本発明にかかるマイクロスキャナについて図面を参照して説明する。ここでは、変動する部材(変動部)としてミラー部を例に挙げるとともに、このミラー部を変動させることで光を反射しスキャン動作を行うマイクロスキャナとして、2次元走査型の光スキャナを例に挙げる。なお、理解を容易にするために(部分の区別を容易にするために)、平面図にハッチングを付す場合もある。また、便宜上、部材符号及び(又は)ハッチングを省略する場合もあるが、かかる場合、他の図面を参照するものとする。
図1は本発明にかかるマイクロスキャナを採用した光スキャナの平面図であり、図2は図1に示す光スキャナをII−II線で切断した断面図及び規制部の近傍を拡大した断面図であり、図3は図1に示す光スキャナが駆動しているときの拡大断面図である。
図1に示すように光スキャナOSは、固定部である固定枠1と、可動部2(右上りハッチ)、主軸トーションバー3(主軸部)と、変位部4と、接続部5と、規制部60とを備えている。なお、図1に示す光スキャナOSの平面図において、左右方向をX方向とし、光スキャナOSの上下方向中央をX方向に横切る軸をX軸としている。また、上下方向をY方向とし、光スキャナOSの左右方向中央をY方向に横切る軸をY軸としている。そして、Z方向厚み方向をZ方向としている。以下の説明においても、特に断りのない限り、X方向、Y方向、Z方向、X軸及びY軸を用いて説明する。
図1に示すように固定枠1は、可動部2、主軸トーションバー3、変位部4及び接続部5を囲む長方形状の部材である。さらに詳しく説明すると、変形可能なシリコン基板等で形成された長方形板状の基体にエッチングを施すことで、可動部2、主軸トーションバー3、変位部4の後述する保持部41及び接続部5を形成する。そして、エッチング後の基体のうち、これらの部材を取り囲むように残った部分が固定枠1となる。
なお、図1に示すように、固定枠1、主軸トーションバー3、変位部4の保持部41及び接続部5とは一体に形成されている。なお、エッチングを施す基体は、100μm程度の厚さのシリコン基板が用いられるが、それに限定されるものではない。このように一枚の基体(基板)にエッチングを施して上述の各部を形成することで、それぞれの部分の大きさや、部分同士の間隔の精度を高めることが可能である。なお、加工法としてはエッチングに限定されるものではないし、複数の部材を組み合わせて形成するものであってもよい。
可動部2は、光源(不図示)からの光(レーザ光)を反射する部材である。図1に示すように、可動部2は、主軸トーションバー3に支持されている。可動部2は、ミラー部21と、可動枠22と、ミラートーションバー23と、連結部24とを含んでいる。
ミラー部21は円板形状であり、光源からの光を反射する反射部材である。ミラー部21の表面には光源からの光を反射するため、アルミニウム等の金属薄膜が反射膜として成膜されている。なお、金属薄膜は蒸着やスパッタリング等の方法で形成されているものを挙げることができる。また、ミラー部21の表面は、このような金属薄膜に限定されるものではなく、表面が滑らかで光を均一に反射できるように形成された鏡面状のものを広く採用することができる。そして、ミラー部21は中心を挟んで対向した部をミラートーションバー23に保持されている。なお、ミラー部21のミラートーションバー23に保持されている部分は、可動部2が停止している状態のときY軸方向の両端部となっているが、これに限定されるものではない。また、可動部2の説明を行う限りにおいて、ミラートーションバー23の軸線をY軸として説明する。
可動枠22はミラー部21を囲むように配置されており、エッチングによって形成されたひし形状の部材である。図1に示すように、可動部2は線対称の基準となる2本の対称軸が直交している。2本の対称軸のうち、一方の対称軸(ここでは、短い方の対称軸)はX軸と重なっており、他方の対称軸(ここでは、長い方の対称軸)はX軸と直交している(可動枠22が停止状態のとき、Y軸と重なる)。
ミラートーションバー23は一対の長尺状の部材であり、各ミラートーションバー23はミラー部21を保持している。そして、一対のミラートーションバー23はY軸上に配置されており、各ミラートーションバー23は同じ断面形状及び同じ長さの部材である。そして、各ミラートーションバー23のミラー部21と反対側は、可動枠22と一体的に連結されている。なお、ミラートーションバー23は弾性変形可能な部材であり、ミラートーションバー23が弾性的にねじれることで、ミラー部21がY軸周りに揺動(振動)される。一対のミラートーションバー23が同一の形状であるので、各ミラートーションバー23のねじれ量、速度が同じであり、ミラー部21はY軸周りに揺動できる。
連結部24は長方形状の部材であり、可動枠22のX方向の両端部と一体連結されている。連結部24は各辺がX軸又はY軸と平行となっており、Y軸と平行な辺の一方が可動枠22と連結している。また、他方のY軸と平行な辺の中央部に主軸トーションバー3が連結されている。これによって、可動枠22、すなわち、ミラー部21、ミラートーションバー23を含む可動部2が、X軸周りに揺動可能となっている。
次に主軸トーションバー3について説明する。主軸トーションバー3は弾性変形可能な長尺部材である。光スキャナOSでは、停止状態のとき、主軸トーションバー3の中心軸がX軸と重なるものとする。主軸トーションバー3は可動部2のX軸方向の両端部に配置された連結部24のそれぞれを支持している。なお、以下の説明では、便宜上、図1のY軸よりも左にある主軸トーションバー3を3AC、右にある主軸トーションバー3を3BDと表す場合がある。
図1に示すように、主軸トーションバー3は、長手方向の端部のうち、一方が固定枠1と連結し、他方が可動部2の連結部24と連結している。そして、主軸トーションバー3は可動部2の近傍で接続部5を介して、変位部4と接続している。なお、主軸トーションバー3の一方の端部が固定枠1と連結していることで、主軸トーションバー3がねじられ、可動部2が揺動するとき、主軸トーションバー3がX軸からずれにくい。これによって、可動部2のX軸周りの揺動の精度低下を抑制することができる。
そして、変位部4は正面視長方形状であり、一方の短辺が固定枠1と連結された片持ち梁様の構造を有している。変位部4は、固定枠1と一体に形成された保持部41と、保持部41の表面に貼り付けられた圧電素子42(クロスハッチ)とを備えている。保持部41はY方向に延びており、長手方向に曲げ変形可能な部材である。また、圧電素子42はPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)を含む素子であり、電力が供給されると力(変位)を出力する逆圧電効果を備えている。変位部4は保持部41と圧電素子42を張り合わせたユニモルフ構造であり、圧電素子42に電力を供給することで、固定枠1と連結されていない側の短辺(自由端側の短辺)が厚み方向(図1において、Z方向手前又は奥方向)に変位する。
詳説すると、圧電素子42に電圧を印加することで、圧電素子42には圧縮方向或いは引っ張り方向の力が作用する。圧電素子42に圧縮方向の力が作用すると、圧電素42が貼り付けられている保持部41が圧電素子42側に曲げられる。逆に圧電素子42に引っ張り方向の力が作用すると、保持部41は圧電素子42と反対側に曲げられる。このように、圧電素子42に作用する圧縮方向の力と引っ張り方向の力とをタイミングよく交互に発生させることで、変位部4は自由端が振動する。
図1に示すように、光スキャナOSは4個の変位部4を備えており、Y軸を挟んで対称となるように2個ずつ配置されている。同様に4個の変位部4は、X軸を挟んで対称となるように2個ずつ配置されている。すなわち、4個の変位部4はX軸及びY軸を基準に対称となるように配置されている。なお、説明の便宜上、図1において左上の変位部4を変位部4A、左下を4C、右上を4B及び右下を4Dと称して区別する場合があるが、形状及び大きさは全て同じである。また、図1に示す変位部4では、保持部41に対して圧電素子42が小さいものが採用されているが、それに限定されるものではなく、端縁部が重なるように形成された圧電素子42を張り合わせるものであってもよく、圧電素子42が保持部41よりも大きいものを採用してもよい。
接続部5は、主軸トーションバー3と変位部4とを接続している。接続部5の形状は従来例の接続部5と同じであり、従来例の図面である図8も参照して説明する。図1及び図8に示すように、接続部5は、複数個の片持ち梁様のレバー部51と、隣り合うレバー部51の端部を接続する折り返し部52とを備えており、接続部5は平面視蛇行状に形成されている。隣り合うレバー部51の間には、スリットSTが形成されている。図1及び図8に示しているように、接続部5は左辺から切れ込んだスリットSTと右辺から切れ込んだスリットSTとがレバー部51を挟んでY方向に交互に並んでいる。
なお、接続部5において、スリットSTは左右から2個ずつ形成されているが、それに限定されるものではない。また、以下の説明において、それぞれの接続部を区別するために、変位部4Aと接続する接続部5A、変位部4Cと接続する接続部5C、変位部4Bと接続する接続部5B、変位部4Dと接続する5Dと示す場合もある。そして、接続部5A及び接続部5Cは左側の主軸トーションバー3ACと、接続部5B及び接続部5Dは右側の主軸トーションバー3BDとそれぞれ接続している。
接続部5はレバー部51とスリットSTとが交互に並んだ形状であるので、接続部5の両端部にZ方向のせん断力が作用すると、レバー部51がねじれつつ曲げられる。よって、接続部5は平面視同じ大きさの平板に比べてY軸に沿った平面曲げ(Y軸に沿った方向の曲げ)が容易な(柔軟性が高い)構成となっている。例えば、図1において、変位部4Aが紙面手前側、変位部4Cが紙面奥側に変形した場合(図3の状態)、接続部5A及び接続部5Cは変位部4A、変位部4Cの先端の移動にあわせて移動する。このとき、接続部5A及び接続部5CがY軸に沿ってZ方向に曲げ変形されるので、変位部4Aと主軸トーションバー3AC及び変位部4Cと主軸トーションバー3ACとの角度の変化をある程度許容することができる。これにより、変位部4A及び変位部4Cの先端のZ方向の変位が柔軟性の低い接続部を使う場合に比べて大きくなる。
そして、接続部5A及び接続部5Cは主軸トーションバー3ACをねじることができる弾力を備えている。これにより、接続部5A及び接続部5Cは変位部4A及び変位部4Cの先端部の変位にあわせ、主軸トーションバー3ACの接続部分をZ軸方向に引っ張る。変位部4A及び変位部4Cの先端部の変位量が大きいので、主軸トーションバー3ACの接続部が引っ張られる量も大きくなり、ねじれも大きくなる。なお、接続部5B、5Dで接続される変位部4B、4D及び主軸トーションバー3BDも同様である。
また、本発明の光スキャナOSに用いられる接続部として、図8等に示すように蛇行状に形成されている接続部5(5A)を用いているが、これに限定されるものではない。図9に示すような、貫通孔形状のスリットST1と、左右両側から形成された凹形状のスリットST2とを交互に配置した形状の接続部7Aを利用しても、同様に主軸トーションバー3のせん断ひずみを大きくすることが可能である。なお、以下の説明では、主に接続部として図8に示す接続部5として説明するが、接続部7を用いても同様である。以上に示したように、接続部5及び7は、変位部4の変位を妨げにくく、且つ、主軸トーションバー3をねじる方向に引っ張ることができる程度の柔軟性を有するものである。
次に本発明にかかるマイクロスキャナの要部である規制部60について、図面を参照して説明する。図2に示すように、規制部60は、固定枠1のZ方向の両面に貼り付けられたカバー部材6に形成されている。図1、図2に示しているように、規制部60は主軸トーションバー3、変位部4及び接続部5とZ方向に対向している。
カバー部材6は、正面視長方形状の枠体であり、開口610を有する長方形状の枠部61と、枠部61の長辺の中央部に配置され外側に突出した規制部60とを備えている。カバー部材6はステンレス等の金属板や樹脂のシートをエッチングすることで開口610を形成し、さらに規制部60が枠部61よりも薄くなるように、ハーフエッチングを施してある。規制部60と枠部61との厚みの差が、規制部60と主軸トーションバー3、変位部4及び接続部5のZ方向の隙間(クリアランスT)となる(図2参照)。主軸トーションバー3、変位部4及び接続部5はクリアランスTだけ変位(移動)が可能である。なお、規制部60と連結部24、主軸トーションバー3、変位部4及び接続部5とのクリアランスTは、変位部4の変位量、連結部24の変位量よりも大きく、変位部4の振動や可動部2(連結部24)の揺動を妨げないことは言うまでもない。
図1に示すように、枠部61の両方の短辺が固定枠1に接着されており、カバー部材6は正面視において、長手方向がY方向と平行であり、可動部2が枠部61の開口610の内部に入る。そして、枠部61の2つの長辺は変位部4よりも内側に配置されている。カバー部材6が固定枠1にこのように固定されることで、カバー部材6が可動部2及びミラー部21の揺動の邪魔にならない。そして、規制部60が可動部2の連結部24、主軸トーションバー3、変位部4(保持部41)及び接続部5とZ方向に対向する。
光スキャナOSに、衝撃力がZ方向に作用した場合、固定枠1と一体の変位部4にはすぐに衝撃力が伝達され瞬時に変位を開始する。一方、主軸トーションバー3も固定枠1と連結されているが、重量の大きな可動部2の動きに引っ張られるので変位部4に対して移動開始が遅れる。このことから、衝撃力が作用した瞬間に、接続部5は変位部4と主軸トーションバー3に引っ張られ、変形量が大きくなる。
変位部4はクリアランスT変位すると規制部60と接触し、それ以上変位しなくなる。一方で、一定時間経過後、可動部2も衝撃が作用した方向に移動するので、主軸トーションバー3も変位部4方向に変位し、接続部5の変形は小さくなる。そして、最終的には可動部2の連結部24、主軸トーションバー3、変位部4及び接続部5は規制部60に接触する。
これにより、変位部4と連結部24、変位部4と主軸トーションバー3のZ方向の変位差を小さく抑えることができ、接続部5の変形を抑えることができる。これにより、接続部5に作用する変形による応力が、破壊応力以上となるのを抑制し、接続部5の破壊を抑制することができる。また、図示しているように、規制部60は片持ち梁形状であり、枠部61より薄く形成されているので、弾性的に曲がりやすい。これにより、連結部24、主軸トーションバー3、変位部4及び接続部5が接触したとき、弾性的に曲げ変形され、衝撃を緩和することも可能である。
なお、クリアランスTは、主軸トーションバー3及び変位部4が規制部60と接触したときに、これらの各部分に作用する変形による応力が破壊応力よりも小さくなるように設定されるものである。例えば、基体として100μmのシリコン基板を用いている場合、50μm程度とすることができる。
また、規制部60と枠部61との厚みの差が小さいカバー部材6を形成し、枠部61と固定枠1とをビーズが混入された接着剤を用いて接着してもよい。ビーズを含む接着剤を用いることで、ビーズの外径分、規制部60を連結部24、主軸トーションバー3、変位部4及び接続部5から遠ざかるので、十分なクリアランスを保つことができる。なおビーズとしては、クリアランスの不足分を補う大きさのものを挙げることができる。また、規制部60と枠部61とを同じ厚みで形成し、ビーズの大きさでクリアランスを確保するようにしてもよい。
さらに、カバー部材6として、金属板、樹脂シートの替わりに基体と同じシリコン基板を用いてもよい。この場合、陽極接合等の方法で固定枠1とカバー部材6とを接合することが可能である。また、カバー部材6をシリコン基板より製作する構成の場合、アレイ状に配列されたウエハ状態で接合し、ダイシングによりチップ化することができ、生産性を高めることも可能である。なお、以下で説明する、異なる実施形態のカバー部材でも同様である。
次に、光スキャナOSで光を走査(二次元走査)するときの駆動について詳しく説明する。まず、可動部2のX軸周りの揺動について説明する。可動部2は、主軸トーションバー3(3AC、3BD)のねじれによって、X軸周りに揺動(振動)される。主軸トーションバー3のねじれ変形を説明するため、左側の主軸トーションバー3ACのねじれ変形について説明する。なお、主軸トーションバー3BDのねじれ変形もY軸に対して対称となっているだけで、実質上同じ動きであり、詳細は省略する。
主軸トーションバー3ACは、変位部4A及び変位部4Cが変位することでX軸周りにねじられる。例えば、図1において、変位部4AをZ方向手前側、変位部4CをZ方向奥側に変位させるとする。この場合、接続部5Aは変位部4Aの自由端側の辺に引っ張られZ方向手前側に移動し、逆に接続部5Cは変位部4Cの自由端側の辺に引っ張られZ方向奥側に移動する(図3参照)。
接続部5A、接続部5Cの柔軟性が高い(変形しやすい)ので、上述したように、変位部4A及び変位部4Bの自由端側の辺の変位が大きくなる。これにより、接続部5A及び接続部5Cを介して変位部4A及び変位部4Cと接続されている主軸トーションバー3ACのせん断ひずみ(ねじり方向のひずみ)が大きくなる。
そして変位部4A及び変位部4Cが、Z方向手前側とZ方向奥側にタイミングを合わせて振動することで、主軸トーションバー3ACがX軸周りのねじれを繰り返すように振動する。上述したように、変位部4B及び4Dの変位が接続部5B及び5Dで伝達されることで、主軸トーションバー3BDも振動する。そして、変位部4Aと変位部4Bを一組、変位部4C及び変位部4Dを一組とし、それぞれの組の変位部がZ方向に同じ方向、異なる組の変位部がZ方向に逆方向となるよう振動させることで、主軸トーションバー3ACと主軸トーションバー3BDの振動を同期させることができる。なお、各変位部4(4A、4B、4C、4D)が同期していることはいうまでもないことである。
主軸トーションバー3AC及び主軸トーションバー3BDは、ともにX軸上に配置されているとともに、可動枠22のX方向の端部に一体連結された連結部24と連結されている。主軸トーションバー3AC及び主軸トーションバー3BDがねじれ方向に振動することで、連結部24で主軸トーションバー3AC、3BDと連結された可動枠22、すなわち、ミラー21及びミラートーションバー23を含む可動部2がX軸周りに揺動(振動)される。なお、可動部2の主軸トーションバー3AC、3BDによる揺動、すなわち、X軸周りの揺動は数十Hz(例えば、60Hz)程度の低周波である。
なお、ミラー部21はミラートーションバー23に揺動可能に保持されているが、ミラートーションバー23は、可動部2の揺動の中心であるX軸と直交しているので、可動部2の揺動によってねじれ方向の力が作用することはない。すなわち、可動部2のX軸を中心とする揺動はミラー部21のミラートーションバー23による揺動にほとんど影響しない。
次に、ミラー部21のX軸と直交する軸(Y軸)周りの揺動について説明する。ミラー部21はミラートーションバー23に保持されており、ミラートーションバー23のねじれによって揺動される。ミラートーションバー23は変位部4(4A、4B、4C、4D)がミラートーションバー23の共振周波数で振動することで、共振し、揺動する。
さらに詳しく説明すると、以下のとおりである。変位部4A及び変位部4Cを組とし、変位部4B及び変位部4Dを組として、同じ組の変位部はZ方向の同方向に、異なる組の変位部はZ方向の異なる方向に振動させる。まず、図1において、変位部4A及び4CをZ方向手前側、変位部4B及び変位部4DをZ方向奥側に変位させた場合を例に説明する。変位部4A及び変位部4CがZ方向手前側に変位すると、接続部5A及び5CがともにZ方向手前側に変位する。そして、主軸トーションバー3ACは接続部5A及び接続部5Cに引っ張られ、可動部2側がZ方向手前側となるように曲げられる。主軸トーションバー3ACの曲げ変形によって、可動部2の連結部24が持ち上げられる。なお、接続部5A及び接続部5Cが蛇行状に形成されているので、ねじれ方向にも変形しやすく、主軸トーションバー3ACの変位を大きくすることができる。
主軸トーションバー3BDも主軸トーションバー3ACと同様に、変位部4B及び変位部4D、接続部5B及び接続部5Dによって曲げられる。なお、主軸トーションバー3BDの曲げ方向は主軸トーションバー3ACと反対のZ方向奥側である。主軸トーションバー3AC及び主軸トーションバー3BDの曲げ変形によって、可動部2がY軸周りにねじられる。
そして、変位部4A及び変位部4Cの組、変位部4B及び変位部4Dの組を交互に変位させることで、可動部2がミラートーションバー23の主軸周りに揺動(振動)する。この可動部2の揺動の振動数をミラートーションバー23及びミラー部21の共振周波数とすることで、ミラートーションバー23は励振されてねじれ方向の振動が発生する。これにより、ミラートーションバー23に保持されているミラー部21が揺動される。なお、ミラー部21のミラートーションバー23のねじれによる揺動(振動)の周波数は、数十kHz(例えば、30kHz)の高周波である。
変位部4(4A、4B、4C、4D)を以上のように振動させることで、可動部2がX軸周りに低周波で揺動されるとともに、可動枠22と独立してミラー部21がY軸周りに高周波で揺動される。ミラー部21で光を反射しつつ可動部2を低周波で、ミラー部21を高周波で揺動させることで、光スキャナOSは光を2次元走査している。
本発明にかかる光スキャナOSは、その小型、軽量であるという特徴から、携帯電話、デジタルカメラ等の携帯用の電子機器に搭載されることが想定されている。携帯用の電子機器は強く振り回されたり、落下したりすることがあり、この場合、光スキャナOSには強い衝撃(数千G程度の加速度)が作用することもある。光スキャナOSの場合、Z方向に衝撃が作用すると、その衝撃力による移動は、固定枠1と直接連結されている部分、すなわち、主軸トーションバー3、変位部4にはすぐに伝わるが、可動部2には遅れて伝わる。このことは、光スキャナOSにZ方向の衝撃が作用したとき、変位部4(の自由端)はすぐにZ方向に移動(変位)するが、可動部2は少し遅れて移動することを意味している。
光スキャナOSの駆動中に、光スキャナOSにZ方向に衝撃による力が作用した場合、変位部4が最も変位したときに衝撃が作用することもありえる。変位部4が最も変位しているとき、接続部5の変形も最大となっている。この状態でZ方向に衝撃が作用すると、主軸トーションバー3は重量の大きな可動部2の動きに引っ張られるので移動開始が遅れる。一方で、変位部4はすぐに変位(変形)を開始するので、接続部5は変位部4と主軸トーションバー3に引っ張られ、変形量が大きくなる。
その後、変位部4は一定距離変位した後に規制部60と接触し、それ以上変位しなくなる。一方で、可動部2も衝撃が作用した方向に移動するので、主軸トーションバー3も変位部4と同じ方向に変位し、接続部5の変形は小さくなる。そして、最終的には可動部2の連結部24、主軸トーションバー3、変位部4及び接続部5は規制部60に接触する。
以上のことより、変位部4と主軸トーションバー3或いは連結部24との変位差で接続部5の変形を抑制し、変形による応力が破壊応力を超えるのを抑制することができる。このことから、接続部5の破壊を抑制することができる。なお、本実施形態の光スキャナOSにおいて、規制部60は、変位部4の接続部5と接続している部分の近傍のみと対向しているが、これに限定されるものではなく、変位部4の自由端側の辺の半分と対向する形状であってもよいし、全部と対向する形状であってもよい。
また、本実施例の光スキャナOSにおいて、カバー部材6の枠部61は、規制部60のみが他の部分よりも薄くなるように形成されているが、それに限定されるものではなく、枠部61の固定枠1との接着部分以外の部分を薄く形成してもよい。
本発明にかかるマイクロスキャナを採用した光スキャナの他の例について図面を参照して説明する。図4は本発明にかかるマイクロスキャナを採用した光スキャナの他の例の正面図であり、図5は、図4に示す光スキャナをV−V線で切断した断面図及び規制部を拡大した断面図である。図4に示す光スキャナOS2は規制部80を含むカバー部材8の形状が異なる以外、図1等に示す光スキャナOSと同じ構成を有しており、実質上、同じ部分には同じ符号が付してある。
光スキャナOS2は、固定枠1のZ方向の両面に貼り付けられた正面視長方形状のカバー部材8を備えている。カバー部材8の材質、製造方法、固定枠1への接着方法は、カバー部材6と同じであり、詳細は省略する。カバー部材8は、正面視長方形状の枠部81と、枠部81の対向する辺の中間部分より、枠部81に形成されている開口810に向かって突出する平面視長方形状の規制部80とを備えている。
図4に示しているように、枠部81は正面視、固定枠1と略同じ大きさの枠体である。なお、図4では、説明の便宜上、枠部81は固定枠1よりも小さく表示しているが、同じ大きさであってもよく、枠部81の方が固定枠1よりも大きくてもよい。正面視において、枠部81の開口810は、内部に、可動部2、主軸トーションバー3、変位部4及び接続部5が入るように形成されている。また、枠部81が固定枠1の外周部に接着固定されるので、枠部81は、光スキャナOS2の補強としても作用する。
図4に示すように、枠部81を固定枠1に接着固定すると、規制部80は、可動部2の連結部24、主軸トーションバー3、変位部4の保持部41の自由端及び接続部5とZ軸方向に重なる(対向する)。カバー部6と同様に、カバー部8の規制部80の厚さは枠部81よりも薄いので、固定枠1に枠部81を接着固定したとき、規制部80と可動部2の連結部24、主軸トーションバー3、変位部4の保持部41の自由端及び接続部5との間には規制部60と同様のクリアランスTが形成される(図5参照)。
詳細な動作についてはカバー部6を備えた光スキャナOSと同じであり省略するが、光スキャナOS2にZ方向の衝撃力が作用した場合であっても、連結部24、主軸トーションバー3、変位部4及び接続部5が規制部80と接触し、変位部4と主軸トーションバー3との変位差を小さくすることができるので、接続部5の変形を抑えることができ、接続部5に変形により作用する応力が、破壊応力を超える応力となるのを抑制することができる。これにより、衝撃力が作用した場合であっても、接続部5が破損するのを抑制することができる。
本発明にかかるマイクロスキャナを採用した光スキャナのさらに他の例について図面を参照して説明する。図6は本発明にかかるマイクロスキャナを採用した光スキャナのさらに他の例の正面図である。図6に示す光スキャナOS3は固定枠10、変位部40及び規制部600が異なる以外は図1に示す光スキャナOSと同じ構成であり、実質上、同じ部分には同じ符号が付してある。
図6に示すように、変位部40は、X方向に延びる梁状のレバー部400がY方向に配列されており、隣り合うレバー部400のX方向の端部を交互に連設する連設部401とを備えている。そして、レバー部400の上部に圧電素子402が貼り付けられている。そして、主軸トーションバー3と変位部40とは接続部5を介して接続されている。そして、規制部60は連設部401のX方向外側に配置される部分より、さらに外側に突出するように形成された正面視長方形状の板部材である。そして、固定枠10には、規制部60が非接触で配置されるように凹部101が形成されている。そして、規制部60と凹部101とのY方向の隙間及びX方向の隙間は小さい。
図6に示す光スキャナOS3は、変位部40が蛇行状に形成されており、光スキャナOS3にX方向或いはY方向に力が作用すると、変位部40がX方向又はY方向に変形する。このような形状で、変位部40がX方向に変形しても、Y方向に変形しても規制部600が凹部101の内壁部と接触し、力を支えるので、変位部40、主軸トーションバーのX方向及び(又は)Y方向の変位差を小さく抑えることができ、接続部5の変形を抑えることができる。これにより、接続部5の変形による応力が破壊応力以上となることを抑制し、接続部5が破損しにくい。なお、接続部として接続部5を採用しているが、接続部7が採用されている場合でも同様である。
上記各実施例では、本発明のマイクロスキャナの例として、光を2次元走査する光スキャナを挙げているが、光を直線上に走査する1次元走査の光スキャナに用いることも可能である。この場合、可動部の全体或いは一部がミラー部に形成されているとともに、ミラー部が可動枠に固定されている(ミラートーションバーに揺動可能に支持されていない)ものを挙げることができる。また、上記各実施例において、マイクロスキャナとして、ミラー部で光を反射する光スキャナを例に説明しているが、それに限定されるものではなく、ミラー部に替わる光学素子としてレンズを用いるものやLED、レーザダイオード等の自発光素子を用いるものであってもよい。さらに、可動部の動力源(アクチュエータ)として片持ち梁状の保持部に圧電素子を貼り付けたバイモルフ構造の変位部を採用しているが、それに限定されるものではなく、片持ち梁形状であるとともに、コイル、永久磁石等を用い、電磁気力で変位する変位部を採用してもよい。
さらに、上述の各実施形態では、変位部で発生する変位で主軸トーションバーをねじることで、主軸トーションバーに保持されている可動部を揺動しているが、変位部と可動部とを接続部を介して接続する構成とし、変位部で発生する変位で可動部を揺動する構成であってもよい。
上記実施形態の説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或いは範囲を減縮する様に解すべきではない。本発明の各部構成は上記実施形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。