JP2009079153A - 油脂組成物の製造方法および油脂組成物 - Google Patents

油脂組成物の製造方法および油脂組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】トリエン脂肪酸を含有する油脂のトランス酸含量が低く、かつ、風味および風味安定性が良好な油脂組成物の製造方法および該油脂組成物を提供する。また、連続的に行われる脱臭工程において脱臭温度を変化させた場合における温度のコントロールを実現できる油脂組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の油脂組成物の製造方法は、トリエン脂肪酸を40質量%以上含有する第1の油脂を198〜247℃の範囲内の温度で脱臭する工程と、第1の油脂の脱臭後16時間以内に、当該脱臭した第1の油脂と、脱臭済みの第2の油脂とをトリエン脂肪酸の含有量が油脂を構成する全脂肪酸に対して5〜50質量%になるようにブレンドする工程とを有することを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、構成脂肪酸中に3つの二重結合を有する脂肪酸(以下、トリエン脂肪酸という。)を含有する油脂組成物の製造方法および当該油脂組成物に関するものである。
n−3系多価不飽和脂肪酸であるトリエン脂肪酸(例えばα−リノレン酸)は、必須脂肪酸と呼ばれているが生体内で合成できないため、食物により摂取することが必要である。
しかし、トリエン脂肪酸は、風味が悪く、風味劣化も早い。この点を改善するためには、臭いを有する揮発成分を除去するために高温脱臭が効果的である。
一方、トリエン脂肪酸(例えばα−リノレン酸)は、二重結合が3つあるという構造上、トランス化しやすく、高温脱臭することで、よりトランス化しやすくなるという問題がある。
発生したトランス酸は、欧米において、人の血清コレステロール(LDL)濃度の上昇と、善玉コレステロール(HDL)濃度の低下を招くことから動脈硬化を誘引すると言われている。
α−リノレン酸が高含量でありながら、トランス型脂肪酸含量を低くでき、かつ、風味と風味安定性に優れた食用油を提供できるものとして、α−リノレン酸の含量が50質量%以上、かつトランス型脂肪酸の含量が4質量%以下であるフラックス油に、オレイン酸の含量が60質量%以上である高オレイン酸の油脂を加え、オレイン酸とα−リノレン酸の質量比を、オレイン酸:α−リノレン酸=1:0.2〜0.6とし、α−リノレン酸の含量が10質量%以上である食用油が知られている(特許文献1参照)。
特許文献1には、フラックス油製造工程の脱臭条件として、脱臭温度220〜240℃、脱臭時間60〜90分間、蒸気吹込量対油3.5〜5.5質量%で行なうと、風味が良好で、かつトランス型脂肪酸含量が4質量%以下に抑えられたフラックス油が製造できることが開示されている。
特開2000−157170号公報
上述したとおり、トリエン脂肪酸を含有する油脂のトランス酸含量が低く、かつ、風味および風味安定性が良好な油脂組成物が求められている。
また、大量生産の場合の脱臭工程は、連続的に行われており、一般的に同一設備では、同一条件(温度・時間)で脱臭が行われている。これは、温度を変更すると、変更時に温度がぶれやすく、安定化までに時間がかかるためである。
従って、本発明の目的は、トリエン脂肪酸を含有する油脂のトランス酸含量が低く、かつ、風味および風味安定性が良好な油脂組成物の製造方法および該油脂組成物を提供することである。また、連続的に行われる脱臭工程において脱臭温度を変化させた場合における温度のコントロールを実現できる油脂組成物の製造方法を提供することである。
本発明は、上記目的を達成するために、トリエン脂肪酸を40質量%以上含有する第1の油脂を198〜247℃の範囲内の温度で脱臭する工程と、前記第1の油脂の脱臭後16時間以内に、当該脱臭した第1の油脂と、脱臭済みの第2の油脂とをトリエン脂肪酸の含有量が油脂を構成する全脂肪酸に対して5〜50質量%になるようにブレンドする工程とを有することを特徴とする油脂組成物の製造方法を提供する。
本発明によると、トリエン脂肪酸を含有する油脂のトランス酸含量が低く、かつ、風味および風味安定性が良好な油脂組成物の製造方法および該油脂組成物を提供することができる。また、連続的に行われる脱臭工程において脱臭温度を変化させた場合における温度のコントロールを実現できる油脂組成物の製造方法を提供することができる。
〔本発明の実施の形態〕
本発明の実施の形態に係る油脂組成物の製造方法は、トリエン脂肪酸を40質量%以上含有する第1の油脂を198〜247℃の範囲内の温度で脱臭する工程と、前記第1の油脂の脱臭後16時間以内に、当該脱臭した第1の油脂と、脱臭済みの第2の油脂とをトリエン脂肪酸の含有量が油脂を構成する全脂肪酸に対して5〜50質量%になるようにブレンドする工程とを有することを特徴とする。
(第1の油脂を脱臭する工程)
本実施の形態において、トリエン脂肪酸を40質量%以上含有する第1の油脂とは、例えば、フラックス油、エゴマ油及びシソ実油から選ばれる1種又は2種以上の植物油である。中でも、α−リノレン酸が高含量であるフラックス油を用いることが好ましい。
第1の油脂は、脱臭工程の前に、通常の方法に従い、脱ガム工程、脱色工程、脱ろう工程を経て精製される。
第1の油脂の脱臭は、一般的に減圧水蒸気蒸留で行われ、バッチ式、半連続式、連続式等により行うことができるが、所定の条件下で行うことが好ましい。
第1の油脂の脱臭の温度条件としては、トランス酸含量を低く、かつ、風味および風味安定性を良好にするために、198〜247℃の範囲内の温度で行われる。好ましくは200〜245℃、より好ましくは210〜240℃、さらに好ましくは210〜235℃であり、最も好ましくは215〜230℃の範囲内の温度で行う。
第1の油脂の温度以外の脱臭条件としては、例えば、脱臭時間30〜90分間、好ましくは50〜90分、蒸気吹込量対油2.0〜5.5質量%、好ましくは3.0〜4.5%である。
(第2の油脂を脱臭する工程)
本実施の形態において、脱臭済みの第2の油脂とは、風味および風味安定性を良好にするために、脱臭された第1の油脂とブレンドされるものであり、第1の油脂とブレンドしてトリエン脂肪酸の含有量が油脂を構成する全脂肪酸に対して5〜50質量%になるように調製できるものであればよく、例えば、菜種油、大豆油、コーン油、ひまわり油、ゴマ油、及び米油から選ばれる1種又は2種以上の植物油である。中でも、菜種油を用いることが好ましい。また、菜種油とコーン油の2種、又は菜種油と米油の2種を用いることが好ましい。
第2の油脂は、脱臭工程の前に、通常の方法に従い、脱ガム工程、脱色工程、脱ろう工程を経て精製される。
第2の油脂の脱臭は、一般的に減圧水蒸気蒸留で行われ、バッチ式、半連続式、連続式等により行うことができるが、半連続式又は連続式の脱臭装置で以下に説明する図1の具体例のように行うことが好ましい。
第2の油脂の脱臭温度は、230〜260℃の範囲内であることが好ましく、235〜255℃の範囲内であることがより好ましい。
第2の油脂の温度以外の脱臭条件としては、例えば、脱臭時間30〜90分間、好ましくは50〜90分、蒸気吹込量対油2.0〜5.5質量%、好ましくは3.0〜4.5%である。
図1は、第1の油脂および第2の油脂の脱臭を半連続式又は連続式の脱臭装置で行う場合の脱臭条件(順序・温度)の具体例を示すものである。
第1の油脂および第2の油脂の脱臭を半連続式又は連続式の脱臭装置で行う場合、第1の油脂の脱臭は、第2の油脂の脱臭の後に行われることが好ましい。例えば、図1に示されるように、第1の油脂の脱臭は、第2の油脂の脱臭(第1の工程および第2の工程)の後に行う。これにより、第1の油脂の脱臭直後に脱臭済みの第2の油脂とのブレンドが可能となる。
図1に示される通り、第2の油脂の脱臭工程は、略一定の温度(t)条件下で行われる第1の工程、および該第1の工程に続く上記略一定の温度(t)から第1の油脂の脱臭温度(t)まで温度を降下させる条件下で行われる第2の工程を含む。
また、図1に示される通り、第2の油脂の脱臭工程は、略一定の脱臭温度(t)条件下での第1の油脂の脱臭工程に続く、第1の油脂の脱臭温度(t)から略一定の温度(例えばt)まで温度を上昇させる条件下で行われる第3の工程を含んでもよい。
第1の油脂の脱臭温度(t)は、第2の油脂の脱臭温度(t)よりも低いことが好ましく、第1の油脂の脱臭温度(t)と第2の油脂の脱臭温度(t)の温度差が5〜20℃であることが好ましく、5〜15℃の温度差がより好ましい。
第2の油脂の上記第1の工程の後、上記第2の工程を第1の油脂の脱臭工程の前に、若しくは、上記第2の工程のほかに上記第3の工程を第1の油脂の脱臭工程の後に設けることにより、脱臭温度を変化させる場合における温度のコントロールを実現できる。
(第1の油脂と第2の油脂とをブレンドする工程)
本実施の形態において、脱臭した第1の油脂は、第1の油脂の脱臭後16時間以内に、脱臭済みの第2の油脂とトリエン脂肪酸の含有量が油脂を構成する全脂肪酸に対して5〜50質量%になるようにブレンドされる。これにより、トランス酸含量を低く、かつ、風味および風味安定性を良好にすることができる。
脱臭済みの第2の油脂としては、上記のように第1の油脂および第2の油脂の脱臭を半連続式又は連続式の脱臭装置で行った場合には、前述の第1〜3の工程のいずれかで脱臭された油脂、第1〜3のいずれか2工程で脱臭されたもの、或いは第1〜3の工程で脱臭されたものすべてを用いることができる。
ブレンドするまでの時間は、第1の油脂の脱臭後16時間以内であればよく、15時間以内であることが好ましく、1時間以内であることがより好ましく、最も好ましくは第1の油脂の脱臭直後である。ブレンド処理時間はおよそ30分以内である。したがって、例えば、脱臭後1時間以内というとき、処理時間を含めると実質1.5時間以内を意味する。
ブレンドは、トリエン脂肪酸の含有量が油脂組成物中の油脂を構成する全脂肪酸に対して5〜50質量%になるように行う。10〜45質量%になるよう行うことが好ましく、10〜40質量%になるよう行うことがより好ましく、最も好ましくは15〜35質量%である。
ブレンドする工程において、第1の油脂と第2の油脂とは、第1の油脂:第2の油脂=1:9〜7:3の質量比でブレンドされることが好ましい。したがって、他成分を配合しないとすると、本実施の形態に係る油脂組成物は、第1の油脂を10〜70質量%、第2の油脂を90〜30質量%の割合で含有する。
(油脂組成物中のトランス型脂肪酸含量)
本実施の形態に係る油脂組成物の製造方法により製造された油脂組成物は、該油脂組成物中のトランス型脂肪酸含量が5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。
(その他の配合成分)
本実施の形態に係る油脂組成物に含み得るその他の成分としては、落花生油、高オレイン酸べに花油、高リノール酸べに花油、綿実油、ブドウ種子油、マカデミアナッツ油、ヘーゼルナッツ油、カボチャ種子油、クルミ油、椿油、茶実油、ボラージ油、オリーブ油、米糠油、小麦胚芽油、中鎖脂肪酸含有油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、カカオ脂、品種改良によって低飽和化された油脂、牛脂、ラード、鶏脂、乳脂、魚油、アザラシ油、及び藻類油等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。さらに、これらの水素添加油脂、分別油脂、エステル交換油脂を使用することもできる。また、モノグリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等の乳化剤や、アスコルビン酸脂肪酸エステル、リグナン、コエンザイムQ、リン脂質、オリザノール、ビタミンE、植物ステロール、ジグリセリド、カテキン類、及びポリフェノール類等を添加することができる。さらに、炭水化物、蛋白質、食物繊維、ビタミン、及びミネラル等も添加することができる。
(油脂組成物の用途および油脂組成物を含有する飲食物)
本実施の形態に係る油脂組成物は、従来の食用油と同様に天ぷら、炒め油、離型油等に利用できる。また、本実施の形態に係る油脂組成物を含有する飲食物としては、特に限定されるものではないが、食品、加工食品、健康食品、飲料、ドリンク剤、調味料、菓子類、ペットフード、及び動植物飼料等が挙げられ、例えば、食用油脂類、畜産魚肉加工食品類、練り製品、ルー類、W/O乳化食品、O/W型乳化食品、液状調味料類、炒め調理品類、フラワーペースト類、スプレッド類、焼き菓子類、油ちょう食品類が挙げられる。より具体的には、ハム、ソーセージ、缶詰、ちくわ、カレールー、シチュールー、炒め調理品、ゼラチンカプセル、食用油、ドレッシング、マーガリン、調製マーガリン、ファットスプレッド、クリーム、アイスクリーム、マヨネーズ、マドレーヌ、パン、ケーキ、ドーナツ、マフィン、スコーン、フライ食品、スナック菓子、せんべい、あられ、天ぷら、コロッケ、トンカツ、から揚げ、流動食が挙げられる。
〔本発明の実施の形態の効果〕
本実施の形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)第1の油脂および第2の油脂を含有する油脂のトランス酸含量が5質量%以下で、かつ、風味および風味安定性が良好な油脂組成物の製造方法および該油脂組成物が得られる。
(2)第1の油脂および第2の油脂の脱臭を半連続式又は連続式の脱臭装置で行う脱臭工程において、脱臭温度を変化させた場合における温度のコントロールを実現できる油脂組成物の製造方法が得られる。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はそれらにより限定されるものではない。
<実施例1〜15及び比較例1〜7>
〔脱臭油の調製と風味評価〕
常法で精製した菜種脱色油、フラックス脱色油およびエゴマ脱色油を準備した。準備した菜種脱色油100kgをバッチ式の脱臭装置に投入し、表1に記載の条件(温度、時間)にて脱臭を行い、菜種脱臭油N−1およびN−2を製造した。次いで、準備したフラックス脱色油100kgおよびエゴマ脱色油100kgを各々、バッチ式の脱臭装置に投入し、表1に記載の条件(温度、時間)で脱臭を行い、フラックス脱臭油F−1〜F−7およびエゴマ脱臭油E−1を製造した。
菜種脱色油、フラックス脱色油、エゴマ脱色油、菜種脱臭油、フラックス脱臭油、エゴマ脱臭油のそれぞれについて、油脂を構成する全脂肪酸中のトリエン脂肪酸およびトランス脂肪酸の含有量を下記の方法により測定した。また、脱臭が完了した直後の風味を以下の方法により評価した。
(トリエン脂肪酸、トランス脂肪酸の含有量の測定方法)
トリエン脂肪酸、トランス脂肪酸の測定は、「社団法人 日本油化学会 基準油脂分析試験法(暫15−2003)」および「社団法人 日本油化学会 基準油脂分析試験法(暫17−2007)」に準拠して、油脂の脂肪酸分析に一般的に用いられているキャピラリーガスクロマトグラフ法で分析した。
(風味の評価方法)
20℃にサンプルを保ち、口に含み風味を評価した。
評価方法は、10名の専門パネルにより下記評価基準(AA〜Dの5段階)で行い、その平均値を評価値とした。
<評価基準>
AA:極めて良好な風味
A :とても良好な風味
B :良好な風味
C :やや原料由来の風味が強いが問題ない範囲の風味
D :不良な風味
Figure 2009079153
各フラックス脱臭油F−1〜F−7およびエゴマ脱臭油E−1(第1の油脂)の脱臭が完了した直後から表2〜6に記載の時間経過時に菜種脱臭油(第2の油脂)とブレンドを行い、ペット容器に充填した。
ブレンドした油脂組成物それぞれについて、油脂を構成する全脂肪酸中のトリエン脂肪酸およびトランス脂肪酸の含有量を前述の方法により測定した。また、前述の風味の評価方法にてブレンドした油脂組成物について同様に評価した。風味の評価結果を表2〜6に示す。
Figure 2009079153
表2より明らかな通り、フラックス脱臭油 F−2(脱臭温度200℃)〜F−6(脱臭温度245℃)と菜種脱臭油 N−1とをフラックス脱臭油の脱臭直後にブレンドした油脂組成物は、トランス脂肪酸含有量が少なく(5質量%以下)、かつ、ブレンドしてから90日後においても良好な風味を保持していた。一方、フラックス脱臭油 F−1(脱臭温度190℃)と菜種脱臭油 N−1とをフラックス脱臭油の脱臭直後にブレンドした油脂組成物は、ブレンド後の風味が良くなかった。また、フラックス脱臭油 F−7(脱臭温度255℃)と菜種脱臭油 N−1とをフラックス脱臭油の脱臭直後にブレンドした油脂組成物は、トランス脂肪酸含有量が5質量%を超えてしまった。
Figure 2009079153
Figure 2009079153
表3および表4より明らかな通り、フラックス脱臭油 F−5又はエゴマ脱臭油 E−1と菜種脱臭油 N−1とをフラックス脱臭油又はエゴマ脱臭油の脱臭直後〜15時間後にブレンドした油脂組成物は、トランス脂肪酸含有量が少なく(5質量%以下)、かつ、ブレンドしてから90日後においても良好な風味を保持していた。一方、フラックス脱臭油 F−5と菜種脱臭油 N−1とをフラックス脱臭油の脱臭完了後24時間後〜3日後にブレンドした油脂組成物は、ブレンド後の風味を一定期間、良好に保持することができなかった。
Figure 2009079153
表5より明らかな通り、フラックス脱臭油 F−5と菜種脱臭油 N−2とをフラックス脱臭油の脱臭完了後1時間後にブレンドした油脂組成物は、トランス脂肪酸含有量が少なく(5質量%以下)、かつ、ブレンドしてから90日後においても良好な風味を保持していた。一方、フラックス脱臭油 F−5と菜種脱臭油 N−2とをフラックス脱臭油の脱臭完了後3日後にブレンドした油脂組成物は、ブレンド後の風味を一定期間、良好に保持することができなかった。
Figure 2009079153
表2〜6より明らかな通り、フラックス脱臭油(第1の油脂)10〜70質量%と菜種脱臭油(第2の油脂)90〜30質量%とをフラックス脱臭油(第1の油脂)の脱臭完了後所定時間内にブレンドした油脂組成物は、トランス脂肪酸含有量が少なく(5質量%以下)、かつ、ブレンドしてから90日後においても良好な風味を保持していた。
<実施例16〜18及び比較例8〜11>
〔半連続脱臭装置を用いた製造例1〕
250℃で脱臭運転している半連続脱臭装置(トレイ式、処理量0.088T/min)を用いて、100tの菜種脱色油を脱臭処理し、菜種脱臭油 N−3を製造した。引き続き、脱臭温度を250℃から240℃へ低下させる条件下で7tの菜種脱色油を脱臭処理し、菜種脱臭油 N−4を製造した。次に、脱色油をフラックス脱色油に切替えて、240℃で8t脱臭を行い、フラックス脱臭油 F−8を製造した。さらに、脱色油を菜種脱色油に切替えて、脱臭温度を240℃から250℃に上昇させる条件下で7t脱臭を行い、菜種脱臭油 N−5を製造した。その後、250℃で8tのコーン脱色油を脱臭処理し、コーン脱臭油 C−1を製造した。なお、各脱臭工程の中間地点で各100kgサンプリングを行い、窒素シールして保管した。各脱臭処理工程の脱臭温度および各脱臭油のトリエン脂肪酸とトランス脂肪酸の含有量を表7に示す。
Figure 2009079153
菜種脱臭油 N−4、フラックス脱臭油 F−8、菜種脱臭油N−5およびコーン脱臭油 C−1を、それぞれの脱臭終了と同時に、窒素シールされている同一のタンクに投入、混合して、混合油1を製造した。混合油1中の菜種脱臭油 N−4、フラックス脱臭油 F−8、菜種脱臭油 N−5、コーン脱臭油 C−1の質量比は、7:8:7:8である。
次に、サンプリングした菜種脱臭油 N−3、菜種脱臭油 N−4、フラックス脱臭油 F−8、菜種脱臭油 N−5およびコーン脱臭油 C−1を常温にて30日保管した時点で、菜種脱臭油 N−3、フラックス脱臭油 F−8およびコーン脱臭油 C−1を、菜種脱臭油 N−3:フラックス脱臭油 F−8:コーン脱臭油 C−1=14:8:8の質量比で混合し、混合油2を得た。また、菜種脱臭油 N−4、フラックス油 F−8、菜種脱臭油 N−5およびコーン脱臭油 C−1を、菜種脱臭油 N−4:フラックス油 F−8:菜種脱臭油 N−5:コーン脱臭油 C−1=7:8:7:8の質量比で混合し、混合油3を得た。
混合物1、混合物2、混合物3を600gのペット容器に充填し、常温にて保管した。混合物1、混合物2、混合物3について、前述の風味の評価方法にて評価した。評価結果を表8に示す。
Figure 2009079153
表8より明らかな通り、菜種脱臭油 N−3、菜種脱臭油 N−4、フラックス脱臭油 F−8、菜種脱臭油 N−5およびコーン脱臭油 C−1を、菜種脱臭油 N−4、フラックス脱臭油 F−8、菜種脱臭油 N−5およびコーン脱臭油 C−1それぞれの脱臭直後に菜種脱臭油 N−3にブレンドした混合油1は、トランス脂肪酸含有量が少なく(5質量%以下)、かつ、ブレンドしてから90日後においても良好な風味を保持していた。一方、それぞれの脱臭油の脱臭完了後30日後にブレンドした混合油2および混合油3は、ブレンド後の風味を90日後において良好に保持することができなかった。
〔半連続脱臭装置を用いた製造例2〕
250℃で脱臭運転している半連続脱臭装置(トレイ式、処理量0.088T/min)を用いて、36tの菜種脱色油を脱臭処理し、菜種脱臭油 N−6を製造した。引き続き、脱臭温度を250℃から240℃へ低下させる条件下で7tの菜種脱色油を脱臭処理し、菜種脱臭油 N−7を製造した。次に、脱色油をフラックス脱色油に切替えて、240℃で30t脱臭を行い、フラックス脱臭油 F−9を製造した。さらに、脱色油を菜種脱色油に切替えて、脱臭温度を240℃から250℃に上昇させる条件下で7t脱臭を行い、菜種脱臭油 N−8を製造した。その後、250℃で8tのコーン脱色油を脱臭処理し、コーン脱臭油 C−1を製造した。なお、各脱臭工程の中間地点で各100kgサンプリングを行い、窒素シールして保管した。各脱臭処理工程の脱臭温度および各脱臭油のトリエン脂肪酸とトランス脂肪酸の含有量を表9に示す。
Figure 2009079153
菜種脱臭油 N−7、フラックス脱臭油F−9および菜種脱臭油 N−8を、それぞれの脱臭終了と同時に、窒素シールされている菜種脱臭油 N−6のタンクに投入、混合して、混合油4を製造した。混合油4中の菜種脱臭油とフラックス脱臭油の質量比は50:30である。
次に、サンプリングした菜種脱臭油 N−6、菜種脱臭油 N−7、フラックス脱臭油 F−9および菜種脱臭油 N−8を常温にて30日保管した時点で、菜種脱臭油 N−6、菜種脱臭油 N−7、フラックス脱臭油 F−9および菜種脱臭油 N−8を、菜種脱臭油 N−6:菜種脱臭油 N−7:フラックス脱臭油 F−9:菜種脱臭油 N−8=36:7:30:7の質量比で混合し、混合油5を製造した。
さらに、混合油4および混合油5にそれぞれ米サラダ油(築野食品工業株式会社)を混合油4(混合油5):米サラダ油=80:20の質量比で混合し、混合油6および混合油7を製造した。
混合物4、混合物5、混合物6および混合油7を600gのペット容器に充填し、常温にて保管した。混合物1、混合物2、混合物3について、前述の風味の評価方法にて評価した。評価結果を表10に示す。
Figure 2009079153
表10より明らかな通り、菜種脱臭油 N−6、菜種脱臭油 N−7、フラックス脱臭油 F−9および菜種脱臭油 N−8を、菜種脱臭油 N−7、フラックス脱臭油 F−9および菜種脱臭油 N−8それぞれの脱臭直後に菜種脱臭油 N−6にブレンドした混合油4およびさらに米サラダ油をブレンドした混合油6は、トランス脂肪酸含有量が少なく(5質量%以下)、かつ、ブレンドしてから90日後においても良好な風味を保持していた。一方、それぞれの脱臭油の脱臭完了後30日後にブレンドした混合油5およびさらに米サラダ油をブレンドした混合油7は、ブレンド後の風味を30日後、或いは90日後において良好に保持することができなかった。
第1の油脂および第2の油脂の脱臭を半連続式又は連続式の脱臭装置で行う場合の脱臭条件(順序・温度)の具体例を示す。

Claims (11)

  1. 構成脂肪酸中に3つの二重結合を有する脂肪酸(以下、トリエン脂肪酸という。)を40質量%以上含有する第1の油脂を198〜247℃の範囲内の温度で脱臭する工程と、前記第1の油脂の脱臭後16時間以内に、当該脱臭した第1の油脂と、脱臭済みの第2の油脂とをトリエン脂肪酸の含有量が油脂を構成する全脂肪酸に対して5〜50質量%になるようにブレンドする工程とを有することを特徴とする油脂組成物の製造方法。
  2. 前記第1の油脂および前記第2の油脂の脱臭は、半連続式又は連続式の脱臭装置で行われ、かつ、前記第1の油脂の脱臭は、前記第2の油脂の脱臭の後に行われることを特徴とする請求項1に記載の油脂組成物の製造方法。
  3. 前記第2の油脂の脱臭工程は、略一定の温度条件下で行われる第1の工程および該第1の工程に続く前記略一定の温度から前記第1の油脂の脱臭温度まで温度を降下させる条件下で行われる第2の工程を含むことを特徴とする請求項2に記載の油脂組成物の製造方法。
  4. 前記第1の油脂の脱臭温度は、前記第1の工程の脱臭温度よりも低い略一定の温度条件下で行われることを特徴とする請求項3に記載の油脂組成物の製造方法。
  5. 前記第2の油脂の脱臭が、前記第1の油脂の脱臭工程に続く前記第1の油脂の脱臭温度から略一定の温度まで温度を上昇させる条件下で行われる第3の工程により更に行われることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の油脂組成物の製造方法。
  6. 前記第2の油脂は、230〜260℃の範囲内の温度で脱臭されたものであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の油脂組成物の製造方法。
  7. 前記第1の油脂は、フラックス油、エゴマ油及びシソ実油から選ばれる1種又は2種以上の植物油であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の油脂組成物の製造方法。
  8. 前記第2の油脂は、菜種油、大豆油、コーン油、ひまわり油、ゴマ油、及び米油から選ばれる1種又は2種以上の植物油であることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の油脂組成物の製造方法。
  9. 前記ブレンドする工程において、前記第1の油脂と前記第2の油脂とは、前記第1の油脂:前記第2の油脂=1:9〜7:3の質量比でブレンドされることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の油脂組成物の製造方法。
  10. 前記ブレンドする工程は、前記第1の油脂の脱臭後1時間以内に行われることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の油脂組成物の製造方法。
  11. 請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の油脂組成物の製造方法により製造された油脂組成物であって、当該油脂組成物の油脂を構成する全脂肪酸中のトランス型脂肪酸の含有量が5質量%以下であることを特徴とする油脂組成物。
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