JP2009087748A - 非水電解液二次電池負極用電極板及び非水電解液二次電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】非水電解液二次電池負極用電極板は、集電体の少なくとも一面に、少なくとも負極活物質と、増粘剤としてのDNAと、結着剤と、水を主体とする水系溶媒とを含む塗工組成物を、該集電体上に塗布することによって形成された負極活物質層を備えることを特徴とする。
【選択図】図1
Description
一般的な非水電解液二次電池は、集電体上に活物質層を設けた正極板と負極板、これら正・負極板の間に介在し両極間を電気的に遮断するセパレータを容器に収納し、容器内空間に有機電解液を充填し、密閉した構造を有している。
しかしながら、インピーダンスが高い電池は高出力充放電時にその大容量を十分に生かすことができない。そのため、電極活物質層を薄膜大面積化して、電池のインピーダンスを下げる方法が用いられている。
また、リチウムイオン二次電池で用いられる非水電解液は、一般的に水系電解液に比べて抵抗が高いことから、開発当初から鉛蓄電池などの他の電池に比べて、薄く広い面積の電極を使用し、かつ正極と負極との極板間距離を短くする形態が開発されている。
従来、電極活物質層の結着剤にはフッ素系樹脂、ポリイミド樹脂などが使用され、これらの結着剤を使用する場合には、トルエン、メチルエチルケトン、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)或いはこれらの混合物である有機系溶媒が用いられる。
特に、フッ素系樹脂の一つであるポリフッ化ビニリデン(PVDF)を結着剤として用いる場合には、電極活物質層用塗工組成物を調製するための溶媒としてNMPが好適に用いられるが、NMPの沸点(204℃)は、水よりもはるかに高いため、乾燥除去するのに大きなエネルギーが必要とされる。
水系溶媒を用いる方法としては、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)などの水溶性高分子、及び結着剤としてスチレンブタジエンゴム(SBR)などを、水を主体とする水系溶媒に分散させてスラリー状の塗工組成物を調製し、使用する方法が知られている。
前記塗工組成物中の前記負極活物質の含有量を100重量部としたときに、前記結着剤が0.5重量部以上3重量部以下の範囲で、前記塗工組成物中に含まれていることが好ましい。
前記結着剤がゴム系樹脂を主成分とした材料であることが好ましい。
水系溶媒を用いると、溶媒そのもののコストを減らすことができるだけでなく、塗工組成物を乾燥する際の揮発成分の回収コストも低減(乾燥エネルギーの減少)させることができ、及び環境配慮にも優れる。
また、その塗工組成物から形成される負極活物質層を有する負極板は、初期充放電効率が高い。
また、本発明によれば、上記した本発明に係る負極用電極板を用いることによって、初期充放電効率に優れた非水電解液二次電池が得られる。
図1は、本発明に係る負極板(負極用電極板)の層構成の一例を模式的に示した断面図である。図1の負極板1は、集電体2の表面側に負極活物質層3が形成されている。また、図1では裏面にも負極活物質層4が形成されているものを示しているが、本発明に係る正極板1は、集電体2の両面の何れか一面に負極活物質層が形成されていればよい。また、本発明に係る負極板は図示した形態に限定されるものではない。
なお、負極集電体の厚みは、特に限定されるものではないが、通常は5〜50μm程度のものを用いる。
負極活物質としては、例えば、天然グラファイト、人造グラファイト、アモルファス炭素、カーボンブラック、又は、これらの成分に異種元素を添加した炭素質材料などが好ましく用いられる。
また、負極活物質の粒子形状は、特に限定されるものではないが、例えば、鱗片状、塊状、繊維状、及び球状等の形状を有するものが使用可能である。
DNAは、水を主体とする水系溶媒に比較的容易に溶解させることができ、溶解後は溶液に対して増粘作用が発揮して、塗布性が良好なスラリー状の塗工組成物が得られる。
また、塗工組成物中に、DNAを含有させることにより、該塗工組成物から形成される負極活物質層を有する負極板の初期充放電効率を向上させることもできる。
DNAを塗工組成物中に含有させることにより、負極板の初期充放電効率が向上する理由は定かではないが、DNAが有する特殊な二重らせん構造が起因して、負極板に、導電性、及びイオン伝導性などの効果が付与されるのではないかと推定される。
そのため、DNAを含有した塗工組成物から形成される負極活物質層の表面には、イオン伝導性が高い膜(以下、「イオン透過膜」と称する。)が形成され、負極板に均一な導電性、及びイオン伝導性などの効果が付与された結果、負極板の初期充放電効率が向上すると考えられる。
先ず、サケの精巣1gをシャーレにのせ、蒸留水10mlを加えながら薬さじを用いて、すり潰す。すり潰した精巣を、フィルターで漉してビーカーに移し、蒸留水30mlを加える。
次いで、このビーカーに、細胞膜を壊すために、界面活性剤(10%SDS溶液)4mlを加え、ゆっくり攪拌する。さらに、タンパク質を除去するために、2M NaCl溶液10mlを加え、ゆっくり攪拌する。
このビーカーを、60℃のお湯で湯煎しながら、粘度が低くなるまでゆっくりと約5分間攪拌する。お湯からビーカーを取り出し、残存しているタンパク質を除去するために、2M NaCl溶液30mlを加え、ゆっくり攪拌しながら、室温程度まで溶液を冷ます。
次いで、このビーカーに、攪拌棒を伝わらせて100%エタノールを適量加えることにより、DNAを沈殿させる。抽出されたDNAは、糸状の白い構造体として現れるため、攪拌棒でかき混ぜることで容易に巻取れる状態で得られる。
上記塗工組成物中のDNAの含有量が、上記範囲未満である場合には、集電体上に塗布するのに適した粘度に調節すること難しくなり、負極板の初期充放電効率を低下させる場合がある。一方、上記塗工組成物中のDNAの含有量が、上記範囲を超える場合には、塗工組成物の粘度が高くなり過ぎ、取り扱いが不自由になる場合がある。
ゴム系樹脂としては、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ハイスチレンゴム(HSR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ブチルゴム(IIR)、クロロプレンゴム(CR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、及びシリコーンゴム等が挙げられる。これらの中でも、スチレンブタジエンゴム(SBR)が特に好ましく用いられる。
上記塗工組成物中の結着樹脂の含有量が、上記範囲未満である場合には、塗工組成物を集電体上に固定させる効果が弱まり、均質性が劣る場合がある。一方、上記塗工組成物中の結着樹脂の含有量が、上記範囲を超える場合には、相対的に負極活物質の量が減少し、導電性効果が十分に得られない場合がある。
水を主体とする水系溶媒は、溶媒そのもののコストを減らすことができるだけではなく、塗工組成物を乾燥する際の揮発成分の回収コストの低減(乾燥エネルギーの減少)、及び環境配慮にも優れる。
水を主成分とする水系溶媒は、通常は水単独で用いるが、アルコール等の水溶性有機溶媒を数%程度水に含有させて用いてもよい。
導電剤としては、従来から非水電解液二次電池の導電剤として用いられている材料であれば、特に限定されるものではないが、例えば、グラファイト、カーボンブラックまたはアセチレンブラック等の炭素質材料などが挙げられる。
なお、塗工組成物中への導電剤の含有量は、特に限定されるものではない。
塗工組成物の調製方法の一例を以下に挙げる。
水を主体とする水系溶媒に、増粘剤であるDNAを加えて分散させ、さらに、負極活物質を加えて分散させて、水系分散液を得る。該水系分散液に、結着剤を加えて分散させて、スラリー状の塗工組成物を調製する。
さらに、上記の成分の他に、必要に応じて導電剤、その他の増粘剤などを加えて、塗工組成物の調製を行なってもよい。また、粘度を調節するために、水を主体とする水系溶媒をさらに加えて、塗工組成物の調製を行なってもよい。
なお、分散機を用いた際の分散時間は、特に限定されるものではないが、10分以上120分以下であることが好ましい。
DNAの特性を消失させない水系分散液の温度の一例としては、10℃以上100℃以下の温度範囲を挙げることができる。
本発明において用いる塗工方法としては、ダイコート、コンマコートが好ましく用いられる。
乾燥方法としては、例えば、温風乾燥、接触乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、及びフリーズドライ乾燥等の乾燥方法が代表的に挙げられる。また、焼成を行なうことによって乾燥させることもできる。このような乾燥方法を用いて、塗工組成物中に残存する溶媒を除去する。
DNAの特性を消失させない乾燥時の温度の一例としては、80℃以上120℃以下の温度範囲を挙げることができる。
プレス加工としては、例えば、金属ロール、弾性ロール、加熱ロール、ロールプレス、及びシートプレス等を用いて行うことができる。これらの中でも、ロングシート状の電極板を連続的にプレス加工できる観点から、ロールプレス、及びシートプレスが好ましく用いられる。
プレス圧力が小さ過ぎると、負極活物質層内での均質性が得られ難い場合がある。一方、プレス圧力が大き過ぎると、集電体を含めて電極板自体を破壊してしまう場合がある。
負極活物質層は、一回のプレスで所定の厚さにしてもよく、均質性を向上させる目的で数回に分けてプレスしてもよい。
DNAの特性を消失させないプレス加工時の温度の一例としては、20℃以上120℃以下の温度範囲を挙げることができる。
得られた負極活物質層の厚みは、乾燥及びプレス加工後に、好ましくは10μm〜200μm、より好ましくは50μm〜170μmの範囲となるように塗工することが好ましい。
したがって、プレス加工を支障なく行って体積エネルギー密度を向上させることにより、電池の高容量化を図ることができる。以上の工程を経て負極板が作製される。
正極集電体としては、従来から非水電解液二次電池の正極集電体として用いられている材料を用いることができる。
例えば、アルミニウム箔が好ましく用いられる。
なお、正極集電体の厚みは特に限定されるものではないが、通常は5〜50μm程度のものを用いる。
正極活物質としては、例えば、LiMn2O4(マンガン酸リチウム)、LiCoO2(コバルト酸リチウム)、及びLiNiO2(ニッケル酸リチウム)等のリチウム複合酸化物、並びに、TiS2、MnO2、MoO3、及びV2O5等のカルコゲン化合物;等が好ましく用いられる。
例えば、正極活物質、増粘剤、結着剤、導電剤(例えば、グラファイトなど)、必要に応じて分散剤などを有機溶媒または水系溶媒に混合してスラリー状の正極活物質層用塗工組成物を調製する。なお、正極活物質用塗工組成物も、水を主体とする水系溶媒を用いて調製することが好ましい。
そして、調製された正極活物質層用塗工組成物を、正極集電体上に、塗工、乾燥を行ない、正極活物質層を形成して正極板を得る。
非水電解液二次電池の代表例であるリチウムイオン二次電池を作製する際には、電解液として、リチウム塩を有機溶媒に溶解させた非水電解液が用いられる。
リチウム塩としては、例えば、LiClO4、LiBF4、LiPF6、LiAsF6、LiCl、及びLiBr等の無機リチウム塩、並びに、LiB(C6H5)4、LiN(SO2CF3)2、LiC(SO2CF3)3、LiOSO2CF3、LiOSO2C2F5、LiOSO2C4F9、LiOSO2C5F11、LiOSO2C6F13、及びLiOSO2C7F15等の有機リチウム塩;等が代表的に挙げられる。
リチウム塩の溶解に用いられる有機溶媒としては、環状エステル類、鎖状エステル類、環状エーテル類、及び鎖状エーテル類などを例示できる。
前述した方法で得られる負極活物質層を備えた負極集電体は、非水電解液二次電池負極用電極板として用いられる。
非水電解液二次電池は、公知の正極板、及び本発明に係る負極板を、ポリエチレン製多孔質フィルムのようなセパレータを介して巻き回して、電池容器内に収納する。そして、電池容器内に非水電解液を充填することにより組み立てられる。
(DNA水溶液の作製)
先ず、サケの精巣1gをシャーレにのせ、蒸留水10mlを加えながら薬さじを用いて、すり潰した。すり潰した精巣を、フィルターで漉してビーカーに移し、蒸留水30mlを加えた。次いで、このビーカーに、細胞膜を壊すために、界面活性剤(10%SDS溶液)4mlを加え、ゆっくり攪拌した。さらに、タンパク質を除去するために、2M NaCl溶液10mlを加え、ゆっくり攪拌した。
このビーカーを、60℃のお湯で湯煎しながら、粘度が低くなるまでゆっくりと約5分間攪拌した。お湯からビーカーを取り出し、残存しているタンパク質を除去するために、2M NaCl溶液30mlを加え、ゆっくり攪拌しながら、室温程度まで溶液を冷ました。次いで、このビーカーに、攪拌棒を伝わらせて100%エタノールを適量加えることにより、DNAを沈殿させた。DNAは、糸状の白い構造体として現れるため、攪拌棒でかき混ぜることで容易に巻取れる状態で得た。
得られたDNAの濃度が1重量%となるように、蒸留水で濃度調整し、1重量%DNA水溶液を作製した。
負極活物質である平均粒径20μmの人造黒鉛粉末100重量部に、上記にて作製した増粘剤である1重量%DNA水溶液のDNA成分が1.5重量部となるよう加え、分散させて、水系分散液を得た。また必要に応じて蒸留水を加えるなどして粘度調整した。
該DNAの濃度調整をした水系分散液に、結着剤として40%SBR分散液(日本ゼオン社製、BM400B)1.5重量部を加え、分散させて、スラリー状の塗工組成物を調製した。
なお、塗工組成物を調製する際には、水系分散液の温度が20〜80℃の範囲となるように温度調節し、DNAの変性を防止した。
上記にて調製したスラリー状の塗工組成物を、負極集電体である厚さ10μmの銅箔上に、塗工、乾燥を行ない、負極活物質層を形成させた。
このとき、乾燥後の塗工組成物の塗工量が100g/m2となるように負極活物質層を形成させた。
なお、塗布、乾燥を行なう際には、銅箔の温度が80〜120℃の範囲となるように温度調節し、DNAの変性を防止した。
さらに、得られた負極活物質層の密度が1.5g/cm3となるように、ロールプレス機を用いてプレスした後、直径15mmの円盤状に打ち抜き、120℃にて12時間、真空乾燥させて、負極用電極板を作製した。
エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)を体積比1:1で混合した溶媒に、溶質としてLiPF6を加え、該LiPF6の濃度が1mol/lとなるように濃度調整して、非水電解液を作製した。
作用極として上記にて作製した負極用電極板、対極及び参照極として金属リチウム、及びセパレータとして多孔性ポリエチレンシートを用い、上記にて作製した非水電解液を注入して、実施例1の三極式コインセルを作製し、下記充放電試験に供した。
(充放電試験)
上記にて作製した三極式コインセルを、25℃の環境下にて、充放電試験を行なった。
1C(キャパシタンス;放電レートを意味する。なお、1Cとは公称容量値を有する電池を定電流放電して、ちょうど1時間で放電終了となる電流値であり、本実施例1においては6.2mAである。)で参照極に対して0.01Vになるまで充電した。
その後に充電電流が、放電レート1Cの5%以下(すなわち、0.3mA以下)となるまで参照極に対して0.01Vにて定電圧充電を行って充電を完了した。
その後、10分間休止し、放電レートを一定の1Cとして参照極に対して2.0Vになるまで放電した。
横軸を放電容量(放電時間)、縦軸をセル電圧として、1Cにおける充電放電カーブを算出し、1Cにおける放電容量(mAh/g)を求めた。
1サイクル目の充電容量(初期充電容量)、及び1サイクル目の放電容量(初期放電容量)を測定し、それぞれの測定値を負極活物質の重量あたりに換算し、下記計算式1より、初期充放電効率(%)を算出した。
実施例1において増粘剤として用いたDNAを、CMCナトリウム塩(第一工業製薬社製、セロゲン4H)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして比較例1の三極式コインセルを作製し、充放電試験に供した。
実施例1及び比較例1で作製した三極式コインセルの充放電試験の結果を、表1に示す。
表1に記載されている充放電試験の結果より、以下のことが分かる。
比較例1の三極式コインセルは、増粘剤として従来のCMCナトリウム塩を用いて作製した負極用電極板であったことに起因し、初期充放電効率が低かった。
これに対して、実施例1の三極式コインセルは、増粘剤としてDNAを用いて作製した負極用電極板であったことに起因し、初期充放電効率が優れていた。
2 集電体
3 負極活物質層
4 負極活物質層
Claims (5)
- 集電体の少なくとも一面に、
少なくとも負極活物質と、増粘剤としてのDNAと、結着剤と、水を主体とする水系溶媒とを含む塗工組成物を、
該集電体上に塗布することによって形成された負極活物質層を備えることを特徴とする、非水電解液二次電池負極用電極板。 - 前記塗工組成物中の前記負極活物質の含有量を100重量部としたときに、
前記DNAが0.5重量部以上3重量部以下の範囲で、
前記塗工組成物中に含まれていることを特徴とする、請求項1に記載の非水電解液二次電池負極用電極板。 - 前記塗工組成物中の前記負極活物質の含有量を100重量部としたときに、
前記結着剤が0.5重量部以上3重量部以下の範囲で、
前記塗工組成物中に含まれていることを特徴とする、請求項1または2に記載の非水電解液二次電池負極用電極板。 - 前記結着剤がゴム系樹脂を主成分とした材料であることを特徴とする、請求項1乃至3の何れかに記載の非水電解液二次電池負極用電極板。
- 請求項1乃至4の何れかに記載の非水電解液二次電池負極用電極板を用いていることを特徴とする、非水電解液二次電池。
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