JP2009084063A - 誘電体磁器およびコンデンサ - Google Patents

誘電体磁器およびコンデンサ Download PDF

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Abstract

【課題】 高誘電率かつ電界−誘電分極特性におけるヒステリシスの小さい誘電体磁器と、それを用いたコンデンサを提供する。
【解決手段】 チタン酸バリウムを構成するバリウム1モルに対して、マグネシウムをMgO換算で0.01〜0.06モルの割合で、イットリウムをYO3/2換算で0〜0.03モルの割合で、マンガンをMnO換算で0.005〜0.03モルの割合で、イッテルビウムをYbO3/2換算で0.045〜0.2モルの割合で含有するとともに、Cukα線を用いたときの誘電体磁器のX線回折チャートにおいて、2θが44.7〜45.5°の範囲に現れる回折ピークの25℃における半値幅(d25)と150℃における半値幅(d150)との差(d25−d150)が0.05以下である。
【選択図】 図1

Description

本発明は、チタン酸バリウムを主成分とする結晶粒子によって形成された誘電体磁器とそれを用いたコンデンサに関する。
現在、モバイルコンピュータや携帯電話をはじめとするデジタル方式の電子機器の普及が目覚ましく、近い将来、地上デジタル放送が全国に展開されようとしている。地上デジタル放送用の受信機であるデジタル方式の電子機器として液晶ディスプレイやプラズマディスプレイなどがあるが、これらデジタル方式の電子機器には多くのLSIが用いられている。
そのため、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイなど、これらデジタル方式の電子機器を構成する電源回路にはバイパス用のコンデンサが数多く実装されているが、ここで用いられているコンデンサは高い静電容量を必要とする場合には高誘電率の積層セラミックコンデンサ(例えば、特許文献1を参照)が採用され、一方、低容量でも温度特性を重視する場合には容量変化率の小さい温度補償型の積層セラミックコンデンサ(例えば、特許文献2を参照)が採用されている。
特開2001−89231号公報 特開2001−294481号公報
しかしながら、特許文献1に開示された高誘電率の積層セラミックコンデンサは、強誘電性を有する誘電体磁器の結晶粒子によって構成されているために比誘電率の温度変化率が大きく、かつ電界−誘電分極特性におけるヒステリシスが大きいという不具合があった。
また、特許文献1に開示された強誘電性の誘電体磁器を用いて形成されたコンデンサでは、電源回路上において電気誘起歪に起因する“音鳴り”現象を発生させやすいことから、プラズマディスプレイなどに使用する際の障害となっていた。
一方、温度補償型の積層セラミックコンデンサは、それを構成する誘電体磁器が、常誘電性であるため電界−誘電分極特性におけるヒステリシスが小さく、強誘電性特有の電気誘起歪が起こらないという利点があるものの、誘電体磁器の比誘電率が低いために蓄電能力が低くバイパスコンデンサとしての性能を満たさないという問題があった。
従って、本発明は、高誘電率かつ電界−誘電分極特性におけるヒステリシスの小さい誘電体磁器と、それを用いたコンデンサを提供することを目的とする。
本発明の誘電体磁器は、チタン酸バリウムを主成分とする結晶粒子と、該結晶粒子間に形成された粒界相とからなる誘電体磁器であって、前記チタン酸バリウムを構成するバリウム1モルに対して、マグネシウムをMgO換算で0.01〜0.06モルの割合で、イットリウムをYO3/2換算で0〜0.03モルの割合で、マンガンをMnO換算で0.005〜0.03モルの割合で、イッテルビウムをYbO3/2換算で0.045〜0.2モルの割合で含有するとともに、Cukα線を用いたときの前記誘電体磁器のX線回折チャートにおいて、2θが44.7〜45.5°の範囲に現れる回折ピークの25℃における半値幅(d25)と150℃における半値幅(d150)との差(d25−d150)が0.05以下であることを特徴とする。
また、本発明のコンデンサは、上記誘電体磁器からなる誘電体層と導体層との積層体から構成されていることを特徴とする。
本発明の誘電体磁器によれば、チタン酸バリウムを主成分とする結晶粒子を有し、マグネシウム、イットリウム、マンガンおよびイッテルビウムを酸化物換算で上記の割合で含有するとともに、これらの成分により得られるCukα線を用いたときの誘電体磁器のX線回折チャートにおいて、2θが44.7〜45.5°の範囲に現れる回折ピークの25℃における半値幅(d25)と150℃における半値幅(d150)との差(d25−d150)を0.05以下とすることにより、従来の常誘電性を有する誘電体磁器に比較して高誘電率を有し、誘電分極の小さい誘電体磁器を得ることができる。
また、本発明のコンデンサによれば、誘電体層として、高誘電率かつ誘電分極の小さい上記誘電体磁器を適用することにより、従来のコンデンサよりも高容量のコンデンサを形成できる。また、このコンデンサを電源回路に用いた場合でも、電気誘起歪に起因する“音鳴り”現象の発生を抑制できる。
本発明の誘電体磁器は、チタン酸バリウムを主成分とし、これにマグネシウム、イットリウム、マンガンおよびイッテルビウムを含有するものであり、その含有量はバリウム1モルに対して、マグネシウムをMgO換算で0.01〜0.06モルの割合で、イットリウムをYO3/2換算で0〜0.03モルの割合で、マンガンをMnO換算で0.005〜0.03モルの割合で、イッテルビウムをYbO3/2換算で0.045〜0.2モルの割合で含有するとともに、Cukα線を用いたときの前記誘電体磁器のX線回折チャートにおいて、2θが44.7〜45.5°の範囲に現れる回折ピークの25℃における半値幅(d25)と150℃における半値幅(d150)との差(d25−d150)が0.05以下であることを特徴とする。
上記組成の範囲であり、かつ25℃と150℃におけるX線回折チャートの半値幅の差(d25−d150)が上記の範囲であると、室温(25℃)における比誘電率が600以上、電界0Vにおける分極電荷が30nC/cm以下の誘電分極の小さい誘電体磁器を形成できる。
図1(a)は、本発明の誘電体磁器を25℃において測定したときの(200)面および(002)面のX線回折図であり、図1(b)は本発明の誘電体磁器を150℃において測定したときの(200)面および(002)面のX線回折図である。図1(a)(b)のX線回折図において矢印は回折ピークの半値幅を意味する。この場合、25℃における半値幅(d25)および150℃における半値幅(d150)は、測定したX線回折図において、2θが44.7〜45.5°の範囲に現れる回折ピークの半値幅の値をブラッグの式に当てはめて求める。このとき(200)面と(002)面との回折ピークが重なっている場合においても、上記2θの範囲の全体の回折ピークを対象にして半値幅を求める。
本発明の誘電体磁器は、結晶構造が正方晶系で強誘電性を示すチタン酸バリウムに、マグネシウム、イットリウム、マンガンおよびイッテルビウムを固溶させるとともに、誘電体磁器のCukα線を用いたときのX線回折チャートにおいて、2θが44.7〜45.5°の範囲に現れる回折ピークの25℃における半値幅(d25)と150℃における半値幅(d150)との差(d25−d150)を0.05以下とすることで、図1(a)(b)に見られるように、25℃および150℃において類似のX線回折パターンを有するとともに、2θが44.7〜45.5°の範囲に大きな回折ピークを有するものとすることができる。
そのため、チタン酸バリウムのキュリー温度(125℃)を挟んで上下の温度において誘電体磁器を構成する結晶粒子の結晶構造が立方晶系を主体としたものとすることができるとともに、正方晶系の結晶相をほとんど含まず、これにより正方晶系の結晶構造に起因する強誘電性が低下して常誘電性を高めることができ、常誘電性が増すことで誘電分極を低減できる。
なお、図2(a)(b)に、チタン酸バリウムに、マグネシウム、イットリウム、マンガンおよびイッテルビウムが固溶した本発明とは異なる誘電体磁器の25℃及び150℃におけるX線回折図を示すように、25℃および150℃において異なるX線回折パターンを有するとともに、25℃および150℃における回折ピークの半値幅の差(d25−d150)が0.05より大きいものとなり、このような誘電体磁器では正方晶性の結晶相が多く存在することから強誘電性が大きくなり、そのため誘電分極を小さくすることができない。
また、本発明の誘電体磁器において、マグネシウム、イットリウムおよびマンガンは、チタン酸バリウムを主成分とする結晶粒子に固溶することにより、チタン酸バリウムの強誘電性を低下させる効果があり、イッテルビウムはチタン酸バリウムを主成分とする結晶粒子に固溶することにより、チタン酸バリウムの強誘電性を低下させるとともに、結晶粒子の粗大化を抑制する働きをもつ。
このように、チタン酸バリウムに、マグネシウム、イットリウム、マンガンおよびイッテルビウムが固溶し、かつ正方晶系の結晶を殆ど含まず、主に立方晶系の結晶からなる本発明の誘電体磁器は、前述したようにチタン酸バリウムのキュリー温度(125℃)の上下の温度範囲において、正方晶系および立方晶系の相転移に起因する結晶構造の変化がほとんど無く、立方晶系を主体とする常誘電体であることから、25℃における比誘電率の変化が小さいものとなる。
ところで、誘電体磁器中におけるマグネシウム、イットリウムおよびマンガンの含有量は、バリウム1モルに対して、マグネシウム(Mg)をMgO換算で0.01〜0.06モルの割合で、イットリウム(Y)をYO3/2換算で0〜0.03モルの割合で、マンガン(Mn)をMnO換算で0.005〜0.03モルの割合で含有することが重要である。
即ち、バリウム1モルに対するマグネシウムの含有量がMgO換算で0.01モルより少ない場合またはマンガンの含有量がMnO換算で0.005モルよりも少ない場合には、誘電体磁器のCukα線を用いたときのX線回折チャートにおいて、2θが44.7〜45.5°の範囲に現れる回折ピークの25℃における半値幅(d25)と150℃における半値幅(d150)との差(d25−d150)が0.1以上になるため、誘電体磁器の比誘電率は高いものの、分極電荷が30nC/cmより大きくなるからであり、また、バリウム1モルに対するマグネシウムの含有量がMgO換算で0.06モルよりも多い場合、イットリウムの含有量がYO3/2換算で0.03モルよりも多い場合、およびマンガンの含有量がMnO換算で0.06モルよりも多い場合には、それぞれ25℃における誘電体磁器の比誘電率が600よりも低くなるからである。
また、チタン酸バリウムに含まれるバリウム1モルに対して、イッテルビウム(Yb)をYbO3/2換算で0.045〜0.2モル含有することが重要である。
即ち、バリウム1モルに対するYbの含有量がYbO3/2換算で0.045モルよりも少ないと、誘電体磁器の比誘電率が高いものの、分極電荷が30nC/cmより大きいものとなり、一方、バリウム1モルに対するYbの含有量がYbO3/2換算で0.2モルよりも多いと、25℃における誘電体磁器の比誘電率が600よりも低くなるためである。
好ましいマグネシウム、イットリウム、マンガンおよびイッテルビウムの含有量としては、バリウム1モルに対して、マグネシウム(Mg)がMgO換算で0.017〜0.023モル、イットリウム(Y)がYO3/2換算で0.0015〜0.01モル、マンガン(Mn)がMnO換算で0.008〜0.03モルであり、かつイッテルビウム(Yb)がYbO3/2換算で0.074〜0.11モルの範囲であるものが良く、このような組成範囲とするとともに、誘電体磁器のCukα線を用いたときのX線回折チャートにおいて、、2θが44.7〜45.5°の範囲に現れる回折ピークの25℃における半値幅(d25)と150℃における半値幅(d150)との差(d25−d150)を0.02以下とすることにより、25℃における誘電体磁器の比誘電率を650以上にでき、かつ電界−誘電分極特性において、0Vでの分極電荷を25nC/cm以下にまで高めることができる。
また、本発明の誘電体磁器は、チタン酸バリウム、マグネシウム、イットリウム、マンガンおよびイッテルビウム以外の成分としては、誘電体磁器に対して2質量%以下の範囲で含んでいても良く、例えば、焼結性を高めるために酸化珪素等の焼結助剤を含有することができる。
次に、本発明の誘電体磁器の製法について説明する。
先ず、素原料粉末として、純度がいずれも99%以上のBaCO粉末、TiO粉末、MgO粉末、Y粉末、MnCO粉末およびYb粉末を用いる。これらの素原料粉末を、チタン酸バリウムを構成するバリウム1モルに対して、MgO粉末を0.01〜0.06モルの割合で、Y粉末をYO3/2換算で0〜0.03モルの割合で、MnCO粉末を0.005〜0.03モルの割合で、Yb粉末をYbO3/2換算で0.045〜0.2モルの割合で配合する。
次に、上記した素原料粉末の混合物を湿式混合する。このとき分散剤としてポリアクリル酸系分散剤、ポリアクリル酸アンモニウム系分散剤、ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルのグラフト化物系分散剤等から選ばれる1種を用い、また溶剤として、水、エタノール、およびトルエンの混合溶液から選ばれる1種を選択して用いることにより、混合粉末の分散性を高めることができる。また、仮焼粉末の粉砕にビーズミル装置を採用することにより仮焼粉末の組成や粒径の均一性を高めることができる。
次に、湿式混合した混合粉末を乾燥させた後、温度900〜1130℃の温度範囲で仮焼し、粉砕することにより、主成分であるチタン酸バリウムに対して、マグネシウム、イットリウム、マンガンおよびイッテルビウムが固溶し、結晶構造が主として立方晶系を示す仮焼粉末を作製する。この場合、仮焼温度を900℃以上にすると、未反応物が少なく、均質で立方晶性の高い仮焼粉末が得られるという利点があり、一方、仮焼温度が1150℃以下であると、高い焼結性ととともに、粗大粒の生成が少なく、後述するような立方晶性の高い微粒の仮焼粉末を得ることができるためである。
図3は、仮焼温度を変化させたときの本発明の誘電体磁器を形成するための仮焼粉末のX線回折図である。なお、このX線回折パターンの仮焼粉末の組成は、チタン酸バリウムを構成するバリウム1モルに対して、MgO粉末をMgO換算で0.02モル、Y粉末をYO3/2換算で0.01モル、MnCO粉末をMnO換算で0.01モルおよびYb粉末をYbO3/2換算で0.074モル含むものである。
また、図4は、主成分であるチタン酸バリウムに対して、マグネシウム、イットリウムおよびマンガンのみを、図3に示した仮焼粉末に含まれる量と同量添加して、仮焼温度を変化させたときの仮焼粉末のX線回折図である。すなわち、イッテルビウムは含んでいない仮焼粉末を示す。
図3に示すように、チタン酸バリウムに、マグネシウム、イットリウム、マンガンおよびイッテルビウムを所定量添加した仮焼粉末は、仮焼温度が1025℃〜1100℃において、立方晶系のほぼ単一ピークを示し、仮焼温度を1250℃まで高めても正方晶系への変化が少ないものとなっている。このような仮焼粉末はチタン酸バリウムに対して、Ybなどの添加元素が多く固溶しているため、焼結体である誘電体磁器を製造するために、仮焼温度よりも高い温度で加熱しても正方晶系の結晶相の生成が少なく、このために図1(a)(b)に示したようなキュリー温度を境にしたときの結晶構造の変化の少ない立方晶系の誘電体磁器を容易に得ることが可能となる。
これに対して、図4に示した仮焼粉末は、仮焼温度が1100℃までは主として立方晶系であるが、仮焼温度が1250℃になると正方晶系に変化している。
このように、主成分であるチタン酸バリウムに対してイッテルビウムが固溶していない仮焼粉末では、これを用いて本焼成して誘電体磁器を作製した場合、立方晶系の結晶相とともに多くの正方晶系の結晶相が析出する傾向があるため常誘電性を維持することが困難になる恐れがある。また、このような事象は主成分であるチタン酸バリウムに対してイッテルビウムが十分に固溶していない仮焼粉末においても同様に発生し、本焼成して誘電体磁器を得ると正方晶系の結晶相の生成が多くなり、図2(a)(b)に示したようなキュリー温度を境にしたときの結晶構造の変化の大きい誘電体磁器となる。
なお、図4に示した仮焼粉末のX線回折図は、仮焼粉末を構成する成分のうちイッテルビウムを含まないものであるが、イッテルビウム以外に、マグネシウムまたはマンガンを含まない、あるいはチタン酸バリウムに十分に固溶していない場合にも、図4と同じように、仮焼温度が1250℃以上になると正方晶系に変化する傾向があるため、この場合も、誘電体磁器として常誘電性を維持することが困難である。
また、本発明では、仮焼粉末の平均粒径を0.1μm以下となるようにして、これを焼結して粒成長させることにより常誘電性で高誘電率の誘電体磁器を得ることが可能になる。
粉砕した仮焼粉末をペレット状に成形し、大気中もしくは還元雰囲気中にて、1150℃以上、1250℃以下の温度範囲で本焼成を行うことにより本発明の誘電体磁器を得ることができる。ここで、本焼成の温度を1150℃以上、1250℃以下とするのは、焼成温度が1150℃よりも低い場合には誘電体磁器を十分に緻密化することができず、誘電体磁器の密度が低いものとなり、未反応物が多く存在するため、焼成後にほとんど立方晶系からなる誘電体磁器を得ることが困難となるからであり、焼成温度が1250℃よりも高い場合には、誘電体磁器中に正方晶系の結晶相が多くなる傾向があり、また、結晶粒子が粒成長しすぎてしまうために、後の焼成において反応性が低下し、緻密化が困難になるからである。
また、誘電体磁器の焼結性を高めるために、仮焼粉末100質量部に対して、焼結助剤としてSiOを主成分として含むガラス粉末を0.5〜2質量部の割合で混合しても構わない。
図5は、本発明のコンデンサの例を示す断面模式図である。本発明の誘電体磁器を用いて、以下のようなコンデンサを形成できる。
本発明のコンデンサは、コンデンサ本体10の端部に外部電極12が設けられたものであり、また、コンデンサ本体10は誘電体層13と内部電極層である導体層14とが交互に積層された積層体から構成されている。そして、誘電体層13は上述した本発明の誘電体磁器によって形成されることが重要である。
このような本発明のコンデンサによれば、誘電体層13として、高誘電率かつ安定な比誘電率の温度特性を示し、自発分極の小さい上記誘電体磁器を適用することにより、従来のコンデンサよりも高容量かつ容量温度特性の安定なコンデンサを形成できる。その為、このコンデンサを電源回路に用いた場合、電気誘起歪に起因する“音鳴り”現象の発生を抑制できる。
なお、導体層14は高積層化しても製造コストを抑制できるという点でNiやCuなどの卑金属が望ましく、特に、本発明のコンデンサを構成する誘電体層13との同時焼成を図るという点でNiがより望ましい。この導体層14の厚みは平均で1μm以下が好ましい。
また、このようなコンデンサを作製する場合には、上述した混合粉末をグリーンシートに成形するとともに、導体層14となる導体ペーストを調製して前記グリーンシートの表面に印刷した後積層し、焼成して積層体1を形成する。しかる後、積層体1の端面にさらに導体ペーストを印刷して焼成し、外部電極12を形成することによりコンデンサを得ることができる。なお、グリーンシートを形成するための混合粉末としては、仮焼粉末に対して焼結助剤としてSiOを主成分として含むガラス粉末を0.5〜2質量部の割合で混合したものを用いることが好ましく、このように焼結助剤を含有させることにより内部電極層である導体層14と同時に焼成することが可能となる。
以下、本発明の誘電体磁器および本発明外の誘電体磁器を作製し、比誘電率及び分極電荷の測定を行なった。
まず、いずれも純度が99.9%のBaCO粉末、TiO粉末、MgO粉末、Y粉末、MnCO粉末およびをYb粉末を用意し、表1に示す割合で調合し混合粉末を調製した
次に、混合粉末を温度1000℃にて仮焼して仮焼粉末を作製した後、得られた仮焼粉末を平均粒径が0.1μmとなるように粉砕した。この後、SiO−B(モル比で60:40)組成のガラス粉末を仮焼粉末100質量部に対して、1質量部の割合で混合した。この後、混合粉末を造粒し、直径16.5mm、厚さ1mmの形状のペレット状に成形した。
次に、各組成のペレットを10個ずつ、H−Nの混合ガス雰囲気中にて、表1に示す温度で焼成して試料となる誘電体磁器を製作した。
誘電体磁器を構成する結晶粒子の平均結晶粒径は誘電体磁器の破断面を研磨した後、走査型電子顕微鏡を用いて内部組織の写真を撮り、その写真に映し出されている結晶粒子の輪郭を画像処理し、各粒子の面積を求め、同じ面積をもつ円に置き換えたときの直径を算出し、算出した結晶粒子約50個の平均値として求めた。写真の倍率は約30000倍とし、観察点数は各試料2点とし、その平均値より求めた。
また、焼成後の試料の表面にインジウム・ガリウムの導体層を印刷し、LCRメーター4284Aを用いて周波数1.0kHz、入力信号レベル1.0Vにて静電容量を測定し、試料の直径と厚みおよび導体層の面積から比誘電率を算出した。これらの測定は試料数を各10個とし、その平均値より求めた。
また、得られた誘電体磁器について電気誘起歪の大きさ(分極電荷)を誘電分極の測定によって求めた。この場合、電圧を±1250Vの範囲で変化させた時の、0Vにおける電荷量(残留分極)の値で評価した。
次に、X線回折装置により得られた誘電体磁器の結晶構造の同定を行った。X線管球はCukαとし、走査角度はチタン酸バリウムの(200)面および(002)面のある角度(2θ=44〜46°)とし、室温(25℃)および150℃にて測定し、(002)面および(200)面の回折ピークが現れた、2θが44.7〜45.5°の範囲の25℃における回折ピークの半値幅(d25)と150℃における回折ピークの半値幅(d150)との差(d25−d150)を求めた。測定数は各試料3個とし、その平均値より求めた。この場合、25℃における半値幅(d25)および150℃における半値幅(d150)は、測定したX線回折図の(002)面の回折ピークの2θで表したときの半値幅の値をブラッグの式に当てはめて求めた。
さらに、試料の組成分析はICP分析もしくは原子吸光分析により行った。この場合、得られた誘電体磁器を硼酸と炭酸ナトリウムと混合し溶融させたものを塩酸に溶解させて、まず、原子吸光分析により誘電体磁器に含まれる元素の定性分析を行い、次いで、特定した各元素について標準液を希釈したものを標準試料として、ICP発光分光分析にかけて定量化した。また、各元素の価数を周期表に示される価数として酸素量を求めた。この場合、作製した試料の組成は表1に示す組成に一致した。
表1に組成と焼成温度を、表2に焼成後の誘電体磁器の特性の結果をそれぞれ示す。なお、試料No.33は、試料No.4の組成について、Ybを除く組成について、温度1000℃にて仮焼粉末を調製し、粉砕して得られた仮焼粉末に対して、Yb粉末を試料No.4に示す量だけ添加して焼成した試料である。これも本発明の誘電体磁器と同様の評価を行った。
Figure 2009084063
Figure 2009084063
表1、2の結果から明らかなように、本発明の誘電体磁器である試料No.3〜8、10〜15、18〜22、24〜28、30、31では、Cukα線を用いたときの誘電体磁器のX線回折チャートにおいて、2θが44.7〜45.5°の範囲に現れる回折ピークの25℃における半値幅(d25)と150℃における半値幅(d150)との差(d25−d150)が0.05以下となり、25℃における比誘電率が600以上であり、分極電荷が30nC/cm以下であった。
特に、マグネシウムを0.017〜0.023モル、イットリウムをYO3/2換算で0.0015〜0.01モル、マンガンをMnO換算で0.008〜0.03モル、イッテルビウムをYbO3/2換算で0.074〜0.11モルとした試料No.4〜7、12〜14、19〜20、25〜28、30、31では、Cukα線を用いたときの誘電体磁器のX線回折チャートにおいて、2θが44.7〜45.5°の範囲に現れる回折ピークの25℃における半値幅(d25)と150℃における半値幅(d150)との差(d25−d150)が0.02以下となり、25℃における比誘電率が650以上であり、分極電荷が25nC/cm以下であった。
これに対して、本発明の範囲外の試料では、25℃における比誘電率が600未満であるか、または、Cukα線を用いたときの誘電体磁器のX線回折チャートにおいて、2θが44.7〜45.5°の範囲に現れる回折ピークの25℃における半値幅(d25)と150℃における半値幅(d150)との差(d25−d150)が0.05より大きいものは、誘電分極にヒステリシスがあり、分極電荷が30nC/cmより大きかった。
(a)は、本発明の誘電体磁器を25℃において測定したときの(200)面または(002)面のX線回折図であり、(b)は本発明の誘電体磁器を150℃において測定したときの(200)面または(002)面のX線回折図である。 (a)は、本発明外の誘電体磁器を25℃において測定したときの(200)面または(002)面のX線回折図であり、(b)は本発明外の誘電体磁器を150℃において測定したときの(200)面または(002)面のX線回折図である。 仮焼温度を変化させたときの本発明の誘電体磁器を形成するための仮焼粉末のX線回折図である(試料No.4)。 主成分であるチタン酸バリウムに対して、マグネシウム、イットリウムおよびマンガンを含み、仮焼温度を変化させたときの仮焼粉末のX線回折図である。(試料No.33)。 本発明のコンデンサの例を示す断面模式図である。
符号の説明
10 コンデンサ本体
12 外部電極
13 誘電体層
14 導体層

Claims (2)

  1. チタン酸バリウムを主成分とする結晶粒子と、該結晶粒子間に形成された粒界相とからなる誘電体磁器であって、前記チタン酸バリウムを構成するバリウム1モルに対して、マグネシウムをMgO換算で0.01〜0.06モルの割合で、イットリウムをYO3/2換算で0〜0.03モルの割合で、マンガンをMnO換算で0.005〜0.03モルの割合で、イッテルビウムをYbO3/2換算で0.045〜0.2モルの割合で含有するとともに、Cukα線を用いたときの前記誘電体磁器のX線回折チャートにおいて、2θが44.7〜45.5°の範囲に現れる回折ピークの25℃における半値幅(d25)と150℃における半値幅(d150)との差(d25−d150)が0.05以下であることを特徴とする誘電体磁器。
  2. 請求項1に記載の誘電体磁器からなる誘電体層と導体層との積層体から構成されていることを特徴とするコンデンサ。
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