[実施の形態1]
実施の一形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。ここでは、変動する部材(変動部)としてミラー部を例に挙げるとともに、このミラー部を変動させることで光を反射させスキャン動作を行うマイクロスキャナとして、光スキャナを例に挙げる。
なお、理解を容易にすべく、平面図であってもハッチングを付している。また、便宜上、部材符号・ハッチングを省略する場合もあるが、かかる場合、他の図面を参照するものとする。また、図面上での黒丸は紙面に対し垂直方向を意味する。
図14は光スキャナLSの平面図である。そして、図1は図14での破線部分の拡大図であり、図2はミラー部MRの拡大図である。光スキャナLSは、固定枠FM、ミラー部MR、主軸部MA(MA1・MA2)、蛇行部SK(SK1・SK2)、保持部HD(HD1・HD2)、梁部BM(BM1・BM2)、および圧電素子PE(PEa〜PEd)、を含む。
固定枠FMは、図14に示すように、ミラー部MR、主軸部MA、蛇行部SK、保持部HD、および梁部BMを囲む部材である。詳説すると、変形可能なシリコン基板等(基体BS)がエッチングされることで、ミラー部MR、主軸部MA、蛇行部SK、保持部HD、および梁部BMが生じた場合に、これら部材を囲むように残った基体BSが固定枠FMとなる。
ミラー部MRは、光源等からの光を反射させる部材である。かかるミラー部MRは、図14に示すような平面視で矩形状の基体BSに、開孔H(第1開孔H1・第2開孔H2)を並べて形成することで生じる島状部分(第1開孔H1と第2開孔H2との間に位置する残部)である。そして、このミラー部MRは、図2に示すように、可動枠11、ミラー片12、ミラー片トーションバー13(13a・13b)、および、可動枠トーションバーT11(T11a・T11b)を含む。
なお、以降では、第1開孔H1と第2開孔H2とが並ぶ方向をY方向と称し、第1開孔H1側のY方向をY方向のプラス{Y(+)}、この+方向に対する逆方向をY方向のマイナス{Y(−)}とする。さらに、ミラー片12の中心からY方向に伸びる方向をY軸と称する。
可動枠11は、ミラー片12を囲む部材である(例えば、枠状部材である)。詳説すると、可動枠11は、枠内にミラー片12を位置させつつ、ミラー片12から延びるミラー片トーションバー13(13a・13b)につながる。また、可動枠11は、主軸部MA(MA1・MA2)によって挟まれることで支えられる。
ミラー片12は、可動枠11内にて並列する開孔H(第3開孔H3・第4開孔H4)によって生じる島状部分(第3開孔H3・第4開孔H4同士の間に位置する残部)に、蒸着法やスパッタ法等によりアルミニウム等の金属を反射膜として貼り付けることで形成される。つまり、ミラー片12は、光を反射させる片材である。
ミラー片トーションバー13(13a・13b)は、ミラー片12の外縁において対向する一端と他端とから外側に延びることで、そのミラー片12を挟持しつつ揺動可能に支える部材である。かかるミラー片トーションバー13は、ミラー片12に接する第3開孔H3・第4開孔H4によって、Y方向に延びる基体BSの一部分を棒状にすることで形成される。そして、このミラー片トーションバー13は、ねじれることで、ミラー片12を揺動させる。
可動枠トーションバーT11(T11a・T11b)は、主軸部MAにつながる可動枠11の端に位置するY軸方向に延びるスリットSTと、第1開孔H1・第2開孔H2との間での基体BSの残部で形成される棒状の部材である。そして、かかる可動枠トーションバーT11は、ねじれることで、可動枠11を傾ける。
続いて、主軸部MAについて説明する。図2に示すように、主軸部MA(第1主軸部MA1・第2主軸部MA2)は、ミラー部MRの外縁において対向する一端と他端とから外側に延びることで、そのミラー部MRを挟持して支える部材である。かかる主軸部MAは、ミラー部MRに接する第1開孔H1・第2開孔H2によって、基体BSの一部分を棒状にすることで形成される。
なお、この棒状の基体BSの一部分(すなわち主軸部MA1・MA2)は、Y方向に対して交差する方向(例えば直交方向)に延びる。そこで、この方向をX方向と称し、第2主軸部MA2側のX方向をX方向のプラス{X(+)}、この+方向に対する逆方向をX方向のマイナス{X(−)}とする。さらに、主軸部MAに重畳してX方向に伸びる方向をX軸(主軸方向/X軸方向)と称する。
蛇行部SK(SK1・SK2)は、図14および図1に示すように、主軸部MA(MA1・MA2)と保持部HD(HD1・HD2)との間に介在することで、両者(主軸部MA・保持部HD)をつなげる部材である。かかる蛇行部SKは、基体BS上にて並列するスリットST・・・間の残部で形成されるトーションバーT21を折り返すようにつなげることで蛇行状となる(なお、トーションバーT21を折り返す部分は、折り返し片22と称する)。
そして、この蛇行部SKに含まれるトーションバーT21は、保持部HDの変形(撓み変形等)をねじれ変形(回転トルク)に変化させて主軸部MAに伝達させることで、主軸部MAにつながるミラー部MRを回動させる。
なお、折り返し片22を介してつながることで一連状かつ蛇行状になったトーションバーT21は、回転トルクを効率よく主軸部MAにつたえるために、主軸部MAと同方向に延びる。すなわち、トーションバーT21は、主軸部MAの延び方向と同方向に延びるとともに、その延び方向に対して交差する方向(例えばY軸方向)に並列する。
保持部HD(第1保持部HD1・第2保持部HD2)は、図14に示すように、蛇行部SKを介して主軸部MAを保持すること(蛇行部SKを介して主軸部MAにつながること)で、ミラー部MRも保持する部材である。かかる保持部HDは、Y方向に延びつつかつ並列する開孔H(第5開孔H5・第6開孔H6、および第7開孔H7・第8開孔H8)で第1開孔H1・第2開孔H2を挟持した場合に生じる基体BSの残部で形成される。
すなわち、第5開孔H5・第6開孔H6と第1開孔H1・第2開孔H2との間に位置する基体BSの残部と、第7開孔H7・第8開孔H8と第1開孔H1・第2開孔H2との間に位置する基体BSの残部とが、第1保持部HD1と第2保持部HD2とになる。
なお、このような残部が保持部HDになることから、保持部HDは、固定枠FMの一端と別端とに架け渡る。また、このような残部から成る保持部HDは、Y方向に延びる形状(線状)となるので撓みやすい(すなわち、Y方向は保持部HDの延び方向である)。
梁部BM(BM1・BM2)は、主軸部MAと固定枠FMとの間に介在することで、主軸部MAにつながるミラー部MRを固定枠FMに引きつける部材である。かかる梁部BMは、第5開孔H5・第6開孔H6(および第7開孔H7・第8開孔H8)における隅から進出する直線状のスリットSTで、X方向に延びる基体BSの一部分を棒状にすることで形成される。
そして、この梁部BMは、効率よく主軸部MA(ひいてはミラー部MR)を引きつけるために、図1に示すように、主軸部MAの端(ミラー部MRにつながっていない端)につながり、かつ主軸部MAの延び方向と同方向に延びる。
圧電素子PE(PEa〜PEd)は、電圧を力に変換する素子であり、分極処理された圧電体PB(PBa〜PBd)と、この圧電体PBを挟持する電極EE1・EE2(EE1a〜EE1d・EE2a〜EE2d)とを含む(後述の図3A〜図5D参照)。そして、この圧電素子PEが保持部HDの面上に貼り付けられることで、ユニモルフ部(アクチュエータ)YMが形成される。詳説すると、圧電素子PEにおける一方の電極(第1電極)EE1と、保持部HDの一面とが貼り合うことで、ユニモルフ部YM(YMa〜YMd)が形成される。
特に、図14に示すように、圧電素子PEa・PEbは、第1主軸部MA1を挟持するようにして、第1保持部HD1に貼られ、圧電素子PEc・PEdは第2主軸部MA2を挟持するようにして、第2保持部HD2に貼られる。そのため、圧電素子PEa・PEbおよび圧電素子PEc・PEdにおける圧電体PB(PBa〜PBd)の伸縮変形に応じて、保持部HDも変形(撓み変形/曲げ変形)する。光スキャナLSでは、この保持部HDの変形を利用して、ミラー部MRが主軸部MA(主軸方向)を基準に正逆回転方向に傾く(揺動可能となる)。
以上のような光スキャナLSは、主軸部MAを基準、または副軸部(ミラー片トーションバー)T11を基準にミラー部MRを回動させる。そこで、まず、主軸部MAを基準にした回動動作、すなわちX軸回りのミラー部MRの回動動作について、図3A〜図3Cを用いながら説明する。図3A〜図3Cは、図14および図1におけるA−A’線矢視断面図である(なお、図3A〜図3Cでは、便宜上、図1での点線で囲む折り返し片22を点線で図示する)。
なお、主軸方向周りの一方向{X(+)からX(−)に向いて時計回りの回転}を正回転、正回転に対して逆方向の回転(反時計回りの回転)を逆回転とし、図3Aに無回転状態での蛇行部SK1(SK1a・SK1b)、図3Bに正回転状態での蛇行部SK1、図3Cに逆回転状態での蛇行部SK1を示す(正回転方向をP、逆回転方向をRで図示)。
また、X方向およびY方向に対して垂直な方向をZ方向(撓み方向)として図示し、便宜上、光を受光するミラー部MRの側をZ方向のプラス{Z(+)}、この+方向に対する逆方向をZ方向のマイナス{Z(−)}とする)。さらに、X軸とY軸との交点からZ方向に伸びる方向をZ軸と称する。
なお、以降では、2つ有る保持部HD(第1保持部HD1・第2保持部HD2)の一方のみについて説明するが、この一方の第1保持部HD1がミラー部MRを正回転または逆回転させようとしている場合、残りの第2保持部HD2も同じようにしてミラー部MRを正回転または逆回転させる。
図3Aに示すように、圧電素子PE(PEa・PEb)には、第1電極EE1a・EE1bと、この第1電極EE1a・EE1bに圧電体PBa・PBbを介して対向する第2電極EE2a・EE2bとが含まれる。そして、この第1電極EE1aおよび第2電極EE2a(第1電極EE1bおよび第2電極EE2b)との間に、分極反転を起こさせない範囲で±の電圧(交流電圧)が印加されることで圧電体PBa・PBbが伸縮し、その伸縮に応じてユニモルフ部YMa・YMbが撓む。
具体的には、ミラー部MRがX軸回りに正回転する場合、圧電体PBaを伸ばす電圧が印加されるとともに、圧電体PBbを縮ませる電圧(圧電体PBaに印加される電圧とは逆位相の電圧)が印加される。
このような電圧が印加されると、図3Bに示すように、圧電体PBaが伸びることで第1電極EE1aに貼り付けられた第1保持部HD1の部分(保持片HD1a)が、Z(+)側を凸にして撓み、保持片HD1aの蛇行部SK1a側がZ(−)に垂れ下がる。一方、圧電体PBbが縮むことで第1電極EE1bに貼り付けられた第1保持部HD1の部分(保持片HD1b)が、Z(−)側を凸にして撓み、保持片HD1bの蛇行部SK1b側がZ(+)に跳ね上がる。
そして、このような保持片HD1a・HD1bの撓みが生じると、その撓む力は蛇行部SK1a・SK1b)を介して第1主軸部MA1に伝わる。詳説すると、保持片HD1aにおける撓む力は、蛇行部SKaのトーションバーT21にてねじれ(回転トルク)となり、その蛇行部SK1aにつながる第1主軸部MA1のY(+)側を押し下げる。一方、保持片HD1bにおける撓む力は、蛇行部SK1bのトーションバーT21にてねじれとなり、第1主軸部MA1のY(−)側を押し上げる。その結果、第1主軸部MA1が正回転する。
逆に、ミラー部MRがX軸回りに逆回転する場合、図3Cに示すように、圧電体PBaを縮ませる電圧が印加されるとともに、圧電体PBbを伸ばす電圧が印加される。
このような電圧が印加されると、圧電体PBaが縮むことで第1電極EE1aに貼り付けられた保持片HD1aが、Z(−)側を凸にして撓み、保持片HD1aの蛇行部SK1a側がZ(+)に跳ね上がる。一方、圧電体PBbが伸びることで第1電極EE1bに貼り付けられた保持片HD1bが、Z(+)側を凸にして撓み、保持片HD1bの蛇行部SK1b側がZ(−)に垂れ下がる。
そして、このような保持片HD1a・HD1bの撓みが生じると、蛇行部SK1aのトーションバーT21のねじれが、第1主軸部MA1のY(+)側を押し上げるとともに、蛇行部SK1bのトーションバーT21のねじれが、第1主軸部MA1のY(−)側を押し下げる。その結果、第1主軸部MA1が逆回転する。つまり、第1主軸部MA1のY(+)側・Y(−)側が正回転の場合と逆に変位することで、第1主軸部MA1が逆回転する。
以上のようにして、ミラー部MRがX軸回りに回動(正回転・逆回転)する場合、蛇行部SKにおける各トーションバーT21は、軸方向(バー軸方向)を基準に簡単にねじれる。そして、そのねじれは回転トルクとなって、主軸部MAにつたわる。そのため、トーションバーの無い光スキャナに比べて、トーションバーT21を有する光スキャナLSは、ミラー部MRを大きく回動させられる。
つまり、ミラー部MRのX軸回りの回動には、主軸部MAを回動させやすいトーションバーT21のねじれ変形と、保持片HD1a・HD1b(すなわち保持部HD)の撓みとが利用される。そのため、このような主軸部MAの回動量(正回転の回転角または逆回転の回転角)は、保持部HDの撓みのみで主軸部MAを回動させる場合の回動量に比べて大きくなる(別表現すると、主軸部MAの回動量が効率よく確保できる)。
また、トーションバーT21を複数含む蛇行部SKは、スリットSTによって、主軸部MAに比較的近くに形成される。このようになっていると、トーションバーT21のねじれが効率よく主軸部MAにつたわる。そのため、例えば保持部HDの一定の撓み量であっても、主軸部MAに比較的近い場合のトーションバーT21のほうが、主軸部MAに対して比較的離れているトーションバーに比べて回転角を大きくできる。
つまり、トーションバーT21の存在、およびトーションバーT21が主軸部MAに比較的近くに位置することに起因して、ミラー部MRは主軸部MAを基準に比較的大きく回動し、回転角(偏向角)を大きくできる。別表現すると、ユニモルフ部YMの撓み変形が比較的小さくても、トーションバーT21の存在およびトーションバーT21が主軸部MAに比較的近くに位置することに起因して、ミラー部MRが比較的大きく偏向する。
なお、回転角とは、ユニモルフ部YMの影響を受けることなく不動状態にあるミラー部MRと、変動するミラー部MRとの間に生じる角度のことである。
次に、副軸部(ミラー片トーションバー)13を基準にしたY軸回りの回動動作について、図4A〜図4D、図5A〜図5D、および図6A・図6Bを用いながら説明する。図4A・図4B、および図5A・図5Bは、図14および図1におけるA−A’線矢視断面図であり、図4C・図4D、および図5C・図5Dは、図14のB−B’線矢視断面図である。また、図6A・図6Bは、図2のC−C’線矢視断面図である。
そして、図4A〜図4Dおよび図6AはY軸方向を基準とする正回転の動作を示す一方、図5A〜図5Dおよび図6BはY軸方向を基準とする逆回転の動作を示す。なお、Y軸を基準とする正回転とは、Y(+)からY(−)に向いて時計回りの回転であり、逆回転は正回転に対して逆方向となる回転のことである(正回転方向をP、逆回転方向をRで図示)。
ミラー部MRがY軸回りに正回転する場合、図4Aに示すように、第1保持部HD1の圧電体PBa・PBbを伸ばす電圧が印加される。このような電圧が印加されると、伸長する圧電体PBa・PBbによって、第1電極EE1a・EE1bに貼り付けられた保持片HD1a・HD1bが、まずZ(+)側を凸にして撓みつつ、全体的にZ(−)側に落ち込む。その後、図4Bに示すように、保持片HD1a・HD1bの撓みに応じて、蛇行部SK1(SK1a・SK1b)に含まれるトーションバーT21がねじれ、そのねじれは蛇行部SK1につながる第1主軸部MA1をZ(−)側に落とし込む。
一方で、図4Cに示すように、第2保持部HD2(第2保持片HD2c・HD2d)の圧電体PBc・PBdを縮ませる電圧が印加される。このような電圧が印加されると、収縮する圧電体PBc・PBdによって、第1電極EE1c・EE1dに貼り付けられた保持片HD2c・HD2dが、まずZ(−)側を凸にして撓みつつ、全体的にZ(+)側に跳ね上がる。その後、図4Dに示すように、保持片HD2c・HD2dの撓みに応じて、蛇行部SK2(SK2c・SK2d)に含まれるトーションバーT21がねじれ、そのねじれは蛇行部SK2につながる第2主軸部MA2をZ(+)側に跳ね上げる。
すると、図6Aに示すように、Z(−)側に落ち込む第1主軸部MA1およびZ(+)側に跳ね上がる第2主軸部MA2によって挟持されている可動枠11は傾く。このように可動枠11が傾くと、この可動枠11に備わっているミラー片12も傾く。
そして、この傾きはY軸からほぼ等間隔で乖離している第1主軸部MA1および第2主軸部MA2の変位で生じる傾きである。そのため、Y軸を基準にして考えると、ミラー片12はこのY軸を基準にして正回転することになる。
次に、ミラー部MRがY軸回りに逆回転する場合について説明する。かかる場合、図5Aに示すように、第1保持部HD1の圧電体PBa・PBbを縮ませる電圧が印加される。このような電圧が印加されると、収縮する圧電体PBa・PBbによって、第1電極EE1a・EE1bに貼り付けられた保持片HD1a・HD1bが、まずZ(−)側を凸にして撓みつつ、全体的にZ(+)側に跳ね上がる。その後、図5Bに示すように、保持片HD1a・HD1bの撓みに応じて、蛇行部SK1(SK1a・SK1b)に含まれるトーションバーT21がねじれ、そのねじれは蛇行部SK1につながる第1主軸部MA1をZ(+)側に跳ね上げる。
一方で、図5Cに示すように、第2保持片HD2c・HD2dの圧電体PBc・PBdを伸ばす電圧が印加される。このような電圧が印加されると、伸長する電体PBc・PBdによって、第1電極EE1c・EE1dに貼り付けられた保持片HD2c・HD2dが、まずZ(+)側を凸にして撓みつつ、全体的にZ(−)側に落ち込む。その後、図5Dに示すように、保持片HD2c・HD2dの撓みに応じて、蛇行部SK2(SK2c・SK2d)に含まれるトーションバーT21がねじれ、そのねじれは蛇行部SK2につながる第2主軸部MA2をZ(−)側に落とし込む。
すると、図6Bに示すように、Z(+)側に跳ね上がる第1主軸部MA1およびZ(−)側に落ち込む第2主軸部MA2によって挟持されている可動枠11は傾く。このように可動枠11が傾くと、正回転同様に、可動枠11に備わっているミラー片12も傾き、ひいてはミラー片12はY軸回りに逆回転する。
ただし、以上のような、Y軸回りでのミラー片12の正逆回転の回転角は、比較的小さい。しかしながら、可動枠11が傾くと、その傾きに追随して、Y軸(Y軸方向)に沿って延びているミラー片トーションバー13が回転しようとする。
そこで、2次元ミラーを有する光スキャナLSでは、可動枠11を傾かせるために用いる圧電素子PE(PEa〜PEd)への印加電圧の周波数が、ミラー片トーションバー13(Y軸方向)を基準とするミラー片12の回転振動の共振周波数近傍の周波数となっている。このようになっていると、可動枠11の傾き量が比較的小さかったとしても、ミラー片12が圧電素子PEに印加される電圧の周波数によって共振し、比較的大きく回動するためである。
なお、実際に圧電素子PEへの印加される電圧の信号は、X方向を基準にミラー部MRを回動させる信号とY方向を基準にミラー部MRを回動させる信号とを合成したものである。
また、以上の光スキャナLSでは、ミラー部MRの可動枠11に可動枠トーションバーT11が含まれる。そして、その可動枠トーションバーT11のねじれで、ミラー部MRが効率よく傾く。そのため、主軸部MAは可動枠11と一体になってY軸回りで過剰に傾くことはない。
通常、可動枠トーションバーT11が無い場合、主軸部MAは可動枠11と一体になって、Y軸回りで傾かなくてはならない。そのために、トーションバーT21および保持部HDにもY軸回りのねじれが必要になってくる。しかし、ミラー部MRから離れているトーションバーT21の一部分には、Z方向に沿う大きな変位および応力がかかりやすく、それに起因してトーションバーT21が破損するおそれもある。
可動枠トーションバーT11(T11a・T11b)は、このような破損を防止するために、トーションバーT21等にY軸回りのねじれを過剰に生じさせないようにしている。すなわち、可動枠トーションバーT11が、主軸部MA(MA1・MA2)と可動枠11との間を曲がりやすくすることで、蛇行部SKのトーションバーT21および保持部HDにねじれを生じさせないようにしている。
そして、このように主軸部MA1・MA2と可動枠11との間が曲がりやすくなることで、主軸部MA1・MA2はZ方向に沿って相反して移動し、この移動によって、可動枠11は回転する。その結果、トーションバーT21等が破損することなく、可動枠11ひいてはミラー部MRが効率よく回動することになる。
なお、可動枠トーションバーT11は、主軸方向に対して交差する方向(例えばY方向)に延びている。このようになっていると、X軸方向に沿って可動枠トーションバーT11を挟持するように位置する第1主軸部MA1および第2主軸部MA2が変位した場合に、可動枠トーションバーT11がねじれやすいためである。
また、光スキャナLSでは、主軸部MA(MA1・MA2)と固定枠FMとの間に梁部BM(BM1・BM2)が介在し、その梁部BM1・BM2によって、両主軸部MA1・MA2に挟持されるミラー部MRは引っ張られる。そのため、この光スキャナLSに衝撃が加わることで、ミラー部MRがZ方向等に変位しそうになっても、このミラー部MRは梁部BMによって固定枠FMに引きつけられ変位しにくい。
そして、このようにミラー部MRが変位しにくければ、ミラー部MRを挟む主軸部MAにつながる蛇行部SKに、衝撃に起因する力がかからない。したがって、蛇行部SKの各トーションバーT21が極めて細くても破損しにくい。
なお、光スキャナLSがミラー部MRをX軸回りに回動させる場合、蛇行部SKのトーションバーT21をねじれさせるが、同時に、梁部BMまでもねじれてしまう。そして、このねじれは、蛇行部SKのトーションバーT21のねじれとは異なり、主軸部MAを積極的に回動させるねじれではないので、抵抗といえる。
したがって、梁部BMはできるだけ細く、かつ長くなっており、できるだけ小さな抵抗にしかならないように設計される。例えば、図1に示されるように、梁部BMは主軸部MAの太さより細く、かつ、梁部BMの長さは保持部HDのX軸方向での長さ(幅)の半分以上を占める。
[実施の形態2]
実施の形態2について説明する。なお、実施の形態1で用いた部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付記し、その説明を省略する。
実施の形態1で説明した光スキャナLSは、Y軸回りにミラー部MR(詳説するとミラー片12)を回動させる場合、圧電素子PEに印加される電圧の周波数によってミラー片12を共振させていた。このような共振を利用する場合、保持部HDの撓む力および振動を伝達される蛇行部SKは、ある程度の剛性を有すると望ましい。剛性の強い蛇行部SKであれば、振動が主軸部MAを介してミラー部MRに効率よく伝えられ、大きな振幅が発生するためである。
すると、剛性の弱い蛇行部SKで以下のような現象が生じることは望ましくない。すなわち、図7に示すように、Y軸回りにミラー部MRが回動する場合に、蛇行部SKの各トーションバーT21がZ方向に対して傾き、かつ主軸部MAから離れる現象である。詳説すると、主軸部MAを境にした一方側のトーションバーT21と他方側のトーションバーT21とが、互いに相違する方向に傾斜し、主軸部MAから離れる現象は望ましくない。
なぜなら、このようなトーションバーT21の変位では、振動が主軸部MAに伝わるまでの間で、トーションバーT21を傾かせること{いいかえると、トーションバーT21の幅方向(矢印J参照)で曲げること}に費やされるためである。そこで、このような事態を防止した光スキャナLSについて、図8を用いて説明する。
図8は、図1同様、光スキャナLSの部分拡大図である。この図8に示すように、主軸部MA1と保持部HD1との間に位置する蛇行部SK1の折り返し片22が、主軸部MA1と同方向に延び、その延びた折り返し片22の先端が梁部BM1の中途部分につながる(このつながる部分を接続片23と称する)。そして、この接続片23は、Y軸回りにミラー部MRが回動する場合に、蛇行部SK1のトーションバーT21を梁部BM1に引きつけることで、それらトーションバーT21を主軸部MA1から離れないようにする。
このようになっていると、例えば、図4Aに示される断面図と同じように、Y軸回りにミラー部MRが正回転する場合に、保持部HDが撓むと、図9および図10のようになる。
図9(平面図およびその平面のD−D’線矢視断面図)および図10に示すように、接続片23を含む光スキャナLSは、保持片HD1a・HD1bを、ともに同方向に撓ませることで、それら保持片HD1a・HD1bを全体的にZ(−)側に落ち込ませる。かかる場合、折り返し片22につながるトーションバーT21が主軸部MA1に対して傾こうとしても、接続片23が、折り返し片22、ひいては折り返し片22につながるトーションバーT21を主軸部MA1に引きつける。
さらに、折り返し片22につながるトーションバーT21が引きつけられることで、そのトーションバーT21と主軸部MA1との間に位置するトーションバーT21は、主軸部MA1に押しつけられ近づく。また、折り返し片22につながるトーションバーT21が引きつけられることで、そのトーションバーT21と保持片HD1a・HD1bとの間に位置するトーションバーT21も、主軸部MA1に引きつけられる。
その結果、蛇行部SK1(SK1a・SK1b)のトーションバーT21は、梁部BMと同方向に延びる主軸部MAに対して傾かない(傾きが規制される)。
すると、振動が、蛇行部SK1に加わったとしても、トーションバーT21を傾けるために費やされることはなく、トーションバーT21を厚み方向(Z方向)で曲げるために費やされる(図10の矢印K参照)。そして、このようにトーションバーT21が曲がったとしても、その曲がりは、トーションバーT21の幅よりも長いトーションバーT21の厚みの方向での曲がりであるので、曲がりにくい(すなわち、このトーションバーT21の厚み方向での曲がりは、トーションバーT21の幅方向での曲がりに比べて、曲がりにくい)。
したがって、以上のような曲がり方をする場合の蛇行部SK1の剛性は比較的高くなり、その蛇行部SK1に振動が伝わる場合に損失は起きにくく、効率よく振動が主軸部MA1に伝わる。その結果、光スキャナLSは、Y軸回りにミラー部MRを効率よく回動させる。
なお、接続端23が梁部BMの中途部分につながるのは以下のような理由による。すなわち、接続片23を含まない光スキャナLSがX軸回りにミラー部MRを回動させる場合と同じように(例えば、図3Bの場合と同じように)、接続片23を含む光スキャナLSがX軸回りにミラー部MRを回動させるためである。
このような回動のためには、接続片23を含まない光スキャナLSにおいて、Y方向に対して傾く第1主軸部MA1の角度(δ1)と、Y方向に対して傾く折り返し片22の角度(δ2)との関係が、接続片23を含む光スキャナLSにおいても成立しなくてはならない(図3B参照)。
具体例を挙げて説明する。例えば、δ1とδ2との関係が“δ1≒2×δ2”だとする。この関係が維持されるためには、接続片23は第1主軸部MA1に近い梁部BM1の端(第1主軸部MA1と梁部BM1との接合点付近)に位置してはならない。
なぜなら、梁部BMのねじれ度合いは、第1主軸部MA1に近いほど第1主軸部MA1と同程度のねじれ度合いになる。そのため、第1主軸部MA1に近い梁部BM1に接続片23が位置すると、その接続片23が折り返し片22を第1主軸部MA1に引きつけ、第1主軸部MA1と同程度にまでねじれさせる。その結果、“δ1≒2×δ2”の関係が崩れ、“δ1≒δ2”の関係になりかねない。そして、所望する関係が崩れてしまうと、第1主軸部MA1の回転角度(δ1等)にまでも影響が生じ、その回転角度も所望通りにならなくなる。
しかしながら、梁部BM1の中途の部分、すなわち第1主軸部MA1から離れた梁部BMの一端は、第1主軸部MA1に近い梁部BM1に比べてねじれ度合いが小さくなる。すると、第1主軸部MA1のねじれ度合いに対して約半分となるねじれ度合いの梁部BM1の中途部分の一端に、接続片23がつながっていると、折り返し片22は第1主軸部MA1に比べて約半分程度にねじれる梁部BM1の影響を受けて傾く。そのため、δ1とδ2との関係が、“δ1≒2×δ2”になる。
以上を踏まえると、Y軸回りでミラー部MRを効率よく回動させるために、蛇行部SKの接続片23が梁部BMにつながったとしても、接続片23の梁部BMにおける位置が適切に設定されていれば、X軸回りでのミラー部MRの回動が所望以外の回動とならない。
なお、梁部BMにつながる折り返し片22の個数は、特に限定されるものではない。例えば、蛇行部SKにて並列するトーションバーTB21の数が極めて多く、主軸部MAと保持部HDとの間に複数のトーションバーT21が介在している場合、主軸部MAと保持部HDとの間に位置することになる折り返し片22の少なくとも1つが、梁部BMにつながっていればよい。
[その他の実施の形態]
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。
例えば、図1、図8、および図14に示すように、固定枠FMには、梁部BMを挟持するように延びる挟持片SWが形成されるとよい。この挟持片SWは、保持部HDの内部に位置する梁部BMの一部分と、保持部HDの内部ではなく第5開孔H5と第6開孔H6との間(第7開孔H7と第8開孔H8との間)に位置する梁部BMの他部分とを、同じ幅にするための部材である。
通常、梁部BMは基体BSに対するエッチングにより生じる。そのため、梁部BMの幅が一定になるには、梁部BM周囲のエッチングにより除去される量が一定であることが望ましい。このようになっていると、エッチングレートが均一になるためである。
そこで、挟持片SWは、保持部HDの内部に位置する梁部BMの一部分を挟むスリットSTの幅と同じ程度の間隔で、梁部BMの他部分を挟む。すると、梁部BMにおける一部分の周囲にて除去される基体BSの量と、梁部BMにおける他部分の周囲にて除去される基体BSの量とが、同程度になる。そのため、梁部BM全体での周囲のエッチングレートが均一になり、梁部BMの幅が一定になる。
また、可動枠トーションバーT11における厚み方向の長さが、可動枠トーションバーT11における幅方向の長さよりも長いとよい。その理由を図11を用いて説明する。なお、図11は、図1および図8の可動枠11および第1主軸部MA1の拡大平面図と、その拡大平面図におけるE−E’線矢視断面図とを示しており、ミラー部MRがY軸回りに正回転する場合を示している。
可動枠11(ひいてはミラー部MR)がY軸を基準に正回転する場合、第1主軸部MA1はZ(−)側に垂れ下がる。このように第1主軸部MA1が垂れ下がると、第1主軸部MA1と可動枠11の繋ぎ目付近に、負荷がかかる(斜線楕円参照)。
この負荷は、Z(−)側に向く力(斜線矢印参照)であるので、負荷のかかる一部分はZ(−)側に変位する。すると、負荷のかかる一部分とつながる可動枠トーションバーT11の一端も、Z(−)側に変位してしまい、可動枠トーションバーT11全体として、断面図に示すような曲がりが生じる。すなわち、可動枠トーションバーT11の一端がZ方向に向かって変位し、可動枠11につながる可動枠トーションバーT11の他端は変位しないことで、かかる可動枠トーションバーT11が曲がる。
このような曲がりは、可動枠トーションバーT11のねじれ変形に寄与しないため望ましくない。しかしながら、可動枠トーションバーT11における厚み方向の長さ(厚みP)が、可動枠トーションバーT11における幅方向の長さ(幅Q)よりも長いと、第1主軸部MA1の変位に起因する負荷の影響を低減させられるので、可動枠トーションバーT11のねじれ変形が十分に確保できる。
なお、可動枠トーションバーT11の厚み方向は、基体BSの厚み方向と同方向である。詳説すると、可動枠トーションバーT11の厚み方向は、可動枠トーションバーT11の延び方向(Y方向)と主軸部MAの主軸方向(X軸方向)とに対して垂直方向(Z方向)である。一方、可動枠トーションバーT11の幅方向は、主軸部MAの主軸方向と同方向である。
また、以上のような可動枠トーションバーT11の個数は特に限定されない。すなわち、図12Aに示すように、可動枠トーションバーT11が、X方向に対して交差するY方向に沿って2個形成される場合に限定されず、単数または3個以上形成されていてもよい。
このようになっていると、Y軸を基準とするミラー部MRを回動させようとする場合にもかかわらず、X軸を基準とする不要な回転振動Nが生じたとしても、かかる回転振動Nは、複数の可動枠トーションバーT11に分散吸収されるためである。
また、図12Aおよび図12Bに示すように、可動枠11内に、Y方向に延びるスリットSTがX方向に並列することで、より多数の可動枠トーションバーT11が形成されてもよい。すなわち、可動枠トーションバーT11が、主軸部MAの軸方向に沿って複数並んでいてもよい。なお、図12Aは同形状のスリットSTがX方向に並列している可動枠11を示し、図12Bは、形状の異なるスリットSTが並列している可動枠11を示している。
このようになっていると、主軸部MAの変位に基づくエネルギー(負荷)が、主軸方向に沿って並列する複数の可動枠トーションバーT11に分散して伝達される。そのため、各可動枠トーションバーT11のねじれ量が少なくてすむ。
また、負荷が複数の可動枠トーションバーT11に分散されるということは、いいかえると、比較的小さな負荷も可動枠トーションバーT11に伝達されやすいことになるので、主軸方向に複数並列した可動枠トーションバーT11を備える光スキャナLSは、主軸部MAの変位量が小さい場合であっても、ミラー部MRを回動させることができる。
ところで、以上では、蛇行部SKに含まれるトーションバーT21と、ミラー部MRに形成された可動枠トーションバーT11とを備える光スキャナLSについて説明してきた。ただし、光スキャナLSは、これに限定されるものではない。
例えば、蛇行部SKのみトーションバーT21が形成されている光スキャナLS、蛇行部SKおよびミラー部MRの両方にトーションバーT21・TB11形成されている光スキャナLS(図1および図8参照)、ミラー部MRのみに可動枠トーションバーT11が形成されている光スキャナLS、のいずれであってもよい。
要は、蛇行部SKおよびミラー部MRの少なくとも一方に、トーションバーT(T11/T21)が形成されていればよい。なぜなら、トーションバーTが存在するだけで、そのトーションバーTに生じるねじれ変形を用いて、ミラー部MRが揺動可能になるためである。
また、圧電素子PEの形状やサイズ(面積)は特に限定されない。例えば、圧電素子PEの形状は、矩形状であってもよいし、図14に示すように、台形状であってもよい。また、圧電素子PEのサイズは、保持部HDの一面内に包含される程度の面積であってもよいし(保持部HDの面積よりも小さい面積でもよいし)、保持部HDの一面よりも大きな面積であってもよい(図14参照)。ただし、圧電素子PEのサイズが大きいほど、保持部HDを撓ませる力は大きくなるので望ましいといえる。
ところで、保持部HDを変形させる部材(駆動部)は、圧電素子PEに限定されるものではない。例えば、図13に示すように、電磁コイル31と永久磁石32とから成る電磁ユニット33が駆動部であってもよい。このような電磁ユニット33は、保持部HDの一面(表面)に電磁コイル31を位置させるとともに、保持部HDの裏側に(保持部HDの裏面から乖離して)永久磁石32を位置させ、電磁コイル31と永久磁石32とによって生じる電磁力で、保持部HDを撓ませる。
また、2個の電極から成る静電ユニットが駆動部であってもよい。このような静電ユニットは、保持部HDの裏面に一方の電極を位置させるとともに、保持部HDの裏面から乖離して(保持部HDの裏側に)他方の電極を位置させ、両電極によって生じる静電力で、保持部HDを撓ませる。
なお、説明してきた光スキャナLSを搭載する光学機器は、種々想定される。例えば、プロジェクター(画像投影装置)、コピー機やプリンタ等の画像形成装置が一例として挙げられる。また、光スキャナ以外のマイクロスキャナとしては、ミラー部MRに代えてレンズ(屈曲光学系)が搭載されたものや、光源(発光素子)が搭載されたものが挙げられる。