JP2009064837A - 半導体レーザ及び半導体光集積素子 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】半導体レーザを、半導体基板上に、電流注入によって利得を発生しうる光導波路と、位相シフトを有し、光導波路の全長にわたって光導波路に沿って設けられる回折格子とを備えるものとし、光導波路に電流注入を行なっていない状態で、両端部の近傍領域のブラッグ波長が、位相シフトの近傍領域のブラッグ波長よりも長くなるように構成する。
【選択図】図3
Description
従来、単一波長で安定して発振する半導体レーザとして、位相シフトを有する分布帰還(DFB)レーザが用いられている。
しかしながら、図12(A)に示すように、DFBレーザの回折格子10の中央に位相シフト(ここではλ/4位相シフト)11が設けられている場合、結合係数を大きくすると、図12(B)に示すように、位相シフト11付近に光強度(光電界強度)の集中が発生し、大きな光強度によって位相シフト11付近における誘導放出レートが高くなり、電子正孔対(キャリア)が減少する。
ここで、キャリア密度は、プラズマ効果によって、レーザの光導波路を構成する半導体材料の屈折率(導波路屈折率)に影響を与える。
このため、キャリア密度の不均一が生じると、導波路屈折率の不均一が生じる。つまり、位相シフト11付近では、キャリア密度が小さいため、導波路屈折率が高くなり、端部では、キャリア密度が高いため、導波路屈折率が低くなる。
ここで、図13では、注入電流値を7mA、10mA、20mA、40mA、60mA、80mA、100mAというように増大させていった場合の各発振スペクトル(図13中、上側のものほど注入電流値が大きい)を示している。
ところで、このような空間的ホールバーニング現象を回避するために、いくつかの方法が提案されている。
Soda et al., "Stability in Single Longitudinal Mode Operation in GaInAsP/InP Phase-Adjusted DFB Lasers", IEEE Journal of Quantum Electronics, vol. QE-23, No.6, June 1987, pp. 804-814
また、上述の特許文献2において提案されている方法では、結合係数を共振器内部で変化させるため、回折格子の深さやラインアンドスペースの比率を共振器内で変化させるなどの複雑な工程を必要とする。また、結合係数を下げた部分を有するため、しきい値が高くなってしまう。
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態にかかる半導体レーザについて、図1〜図6を参照しながら説明する。
そして、光導波路200に電流注入を行なっていない状態で、回折格子300が設けられている領域の両端部(素子の両端部;共振器の両端部)の近傍領域(端部から所望の長さを有する領域)のブラッグ波長が、位相シフト310の近傍領域(位相シフト310に隣接する領域)のブラッグ波長よりも長くなるように構成されている。
具体的には、図2に示すように、両端部の近傍領域に設けられている回折格子300の周期Λ2が、位相シフト310の近傍領域に設けられている回折格子300の周期Λ1よりも0.05%長くなっている。なお、位相シフト310の近傍領域に設けられている回折格子300の周期Λ1は、所望のブラッグ波長(ここでは1550nm)に応じて設定される。
ここで、図4は、上述のように構成される半導体レーザにおいて、注入電流値を7mA,10mA,20mA,40mA,60mA,80mA,100mAというように増大させていった場合の各発振スペクトル(図4中、上側のものほど注入電流値が大きい)を示している。
したがって、本実施形態にかかる半導体レーザによれば、所望の光出力が得られるように注入電流値を大きくした場合にも、安定した単一波長動作及び低しきい値動作を実現できるという利点がある。
ここで、図5(B)は、λ/4位相シフト310を中央に設けた場合であって、レーザ長(回折格子300が設けられている領域の全長)をLとし、片側のブラッグ波長を変化させる領域(回折格子300の周期が長い領域)の長さをL′とした場合[図5(A)参照]のブラッグ波長の変化率(%)と高次モード抑圧比(サイドモード抑圧比)(dB)との関係を示している。なお、高次モード抑圧比とは、単一波長性を表すものであり、基本モードの光強度(光電界強度)に対して、高次モード(サイドモード)の光強度がどれだけ抑圧されたかを示すものである。
例えば、図5(B),図6に示すように、両端部の近傍領域(回折格子300の周期が長い領域;ブラッグ波長を変化させる領域)の長さが、いずれも、全体の長さ(レーザ長)の1/8〜3/8の範囲内の長さになっていれば(即ち、一方の端部の近傍領域の長さが、全体の長さの1/8〜3/8の範囲内の長さになっていれば)、単一波長安定動作性に優れ、低しきい値な半導体レーザを実現できる。つまり、片側のブラッグ波長を変化させる領域の長さL′のレーザ長Lに対する割合L′/Lが1/8〜3/8の範囲内であれば、単一波長安定動作性に優れ、低しきい値な半導体レーザを実現できる。なお、ここでは、片側のブラッグ波長を変化させる領域の長さL′のレーザ長Lに対する割合L′/Lが、1/8の場合、1/4の場合、3/8の場合をそれぞれ示している。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態にかかる半導体レーザについて、図7,図8を参照しながら説明する。
具体的には、図7に示すように、両端部の近傍領域に設けられている光導波路200の幅(導波路幅)d2は1.7μmであり、位相シフト310の近傍領域に設けられている光導波路200の幅d1は1.6μmであり、導波路幅d2が、導波路幅d1と比較して0.1μm広くなっている。
このように、導波路幅d2が導波路幅d1よりも0.1μm広くなっていると、両端部の近傍領域に設けられている光導波路200の等価屈折率は、位相シフト310の近傍領域に設けられている光導波路200の等価屈折率よりも0.05%大きくなる(等価的に大きくなる)。つまり、光導波路200に電流注入を行なっていない状態で、両端部(素子の両端部;共振器の両端部)の近傍領域(端部から所望の長さを有する領域)のブラッグ波長が、位相シフト310の近傍領域(位相シフト310に隣接する領域)のブラッグ波長よりも0.05%長くなる(等価的に長くなる)。
したがって、本実施形態にかかる半導体レーザによれば、上述の第1実施形態のものと同様に、所望の光出力が得られるように注入電流値を大きくした場合にも、安定した単一波長動作及び低しきい値動作を実現できるという利点がある。
例えば、両端部の近傍領域(光導波路200の幅が広い領域;ブラッグ波長を変化させる領域)の長さが、いずれも、全体の長さ(レーザ長)の1/8〜3/8の範囲内の長さになっていれば(即ち、一方の端部の近傍領域の長さが、全体の長さの1/8〜3/8の範囲内の長さになっていれば)、単一波長安定動作性に優れ、低しきい値な半導体レーザを実現できる[図5(B),図6参照]。
図8に示すように、幅1.6μmの光導波路を基準として、導波路幅を0.05〜0.25μmの範囲で変化させた場合、ブラッグ波長の変化率は0.025〜0.100%の範囲となる。
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態にかかる半導体レーザについて、図9を参照しながら説明する。
つまり、本半導体レーザは、図9に示すように、光導波路200が、電流注入によって利得を発生しうる利得導波路部(例えばGaInAsPの多重量子井戸構造からなる導波路コア層を備える)210と、電流注入によって屈折率が変化してレーザの発振波長を制御しうる波長制御導波路部(透明導波路部;例えばGaInAsPなどの電流注入によって屈折率が変化する半導体材料からなるによって導波路コア層を備える)220とを光軸方向に交互に備える。つまり、光導波路200は、利得導波路部210と波長制御導波路部220とが周期的に配列されたものとして構成される。なお、ここでは、光導波路200の両端部は利得導波路部210になっている。また、図9では、上述の第1実施形態(図1参照)と同一のものには同一の符号を付している。
また、利得導波路部210の上部には、図9に示すように、利得導波路部210に電流を注入するための電極510が設けられている。また、波長制御導波路部220の上部には、図9に示すように、波長制御導波路部220に電流を注入するための電極520が設けられている。なお、半導体基板100の下部には電極400が設けられている。
具体的には、上述の第2実施形態の場合と同様に(図7参照)、両端部の近傍領域に設けられている光導波路200の幅(導波路幅)d2は1.7μmであり、位相シフト310の近傍領域に設けられている光導波路200の幅d1は1.6μmであり、導波路幅d2が、導波路幅d1と比較して0.1μm広くなっている。
このように、導波路幅d2が導波路幅d1よりも0.1μm広くなっていると、両端部の近傍領域に設けられている光導波路200の等価屈折率は、位相シフト310の近傍領域に設けられている光導波路200の等価屈折率よりも0.05%大きくなる(等価的に大きくなる)。つまり、光導波路200に電流注入を行なっていない状態で、両端部(素子の両端部;共振器の両端部)の近傍領域(端部から所望の長さを有する領域)のブラッグ波長が、位相シフト310の近傍領域(位相シフト310に隣接する領域)のブラッグ波長よりも0.05%長くなる(等価的に長くなる)。
したがって、本実施形態にかかる半導体レーザによれば、上述の第1実施形態のものと同様に、所望の光出力が得られるように注入電流値を大きくした場合にも、安定した単一波長動作及び低しきい値動作を実現できるという利点がある。
例えば、両端部の近傍領域(光導波路200の幅が広い領域;ブラッグ波長を変化させる領域)の長さが、いずれも、全体の長さ(レーザ長)の1/8〜3/8の範囲内の長さになっていれば(即ち、一方の端部の近傍領域の長さが、全体の長さの1/8〜3/8の範囲内の長さになっていれば)、単一波長安定動作性に優れ、低しきい値な半導体レーザを実現できる[図5(B),図6参照]。
このため、両端部の近傍領域と位相シフト310の近傍領域とで光導波路200の幅を0.05〜0.25μmの範囲で変化させれば、光導波路200に電流注入を行なっていない状態で、両端部の近傍領域のブラッグ波長を、位相シフト310の近傍領域のブラッグ波長よりも0.025〜0.100%の範囲で長くすることができ、これにより、単一波長安定動作性に優れ、低しきい値な半導体レーザを実現できる[図5(B),図6参照]。
[その他]
なお、上述の各実施形態では、半導体基板100をn型InP基板としているが、これに限られるものではなく、例えばp型InP基板や半絶縁性InP基板(SI−InP基板)を用いても良いし、例えばGaAs,GaNなどの他の半導体基板を用いても良い。但し、InP基板を用いることで光通信に使用する波長帯の光を発生する半導体レーザが得られ、n型基板を用いることで、電気的特性に優れ、かつ、作製が容易な半導体レーザが得られる。
つまり、位相シフト量が1/4波長のλ/4位相シフトを1箇所に設けているが、これに限られるものではなく、例えば、位相シフト量が1/8波長のλ/8位相シフト,位相シフト量が3/8波長の3λ/8位相シフトなどを用いても良いし、位相シフトを複数箇所に設けても良い。但し、位相シフト量が1/4波長のλ/4位相シフトを用いることで、波長安定性やしきい値などの特性が最も良くなる。
このような場合も、上述の各実施形態の場合と同様に、光導波路200に電流注入を行なっていない状態で、両端部(素子の両端部;共振器の両端部)の近傍領域(端部から所望の長さを有する領域)のブラッグ波長が、位相シフト310の近傍領域(位相シフト310に隣接する領域)のブラッグ波長よりも長くなるように構成すれば良い。なお、このような構成の半導体レーザであるかは、両端部の近傍領域及び位相シフトの近傍領域の各領域における透過、反射スペクトルを観測することによって判別することができる。
(付記1)
半導体基板上に、電流注入によって利得を発生しうる光導波路と、位相シフトを有し、前記光導波路の全長にわたって前記光導波路に沿って設けられる回折格子とを備え、
前記光導波路に電流注入を行なっていない状態で、両端部の近傍領域のブラッグ波長が、前記位相シフトの近傍領域のブラッグ波長よりも長くなるように構成されていることを特徴とする、半導体レーザ。
前記光導波路に電流注入を行なっていない状態で、ブラッグ波長が、段階的に変化するように構成されていることを特徴とする、付記1記載の半導体レーザ。
(付記3)
前記光導波路に電流注入を行なっていない状態で、前記両端部の近傍領域のブラッグ波長が、前記位相シフトの近傍領域のブラッグ波長よりも0.025〜0.100%の範囲で長くなるように構成されていることを特徴とする、付記1又は2記載の半導体レーザ。
前記両端部の近傍領域に設けられている前記回折格子の周期が、前記位相シフトの近傍領域に設けられている前記回折格子の周期よりも0.025〜0.100%の範囲で長いことを特徴とする、付記1〜3のいずれか1項に記載の半導体レーザ。
(付記5)
前記両端部の近傍領域に設けられている前記光導波路の等価屈折率が、前記位相シフトの近傍領域に設けられている前記光導波路の等価屈折率よりも0.025〜0.100%の範囲で大きいことを特徴とする、付記1〜3のいずれか1項に記載の半導体レーザ。
前記両端部の近傍領域に設けられている前記光導波路の幅が、前記位相シフトの近傍領域に設けられている前記光導波路の幅よりも0.05〜0.25μmの範囲で広いことを特徴とする、付記1〜5のいずれか1項に記載の半導体レーザ。
(付記7)
前記両端部の一方の端部の近傍領域の長さが、全体の長さの1/8〜3/8の範囲内の長さであることを特徴とする、付記1〜6のいずれか1項に記載の半導体レーザ。
前記光導波路に電流注入を行なっていない状態で、ブラッグ波長が、前記位相シフトの近傍から両端部へ向けて連続的に変化するように構成されていることを特徴とする、付記1記載の半導体レーザ。
(付記9)
前記光導波路に電流注入を行なっていない状態で、中央から一方の端部までの片側の領域においてブラッグ波長を変化させた領域の長さのレーザ長に対する割合と、前記ブラッグ波長を変化させた領域におけるブラッグ波長の変化率の平均値との積が、0.003125〜0.037500%の範囲内であることを特徴とする、付記8記載の半導体レーザ。
前記半導体基板が、InP基板であることを特徴とする、付記1〜9のいずれか1項に記載の半導体レーザ。
(付記11)
前記位相シフトが、1箇所に設けられており、位相シフト量が1/4波長であることを特徴とする、付記1〜10のいずれか1項に記載の半導体レーザ。
前記位相シフトが、中央に設けられていることを特徴とする、付記11記載の半導体レーザ。
(付記13)
前記光導波路が、電流注入によって利得を発生しうる利得導波路部と、電流注入又は電圧印加によって発振波長を制御しうる波長制御導波路部とを光軸方向に交互に備えることを特徴とする、付記1〜12のいずれか1項に記載の半導体レーザ。
前記波長制御導波路部が、電流注入によって屈折率が変化するように構成されていることを特徴とする、付記13記載の半導体レーザ。
(付記15)
前記波長制御導波路部が、逆バイアス電圧を印加することによって屈折率が変化するように構成されていることを特徴とする、付記13記載の半導体レーザ。
付記1〜15のいずれか1項に記載の半導体レーザと、
前記半導体レーザが形成されている半導体基板上に設けられ、前記半導体レーザと光学的に結合された光機能素子とを備えることを特徴とする半導体光集積素子。
200 光導波路
210 利得導波路部
220 波長制御導波路部
300 回折格子
310 位相シフト
400,500,510,520 電極
Claims (10)
- 半導体基板上に、電流注入によって利得を発生しうる光導波路と、位相シフトを有し、前記光導波路の全長にわたって前記光導波路に沿って設けられる回折格子とを備え、
前記光導波路に電流注入を行なっていない状態で、両端部の近傍領域のブラッグ波長が、前記位相シフトの近傍領域のブラッグ波長よりも長くなるように構成されていることを特徴とする、半導体レーザ。 - 前記光導波路に電流注入を行なっていない状態で、前記両端部の近傍領域のブラッグ波長が、前記位相シフトの近傍領域のブラッグ波長よりも0.025〜0.100%の範囲で長くなるように構成されていることを特徴とする、請求項1記載の半導体レーザ。
- 前記両端部の近傍領域に設けられている前記回折格子の周期が、前記位相シフトの近傍領域に設けられている前記回折格子の周期よりも0.025〜0.100%の範囲で長いことを特徴とする、請求項1又は2記載の半導体レーザ。
- 前記両端部の近傍領域に設けられている前記光導波路の等価屈折率が、前記位相シフトの近傍領域に設けられている前記光導波路の等価屈折率よりも0.025〜0.100%の範囲で大きいことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体レーザ。
- 前記両端部の近傍領域に設けられている前記光導波路の幅が、前記位相シフトの近傍領域に設けられている前記光導波路の幅よりも0.05〜0.25μmの範囲で広いことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体レーザ。
- 前記両端部の一方の端部の近傍領域の長さが、全体の長さの1/8〜3/8の範囲内の長さであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の半導体レーザ。
- 前記光導波路に電流注入を行なっていない状態で、ブラッグ波長が、前記位相シフトの近傍から両端部へ向けて連続的に変化するように構成されていることを特徴とする、請求項1記載の半導体レーザ。
- 前記光導波路に電流注入を行なっていない状態で、中央から一方の端部までの片側の領域においてブラッグ波長を変化させた領域の長さのレーザ長に対する割合と、前記ブラッグ波長を変化させた領域におけるブラッグ波長の変化率の平均値との積が、0.003125〜0.037500%の範囲内であることを特徴とする、請求項7記載の半導体レーザ。
- 前記光導波路が、電流注入によって利得を発生しうる利得導波路部と、電流注入又は電圧印加によって発振波長を制御しうる波長制御導波路部とを光軸方向に交互に備えることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の半導体レーザ。
- 請求項1〜9のいずれか1項に記載の半導体レーザと、
前記半導体レーザが形成されている半導体基板上に設けられ、前記半導体レーザと光学的に結合された光機能素子とを備えることを特徴とする半導体光集積素子。
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