JP2011181204A - リチウムイオン二次電池の製造方法及びリチウムイオン二次電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】リチウムイオン二次電池の負極は、負極活物質として表面を親水化した黒鉛粉末と水溶性増粘剤と水分散系バインダとを混練して作製した水性スラリーを負極集電体に塗布して作製され、非水電解液は、プロピレンカーボネートを5〜50体積%と、ジメチルカーボネートと、分子内に不飽和結合を有し、還元重合可能、かつ、リチウムと溶媒和可能な有機物と、を混合した混合液体を95〜5体積%と、を含有する。
【選択図】なし
Description
このようなリチウムイオン二次電池の非水電解液は、非水溶媒と電解質とから構成されている。
また、電解質としては、LiBF4、LiPF6、LiClO4、LiAsF6、LiCF3SO3、LiSiF6などが用いられている。
非特許文献1においては、この電池系の負極と電解液の界面において、カーボネート系電解液の分解により形成されるリチウムイオン導電性の被膜が、電解液のさらなる分解を抑制し、スムーズなリチウムイオンの移動に重要な役割を果たしていると報告されている。
一般に、黒鉛化度の大きい炭素材料は高容量化を実現することができるが、電解質との反応性が大きいという問題がある。したがって、電解質を適切に選択しなければならない。
しかしながら、この場合には高価なクラウンエーテルをかなり多量に加えなければ分解抑制効果が小さく、電池特性も未だ十分ではなく実用上は問題であった。
また、特許文献1には、ビニレンカーボネートを添加することによって、プロピレンカーボネートまたはエチレンカーボネートをベースとした電解液の分解が抑えられることが記載されている。
次に得られた水性スラリーを負極集電体に塗布し負極を作製する。
そして、正極と負極とをセパレータを介して捲回あるいは積層し極板群を作製し、作製した極板群を容器に収容し、プロピレンカーボネートを5〜50体積%と、ジメチルカーボネートと、分子内に不飽和結合を有し、還元重合可能、かつ、リチウムと溶媒和可能な有機物と、を混合した混合液体を95〜5体積%と、を含む非水電解液を注液して封止する。
この場合において、前記有機物として、1〜7wt%のビニレンカーボネートを添加するようにしてもよい。
上記構成によれば、負極を保護する保護被膜の形成(修復)、維持が図れ、充放電サイクル特性を長期に亘って維持することが可能となる。
上記構成によれば、従来のエチレンカーボネートを用いる電解液を使用した場合と同等以上の充放電サイクル特性を実現し、低コスト化が図れる。
さらには、電解液にビニレンカーボネート(VC)を所定量添加することで充放電特性を改善するという効果を奏する。
[1]本発明の原理
本発明者らは、プロピレンカーボネートを主体とする電解液を使用して、従来のエチレンカーボネートを用いる電解液を使用した場合と同等以上のサイクル特性を有するとともに、低温特性を向上し、低コスト化を図るために、鋭意検討した結果、初充電時に黒鉛負極表面へ電気泳動により移動するリチウム−プロピレンカーボネート溶媒和カチオンを負極の黒鉛表面において、円滑に脱溶媒和させることができれば、正常な充放電が可能となるものと仮定した。
そして、円滑に脱溶媒和させるためには、黒鉛表面にリチウムイオンに対してプロピレンカーボネートと同等以上に配位結合可能な物質を隙間無く配置する必要があることが分かった。
そこで、表面を親水性加工した黒鉛(以下、親水化黒鉛という)を用いることとした。
これを改善するために、水性プロセスによる増粘剤やバインダ等中の酸素や窒素原子を新たに付与することにより、プロピレンカーボネートの脱溶媒和作用を十分に有するようになった。
このような方法を採用することにより、電池の作動期間やフロート充電等の有無により、プロピレンカーボネートの脱溶媒和作用の効果を調整する場合には、水性スラリー中の増粘剤やバインダ量の増減で容易に調整できることとなっている。
しかしこの方法では、充放電サイクルを繰返した場合、早期に容量が低下することがわかった。
これは、充電時にリチウム−プロピレンカーボネート溶媒和カチオンが脱溶媒和する際に、一部の完全に脱溶媒和していないリチウムイオンが無理に層間へ入ろうとして、形成した皮膜の一部を破壊することや、放電時にリチウムイオンが黒鉛層間から出る際に被膜の一部を剥がすことが考えられた。
これら一連のリチウムイオン二次電池の製造方法により、環状カーボネートとしてエチレンカーボネートを用いなくても、プロピレンカーボネートを主体とする電解液を使用することが可能となる。
さらに、鎖状カーボネートとして、ジメチルカーボネート(DMC)を加えることにより、低温特性の向上が可能となる。
黒鉛負極の作製では、黒鉛表面の親水化法は特に制限されない。
導電剤としては、カーボンブラックや金属粉等を用いることができる。
水分散系バインダ(水性バインダ)としては、スチレンスタジエンゴムやアクリル酸系の水性ディスパージョンを用いることができる。
不飽和結合を有し、かつ、リチウムイオンと溶媒和可能な有機物としては、ビニレンカーボネート(VC)等のカーボネートの他、不飽和のカルボン酸エステル類、リン酸エステル類、ホウ酸エステル類、およびアルコール類を用いることができる。
電解液低粘度溶媒としては、ジメチルカーボネート(DMC)のほかにエチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の鎖状カーボネート類、1,2−ジメチキシエタン等の鎖状エーテル類、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル等の鎖状エステル類を併用して用いることができる。
ここで、プロピレンカーボネートの添加量が多すぎると(50体積%超)、粘度の上昇により低温特性が低下する問題があり、少なすぎると(5体積%未満)、低温特性向上が見られなくなる。
ここで、ジメチルカーボネートの含有量(添加量)が多すぎると(70体積%超)、誘電率の低下によりレート特性(放電レート特性)が低下する問題があり、少なすぎると(10体積パーセント未満)、粘度の上昇により低温特性向上が見られなくなるからである。
ここで、ビニレンカーボネートの含有量(添加量)が多すぎると(10wt%超)、保護皮膜(SEI)が厚くなりすぎ抵抗値が増大する問題があり、少なすぎると(0.5wt%未満)、保護被膜の形成、維持が十分に行えなくなり、補修機能が見られなくなるからである。
[1]負極作製
本実施例においては、負極として、負極TA〜負極TDの4種の負極を作製した。
[1.1]負極TA:実施例
まず、負極TAを構成する黒鉛の親水化について説明する。
黒鉛の親水化を図るため、ポリウロニド類としてアルギン酸プロピレングリコールエステル(PGA)およびアルギン酸ナトリウム(Arg−Na)、アルギン酸カリウム(Arg−K)を用い、これらを100重量部の純水に溶解した。
黒鉛粒子が沈降した後、上澄みを除去して黒鉛スラリーを乾燥、解砕してポリウロニド(類)が表面に吸着あるいは被覆された黒鉛、すなわち、表面に親水化処理が施された親水化黒鉛を得た。
次に、この親水化黒鉛の粉末100gに対し、水溶性高分子増粘剤としての2%CMC水溶液83.3gおよび水分散系バインダとしてのSBR系水性バインダ7.5gを加え、十分に混練して水性スラリーを得た。
ここで、黒鉛粉末は、水溶性高分子増粘剤であるCMC水溶液と水分散系バインダであるSBR系水性バインダによって被覆されていることを走査型電子顕微鏡(SEM)によって確認した。
負極TAの作製に用いた親水化黒鉛の粉末100gに対し、バインダとしてポリフッ化ビニリデンを10gにN−メチルピロリドンを加えて油性(有機系)スラリーを得た。油性スラリーを厚さ10μmの銅箔製の集電体に塗布し、120℃で10分間乾燥した。その後、ロールプレスで圧延加工して塗膜密度を1.6g/ccとし、負極TBとした。
表面に非晶質カーボンが被覆された一般的なリチウムイオン二次電池用の黒鉛粉末を用い、この黒鉛粉末100gに対し、水溶性高分子増粘剤としての2%CMC水溶液83.3g、水分散系バインダとしてのSBR系水性バインダ7.5gを十分に混練して水性スラリーを得た。水性スラリーを厚さ10μmの銅箔集電体に塗布し、70℃で10分間乾燥した。その後、ロールプレスで圧延加工して塗膜密度を1.6g/ccとし、負極TCとした。
負極TCの作製に用いた黒鉛粉末100gに対し、バインダとしてポリビニリデンフルオライドを10gにN−メチルピロリドンを加えて油性(有機系)スラリーを得た。油性スラリーを厚さ10μmの銅箔製の集電体に塗布し、70℃で10分間乾燥した。その後、ロールプレスで圧延加工して塗膜密度を1.6g/ccとし、負極TDとした。
次に上述した4種類の負極TA〜TDの評価を行う。
[1.5.1]電解液調整
まず、電解液を構成する電解液組成について説明する。
[1.5.1.1]電極評価用電解液
4種類の負極TA〜TDの評価に用いた電極評価用の電解液は、同一のものであり、非水電解質として、プロピレンカーボネート(PC):エチルメチルカーボネート(EMC)=3:7の体積比で混合した混合溶媒に対し、LiPF6を1mol/lの濃度で溶解させた電解液を調製した。
次にプロピレンカーボネート含有量評価用の非水電解質として、以下の表1に示すプロピレンカーボネート(PC):エチルメチルカーボネート(EMC)の体積比でそれぞれ混合した混合溶媒L1〜L8のそれぞれに対し、LiPF6を1mol/lの濃度で溶解させた8種類の電解液を調製した。
続いてジメチルカーボネート(DMC)含有量評価用の非水電解質として、以下の表2に示すプロピレンカーボネート(PC):エチルメチルカーボネート(EMC):ジメチルカーボネート(DMC)の体積比でそれぞれ混合した混合溶媒L11〜L18のそれぞれに対し、LiPF6を1mol/lの濃度で溶解させた8種類の電解液を調製した。
続いて、ビニレンカーボネート含有量評価用の非水電解質として、以下の表3に示す体積比で、プロピレンカーボネート(PC):エチルメチルカーボネート(EMC):ジメチルカーボネート(DMC)を混合した混合溶媒L21〜L28のそれぞれに対し、LiPF6を1mol/lの濃度で溶解させた8種類の電解液を調製し、それぞれに所定の重量パーセント(wt%)のビニレンカーボネート(VC)を混合した。
続いて、リチウムイオン二次電池用負極としての特性を評価するために、以下の方法で電気化学特性評価セルを作製した。
上述した各電極TA〜TDを作用極とし、対極と参照極には、リチウム金属を用いた。
電解液には、上記方法で調整したものをそれぞれ用いた。
セパレータには、ポリオレフィン製の微孔膜、外装体にはポリプロピレンブロックを加工した樹脂製容器を用い、作用極、対極及び参照極に設けた端子の開放端部が外部露出するように電極群を収納封口した。
続いて、プロピレンカーボネート(PC)電解液中における充放電性能を評価(
電気化学特性評価)するために試験を行った。
電極TA〜TDを作用極とし、電解液には、プロピレンカーボネート(PC):エチルメチルカーボネート(EMC)の体積比で3:7で混合した混合溶媒にLiPF6を1mol/lの濃度で溶解させた非水電解質液を使用した。
放電は、1.5Vまで定電流で行った。
2サイクル目〜5サイクル目までは、電位条件は同じで、電流を0.2CAで行った。温度は25℃とした。このとき、初回放電容量(mAh/g)については、各電極の黒鉛の単位質量(g)あたりの容量(mAh)とし、表4に初回放電時の放電容量の結果を示す。
さらにスラリー製法を水性製法にすることにより、増粘剤やバインダなどに含まれる酸素原子や、窒素原子を新たに付与され、十分なプロピレンカーボネート(PC)の脱溶媒和作用を有するため、初回放電容量の増加が見られ、プロピレンカーボネート(PC)の共挿入現象を十分に抑制することが判明した。
次にプロピレンカーボネート(PC)電解液中での充放電性能、低温性能をエチレンカーボネート(EC)電解液と比較し、評価するために試験を行った。
電極TA、TBを作用極として、プロピレンカーボネート(PC)電解液には、プロピレンカーボネート(PC):エチルメチルカーボネート(EMC)=3:7の体積比で混合した混合溶媒に対し、LiPF6を1mol/lの濃度で溶解させたものを用いた。
まず、初期活性化のため、評価セルを5サイクルの活性化充放電に供した。活性化充放電の条件としては、初回充放電は、0.1CAで、充電は、0.0Vに到達するまでは定電流で行い、続いて0.0Vで電流が0.05CAに到達するまで定電位で行った。
2サイクル目〜5サイクル目までは、電位条件は同じで、電流を0.2CAで行った。温度は25℃とした。このとき、初回放電容量(mAh/g)については、各電極の黒鉛の単位質量(g)あたりの容量(mAh)とし、表5に初回放電時の放電容量および低温(−30℃)時の放電容量の結果を示す。
これは、エチレンカーボネート(EC)に比べ、プロピレンカーボネート(PC)野融点が低く、固まりにくいため、低温特性の改善につながったと思われる。
スラリー製法が油性のセルC2、C6でも同じようなことが言える。
しかし、水性スラリー製法と異なり、黒鉛表面の撥水性により黒鉛表面の挿入面への十分な被覆(SEI)が行えないため、容量低下が起きたと推定される。
次に電解液中のプロピレンカーボネート(PC)の含有最適量を検討するための試験を行った。
電極TA、TBを作用極とし、電解液には、表1に示した非水電解質を用いた電解液を使用した。
まず、初期活性化のため、評価セルを5サイクルの活性化充放電に供した。活性化充放電の条件としては、初回充放電は、0.1CAで、充電は、0.0Vに到達するまでは定電流で行い、続いて0.0Vで電流が0.05CAに到達するまで定電位で行った。
2サイクル目〜5サイクル目までは、電位条件は同じで、電流を0.2CAで行った。温度は25℃とした。
続いて、低温評価用の6サイクル目では、2サイクル目〜5サイクル目までと電位条件は同じで、電流を0.2CAで行い、充電温度は、25℃とし、放電温度は、−30℃とした。
これは、プロピレンカーボネート(PC)とリチウムとが溶媒和した状態で黒鉛表面に共挿入し、親水化処理および水性プロセスによって形成された保護被膜(SEI皮膜)を破壊してしまうためと考えられる。
したがって、プロピレンカーボネートの電解液に対する含有割合は、5体積%〜50体積%とする。これは、プロピレンカーボネートの添加量が多すぎると(50体積%超)、粘度の上昇により低温特性が低下する問題があり、少なすぎると(5体積%未満)、低温特性向上が見られなくなるからである。
さらに放電容量を考慮すれば、好ましくは10体積%〜40体積%であった。
今回の範囲において、特に効果が得られたのは、20体積%〜30体積%であり、特に30体積%の場合であった。これにより最適なプロピレンカーボネート(PC)の含有量は、30体積%前後であると考えられ、以下の説明においては、プロピレンカーボネート(PC)の含有量が30体積%の非水電解質を用いて評価を行うものとする。
電解液中のジメチルカーボネート(DMC)含有量の最適量を検討するために試験を行った。
電極A、Bを作用極とし、電解液には、上述した表2に示した非水電解質を用いた電解液を使用した。
ここで、低温特性を考慮した有効なジメチルカーボネート(DMC)の電解液に対する含有割合は、10体積%〜70体積%である。これは、ジメチルカーボネートの含有量(添加量)が多すぎると(70体積%超)、誘電率の低下によりレート特性(放電レート特性)が低下する問題があり、少なすぎると(10体積パーセント未満)、粘度の上昇により低温特性向上が見られなくなるからである。
さらに、好ましくは20体積%〜70体積%であり、この範囲であれば、通常温度での使用であれば、十分に高性能を発揮し、30体積%〜70体積%の範囲であれば、通常温度での使用に限らず、低温環境下においても高性能の放電容量を有するリチウムイオン二次電池として使用することが可能となる。
この結果により、電解液にDMCを30wt%以上使用することで、低温特性が向上することが判明した。
次に表7に示したDMC含有量評価において、最も性能が高かったセルC28を用いて充放電サイクルを繰り返し行った。
しかしながら、セルC28においては、早期に放電容量が低下した。これは、充電時にプロピレンカーボネート(PC)が脱溶媒和する際に一部の完全に脱溶媒和していないリチウムイオンが無理に層間に入り込もうとして、形成した保護被膜(SEI)の一部を破壊したり、放電時にリチウムイオンが黒鉛層からでる際に保護被膜(SEI)の一部を剥がすことなどが考えられる。
ここで、直接黒鉛に接触して電解重合(還元重合)可能な不飽和結合を有し、かつ、リチウムイオンと電解液中で溶媒和可能な有機物としては、ビニレンカーボネート(VC)等のカーボネートの他、不飽和のカルボン酸エステル類、リン酸エステル類、ホウ酸エステル類、およびアルコール類を用いることができる。
まず、電極TA、TBを作用極とし、電解液には、プロピレンカーボネート(PC):エチルメチルカーボネート(EMC)=3:7の体積比で混合した混合溶媒に対し、LiPF6を1mol/lの濃度で溶解させたものを用い、ビニレンカーボネートを0〜11wt%の範囲で添加した表8に示す組成を有する電解液とした。
放電は、1.5Vまで定電流で行った。
2サイクル目〜5サイクル目までは、電位条件は同じで、電流を0.2CAで行った。温度は25℃とした。
続いて、低温評価用の6サイクル目〜30サイクル目までは、2サイクル目〜5サイクル目までと電位条件は同じで、電流を0.5CAで行い、充電温度は、25℃とした。
表8に示すように、低温特性が良好だったビニレンカーボネート(VC)を無添加(VC 0wt%)のセルC28,C36では、充電サイクルを繰り返した場合、早期に容量が低下し、30サイクル目では充放電が不能となった。
この理由は、充電時、プロピレンカーボネートが脱溶媒和する際に一部の完全に脱溶媒和していないリチウムイオンが無理に層間へ入ろうとして形成したSEIの一部を破壊したり、放電時にリチウムイオンが黒鉛層間から出る際にSEIの一部を剥がすことが考えられる。
これは、充放電の繰り返しにおいて、プロピレンカーボネート(PC)を脱溶媒和させるSEIの一部が破壊されてもすぐに補修ができるために黒鉛層間の破壊が完全に抑制されたためと推定される。
また、ビニレンカーボネート(VC)の添加量が11wt%のセルC43及びセルC50において、放電容量の低下が見られるのは、ビニレンカーボネート(VC)の皮膜補修機能が働きすぎてSEIが厚くなりすぎて、抵抗が増加するためであると推定される。
より詳細には、ビニレンカーボネートの電解液に対する含有割合は、0.5wt%〜10wt%であればよい。これは、ビニレンカーボネートの含有量(添加量)が多すぎると(10wt%超)、保護皮膜(SEI)が厚くなりすぎ抵抗値が増大する問題があり、少なすぎると(0.5wt%未満)、保護被膜の形成、維持が十分に行えなくなり、補修機能が見られなくなるからである。
様々な温度環境などを考慮すると、好ましくは1〜7wt%であり、さらにリチウムイオン二次電池の長期的な充放電サイクルを考慮した場合には、より好ましくは2wt%〜5wt%(特に3wt%前後)がよい。
以上の説明のように、親水化された黒鉛のリチウムイオン挿入面に極性が大きくリチウムイオンと配位結合が可能な被膜を隙間無く形成でき、プロピレンカーボネートの脱溶媒和を促進するとともに、被膜を修復可能な有機物を添加して長期の充放電サイクルを維持しつつ、低温特性も向上できるとともに、電解液に安価な材料を用いることができ、ひいては、リチウムイオン二次電池の製造コストの削減が図れる。
Claims (3)
- 正極、負極及び電解液を備えたリチウムイオン二次電池の製造方法において、
負極活物質として表面を親水化した黒鉛粉末と水溶性増粘剤と水分散系バインダとを混練し、前記黒鉛粉末に前記水溶性増粘剤と前記水溶性バインダとを被覆した水性スラリーを作製する工程と、
前記水性スラリーを負極集電体に塗布し負極を作製する工程と、
前記正極と負極とをセパレータを介して捲回あるいは積層し極板群を作製する工程と、
前記極板群を容器に収容し、プロピレンカーボネートを5〜50体積%と、ジメチルカーボネートと、分子内に不飽和結合を有し、還元重合可能、かつ、リチウムと溶媒和可能な有機物と、を混合した混合液体を95〜5体積%と、を含む非水電解液を注液して封止する工程と、
を備えていることを特徴とするリチウムイオン二次電池の製造方法。 - 請求項1記載のリチウムイオン二次電池の製造方法において、
前記有機物として、1〜7wt%のビニレンカーボネートを添加したことを特徴とするリチウムイオン二次電池の製造方法。 - リチウムイオンを吸蔵、放出可能な正極及び負極、電解質、非水電解液を備えるリチウムイオン二次電池であって、
前記負極は、表面を親水化した黒鉛粉末と水溶性増粘剤と水分散系バインダとを混練し、前記黒鉛粉末に前記水溶性増粘剤と前記水溶性バインダと、これらを保持する負極集電体と、で構成され、
前記非水電解液は、プロピレンカーボネートを5〜50体積%と、ジメチルカーボネートと、分子内に不飽和結合を有し、還元重合可能、かつ、リチウムと溶媒和可能な有機物と、を混合した混合液体を95〜5体積%と、を含有する、
ことを特徴とするリチウムイオン二次電池。
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