JP2009057606A - 浸炭窒化方法、機械部品の製造方法、機械部品および熱処理炉 - Google Patents

浸炭窒化方法、機械部品の製造方法、機械部品および熱処理炉 Download PDF

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Abstract

【課題】被処理物の内部における窒素濃度の制御を容易に実施することが可能な浸炭窒化方法、内部における窒素濃度の制御が容易な機械部品の製造方法、内部における窒素濃度が精度よく制御された機械部品、および被処理物の内部における窒素濃度の制御を容易に実施可能な熱処理炉を提供する。
【解決手段】浸炭窒化方法は、熱処理炉内の雰囲気が採取される工程と、採取された雰囲気における未分解アンモニアの体積分率が算出される工程と、算出された未分解アンモニアの体積分率に基づいて、熱処理炉内の雰囲気が調整される工程とを備えている。そして、雰囲気が採取される工程では、熱処理炉内において被処理物が占める領域からの距離が150mm以下である領域の雰囲気が採取される。
【選択図】図10

Description

本発明は浸炭窒化方法、機械部品の製造方法、機械部品および熱処理炉に関し、より特定的には、鋼からなる被処理物を浸炭窒化するための浸炭窒化方法、鋼からなる被処理物を浸炭窒化する工程を含む機械部品の製造方法、鋼からなり、浸炭窒化が実施された機械部品、および鋼からなる被処理物に対して浸炭窒化処理を実施するための熱処理炉に関するものである。
一般に、浸炭窒化処理、特に鋼からなる被処理物に対して実施されるガス浸炭窒化処理においては、Rガスおよびアンモニア(NH)ガスを一定の流量(単位時間あたりの供給量)で熱処理炉内に流入させるとともに、熱処理炉内のカーボンポテンシャル(C)値を熱処理炉内の二酸化炭素(CO)の分圧に基づいて制御することにより、当該熱処理炉内の雰囲気が制御されている。ここで、被処理物の表層部に侵入する窒素量は、浸炭窒化処理中に直接測定することは困難である。そのため、各熱処理炉に関して、アンモニアガスの流量と被処理物の表層部に侵入する窒素量との関係を過去の生産実績等から経験的に決定し、浸炭窒化処理中に直接測定することが可能なアンモニアガスの流量を調節することにより被処理物の表層部に侵入する窒素量が制御される場合が多い。
そして、このアンモニアガスの流量は、各熱処理炉の過去の生産実績等に基づき、被処理物の量や形状などを考慮して経験的に決定されているが、過去の生産実績が無いような量や形状の被処理物を浸炭窒化処理する必要が生じた場合、当該浸炭窒化処理における最適なアンモニアガスの流量を決定するための試行錯誤が必要となる。その結果、最適なアンモニアガスの流量が決定されるまでは被処理物の品質を安定させることが困難なだけでなく、上記試行錯誤を量産ラインにおいて実施する必要があるため、要求品質を満たさない被処理物が発生し、生産コスト上昇の要因となるおそれもある。
これに対し、熱処理炉の形状、被処理物の量や形状ごとに変化するアンモニアガスの流量ではなく、熱処理炉内に残留している気体アンモニアの濃度である未分解アンモニア濃度(アンモニアの残留ガス濃度)を調節することにより、被処理物に侵入する窒素量を制御する方法が提案されている(たとえば、非特許文献1および特許文献1参照)。すなわち、浸炭窒化処理中に測定が可能な未分解アンモニア濃度を測定し、熱処理炉の形状や被処理物の量および形状等に関係なく決定可能な未分解アンモニア濃度と被処理物に侵入する窒素量との関係に基づき、アンモニアガスの流量を調節する。これにより、最適なアンモニアガスの流量を試行錯誤により決定することなく、被処理物に侵入する窒素量を制御することが可能となり、被処理物の品質を安定させることができる。
さらに、炭素の活量を未分解アンモニアの体積分率で除した値であるγ値をパラメータとして採用して炉内の雰囲気を制御することにより、被処理物への窒素の侵入速度を調整可能とする浸炭窒化方法が提案されている(たとえば、特許文献2参照)。これにより、被処理物の品質をさらに安定させるとともに、効率的な浸炭窒化処理を実施することができる。
恒川好樹、外2名、「ガス浸炭窒化処理におけるボイドの発生と窒素の拡散挙動」、熱処理、1985年、25巻、5号、p.242−247 特開平8−13125号公報 特開2007−154293号公報
しかしながら、上記文献に開示された浸炭窒化方法を採用した場合でも、被処理物の内部における窒素の濃度が十分に制御されない場合がある。より具体的には、上記文献に開示された浸炭窒化方法を実施した場合でも、被処理物の内部に侵入した窒素の量が予測される量よりも少なくなり、所望の窒素濃度の分布が得られない場合がある。
そこで、本発明の目的は、被処理物の内部における窒素濃度の制御を容易に実施することが可能な浸炭窒化方法、内部における窒素濃度の制御が容易な機械部品の製造方法、内部における窒素濃度が精度よく制御された機械部品、および被処理物の内部における窒素濃度の制御を容易に実施可能な熱処理炉を提供することである。
本発明に従った浸炭窒化方法は、熱処理炉内の雰囲気が採取される工程と、採取された当該雰囲気における未分解アンモニアの体積分率が算出される工程と、算出された未分解アンモニアの体積分率に基づいて、熱処理炉内の雰囲気が調整される工程とを備えている。そして、雰囲気が採取される工程では、熱処理炉内において被処理物が占める領域からの距離が150mm以下である領域の雰囲気が採取される。
一般に、浸炭窒化処理は、Rガス、エンリッチガスおよびアンモニアガスなどのガスが導入された熱処理炉内において、鋼からなる被処理物を所定の温度に加熱することにより行なわれる。また、熱処理炉内に導入される上記ガスの量は、熱処理炉内のC値や未分解アンモニアの体積分率などが測定され、これに基づいて調整される。そして、被処理物は、熱処理炉内に上記ガスが導入された後十分に時間が経過し、炉内の雰囲気が定常状態となった後、熱処理炉内に搬入される。そのため、熱処理炉内の雰囲気は均一であることを前提として、C値や未分解アンモニアの体積分率などが測定され、これに基づいて熱処理炉内の雰囲気が制御される。
これに対し、本発明者は、熱処理炉内における未分解アンモニアの体積分率の均一性について詳細に検討を行ない、上記文献に開示された浸炭窒化方法を採用した場合でも、被処理物の内部における窒素の濃度が十分に制御されない原因に関して、以下の知見を得た。
すなわち、熱処理炉内に導入されたアンモニアは、窒素と水素とに分解する。そして、当該窒素が被処理物に侵入する。ここで、熱処理炉内にRガス、エンリッチガスおよびアンモニアガスなどのガスが導入された後、定常状態となった場合でも、熱処理炉内の未分解アンモニアの体積分率は、たとえば2000ppm程度となっている。一方、通常浸炭窒化処理が行なわれる温度である850℃付近における未分解アンモニアの体積分率の平衡値は100ppm程度である。そして、熱処理炉内における未分解アンモニアの体積分率の分布を調査したところ、熱処理炉内の雰囲気が定常状態となっている場合でも、未分解アンモニアの体積分率は不均一な状態となっており、これが上記文献に開示された浸炭窒化方法を採用した場合でも、被処理物の内部における窒素の濃度が十分に制御されない原因となっていることが分かった。
つまり、熱処理炉内の雰囲気が定常状態となっている場合でも、熱処理炉内に導入されたアンモニアの分解反応は非平衡状態にあり、炉内の同一地点における未分解アンモニアの体積分率はほぼ一定となっているものの、導入されたアンモニアが到達するまでの時間が異なる2つの地点においては、その未分解アンモニアの体積分率は異なっている。したがって、熱処理炉内の未分解アンモニアの体積分率に基づいて雰囲気を調整し、被処理物の内部における窒素濃度の制御を精度よく行なうためには、被処理物に接触する雰囲気の未分解アンモニアの体積分率と同等の未分解アンモニアの体積分率を有する領域の未分解アンモニアの体積分率に基づいて雰囲気を調整することが必要である。
そして、本発明者は、熱処理炉内の未分解アンモニアの体積分率の均一性が低くなる処理条件、すなわち熱処理炉内の雰囲気の流速が小さい条件においても、炉内において被処理物が占める領域からの距離が150mm以下である領域における未分解アンモニアの体積分率に基づいて雰囲気を調整することにより、被処理物の内部における窒素濃度を精度よく制御可能であることを見出した。
本発明の浸炭窒化方法においては、熱処理炉内において被処理物が占める領域からの距離が150mm以下である領域の雰囲気が採取され、当該雰囲気における未分解アンモニアの体積分率が算出された上で、当該体積分率に基づいて、熱処理炉内の雰囲気が調整される。その結果、本発明の浸炭窒化方法によれば、被処理物の内部における窒素濃度の制御を容易に実施することが可能な浸炭窒化方法を提供することができる。
本発明に従った浸炭窒化方法は、熱処理炉内の雰囲気が採取される工程と、採取された当該雰囲気における未分解アンモニアの体積分率が算出される工程と、算出された未分解アンモニアの体積分率に基づいて、熱処理炉内の雰囲気が調整される工程とを備えている。そして、雰囲気が採取される工程では、アンモニアの分解反応速度を含む解析条件に基づきCFD(Computational Fluid Dynamics;数値流体力学)解析を実施した場合に、熱処理炉内において被処理物が占める領域との未分解アンモニアの体積分率の差が25%以内となる領域の雰囲気が採取される。
上述のように、熱処理炉内の未分解アンモニアの体積分率に基づいて雰囲気を調整し、被処理物の内部における窒素濃度の制御を精度よく行なうためには、被処理物に接触する雰囲気の未分解アンモニアの体積分率と同等の未分解アンモニアの体積分率を有する領域の未分解アンモニアの体積分率に基づいて雰囲気を調整することが必要である。
そして、本発明者は、アンモニアの分解反応速度を考慮しつつCFD解析を行ない、熱処理炉内において被処理物が占める領域と同等の未分解アンモニアの体積分率を有する領域における未分解アンモニアの体積分率に基づいて雰囲気を調整することにより、被処理物の内部における窒素濃度を精度よく制御可能であることを見出した。また、たとえば炭素の活量が0.95である場合、被処理物への窒素侵入速度を最大にするためには、未分解アンモニアの体積分率は0.2%程度以上必要であるが、0.15%であれば当該窒素侵入速度は最大値の90%以上を確保することができる。つまり、熱処理炉内において被処理物が占める領域との未分解アンモニアの体積分率の差が25%以下である領域における未分解アンモニアの体積分率に基づいて雰囲気を調整すれば、被処理物の内部における窒素濃度を高い精度で制御することができる。
本発明の浸炭窒化方法においては、アンモニアの分解反応速度を含む解析条件に基づきCFD解析を実施した場合に、熱処理炉内において被処理物が占める領域との未分解アンモニアの体積分率の差が25%以内となる領域の雰囲気が採取され、当該雰囲気における未分解アンモニアの体積分率が算出された上で、当該体積分率に基づいて、熱処理炉内の雰囲気が調整される。その結果、本発明の浸炭窒化方法によれば、被処理物の内部における窒素濃度の制御を容易に実施することが可能な浸炭窒化方法を提供することができる。
ここで、熱処理炉内において被処理物が占める領域とは、バッチ式の熱処理炉のように熱処理炉内における被処理物の位置が変化することなく浸炭窒化が実施される場合、被処理物が配置される領域、特に当該領域の表面であり、連続炉タイプの熱処理炉のように熱処理炉内における被処理物の位置が変化しつつ浸炭窒化が実施される場合、被処理物が移動する軌跡に該当する領域である。また、算出されるべき上記未分解アンモニアの体積分率は、雰囲気中の未分解アンモニアの体積分率と一対一の対応関係を有する数値であればよい。さらに、未分解アンモニアの体積分率とは、熱処理炉内に供給されたアンモニアのうち、分解されることなく気体アンモニアの状態で残存しているアンモニアの熱処理炉内の雰囲気における体積分率をいう。
本発明に従った機械部品の製造方法は、鋼からなり、機械部品の概略形状に成形された鋼部材を準備する工程と、準備された鋼部材に対して、浸炭窒化処理を実施した後、A点以上の温度からM点以下の温度へ冷却することにより、鋼部材を焼入硬化する焼入硬化工程とを備えている。そして、焼入硬化工程における浸炭窒化処理は、上記本発明の浸炭窒化方法を用いて実施される。
本発明の機械部品の製造方法によれば、焼入硬化工程における浸炭窒化処理が、上記本発明の浸炭窒化方法を用いて実施されるため、内部における窒素濃度の制御が容易な機械部品の製造方法を提供することができる。
ここで、A点とは鋼を加熱した場合に、鋼の組織がフェライトからオーステナイトに変態を開始する温度に相当する点をいう。また、M点とはオーステナイト化した鋼が冷却される際に、マルテンサイト化を開始する温度に相当する点をいう。
本発明に従った機械部品は、上述の機械部品の製造方法により製造されている。上述した本発明の機械部品の製造方法により製造されていることにより、本発明の機械部品によれば、内部における窒素濃度が精度よく制御されることにより表面層が強化された機械部品を提供することができる。
上記本発明の機械部品は、軸受を構成する部品として用いられてもよい。内部における窒素濃度が精度よく制御されることにより表面層が強化された本発明の機械部品は、疲労強度、耐摩耗性等が要求される機械部品である軸受を構成する部品として好適である。
なお、上述の機械部品を用いて、軌道輪と、軌道輪に接触し、円環状の軌道上に配置される転動体とを備えた転がり軸受を構成してもよい。すなわち、軌道輪および転動体の少なくともいずれか一方は、上述の機械部品である。内部における窒素濃度が精度よく制御されることにより表面層が強化された本発明の機械部品を備えていることにより、当該転がり軸受によれば、長寿命な転がり軸受を提供することができる。
本発明に従った熱処理炉は、鋼の浸炭窒化処理を実施するための熱処理炉である。この熱処理炉は、被処理物を保持する保持部を有する反応室と、当該反応室内に開口を有し、その開口から反応室内の雰囲気を採取する雰囲気採取部材と、雰囲気採取部材に接続され、雰囲気採取部材により採取された雰囲気中の未分解アンモニアの体積分率を算出する雰囲気分析部と、雰囲気分析部に接続され、算出された未分解アンモニアの体積分率に基づいて、反応室内の雰囲気を制御する雰囲気制御部とを備えている。そして、上記開口と、保持部に保持される被処理物が占める領域との距離が150mm以下となるように、雰囲気採取部材が配置されている。
上述のように、熱処理炉内の未分解アンモニアの体積分率に基づいて雰囲気を調整し、被処理物の内部における窒素濃度の制御を精度よく行なうためには、被処理物に接触する雰囲気の未分解アンモニアの体積分率と同等の未分解アンモニアの体積分率を有する領域の未分解アンモニアの体積分率に基づいて雰囲気を調整することが必要である。また、熱処理炉内の未分解アンモニアの体積分率の均一性が低くなる処理条件、すなわち熱処理炉内の雰囲気の流速が小さい条件においても、炉内において被処理物が占める領域からの距離が150mm以下である領域における未分解アンモニアの体積分率に基づいて雰囲気を調整することにより、被処理物の内部における窒素濃度を精度よく制御することができる。
本発明の熱処理炉においては、雰囲気採取部材の開口と、保持部に保持される被処理物が占める領域との距離が150mm以下であるため、熱処理炉内において被処理物が占める領域からの距離が150mm以下である領域の雰囲気が採取される。そして、当該雰囲気における未分解アンモニアの体積分率が雰囲気分析部において算出された上で、当該体積分率に基づいて、熱処理炉内の雰囲気を雰囲気制御部により調整することができる。その結果、本発明の熱処理炉によれば、被処理物の内部における窒素濃度の制御を容易に実施可能な熱処理炉を提供することができる。
本発明に従った熱処理炉は、鋼の浸炭窒化処理を実施するための熱処理炉である。この熱処理炉は、被処理物を保持する保持部を有する反応室と、反応室内に開口を有し、当該開口から反応室内の雰囲気を採取する雰囲気採取部材と、雰囲気採取部材に接続され、雰囲気採取部材により採取された雰囲気中の未分解アンモニアの体積分率を算出する雰囲気分析部と、雰囲気分析部に接続され、算出された未分解アンモニアの体積分率に基づいて、反応室内の雰囲気を制御する雰囲気制御部とを備えている。そして、アンモニアの分解反応速度を含む解析条件に基づき、反応室内の雰囲気のCFD解析を実施した場合に、反応室内において被処理物が占める領域との未分解アンモニアの体積分率の差が25%以内となる領域に、上記開口が位置するように、雰囲気採取部材が配置されている。
上述のように、熱処理炉内の未分解アンモニアの体積分率に基づいて雰囲気を調整し、被処理物の内部における窒素濃度の制御を精度よく行なうためには、被処理物に接触する雰囲気の未分解アンモニアの体積分率と同等の未分解アンモニアの体積分率を有する領域の未分解アンモニアの体積分率に基づいて雰囲気を調整することが必要である。また、アンモニアの分解反応速度を考慮しつつCFD解析を行ない、熱処理炉内において被処理物が占める領域と同等の未分解アンモニアの体積分率を有する領域における未分解アンモニアの体積分率(濃度)に基づいて雰囲気を調整することにより、被処理物の内部における窒素濃度を精度よく制御可能である。さらに、たとえば炭素の活量が0.95である場合、被処理物への窒素侵入速度を最大にするためには、未分解アンモニアの体積分率は0.2%程度以上必要であるが、0.15%であれば当該窒素侵入速度は最大値の90%以上を確保することができる。つまり、熱処理炉内において被処理物が占める領域との未分解アンモニアの体積分率の差が25%以下である領域における未分解アンモニアの体積分率に基づいて雰囲気を調整すれば、被処理物の内部における窒素濃度を高い精度で制御することができる。
本発明の熱処理炉においては、上記CFD解析を実施した場合に、反応室内において被処理物が占める領域との未分解アンモニアの体積分率の差が25%以内となる領域に、雰囲気採取部材の開口が位置するため、熱処理炉内において被処理物が占める領域との未分解アンモニアの体積分率の差が25%以内となる領域の雰囲気が採取され、当該雰囲気における未分解アンモニアの体積分率が雰囲気分析部において算出された上で、当該体積分率に基づいて、熱処理炉内の雰囲気を雰囲気制御部により調整することができる。その結果、本発明の熱処理炉によれば、被処理物の内部における窒素濃度の制御を容易に実施可能な熱処理炉を提供することができる。
以上の説明から明らかなように、本発明の浸炭窒化方法によれば、被処理物の内部における窒素濃度の制御を容易に実施することが可能な浸炭窒化方法を提供することができる。また、本発明の機械部品の製造方法によれば、内部における窒素濃度の制御が容易な機械部品の製造方法を提供することができる。また、本発明の機械部品によれば、内部における窒素濃度が精度よく制御された機械部品を提供することができる。また、本発明の熱処理炉によれば、被処理物の内部における窒素濃度の制御を容易に実施可能な熱処理炉を提供することができる。
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰り返さない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の一実施の形態である実施の形態1における機械部品を備えた転がり軸受としての深溝玉軸受の構成を示す概略断面図である。図1を参照して、本発明の実施の形態1における転がり軸受としての深溝玉軸受について説明する。
図1を参照して、深溝玉軸受1は、環状の外輪11と、外輪11の内側に配置された環状の内輪12と、外輪11と内輪12との間に配置され、円環状の保持器14に保持された転動体としての複数の玉13とを備えている。外輪11の内周面には外輪転走面11Aが形成されており、内輪12の外周面には内輪転走面12Aが形成されている。そして、内輪転走面12Aと外輪転走面11Aとが互いに対向するように、外輪11と内輪12とは配置されている。さらに、複数の玉13は、玉転走面(表面)13Aにおいて内輪転走面12Aおよび外輪転走面11Aに接触し、かつ保持器14により周方向に所定のピッチで配置されることにより円環状の軌道上に転動自在に保持されている。以上の構成により、深溝玉軸受1の外輪11および内輪12は、互いに相対的に回転可能となっている。
ここで、機械部品である外輪11、内輪12、玉13および保持器14のうち、特に、外輪11、内輪12および玉13には転動疲労強度や耐摩耗性が要求される。そのため、これらのうち少なくとも1つが本発明の機械部品であることにより、当該部品の内部における窒素濃度が精度よく制御されて表面層が強化され、深溝玉軸受1を長寿命化することができる。
図2は、本発明の一実施の形態である実施の形態1の変形例における機械部品を備えた転がり軸受としてのスラストニードルころ軸受の構成を示す概略断面図である。図2を参照して、実施の形態1の変形例における転がり軸受としてのスラストニードルころ軸受について説明する。
図2を参照して、スラストニードルころ軸受2は、円盤状の形状を有し、互いに一方の主面が対向するように配置された転動部材としての一対の軌道輪21と、転動部材としての複数のニードルころ23と、円環状の保持器24とを備えている。複数のニードルころ23は、ころ転走面(外周面)23Aにおいて、一対の軌道輪21の互いに対向する主面に形成された軌道輪転走面21Aに接触し、かつ保持器24により周方向に所定のピッチで配置されることにより円環状の軌道上に転動自在に保持されている。以上の構成により、スラストニードルころ軸受2の一対の軌道輪21は、互いに相対的に回転可能となっている。
ここで、機械部品である軌道輪21、ニードルころ23および保持器24のうち、特に、軌道輪21、ニードルころ23には転動疲労強度や耐摩耗性が要求される。そのため、これらのうち少なくとも1つが本発明の機械部品であることにより、当該部品の内部における窒素濃度が精度よく制御されて表面層が強化され、スラストニードルころ軸受2を長寿命化することができる。
図3は、本発明の一実施の形態である実施の形態1の他の変形例における機械部品を備えた等速ジョイントの構成を示す概略部分断面図である。また、図4は、図3の線分IV−IVに沿う概略断面図である。また、図5は、図3の等速ジョイントが角度をなした状態を示す概略部分断面図である。なお、図3は、図4の線分III−IIIに沿う概略断面図に対応する。図3〜図5を参照して、実施の形態1の他の変形例における等速ジョイントについて説明する。
図3〜図5を参照して、等速ジョイント3は、軸35に連結されたインナーレース31と、インナーレース31の外周側を囲むように配置され、軸36に連結されたアウターレース32と、インナーレース31とアウターレース32との間に配置されたトルク伝達用のボール33と、ボール33を保持するケージ34とを備えている。ボール33は、インナーレース31の外周面に形成されたインナーレースボール溝31Aと、アウターレース32の内周面に形成されたアウターレースボール溝32Aとに接触して配置され、脱落しないようにケージ34によって保持されている。
インナーレース31の外周面およびアウターレース32の内周面のそれぞれに形成されたインナーレースボール溝31Aとアウターレースボール溝32Aとは、図3に示すように、軸35および軸36の中央を通る軸が一直線上にある状態において、それぞれ当該軸上のジョイント中心Oから当該軸上の左右に等距離離れた点Aおよび点Bを曲率中心とする曲線(円弧)状に形成されている。すなわち、インナーレースボール溝31Aおよびアウターレースボール溝32Aに接触して転動するボール33の中心Pの軌跡が、点A(インナーレース中心A)および点B(アウターレース中心B)に曲率中心を有する曲線(円弧)となるように、インナーレースボール溝31Aおよびアウターレースボール溝32Aのそれぞれは形成されている。これにより、等速ジョイントが角度をなした場合(軸35および軸36の中央を通る軸が交差するように等速ジョイントが動作した場合)においても、ボール33は、常に軸35および軸36の中央を通る軸のなす角(∠AOB)の2等分線上に位置する。
次に、等速ジョイント3の動作について説明する。図3および図4を参照して、等速ジョイント3においては、軸35、36の一方に軸まわりの回転が伝達されると、インナーレースボール溝31Aおよびアウターレースボール溝32Aに嵌め込まれたボール33を介して、軸35、36の他方の軸に当該回転が伝達される。ここで、図5に示すように軸35、36が角度θをなした場合、ボール33は、前述のインナーレース中心Aおよびアウターレース中心Bに曲率中心を有するインナーレースボール溝31Aおよびアウターレースボール溝32Aに案内されて、中心Pが∠AOBの二等分線上となる位置に保持される。ここで、ジョイント中心Oからインナーレース中心Aまでの距離と、アウターレース中心Bまでの距離とが等しくなるように、インナーレースボール溝31Aおよびアウターレースボール溝32Aが形成されているため、ボール33の中心Pからインナーレース中心Aおよびアウターレース中心Bまでの距離はそれぞれ等しく、△OAPと△OBPとは合同である。その結果、ボール33の中心Pから軸35、36までの距離Lは互いに等しくなり、軸35、36の一方が軸まわりに回転した場合、他方も等速で回転する。このように、等速ジョイント3は、軸35、36が角度をなした場合でも、等速性を確保することができる。なお、ケージ34は、軸35、36が回転した場合に、インナーレースボール溝31Aおよびアウターレースボール溝32Aからボール33が飛び出すことをインナーレースボール溝31Aおよびアウターレースボール溝32Aとともに防止すると同時に、等速ジョイント3のジョイント中心Oを決定する機能を果たしている。
ここで、機械部品であるインナーレース31、アウターレース32、ボール33およびケージ34のうち、特に、インナーレース31、アウターレース32およびボール33には疲労強度や耐摩耗性が要求される。そのため、これらのうち少なくとも1つが本発明の機械部品であることにより、当該部品の内部における窒素濃度が精度よく制御されて表面層が強化され、等速ジョイント3を長寿命化することができる。
次に、本発明の機械部品の製造方法における一実施の形態である上記機械部品、および上記機械部品を備えた転がり軸受、等速ジョイントなどの機械要素の製造方法について説明する。図6は、本発明の一実施の形態である実施の形態1における機械部品および当該機械部品を備えた機械要素の製造方法の概略を示す図である。図6を参照して、まず、鋼からなり、機械部品の概略形状に成形された鋼部材を準備する鋼部材準備工程が実施される。具体的には、たとえば、棒鋼を素材とし、当該棒鋼に対して切断、鍛造、旋削などの加工が実施されることにより、機械部品としての外輪11、軌道輪21、インナーレース31などの機械部品の概略形状に成形された鋼部材が準備される。
次に、鋼部材準備工程において準備された上述の鋼部材に対して、浸炭窒化処理を実施した後、A点以上の温度からM点以下の温度へ冷却することにより、鋼部材を焼入硬化する焼入硬化工程が実施される。この焼入硬化工程の詳細については後述する。
次に、焼入硬化工程が実施された鋼部材に対して、A点以下の温度に加熱することにより焼入硬化された鋼部材の靭性等を向上させる焼戻工程が実施される。具体的には、焼入硬化された鋼部材がA点以下の温度である150℃以上350℃以下の温度、たとえば180℃に加熱され、30分間以上240分間以下の時間、たとえば120分間保持されて、その後室温の空気中で冷却される(空冷)。
さらに、焼戻工程が実施された鋼部材に対して、仕上げ加工などが施される仕上げ工程が実施される。具体的には、たとえば、焼戻工程が実施された鋼部材の内輪転走面12A、軌道輪転走面21A、アウターレースボール溝32Aなどに対する研削加工が実施される。これにより、本発明の実施の形態1における機械部品は完成し、本発明の実施の形態1における機械部品の製造方法は完了する。さらに、完成した機械部品が組み合わされて機械要素が組み立てられる組立て工程が実施される。具体的には、上述の工程により製造された本発明の機械部品である、たとえば外輪11、内輪12、玉13と保持器14とが組み合わされて、深溝玉軸受1が組み立てられる。これにより、本発明の機械部品を備えた機械要素が製造される。
次に、上述の焼入硬化工程の詳細について説明する。図7は、実施の形態1において用いられる熱処理炉の構成を示す概略図である。また、図8は、図7の線分VIII−VIIIに沿う概略部分断面図である。また、図9は、実施の形態1における機械部品の製造方法に含まれる焼入硬化工程を説明するための図である。また、図10は、図9の雰囲気制御工程の詳細を説明するための図である。また、図11は、図9の浸炭窒化工程に含まれる加熱パターン制御工程における加熱パターン(被処理物に与えられる温度履歴)の一例を示す図である。図11において、横方向は時間を示しており右に行くほど時間が経過していることを示している。また、図11において、縦方向は温度を示しており上に行くほど温度が高いことを示している。図7〜図11を参照して、本実施の形態における機械部品の製造方法に含まれる焼入硬化工程の詳細について説明する。
まず、本実施の形態における機械部品の製造方法に用いられる本実施の形態の熱処理炉について説明する。図7を参照して、本実施の形態における熱処理炉5は、鋼の浸炭窒化処理を実施するための連続炉タイプの熱処理炉である。熱処理炉5は、壁面により取り囲まれた本体部51と、雰囲気採取パイプ56と、雰囲気分析部57と、雰囲気制御部58とを備えている。
本体部51の長手方向(X軸方向)の一端には、被処理物91を投入するための開口である投入口54が形成されており、本体部51の長手方向の他端には被処理物91を排出するための開口である排出口55が形成されている。また、本体部51の底壁に沿って、投入口54から投入された被処理物91を保持するとともに、被処理物91を投入口54から排出口55まで搬送する保持部としての床面ベルト53が配置されている。さらに、本体部51には、本体部の幅方向(Z軸方向)の一端から他端にまで延在するとともに、本体部51の上壁から床面ベルト53に向けて突出し、床面ベルト53との間に間隔を有する3つの隔壁52、52、52が配置されている。3つの隔壁52、52、52は、本体部51の長手方向に並べて配置されている。これにより、本体部51は、長手方向に、投入口54側から順に予熱ゾーン51A、第1加熱ゾーン51B、第2加熱ゾーン51Cおよび第3加熱ゾーン51Dの4つのゾーンに分割されている。
さらに、図7および図8を参照して、反応室としての第2加熱ゾーン51Cには、第2加熱ゾーン51C内に開口56Aを有し、第2加熱ゾーン51Cの内部の雰囲気を採取する雰囲気採取部材としての雰囲気採取パイプ56と、雰囲気採取パイプ56に接続され、雰囲気中の未分解アンモニアの体積分率を算出する雰囲気分析部57と、雰囲気分析部57に接続され、算出された未分解アンモニアの体積分率に基づき、第2加熱ゾーン51Cの内部の雰囲気を制御する雰囲気制御部58とが設置されている。また、第2加熱ゾーン51Cの内部の上壁51C1には、Rガス、エンリッチガス、アンモニアガスなどの雰囲気ガスを第2加熱ゾーン51Cの内部に供給する雰囲気ガス供給部61と、第2加熱ゾーン51Cの内部の雰囲気ガスを攪拌する攪拌装置としてのファン59が設置されている。そして、図8を参照して、開口56Aと、床面ベルト53に保持される被処理物91が占める領域、すなわち被処理物91が床面ベルト53により搬送されて移動する軌跡に該当する領域(被処理物91が移動することにより占める領域全体)である被処理物通過領域92との距離dが150mm以下となるように、雰囲気採取パイプ56が配置されている。
次に、熱処理炉5を用いた焼入硬化工程の具体的手順を説明する。図7を参照して、焼入硬化工程においては、まず、被処理物91としての鋼部材が投入口54から投入され、床面ベルト53上に載置される。投入された被処理物91は、床面ベルト53により搬送されて予熱ゾーン51A、第1加熱ゾーン51B、第2加熱ゾーン51Cおよび第3加熱ゾーン51Dを順次通過しつつ浸炭窒化処理される。予熱ゾーン51Aでは、被処理物91が加熱されて昇温される。第1加熱ゾーン51Bでは、被処理物91はさらに加熱されつつ被処理物における温度のばらつきが小さくなるように温度が均一化される。第2加熱ゾーン51Cでは、被処理物91が浸炭窒化される。そして、第3加熱ゾーン51Dにおいて被処理物91の温度調整等が行なわれた後、被処理物91は排出口55から外部に排出され、冷却油などの冷却剤中に投入されることにより冷却されて、焼入硬化される。
次に、上記熱処理炉を用いた実施の形態1における機械部品の製造方法に含まれる焼入硬化工程について説明する。図9を参照して、焼入硬化工程においては、まず浸炭窒化工程が実施されて被処理物である鋼部材の表層部が浸炭窒化された後、冷却工程において、当該鋼部材がA点以上の温度からM点以下の温度に冷却されることにより、焼入硬化される。浸炭窒化工程は、本発明の一実施の形態である実施の形態1における浸炭窒化方法により実施される。すなわち、浸炭窒化工程は、熱処理炉内の雰囲気が制御される雰囲気制御工程と、熱処理炉内において鋼部材に付与される加熱履歴が制御される加熱パターン制御工程とを含んでいる。この雰囲気制御工程と加熱パターン制御工程とは、独立に、かつ並行して実施することができる。
雰囲気制御工程においては、図10を参照して、まず、熱処理炉5の第2加熱ゾーン51C内の雰囲気が採取される雰囲気採取工程が実施される。具体的には、図8を参照して、第2加熱ゾーン51C内に位置する開口56Aを有する雰囲気採取パイプ56により、第2加熱ゾーン51C内の雰囲気が採取される。次に、図10を参照して、採取された雰囲気における未分解アンモニアの体積分率が算出される未分解アンモニア体積分率算出工程が実施される。具体的には、図7および図8を参照して、採取された雰囲気が、たとえば雰囲気分析部57に含まれるガスクロマトグラフにより分析されて、雰囲気中の未分解アンモニアの体積分率が算出される。そして、図7、図8および図10を参照して、算出された未分解アンモニアの体積分率に基づいて、第2加熱ゾーン51C内の雰囲気が雰囲気制御部58により調整される雰囲気調整工程が実施される。具体的には、未分解アンモニアの体積分率算出工程において算出された雰囲気中の未分解アンモニアの体積分率が目標の未分解アンモニアの体積分率になっていない場合、第2加熱ゾーン51C内の未分解アンモニアの体積分率を増減させるためのアンモニア供給量調節工程が実施された後、雰囲気採取工程が再度実施される。
アンモニア供給量調節工程は、たとえば、配管を介して熱処理炉5に連結されたアンモニアガスボンベから雰囲気ガス供給部61を介して単位時間に第2加熱ゾーン51Cに流入するアンモニアの量(アンモニアガスの流量)を当該配管に取り付けられたマスフローコントローラなどを備えた流量制御装置にて調節することにより実施することができる。すなわち、測定された未分解アンモニアの体積分率が目標の未分解アンモニアの体積分率よりも高い場合、上記流量を低下させ、低い場合、上記流量を増加させることにより、アンモニア供給量調節工程を実施することができる。このアンモニア供給量調節工程において、測定された未分解アンモニアの体積分率と目標の未分解アンモニアの体積分率との間に所定の差がある場合、どの程度流量を増減させるかについては、予め実験的に決定したアンモニアガスの流量の増減と未分解アンモニアの体積分率の増減との関係に基づいて決定することができる。
一方、図10を参照して、未分解アンモニアの体積分率が目標の未分解アンモニアの体積分率になっている場合には、アンモニア供給量調節工程が実施されることなく、雰囲気採取工程が再度実施される。
そして、図8および図10を参照して、雰囲気採取工程では、第2加熱ゾーン51C内において被処理物91が占める領域である被処理物通過領域92からの距離dが150mm以下である領域の雰囲気が当該領域に開口56Aを有する雰囲気採取パイプ56により採取される。
一方、図9を参照して、加熱パターン制御工程では、被処理物91としての鋼部材に付与される加熱履歴が制御される。具体的には、図11に示すように、鋼部材が上述の雰囲気制御工程によって制御された雰囲気中で、A点以上の温度である800℃以上1000℃以下の温度、たとえば850℃に加熱され、60分間以上300分間以下の時間、たとえば150分間保持される。当該保持時間が経過するとともに加熱パターン制御工程は終了し、同時に雰囲気制御工程も終了する(浸炭窒化工程)。この加熱パターン制御工程は、図7を参照して、予熱ゾーン51A、第1加熱ゾーン51B、第2加熱ゾーン51Cおよび第3加熱ゾーン51Dを被処理物91が順次通過することにより、図11の加熱パターンが被処理物91に付与されるように、上記各ゾーンの温度が制御されることにより実施される。
その後、図7、図9および図11を参照して、排出口55から排出された被処理物91が、図示しない焼入油槽に貯留された油中に浸漬(油冷)されることにより、A点以上の温度からM点以下の温度に冷却される冷却工程が実施される。以上のプロセスにより、鋼部材は表層部が浸炭窒化されるとともに焼入硬化される。これにより、本実施の形態の焼入硬化工程は完了する。
以上のように、上記熱処理炉5を用いた本実施の形態における浸炭窒化方法(浸炭窒化工程)においては、熱処理炉5の第2加熱ゾーン51C内において被処理物91が通過する被処理物通過領域92からの距離が150mm以下である領域の雰囲気が採取され、当該雰囲気における未分解アンモニアの体積分率が算出された上で、当該体積分率に基づいて、第2加熱ゾーン51C内の雰囲気が調整される。その結果、本実施の形態の浸炭窒化方法によれば、被処理物91の内部における窒素濃度の制御を容易に実施することができる。そして、本実施の形態における機械部品の製造方法によれば、浸炭窒化工程において本実施の形態の浸炭窒化方法を採用しているため、内部における窒素濃度が精度よく制御された機械部品を製造することができる。
(実施の形態2)
以下、本発明の一実施の形態である実施の形態2について説明する。図12は、図7の線分XII−XIIに沿う概略部分断面図である。実施の形態2における浸炭窒化方法、機械部品の製造方法、機械部品および熱処理炉は、基本的には図1〜図11に基づいて説明した実施の形態1の場合と同様の構成を有し、同様の効果を奏する。しかし、実施の形態2における熱処理炉は、第2加熱ゾーン51Cの構成において実施の形態1とは異なっており、これに伴い、これを使用した浸炭窒化方法および機械部品の製造方法、ならびに機械部品の構成も、実施の形態1とは異なっている。
すなわち、図8を参照して、実施の形態1における熱処理炉5の第2加熱ゾーン51Cにおいては、開口56Aと、床面ベルト53に保持される被処理物91が占める領域、すなわち被処理物通過領域92との距離が150mm以下となるように、雰囲気採取パイプ56が配置されているのに対し、図12を参照して、実施の形態2においては、アンモニアの分解反応速度を含む解析条件に基づき、第2加熱ゾーン51C内の雰囲気のCFD解析を実施した場合に、被処理物通過領域92との未分解アンモニアの体積分率の差が25%以内となる領域である被処理物近傍領域93に、開口56Aが位置するように、雰囲気採取パイプ56が配置される。そして、図9および図10を参照して、実施の形態2における機械部品の製造方法に含まれる浸炭窒化工程においては、雰囲気制御工程の雰囲気採取工程において、被処理物近傍領域93の雰囲気が当該領域に開口56Aを有する雰囲気採取パイプ56により採取され、当該雰囲気における未分解アンモニアの体積分率が算出された上で、当該体積分率に基づいて、第2加熱ゾーン51C内の雰囲気が調整される。その結果、本実施の形態の浸炭窒化工程(浸炭窒化方法)によれば、被処理物91の内部における窒素濃度の制御を容易に実施することができる。したがって、本実施の形態における機械部品の製造方法によれば、内部における窒素濃度が精度よく制御された機械部品を製造することができる。
ここで、雰囲気採取パイプ56の開口56Aの第2加熱ゾーン51C内における位置を決定するための具体的手順を説明する。図13は、雰囲気採取パイプの開口の位置を決定するための具体的手順を説明するためのフローチャートである。
図13を参照して、まず、工程(S100)において、CFD解析により、熱処理炉5の本体部51の内部、特に第2加熱ゾーン51C内における未分解アンモニアの体積分率を解析する。次に、工程(S200)において、工程(S100)の解析結果に基づき、被処理物91が占める領域、たとえば被処理物通過領域92における未分解アンモニアの体積分率を算出する。さらに、工程(S300)において、工程(S200)で算出された未分解アンモニアの体積分率との差が25%以内である被処理物近傍領域93を確定する。そして、工程(S400)において、工程(S300)で確定した被処理物近傍領域93内に位置するように、開口56Aの位置を決定する。
なお、上記実施の形態の熱処理炉においては、雰囲気採取パイプ56の開口56Aと保持部としての床面ベルト53との距離は、変更可能であってもよい。すなわち、雰囲気採取パイプ56の開口56Aおよび床面ベルト53のうち少なくともいずれか一方は、他方に対して両者の距離が変わるように移動可能であってもよい。これにより、被処理物91の形状や量が変更された場合でも、開口56Aと被処理物通過領域92との距離を150mm以下とすること、あるいは被処理物近傍領域93に開口56Aを配置することが容易となる。
また、上記実施の形態においては、本発明の機械部品の一例として、深溝玉軸受、スラストニードルころ軸受、等速ジョイントについて説明したが、本発明の機械部品はこれに限られず、表層部の疲労強度、耐摩耗性が要求される機械部品、たとえばハブ、ギア、シャフト等であってもよい。
以下、本発明の実施例1について説明する。熱処理炉内における雰囲気採取パイプの開口の位置と被処理物に侵入する窒素量の制御の精度との関係を調査する実験を行なった。実験の手順は以下のとおりである。
実施例1における実験は、上記実施の形態1において図7および図8に基づいて説明した熱処理炉を用いて実施した。この熱処理炉は、全長5000mmの連続炉タイプの熱処理炉である。また、被処理物(サンプル)は、JIS SUJ2(炭素含有量1質量%)製の外径φ38mm、内径φ30mm、幅10mmのリングとした。そして、図7および図8を参照して、被処理物91(サンプル)を投入口54から投入し、床面ベルト53により本体部51内を搬送することにより、被処理物91を熱処理した。加熱パターンは図11と同様のパターンを採用し、保持温度は850℃とした。そして、第2加熱ゾーン51Cにおける炭素の活量の目標値を0.95、γ値(炭素の活量を未分解アンモニアの体積分率で除した値)の目標値を4.5に設定し、被処理物91に対して浸炭窒化処理を実施した。
このとき、雰囲気採取パイプ56の開口56Aと被処理物通過領域92との距離dを本発明の浸炭窒化方法の範囲である50mm〜150mm(実施例A〜C)および本発明の浸炭窒化方法の範囲外である200mm〜650mm(比較例A〜E)の範囲で変化させて、熱処理を実施した。そして、熱処理中の第2加熱ゾーン51Cにおける炭素の活量およびγ値を測定した。また、熱処理が完了したサンプルを表面に垂直な断面において切断し、表面からの深さ方向における窒素濃度の分布をEPMA(Electron Probe Micro Analysis)により調査した。表1に熱処理の主な条件を示す。
次に、実験結果について説明する。表2に、上記実施例A〜Cおよび比較例A〜Eにおける炭素の活量およびγ値の測定結果を示す。また、図14は、実施例Aのサンプルにおける内部(表層付近)の窒素濃度の分布を示す図である。また、図15は、比較例Eのサンプルにおける内部(表層付近)の窒素濃度の分布を示す図である。図14および図15において、横軸は表面からの深さを示しており、縦軸は窒素濃度を示している。また、図14および図15において、図中の細線は窒素濃度の測定値を示しており、太線はγ値等から算出される窒素濃度の予測値を示している。つまり、図14および図15において、細線と太線とが一致しているほど、高い精度でサンプルへの窒素の侵入量が制御されていることを表している。
表2を参照して、実施例A〜Cおよび比較例A〜Eのいずれの場合も、炭素の活量およびγ値は、ほぼ目標値(表1参照)どおりの値が得られていることが確認された。そして、図14を参照して、本発明の浸炭窒化方法の実施例である実施例Aにおけるサンプルの表層付近の窒素濃度は、γ値等から算出される窒素濃度の予測値とEPMAにより測定された窒素濃度の実測値とがよく一致している。つまり、実施例Aにおける浸炭窒化方法では、サンプルの内部における窒素濃度が精度よく制御されている。一方、図15を参照して、本発明の範囲外の浸炭窒化方法である比較例Eにおけるサンプルの表層付近の窒素濃度は、γ値等から算出される窒素濃度の予測値とEPMAにより測定された窒素濃度の実測値とが大きく異なっている。つまり、比較例Eにおける浸炭窒化方法では、サンプルの内部における窒素濃度の制御の精度が低下している。
さらに、実施例A〜Cおよび比較例A〜Eについて測定された窒素濃度の分布について、サンプルの表面から内部に向けて窒素濃度を積分し、サンプル表面の単位面積からサンプル内に侵入した窒素量(窒素侵入量)を算出した。図16は、雰囲気採取パイプの開口と被処理物通過領域との距離dと窒素侵入量との関係を示す図である。図16において、横軸は上記距離d、縦軸は窒素侵入量を示している。また、図16においては、γ値等から算出された窒素侵入量の予測値が破線で示されている。つまり、図16において、窒素侵入量がこの予測値に近いほど、高い精度でサンプルへの窒素の侵入量が制御されていることを表している。
図16を参照して、距離dが本発明の範囲内である150mm以下の場合、算出された窒素侵入量が予測値とほぼ一致している。一方、距離dが200mm以上では、距離dが大きくなるにしたがって、算出された窒素侵入量と予測値との差が大きくなっている。これは、反応室である第2加熱ゾーン51Cの内部における未分解アンモニアの体積分率が均一となっておらず、距離dが150mmを超えた場合、被処理物(サンプル)近傍よりも未分解アンモニアの体積分率が高い位置における未分解アンモニアの体積分率の測定結果に基づき、γ値等が制御されたことが原因であると考えられる。以上の結果より、雰囲気採取パイプの開口と被処理物通過領域との距離dを150mm以下とする本発明の浸炭窒化方法によれば、被処理物の内部における窒素濃度が精度よく制御可能であることが確認された。なお、図16を参照して、被処理物の内部における窒素濃度を安定して精度よく制御するためには、雰囲気採取パイプの開口と被処理物通過領域との距離dを100mm以下とすることが好ましいといえる。
以下、本発明の実施例2について説明する。浸炭窒化処理において、熱処理炉内に導入されたアンモニアガスは、分解反応が進行しつつ炉内を流れて被処理物の表面に到達し、被処理物への窒素の侵入に寄与するものと考えられる。そこで、上記実施例1における実験結果の妥当性を確認するため、CFD解析を用いて熱処理炉5内における未分解アンモニアの体積分率の分布を調査する実験を行なった。実験の手順は以下のとおりである。
浸炭窒化処理の反応室である第2加熱ゾーン51Cにおいては、内部の雰囲気が定常状態となっていても、アンモニアの分解反応は平衡状態には到達していないと考えられる。したがって、第2加熱ゾーン51C内における未分解アンモニアの体積分率の分布を解析するためには、導入されたアンモニアの分解反応の反応速度が考慮される必要がある。そこで、まず、浸炭窒化処理が実施される温度および雰囲気中でのアンモニアの分解反応の反応速度定数を算出する実験を行なった。
具体的には、まず、バッチ型熱処理炉(容積120L)にRガス、エンリッチガスおよびアンモニアガスを供給するとともに、炉内を850℃に加熱した。その後、炉内の未分解アンモニアの体積分率が定常状態となったことを確認の上、上記ガスの供給を停止し、赤外線分析計にて未分解アンモニアの体積分率の経時的変化を測定した。さらに、再現性を確認するため、同様の測定を再度行なった。表3に、未分解アンモニアの体積分率の経時的変化の測定結果を示す。
表3を参照して、上述のように2回実施された未分解アンモニアの体積分率の経時的変化には再現性があることが確認される。ここで、アンモニアの分解反応が2次の速度式に従う場合、ある時刻におけるアンモニアの分解速度は以下の式(1)に従う。また、この場合、未分解アンモニアの体積分率の逆数と、経過時間との間には、式(2)に示す直線関係が成立する。
−(dC/dt)=kC ・・・(1)
(1/C)−(1/C )=kt・・・(2)
ここで、C は測定開始時のアンモニアの体積分率、Cは任意の時間におけるアンモニアの体積分率、tは測定開始からの経過時間、kは反応速度定数である。
図17は、測定された未分解アンモニアの体積分率の逆数と経過時間との関係を示す図である。図17において、横軸は測定開始からの経過時間、縦軸は未分解アンモニアの体積分率の逆数である。また、図中の白丸は表3の1回目、黒丸は表3の2回目の測定結果に該当する。
図17を参照して、測定された未分解アンモニアの体積分率の逆数と経過時間とは、未分解アンモニアの体積分率が0.04%以上の範囲(図17の縦軸が2500以下の範囲)では、直線関係が成立していることが分かる。そして、この直線の傾きから、反応速度定数は21(s−1)と算出された。このことから、アンモニアの分解速度は速く、たとえば0.2%であった未分解アンモニアの体積分率は、8秒後には、0.15%にまで低下していることとなる。したがって、熱処理炉内において、アンモニアの分解反応は平衡状態に到達していないことを考慮すると、熱処理炉内における未分解アンモニアの体積分率は不均一となりやすいことが確認される。
次に、上記アンモニアの分解反応の速度定数により規定されるアンモニアの分解反応速度を含む解析条件に基づき、図7に示す熱処理炉5の本体部51内における雰囲気のCFD解析を行なった。熱処理の条件は、実施例1の場合と同様である。CFD解析は、種々のソフトウェアにより実施することができるが、ここでは、STORM/CFD2000(Adaptive Research社製)を用いて解析を実施した。また、熱処理炉内に存在する未分解アンモニアの体積分率は十分に小さいため、アンモニアが分解してもRガスの物性値への影響は小さい。そこで、本実施例ではアンモニアの分解はパッシブスカラーとして(決まった流れ場に対して移流拡散し、その濃度は流れ場に対して影響を与えないものとして)、解析を行なった。
表4に、本実施例において採用したCFD解析の諸元を示す。また、表5に、本実施例において採用した解析条件に含まれる物性値を示す。なお、雰囲気の密度および粘性率は、CO(一酸化炭素):20%、N(窒素):50%、H(水素):30%の組成のRガスが850℃に加熱された場合を想定して決定した。また、解析において、炉内に導入されるアンモニアの初期の濃度は、上記実施例1における測定結果に合致するように決定した。以上の条件によりCFD解析を行ない、炉内における流速分布、圧力分布および未分解アンモニアの体積分率が定常状態となった時点で計算を終了した。
図18は、図7の線分XVIII−XVIIIに沿う断面におけるCFD解析の結果を示す図である。また、図19は、図7の線分XIX−XIXに沿う断面におけるCFD解析の結果を示す図である。また、図20は、図7の線分XX−XXに沿う断面におけるCFD解析の結果を示す図である。図18〜図20においては、白い領域が未分解アンモニアの体積分率が最も高く、黒に近づくほど当該体積分率が低いことを示している。
図18〜図20を参照して、第2加熱ゾーン51Cの内部において、未分解アンモニアの体積分率は、大幅にばらついていることが確認される。そして、図7、図8および図18を参照して、雰囲気ガス供給部61および雰囲気採取パイプ56が設置されている第2加熱ゾーン51Cの上壁51C1付近における未分解アンモニアの体積分率が高い一方、被処理物通過領域92に近い第2加熱ゾーン51Cの底壁51C2付近における未分解アンモニアの体積分率は低くなっている。これは、雰囲気ガス供給部61および雰囲気採取パイプ56が設置されている第2加熱ゾーン51Cの上壁51C1付近から導入されたアンモニアガスが、被処理物通過領域92に近い第2加熱ゾーン51Cの底壁51C2付近に到達するまでに、アンモニアガスの分解反応が速い速度で進行しているためである。
そして、実施例1の実験結果において、雰囲気採取パイプ56の開口56Aから被処理物通過領域92までの距離dが大きくなるにしたがって、被処理物91への実際の窒素侵入量と予測値との差が大きくなったのは、開口56Aから被処理物通過領域92までの距離dが大きいほど、被処理物通過領域92よりも未分解アンモニアの体積分率が高い領域で雰囲気を採取し、これに基づいて雰囲気を制御していたためであると考えられる。したがって、実施例1の実験結果は妥当なものであって、浸炭窒化処理において被処理物の内部における窒素濃度の制御を精度よく行なうためには、アンモニアの分解反応速度を含む解析条件に基づきCFD解析を実施した場合に、熱処理炉内において被処理物が占める領域との未分解アンモニアの体積分率の差が25%以内となる領域、より具体的には、被処理物が占める領域からの距離が150mm以下である領域の雰囲気が採取され、当該雰囲気中の未分解アンモニアの体積分率に基づいて、熱処理炉内の雰囲気が調整されることが好ましいといえる。
なお、上記実施例1および2における実験条件においては、熱処理炉内の雰囲気の流速は小さくなっている。図21は、実施例2のCFD解析により得られた上記実施例1および2における熱処理炉内の雰囲気の流速分布を示す図である。図7、図8および図21を参照して、熱処理炉5の第2加熱ゾーン51Cにおいては、雰囲気ガス供給部61およびファン59が配置されている上壁51C1付近の流速が最も速く、0.3m/s程度、他の領域では0.1m/s程度となっている。これは、通常の熱処理条件に比べて小さい値である。また、熱処理炉内における雰囲気の流速が大きいほど、未分解アンモニアの体積分率は均一となる。つまり、上記実施例1および2における実験は、熱処理炉内における未分解アンモニアの体積分率が不均一となりやすい条件下において実施されている。
さらに、上記実施例1および2においては、浸炭窒化温度として850℃が採用されている。高炭素鋼が素材として採用される場合、浸炭窒化温度は850℃付近、より具体的には830℃以上870℃以下の温度とされるのが一般的である。
したがって、高炭素鋼からなる被処理物が830℃以上870℃以下の浸炭窒化温度で浸炭窒化処理される場合、被処理物が占める領域からの距離が150mm以下である領域の雰囲気が採取される本発明の浸炭窒化方法および熱処理炉は、特に有効である。ここで、高炭素鋼とは、0.8質量%以上の炭素を含有する鋼、すなわち共析鋼および過共析鋼であって、たとえば軸受鋼であるJIS SUJ2およびこれに相当するSAE52100、DIN規格100Cr6の他、JIS SUJ3、ばね鋼であるJIS SUP3、SUP4、工具鋼であるJIS SK2、SK3などが挙げられる。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明の浸炭窒化方法、機械部品の製造方法、機械部品および熱処理炉は、鋼からなる被処理物を浸炭窒化するための浸炭窒化方法、鋼からなる被処理物を浸炭窒化する工程を含む機械部品の製造方法、鋼からなり、浸炭窒化が実施された機械部品、および鋼からなる被処理物に対して浸炭窒化処理を実施するための熱処理炉に、特に有利に適用され得る。
実施の形態1における機械部品を備えた深溝玉軸受の構成を示す概略断面図である。 実施の形態1の変形例における機械部品を備えたスラストニードルころ軸受の構成を示す概略断面図である。 実施の形態1の他の変形例における機械部品を備えた等速ジョイントの構成を示す概略部分断面図である。 図3の線分IV−IVに沿う概略断面図である。 図3の等速ジョイントが角度をなした状態を示す概略部分断面図である。 実施の形態1における機械部品および当該機械部品を備えた機械要素の製造方法の概略を示す図である。 実施の形態1において用いられる熱処理炉の構成を示す概略図である。 図8は、図7の線分VIII−VIIIに沿う概略部分断面図である。 実施の形態1における機械部品の製造方法に含まれる焼入硬化工程を説明するための図である。 図9の雰囲気制御工程の詳細を説明するための図である。 図9の浸炭窒化工程に含まれる加熱パターン制御工程における加熱パターン(被処理物に与えられる温度履歴)の一例を示す図である。 図7の線分XII−XIIに沿う概略部分断面図である。 雰囲気採取パイプの開口の位置を決定するための具体的手順を説明するためのフローチャートである。 実施例Aのサンプルにおける内部(表層付近)の窒素濃度の分布を示す図である。 比較例Eのサンプルにおける内部(表層付近)の窒素濃度の分布を示す図である。 雰囲気採取パイプの開口と被処理物通過領域との距離dと窒素侵入量との関係を示す図である。 測定された未分解アンモニアの体積分率の逆数と経過時間との関係を示す図である。 図7の線分XVIII−XVIIIに沿う断面におけるCFD解析の結果を示す図である。 図7の線分XIX−XIXに沿う断面におけるCFD解析の結果を示す図である。 図7の線分XX−XXに沿う断面におけるCFD解析の結果を示す図である。 実施例2のCFD解析により得られた実施例1および2における熱処理炉内の雰囲気の流速分布を示す図である。
符号の説明
1 深溝玉軸受、2 スラストニードルころ軸受、3 等速ジョイント、5 熱処理炉、11 外輪、11A 外輪転走面、12 内輪、12A 内輪転走面、13 玉、13A 玉転走面、14 保持器、21 軌道輪、21A 軌道輪転走面、23 ニードルころ、23A ころ転走面、24 保持器、31 インナーレース、31A インナーレースボール溝、32 アウターレース、32A アウターレースボール溝、33 ボール、34 ケージ、35,36 軸、51 本体部、51A 予熱ゾーン、51B 第1加熱ゾーン、51C 第2加熱ゾーン、51C1 上壁、51C2 底壁、51D 第3加熱ゾーン、52 隔壁、53 床面ベルト、54 投入口、55 排出口、56 雰囲気採取パイプ、56A 開口、57 雰囲気分析部、58 雰囲気制御部、59 ファン、61 雰囲気ガス供給部、91 被処理物、92 被処理物通過領域、93 被処理物近傍領域。

Claims (7)

  1. 熱処理炉内の雰囲気が採取される工程と、
    採取された前記雰囲気における未分解アンモニアの体積分率が算出される工程と、
    算出された前記未分解アンモニアの体積分率に基づいて、前記熱処理炉内の雰囲気が調整される工程とを備え、
    前記雰囲気が採取される工程では、前記熱処理炉内において被処理物が占める領域からの距離が150mm以下である領域の前記雰囲気が採取される、浸炭窒化方法。
  2. 熱処理炉内の雰囲気が採取される工程と、
    採取された前記雰囲気における未分解アンモニアの体積分率が算出される工程と、
    算出された前記未分解アンモニアの体積分率に基づいて、前記熱処理炉内の雰囲気が調整される工程とを備え、
    前記雰囲気が採取される工程では、アンモニアの分解反応速度を含む解析条件に基づきCFD解析を実施した場合に、前記熱処理炉内において被処理物が占める領域との未分解アンモニアの体積分率の差が25%以内となる領域の前記雰囲気が採取される、浸炭窒化方法。
  3. 鋼からなり、機械部品の概略形状に成形された鋼部材を準備する工程と、
    準備された前記鋼部材に対して、浸炭窒化処理を実施した後、A点以上の温度からM点以下の温度へ冷却することにより、前記鋼部材を焼入硬化する焼入硬化工程とを備え、
    前記焼入硬化工程における前記浸炭窒化処理は、請求項1または2に記載の浸炭窒化方法を用いて実施される、機械部品の製造方法。
  4. 請求項3に記載の機械部品の製造方法により製造された、機械部品。
  5. 軸受を構成する部品として用いられる、請求項4に記載の機械部品。
  6. 鋼の浸炭窒化処理を実施するための熱処理炉であって、
    被処理物を保持する保持部を有する反応室と、
    前記反応室内に開口を有し、前記開口から前記反応室内の雰囲気を採取する雰囲気採取部材と、
    前記雰囲気採取部材に接続され、前記雰囲気採取部材により採取された前記雰囲気中の未分解アンモニアの体積分率を算出する雰囲気分析部と、
    前記雰囲気分析部に接続され、算出された前記未分解アンモニアの体積分率に基づいて、前記反応室内の前記雰囲気を制御する雰囲気制御部とを備え、
    前記開口と、前記保持部に保持される前記被処理物が占める領域との距離が150mm以下となるように、前記雰囲気採取部材が配置されている、熱処理炉。
  7. 鋼の浸炭窒化処理を実施するための熱処理炉であって、
    被処理物を保持する保持部を有する反応室と、
    前記反応室内に開口を有し、前記開口から前記反応室内の雰囲気を採取する雰囲気採取部材と、
    前記雰囲気採取部材に接続され、前記雰囲気採取部材により採取された前記雰囲気中の未分解アンモニアの体積分率を算出する雰囲気分析部と、
    前記雰囲気分析部に接続され、算出された前記未分解アンモニアの体積分率に基づいて、前記反応室内の前記雰囲気を制御する雰囲気制御部とを備え、
    アンモニアの分解反応速度を含む解析条件に基づき、前記反応室内の雰囲気のCFD解析を実施した場合に、前記反応室内において被処理物が占める領域との未分解アンモニアの体積分率の差が25%以内となる領域に、前記開口が位置するように、前記雰囲気採取部材が配置されている、熱処理炉。
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