JP2009063161A - 無段変速機の制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】無段変速機が搭載された車両において、アクセル踏み込みや踏み戻し時における応答性及びドライバビリティの向上をはかる。
【解決手段】車速及びアクセル開度に基づいてアップ用マップMa及びダウン用マップMbを用いて、ロー側の目標変速比α及びハイ側の目標変速比βを算出し、その目標変速比αが無段変速機の前回の変速比よりも「ハイ」であるときには、その目標変速比αを無段変速機の変速比とし、前記目標変速比βが無段変速機の前回の変速比よりも「ロー」であるときには、その目標変速比βを無段変速機の変速比とする。そして、前記目標変速比αが実変速比よりも「ハイ」でなく、かつ、前記目標変速比βが実変速比よりも「ロー」でない領域については、無段変速機の変速比をホールドすることで、アクセル踏み込みや踏み戻し時におけるアクセル操作の応答性を向上させる。
【選択図】図6

Description

本発明は、車両に搭載された無段変速機の変速比を制御する無段変速機の制御装置に関する。
エンジン(内燃機関)を搭載した車両において、エンジンが発生するトルク及び回転速度を車両の走行状態に応じて適切に駆動輪に伝達する変速機として、エンジンと駆動輪との間の変速比を自動的に最適設定する自動変速機が知られている。
車両に搭載される自動変速機としては、例えば、クラッチ及びブレーキと遊星歯車装置とを用いて変速比(ギヤ段)を設定する遊星歯車式変速機や、変速比を無段階に調整するベルト式無段変速機(CVT:Continuously Variable Transmission)がある。
ベルト式無段変速機は、プーリ溝(V溝)を備えたプライマリプーリ(入力側プーリ)とセカンダリプーリ(出力側プーリ)とにベルトを巻き掛け、一方のプーリのプーリ溝の溝幅を拡大すると同時に、他方のプーリのプーリ溝の溝幅を狭くすることにより、それぞれのプーリに対するベルトの巻き掛け半径(有効径)を連続的に変化させて変速比を無段階に設定するように構成されている。このベルト式無段変速機において伝達されるトルクは、ベルトとプーリとを相互に接触させる方向に作用する荷重に応じたトルクとなり、従ってベルトに張力を付与するようにプーリによってベルトを挟み付けている。
また、ベルト式無段変速機の変速は、上記のように、プーリ溝の溝幅を拡大・縮小させることにより行っている。具体的には、プライマリプーリ及びセカンダリプーリをそれぞれ固定シーブと可動シーブとによって構成し、可動シーブをその背面側に設けた油圧アクチュエータにより軸方向に前後動させることにより変速を行う。
このようにベルト式無段変速機では、ベルトに張力を付与するためにプーリによってベルトを挟み付けるとともに、変速を実行するためにプーリによるベルトの挟み付け状態を変更している。このため、セカンダリプーリ側の油圧アクチュエータには、エンジン負荷などに代表される要求トルクに応じた油圧を供給して必要な伝達トルク容量を確保し、また、プライマリプーリ側の油圧アクチュエータには、変速を行うための油圧を供給することで、プライマリプーリの溝幅を変更すると同時にセカンダリプーリの溝幅を変更している。
そして、このような無段変速機が搭載された車両においては、例えば車速とアクセル開度に応じた最適な変速比を得るための変速比マップ(図9参照)がECU(Electronic Control Unit)等に記憶されており、車速及びアクセル開度に基づいて変速比マップを参照して目標変速比を算出し、その目標変速比に基づいて、プライマリプーリ側の油圧アクチュエータを制御することによって変速比を自動的に設定している(例えば、特許文献1参照)。
ここで、無段変速機の変速制御に関する技術として下記の特許文献2に記載のものがある。この特許文献2に記載の技術では、低速型シフトスケジュールと高速型シフトスケジュールとを有し、低速型シフトスケジュールから高速型シフトスケジュールに切り換える際に、目標エンジン回転速度または目標駆動プーリ回転速度を時間の関数としてを徐々に増大させることで、急激なトルク変動が生じないようにしている。
特開2001−330135号公報 特許第2605840号明細書
ところで、無段変速機の変速制御においては、上記したように、車速及びアクセル開度に基づいて図9に示すような変速比マップ等を参照して目標変速比を算出しているので、最終目標変速比が静的に一意に決まってしまう。このため、車速やアクセル開度(目標パワー)が変化すると、それに伴って変速比が随時変化するので、アクセル踏み込みや踏み戻しの際に常に変速比が変化してしまい、アクセル操作に対する応答性が低下していた。
こうした点を考慮して、アクセル踏み込みや踏み戻し時に変速比の変化量を制限する過渡制御が実施されているが、このような過渡制御においても、静的な目標は動くため、ドライバビリティを改善できる程度にまで変速比の変化を制限することはできない。
なお、上記した特許文献2には、低速型シフトスケジュールから高速型シフトスケジュールに切り換える際に、目標エンジン回転速度または目標駆動プーリ回転速度を時間の関数としてを徐々に増大させることで、急激なトルク変動が生じないようにする技術が開示されているだけであり、アクセル踏み込みや踏み戻し時の変速比の変化については全く考慮されていない。従って、特許文献2に記載の技術を利用しても、上記した問題を解決することはできない。
本発明はそのような実情を考慮してなされたもので、無段変速機が搭載された車両において、アクセル踏み込みや踏み戻し時における応答性及びドライバビリティの向上をはかることが可能な無段変速機の制御装置の提供を目的とする。
上記の目的を達成するため、本発明は、車両に搭載された無段変速機の変速比を制御する無段変速機の制御装置において、前記車両の走行状態(具体的には車速及びアクセル開度)に基づいて第1の目標変速比を算出する第1の目標変速比算出手段と、前記車両の走行状態に基づいて前記第1の目標変速比よりも高い第2の目標変速比を算出する第2の目標変速比算出手段とを備えている。そして、前記第1の目標変速比算出手段によって算出される第1の目標変速比が前記無段変速機の変速比よりも「ハイ」でなく、かつ、前記第2の目標変速比算出手段によって算出される第2の目標変速比が前記無段変速機の変速比よりも「ロー」でない領域については、前記無段変速機の変速比をホールドすることを特徴としている。
本発明の具体的な構成として、前記第1の目標変速比算出手段によって算出される第1の目標変速比が無段変速機の前回の変速比よりも「ハイ」であるときには、当該第1の目標変速比を無段変速機の今回の変速比とすることで、無段変速機の変速比のロー側の下限をガードするという構成を挙げることができる。また、前記第2の目標変速比算出手段によって算出される第2の目標変速比が無段変速機の前回の変速比よりも「ロー」であるときには、当該第2の目標変速比を前記無段変速機の今回の変速比とすることで、無段変速機の変速比のハイ側の上限をガードするという構成を挙げることができる。
本発明によれば、アクセル踏み込みや踏み戻し時におけるアクセル操作の応答性を向上させることができる。この点について以下に説明する。
まず、本発明において、例えば、目標パワー(アクセル開度)が低下する側に変化しているときには、第1の目標変速比算出手段にて算出される第1の目標変速比(例えば燃費を優先した目標変速比)を用いて無段変速機の変速比を制御する。この変速制御中は、第1の目標変速比(α)が無段変速機の変速比(前回の変速比)よりも「ハイ」となる(図7参照)。次に、目標パワーが低下する側に変化している過程でアクセルが踏み込まれて目標パワーが反転すると、第1の目標変速比が無段変速機の変速比(前回の変速比)よりも「ハイ」でなくなり(第1の目標変速比(α)≦前回変速比)、この時点で無段変速機の変速比を第1の目標変速比にホールドする。そして、目標パワーが上昇する過程において、第2の目標変速比(β)が前記ホールドした変速比よりも「ロー」となった以後は、第2の目標変速比算出手段にて算出される第2の目標変速比(例えば目標パワーや駆動力を優先した目標変速比)を用いて無段変速機の変速比を制御する。
このように、目標パワー(アクセル開度)が低下する側に変化しているときに、アクセルの踏み込みにより目標パワーが反転した場合、無段変速機の変速比をホールドすることで、エンジントルクだけでパワー及び駆動力を変化させることができ、アクセル操作に対する応答性・ダイレクト感が向上する。
また、本発明において、例えば、目標パワーが上昇する側に変化しているときには、第2の目標変速比算出手段にて算出される第2の目標変速比を用いて無段変速機の変速比を制御する。この変速制御中は第2の目標変速比(β)が無段変速機の変速比(前回の変速比)よりも「ロー」となる(図8参照)。次に、目標パワーが上昇する側に変化している過程でアクセルの踏み戻し操作が行われて目標パワーが反転すると、第2の目標変速比が無段変速機の変速比(前回の変速比)よりも「ロー」でなくなり(第2の目標変速比(β)≧前回変速比)、この時点で無段変速機の変速比を第2の目標変速比にホールドする。そして、目標パワーが上昇する過程において、第1の目標変速比(α)が前記ホールドした変速比よりも「ハイ」となった以後は、第1の目標変速比算出手段にて算出される第1の目標変速比を用いて無段変速機の変速比を制御する。
このように、目標パワーが上昇する側に変化しているときに、アクセルの踏み戻し操作により目標パワーが反転した場合、無段変速機の変速比をホールドすることで、アクセル操作に対する応答性を向上させることができる。
本発明において、車両の車速及びアクセル開度をパラメータとする第1のマップを用いて第1の目標変速比を算出し、車両の車速及びアクセル開度をパラメータとする第2のマップを用いて前記第2の目標変速比を算出する。そして、アクセル開度が下がるときには前記第1のマップ(アップ用マップ)を用いて算出した第1の目標変速比(例えば燃費を優先した目標変速比)に基づいて無段変速機の変速比を制御し、アクセル開度が高くなるときには前記第2のマップ(ダウン用マップ)を用いて算出した第2の目標変速比(例えば目標パワーや駆動力を優先した目標変速比)に基づいて無段変速機の変速比を制御するという構成を採用してもよい。
なお、第1の目標変速比及び第2の目標変速比は、上記のようにマップを用いて算出するようにしてもよいし、第1の目標変速比演算器及び第2の目標変速比演算器を用いて算出するようにしてもよい。
本発明によれば、無段変速機が搭載された車両において、アクセル踏み込みや踏み戻し時における応答性及びドライバビリティを向上をはかることができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明を適用する車両の概略構成図である。
この例の車両は、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)型車両であって、走行用動力源であるエンジン(内燃機関)1、トルクコンバータ2、前後進切換装置3、ベルト式無段変速機(CVT)4、減速歯車装置5、差動歯車装置6、及び、ECU8(図2参照)などが搭載されており、そのECU8、後述する車速センサ106、アクセル開度センサ107、及び、油圧制御回路20などによって無段変速機の制御装置が実現されている。
エンジン1の出力軸であるクランクシャフト11はトルクコンバータ2に連結されており、エンジン1の出力が、トルクコンバータ2から前後進切換装置3、ベルト式無段変速機4及び減速歯車装置5を介して差動歯車装置6に伝達され、左右の駆動輪7L、7Rへ分配される。
これらエンジン1、トルクコンバータ2、前後進切換装置3、ベルト式無段変速機4、及び、ECU8の各部について以下に説明する。
−エンジン−
エンジン1は、例えば多気筒ガソリンエンジンである。エンジン1に吸入される吸入空気量は電子制御式のスロットルバルブ12により調整される。スロットルバルブ12は運転者のアクセルペダル操作とは独立してスロットル開度を電子的に制御することが可能であり、その開度(スロットル開度)はスロットル開度センサ102によって検出される。また、エンジン1の冷却水温は水温センサ103によって検出される。
スロットルバルブ12のスロットル開度はECU8によって駆動制御される。具体的には、エンジン回転数センサ101によって検出されるエンジン回転数NE、及び、運転者のアクセルペダル踏み込み量(アクセル開度Acc)等のエンジン1の運転状態に応じた最適な吸入空気量(目標吸気量)が得られるようにスロットルバルブ12のスロットル開度を制御している。より具体的には、スロットル開度センサ102を用いてスロットルバルブ12の実際のスロットル開度を検出し、その実スロットル開度が、上記目標吸気量が得られるスロットル開度(目標スロットル開度)に一致するようにスロットルバルブ12のスロットルモータ13をフィードバック制御している。
−トルクコンバータ−
トルクコンバータ2は、入力側のポンプインペラ21、出力側のタービンランナ22、及び、トルク増幅機能を発現するステータ23などを備えており、ポンプインペラ21とタービンランナ22との間で流体を介して動力伝達を行う。ポンプインペラ21はエンジン1のクランクシャフト11に連結されている。タービンランナ22はタービンシャフト28を介して前後進切換装置3に連結されている。
トルクコンバータ2には、当該トルクコンバータ2の入力側と出力側とを直結するロックアップクラッチ24が設けられている。このロックアップクラッチ24を完全係合させることにより、ポンプインペラ21とタービンランナ22とが一体回転する。また、ロックアップクラッチ24を所定のスリップ状態(半係合状態)で係合させることにより、駆動時には所定のスリップ量でタービンランナ22がポンプインペラ21に追随して回転する。なお、トルクコンバータ2には、ポンプインペラ21に連結して駆動される機械式のオイルポンプ(油圧発生源)27が設けられている。
−前後進切換装置−
前後進切換装置3は、ダブルピニオン型の遊星歯車機構30、前進用クラッチ(入力クラッチ)C1及び後進用ブレーキB1を備えている。
遊星歯車機構30のサンギヤ31はトルクコンバータ2のタービンシャフト28に一体的に連結されており、キャリア33はベルト式無段変速機4の入力軸40に一体的に連結されている。また、これらキャリア33とサンギヤ31とは前進用クラッチC1を介して選択的に連結され、リングギヤ32は後進用ブレーキB1を介してハウジングに選択的に固定されるようになっている。
前進用クラッチC1及び後進用ブレーキB1は、後述する油圧制御回路20によって係合・解放される油圧式摩擦係合要素であって、前進用クラッチC1が係合され、後進用ブレーキB1が解放されることにより、前後進切換装置3が一体回転状態となって前進用動力伝達経路が成立(達成)し、この状態で、前進方向の駆動力がベルト式無段変速機4側へ伝達される。
一方、後進用ブレーキB1が係合され、前進用クラッチC1が解放されると、前後進切換装置3によって後進用動力伝達経路が成立(達成)する。この状態で、入力軸40はタービンシャフト28に対して逆方向へ回転し、この後進方向の駆動力がベルト式無段変速機4側へ伝達される。また、前進用クラッチC1及び後進用ブレーキB1がともに解放されると、前後進切換装置3は動力伝達を遮断するニュートラル(遮断状態)になる。
−ベルト式無段変速機−
ベルト式無段変速機4は、入力側のプライマリプーリ41、出力側のセカンダリプーリ42、及び、これらプライマリプーリ41とセカンダリプーリ42とに巻き掛けられた金属製のベルト43などを備えている。
プライマリプーリ41は、有効径が可変な可変プーリであって、入力軸40に固定された固定シーブ411と、入力軸40に軸方向のみの摺動が可能な状態で配設された可動シーブ412によって構成されている。セカンダリプーリ42も同様に有効径が可変な可変プーリであって、出力軸44に固定された固定シーブ421と、出力軸44に軸方向のみの摺動が可能な状態で配設された可動シーブ422によって構成されている。
プライマリプーリ41の可動シーブ412側には、固定シーブ411と可動シーブ412との間のV溝幅を変更するための油圧アクチュエータ413が配置されている。また、セカンダリプーリ42の可動シーブ422側にも同様に、固定シーブ421と可動シーブ422との間のV溝幅を変更するための油圧アクチュエータ423が配置されている。
以上の構造のベルト式無段変速機4において、プライマリプーリ41の油圧アクチュエータ413の油圧を制御することにより、プライマリプーリ41及びセカンダリプーリ42の各V溝幅が変化してベルト43の掛かり径(有効径)が変更され、変速比(変速比=入力軸回転数Nin/出力軸回転数Nout)が連続的に変化する。また、セカンダリプーリ42の油圧アクチュエータ423の油圧は、ベルト滑りが生じない所定の挟圧力でベルト43が挟圧されるように制御される。これらの制御はECU8及び油圧制御回路20(図2参照)によって実行される。
油圧制御回路20は、リニアソレノイドバルブ及びオンオフソレノイドバルブなどが設けられており、それらソレノイドバルブの励磁・非励磁を制御して油圧回路を切り換えることによって、ベルト式無段変速機4の変速制御やロックアップクラッチ24の係合・解放制御などを行う。油圧制御回路20のリニアソレノイドバルブ及びオンオフソレノイドバルブの励磁・非励磁は、ECU8からのソレノイド制御信号(指示油圧信号)によって制御される。
−ECU−
ECU8は、図2に示すように、CPU81、ROM82、RAM83及びバックアップRAM84などを備えている。
ROM82には、各種制御プログラムや、それら各種制御プログラムを実行する際に参照されるマップ等が記憶されている。CPU81は、ROM82に記憶された各種制御プログラムやマップに基づいて演算処理を実行する。また、RAM83はCPU81での演算結果や各センサから入力されたデータ等を一時的に記憶するメモリであり、バックアップRAM84はエンジン1の停止時にその保存すべきデータ等を記憶する不揮発性のメモリである。
これらCPU81、ROM82、RAM83、及び、バックアップRAM84はバス87を介して互いに接続されるとともに、入力インターフェース85及び出力インターフェース86に接続されている。
ECU8の入力インターフェース85には、エンジン回転数センサ101、スロットル開度センサ102、水温センサ103、タービン回転数センサ104、入力軸回転数センサ105、車速センサ106、アクセル開度センサ107、ブレーキペダルセンサ108、及び、シフトレバー9のレバーポジション(操作位置)を検出するレバーポジションセンサ109などが接続されており、その各センサの出力信号、つまり、エンジン1の回転数(エンジン回転数)NE、スロットルバルブ12のスロットル開度θth、エンジン1の冷却水温Tw、タービンシャフト28の回転数(タービン回転数)NT、入力軸40の回転数(入力軸回転数)Nin、車速V、アクセルペダル等のアクセル操作部材の操作量(アクセル関度)Acc、常用ブレーキであるフットブレーキの操作の有無(ブレーキON・OFF)、及び、シフトレバー9のレバーポジション(操作位置)などを表す信号がECU8に供給される。出力インターフェース86には、スロットルモータ13、燃料噴射装置14、点火装置15及び油圧制御回路20などが接続されている。
ここで、ECU8に供給される信号のうち、タービン回転数NTは、前後進切換装置3の前進用クラッチC1が係合する前進走行時には入力軸回転数Ninと一致し、車速Vはベルト式無段変速機4の出力軸44の回転数(出力軸回転数)Noutに対応する。またアクセル開度Accは運転者の出力要求量を表している。
また、シフトレバー9は、駐車のためのパーキング位置「P」、後進走行のためのリバース位置「R」、動力伝達を遮断するニュートラル位置「N」、前進走行のためのドライブ位置「D」、前進走行時にベルト式無段変速機4の変速比を手動操作で増減できるマニュアル位置「M」などの各位置に選択的に操作されるようになっている。
マニュアル位置「M」には、変速比を増減するためのダウンシフト位置やアップシフト位置、あるいは、変速範囲の上限(変速比が小さい側)が異なる複数の変速レンジを選択できる複数のレンジ位置等が備えられている。
レバーポジションセンサ109は、例えば、パーキング位置「P」、リバース位置「R」、ニュートラル位置「N」、ドライブ位置「D」、マニュアル位置「M」やアップシフト位置、ダウンシフト位置、あるいはレンジ位置等へシフトレバー9が操作されたことを検出する複数のON・OFFスイッチ等を備えている。なお、変速比を手動操作で変更するために、シフトレバー9とは別にステアリングホイール等にダウンシフトスイッチやアップシフトスイッチ、あるいはレバー等を設けることも可能である。
そして、ECU8は、上記した各種のセンサの出力信号などに基づいて、エンジン1の出力制御、ベルト式無段変速機4の変速制御、及び、後述する変速比算出処理などを実行する。
−エンジン1の出力制御−
エンジン1の出力制御は、スロットルモータ13、燃料噴射装置14、点火装置15及びECU8などによって行われ、ベルト式無段変速機4の変速制御、ベルト挟圧力制御、及びロックアップクラッチ24の係合・解放制御は、いずれも油圧制御回路20によって行われる。これらスロットルモータ13、燃料噴射装置14、点火装置15、及び、油圧制御回路20はECU8によって制御される。
−ベルト式無段変速機の変速制御−
ベルト式無段変速機4の変速制御は、後述する変速比算出処理によって目標変速比を算出し、その目標変速比に基づいてベルト式無段変速機4の変速制御すなわちプライマリプーリ41の油圧アクチュエータ413に対する作動油の供給・排出によって変速制御圧を制御することによって変速比を設定する。
−変速比算出処理−
まず、従来の変速制御では図9に示すような変速比マップが用いられている。図9に示す変速比マップは、一般に、車速及びアクセル開度に応じて燃費が最適となるように設定されており、この変速マップを用いることにより常に最適な燃費の変速比を設定できる。ここで、ベルト式無段変速機の変速制御において、同じアクセル開度(目標パワー)であっても、燃費よりも応答性やドライバビリティを優先した方がよい場合がある。例えば、アクセル踏み込み時には、燃費よりもアクセル操作に対する応答性やドライバビリティを優先した設定を行えるようにする方が、運転者の意図に沿っている場合が多い。しかし、図9に示す変速比マップを用いた変速制御では、常に燃費優先で変速比が設定されるため、そのようなアクセル操作に対する応答性やドライバビリティを優先した設定を行うことができない。
このような点を考慮し、この例では、アクセル踏み込みや踏み戻し時において、無段変速機の変速比をホールドして、エンジントルクだけでパワー及び駆動力を変化させることで、アクセル操作に対する応答性及びドライバビリティ(ダイレクト感)の向上をはかる点に特徴がある。
その具体的な制御(変速比算出処理)の例を図3〜図8を参照して説明する。
まず、この例の変速比算出処理に用いるマップについて図3及び図4を参照して説明する。
図3に示すマップは、車速V及びアクセル開度Accをパラメータとし、それら車速V及びアクセル開度Accに応じて、最適な燃費が得られる目標変速比α(第1の目標変速比)を求めるためのアップ用マップMaであって、ECU8のROM82内に記憶されている。
図4に示すマップは、車速V及びアクセル開度Accをパラメータとし、それら車速V及びアクセル開度Accに応じて目標変速比β(第2の目標変速比)を求めるためのダウン用マップMbであって、ECU8のROM82内に記憶されている。
図4に示すダウン用マップMbは、目標パワーや駆動力を優先した目標変速比βを算出するマップであり、図3に示すアップ用マップMaの目標変速比αに対して目標変速比βがハイ側の値となるように設定されている。すなわち、車速V及びアクセル開度Accを同じとして、図3に示すアップ用マップMa及び図4に示すダウン用マップMbから目標変速比を算出した場合、ダウン用マップMbを用いて算出した目標変速比βがアップ用マップMaを用いて算出した目標変速比αよりもハイ側の値となる。
具体的に説明すると、例えば図5に示すように、アクセル開度Acc(目標パワー)が時間の経過とともに変化していくと、そのアクセル開度Accの変化に伴って、アップ用マップMaを用いて算出した目標変速比αと、ダウン用マップMbを用いて算出した目標変速比βとが一定の間隔(ヒステリシス)で変化していき、目標変速比βが目標変速比αに対し常にハイ側の変速比となる。なお、図5に示す目標変速比αと目標変速比βとの間のヒステリシス量は、変速比幅の最小及び最大に向かうに従って小さくなるように設定されており、さらに、変速比幅の最小及び最大付近ではヒステリシス量が0(目標変速比α=目標変速比β)となるように設定されている。
次に、ベルト式無段変速機4の変速制御の一例を図6のフローチャートを参照して説明する。図6に示す制御ルーチンはECU8において所定時間毎(周期)に繰り返して実行される。
ステップST1においては、まず、車速センサ106の出力信号から車速Vを読み込むとともに、アクセル開度センサ107の出力信号からアクセル開度Accを読み込む。次に、それら採取した車速V及びアクセル開度Accと図3のアップ用マップMaとを用いてロー側の目標変速比αを算出する。また同時に、採取した車速V及びアクセル開度Accと図4のダウン用マップMbとを用いてハイ側の目標変速比βを算出する。
次に、ステップST2において、今回算出(ステップST1にて算出)した目標変速比αが前回の変速比(ベルト式無段変速機4の実変速比)よりも「ハイ」であるか否かを判定し、その判定結果が肯定判定である場合はステップST4に進む。ステップST2の判定結果が否定判定である場合はステップST3に進む。
ステップST4では、今回算出(ステップST1にて算出)した目標変速比αを変速制御に用いる目標変速比とする。その後にリターンする。
ステップST3では、今回算出(ステップST1にて算出)した目標変速比βが前回の変速比(ベルト式無段変速機4の実変速比)よりも「ロー」であるか否かを判定し、その判定結果が否定判定である場合はステップST5に進む。ステップST3の判定結果が肯定判定である場合はステップST6に進む。
ステップST5では、ベルト式無段変速機4の変速制御に用いる目標変速比を前回の変速比(実変速比)にホールドする。その後にリターンする。
ステップST6では、今回算出(ステップST1にて算出)した目標変速比βをベルト式無段変速機4の変速制御に用いる目標変速比とする。その後にリターンする。
以上の変速比算出処理・変速制御の更に具体的な例について図7及び図8を参照して説明する。以下の例では、アクセル踏み込み時とアクセル踏み戻し時の制御について説明する。
−アクセル踏み込み時−
まず、アクセル開度Acc(目標パワー)が小さい側に変化しているときには、図7に示すように、ある時間で算出された目標変速比αmは、前回の実変速比(αm−1)よりも「ハイ」であるので(図6のステップST2が肯定判定)、その目標変速比αmをベルト式無段変速機4の変速制御に用いる目標変速比とする。次に、図6に示すフローチャートが1回りして、ステップST1にて次の目標変速比αm+1が算出されると、その目標変速比αm+1は前回の実変速比(αm)よりも「ハイ」であるので、その目標変速比αm+1をベルト式無段変速機4の変速制御に用いる目標変速比とする。
このように、アクセル開度Acc(目標パワー)が小さい側に変化しているときには、図6に示すフローチャートにおいて[ステップST2が肯定判定]→[ステップST4]が順次繰り返されるので、図3のアップ用マップMaを用いて算出された目標変速比αに基づいてベルト式無段変速機4の変速比が制御される。なお、アクセル開度Acc(目標パワー)が小さい側に変化しているときには、図4のダウン用マップMbを用いて算出される目標変速比βが前回の変速比よりも「ロー」になることはない。
次に、時間TH1の時点でアクセルが踏み込まれると、アクセル開度Acc(目標パワー)は大きい側に反転するので、その反転後に最初に算出される目標変速比αx(図示せず)は、前回の実変速比(つまりアクセル踏み込み直後に算出された目標変速比αH1)よりも「ロー」もしくは同等となる。この時点つまりアクセル踏み込みによってアクセル開度Acc(目標パワー)が反転したときには、現時点の変速制御に用いている目標変速比つまり目標変速比αH1に変速比をホールドする(図6のステップST5)。
そして、アクセル開度Acc(目標パワー)の反転後において、ダウン用マップMbにて算出される目標変速比βが、上記ホールドした変速比よりも「ロー」もしくは同等となった時点(図6のステップST3が肯定判定となった時点)で、図4のダウン用マップMbを用いて算出される目標変速比βに基づいてベルト式無段変速機4の変速比が制御される。
ここで、ベルト式無段変速機4の変速比をホールドするホールド領域(期間)Aは長すぎると、駆動力(パワー)・燃費の悪化などを招くので、この点を考慮して設定する。具体的には、ホールド領域Aは、目標変速比αに対する目標変速比βのヒステリシス量(図5)に相関するので、そのヒステリシス量を、エンジントルクだけでカバーできる駆動力(パワー)・燃費等を考慮して、実験・計算等によって経験的に求めて設定する。
以上のように、ロー側の目標変速比αを用いてベルト式無段変速機4の変速制御を行っているときに、アクセルの踏み込みにより目標パワーが反転した場合、ベルト式無段変速機4の変速比をホールドすることで、エンジントルクだけでパワー及び駆動力を変化させることができ、アクセル操作に対する応答性・ダイレクト感が向上する。
−アクセル踏み戻し時−
まず、アクセル開度Acc(目標パワー)が大きい側に変化しているときには、図8に示すように、ある時間で算出された目標変速比βnは、前回の実変速比(βn−1)よりも「ロー」であるので(図6のステップST3が肯定判定)、その目標変速比βnをベルト式無段変速機4の変速制御に用いる目標変速比とする。次に、図6に示すフローチャートが1回りして、ステップST1にて次の目標変速比βn+1が算出されると、その目標変速比βn+1は前回の実変速比(βn)よりも「ロー」であるので、その目標変速比βn+1をベルト式無段変速機4の変速制御に用いる目標変速比とする。
このように、アクセル開度Acc(目標パワー)が大きい側に変化しているときには、図6に示すフローチャートにおいて[ステップST3が肯定判定]→[ステップST6]が順次繰り返されるので、図4のダウン用マップMbを用いて算出された目標変速比βに基づいてベルト式無段変速機4の変速比が制御される。なお、アクセル開度Acc(目標パワー)が大きい側に変化しているときには、図3のアップ用マップMaを用いて算出される目標変速比αが前回の変速比よりも「ハイ」になることはない。
次に、時間TH2の時点でアクセルの踏み戻し操作が行われると、アクセル開度Acc(目標パワー)は小さい側に反転するので、その反転後に最初に算出される目標変速比βx(図示せず)は、前回の実変速比(つまりアクセル踏み戻し直後に算出された目標変速比βH2)よりも「ハイ」もしくは同等となる。この時点つまりアクセル踏み戻し操作によってアクセル開度Acc(目標パワー)が反転したときには、現時点の変速制御に用いている目標変速比つまり目標変速比βH2に変速比をホールドする(図6のステップST5)。
そして、アクセル開度Acc(目標パワー)の反転後において、アップ用マップMaにて算出される目標変速比αが、 上記ホールドした変速比よりも「ハイ」となった時点(ステップST2が肯定判定となった時点)で、図3のアップ用マップMaを用いて算出される目標変速比αに基づいてベルト式無段変速機4の変速比が制御される。
以上のように、ハイ側の目標変速比βを用いてベルト式無段変速機4の変速制御を行っているときに、アクセルの踏み戻しにより目標パワーが反転した場合、ベルト式無段変速機4の変速比をホールドすることで、アクセル操作に対する応答性を向上させることができる。
−他の実施形態−
以上の例では、アップ用マップMa及びダウン用マップMbを用いて目標変速比α,βを算出しているが、これに限定されることなく、目標変速比α,βをそれぞれ演算器を用いて算出するようにしてもよい。
以上の例では、ベルト式無段変速機の変速制御に本発明を適用した例を示したが、これに限られることなく、例えばトラクション式無段変速機等の他の無段変速機の変速制御にも本発明を適用することは可能である。
以上の例では、ガソリンエンジンを搭載した車両の無段変速機の変速制御に本発明を適用した例を示したが、本発明はこれに限られることなく、ディーゼルエンジン等の他のエンジンを搭載した車両の無段変速機の変速制御にも適用可能である。また、車両の動力源については、エンジン(内燃機関)のほか、電動モータ、あるいはエンジンと電動モータの両方を備えているハイブリッド形動力源であってもよい。
本発明は、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)型車両に限れらることなく、FR(フロントエンジン・リアドライブ)型車両、4輪駆動車にも適用できる。
本発明を適用するベルト式無段変速機の概略構成図である。 ECU等の制御系の構成を示すブロック図である。 ベルト式無段変速機の変速制御に用いるアップ用マップの一例を示す図である。 ベルト式無段変速機の変速制御に用いるダウン用マップの一例を示す図である。 図3及び図4のマップで算出される目標変速比の変化を示す図である。 ベルト式無段変速機の変速制御の一例を示すフローチャートである。 ベルト式無段変速機の変速制御の一例を示すタイミングチャートである。 ベルト式無段変速機の変速制御の他の例を示すタイミングチャートである。 無段変速機に一般に用いられる変速比マップの一例を示す図である。
符号の説明
4 ベルト式無段変速機
41 プライマリプーリ
42 セカンダリプーリ
413,414 油圧アクチュエータ
8 ECU
20 油圧制御回路
106 車速センサ
107 アクセル開度センサ
Ma アップ用マップ(第1の目標変速比算出用)
Mb ダウン用マップ(第2の目標変速比算出用)

Claims (4)

  1. 車両に搭載された無段変速機の変速比を制御する無段変速機の制御装置であって、
    前記車両の走行状態に基づいて第1の目標変速比を算出する第1の目標変速比算出手段と、前記車両の走行状態に基づいて前記第1の目標変速比よりも高い第2の目標変速比を算出する第2の目標変速比算出手段とを備え、
    前記第1の目標変速比算出手段によって算出される第1の目標変速比が前記無段変速機の変速比よりも「ハイ」でなく、かつ、前記第2の目標変速比算出手段によって算出される第2の目標変速比が前記無段変速機の変速比よりも「ロー」でない領域については、前記無段変速機の変速比をホールドすることを特徴とする無段変速機の制御装置。
  2. 請求項1記載の無段変速機の制御装置において、
    前記第1の目標変速比算出手段によって算出される第1の目標変速比が前記無段変速機の前回の変速比よりも「ハイ」であるときには、当該第1の目標変速比を前記無段変速機の今回の変速比とし、前記第2の目標変速比算出手段によって算出される第2の目標変速比が前記無段変速機の前回の変速比よりも「ロー」であるときには、当該第2の目標変速比を前記無段変速機の今回の変速比とすることを特徴とする無段変速機の制御装置。
  3. 請求項1または2記載の無段変速機の制御装置において、
    前記第1の目標変速比算出手段と第2の目標変速比算出手段とは、前記車両の車速及びアクセル開度に基づいて、それぞれ第1の目標変速比と第2の目標変速比とを算出することを特徴とする無段変速機の制御装置。
  4. 請求項1記載の無段変速機の制御装置において、
    前記第1の目標変速比算出手段は、車両の車速及びアクセル開度をパラメータとする第1のマップを用いて第1の目標変速比を算出し、前記第2の目標変速比算出手段は、前記車両の車速及びアクセル開度をパラメータとする第2のマップを用いて前記第2の目標変速比を算出し、
    前記アクセル開度が下がるときには前記第1のマップを用いて算出した第1の目標変速比に基づいて前記無段変速機の変速比を制御し、前記アクセル開度が高くなるときには前記第2のマップを用いて算出した第2の目標変速比に基づいて前記無段変速機の変速比を制御することを特徴とする無段変速機の制御装置。
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