JP2007239044A - 高周波熱処理設備 - Google Patents
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Abstract
【課題】温度制御を可能にし、熱処理の条件出しを容易に行なうことを可能にすることにより、過去の生産実績の蓄積が少ない場合や、経験の浅い作業者が熱処理の作業を行なう場合でも、容易にかつ効率よく高周波熱処理を実施することができる高周波熱処理設備を提供する。
【解決手段】高周波熱処理設備は、被処理物を搬送する搬送装置99Bと、搬送装置99Bにより搬送された被処理物を、高周波加熱により加熱して焼入硬化する高周波焼入装置93とを備えている。高周波焼入装置93は、被処理物の温度を調節するための焼入温度制御装置と、加熱された被処理物が冷却されるべきタイミングを調節するための焼入タイミング制御装置と、被処理物を加熱するために焼入用電源から出力される電源出力の推移データと、被処理物が冷却されるタイミングを特定するデータとを記憶する焼入用記憶装置とを含んでいる。
【選択図】図2
【解決手段】高周波熱処理設備は、被処理物を搬送する搬送装置99Bと、搬送装置99Bにより搬送された被処理物を、高周波加熱により加熱して焼入硬化する高周波焼入装置93とを備えている。高周波焼入装置93は、被処理物の温度を調節するための焼入温度制御装置と、加熱された被処理物が冷却されるべきタイミングを調節するための焼入タイミング制御装置と、被処理物を加熱するために焼入用電源から出力される電源出力の推移データと、被処理物が冷却されるタイミングを特定するデータとを記憶する焼入用記憶装置とを含んでいる。
【選択図】図2
Description
本発明は高周波熱処理設備に関し、より特定的には、高周波加熱により被処理物を加熱して熱処理を行なう高周波熱処理設備に関するものである。
高周波熱処理は、誘導コイルに高周波電流を流すことにより、誘導コイルに隣接してセットされた被処理物を誘導加熱し、被処理物の焼入、焼戻などの熱処理を行なう熱処理方法である。この高周波熱処理方法は、一般的に鋼の熱処理方法として採用されている浸炭焼入や光輝熱処理などに比べて、作業環境がクリーンであり、少量ロットの製品を短時間で効率よく処理できるといった点で有利である。そのため、高周波熱処理方法や高周波熱処理設備に関しては、被処理物の硬度の制御や、熱処理の効率向上を目的として多くの検討がなされ、種々の提案がなされている(たとえば特許文献1および2参照)。
特開2004−315851号公報
特開2004−225081号公報
高周波熱処理においては、一般的な雰囲気炉のように炉内の雰囲気を介して被処理物が加熱される熱処理方法とは異なり、被処理物が誘導加熱により直接加熱される。そのため、被処理物の温度を測定するためには、被処理物を直接測温する必要がある。しかし、高周波熱処理設備には、被処理物を均一に加熱するため、被処理物を回転等させるための駆動機構が設けられている場合が多く、接触式の温度計の設置が困難である場合が多い。
このように、高周波熱処理においては被処理物の測温が容易ではなく、温度と時間との熱処理条件による熱処理の制御(温度制御)が難しい。そのため、一般に、高周波熱処理においては、電力と時間との熱処理条件による熱処理の制御(電力制御)が採用される場合が多い。この電力制御による高周波熱処理においては、被処理物に付与される加熱履歴が明確ではないため、過去の生産実績や作業者の経験に基づいて仮の熱処理条件が設定され、被処理物のサンプルが実際に熱処理されて当該サンプルの硬度、ミクロ組織などの熱処理品質が確認されることを繰り返しつつ、試行錯誤により熱処理条件が設定されている。そのため、所望の熱処理品質を被処理物に付与するためには、被処理物の形状や材質が変更されるたびに、熱処理品質を確認しながらの熱処理の試行錯誤を繰り返して熱処理条件を設定する必要がある。その結果、熱処理の条件出しに手間がかかるだけでなく、過去の生産実績の十分な蓄積や作業者の高周波熱処理に関する十分な経験が必要となる点が高周波熱処理の問題点となっている。
そこで、本発明の目的は、温度制御を可能にし、熱処理の条件出しを容易に行なうことを可能にすることにより、過去の生産実績の蓄積が少ない場合や、経験の浅い作業者が熱処理の作業を行なう場合でも、容易にかつ効率よく高周波熱処理を実施することができる高周波熱処理設備を提供することである。
本発明に従った高周波熱処理設備は、高周波加熱により被処理物を加熱して熱処理するための高周波熱処理設備であって、被処理物を搬送する搬送装置と、搬送装置により搬送された被処理物を、高周波加熱により加熱して焼入硬化する高周波焼入装置とを備えている。高周波焼入装置は、被処理物の温度を調節するための焼入温度制御装置と、加熱された被処理物が冷却されるべきタイミングを調節するための焼入タイミング制御装置とを含んでいる。さらに、高周波焼入装置は、焼入温度制御装置において、被処理物を加熱するために焼入用電源から焼入用誘導コイルに出力される電源出力の推移データである焼入用出力推移データと、焼入タイミング制御装置において、被処理物が冷却されるタイミングを特定するための焼入用冷却タイミングデータとを焼入プロセスデータとして記憶する焼入用記憶装置とを含んでいる。
そして、焼入温度制御装置は、被処理物の温度データを取得し、被処理物の温度データに基づく温度の情報を出力する焼入温度制御用測温装置と、焼入温度制御用測温装置に接続され、焼入温度制御用測温装置からの温度の情報に基づき被処理物の加熱状態を制御するための焼入温度制御信号を出力する焼入温度調節装置と、焼入温度調節装置に接続され、焼入温度調節装置からの焼入温度制御信号基づき、高周波加熱により被処理物を加熱する、焼入用電源および焼入用誘導コイルを含む焼入加熱装置とを有している。焼入タイミング制御装置は、被処理物の温度データを取得し、被処理物の温度データに基づく温度の情報を出力する焼入タイミング制御用測温装置と、焼入タイミング制御用測温装置に接続され、焼入タイミング制御用測温装置からの温度の情報に基づき加熱時間を調節し、被処理物が冷却されるべきタイミングを決定して焼入用冷却開始信号を出力する焼入タイミング調節装置と、焼入タイミング調節装置に接続され、冷却開始信号に基づいて、被処理物を冷却することにより被処理物を焼入硬化する焼入用冷却装置とを有している。
一般に、高周波焼入においては、まず熱処理条件として電力と時間とのパラメータからなる電源出力の推移(電源出力パターン)が、過去の熱処理の実績や作業者の経験に基づいて決定される(電力制御)。そして、熱処理条件は、被処理物の形状、材質等を考慮しつつ電力と時間とを変化させて被処理物のサンプルを実際に熱処理して決定される。そのため、熱処理条件の決定に経験と手間が必要となる。また、鋼製品の焼入においては、被処理物を所定温度に所定時間以上保持した後、急冷する必要がある。しかし、上記方法(電力制御)では被処理物の加熱履歴を正確に把握することは困難である。そのため、熱処理条件を決定するためには、実際に熱処理を実施して得られた被処理物の硬度、ミクロ組織等の品質を調査する必要がある。
これに対し、本発明の高周波熱処理設備では、高周波焼入装置の焼入温度制御装置および焼入タイミング制御装置により、温度と時間とをパラメータとして被処理物の加熱が制御される(温度制御)。そのため、被処理物の加熱履歴を正確に把握することが可能であり、被処理物に必要な加熱履歴を与えた後、急冷することで焼入を行なうことができる。
ここで、被処理物を構成する鋼の組成が決まれば、被処理物の硬度、被処理物を構成する鋼のミクロ組織および残留オーステナイト量などの熱処理品質は、加熱温度および時間により容易に制御することができる。そのため、熱処理を行なう作業者は、所望の熱処理品質を被処理物に付与するために必要な加熱時間および温度の条件を熱処理条件として決定すればよいので、熱処理条件の決定に必要な経験や手間が大幅に軽減される。その結果、過去の生産実績の蓄積が少ない場合や、経験の浅い作業者が熱処理の作業を行なう場合でも、容易に高周波熱処理を実施することが可能となる。
さらに、本発明の高周波熱処理設備では、高周波焼入装置が、焼入用出力推移データと、焼入用冷却タイミングデータとを焼入プロセスデータとして記憶する焼入用記憶装置を含んでいる。これにより、温度制御により実施された焼入硬化処理と同一の焼入硬化処理を、電力制御により実施するための熱処理条件が当該焼入用記憶装置に記憶される。そのため、温度および時間の条件で実施された高周波焼入の熱処理条件の妥当性を確認した上で、実際の量産工程では、記憶された熱処理条件に従って、制御の容易な電力制御により高周波熱処理を実施することが可能となる。
さらに、本発明の高周波熱処理設備では、被処理物を搬送する搬送装置を備えている。これにより、高周波焼入を実施するための被処理物の加熱が終了すると、直ちに次の被処理物を搬送装置により高周波焼入装置に搬送することが可能となる。その結果、高周波熱処理の処理効率を向上させることができる。
以上のように、本発明の高周波熱処理設備によれば、温度制御を可能にし、熱処理の条件出しを容易に行なうことを可能にすることにより、過去の生産実績の蓄積が少ない場合や、経験の浅い作業者が熱処理の作業を行なう場合でも、容易にかつ効率よく高周波熱処理を実施することができる高周波熱処理設備を提供することができる。
なお、上述の焼入温度制御用測温装置は、被処理物が加熱され過ぎることにより残留オーステナイト量が過多となることを回避するため、被処理物のうち温度の高くなる部位、たとえば誘導コイルに近接し、磁束の侵入の最も多い部位の温度を測定可能に構成されることが好ましい。また、上述の焼入タイミング制御用測温装置は、被処理物の焼入前の加熱が不足することを回避するため、被処理物のうち温度の低くなる部位、たとえば誘導コイルから遠く、磁束の侵入の最も少ない部位の温度が測定可能に構成されていることが好ましい。また、焼入温度制御用測温装置および焼入タイミング制御用測温装置は、たとえば放射温度計を用いることができ、装置のレイアウト上、可能であれば熱電対などの接触式温度計であってもよい。
上記高周波熱処理設備において好ましくは、高周波焼入装置に接続され、高周波焼入装置において焼入硬化された被処理物を、高周波加熱により加熱して焼戻す高周波焼戻装置をさらに備えている。高周波焼戻装置は、被処理物の温度を調節するための焼戻温度制御装置と、加熱された被処理物が冷却されるべきタイミングを調節するための焼戻終了タイミング制御装置とを含んでいる。さらに、高周波焼戻装置は焼戻温度制御装置において、被処理物を加熱するために高周波加熱用の焼戻用電源から焼戻用誘導コイルに出力される電源出力の推移データである焼戻用出力推移データと、焼戻終了タイミング制御装置において、被処理物が冷却されるタイミングを特定するための焼戻用冷却タイミングデータとを焼戻プロセスデータとして記憶する焼戻用記憶装置とを含んでいる。
そして、焼戻温度制御装置は、被処理物の温度データを取得し、被処理物の温度データに基づく温度の情報を出力する焼戻温度制御用測温装置と、焼戻温度制御用測温装置に接続され、焼戻温度制御用測温装置からの温度の情報に基づき被処理物の加熱状態を制御するための焼戻温度制御信号を出力する焼戻温度調節装置と、焼戻温度調節装置に接続され、焼戻温度調節装置からの焼戻温度制御信号基づき、高周波加熱により被処理物を加熱する、焼戻用電源および焼戻用誘導コイルを含む焼戻加熱装置とを有している。
焼戻終了タイミング制御装置は、被処理物の温度データを取得し、被処理物の温度データに基づく温度の情報を出力する焼戻終了タイミング制御用測温装置と、焼戻終了タイミング制御用測温装置に接続され、焼戻終了タイミング制御用測温装置からの温度の情報に基づき加熱時間を調節し、被処理物が冷却されるべきタイミングを決定して焼戻用冷却開始信号を出力する焼戻終了タイミング調節装置と、焼戻終了タイミング調節装置に接続され、焼戻用冷却開始信号に基づいて、被処理物を冷却することにより被処理物の焼戻を終了させる焼戻終了装置とを有している。
高周波焼戻装置が接続されることにより、高周波焼入装置および高周波焼戻装置が単一の製造ラインを構成することができる。そのため、高周波焼入装置において焼入硬化された被処理物を、仕掛品として保持することなく、連続的に焼戻を実施し、焼入焼戻処理を効率的に実施することが可能となる。
さらに、当該高周波焼戻装置は、上記高周波焼入装置と同様に温度制御による熱処理が可能な構成となっている。そのため、被処理物の加熱履歴を正確に把握することが可能であり、被処理物に必要かつ十分な加熱履歴を与えた後、冷却することで焼戻を行なうことができる。
ここで、焼戻により制御される熱処理品質のうち、最も重要な被処理物の硬度は、加熱温度および時間により容易に制御することができる。そのため、熱処理を行なう作業者は、所望の熱処理品質を被処理物に付与するために必要な温度および加熱時間の条件を熱処理条件として決定すればよいので、熱処理条件の決定に必要な経験や手間が大幅に軽減される。
さらに、高周波焼戻装置が、焼戻用出力推移データと、焼戻用冷却タイミングデータとを焼戻プロセスデータとして記憶する焼戻用記憶装置を含んでいるため、上記高周波焼入装置と同様に、温度制御により実施された高周波焼戻の熱処理条件の妥当性を確認した上で、実際の量産工程では、記憶された熱処理条件に従って、制御の容易な電力制御により高周波焼戻を実施することが可能となる。
その結果、過去の生産実績の蓄積が少ない場合や、経験の浅い作業者が熱処理の作業を行なう場合でも、一層容易にかつ効率よく高周波熱処理を実施することが可能となる。
なお、焼戻終了タイミング制御用測温装置は、被処理物が加熱され過ぎることにより硬度の低下が大きくなり過ぎること、および被処理物の加熱が不足することにより硬度が十分低下しないことを回避するため、被処理物のうち温度の高くなる部位、たとえば誘導コイルに近接し、磁束の侵入の最も多い部位の温度と、被処理物のうち温度の低くなる部位、たとえば誘導コイルから遠く、磁束の侵入の最も少ない部位の双方の温度が測定可能に構成されていることが好ましい。この場合、焼戻終了タイミング制御用測温装置は、複数の放射温度計などの測温装置を含んでおり、複数の部位を測温可能に構成されていてもよい。また、焼戻温度制御用測温装置および焼戻終了タイミング制御用測温装置としては、たとえば放射温度計を用いることができ、装置のレイアウト上、可能であれば熱電対などの接触式温度計を用いてもよい。
また、温度制御により実施された高周波焼入および高周波焼戻の熱処理条件の妥当性は、たとえば被処理物の硬度、被処理物を構成する鋼のミクロ組織、残留オーステナイト量などの材質データを調査して確認することができる。当該材質データは、温度制御により高周波焼入および高周波焼戻を実施する際に、焼入用記憶装置および焼戻用記憶装置に、測温装置により測温された温度データと加熱時間とを記憶しておき、これに基づいて推定することができるが、熱処理後の被処理物のサンプルを実際に調査して取得してもよい。
被処理物の硬度は、熱処理後の被処理物を切断し、切断面を研磨した後、当該切断面の硬度をビッカース硬度計、ロックウェル硬度計などの硬度計により測定して得ることができる。また、被処理物を構成する鋼のミクロ組織は、熱処理後の被処理物を切断し、切断面を研磨した後、当該切断面をナイタル(硝酸アルコール溶液)などの腐食液により腐食し、光学顕微鏡などの顕微鏡により観察することにより調査することができる。また、残留オーステナイト量は、たとえば熱処理後の被処理物の所望の部位を電解研磨し、X線回折計(XRD)を用いて、当該部位のマルテンサイトα(211)面とオーステナイトγ(220)面との回折強度とを測定することにより、算出することができる。
なお、本発明の高周波熱処理設備は、たとえば、軸受の軌道輪、転動体など、鋼からなり、焼入硬化されて製造される機械部品の熱処理に適用することができる。
以上の説明から明らかなように、本発明の高周波熱処理設備によれば、温度制御を可能にし、熱処理の条件出しを容易に行なうことを可能にすることにより、過去の生産実績の蓄積が少ない場合や、経験の浅い作業者が熱処理の作業を行なう場合でも、容易にかつ効率よく高周波熱処理を実施することができる高周波熱処理設備を提供することができる。
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
図1は、本発明の一実施の形態における高周波熱処理設備により熱処理されて製造される、高周波熱処理品としての転がり軸受外輪の構成を示す概略断面図である。図1を参照して、本実施の形態における転がり軸受外輪の構成を説明する。
図1を参照して、本実施の形態における高周波熱処理品としての転がり軸受外輪1は、円環状の形状を有している。そして、転がり軸受外輪1は、内周面1Bに転動体としての玉、ころなどが接触しつつ転走するための転走面1Cが形成されているとともに、他の部材と接触して転がり軸受外輪を当該他の部材に対して保持する外周面1Aを有している。ここで、転がり軸受外輪1は転動疲労強度および剛性の観点から、58HRC以上の硬度を有していることが好ましい。また、寸法安定性の観点から、残留オーステナイト量は12体積%以下に抑制されていることが好ましい。
そして、転がり軸受外輪1は、以下に説明する本発明の一実施の形態における高周波熱処理設備で熱処理されて作製されているため、製造コストが抑制され、かつ品質の安定した高周波熱処理品となっている。
次に、本実施の形態における高周波熱処理設備について説明する。図2は、本実施の形態における高周波熱処理設備の構成を示す概略図である。また、図3は、本実施の形態の高周波熱処理設備に含まれる高周波焼入装置の構成を示す概略図である。また、図4は、本実施の形態の高周波熱処理設備に含まれる高周波焼戻装置の構成を示す概略図である。図2〜図4を参照して、本実施の形態における高周波熱処理設備の構成を説明する。
図2を参照して、本実施の形態の高周波熱処理設備は、高周波加熱により被処理物(たとえば、転がり軸受外輪1)を加熱して熱処理するための高周波熱処理設備であって、被処理物保持装置91と、被処理物確認装置92と、高周波焼入装置93と、洗浄装置94と、高周波焼戻装置95と、熱処理品保持装置96とを備えている。また、当該装置は、上記の順に、コンベアやロボットアームなどの搬送装置99A、99B、99C、99D、99Eにより連結されている。
被処理物保持装置91は、たとえば被処理物である転がり軸受外輪1を保持するバスケットを含んでおり、熱処理前の転がり軸受外輪1を保持する機能を有している。被処理物確認装置92は、たとえば転がり軸受外輪1の形状を測定する形状判別装置を含んでおり、被処理物保持装置91から搬送装置99Aにより搬送された転がり軸受外輪1の外径寸法、幅などを測定することにより、異品の混入が無いことを確認する機能を有している。高周波焼入装置93は、たとえば誘導コイル、高周波電源、焼入用油槽などを含んでおり、搬送装置99Bにより搬送された転がり軸受外輪1を、高周波加熱により加熱して焼入硬化する機能を有している。
洗浄装置94は、洗浄液を溜めるための洗浄槽、洗浄後の転がり軸受外輪1を乾燥させるための乾燥装置などを含んでおり、搬送装置99Cにより搬送された転がり軸受外輪1を洗浄することにより、焼入硬化処理において転がり軸受外輪1の表面に付着した焼入油などの付着物を除去する機能を有している。高周波焼戻装置95は、洗浄装置94および搬送装置99C、99Dを介して高周波焼入装置93に接続され、高周波焼入装置93において焼入硬化され、搬送装置99C、99Dにより搬送された転がり軸受外輪1を、高周波加熱により加熱して焼戻す機能を有している。熱処理品保持装置96は、たとえば転がり軸受外輪1を保持するバスケットを含んでおり、焼入焼戻が終了した熱処理品を保持する機能を有している。
次に、高周波焼入装置93の構成について詳細に説明する。図3を参照して、高周波焼入装置93は、被処理物である転がり軸受外輪1の温度を調節するための焼入温度制御装置50と、加熱された転がり軸受外輪1が冷却されるべきタイミングを調節するための焼入タイミング制御装置60と、焼入温度制御装置50において、転がり軸受外輪1を加熱するために焼入用電源から焼入用誘導コイルに出力される電源出力の推移データである焼入用出力推移データと、焼入タイミング制御装置60において、転がり軸受外輪1が冷却されるタイミングを特定するための焼入用冷却タイミングデータとを焼入プロセスデータとして記憶する焼入用記憶装置70とを含んでいる。
焼入温度制御装置50は、転がり軸受外輪1の温度データを取得し、転がり軸受外輪1の温度データに基づく温度の情報を出力する焼入温度制御用測温装置3と、焼入温度制御用測温装置3に接続され、焼入温度制御用測温装置3からの温度の情報に基づき転がり軸受外輪1の加熱状態を制御するための焼入温度制御信号を出力する焼入温度調節装置4と、焼入温度調節装置4に接続され、焼入温度調節装置4からの焼入温度制御信号基づき、高周波加熱により転がり軸受外輪1を加熱する、焼入用電源および焼入用誘導コイルを含む焼入加熱装置2とを有している。
焼入タイミング制御装置60は、転がり軸受外輪1の温度データを取得し、転がり軸受外輪1の温度データに基づく温度の情報を出力する焼入タイミング制御用測温装置5と、焼入タイミング制御用測温装置5に接続され、焼入タイミング制御用測温装置5からの温度の情報に基づき加熱時間を調節し、転がり軸受外輪1が冷却されるべきタイミングを決定して焼入用冷却開始信号を出力する焼入タイミング調節装置6と、焼入タイミング調節装置6に接続され、冷却開始信号に基づいて、転がり軸受外輪1を冷却することにより転がり軸受外輪1を焼入硬化する焼入用冷却装置7とを有している。焼入用冷却装置7は、焼入用の油が溜められている油槽7Bと、被処理物である転がり軸受外輪1を保持し、冷却開始信号に基づいて移動または傾斜することにより、転がり軸受外輪1を油槽7Bに投入する被処理物保持台7Aとを有している。また、焼入用記憶装置70は、焼入加熱装置2と、焼入温度調節装置4と、焼入タイミング調節装置6とに接続されている。
一方、図4を参照して、高周波焼戻装置95は、被処理物である転がり軸受外輪1の温度を調節するための焼戻温度制御装置51と、加熱された転がり軸受外輪1が冷却されるべきタイミングを調節するための焼戻終了タイミング制御装置61と、焼戻温度制御装置51において、転がり軸受外輪1を加熱するために高周波加熱用の焼戻用電源から焼戻用誘導コイルに出力される電源出力の推移データである焼戻用出力推移データと、焼戻終了タイミング制御装置61において、転がり軸受外輪1が冷却されるタイミングを特定するための焼戻用冷却タイミングデータとを焼戻プロセスデータとして記憶する焼戻用記憶装置71とを含んでいる。
焼戻温度制御装置51は、転がり軸受外輪1の温度データを取得し、転がり軸受外輪1の温度データに基づく温度の情報を出力する焼戻温度制御用測温装置13と、焼戻温度制御用測温装置13に接続され、焼戻温度制御用測温装置13からの温度の情報に基づき転がり軸受外輪1の加熱状態を制御するための焼戻温度制御信号を出力する焼戻温度調節装置14と、焼戻温度調節装置14に接続され、焼戻温度調節装置14からの焼戻温度制御信号基づき、高周波加熱により転がり軸受外輪1を加熱する、焼戻用電源および焼戻用誘導コイルを含む焼戻加熱装置12とを有している。
焼戻終了タイミング制御装置61は、転がり軸受外輪1の温度データを取得し、転がり軸受外輪1の温度データに基づく温度の情報を出力する焼戻終了タイミング制御用測温装置15と、焼戻終了タイミング制御用測温装置15に接続され、焼戻終了タイミング制御用測温装置15からの温度の情報に基づき加熱時間を調節し、転がり軸受外輪1が冷却されるべきタイミングを決定して焼戻用冷却開始信号を出力する焼戻終了タイミング調節装置16と、焼戻終了タイミング調節装置16に接続され、焼戻用冷却開始信号に基づいて、転がり軸受外輪1を冷却することにより転がり軸受外輪1の焼戻を終了させる焼戻終了装置17とを有している。焼戻終了装置17は、たとえば転がり軸受外輪1を保持し、焼戻用冷却開始信号に基づいて移動することにより、転がり軸受外輪1を焼戻用誘導コイルによる加熱範囲から離脱させる機能を有する被処理物保持台を有している。また、焼戻用記憶装置71は、焼戻加熱装置12と、焼戻温度調節装置14と、焼戻終了タイミング調節装置16とに接続されている。
次に、本実施の形態の高周波熱処理設備を用いた高周波熱処理方法の一例について説明する。図5は、本実施の形態の高周波熱処理設備を用いた高周波熱処理方法の一例の概略を示す図である。
図5を参照して、本実施の形態の高周波熱処理方法は、焼入条件決定工程と、焼戻条件決定工程と、最終確認工程と、量産工程とを備えている。まず、焼入条件を決定するための焼入条件決定工程と、焼戻条件を決定するための焼戻条件決定工程がそれぞれ独立に実施されて焼入条件および焼戻条件がそれぞれ決定され、その後、焼入焼戻を連続して実施した場合の焼入条件および焼戻条件の妥当性を確認する最終確認工程が実施される。そして、妥当性の確認された焼入条件および焼戻条件に基づいて量産工程が実施される。
まず、焼入条件決定工程について説明する。図5を参照して、焼入条件決定工程においては、まず、被処理物としての転がり軸受外輪1のサンプルが加熱されて焼入硬化されることによりプロセスデータが取得される焼入データ取得工程が実施される。この焼入データ取得工程を実施するための仮の熱処理条件は、作業者が温度および時間の条件からなる条件として、決定することができる。そのため、過去の生産実績が十分でない場合や、作業者の熱処理の経験が十分でない場合であっても、容易に決定することができる。
その後、焼入データ取得工程において転がり軸受外輪1のサンプルを加熱するために高周波加熱用の焼入用電源から焼入用誘導コイルに出力された出力の推移データである焼入用出力推移データと、転がり軸受外輪1のサンプルの冷却タイミングを特定するための焼入用冷却タイミングデータとが焼入用プロセスデータとして記憶される焼入データ記憶工程が実施される。そして、焼入データ取得工程において焼入硬化された転がり軸受外輪1の材質データに基づき、焼入用出力推移データおよび焼入用冷却タイミングデータの妥当性が確認される焼入条件確認工程が実施される。
ここで、焼入用出力推移データおよび焼入用冷却タイミングデータの妥当性は、たとえば、実際に焼入硬化された転がり軸受外輪1のサンプルの材質データである硬度、転がり軸受外輪1を構成する鋼のミクロ組織、残留オーステナイト量などを実験により実際に測定し、これらの材質が所望の規格の範囲内であるかどうかにより判断される。なお、上記材質データは、焼入データ取得工程における被処理物の温度推移のデータを記憶し、当該データと焼入用冷却タイミングデータとに基づいて、推定することも可能である。
焼入条件確認工程において、被処理物である転がり軸受外輪1の材質データが所望の規格範囲内ではなかった場合、たとえば当初の仮の熱処理条件よりも低温、かつ長時間の条件での加熱になるように、当該仮の熱処理条件を変更して、再度焼入データ取得工程が実施される。一方、焼入条件確認工程において、被処理物である転がり軸受外輪1の材質データが所望の規格範囲内であった場合、焼入データ記憶工程において記憶された焼入用出力推移データおよび焼入用冷却タイミングデータが電力制御により焼入硬化処理を実施するための熱処理条件(焼入条件)として、決定される。
次に、焼戻条件決定工程について説明する。図5を参照して、焼戻条件決定工程においては、まず、焼入硬化された被処理物としての転がり軸受外輪1のサンプルが加熱されて焼戻されることによりプロセスデータが取得される焼戻データ取得工程が実施される。この焼戻データ取得工程を実施するための仮の熱処理条件も、温度および時間の条件で与えることができるため、焼入データ取得工程と同様に、過去の生産実績が十分でない場合や、作業者の熱処理の経験が十分でない場合であっても、容易に決定することができる。
その後、焼戻データ取得工程において転がり軸受外輪1のサンプルを加熱するために高周波加熱用の電源から誘導コイルに出力された焼戻用出力推移データと、転がり軸受外輪1のサンプルの冷却タイミングを特定するための焼戻用冷却タイミングデータとが焼戻プロセスデータとして記憶される焼戻データ記憶工程が実施される。そして、焼戻データ取得工程において焼戻された転がり軸受外輪1の材質データに基づき、焼戻用出力推移データおよび焼戻用冷却タイミングデータの妥当性が確認される焼戻条件確認工程が実施される。
ここで、焼戻用出力推移データおよび焼戻用冷却タイミングデータの妥当性は、たとえば、実際に焼戻された転がり軸受外輪1のサンプルの材質データにおいて最も重要な、硬度を実験により実際に測定し、当該硬度が所望の規格の範囲内であるかどうかにより判断される。なお、上記材質データは、焼戻データ取得工程における被処理物の温度推移のデータを記憶し、当該データと焼戻用冷却タイミングデータとに基づいて、推定することも可能である。
焼戻条件確認工程において、被処理物である転がり軸受外輪1の材質データが所望の規格範囲内ではなかった場合、たとえば当初の仮の熱処理条件よりも低温、かつ長時間の条件での加熱になるように、当該仮の熱処理条件を変更して、再度焼戻データ取得工程が実施される。一方、焼戻条件確認工程において、被処理物である転がり軸受外輪1の材質データが所望の規格範囲内であった場合、焼戻データ記憶工程において記憶された焼戻用出力推移データおよび焼戻用冷却タイミングデータが電力制御により焼戻処理を実施するための熱処理条件(焼戻条件)として、決定される。
次に、最終確認工程について説明する。図5を参照して、最終確認工程では、まず、上述の焼入条件決定工程において決定された焼入条件と、焼戻条件決定工程において決定された焼戻条件とに基づいて、電力制御により、被処理物としての転がり軸受外輪1に対して、焼入および焼戻が連続して実施される量産テスト工程が実施される。そして、量産テスト工程において焼入焼戻された転がり軸受外輪1の材質データに基づき、焼入条件決定工程において決定された焼入条件および焼戻条件決定工程において決定された焼戻条件の妥当性が確認される熱処理条件確認工程が実施される。
ここで、焼入条件決定工程において決定された焼入条件および焼戻条件決定工程において決定された焼戻条件の妥当性は、たとえば、実際に焼入焼戻された転がり軸受外輪1のサンプルの材質データである硬度、転がり軸受外輪1を構成する鋼のミクロ組織、残留オーステナイト量などを実験により実際に測定し、これらの材質が所望の規格の範囲内であるかどうかにより判断される。
熱処理条件確認工程において、被処理物である転がり軸受外輪1の材質データが所望の規格範囲内ではなかった場合、その原因が焼入条件および焼戻条件のどちらにあるのかが判断される、原因特定工程が実施される。この原因特定工程は、たとえば、熱処理条件確認工程において取得された材質データに基づいて実施することができる。すなわち、当該材質データである硬度、転がり軸受外輪1を構成する鋼のミクロ組織、残留オーステナイト量のうち、硬度のみが材質の規格範囲外であった場合、ミクロ組織や残留オーステナイト量に影響を与える焼入条件ではなく、焼戻条件に原因があったものと考えられる。この場合、当該材質データを考慮して、焼戻条件決定工程が再度実施される。一方、硬度以外の材質データが所望の規格範囲外であった場合、焼戻条件ではなく、焼入条件に原因があったものと考えられる。この場合、当該材質データを考慮して、焼入条件決定工程が再度実施される。そして、決定された焼入条件および焼戻条件に基づいて、再度最終確認工程が実施される。
一方、熱処理条件確認工程において、被処理物である転がり軸受外輪1の材質データが所望の規格範囲内であった場合、焼入焼戻を電力制御により実施するための熱処理条件が、当該焼入条件および焼戻条件に確定される。そして、この焼入条件および焼戻条件に基づいて、電力制御により焼入焼戻を行なう量産工程が実施される。
次に、本実施の形態における高周波熱処理設備に含まれる高周波焼入装置93の動作について詳細に説明する。図6は、本実施の形態における高周波焼入装置の動作を、データおよび指令の流れに基づいて説明するための図である。図6において、焼入データ取得工程におけるデータおよび指令の流れは実線矢印、焼入データ記憶工程におけるデータおよび指令の流れは破線矢印、最終確認工程および量産工程におけるデータおよび指令の流れは二重実線矢印で表示されている。図3、図5および図6を参照して、本実施の形態における高周波焼入装置の動作について説明する。
図3、図5および図6を参照して、焼入データ取得工程においては、まず、温度制御による仮の焼入条件が決定され、当該熱処理条件が焼入温度調節装置4および焼入タイミング調節装置6に入力されて熱処理が開始される。そして、焼入温度制御用測温装置3により測定された被処理物としての転がり軸受外輪1のサンプルの温度データは焼入温度調節装置4に送られる。焼入温度調節装置4においては転がり軸受外輪1の目標加熱温度および取得した転がり軸受外輪1のサンプルの温度データから必要な電源出力を判断し、焼入加熱装置2の焼入用電源に電源出力を指令する。指令を受けた焼入用電源は焼入加熱装置2の焼入用誘導コイルに電力を出力し、転がり軸受外輪1のサンプルは目的の温度に加熱される。
一方、焼入タイミング制御用測温装置5により測定された転がり軸受外輪1のサンプルの温度データは、焼入タイミング調節装置6に送られる。焼入タイミング調節装置6においては、取得した転がり軸受外輪1のサンプルの温度および加熱時間から冷却タイミングを判断し、冷却開始を焼入用冷却装置7に指令する。これにより、転がり軸受外輪1のサンプルは急冷され、焼入硬化される。
焼入データ記憶工程においては、焼入データ取得工程において焼入温度調節装置4および焼入タイミング調節装置6が取得した温度データが温度推移データとして焼入用記憶装置70に記憶される。また、焼入加熱装置2の焼入用電源が焼入用誘導コイルに出力した電源出力が焼入用出力推移データとして焼入用記憶装置70に記憶される。さらに、焼入タイミング調節装置6が焼入用冷却装置7に出力した冷却開始指令のタイミングが焼入用冷却タイミングデータとして焼入用記憶装置70に記憶される。ここで、焼入用冷却タイミングはたとえば加熱開始からの時間として記憶される。
そして、焼入条件確認工程において、転がり軸受外輪1のサンプルの材質データに基づいて、焼入用出力推移データおよび焼入用冷却タイミングデータの妥当性が確認された後、最終確認工程および量産工程においては、焼入用記憶装置70に記憶された当該焼入用出力推移データおよび焼入用冷却タイミングデータに基づき、転がり軸受外輪1が加熱されて焼入が行なわれる。
すなわち、本実施の形態の高周波焼入装置93は、焼入による材質変化に直接対応するため焼入条件の設定が容易な温度制御による焼入と、データおよび指令の流れがシンプルであり、信頼性の高い電力制御による焼入とを切り替えて実施することが可能となっている。その結果、過去の生産実績が十分でない場合や、熱処理の経験の浅い作業者が作業する場合であっても、被処理物に付与すべき所望の硬度、被処理物を構成する鋼の残留オーステナイト量やミクロ組織から、容易に設定可能な温度制御による焼入条件で、焼入データ取得工程を実施することができる。そして、量産工程においては、妥当性が確認された焼入条件に基づき、信頼性の高い電力制御により焼入を実施することができる。
次に、本実施の形態における高周波熱処理設備に含まれる高周波焼戻装置95の動作について詳細に説明する。図7は、本実施の形態における高周波焼戻装置の動作を、データおよび指令の流れに基づいて説明するための図である。図7において、焼戻データ取得工程におけるデータおよび指令の流れは実線矢印、焼戻データ記憶工程におけるデータおよび指令の流れは破線矢印、最終確認工程および量産工程におけるデータおよび指令の流れは二重実線矢印で表示されている。図4、図5および図7を参照して、本実施の形態における高周波焼戻装置の動作について説明する。
図4、図5および図7を参照して、焼戻データ取得工程においては、まず、温度制御による仮の焼戻条件が決定され、当該熱処理条件が焼戻温度調節装置14および焼戻終了タイミング調節装置16に入力されて熱処理が開始される。そして、焼戻温度制御用測温装置13により測定された被処理物としての転がり軸受外輪1のサンプルの温度データは、焼戻温度調節装置4に送られる。焼戻温度調節装置14においては、転がり軸受外輪1の目標加熱温度および取得した転がり軸受外輪1のサンプルの温度データから必要な電源出力を判断し、焼戻加熱装置12の焼戻用電源に電源出力を指令する。指令を受けた焼戻用電源は焼戻加熱装置12の焼入用誘導コイルに電力を出力し、転がり軸受外輪1のサンプルは目的の温度に加熱される。
一方、焼戻終了タイミング制御用測温装置15により測定された転がり軸受外輪1のサンプルの温度データは、焼戻終了タイミング調節装置16に送られる。焼戻終了タイミング調節装置16においては、取得した転がり軸受外輪1のサンプルの温度および加熱時間から冷却タイミングを判断し、冷却開始を焼戻終了装置17に指令する。これにより、転がり軸受外輪1のサンプルは冷却され、焼戻が終了する。
焼戻データ記憶工程においては、焼戻データ取得工程において焼戻温度調節装置14および焼戻終了タイミング調節装置16が取得した温度データが、温度推移データとして焼戻用記憶装置71に記憶される。また、焼戻加熱装置12の焼戻用電源が焼戻用誘導コイルに出力した電源出力が、焼戻用出力推移データとして焼戻用記憶装置71に記憶される。さらに、焼戻終了タイミング調節装置16が焼戻終了装置17に出力した冷却開始指令のタイミングが焼戻用冷却タイミングデータとして焼戻用記憶装置71に記憶される。ここで、焼戻用冷却タイミングタイミングデータは、たとえば加熱開始からの時間として記憶される。
そして、焼戻条件確認工程において、転がり軸受外輪1のサンプルの材質データに基づいて、焼戻用出力推移データおよび焼戻用冷却タイミングデータの妥当性が確認された後、最終確認工程および量産工程においては、焼戻用記憶装置71に記憶された当該焼戻用出力推移データおよび焼戻用冷却タイミングデータに基づき、転がり軸受外輪1が加熱されて焼戻が行なわれる。
すなわち、本実施の形態の高周波焼戻装置95は、高周波焼入装置93と同様に、焼戻条件の設定が容易な温度制御による焼戻と、データおよび指令の流れがシンプルであり、信頼性の高い電力制御による焼戻とを切り替えて実施することが可能となっている。その結果、過去の生産実績が十分でない場合や、熱処理の経験の浅い作業者が作業する場合であっても、容易に設定可能な温度制御による焼入条件で焼入データ取得工程を実施し、量産工程においては、妥当性が確認された焼戻条件に基づき、信頼性の高い電力制御により焼戻を実施することができる。
なお、上述のように、材質の確認を目的として、焼入後、および焼戻後に被処理物を高周波熱処理設備から取り出し可能とするために、本実施の形態の高周波熱処理設備においては、図2を参照して、搬送装置99C、99D、99Eが、被処理物を取り出し可能に構成されていることが好ましい。具体的には、搬送装置99C、99D、99Eにカバーが設けられている場合、当該カバーには開閉可能な被処理物取り出し口が設けられていることが好ましい。また、搬送装置99C、99D、99Eが、たとえばコンベアである場合、被処理物を取り出すための、被処理物の搬送方向を切り替え可能な分岐が設けられていてもよい。
また、焼入用記憶装置70は、独立の装置として設置されてもよいが、たとえばハードディスクなどの記憶部を有するパーソナルコンピュータにより、焼入温度調節装置4、焼入タイミング調節装置6などの装置を兼用して設置されてもよい。同様に、焼戻用記憶装置71は、独立の装置として設置されてもよいが、たとえばハードディスクなどの記憶部を有するパーソナルコンピュータにより、焼戻温度調節装置14、焼戻終了タイミング調節装置16などの装置を兼用して設置されてもよい。また、上記の高周波熱処理方法の各工程は、たとえば制御装置としてパーソナルコンピュータを用い、各工程に対応した単数または複数のプログラムにより当該パーソナルコンピュータを動作させることにより実施することができる。
次に、上述の実施の形態における温度制御による高周波焼入(焼入データ取得工程)の具体的手順について、転がり軸受外輪1の材質がJIS SUJ2である場合を例に、詳細に説明する。
ここでは、180℃で焼戻した場合の焼戻後の硬度(焼戻硬度)が強度の観点からHRC58以上(HV653以上)であり、寸法安定性の観点から残留オーステナイト量が12体積%以下であることを規格値として設定する。
図8は、熱処理の規格値を満足するための焼入温度と保持時間との関係を示したSUJ2材のTTA(Time Temperature Austinitization)線図である。図8において横軸は焼入温度(℃)、縦軸は保持時間(秒)を示している。また、領域Aは硬度規格を満足しない範囲であり、領域Bは残留オーステナイト量が規格を満足しない範囲であり、領域Cはいずれの熱処理品質規格をも満足する範囲である。図8を参照して、本実施の形態における焼入データ取得工程におけるの熱処理条件の決定方法について説明する。
本実施の形態における焼入データ取得工程においては、まず、仮の熱処理条件(焼入における加熱温度および加熱時間の条件)を決定する必要がある。図8を参照して、SUJ2製の転がり軸受外輪1の硬度は焼入温度と保持時間とが大きくなるにつれて規格を満たしやすくなる。これに対して、オーステナイト量は焼入温度と保持時間とが大きくなるにつれて規格を満たしにくくなる。熱処理の規格値(硬度規格および残留オーステナイト量の規格値)を満たすためには、比較的低温で長時間の条件設定の方が熱処理品質を制御しやすい。たとえば、1050℃の比較的高温での処理では、熱処理品質規格を確保するための保持時間は15秒以上であるが、17秒以上保持してしまうと規格を満たすことができない。これに対し、950℃の処理では、熱処理品質を確保するための保持時間は20秒以上であり、60秒までは規格を満たすことができる。一方、短時間での昇温が可能であるという高周波熱処理の利点を生かすためには、できるだけ高温、短時間での処理が望ましい。すなわち、図8を参照して、熱処理品質の制御の容易性と、熱処理の効率とのバランスを考慮しつつ、仮の熱処理条件を決定することができる。
なお、図8はSUJ2に関するTTA線図であるが、材料が変更された場合、それに応じたTTA線図を作成することで、上述と同様に仮の熱処理条件を決定することができる。
熱処理条件が決まると、図3を参照して、熱処理条件をパーソナルコンピュータなどの焼入温度調節装置4に入力する。焼入温度調節装置4は、焼入温度制御用測温装置3と、焼入加熱装置2とに接続されており、焼入温度制御用測温装置3からの温度情報に基づき、PID(Proportional Integral Differential)制御により焼入温度制御信号を焼入加熱装置2に出力し、焼入温度制御用測温装置3の測温部である外周面1Aの温度推移を制御することができる。なお、外周面1Aは、転がり軸受外輪1において磁束の侵入が最も多くなり、高周波加熱による温度上昇の最も大きい部位である。
このとき同時に、焼入タイミング制御用測温装置5の測温データをパーソナルコンピュータなどの焼入タイミング調節装置6に取り込み、その温度推移から加熱が十分であるかどうかを判断し、冷却タイミングを調節する。冷却タイミングの判断は、焼入タイミング制御用測温装置5の測温部である内周面1Bの温度推移がTTA線図上で規格内におさまったかどうかで行なう。なお、内周面1Bは、転がり軸受外輪1において磁束の侵入が最も少なくなり、高周波加熱による温度上昇の最も小さい部位である。また、焼入温度調節装置4と焼入タイミング調節装置6とを同一のパーソナルコンピュータで兼ねることもできる。
TTA線図上で規格内におさまったかどうかという判断、すなわち焼入用冷却タイミングの決定には、下記の式(1)および式(3)を用いることができるが、好ましくは被処理物の温度が刻一刻と変化することを考慮して式(1)を補正した式(2)および式(3)が用いられる。
Dep=2(Dt)1/2・・・式(1)
Dep=A×2(Dt)1/2・・・式(2)
D:鋼中の炭素の拡散定数、t:保持時間(秒)、A:補正係数
D=D0exp(−Q/RT)・・・式(3)
D0:拡散定数のエントロピー項、Q:活性化エネルギー、R:気体定数、T:絶対温度(K)
ここで補正係数Aの値は、以下の式(4)から得られる値である。
Dep=A×2(Dt)1/2・・・式(2)
D:鋼中の炭素の拡散定数、t:保持時間(秒)、A:補正係数
D=D0exp(−Q/RT)・・・式(3)
D0:拡散定数のエントロピー項、Q:活性化エネルギー、R:気体定数、T:絶対温度(K)
ここで補正係数Aの値は、以下の式(4)から得られる値である。
erf(A)=1−0.1573C1/C2・・・式(4)
C1:727℃のCの固溶度(SUJ2の場合:0.52)
C2:任意の温度におけるCの固溶度
式(2)は、式(4)のC1の値が、C2になった場合の炭素の拡散長Depを計算する式である。C2の値は任意の温度における炭素の固溶度であり、これらの値は、実験的もしくは、熱力学の平衡計算により、あらかじめ求めることができる。冷却は、式(2)中の炭素の拡散長Depの値がある値(Dep *)に達した時に行なう。
C1:727℃のCの固溶度(SUJ2の場合:0.52)
C2:任意の温度におけるCの固溶度
式(2)は、式(4)のC1の値が、C2になった場合の炭素の拡散長Depを計算する式である。C2の値は任意の温度における炭素の固溶度であり、これらの値は、実験的もしくは、熱力学の平衡計算により、あらかじめ求めることができる。冷却は、式(2)中の炭素の拡散長Depの値がある値(Dep *)に達した時に行なう。
なお、焼入タイミング制御用測温装置5の測温部は、必ずしも1箇所である必要はない。測温部を複数とすることにより、複数の部位での熱処理品質を確保することができる。
図9は、補正Depの値を温度推移から積算する方法を説明するための、焼入温度と保持時間との関係を示す説明図である。図9の上段左のグラフにおいては横軸を時間t、縦軸を温度Tとして焼入温度制御側(転がり軸受外輪1の外周面1A)および焼入タイミング制御側(転がり軸受外輪1の内周面1B)における温度推移が示されている。また、上段右の図は上段左のグラフの領域αの部分を拡大して示した図である。また、下段には補正Depの値を温度推移から積算するための計算式が示されている。
図9を参照して、被処理物が加熱されている間、冷却タイミングを決定するための測温部位(つまり焼入タイミング制御用測温装置5の測温部位である内周面1B)の温度は刻一刻と変化するので、補正Dep(式(2)における補正されたDep、以下単にDepという)の値は図9に示すように、Dep1→Dep2→・・・→Depnと積算する必要がある。転がり軸受外輪1の昇温が開始されると、焼入タイミング制御側(内周面1B側)は、磁束の進入が焼入温度制御側(外周面1A側)より少ないので、焼入温度制御側に比べて遅れて温度が上昇する。通常、温度が727℃を越えると、鉄のオーステナイト化が始まるが、昇温速度が速いと鉄の加熱変態温度は変化する。そのため、拡散長を計算するための温度は、昇温速度によって変化させなくてはならない。
昇温速度は、電源の能力、コイルおよび被処理物の形状などによって異なるので、装置や被処理物の種類によって、拡散長を計算するための温度は適宜変更されることが好ましい。焼入タイミング制御側の温度が加熱変態温度を越えたところから、図中の式によって拡散長Depを計算する。任意の時間におけるDepnがDep *を越えると、ただちに焼入を開始する。Dep *の値は、所定の熱処理品質を維持できる範囲で、できるだけ小さな値である方が、熱処理時間低減という観点からは望ましい。しかし、品質を安定させる観点からは、ある程度安全をみた設定値とするのが望ましい。
図10は、Dep *の値に対する硬度と処理時間との変化を示す図である。図10は、最高到達温度を900℃、降温速度を0℃/秒とし、焼入後に焼戻を180℃で120分行なった場合の結果を示している。図10において、横軸はDep *の値(mm)、縦軸は硬度(HV)および処理時間(秒)を示している。また、図中の黒丸は硬度、白丸は処理時間を示している。
図10を参照して、処理時間は、Dep *を大きく設定するほど、必要な拡散長が長くなるため増加することが分かる。また硬度は、Dep *の値を大きく設定するほど、処理時間が増加するので、高くなっていくことが分かる。ただし、硬度は、加熱が長すぎると飽和する領域が存在し、Dep *が約0.015mmで最高硬さに達していた。したがって、Dep *の値は0.015mm以下が望ましい考えられる。つまり、本実施の形態の場合、たとえばDep *の値を0.015mmとし、上述のように積算されたDepnが0.015mmとなった時点で、焼入タイミング調節装置6から冷却開始信号が焼入用冷却装置7に向けて出力されることにより、冷却タイミングが決定される。そして、これに基づいて焼入用冷却装置7が、転がり軸受外輪1をA1点以上の温度からMS点以下の温度に冷却することにより、転がり軸受外輪1が焼入硬化される。
なお、A1点とは鋼を加熱した場合に、鋼の組織がフェライトからオーステナイトに変態を開始する温度に相当する点をいう。また、MS点とはオーステナイト化した鋼が冷却される際に、マルテンサイト化を開始する温度に相当する点をいう。
次に、熱処理条件がTTA線図上で規格内におさまったかどうかという判断、すなわち焼入用冷却タイミングの決定方法の変形例について説明する。
本変形例における焼入用冷却タイミングの決定は、式(5)および式(3)を用いて行なわれる。
∂C/(∂t)=D∂2C/(∂x2)・・・式(5)
D:鋼中の炭素の拡散定数、C:炭素濃度(質量%)、t:時間(秒)、x:距離
D=D0exp(−Q/RT)・・・式(3)
D0:拡散定数のエントロピー項、Q:活性化エネルギー、R:気体定数、T:絶対温度(K)
ここで、式(5)を差分方程式で表すと、以下の式になる。
D:鋼中の炭素の拡散定数、C:炭素濃度(質量%)、t:時間(秒)、x:距離
D=D0exp(−Q/RT)・・・式(3)
D0:拡散定数のエントロピー項、Q:活性化エネルギー、R:気体定数、T:絶対温度(K)
ここで、式(5)を差分方程式で表すと、以下の式になる。
Cm,n+1=rCm+1,n+(1−2r)Cm,n+rCm-1,n・・・式(6)
r=D×Δt/(Δx)2・・・式(7)
冷却タイミングは、式(6)をある境界条件で解き、材料中の炭素の固溶状態が所定の条件を満たしているかどうかで決定する。ここで、境界条件は、たとえば加熱中の転がり軸受外輪1を構成する鋼中における鉄炭化物(セメンタイト;Fe3C)と素地との界面において、ある温度での炭素固溶濃度が当該温度での炭素の固溶度に等しくなっているとの仮定の下に与えることができる。
r=D×Δt/(Δx)2・・・式(7)
冷却タイミングは、式(6)をある境界条件で解き、材料中の炭素の固溶状態が所定の条件を満たしているかどうかで決定する。ここで、境界条件は、たとえば加熱中の転がり軸受外輪1を構成する鋼中における鉄炭化物(セメンタイト;Fe3C)と素地との界面において、ある温度での炭素固溶濃度が当該温度での炭素の固溶度に等しくなっているとの仮定の下に与えることができる。
図11は、加熱中の被処理物の温度推移を示す図である。また、図12〜図14は、炭素の固溶開始からの各時間T(0.4秒後、0.8秒後、1.2秒後)における、2つのFe3C間の各位置における炭素分布(固溶炭素濃度(質量%)の分布)を示す図である。図11において、横軸は時間(秒)、縦軸は温度(℃)を示している。また、図12〜図14において、横軸は基準となる境界点からの距離(位置)(mm)、縦軸は炭素濃度(質量%)を示している。この炭素の固溶状態の計算においては、2つのFe3C間の距離を0.012mmとし、境界点(Fe3Cと素地との界面)における固溶炭素量(炭素濃度(質量%)の値)をSUJ2の固溶度曲線から得られる値(熱力学平衡計算ソフトで計算)とした。この固溶度曲線の式(固溶度の式)は、実験的もしくは熱力学平衡計算によって、材料別にあらかじめ求めておくことができる。
図11〜図14を参照して、たとえば図11に示すように転がり軸受外輪1が加熱された場合、固溶炭素濃度の分布は、図12〜図14に示すように中央位置(2つのFe3C間の距離を0.012mmとした場合には0.006mmの位置)において固溶炭素濃度が最も低くなっており、時間が経過するにつれて固溶炭素濃度が全体として増加するとともに、中央位置と両端(Fe3Cと素地との界面)との差が小さくなる傾向にある。
焼入用冷却タイミングは、たとえば転がり軸受外輪1の内周面1Bが上述の焼入条件である固溶炭素濃度の条件を上記中央位置において満たした時点として決定することができる。また2つの境界点間の距離(炭化物間距離)は、被処理物の焼入前の組織や材料の違いによって適宜変更することができる。
つまり本変形例の焼入用冷却タイミングの決定はたとえば以下のように行なわれる。まず焼入タイミング制御側の温度を焼入タイミング制御用測温装置5により測定し(ステップA)、その測定された温度から境界部の炭素量を計算する(ステップB)。境界部の炭素量の値を式(6)の境界条件に与えて式(6)を計算する(ステップC)。以上の工程により、図12〜図14に示すような固溶炭素濃度の分布を計算することができる(ステップD)。得られた固溶炭素濃度の分布から、固溶炭素濃度の分布の中央位置における炭素濃度が所定の炭素濃度(たとえば0.6〜0.8質量%)になったかどうかの確認を行なう(ステップE)。もし中央位置における炭素濃度が所定の炭素濃度に達していたら冷却を開始し(ステップF)、達していなければ冷却は開始されずに加熱が継続されて再度ステップAに戻る。
また、上記ステップCにおける式(6)は以下のように差分法により解くこと画できる。まず図12〜図14の炭素分布の両端における炭素濃度は、炭化物素地界面の炭素濃度である。したがって、この位置からある濃度(炭素の固溶度)で炭素が素地へ供給される。
たとえば図12〜図14のように、隣り合うFe3Cの間に区切りを5点とると(境界点を入れると7点)、5個の連立方程式が得られるが、未知数は、C0,n、C1,n、C2,n、C3,n、C4,n、C5,n、C6,nの7つになる。このうちC0,nとC6,nとは炭化物と素地との界面の位置となるため、固溶度の式から炭素濃度の値を与えることができる。これにより、連立方程式は5個で、未知数が5個となるため、C1,n、C2,n、C3,n、C4,n、C5,nの値を求めることができる。
なお、上記固溶炭素濃度の計算を、焼入タイミング制御側だけでなく、焼入温度制御側でも行なうことにより、焼入温度制御側の炭素の固溶状態から、焼入温度制御側の残留オーステナイト量を推測することができる。
図15は、本変形例の焼入用冷却タイミングの決定方法で焼入を実施した場合の、焼入温度制御側および焼入タイミング制御側における固溶炭素濃度の分布を示す図である。図15おいて、横軸は基準となる境界点からの距離(位置)(mm)、縦軸は炭素濃度(質量%)を示している。このデータは、焼入温度(加熱温度)を950℃で一定とし、焼入温度までの昇温速度を300℃/秒とし、炭化物間距離を0.012mmとし、冷却開始の条件を炭素濃度の中央位置での値を0.6質量%とした場合のものである。図15ら、固溶炭素濃度の値は、焼入タイミング制御側よりも焼入温度制御側のほうが全体的に高くなっていることが分かる。これは、転がり軸受外輪1において、焼入加熱装置2に含まれる焼入用誘導コイルに近い焼入温度制御側の温度が、焼入タイミング制御側よりも高くなるためである。
さらに、上述固溶炭素濃度の計算の開始温度、すなわち炭素の素地への固溶の開始温度は、昇温速度を考慮して決定することが好ましい。以下、その決定方法について説明する。
鋼が平衡状態を保ちつつ727℃(A1点温度)以上に加熱されると、オーステナイト化が始まり、これに伴って炭素の固溶が始まる。しかし、昇温速度が速い場合、A1点温度は昇温速度に影響されて変化し、AC1点(加熱変態点)温度においてオーステナイト化を開始する。したがって、上記計算の開始温度は、昇温速度を考慮して変化させることが好ましい。
図16は、炭素含有量1質量%の鋼(JIS SUJ2)における昇温速度による加熱変態点の変化を示す図である。図16において、横軸は昇温速度(℃/秒)、縦軸は加熱変態点AC1(℃)を示している。図16を参照して、昇温速度が変化すると、加熱変態点AC1は、727℃から950℃まで変化することが分かる。よって、被処理物の組成における昇温速度の変化に対する加熱変態点AC1の変化を予め調べておき、被処理物の加熱時における昇温速度から加熱変態点AC1を求めて、その加熱変態点AC1に基づいて上記固溶炭素濃度の計算開始温度(炭素の固溶開始温度)を決定することができる。
図17は、昇温速度を考慮して固溶炭素濃度の計算開始温度を決定する方法を説明するための図である。図17において、横軸は時間、縦軸は温度を示している。図17中には、焼入温度制御側(図3の転がり軸受外輪1の外周面1A)の温度推移と焼入タイミング制御側(図3の転がり軸受外輪1の内周面1B)の温度推移と加熱変態点AC1とが示されている。
図17を参照して、加熱初期においては、焼入温度制御側での加熱が急速に行なわれるため、焼入タイミング制御側の昇温速度も速くなり、加熱変態点は高くなる。焼入温度制御側の温度が所定の設定温度に近づくと、焼入温度調節装置4により昇温速度が緩やかになるように加熱が制御される。そのため、焼入タイミング制御側の昇温速度も緩やかになり、加熱変態点AC1が低下していく。そして、時間が経過すると、加熱変態点AC1は、焼入タイミング制御側の温度推移と交わる。この交点がオーステナイト化の開始温度を示していることになるため、この交点の温度(つまりオーステナイト化の開始温度)から上記固溶炭素濃度の計算を開始することができる。
そして、図12〜図14を用いて説明したように、固溶炭素濃度の分布の中央位置における炭素濃度が所定の炭素濃度(たとえば0.6〜0.8質量%)を越えた時点で、ただちに冷却を開始して、被処理物(転がり軸受外輪1)を焼入硬化することができる。
次に、上述の実施の形態における温度制御による高周波焼戻(焼戻データ取得工程)の具体的手順について、転がり軸受外輪1の材質がJIS SUJ2である場合を例に、詳細に説明する。ここでは、強度の観点から、焼戻後の被処理物の熱処理規格を、硬度HRC58以上HRC62以下と設定する。
材料強度と、焼戻温度および焼戻時間との間には、次の関係式が成立する。
X=1−exp{−(kt)N}
k=Aexp(−Q/RT)
M=M0−(M0−Mf)X
X:機械的性質の変化率、k:反応速度係数、t:焼戻時間(秒)、N:時間指数、A:振動因子項、Q:活性化エネルギー、R:気体定数、T:焼戻温度(K)、M:焼戻後の硬度、M0:焼入後の硬度、Mf:生材硬度
したがって、これらの式から焼戻時間tについての次式を導くことができる。
X=1−exp{−(kt)N}
k=Aexp(−Q/RT)
M=M0−(M0−Mf)X
X:機械的性質の変化率、k:反応速度係数、t:焼戻時間(秒)、N:時間指数、A:振動因子項、Q:活性化エネルギー、R:気体定数、T:焼戻温度(K)、M:焼戻後の硬度、M0:焼入後の硬度、Mf:生材硬度
したがって、これらの式から焼戻時間tについての次式を導くことができる。
t=〔ln{(M0−Mf)/(M−Mf)}×{Aexp(−Q/RT)}−N〕1/N・・・式(8)
式(8)中の焼入後の硬度M0と生材硬度Mfは実測できる。また、NとAとQは実験的に求めることができるから、焼戻温度Tの値を代入して式(8)により焼戻時間tを計算できる。本実施の形態の焼戻データ取得工程においては、被処理物が冷却されるべきタイミングは、式(8)に基づき焼戻時間tを調節することで決定することができる。式(8)は、被処理物の規格品質(硬度)に対する熱処理温度とその保持時間との関係式であるから、転がり軸受外輪1の形状を問わず有効に利用することができる。
式(8)中の焼入後の硬度M0と生材硬度Mfは実測できる。また、NとAとQは実験的に求めることができるから、焼戻温度Tの値を代入して式(8)により焼戻時間tを計算できる。本実施の形態の焼戻データ取得工程においては、被処理物が冷却されるべきタイミングは、式(8)に基づき焼戻時間tを調節することで決定することができる。式(8)は、被処理物の規格品質(硬度)に対する熱処理温度とその保持時間との関係式であるから、転がり軸受外輪1の形状を問わず有効に利用することができる。
図18は、焼戻後に所定の硬度を得るための焼戻温度Tと焼戻時間tとの関係を示す条件線図である。図18において、横軸は焼戻温度(℃)、縦軸は保持時間(秒)を示している。また、領域AはHRC62以上の範囲であり、領域BはHRC58以下の範囲であり、領域CがHRC58〜62の範囲である。図18を参照して、焼戻の加熱温度および時間の条件(焼戻条件)の決定方法を説明する。
図18に示す条件線図は、焼戻時間tを求める式(8)に基づいて作成することができる。図18を参照して、焼戻温度が高温になるほど短時間での焼戻が可能になる。このため、焼戻温度は高い方が、熱処理時間の低減という観点からは望ましい。しかし、焼戻温度が高くなると、温度ムラによる焼戻ムラが発生しやすくなると考えられるので、焼戻温度は、熱処理時間と焼戻ムラとの兼ね合いなどから決定することができる。
焼戻条件が決定すると、図4を参照して、当該焼戻条件がパーソナルコンピュータなどの焼戻温度調節装置14に入力される。焼戻温度調節装置14は、焼戻温度制御用測温装置13と、焼戻加熱装置12に接続されており、焼戻温度制御用測温装置13からの温度情報に基づき、PID制御により温度制御信号を焼戻加熱装置12に出力し、転がり軸受外輪1の温度推移を制御する。このとき同時に、焼戻終了タイミング制御用測温装置15の温度情報をパソコンなどの焼戻終了タイミング調節装置16に取り込み、その温度推移から加熱が十分であるかどうかを判断し、被処理物が冷却されるべきタイミングを調節する。
図19は、焼戻後の硬度の値を温度推移から積算する方法を説明するための焼戻温度と保持時間との関係を示す説明図である。図19の上段左のグラフにおいては横軸を時間t、縦軸を温度Tとして温度推移が示されている。また、上段右の図は上段左のグラフの領域βの部分を拡大して示した図である。また、下段には焼戻後の硬度Mの値を温度推移から積算するための計算式が示されている。
図19を参照して、焼戻終了タイミング制御用測温装置15からの温度情報は刻一刻と変化するので、M(焼戻後の硬度)の値はtn *を算出しつつ、図19のように積算して算出することが望ましい。そして、焼戻後の硬度が目標の硬度になる条件が満たされた時点で、焼戻終了装置17により転がり軸受外輪1が冷却される。なお、焼戻温度調節装置14と焼戻終了タイミング調節装置16とを同一のパソコンで兼ねることもできる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明の高周波熱処理設備は、高周波加熱により被処理物を加熱して熱処理を行なう高周波熱処理設備に特に有利に適用され得る。
1 転がり軸受外輪(被処理物)、1A 外周面、1B 内周面、1C 転走面、2 焼入加熱装置、3 焼入温度制御用測温装置、4 焼入温度調節装置、5 焼入タイミング制御用測温装置、6 焼入タイミング調節装置、7 焼入用冷却装置、7A 被処理物保持台、7B 油槽、12 焼戻加熱装置、13 焼戻温度制御用測温装置、14 焼戻温度調節装置、15 焼戻終了タイミング制御用測温装置、16 焼戻終了タイミング調節装置、17 焼戻終了装置、50 焼入温度制御装置、51 焼戻温度制御装置、60 焼入タイミング制御装置、61 焼戻終了タイミング制御装置、70 焼入用記憶装置、71 焼戻用記憶装置、91 被処理物保持装置、92 被処理物確認装置、93 高周波焼入装置、94 洗浄装置、95 高周波焼戻装置、96 熱処理品保持装置、99A,99B,99C,99D,99E 搬送装置。
Claims (2)
- 高周波加熱により被処理物を加熱して熱処理するための高周波熱処理設備であって、
前記被処理物を搬送する搬送装置と、
前記搬送装置により搬送された前記被処理物を、高周波加熱により加熱して焼入硬化する高周波焼入装置とを備え、
前記高周波焼入装置は、
前記被処理物の温度を調節するための焼入温度制御装置と、
加熱された前記被処理物が冷却されるべきタイミングを調節するための焼入タイミング制御装置と、
前記焼入温度制御装置において、前記被処理物を加熱するために焼入用電源から焼入用誘導コイルに出力される電源出力の推移データである焼入用出力推移データと、前記焼入タイミング制御装置において、前記被処理物が冷却されるタイミングを特定するための焼入用冷却タイミングデータとを焼入プロセスデータとして記憶する焼入用記憶装置とを含み、
前記焼入温度制御装置は、
前記被処理物の温度データを取得し、前記被処理物の温度データに基づく温度の情報を出力する焼入温度制御用測温装置と、
前記焼入温度制御用測温装置に接続され、前記焼入温度制御用測温装置からの温度の情報に基づき前記被処理物の加熱状態を制御するための焼入温度制御信号を出力する焼入温度調節装置と、
前記焼入温度調節装置に接続され、前記焼入温度調節装置からの前記焼入温度制御信号基づき、高周波加熱により前記被処理物を加熱する、前記焼入用電源および前記焼入用誘導コイルを含む焼入加熱装置とを有し、
前記焼入タイミング制御装置は、
前記被処理物の温度データを取得し、前記被処理物の温度データに基づく温度の情報を出力する焼入タイミング制御用測温装置と、
前記焼入タイミング制御用測温装置に接続され、前記焼入タイミング制御用測温装置からの温度の情報に基づき加熱時間を調節し、前記被処理物が冷却されるべきタイミングを決定して焼入用冷却開始信号を出力する焼入タイミング調節装置と、
前記焼入タイミング調節装置に接続され、前記冷却開始信号に基づいて、前記被処理物を冷却することにより前記被処理物を焼入硬化する焼入用冷却装置とを有する、高周波熱処理設備。 - 前記高周波焼入装置に接続され、前記高周波焼入装置において焼入硬化された前記被処理物を、高周波加熱により加熱して焼戻す高周波焼戻装置をさらに備え、
前記高周波焼戻装置は、
前記被処理物の温度を調節するための焼戻温度制御装置と、
加熱された前記被処理物が冷却されるべきタイミングを調節するための焼戻終了タイミング制御装置と、
前記焼戻温度制御装置において、前記被処理物を加熱するために高周波加熱用の焼戻用電源から焼戻用誘導コイルに出力される電源出力の推移データである焼戻用出力推移データと、前記焼戻終了タイミング制御装置において、前記被処理物が冷却されるタイミングを特定するための焼戻用冷却タイミングデータとを焼戻プロセスデータとして記憶する焼戻用記憶装置とを含み、
前記焼戻温度制御装置は、
前記被処理物の温度データを取得し、前記被処理物の温度データに基づく温度の情報を出力する焼戻温度制御用測温装置と、
前記焼戻温度制御用測温装置に接続され、前記焼戻温度制御用測温装置からの温度の情報に基づき前記被処理物の加熱状態を制御するための焼戻温度制御信号を出力する焼戻温度調節装置と、
前記焼戻温度調節装置に接続され、前記焼戻温度調節装置からの前記焼戻温度制御信号基づき、高周波加熱により前記被処理物を加熱する、前記焼戻用電源および前記焼戻用誘導コイルを含む焼戻加熱装置とを有し、
前記焼戻終了タイミング制御装置は、
前記被処理物の温度データを取得し、前記被処理物の温度データに基づく温度の情報を出力する焼戻終了タイミング制御用測温装置と、
前記焼戻終了タイミング制御用測温装置に接続され、前記焼戻終了タイミング制御用測温装置からの温度の情報に基づき加熱時間を調節し、前記被処理物が冷却されるべきタイミングを決定して焼戻用冷却開始信号を出力する焼戻終了タイミング調節装置と、
前記焼戻終了タイミング調節装置に接続され、前記焼戻用冷却開始信号に基づいて、前記被処理物を冷却することにより前記被処理物の焼戻を終了させる焼戻終了装置とを有する、請求項1に記載の高周波熱処理設備。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2006064463A JP2007239044A (ja) | 2006-03-09 | 2006-03-09 | 高周波熱処理設備 |
PCT/JP2007/053033 WO2007102306A1 (ja) | 2006-03-09 | 2007-02-20 | 高周波焼入方法、高周波焼入装置および高周波焼入品 |
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2006
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