示できる。
Figure 2009093818
Figure 2009093818
Figure 2009093818
Figure 2009093818
2,2’−p−フェニレンビス(5−アミノベンゾオキサゾール)、2,2’−p−フェニレンビス(6−アミノベンゾオキサゾール)、1−(5−アミノベンゾオキサゾロ)−4−(6−アミノベンゾオキサゾロ)ベンゼン、2,6−(4,4’−ジアミノジフェニル)ベンゾ〔1,2−d:5,4−d’〕ビスオキサゾール、2,6−(4,4’−ジアミノジフェニル)ベンゾ〔1,2−d:4,5−d’〕ビスオキサゾール、2,6−(3,4’−ジアミノジフェニル)ベンゾ〔1,2−d:5,4−d’〕ビスオキサゾール、2,6−(3,4’−ジアミノジフェニル)ベンゾ〔1,2−d:4,5−d’〕ビスオキサゾール、2,6−(3,3’−ジアミノジフェニル)ベンゾ〔1,2−d:5,4−d’〕ビスオキサゾール、2,6−(3,3’−ジアミノジフェニル)ベンゾ〔1,2−d:4,5−d’〕ビスオキサゾール。
これらの中でも、合成のし易さの観点から、アミノ(アミノフェニル)ベンゾオキサゾールの各異性体が好ましい。ここで、「各異性体」とは、アミノ(アミノフェニル)ベンゾオキサゾールが有する2つアミノ基が配位位置に応じて定められる各異性体である(例;上記「化1」〜「化4」に記載の各化合物)。これらのジアミンは、単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
本発明においては、前記ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミンを全ジアミンの70モル%以上使用することが好ましく、85モル%以上使用することがさらに好ましい。
本発明におけるポリイミドベンゾオキサゾールには前記に限定されないで下記の芳香族ジアミンを全ジアミン30モル%未満であれば使用してもよい。
例えば、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、m−アミノベンジルアミン、p−アミノベンジルアミン、
3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、
1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノシ)フェニル]ブタン、2,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、
1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、4,4’−ビス[(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、
2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、4,4’−ビス[3−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、ビス[4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル]スルホン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−トリフルオロメチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−フルオロフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−メチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−シアノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、
3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ5,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン3,4’−ジアミノ−5’−フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−ビフェノキシベンゾフェノン、1,3−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、2,6−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾニトリルおよび上記芳香族ジアミンにおける芳香環上の水素原子の一部もしくは全てがハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基又はアルコキシル基、シアノ基、又はアルキル基又はアルコキシル基の水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換された炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基又はアルコキシル基で置換された芳香族ジアミン等が挙げられる。
本発明におけるポリイミドベンゾオキサゾールに好ましく使用できる芳香族テトラカルボン酸類として、ピロメリット酸骨格を有する芳香族テトラカルボン酸類すなわちピロメリット酸およびその無水物又はハロゲン化物などのイミド結合性誘導体、ビフェニルテトラカルボン酸骨格を有する芳香族テトラカルボン酸類すなわちビフェニルテトラカルボン酸およびその無水物又はハロゲン化物が挙げられる。このピロメリット酸類とビフェニルテトラカルボン酸類とは酸成分の70モル%以上使用することが好ましく、30モル%未満であれば下記の芳香族テトラカルボン酸などを使用してもよい。
Figure 2009093818
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Figure 2009093818
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これらのテトラカルボン酸は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
芳香族ジアミン類と、芳香族テトラカルボン酸無水物類とを重合してポリアミド酸を得るときに用いる溶媒は、原料となるモノマーおよび生成するポリアミド酸のいずれをも溶解するものであれば特に限定されないが、極性有機溶媒が好ましく、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−アセチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリックアミド、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、スルホラン、ハロゲン化フェノール類等があげられるが、なかでもN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミドが好ましく適用される。これらの溶媒は、単独あるいは混合して使用することができる。溶媒の使用量は、原料となるモノマーを溶解するのに十分な量であればよく、具体的な使用量としては、モノマーを溶解した溶液に占めるモノマーの重量が、通常5〜40質量%、好ましくは10〜20質量%となるような量が挙げられる。
ポリアミド酸を得るための重合反応(以下、単に「重合反応」ともいう)の条件は従来公知の条件を適用すればよく、具体例として、有機溶媒中、0〜80℃の温度範囲で、10分〜30時間連続して撹拌および/又は混合することが挙げられる。必要により重合反応を分割したり、温度を上下させてもかまわない。この場合に、両モノマーの添加順序には特に制限はないが、芳香族ジアミン類の溶液中に芳香族テトラカルボン酸無水物類を添加するのが好ましい。重合反応によって得られるポリアミド酸溶液に占めるポリアミド酸の重量は、好ましくは5〜40質量%、より好ましくは10〜30質量%であり、前記溶液の粘度はブルックフィールド粘度計による測定(25℃)で、送液の安定性の点から、好ましくは10〜2000Pa・sであり、より好ましくは100〜1000Pa・sである。
本発明におけるポリアミド酸の還元粘度(ηsp/C)は、特に限定するものではないが3.0dl/g以上が好ましく、4.0dl/g以上がさらに好ましく、なおさらに5.0dl/g以上が好ましい。
また、重合反応の前に芳香族ジアミン類に少量の末端封止剤を添加して重合を制御することを行ってもよい。末端封止剤としては、無水マレイン酸等といった炭素−炭素二重結合を有する化合物が挙げられる。無水マレイン酸を使用する場合の使用量は、芳香族ジアミン類1モル当たり好ましくは0.001〜1.0モルである。
重合反応中に真空脱泡することは、良質なポリアミド酸の溶液を製造するのに有効である。
ポリアミド酸の溶液を支持体上に流延・塗布するに際して予め減圧などの処理によって該溶液中の気泡や溶存気体を除去しておくことも、本発明のポリイミドベンゾオキサゾール樹脂層やポリイミドベンゾオキサゾール樹脂フィルムを得るために有効な処理である。
本発明のポリイミドベンゾオキサゾール樹脂層の形成方法としては、重合反応によって得られたポリアミド酸溶液を発熱体に塗布して乾燥、イミド化する方法や、ポリイミドベンゾオキサゾール樹脂フィルムを得てこのフィルムを発熱体に被覆する方法や、このポリイミドベンゾオキサゾール樹脂フィルムに発熱体を積層する方法などによって得る方法が例として挙げられる。
ポリイミドベンゾオキサゾール樹脂フィルム(以下フィルムともいう)を得る方法としては、例えば下記の方法を示すことができるが、これに限定されるものではない。
重合反応によって得られたポリアミド酸溶液を支持体に流延(塗布)し、乾燥して自己支持性のポリアミド酸フィルム(ポリイミドベンゾオキサゾール前駆体フィルム、グリーンフィルムともいう)を得、この前駆体フィルムを高温処理するなどしてイミド化しポリイミドベンゾオキサゾールフィルムを得る。支持体は、ポリアミド酸溶液をフィルム状に成形するに足る程度の平滑性、剛性を有していればよく、表面が金属、プラスチック、ガラス、磁器などであるドラム又はベルト状回転体などが挙げられる。また、適度な剛性と高い平滑性を有するポリイミドベンゾオキサゾールフィルムを利用する方法も好ましい態様である。中でも、支持体の表面は好ましくは金属であり、より好ましくは錆びなくて耐腐食に優れるステンレスである。支持体の表面にはCr、Ni、Snなどの金属メッキを施してもよい。支持体表面は必要に応じて鏡面にしたり、あるいは梨地状に加工することができる。また支持体の差によって乾燥における風量や温度は適宜選択採用すればよく、支持体へのポリアミド酸溶液の塗布は、スリット付き口金からの流延、押出機による押出し、スキージコーティング、リバースコーティング、ダイコーティング、アプリケータコーティング、ワイヤーバーコーティング等を含むが、これらに限られず、従来公知の溶液の塗布手段を適宜用いることができる。
前記で流延(塗布)・乾燥して得られるポリアミド酸フィルムをイミド化・熱処理する方法として、閉環(イミド化)触媒や脱水剤を含まないポリアミド酸溶液を用いて、熱処理に供することでイミド化反応を進行させる方法(所謂、熱閉環法)やポリアミド酸溶液に閉環触媒および脱水剤を含有させておいて、上記閉環触媒および脱水剤の作用によってイミド化反応を行わせる、化学閉環法を挙げることができる。
熱閉環法の熱処理温度は、150〜500℃が好ましく、熱処理温度がこの範囲より低いと充分に閉環されづらくなり、またこの範囲より高いと劣化が進行し、フィルムが脆くなりやすくなる。より好ましい態様としては、150〜250℃で3〜20分間処理した後に350〜500℃で3〜20分間熱処理するところの初期段階熱処理と後段階熱処理とを有する2段階熱処理工程が挙げられる。
熱閉環反応であっても、化学閉環法であっても、支持体に形成されたポリイミドベンゾオキサゾールフィルムの前駆体(グリーンフィルムともいう)を完全にイミド化する前に支持体から剥離してもよいし、イミド化後に剥離してもよい。
ポリイミドベンゾオキサゾールフィルムの厚さは特に限定されないが、3〜150μm、好ましくは5〜50μmである。この厚さはポリアミド酸溶液を支持体に塗布する際の塗布量や、ポリアミド酸溶液の濃度によって容易に制御し得る。
本発明のポリイミドベンゾオキサゾールには、滑剤をポリイミドベンゾオキサゾール中に添加含有せしめるなどして成形品表面に微細な凹凸を付与し成形品の滑り性を改善することが好ましい。
滑剤としては、無機や有機の0.03〜3μm程度の平均粒子径を有する微粒子が使用でき、具体例として、酸化チタン、アルミナ、シリカ、炭酸カルシウム、燐酸カルシウム、燐酸水素カルシウム、ピロ燐酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、粘土鉱物などが挙げられる。
本発明におけるポリイミドベンゾオキサゾールフィルムは、以上のようにして得られるが、その中でも400℃で1時間加熱処理した際の熱収縮率が0.5%以下、より好ましくは0.2%以下であるポリイミドベンゾオキサゾールフィルムを選定使用する必要がある。かかる性質を得るには、上記熱処理の後段階熱処理において、熱分解を生じさせない程度のなるべく高温での処理により、ポリイミドベンゾオキサゾールを緩和・固定することが重要である。
400℃で1時間加熱処理した際の熱収縮率の測定は、フィルムロール長手方向に切り出した試料幅15mm、試料長さ150mmのサンプルに100mm間隔の標線を入れ、温度23℃、相対湿度50%において24時間調湿し、標線間距離を測長器により測長し、その値を(A)とする。次に窒素雰囲気で400℃に保ったマッフル炉内に1時間静置し、取り出して再度上記調湿条件にて調湿し、測長を行いその値を(B)とした。(A)(B)の値より、以下の式に従い熱収縮率を算出した。
熱収縮率(%)=〔((A)-(B))/(A)〕×100
本発明においては、ポリイミドベンゾオキサゾール樹脂層がポリマー由来の分解物量が0.01ppm以上7ppm以下で含むことが好ましく、ポリマー分解物の量を所定の範囲内に納めるには、例えばポリイミドベンゾオキサゾールの場合は、当該フィルムの熱処理後に、熱処理炉から出てきたフィルムを直ちに巻き取らず、フィルム両面をフリーの状態にして5分以上、好ましくは7分以上、さらに好ましくは10分以上、なお好ましくは16分以上、大気中ないし不活性気体中に保持した後に巻き取ることが好ましい。
両面フリーの状態とは大気ないし不活性気体にフィルムが直接触れている状態を意味する。もちろん、その間には、複数のロール等を用いてフィルムを搬送することができる。フィルムに含まれる低分子量物質が拡散によりフィルム外に排出されるに十分な時間を確保する意味合いである保持時間が短いとポリマー由来の分解物、溶媒、反応副生成物などの低分子量物質の残存量が多くなる場合がある。また時間が長すぎる場合には、フィルムハンドリングが困難となり生産性が低下する場合がある。
また、本発明においては、フィルムの表面に、大気中ないし不活性気体中において超音波、好ましくは30〜250kHzの広帯域超音波をかけ、さらにフィルム表面近傍の大気ないし不活性気体を流速0.5m/秒以上、好ましくは3m/秒以上、なお好ましくは15m/秒以上、なおさらに好ましくは30m/秒の流速において表面を更新させることが好ましい。かかる処理はフィルムに行う場合には熱処理炉からでた直後から、5分以内、好ましくは7分以内、なお好ましくは15分以内に行うことが好ましい。かかる処理は熱処理炉内においてフィルム近傍に存在した、ポリマー由来分解物を含む低分子物質が冷却凝縮によりフィルム表面に付着することを防止する物である。
本発明における、ポリイミドベンゾオキサゾール樹脂層のポリマー由来の分解物量は、0.01ppm以上7ppm以下であることが好ましく、より好ましくは0.01ppm以上6ppm以下、さらに好ましくは0.01ppm以上5ppm以下であり、少なければ少ないほど好ましいが、製造の容易性、コスト等を考慮すれば、実質的に不具合が生じない程度にすればよく、その下限としては、具体的には0.01ppmである。
本発明における、「ポリマー由来の分解物量」の測定は、下記のようにして実施した。
キューリーポイント型熱分解装置を用いて、GCMS法より、ポリマー分解物量を求めた。あらかじめ加熱乾燥処理した日本分析工業製500℃用パイロホイルに、試料(目安4mg)を精秤し(秤量値をA(mg)とする。)、熱分解装置内保温温度を170℃にセットして、試料ホイルを導入、3分間ヘリウムパージした。その後、直ちに発振操作により500℃で10秒間加熱した。その500℃での10秒間の加熱中に試料から揮発するポリマー分解物を、GCMSで検出した。この全イオン(TIC)ピーク面積を求め、アニリン換算による絶対検量線法によりポリマー分解物量B(μg)を求めた。試料に対するポリマー分解物量は次式により算出した。
ポリマー分解物量(ppm)=B(μg)/A(mg)×1000
(熱分解GCMS条件)
装置 :HP5973N(HP社製GCMS)
JHS−3(日本分析工業社製熱分解装置)
カラム :HP−1(アジレントテクノロジー社製)、φ0.25mm×25m、
膜厚1μm
カラム温度:40℃2分保持⇒10℃/分で260℃まで昇温⇒260℃5分保持
ガス流量 :He 0.7ml/分、スプリット導入
質量操作範囲:m/z=30〜550
本発明におけるポリマー由来の分解物は、上記測定条件に即して、主としてかかる雰囲気下でポリイミドベンゾオキサゾールフィルムから分解・揮発するものと考えられ、分子量が90以上200以下、かつ分子骨格に1個以上の窒素原子を有する、ポリマー由来の分解物である。
かかるポリマー由来の分解物は、下記化合物が代表的具体例であり、これらの少なくとも1つを含むものである。
アニリン、ベンゾニトリル、1−メチル−2,5−ピロリジンジオン、メチルイソシアノベンゼン、1,2−ベンゾジニトリル、ジメチルベンズアミド、2−メチルイソインドール−1,3−ジオン、4−シアノフェニルグリオキザール−1−オキシム。
本発明のポリイミドベンゾオキサゾール樹脂層におけるポリイミドベンゾオキサゾールフィルムの場合においては、ポリイミドベンゾオキサゾールフィルムのポリマー由来の分解物量が好ましくは、0.01ppm以上7ppm以下であるポリイミドベンゾオキサゾールフィルムを使用することが好ましい。
本発明に用いられる5%重量減少温度が400℃以上のポリイミドまたはポリアミドイミドから選ばれた一種以上の接着剤としては、熱可塑性又は熱圧着性であって耐熱性、接着性に優れたものであれば特に限定されるものではないが、ポリイミド、ポリイミドシロキサン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミドのうち上記性能を有するものを好ましく用いることができる。
ポリイミドベンゾオキサゾールフィルム(樹脂層)上に予め上記接着剤を形成しその積層体を使用してもよく、ポリイミドベンゾオキサゾールフィルムの表面に接着剤層を形成する方法は限定されるものではない。ポリイミドベンゾオキサゾールフィルムの表面に接着剤を塗布・乾燥して熱可塑性接着剤層を形成する方法や、他の離型性シートやフィルムに予め接着剤層を形成し、これをポリイミドベンゾオキサゾールフィルム面に貼合や転写するなどしてポリイミドベンゾオキサゾールフィルム表面に接着剤層を形成する方法などが好ましい例として挙げられる。中でも、基材フィルムとなるポリイミドベンゾオキサゾールの前駆体からなるフィルムの片面ないし両面に、接着剤となるポリイミドの前駆体フィルム層を積層した後にイミド化反応処理を行うことによりポリマー由来の分解物量が0.01ppm以上7ppm以下であるものを製造する方法が好ましく適用することができる。
ポリイミドベンゾオキサゾールの前駆体からなるフィルムの片面ないし両面に、接着剤となるポリイミドの前駆体フィルム層を設ける具体的な手法としては、直接コーティングして乾燥させる方法、熱可塑ポリイミド/基材ポリイミドベンゾオキサゾールフィルム層/熱可塑ポリイミド、各々の前駆体を順次積層塗布する方法、あらかじめ準備した各々の前駆体フィルムを圧着積層する方法などを例示出来る。
接着剤層の厚さは使用する基材ポリイミドベンゾオキサゾールフィルムの厚さに対して1.0以下の厚さ(両面の場合は1.0以下)であることが好ましく、より好ましくは0.5以下の厚さである。
本発明の高耐熱フレキシブルフラットケーブルを製造する方法としては、導電体の両面に、芳香族テトラカルボン酸無水物類とベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類とを反応させて得られるポリイミドのフィルムであり、400℃で1時間加熱処理した際の熱収縮率が0.5%以下であるポリイミドフィルムの外層と、5%重量減少温度が400℃以上の熱可塑性ポリイミドまたは熱可塑性ポリアミドイミドから選ばれた一種以上の接着剤内層とで構成されてなる絶縁材を配し上下から挟んで保持するようにしてフラットケーブルとすればよく、接着剤内層とポリイミドフィルム外層とを予め積層したものとして使用してもよく、接着剤層のみで導電体を挟持しその後ポリイミドフィルムを外層として積層してもよい。
本発明のフラットケーブルの端部形状としては、一方の絶縁材を導体層の端部まで形成し、他方の絶縁材を導体層の端部よりも内側に形成し、導体層が基板端子と接合する部分を露出させたものでもよく、かかる構成を採らず端部を使用時に切り出して使用するようにしたものでもよい。
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが本発明はこれらの実施例によって何ら制限されるものではない。実施例中に示される特性値の測定は以下の方法で行った。
1.ポリアミド酸の還元粘度(ηsp/C)
ポリマー濃度が0.2g/dlとなるようにN−メチル−2−ピロリドンに溶解した溶液をウベローデ型の粘度管により30℃で測定した。
2.フィルム厚さ
フィルムの厚さは、マイクロメーター(ファインリューフ社製、ミリトロン1254D)を用いて測定した。
3. 5%重量減少温度(℃)
測定対象のフィルムもしくはポリマー溶液につき、充分に乾燥させたものを試料として、下記条件で熱天秤測定(TGA)を行い、試料の重量が5%減る温度を5%重量減少温度とした。
装置名 ; MACサイエンス社製TG−DTA2000S
パン ; アルミパン(非気密型)
試料重量 ; 10mg
昇温開始/終了温度 ; 30℃/500℃
昇温速度 ; 20℃/min
雰囲気 ; アルゴン
(1)ポリイミドフィルムAの作製
窒素導入管,温度計,攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール500質量部を仕込んだ。次いで、N、N−ジメチルアセトアミド8000質量部を加えて完全に溶解させた後,ピロメリット酸二無水物485質量部を加え,25℃の反応温度で48時間攪拌すると,淡黄色で粘調なポリアミド酸溶液(A)が得られた。得られた溶液のηsp/Cは4.0dl/gであった。
このポリアミド酸溶液(A)を、ポリエチレンテレフタレート製フィルムA−4100(東洋紡績株式会社製)の無滑剤面上に、コンマコーターを用いてコーティングし、110℃にて5分間乾燥後、支持体から剥がさずにポリアミド酸フィルムを巻き取った。ポリアミド酸フィルムを3つの熱処理ゾーンを有するピンテンターに通し、一段目150℃×2分、2段目220℃×2分、3段目475℃×4分間の熱処理を行い、テンター通過後20分間に6本のロールを通過させて両面フリーのプロセスを与え、最終的に500mm幅にスリットして、厚さ25μmのポリイミドベンザオキサゾ−ルフィルムAを得て、絶縁被覆体Aとしてフラットケーブルテストピース作製に用いた。ポリイミドベンザオキサゾ−ルフィルムAのポリマー由来の分解物量は3.0ppmであった。
(2ポリイミドフィルムBの作製
窒素導入管,温度計,攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、ピロメリット酸無水物545質量部、4,4’ジアミノジフェニルエーテル500質量部を8000質量部のN、N−ジメチルアセトアミドに溶解し、温度を20℃以下に保ちながら同様に反応させてポリアミド酸溶液(B)を得た。得られた溶液のηsp/Cは2.2でdl/gあった。
このポリアミド酸溶液(B)を、ポリエチレンテレフタレート製フィルムA−4100(東洋紡績株式会社製)の無滑剤面上に、コンマコーターを用いてコーティングし、110℃にて5分間乾燥後、支持体から剥がさずにポリアミド酸フィルムを巻き取った。ポリアミド酸フィルムを3つの熱処理ゾーンを有するピンテンターに通し、一段目150℃×2分、2段目220℃×2分、3段目460℃×4分間の熱処理を行い、500mm幅にスリットして、厚さ25μmのポリイミドフィルムBを得た。これを絶縁被覆体Bとしてフラットケーブルテストピース作製に用いた。ポリイミドフィルムBのポリマー由来の分解物量は9.5ppmであった。
(3)ポリアミドイミドフィルムCの作製
窒素導入管,温度計,攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、反応容器に無水トリメリット酸192g、O−トリジンジイソシアネート211g(80モル%)、2,4−トリレンジイソシアネート35g、トリエチレンジアミン1g、及びN−メチル−2−ピロリドン2.5kgを加え、攪拌しながら130℃まで1時間で昇温し、さらに130℃で5時間反応させ対数粘度が1.6dl/gのポリイミド系樹脂溶液PAI(b)を得た。この溶液を、ポリエチレンテレフタレート製フィルムA−4100(東洋紡績株式会社製)の無滑剤面上に、コンマコーターを用いてコーティングし、120℃にて3分間乾燥後、支持体から剥がさずにフィルムを巻き取った。このフィルムを3つの熱処理ゾーンを有するピンテンターに通し、一段目320℃×2分、2段目320℃×2分、3段目320℃×2分間の熱処理を行い、500mm幅にスリットして、25μmのポリアミドイミドフィルムCを得た。これを絶縁被覆体Cとしてフラットケーブルテストピース作製に用いた。
ポリアミドイミドフィルムCのポリマー由来の分解物量は12.0ppmであった。
(接着剤ポリアミドイミドの作製−1)
反応容器に、トリメリット酸無水物(TMA)、オキシジアニリンジイソシアネートをそれぞれ190g、250g仕込み、さらN−メチル−2−ピロリドン(NMP)をポリマー濃度が40%となるように仕込んで120℃で約1時間反応させた後、180℃に昇温して5時間反応させた。冷却しながら、さらにN−メチル−2−ピロリドンを加えて、固形分濃度が20%のポリマー溶液(PAI(a))を得た。
(接着剤ポリアミドイミドの作製−2)
窒素導入管,温度計,攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、反応容器に、トリメリット酸無水物(TMA)、シクロヘキサンジカルボン酸(CHDA)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、末端アミノ基シリコン、をそれぞれ190g、172g、450g、7.5g投入し、さらN−メチル−2−ピロリドン(NMP)をポリマー濃度が40%となるように仕込んで120℃で約1時間反応させた後、180℃に昇温して5時間反応させた。冷却しながら、さらにN−メチル−2−ピロリドンを加えて、固形分濃度が20%のポリマー溶液(PAI(c))を得た。
(接着剤ポリイミドの作製−3)
窒素導入管,温度計,攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル368.4g(1.0モル)、無水フタル酸59.24g(0.4モル)、無水ピロメリット酸174.5g(0.8モル)およびm−クレゾール2,172gを装入し、攪拌下200℃まで加熱し、200℃にて6時間保温した。次いで反応溶液にトルエンを装入し、析出物を濾別し、さらにトルエンにて洗浄を数回行った後、窒素雰囲気下250℃で6時間乾燥を行い、510g(収率90.1%)のポリイミド粉(D)を得た。ポリイミド粉(D)を、二軸押出機を用いて380〜410℃において混練、溶融して押出して造粒しペレットとした。得られたペレットを径50mmの
単軸押出機(成形温度420℃)に供給し、Tダイ前部に装着した10μmのリーフディスクタイプのフィルターを通過させ、1100mm幅Tダイより押出し、厚さ30μmの熱可塑性ポリイミドフィルムPI(a)を得た。
(接着剤ポリイミドの作製−3)
容量2リットルのガラス製のセパラブルフラスコに、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)1000gを入れ、その溶液中に、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(a−BPDA)73.56g(250ミリモル)と、ジアミノポリシロキサン(DAPS)(東レ・ダウコ−ニング・シリコ−ン株式会社、BY16−853U)88g(100ミリモル)と、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン(BAPP)61.58g(150ミリモル)とを加え、60℃で2時間窒素雰囲気下で攪拌する。その後さらに温度を200℃に昇温させ水を除去させながら3時間重合反応を行った。最後に、その反応液を10リットル水中に添加して、ホモミキサ−を使用して、30分間で析出させポリマ−を濾過させ、ポリマ−粉末を単離した。このポリマ−粉末について5リットルの2−プロパノ−ル中でホモミキサ−を使用して80℃で1時間洗浄を2回行い、120℃で5時間熱風乾燥後、120℃で24時間真空乾燥してポリイミドシロキサン粉末210gを得た。
反応容器に得られたポリイミドシロキサン85部、エポキシ樹脂(油化シェル社製、エピコ−ト828)10部、BTレジン(三菱ガス化学社製、BT2170)5部を仕込み、さらにテトラヒドロフランを固形分濃度25%になるように仕込み、室温(25℃)で2時間攪拌して、均一に溶解させたポリイミドシロキサン組成物溶液(PI(b) )を得た。
(接着剤ポリイミドの作製−4)
窒素導入管,温度計,攪拌棒を備えた反応容器内に、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル170gと1,3-ビス3アミノフェノキシベンゼン45gを入れ、十分に窒素置換した後、モレキュラーシーブを用いて脱水したN−メチル−2−ピロリドン1200gを加えて完全に溶解した。この溶液を20℃以下に冷却し、攪拌しながら、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物268gと4-フェニルエチリルフタル酸無水物45gを少しづつ加えた。N−メチル−2−ピロリドンを32g加えて、ポリマー濃度を30重量%に調整し、引き続き室温で24時間反応させた。得られたポリアミド酸溶液(PI(c))は、粘調で淡黄色であった。
(接着剤ポリイミドの作製−5)
2リットルのガラス製セパラブルフラスコに、軟化点75℃、水酸基当量104のフェノールノボラック473.2g、4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物63.2g、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン63.57g、分子量が750のビス( 3−アミノプロピル)ポリメチルシロキサン 62.11g、混合キシレン315gを仕込み、ゆっくり攪拌しながら150℃に加熱した。その後、攪拌回転数を30rpmとし、165℃に加熱し18時間反応させた。この間、生成する水はキシレンとの共沸により系外に除いた。反応後、減圧下で残存するキシレンを留去し、ポリイミド 含有多価フェノール性樹脂A621.6gを得た。この樹脂を平滑な鋼板に流延し、80℃で15分予備乾燥の上、160℃で60分乾燥させ、厚さ30μのポリイミド/エポキシシート(PI(d))を作製した。
<実施例1>
厚さ25μ、5cm×10cmのポリイミドベンザオキサゾ−ルフィルムAの片面にPAI(a) を塗布し100℃にて1時間乾燥し、塗膜厚みが30μとなるよう調整し、更に160℃にて5時間加熱処理を行った。これを一対準備し、片方の接着剤面に幅300μ、厚み30μの平角銅線を5本平行に配置し、もう一方の接着剤つきフィルムを接着剤面同士が接するように重ねて300℃、10MPaにて1時間プレスを行った。得られた積層体をフラットケーブル用テストピースとして評価した。
<実施例2>
厚さ25μ、5cm×10cmのポリイミドベンゾオキサゾ−ルフィルムAの片面に、PAI(b) を塗布し90℃にて1時間乾燥し、塗膜厚みが30μとなるよう調整した。これを一対作製し、片方の接着剤面に幅300μ、厚み30μの平角銅線を5本平行に配置し、もう一方の接着剤つきフィルムを接着剤面同士が接するように重ねて、350℃、10MPaにて15分プレスを行った。得られた積層体をフラットケーブル用テストピースとして評価した。
<実施例3>
厚さ25μ、5cm×10cmのポリイミドベンゾオキサゾ−ルフィルムAの片面に、PI(a)を載せ、ロールラミネーターを用い2.5m/minの速度においてロール温度100℃、ニップロール圧3kgf/cm2でラミネートを行った。これを一対作製し、片方の接着剤面に幅300μ、厚み30μの平角銅線を5本平行に配置し、もう一方の接着剤つきフィルムを接着剤面同士が接するように重ねて、300℃、10MPaにて15分プレスを行った。得られた積層体をフラットケーブル用テストピースとして評価した。
<実施例4>
厚さ25μ、5cm×10cmのポリイミドベンゾオキサゾ−ルフィルムAの片面に、PI(b) を塗布し90℃にて乾燥し、塗膜厚みが30μとなるよう調整した。これを一対作製し、片方の接着剤面に幅300μ、厚み30μの平角銅線を5本平行に配置し、もう一方の接着剤つきフィルムを接着剤面同士が接するように重ねて、ロールラミネーターを用い2.5m/minの速度においてロール温度100℃、ニップロール圧3kgf/cm2でラミネートを行った。得られた積層体に対し80℃で1時間、120℃で2時間処理を行い、得られた積層体をフラットケーブル用テストピースとして評価した。
<実施例5>
厚さ25μ、5cm×10cmのポリイミドベンゾオキサゾ−ルフィルムAの片面に、PI(c) を塗布し90℃にて5分乾燥し、塗膜厚みが30μとなるよう調整した。更にこれを300℃で1時間熱処理し、イミド化反応を完了させた。これを一対作製し、片方の接着剤面に幅300μ、厚み30μの平角銅線を5本平行に配置し、もう一方の接着剤つきフィルムを接着剤面同士が接するように重ねて、300℃、10MPaにて1時間プレスを行った。得られた積層体をフラットケーブル用テストピースとして評価した。
<比較例1>
ポリイミドフィルムBを使用する以外は実施例1と同様にして積層体を得た。得られた積層体をフラットケーブル用テストピースとして評価した。
<比較例2>
ポリイミドフィルムCを使用する以外は実施例1と同様にして積層体を得た。得られた積層体をフラットケーブル用テストピースとして評価した。
<比較例3>
厚さ25μ、5cm×10cmのポリイミドベンザオキサゾ−ルフィルムAの片面に、PI(d)を載せ、ロールラミネーターを用い2.5m/minの速度においてロール温度100℃、ニップロール圧3kgf/cm2でラミネートを行った。これを一対作製し、片方の接着剤面に幅300μ、厚み30μの平角銅線を5本平行に配置し、もう一方の接着剤つきフィルムを接着剤面同士が接するように重ねて、230℃、10MPaにて15分プレスを行った。得られた積層体をフラットケーブル用テストピースとして評価した。
<比較例4>
厚さ25μ、5cm×10cmのポリイミドベンザオキサゾ−ルフィルムAの片面に、PAI(c) を塗布し90℃にて乾燥し、塗膜厚みが30μとなるよう調整した。これを一対作製し、片方の接着剤面に幅300μ、厚み30μの平角銅線を5本平行に配置し、もう一方の接着剤つきフィルムを接着剤面同士が接するように重ねて、250℃、10MPaにて15分プレスを行った。得られた積層体をフラットケーブル用テストピースとして評価した。
上記で得られた、各2枚のポリイミドフィルム、接着剤層、から成る各テストピースにつき、初期の接着強度と、400℃1時間加熱処理した後の接着強度を評価した。また、加熱処理後の外観、品位も合わせて評価した。接着強度は、島津製作所製オートグラフAG-ISを用い、50mm/分の引張り速度でT字剥離を行うことで求めた。得られた接着強度のうち4N/cm以上のものをA、1N/cm以上4N/cm未満のものをB、1N/cm未満のものをCとした。結果を表1、表2に示す。
Figure 2009093818
Figure 2009093818
本発明の導電体を、絶縁体で上下から挟んで保持するフレキシブルフラットケーブルにおいて、該絶縁体が芳香族テトラカルボン酸無水物類とベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類とを反応させて得られるポリイミドのフィルムであって、400℃で1時間加熱処理した際の熱収縮率が0.5%以下であるポリイミドフィルム外層と、5%重量減少温度が400℃以上の熱可塑性ポリイミドまたは熱可塑性ポリアミドイミドから選ばれた一種以上の接着剤内層とで構成されてなる高耐熱フレキシブルフラットケーブルは、ポリイミドベンゾオキサゾールフィルムおよび接着剤が、前記した性能を保有していることで、150℃以上、200℃以上の温度でも長期にわたって使用することができ、さらにこれらのポリイミドフィルムをポリマー由来の分解物量が0.01ppm以上7ppm以下であるものから選ぶことでこの効果はさらに高められる。寸法安定性、可撓性、耐熱性に優れた高耐熱フレキシブルフラットケーブルとなり、車のエンジン周りなどやコピー機やファクシミリ機などの高温に曝される装置などにおける絶縁導体として使用するのに好適である。

Claims (2)

  1. 導電体を、絶縁体で上下から挟んで保持するフレキシブルフラットケーブルにおいて、該絶縁体が芳香族テトラカルボン酸無水物類とベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類とを反応させて得られるポリイミドのフィルムであって、400℃で1時間加熱処理した際の熱収縮率が0.5%以下であるポリイミドフィルム外層と、5%重量減少温度が400℃以上のポリイミドまたはポリアミドイミドから選ばれた一種以上の接着剤からなる内層とで構成されてなることを特徴とする高耐熱フレキシブルフラットケーブル。
  2. ポリイミドベンゾオキサゾール外層に含まれるポリマー由来の分解物量が0.01ppm以上7ppm以下である請求項1記載の高耐熱フレキシブルフラットケーブル。
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JP2017059528A (ja) * 2015-09-16 2017-03-23 住友電気工業株式会社 フラットケーブル用絶縁フィルム、フラットケーブル及びフラットケーブルの製造方法

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