本発明に係る車両走行制御装置の実施例を図1から図5に基づいて説明する。
最初に、本実施例の車両走行制御装置の構成について図1を用いて説明する。この図1の符号1−1は、本実施例の車両走行制御装置を示す。この車両走行制御装置1−1は、図示しない車両に搭載されるものであり、車両の車速が目標車速となるように自動走行制御を行うものである。本実施例の車両走行制御装置1−1は、自動走行制御スイッチ2と、車速センサ3と、Gセンサ4と、ブレーキスイッチ5と、アクセルセンサ6と、自動走行制御ECU7と、エンジンECU8と、ブレーキECU9と、を備えている。
ここで、本実施例の車両には、車速を調整する車速調整装置が設けられている。そして、この車両には、車両に作用させる駆動力を増減制御することによって車速の調整を行う図1に示すエンジン100や、車両に作用させる制動力を増減制御することによって車速の調整を行う図1に示すブレーキ装置200が車速調整装置として用意されている。そのエンジン100は、エンジンECU8により設定された目標制御量としての目標駆動力に基づいて作動させられる。一方、ブレーキ装置200は、ブレーキECU9により設定された目標制御量としての目標制動力に基づいて作動させられる。また、このブレーキ装置200は、運転者による制動操作、すなわち運転者による図示しないブレーキペダルの踏み込み操作に基づいて制動力を発生するものでもある。
以下に、この車両走行制御装置1−1を成す自動走行制御スイッチ2,車速センサ3,Gセンサ4,ブレーキスイッチ5,アクセルセンサ6,自動走行制御ECU7,エンジンECU8およびブレーキECU9について詳述する。
まず、自動走行制御スイッチ2は、制御開始トリガーである。具体的に、この自動走行制御スイッチ2は、図示しない車両の室内に設けられており、運転者の操作によってONされるものである。また、この自動走行制御スイッチ2は、自動走行制御ECU7と接続されており、運転者の操作によってONされると、ON信号を自動走行制御ECU7に出力する。これにより、この自動走行制御スイッチ2は、自動走行制御ECU7が自動走行制御を開始する際の制御開始トリガーとなる。
車速センサ3は、図示しない車両の車速Vを検出するものである。この車速センサ3は、自動走行制御ECU7と接続されており、検出された車両の車速Vが自動走行制御ECU7に出力される。ここで、この車速センサ3としては、例えば、車両の図示しない各車輪に設けられた車輪速センサを利用することができる。この場合は、自動走行制御ECU7が車速センサ3としてのそれぞれの車輪速センサで検出した各車輪の速度に基づいて車両の車速Vを算出する。
Gセンサ4は、走行している路面についての勾配検出手段である。このGセンサ4は、図示しない車両の傾きを検出するものである。つまり、このGセンサ4は、車両が現在走行している路面の勾配θを検出するものである。ここで、このGセンサ4は、自動走行制御ECU7と接続されており、検出された勾配θが自動走行制御ECU7に出力される。
ブレーキスイッチ5は、制動操作検出手段である。このブレーキスイッチ5は、運転者による制動操作を検出するものである。このブレーキスイッチ5は、図示しない車両の室内に設けられているブレーキペダルが運転者により踏み込まれるとONされるものである。ここで、このブレーキスイッチ5は、自動走行制御ECU7と接続されており、運転者によりブレーキペダルが踏み込まれてONされると、ON信号を自動走行制御ECU7に出力する。これにより、運転者による制動操作が行われたか否かについて自動走行制御ECU7で判断することができる。
アクセルセンサ6は、加速操作量検出手段である。このアクセルセンサ6は、運転者による加速操作量Sを検出する。このアクセルセンサ6は、図示しない車両の室内に設けられているアクセルペダルが運転者により踏み込まれた際の踏み込み量を加速操作量Sとして検出するものである。ここで、このアクセルセンサ6は、エンジンECU8と接続されており、運転者による加速操作量SをエンジンECU8に出力する。
自動走行制御ECU7は、第2ECUである。この自動走行制御ECU7は、車速Vが予め又は運転者によって設定された目標車速Voとなるように目標制御量としての目標駆動力Foを算出し、エンジンECU8に出力するものである。また、この自動走行制御ECU7は、車速Vが予め設定された目標車速Voとなるように目標制御量としての目標制動力Boを算出し、ブレーキECU9に出力するものでもある。
ここで、その目標車速Voは、車両走行制御装置1−1がどの様な自動走行制御を行うのか否かによって異なる値になる。つまり、この車両走行制御装置1−1が定速走行制御を行う場合には、例えば、10km/h程度の低車速、高速走行時ならば100km/hなどの高車速に目標車速Voが設定される。また、この車両走行制御装置1−1が追従走行制御を行う場合には、先行車両の車速を目標車速Voとして設定する。
更に、この自動走行制御ECU7は、エンジンECU8を介して目標駆動力Foとなるようにエンジン100を制御させるとともに、ブレーキECU9を介して目標制動力Boとなるようにブレーキ装置200を制御させるものでもある。つまり、この自動走行制御ECU7は、エンジン100とブレーキ装置200とを協調制御させるものである。ここで、本実施例の自動走行制御ECU7は、自動走行制御判定部71と、駆動力算出部72と、制動力算出部73と、監視情報算出部74と、を有する。なお、この自動走行制御ECU7のハード構成は、既に公知であるので説明は省略する。
自動走行制御判定部71は、運転者による自動走行制御の開始の意志を判定するものである。この自動走行制御判定部71は、自動走行制御スイッチ2からのON信号が検出されたか否かを観ることによって自動走行制御の開始要否を判定する。例えば、その自動走行制御スイッチ2が運転者によって操作されることでONされて、この自動走行制御スイッチ2からON信号が出力されるので、その際の自動走行制御判定部71は、自動走行制御の開始が要求されているとの判定を行う。
駆動力算出部72は、エンジン100に出力させる自動走行制御時の目標駆動力Foを算出するものである。この駆動力算出部72では、車両の車速Vが予め又は運転者によって設定された自動走行制御時の目標車速Voとなるように目標駆動力Foを算出する。例えば、この駆動力算出部72は、その目標車速Voと車速センサ3により検出された現在の車速VとGセンサ4により検出された走行路の勾配θとに基づいて、その目標車速Voを自動走行制御中に維持することの可能な目標駆動力Foの算出を行う。この駆動力算出部72は、ブレーキスイッチ5がOFFでありON信号が出力されなければ、その目標駆動力Foの情報を求めた後エンジンECU8に出力する。
ここで、自動走行制御ECU7は、ブレーキスイッチ5がONとされてON信号が出力される、すなわち運転者による制動操作を検出した場合、自動走行制御を禁止させるように構成してもよい。この場合、本実施例においては、駆動力算出部72に自動走行制御禁止時の目標駆動力Foを算出させる。その自動走行制御禁止時の目標駆動力Foとは、0N又はエンジン100にて実際には出力不可能な値(例えば、Fo=−15000N)、つまりエンジン100の実際の出力が0Nとなる値のことである。なお、このエンジン100は、−15000N以下の駆動力については実際に出力させることができず、−15000Nよりも大きな駆動力については実際に出力できるものとする。また、駆動力算出部72は、そのような場合に自動走行制御時の目標駆動力Foの算出を行わせない、又はその目標駆動力Foの算出を行ったとしてもエンジンECU8へと出力させないように構成してもよい。
ところで、自動走行制御スイッチ2は、単なるONとOFFの切り換えだけでなく、複数の自動走行制御条件の切り換えを行うものであってもよい。つまり、この自動走行制御スイッチ2は、複数段の切換スイッチとしてもよい。例えば、この種の自動走行制御スイッチ2において運転者により1段目が選択された場合には、自動走行制御判定部71が自動走行制御スイッチ2からのON信号を検出して自動走行制御の開始要求ありと判定し、駆動力算出部72が車両の車速Vを1段目に該当する第1目標車速Voaとなるように目標駆動力Foを算出する。また、この自動走行制御スイッチ2の2段目が選択された場合には、自動走行制御判定部71が自動走行制御スイッチ2からのON信号を検出して自動走行制御の開始要求ありと判定し、駆動力算出部72が車両の車速Vを2段目に該当する第2目標車速Vob(≠Voa)となるように目標駆動力Foを算出する。
制動力算出部73は、ブレーキ装置200に出力させる自動走行制御時の目標制動力Boを算出するものである。この制動力算出部73では、車両の車速Vが予め又は運転者によって設定された目標車速Voとなるように目標制動力Boを算出する。例えば、この制動力算出部73は、その目標車速VoとGセンサ4により検出された走行路の勾配θとに基づいて、その目標車速Voを自動走行制御中に維持することの可能な目標制動力Boの算出を行う。この制動力算出部73は、ブレーキスイッチ5がOFFでありON信号が出力されなければ、その目標制動力Boの情報を求めた後ブレーキECU9に出力する。
ここで、運転者による制動操作を検出した際に自動走行制御を禁止させるならば、その制動力算出部73には、自動走行制御禁止時の目標制動力Boを算出させることとする。その自動走行制御禁止時の目標制動力Boとは、0N、つまりブレーキ装置200の実際の出力が0Nとなる値のことである。また、制動力算出部73は、この場合に自動走行制御時の目標制動力Boの算出を行わせない、又はその目標制動力Boの算出を行ったとしてもブレーキECU9へと出力させないように構成してもよい。
また、上述した駆動力算出部72と制動力算出部73は、車両の車速Vが予め又は運転者によって設定された目標車速Voとなるように目標駆動力Foと目標制動力Boを算出することも可能である。つまり、その目標駆動力Foと目標制動力Boを車両に対して同時に働かせることによって、その車両の車速Vを予め又は運転者によって設定された目標車速Voにすることも可能である。その際の目標駆動力Foと目標制動力Boは、目標車速Voと現在の車速Vと走行路の勾配θに基づいて求める。
監視情報算出部74は、駆動力算出部72や制動力算出部73により算出された目標駆動力Foや目標制動力Boの正誤を判定するための制御量監視情報を求めるものである。ここで例示する車両走行制御装置1−1においては、例えば、その目標駆動力Foについての制御量監視情報(以下、「駆動力監視情報」という。)が図1に示す駆動力監視情報記憶部10に格納され、目標制動力Boについての制御量監視情報(以下、「制動力監視情報」という。)が図1に示す制動力監視情報記憶部11に格納されている。その駆動力監視情報記憶部10や制動力監視情報記憶部11は、自動走行制御ECU7に接続されている。
例えば、図2にその駆動力監視情報の一例を示す。この図2の駆動力監視情報は、目標駆動力Foと当該目標駆動力Foに応じた制御量レベル値としての駆動力レベル値Ldとの対応関係から成るものであり、ここでは目標駆動力Foを所定の範囲で区分けし、その範囲区分毎に駆動力レベル値Ldを設定したものである。従って、監視情報算出部74は、目標駆動力Foに対応する駆動力レベル値Ldを駆動力監視情報から求める。そして、この監視情報算出部74は、その求めた駆動力レベル値LdをエンジンECU8に出力する。この駆動力監視情報は、予め設定して駆動力監視情報記憶部10に格納しておく。なお、図示しないが、ここでは、制動力監視情報についても同様に、目標制動力Boと当該目標制動力Boに応じた制御量レベル値としての制動力レベル値Lbとの対応関係で構築している。従って、監視情報算出部74は、目標制動力Boに応じた制動力レベル値Lbを制動力監視情報から読み込み、ブレーキECU9に出力する。
エンジンECU8は、第1ECUである。このエンジンECU8は、目標駆動力Foに基づいてエンジン100を制御するものである。ここで、このエンジンECU8は、自動走行制御ECU7と接続されており、自動走行制御ECU7により算出され、出力された目標駆動力Foに基づいてエンジン100を制御する。
更に、このエンジンECU8は、異常判定部81を有する。この異常判定部81は、自動走行制御ECU7によって設定された目標駆動力Foが異常な値を示しているものであるのか否かを判定するものである。その目標駆動力Foが異常な値を示している状態とは、例えば、目標駆動力Foを求める際にノイズが乗ってしまっている状態などが考えられる。ここで、このエンジンECU8は、駆動力監視情報記憶部10に接続されている。従って、この異常判定部81は、駆動力算出部72の出力した目標駆動力Foと監視情報算出部74の出力した駆動力レベル値Ldとの対応関係と同じものが駆動力監視情報記憶部10の駆動力監視情報に含まれているのか否かを観て、自動走行制御ECU7により設定された目標駆動力Foが正常か異常かの判定を行う。
また、この異常判定部81は、その目標駆動力Foが異常な値を示していると判定した場合、自動走行制御を禁止させる。つまり、自動走行制御ECU7によって設定された目標駆動力Foが異常な場合には、その目標駆動力Foに基づくエンジン100の制御を禁止する。これは、目標駆動力Foにノイズが乗ることによって正常な値よりも大きな目標駆動力Foが設定されてしまうので、その異常な設定値に基づいてエンジン100の制御を行うと、車速Vが所望の値よりも高くなってしまう可能性があるからである。
ブレーキECU9は、便宜上ここでは第1ECUである。このブレーキECU9は、目標制動力Boに基づいてブレーキ装置200を制御するものである。ここで、このブレーキECU9は、自動走行制御ECU7と接続されており、自動走行制御ECU7により算出され、出力された目標制動力Boに基づいてブレーキ装置200を制御する。
更に、このブレーキECU9は、異常判定部91を有する。この異常判定部91は、自動走行制御ECU7によって設定された目標制動力Boが異常な値を示しているものであるのか否かを判定するものである。その目標制動力Boが異常な値を示している状態とは、例えば、目標制動力Boを求める際にノイズが乗ってしまっている状態などが考えられる。ここで、このブレーキECU9は、制動力監視情報記憶部11に接続されている。従って、この異常判定部91は、制動力算出部73の出力した目標制動力Boと監視情報算出部74の出力した制動力レベル値Lbとの対応関係と同じものが制動力監視情報記憶部11の制動力監視情報に含まれているのか否かを観て、自動走行制御ECU7により設定された目標制動力Boが正常か異常かの判定を行う。
また、この異常判定部91は、その目標制動力Boが異常な値を示していると判定した場合、自動走行制御を禁止させる。つまり、自動走行制御ECU7によって設定された目標制動力Boが異常な場合には、その目標制動力Boに基づくブレーキ装置200の制御を禁止する。これは、目標制動力Boにノイズが乗ることによって正常な値よりも大きな目標制動力Boが設定されてしまうので、その異常な設定値に基づいてブレーキ装置200の制御を行うと、車速Vが所望の値よりも低くなってしまう可能性があるからである。
次に、本実施例の車両走行制御装置1−1を用いた車両走行制御方法について図3および図4のフローチャートに基づき説明する。その車両走行制御装置1−1による自動走行制御としては、エンジン100の駆動力のみを増減させることによって行われるもの、ブレーキ装置200の制動力のみを増減させることによって行われるもの、エンジン100の駆動力とブレーキ装置200の制動力の双方を協調制御することによって行われるものが考えられる。ここでは、その車両走行制御装置1−1による自動走行制御がエンジン100の駆動力のみを増減させることによって行われるものとして例示する。なお、車両走行制御装置1−1による自動走行制御は、この車両走行制御装置1−1の制御周期ごとに行われる。
最初に、自動走行制御ECU7側の演算処理動作について図3のフローチャートを用いて説明する。
まず、自動走行制御ECU7は、各種スイッチや各種センサから送られてきた信号についての入力処理を行う(ステップST101)。ここでは、少なくとも自動走行制御スイッチ2のON/OFF状態に係る信号、車速センサ3により検出された車速Vに係る信号、Gセンサ4により検出された勾配θに係る信号、ブレーキスイッチ5のON/OFF状態に係る信号などが自動走行制御ECU7に入力される。また、駆動力整合性異常フラグHdの設定が行われた後には、エンジンECU8の出力した駆動力整合性異常フラグHdについても入力される。
次に、この自動走行制御ECU7の自動走行制御判定部71は、自動走行制御スイッチ2がONであるか否かを判定する(ステップST102)。つまり、ここでは、運転者による自動走行制御の開始の意志の有無についての判定を行っている。かかる判定は、上記ステップST101で取得された自動走行制御スイッチ2のON/OFF状態に係る信号に基づいて、具体的には自動走行制御スイッチ2からのON信号が入力されたのか否かに基づいて行う。
ここで、自動走行制御スイッチ2がONであると判定された場合、この自動走行制御ECU7の駆動力算出部72は、駆動力整合性異常フラグHdが立てられているのか否か(つまり、Hd=1か否か)の判定を行う(ステップST103)。
そして、その駆動力整合性異常フラグHdが立てられていない(Hd=0)との判定が為されたならば、この駆動力算出部72は、目標車速Voに応じた自動走行制御時の目標駆動力Foを求めて設定する(ステップST104)。つまり、ここでは、予め又は運転者によって設定された目標車速Voと、上記ステップST101で車速センサ3から取得した現在の車速Vと、上記ステップST101でGセンサ4から取得した走行路の勾配θと、に基づいて、その目標車速Voを自動走行制御中に維持することの可能な目標駆動力Foが算出される。
また、上記ステップST102で自動走行制御スイッチ2がOFFであると判定された場合、この駆動力算出部72は、自動走行制御禁止時の目標駆動力Foを算出して設定する(ステップST105)。つまり、ここでは、運転者による自動走行制御の開始の意志がない場合、すなわち自動走行制御が行われていない場合、エンジン100が自動走行制御ECU7からの目標駆動力Foによって駆動力を出力しないように目標駆動力Foを設定する。例えば、本実施例においては、上述したエンジン100の実際の出力が0Nとなる値(0N又はエンジン100にて実際には出力不可能な−15000N)が求められる。
更に、この駆動力算出部72は、上記ステップST103で駆動力整合性異常フラグHdが立てられている(Hd=1)と判定した場合、つまり自動走行制御を要求されてはいるが駆動力整合性異常フラグHdが立っている場合、その駆動力整合性異常フラグHdをリセットし(Hd=0)(ステップST106)、上記ステップST105に進んで自動走行制御禁止時の目標駆動力Foを算出する。
上記の如くして目標駆動力Foの設定を行った後、本実施例の自動走行制御ECU7の監視情報算出部74は、その目標駆動力Foに応じた駆動力レベル値Ldを図2の駆動力監視情報から読み込む(ステップST107)。つまり、ここでは、目標駆動力Foが上記ステップST104で設定された自動走行制御時のものならば、その目標駆動力Foに応じたLd=1〜7の内の何れか1つの駆動力レベル値Ldが読み込まれる。また、その目標駆動力Foが上記ステップST105で設定された自動走行制御禁止時のものならば、その目標駆動力Foに応じた駆動力レベル値Ldが読み込まれる。ここでは、その自動走行制御禁止時の目標駆動力Foに応じた駆動力レベル値Ldとして、目標駆動力Foが0NならばLd=2が読み込まれ、目標駆動力Foが−15000NならばLd=0が読み込まれる。
そして、この自動走行制御ECU7は、その設定した目標駆動力Fo、この目標駆動力Foに応じた駆動力レベル値Ldおよび現時点の駆動力整合性異常フラグHdをエンジンECU8に出力する(ステップST108)。なお、自動走行制御ECU7は、その目標駆動力FoなどをエンジンECU8に出力すると、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
次に、エンジンECU8側の演算処理動作について図4のフローチャートを用いて説明する。
まず、エンジンECU8は、各種スイッチや各種センサ、自動走行制御ECU7から送られてきた信号についての入力処理を行う(ステップST111)。ここでは、少なくともアクセルセンサ6により検出された加速操作量Sに係る信号、自動走行制御ECU7の出力した目標駆動力Foや駆動力レベル値Ld等に係る信号などがエンジンECU8に入力される。また、駆動力整合性異常フラグHdの設定が行われた後には、自動走行制御ECU7の出力した駆動力整合性異常フラグHdについても入力される。
このエンジンECU8は、自動走行制御が要求されているのか否かについての判定を行う(ステップST112)。かかる判定は、自動走行制御ECU7から受け取った目標駆動力Foが0N以外でかつ所定値(ここでは、−15000N)よりも大きいのか否かによって行う。つまり、その目標駆動力Foが0N以外でかつ所定値よりも大きい場合には、自動走行制御要求有りとの判定を行う。また、ここでは、自動走行制御スイッチ2をエンジンECU8にも接続し、この自動走行制御スイッチ2のON信号が入力された際に自動走行制御要求有りと判定させてもよい。
ここで、自動走行制御要求有りとの判定が為された場合、このエンジンECU8の異常判定部81は、駆動力整合性異常フラグHdが立っているのか否か(つまり、Hd=1か否か)の判定を行う(ステップST113)。
そして、駆動力整合性異常フラグHdが立てられていない(Hd=0)との判定が為された場合、この異常判定部81は、自動走行制御ECU7から受け取った目標駆動力Foと駆動力レベル値Ldの対応関係が正常なものであるのか否かの判定を行う(ステップST114)。かかる判定は、その受け取った対応関係と同じものが図2の駆動力監視情報に含まれているのか否かを観て行う。つまり、この異常判定部81は、自動走行制御ECU7から受け取った目標駆動力Fo又は駆動力レベル値Ldの内の何れか一方を図2の駆動力監視情報と照らし合わせ、この駆動力監視情報におけるその目標駆動力Fo又は駆動力レベル値Ldに該当する駆動力レベル値Ld又は目標駆動力Foとの対応関係が自動走行制御ECU7から受け取った対応関係と一致しているのか否かを観て判定する。ここでは、その双方の対応関係が一致していれば、自動走行制御ECU7の求めた目標駆動力Foと駆動力レベル値Ldの対応関係が正常であると判定し、その双方の対応関係が不一致ならば、自動走行制御ECU7の求めた目標駆動力Foと駆動力レベル値Ldの対応関係に異常が生じている、つまりノイズなどの悪影響を受けて目標駆動力Foの算出値に誤差が生じていると判定する。
このステップST114で正常との判定が為された場合、エンジンECU8は、自動走行制御ECU7から受け取った目標駆動力Foに基づいてエンジン100を制御する(ステップST115)。なお、その目標駆動力Foが上述した自動走行制御禁止時のものならば、そのエンジン100においては、実際の駆動力が0Nとなる。
一方、そのステップST114で異常との判定が為された場合、異常判定部81は、駆動力整合性異常フラグHdを立てる(Hd=1)(ステップST116)。そして、エンジンECU8は、自動走行制御を行うべきではないとの判断を行って、加速操作量Sに基づいたエンジン100の制御(つまり、通常のエンジン制御)を行う(ステップST117)。また、上記ステップST112で自動走行制御要求無しとの判定が為された場合、又は上記ステップST113で駆動力整合性異常フラグHdが立っている(Hd=1)との判定が為された場合にも、エンジンECU8は、そのステップST117に進んで、加速操作量Sに基づいたエンジン100の制御を行う。
このようにしてエンジン100の制御を行った後、異常判定部81は、この時点での駆動力整合性異常フラグHdを自動走行制御ECU7に出力する(ステップST118)。
従って、本実施例の車両走行制御装置1−1は、図5に示す如く、例えば坂道発進の如き自動走行制御を行う場合に、ノイズが発生して目標駆動力Foの値と駆動力レベル値Ldに悪影響を与えなければ、目標駆動力Foの0Nからの増加と共に車両の車速Vを目標車速Voへと近づけていき、自動走行制御が実行される。その際、駆動力レベル値Ldは、図5に示す状態において、図2の駆動力監視情報からも明らかなように3から4へと移行していく。
また、この車両走行制御装置1−1は、図5に示す如く、自動走行制御中に発生したノイズにより目標駆動力Foにずれが生じてしまった場合、つまり自動走行制御ECU7で求めた目標駆動力Foに対応する駆動力レベル値Ldは4であるがノイズの影響を受けて目標駆動力Foが駆動力レベル値Ld=4から逸脱するほど過大になった場合、エンジンECU8の異常判定部81による駆動力整合性の異常判定によって目標駆動力Foと駆動力レベル値Ldの対応関係の異常が認められるので、目標駆動力Foを自動走行制御禁止時のもの(ここでは、0N)に変更して自動走行制御を禁止させる。これが為、この場合には、自動走行制御から通常のエンジン制御へと切り換えられ、次の演算時にそのノイズの影響で大きくなる目標駆動力Foによるエンジン100の過出力を防ぐことができ、車両の車速Vの不必要な上昇を抑えることができる。更に、図示はしないが、自動走行制御中に発生したノイズにより駆動力レベル値Ldにずれが生じることもある。例えば、本来ならば目標駆動力Foに対応する駆動力レベル値Ldが4であるにも拘わらず、その駆動力レベル値Ldがノイズの影響を受けて例えば6となった場合が該当する。この車両走行制御装置1−1は、このような場合においても目標駆動力Foと駆動力レベル値Ldの対応関係に異常を認め、目標駆動力Foを自動走行制御禁止時のものに変更して自動走行制御を禁止させてもよい。
ここで、そのようなノイズは、継続して発生するものもあれば、瞬間的にしか発生しないものもある。つまり、1度目標駆動力Foと駆動力レベル値Ldの対応関係の異常が認められたからといって、その後も異常が認められるとは限らない。従って、監視情報算出部74による駆動力監視情報の読み込みおよび異常判定部81による駆動力整合性の異常判定については、1度だけでなく、常時又は所定の時間の間だけ繰り返し実行させることが好ましい。即ち、異常判定部81は、その異常との判定が幾度か繰り返し行われた場合に最終的に異常との判断を行い、通常のエンジン制御へと切り換えさせるよう構成することが望ましい。
また、本実施例においては駆動力とこれに応じた駆動力レベル値をパラメータにして駆動力整合性の異常判定を行ったが、この異常判定は、これに替えて、駆動トルクとこれに応じた駆動トルクレベル値や、エンジン出力とこれに応じたエンジン出力レベル値をパラメータにして行ってもよい。
更に、本実施例においてはエンジン100の駆動力のみを増減させることによって行われる自動走行制御を例に挙げたが、上述したように、この自動走行制御は、ブレーキ装置200の制動力のみを増減させることによって行われるもの、エンジン100の駆動力とブレーキ装置200の制動力の双方を協調制御することによって行われるものであってもよい。
例えば、ブレーキ装置200の制動力のみの場合には、制動力とこれに応じた制動力レベル値、制動トルクとこれに応じた制動トルクレベル値、ブレーキ出力とこれに応じたブレーキ出力レベル値をパラメータにして制動力整合性の異常判定を行えばよい。つまり、例えば、この場合には、上述した例示における「駆動力」を「制動力」と読み替えればよい。なお、この場合には、目標制動力Boがノイズの影響を受けてしまうと、過剰な制動力によって車両の車速Vが所望のものよりも低くなってしまう。
また、エンジン100の駆動力とブレーキ装置200の制動力の双方を協調制御する場合には、駆動力とこれに応じた駆動力レベル値および制動力とこれに応じた制動力レベル値、駆動トルクとこれに応じた駆動トルクレベル値および制動トルクとこれに応じた制動トルクレベル値、エンジン出力とこれに応じたエンジン出力レベル値およびブレーキ出力とこれに応じたブレーキ出力レベル値をパラメータにして駆動力および制動力の整合性の異常判定を行えばよい。つまり、例えば、この場合には、上述した例示における「駆動力」を「駆動力および制動力」と読み替えればよい。
また更に、本実施例の自動走行制御ECU7とエンジンECU8は、各々駆動力監視情報記憶部10内の共通の駆動力監視情報に対して読み込みを行うように構成しているが、その自動走行制御ECU7とエンジンECU8毎に同じ駆動力監視情報を有する駆動力監視情報記憶部を用意し、個別の駆動力監視情報を利用するように構成してもよい。これと同様の構成は、自動走行制御ECU7とブレーキECU9と制動力監視情報との間においても適用することができる。
以上のように、本実施例の車両走行制御装置1−1は、自動走行制御ECU7によって要求されてきた制御パラメータたる目標制御量(目標駆動力Foなど)が正常なものなのか異常なものなのかを判定することができ、つまり自動走行制御中にノイズが発生した場合の目標制御量の算出値の異常をエンジンECU8側で同じ制御量監視情報(駆動力監視情報など)により把握することができるので、その把握時に通常の制御へと切り換えることで車両の車速Vの無用な変化を抑えることができる。