JP2007077424A - 高周波焼戻方法、高周波焼戻設備および高周波焼戻製品 - Google Patents
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Abstract
【課題】 焼戻の条件決定が容易で、かつ被処理物の品質を安定させることが可能な高周波焼戻方法および高周波焼戻設備を提供する。さらに、製造コストが低減され、かつ品質の安定した高周波焼戻製品を提供する。
【解決手段】 高周波焼戻方法は、加熱温度制御工程と、加熱時間制御工程とを備えている。加熱温度制御工程は、加熱温度制御用測温工程と、加熱温度調節工程と、加熱工程とを含んでいる。加熱時間制御工程は、加熱時間制御用測温工程と、加熱時間調節工程と、加熱終了工程とを含んでいる。さらに、加熱時間調節工程において、被処理物の加熱を終了すべきタイミングを決定するための焼戻時間tは以下の式(A)に基づいて算出される。
H=a・log(t)+b・(1/T)+c・・・(A)
H:被処理物の硬度、t:焼戻時間、T:被処理物の温度、a、b、c:定数
【選択図】 図2
【解決手段】 高周波焼戻方法は、加熱温度制御工程と、加熱時間制御工程とを備えている。加熱温度制御工程は、加熱温度制御用測温工程と、加熱温度調節工程と、加熱工程とを含んでいる。加熱時間制御工程は、加熱時間制御用測温工程と、加熱時間調節工程と、加熱終了工程とを含んでいる。さらに、加熱時間調節工程において、被処理物の加熱を終了すべきタイミングを決定するための焼戻時間tは以下の式(A)に基づいて算出される。
H=a・log(t)+b・(1/T)+c・・・(A)
H:被処理物の硬度、t:焼戻時間、T:被処理物の温度、a、b、c:定数
【選択図】 図2
Description
本発明は高周波焼戻方法、高周波焼戻設備および高周波焼戻製品に関し、より特定的には、被処理物を高周波加熱により加熱して焼戻す高周波焼戻方法、被処理物を高周波加熱により加熱して焼戻すための高周波焼戻設備および高周波焼戻が実施された高周波焼戻製品に関するものである。
焼入硬化処理が実施された鋼製品に対しては、靭性および寸法安定性の向上などを目的として焼戻処理が実施される場合が多い。焼戻処理の焼戻温度は、鋼製品を構成する素材の鋼種に基づいて決定されるが、焼戻時間については焼戻温度ほど厳密な決定は行なわれず、鋼製品の大きさや厚みなどにより多少の調整が行なわれるのが一般的である。これは、焼戻の効果に対しては、焼戻温度が支配的な影響を及ぼし、焼戻時間の影響は焼戻温度の影響に比べて小さいためである。
従来より、焼戻の効果を示す焼戻パラメータPは、以下の式(1)により決定されることが知られている(非特許文献1参照)。
P=T{log(t)+C}・・・式(1)
t:時間、T:温度、C:定数
式(1)は、所定の焼戻効果を得るために必要な焼戻温度と焼戻時間とを表わしたものであるが、より実用的な式として、材料強度(硬度)と焼戻温度および焼戻時間との関係を示す式(2)が知られている(非特許文献2参照)。
t:時間、T:温度、C:定数
式(1)は、所定の焼戻効果を得るために必要な焼戻温度と焼戻時間とを表わしたものであるが、より実用的な式として、材料強度(硬度)と焼戻温度および焼戻時間との関係を示す式(2)が知られている(非特許文献2参照)。
H=a・log(t)+b・(1/T)+c・・・式(2)
H:被処理物の硬度、t:焼戻時間、T:被処理物の温度(焼戻温度)、a、b、c:定数
焼戻処理を効率よく実施するためには、焼戻温度を高く、かつ焼戻時間を短くする、すなわち高温短時間の焼戻条件を採用する対策が考えられる。上述の式(1)または(2)から、所望の焼戻処理の効果を得るために必要な焼戻温度および焼戻時間を算出することが可能であり、高温短時間の焼戻条件を決定することができるが、実際の焼戻処理においては、高温短時間の焼戻条件は一般的には採用されていない。これは以下のような理由による。一般に、焼戻処理は多数の被処理物に対して同時に実施される場合が多い。この場合、被処理物の形状、処理量などによっては、焼戻処理が実施される炉内において被処理物の温度に差が生じ、同時に処理された被処理物の中において焼戻の効果に差が生じる。その結果、焼戻が実施された被処理物の品質にバラツキが生じる。このような被処理物の品質のバラツキを回避するため、焼戻処理においては、焼戻の効果にバラツキが生じにくい比較的低温かつ長時間の焼戻条件が採用される場合が多い。
H:被処理物の硬度、t:焼戻時間、T:被処理物の温度(焼戻温度)、a、b、c:定数
焼戻処理を効率よく実施するためには、焼戻温度を高く、かつ焼戻時間を短くする、すなわち高温短時間の焼戻条件を採用する対策が考えられる。上述の式(1)または(2)から、所望の焼戻処理の効果を得るために必要な焼戻温度および焼戻時間を算出することが可能であり、高温短時間の焼戻条件を決定することができるが、実際の焼戻処理においては、高温短時間の焼戻条件は一般的には採用されていない。これは以下のような理由による。一般に、焼戻処理は多数の被処理物に対して同時に実施される場合が多い。この場合、被処理物の形状、処理量などによっては、焼戻処理が実施される炉内において被処理物の温度に差が生じ、同時に処理された被処理物の中において焼戻の効果に差が生じる。その結果、焼戻が実施された被処理物の品質にバラツキが生じる。このような被処理物の品質のバラツキを回避するため、焼戻処理においては、焼戻の効果にバラツキが生じにくい比較的低温かつ長時間の焼戻条件が採用される場合が多い。
一方、高温短時間の焼戻処理に適した熱処理方法として、被処理物1個1個あるいは少量の単位の被処理物に対して、高周波加熱(誘導加熱)を利用した加熱を実施することにより熱処理を行なう高周波熱処理がある。高周波加熱を利用した急速加熱による焼戻である高周波焼戻は、大気炉を用いた一般的な焼戻に比べて、被処理物に優れた特性を付与することが可能な焼戻方法であるとの報告もある(たとえば非特許文献3および4参照)。
J. H. Hollomon and L. D. Jaffe、Trans. Met. soc. AIME、162、1945年、p.223 井上、「鉄と鋼」、66巻、1980年、p.1532 川嵜ら、「鉄と鋼」、74巻、1988年、p.334 川嵜ら、「鉄と鋼」、74巻、1988年、p.342
J. H. Hollomon and L. D. Jaffe、Trans. Met. soc. AIME、162、1945年、p.223 井上、「鉄と鋼」、66巻、1980年、p.1532 川嵜ら、「鉄と鋼」、74巻、1988年、p.334 川嵜ら、「鉄と鋼」、74巻、1988年、p.342
しかし、現在のところ、高周波焼戻は一般的に広く利用されている焼戻方法とはいえない。これは、次のような理由による。一般に、高周波熱処理においては加熱用の誘導コイルに入力される電力と時間とを変化させながら、熱処理を実施して、熱処理された被処理物の品質を確認し、これに基づいて実験的に熱処理条件を決定する必要がある。そのため、高周波焼戻においても被処理物の形状、素材などが変化すればその都度、焼戻条件を決定し直す必要があり、焼戻条件の決定に経験や手間を要するという問題がある。また、上記問題点を解決して焼戻の条件決定を容易にすることにより、製造コストが低減され、かつ品質の安定した高周波焼戻製品が求められている。
そこで、本発明の一の目的は焼戻の条件決定が容易で、かつ被処理物の品質を安定させることが可能な高周波焼戻方法および高周波焼戻設備を提供することである。さらに、本発明の他の目的は製造コストが低減され、かつ品質の安定した高周波焼戻製品を提供することである。
本発明に従った高周波焼戻方法は、被処理物を高周波加熱により加熱して焼戻す高周波焼戻方法であって、被処理物の加熱温度を調節する加熱温度制御工程と、被処理物の加熱時間を調節する加熱時間制御工程とを備えている。加熱温度制御工程は、被処理物の温度を測定し、温度データを出力する加熱温度制御用測温工程と、加熱温度制御用測温工程において出力された温度データに基づき、被処理物の加熱温度を調節するための加熱温度制御信号を出力する加熱温度調節工程と、加熱温度調節工程において出力された加熱温度制御信号に基づき、被処理物を高周波加熱により加熱する加熱工程とを含んでいる。加熱時間制御工程は、被処理物の温度を測定し、温度データを出力する加熱時間制御用測温工程と、加熱時間制御用測温工程において出力された温度データに基づき、被処理物の加熱を終了すべきタイミングを決定して加熱終了信号を出力する加熱時間調節工程と、加熱時間調節工程において出力された加熱終了信号に基づき、被処理物の加熱を終了する加熱終了工程とを含んでいる。さらに、加熱時間調節工程において、被処理物の加熱を終了すべきタイミングを決定するための焼戻時間tは以下の式(A)に基づいて算出されることを特徴とする。
H=a・log(t)+b・(1/T)+c・・・(A)
H:被処理物の硬度、t:焼戻時間、T:被処理物の温度、a、b、c:定数
一般に高周波熱処理においては、まず加熱条件として電力と時間とのパラメータからなる電源出力の推移(電源出力パターン)が決定される(電力制御)。電源出力パターンは、被処理物の形状、材質等を考慮しつつ電力と時間とを変化させて被処理物のサンプルを実際に熱処理し、熱処理された被処理物の品質を確認することにより決定される。そのため、電源出力パターンの決定には経験と手間が必要とされる。ここで、鋼製品の焼戻においては、被処理物を所定温度に所定時間保持する必要がある。しかし、上記方法(電力制御)では被処理物の加熱履歴を正確に把握することは困難である。そのため、実際に焼戻を実施して得られた被処理物の硬さなどを調査することにより、電源出力パターンが実験的に決定される。このように、被処理物の加熱履歴が正確に把握できない点および電源出力パターンの決定に経験と手間を要する点が高周波焼戻の問題点であった。
H:被処理物の硬度、t:焼戻時間、T:被処理物の温度、a、b、c:定数
一般に高周波熱処理においては、まず加熱条件として電力と時間とのパラメータからなる電源出力の推移(電源出力パターン)が決定される(電力制御)。電源出力パターンは、被処理物の形状、材質等を考慮しつつ電力と時間とを変化させて被処理物のサンプルを実際に熱処理し、熱処理された被処理物の品質を確認することにより決定される。そのため、電源出力パターンの決定には経験と手間が必要とされる。ここで、鋼製品の焼戻においては、被処理物を所定温度に所定時間保持する必要がある。しかし、上記方法(電力制御)では被処理物の加熱履歴を正確に把握することは困難である。そのため、実際に焼戻を実施して得られた被処理物の硬さなどを調査することにより、電源出力パターンが実験的に決定される。このように、被処理物の加熱履歴が正確に把握できない点および電源出力パターンの決定に経験と手間を要する点が高周波焼戻の問題点であった。
これに対し本発明の高周波焼戻方法では、加熱温度制御工程において実際に測定された被処理物の温度に基づき被処理物の焼戻温度が制御されるとともに、加熱時間制御工程においても実際に測定された被処理物の温度に基づき焼戻時間が制御される。したがって、本発明の高周波焼戻方法によれば、温度と時間とをパラメータとして被処理物の加熱(焼戻)が制御される(温度制御)。そのため、被処理物の加熱履歴を正確に把握することが可能であり、被処理物に必要な加熱履歴を与えることにより、適正な焼戻を実施することができる。
さらに、本発明の高周波焼戻方法では、加熱時間調節工程において、被処理物の加熱を終了すべきタイミングを決定するための焼戻時間tは上述の式(A)に基づいて算出される。これにより、本発明の高周波焼戻方法におけるパラメータである焼戻温度Tおよび焼戻時間tと、所望の被処理物の硬度Hとの関係に基づき、加熱を終了すべきタイミングを決定することができるため、実際に熱処理を実施して得られた被処理物の硬さなどの調査を行なうことなく適正な焼戻を実施することが可能となる。その結果、本発明の高周波焼戻方法によれば、焼戻の条件決定が容易で、かつ被処理物の品質を安定させることが可能な高周波焼戻方法を提供することができる。
なお、本発明の高周波焼戻方法の加熱時間制御用測温工程においては、被処理物の複数の部位の温度が測定され、それに基づく複数の温度データが出力されるとともに、加熱時間調節工程においては当該複数の温度データに基づき、被処理物の加熱を終了すべきタイミングが決定されて加熱終了信号が出力されることが好ましい。
これにより、加熱時に被処理物において温度のムラが生じた場合でも、被処理物の複数の部位の温度に基づき焼戻時間を決定することができるため、被処理物の品質を一層安定させることができる。
さらに、上記複数の部位には、被処理物の形状などを考慮して、最も温度が高くなる部位と最も温度が低くなる部位とが含まれていることが好ましい。これにより、被処理物において最も温度が高くなる部位と最も温度が低くなる部位との両方が所望の焼戻状態となるように、具体的にはたとえば所望の硬度の範囲となるように、焼戻時間tを決定することで、被処理物の品質を一層安定させることができる。
また、加熱時間調節工程においては、加熱時間制御用測温工程において出力される温度データに代えて、または加熱時間制御用測温工程において出力される温度データとともに、加熱温度制御用測温工程において出力される温度データに基づいて、被処理物の加熱を終了すべきタイミングが決定されて加熱終了信号が出力されてもよい。これにより、加熱温度制御用測温工程において出力される温度データを加熱温度の調節だけでなく、加熱時間の調節にも利用することができる。
なお、高周波加熱とは、被処理物に隣接して配置されたコイル(誘導子)に交流電流を流すことにより、当該被処理物の内部に誘発されるうず電流に起因したジュール熱と、ヒステリシス損に相当する熱とによる被処理物の加熱をいう。
本発明に従った高周波焼戻設備は、被処理物を高周波加熱により加熱して焼戻すための高周波焼戻設備であって、被処理物の加熱温度を調節するための加熱温度制御手段と、被処理物の加熱時間を調節するための加熱時間制御手段とを備えている。加熱温度制御手段は、加熱温度制御用測温手段と、加熱温度調節手段と、加熱手段とを含んでいる。加熱温度制御用測温手段は被処理物の温度を測定し、温度データを出力する。加熱温度調節手段は加熱温度制御用測温手段に接続され、加熱温度制御用測温手段から出力された温度データに基づき、被処理物の加熱温度を調節するための加熱温度制御信号を出力する。加熱手段は、加熱温度調節手段に接続され、加熱温度調節手段から出力された加熱温度制御信号に基づき、被処理物を高周波加熱により加熱する。
加熱時間制御手段は、加熱時間制御用測温手段と、加熱時間調節手段と、加熱終了手段とを含んでいる。加熱時間制御用測温手段は被処理物の温度を測定し、温度データを出力する。加熱時間調節手段は加熱時間制御用測温手段に接続され、加熱時間制御用測温手段から出力された温度データに基づき、被処理物の加熱を終了すべきタイミングを決定して加熱終了信号を出力する。加熱終了手段は加熱時間調節手段に接続され、加熱時間調節手段から出力された加熱終了信号に基づき、被処理物の加熱を終了させる。
さらに、本発明の高周波焼戻設備では、加熱時間調節手段において、被処理物の加熱を終了すべきタイミングを決定するための焼戻時間tが式(A)に基づいて算出されることを特徴とする。
本発明の高周波焼戻設備を用いることにより、加熱温度制御手段により実際に測定された被処理物の温度に基づき被処理物の焼戻温度を制御することができるとともに、加熱時間制御手段により実際に測定された被処理物の温度に基づき焼戻時間を制御することができる。したがって、本発明の高周波焼戻設備によれば、温度と時間とをパラメータとして被処理物の加熱(焼戻)を制御することができる(温度制御)。そのため、本発明の高周波焼戻設備を用いることにより、被処理物の加熱履歴を正確に把握することが可能であり、被処理物に必要な加熱履歴を与えることにより、適正な焼戻を実施することができる。
さらに、本発明の高周波焼戻設備では、加熱時間調節手段において、被処理物の加熱を終了すべきタイミングを決定するための焼戻時間tは上述の式(A)に基づいて算出される。これにより、焼戻温度Tおよび焼戻時間tと、所望の被処理物の硬度Hとの関係に基づき、加熱を終了すべきタイミングを決定することができるため、実際に熱処理を実施して得られた被処理物の硬さなどの調査を行なうことなく適正な焼戻を実施することが可能である。その結果、本発明の高周波焼戻設備によれば、焼戻の条件決定が容易で、かつ被処理物の品質を安定させることが可能な高周波焼戻設備を提供することができる。
上記高周波焼戻設備において好ましくは、加熱時間制御用測温手段を複数個含んでいる。これにより、複数の加熱時間制御用測温手段により被処理物の複数の部位の温度を測定し、それに基づく複数の温度データを出力できるとともに、加熱時間調節手段においては当該複数の温度データに基づき、被処理物の加熱を終了すべきタイミングが決定されて加熱終了信号を出力することができる。そのため、加熱時に被処理物において温度のムラが生じた場合でも、被処理物の複数の部位の温度に基づき焼戻時間を決定することができるため、被処理物の品質を一層安定させることができる。
さらに、上記複数の加熱時間制御用測温手段には、被処理物の形状などを考慮して、最も温度が高くなる部位の温度を測定可能なように配置されている加熱時間制御用測温手段と、最も温度が低くなる部位の温度を測定可能なように配置されている加熱時間制御用測温手段とが含まれていることが好ましい。
これにより、被処理物において最も温度が高くなる部位と最も温度が低くなる部位との両方が所望の焼戻状態となるように、具体的にはたとえば所望の硬度の範囲となるように、焼戻時間を決定することで、被処理物の品質を一層安定させることができる。
また、加熱温度制御用測温手段は加熱時間制御用測温手段を兼ねてもよい。これにより、加熱時間調節手段においては、加熱時間制御用測温手段から出力される温度データに代えて、または加熱時間制御用測温手段から出力される温度データとともに、加熱温度制御用測温手段から出力される温度データに基づいて、被処理物の加熱を終了すべきタイミングが決定されて加熱終了信号を出力することが可能となる。その結果、加熱温度制御用測温手段から出力される温度データを加熱温度の調節だけでなく、加熱時間の調節にも利用することができる。
ここで、加熱温度制御用測温手段および加熱時間制御用測温手段には、たとえば放射温度計などの非接触式の温度計を採用してもよいし、装置のレイアウト上可能であれば熱電対などの接触式の温度計を採用してもよい。また、加熱温度調節手段は、たとえばパソコンなどのコンピュータであり、温度の調節はたとえばPID(Proportional Integral Differential)温度制御により実施することができる。また、加熱手段はたとえば高周波電流を発生させることが可能な電源と誘導子としての1次コイルとを有している。また、加熱時間調節手段は、たとえば式(A)に基づいて被処理物の加熱を終了すべきタイミングを決定するための焼戻時間tを算出するソフトウェアを実行することが可能なパソコンなどのコンピュータである。なお、同一の装置で加熱温度調節手段と加熱時間調節手段とを兼ねてもよい。また、加熱終了手段は、たとえば加熱終了信号に基づき加熱手段による加熱を停止させるソフトウェアを実行可能なパソコンなどのコンピュータであり、同一のパソコンで加熱温度調節手段または/および加熱時間調節手段と加熱終了手段とを兼ねてもよい。また、加熱終了手段は冷却水などの冷却液を被処理物に対して噴射することにより被処理物を冷却することができる冷却液噴出装置を有していてもよいし、被処理物を加熱手段に対して相対的に移動させることにより、加熱手段による加熱が可能な領域から被処理物を離脱させることにより、加熱手段による被処理物の加熱を終了させる移動装置を有していてもよい。
本発明に従った高周波焼戻製品は、上述の本発明の高周波焼戻設備を用い、上述の本発明の高周波焼戻方法で焼戻が実施された高周波焼戻製品である。本発明の高周波焼戻製品によれば、焼戻の条件決定が容易であるため製造コストが低減され、かつ温度制御による焼戻が実施されているため、品質が安定した高周波焼戻製品を提供することができる。
以上の説明から明らかなように、本発明の高周波焼戻方法および高周波焼戻設備によれば、焼戻の条件決定が容易で、かつ被処理物の品質を安定させることが可能な高周波焼戻方法および高周波焼戻設備を提供することができる。さらに、本発明の高周波焼戻製品によれば、製造コストが低減され、かつ品質の安定した高周波焼戻製品を提供することができる。
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
図1は、本発明の一実施の形態における高周波熱処理設備の構成を示す概略図である。図1を参照して、本発明の一実施の形態における高周波熱処理設備を説明する。
図1を参照して、本実施の形態の高周波熱処理設備は、被処理物1を高周波加熱により加熱して焼戻す高周波焼戻設備であって、たとえば円筒状の形状を有する転がり軸受の外輪などである被処理物1の加熱温度を調節する加熱温度制御手段と、被処理物1の加熱時間を調節する加熱時間制御手段とを備えている。加熱温度制御手段は、加熱温度制御用測温手段としての第1の放射温度計3と、加熱温度調節手段としての第1のパソコン4と、加熱手段としての誘導コイル2(高周波電源を含む)とを含んでいる。第1の放射温度計3は被処理物1の温度を測定し、温度データを出力する機能を有している。第1のパソコン4は第1の放射温度計3に接続され、第1の放射温度計3から出力された温度データに基づき、被処理物1の加熱温度をPID温度制御により調節するための加熱温度制御信号を出力する機能を有している。誘導コイル2は、第1のパソコン4に接続され、第1のパソコン4から出力された加熱温度制御信号に基づき、被処理物1を高周波加熱により加熱する機能を有している。
加熱時間制御手段は、加熱時間制御用測温手段としての第2の放射温度計5と、加熱時間調節手段としての第2のパソコン6と、加熱終了手段としての冷却水噴出装置7とを含んでいる。第2の放射温度計5は被処理物1の温度を測定し、温度データを出力する機能を有している。第2のパソコン6は第2の放射温度計5に接続され、第2の放射温度計5から出力された温度データに基づき、被処理物1の加熱を終了すべきタイミングを決定して加熱終了信号を出力する機能を有している。冷却水噴出装置7は第2のパソコン6に接続され、第2のパソコン6から出力された加熱終了信号に基づき、被処理物1に対して冷却水を噴射して被処理物1を冷却することにより被処理物1の加熱を終了させる機能を有している。冷却水噴出装置7は、たとえば図示しない冷却水流路を介してポンプを備えた冷却水タンクに接続されており、第2のパソコン6から出力された加熱終了信号に基づきポンプを駆動させて外周面に設けられた冷却水噴出口から冷却水を噴出することができる構成を有している。さらに、第2のパソコン6は、加熱手段としての誘導コイル2にも接続されており、前述の加熱終了信号を誘導コイル2にも出力し、高周波加熱を終了させる機能を有している。なお、1台のパソコンで、第1のパソコン4と第2のパソコン6とを兼ねてもよい。
さらに、第2のパソコン6には、式(A)に基づいて被処理物1の加熱を終了すべきタイミングを決定するソフトウェアが格納されており、第2のパソコン6において当該ソフトウェアを実行することにより、被処理物1の加熱を終了すべきタイミングを決定するための焼戻時間tは式(A)に基づいて算出されることが可能となっている。
上述のような構成を有する本実施の形態の高周波焼戻設備を用いることにより、加熱温度制御手段により実際に測定された被処理物1の温度に基づき被処理物1の焼戻温度を制御することができるとともに、加熱時間制御手段により実際に測定された被処理物1の温度に基づき焼戻時間を制御することができる。その結果、被処理物1の加熱履歴を正確に把握することが可能となり、被処理物1に必要な加熱履歴を与えることにより、適正な焼戻を実施することができる。
さらに、本実施の形態の高周波焼戻設備では、第2のパソコン6において、被処理物1の加熱を終了すべきタイミングを決定するための焼戻時間tは上述の式(A)に基づいて算出されるため、実際に熱処理を実施して得られた被処理物1の硬さなどの調査を行なうことなく適正な焼戻を実施することが可能である。その結果、本実施の形態の高周波焼戻設備は、焼戻の条件決定が容易で、かつ被処理物1の品質を安定させることが可能な高周波焼戻設備となっている。
また、本実施の形態の高周波焼戻設備においては、第2の放射温度計5を複数個含んでいることが好ましい。これにより、加熱時に被処理物1において温度のムラが生じた場合でも、被処理物1の複数の部位の温度に基づき焼戻時間を決定することができるため、被処理物1の品質を一層安定させることができる。
さらに、上記複数の第2の放射温度計5には、被処理物1の形状などを考慮して、最も温度が高くなる部位の温度を測定可能なように配置されている第2の放射温度計5と、最も温度が低くなる部位の温度を測定可能なように配置されている第2の放射温度計5とが含まれていることが好ましい。
これにより、被処理物1において最も温度が高くなる部位と最も温度が低くなる部位との両方が所望の焼戻状態となるように焼戻時間を決定することで、被処理物1の品質を一層安定させることができる。
また、第1の放射温度計3は第2の放射温度計5を兼ねてもよい。これにより、第1の放射温度計3から出力される温度データを加熱温度の調節だけでなく、加熱時間の調節にも利用することができる。
なお、本実施の形態の誘導コイル2の形状及び電源の周波数には特に制約はなく、被処理物1を焼戻温度まで加熱できるものであればよい。また、本実施の形態では、加熱温度制御用測温手段および加熱時間制御用測温手段として、第1の放射温度計3および第2の放射温度計5を用いる場合について説明したが、本発明の加熱温度制御用測温手段および加熱時間制御用測温手段はこれに限られず、高周波焼戻装置のレイアウト上、可能であるならば、熱電対などの接触式温度計を用いることもできる。
次に、上述の本実施の形態の高周波焼戻装置を用いた、本発明の高周波焼戻方法の一実施の形態である高周波焼戻方法について説明する。図2は、本実施の形態における高周波焼戻方法の概略を示す図である。図1および図2を参照して、本実施の形態の高周波焼戻方法について説明する。
図1および図2を参照して、本実施の形態の高周波焼戻方法は、被処理物を高周波加熱により加熱して焼戻す高周波焼戻方法であって、図2に示すように被処理物の加熱温度を調節する加熱温度制御工程と、被処理物の加熱時間を調節する加熱時間制御工程とを備えている。
図1および図2を参照して、加熱温度制御工程では、まず加熱温度制御用測温工程において、被処理物1の温度が第1の放射温度計3により測定されて温度データが出力される。そして、加熱温度調節工程において、当該温度データに基づき、第1のパソコン4により、たとえばPID温度制御を用いて被処理物1の加熱温度を調節するための加熱温度制御信号が出力される。さらに、加熱工程において、当該加熱温度制御信号に基づき、誘導コイル2により被処理物1が高周波加熱により加熱される。
一方、加熱時間制御工程では、まず加熱時間制御用測温工程において、第2の放射温度計5により被処理物1の温度が測定されて温度データが出力される。そして、加熱時間調節工程において、当該温度データに基づき、第2のパソコン6により被処理物の加熱を終了すべきタイミングが決定されて加熱終了信号が出力される。この加熱を終了すべきタイミングの決定方法の詳細に関しては、後述する。さらに、加熱終了工程において、当該加熱終了信号に基づき誘導コイル2による高周波加熱が終了されるとともに冷却水噴出装置7から被処理物1に対して冷却水が噴射されることにより被処理物1が冷却され、被処理物1の加熱が終了される。
次に、加熱時間調節工程における加熱を終了すべきタイミングの決定方法の詳細について、被処理物1がJIS規格SUJ2製の転がり軸受6206型番外輪である場合について説明する。この被処理物1(外輪1)は、雰囲気炉(RXガス雰囲気)を用いて850℃に加熱された後急冷されることにより焼入されたものであり、強度および靭性の観点から焼戻処理終了後の硬度の規格は58HRC以上62HRC以下と設定する。
上記硬度の規格を満たすために必要な焼戻温度および焼戻時間は式(A)から算出することができる。
H=a・log(t)+b・(1/T)+c・・・(A)
H:被処理物の硬度、t:焼戻時間、T:被処理物の温度、a、b、c:定数
ここで、式(A)中の定数a、bおよびcは材料ごと決まる定数であり、実験的に求めることができる。たとえばJIS規格SUJ2について定数a、bおよびcを求める場合、焼入硬化処理が実施されたSUJ2製の試験片を準備し、所定温度のもとで所定時間保持することにより、焼戻を実施し、焼戻後の試験片の硬度を測定する。具体的には、SUJ2製の製品の焼戻において実用的な温度である150℃〜300℃および実用的な保持時間である2分間〜90分間のそれぞれについて各5水準の条件で焼戻を実施し、焼戻後の試験片の硬度を測定する。そして、得られた結果を式(A)にあてはめ、重回帰分析することにより、定数a、bおよびcを決定することができる。また、定数a、bおよびcは上述のように材料により決まる定数であるため、材料ごとに定数a、bおよびcを求めておくことにより、種々の材料からなる被処理物の焼戻に対して、式(A)を適用し、本発明を実施することが可能である。
H:被処理物の硬度、t:焼戻時間、T:被処理物の温度、a、b、c:定数
ここで、式(A)中の定数a、bおよびcは材料ごと決まる定数であり、実験的に求めることができる。たとえばJIS規格SUJ2について定数a、bおよびcを求める場合、焼入硬化処理が実施されたSUJ2製の試験片を準備し、所定温度のもとで所定時間保持することにより、焼戻を実施し、焼戻後の試験片の硬度を測定する。具体的には、SUJ2製の製品の焼戻において実用的な温度である150℃〜300℃および実用的な保持時間である2分間〜90分間のそれぞれについて各5水準の条件で焼戻を実施し、焼戻後の試験片の硬度を測定する。そして、得られた結果を式(A)にあてはめ、重回帰分析することにより、定数a、bおよびcを決定することができる。また、定数a、bおよびcは上述のように材料により決まる定数であるため、材料ごとに定数a、bおよびcを求めておくことにより、種々の材料からなる被処理物の焼戻に対して、式(A)を適用し、本発明を実施することが可能である。
以下、加熱時間調節工程における加熱を終了すべきタイミングの決定方法を具体的に説明する。図3は、焼戻処理後に外輪1が硬度の規格を満たすために必要な焼戻温度Tと焼戻時間tとの関係を示す条件線図である。図3において、横軸は焼戻温度(℃)、縦軸は焼戻時間(秒)を示している。また、領域Aは焼戻後の外輪1の硬度が62HRC以上の範囲であり、領域Bは58HRC以下の範囲であり、領域Cが58〜62HRCの範囲である。また、図4は、焼戻後の被処理物の硬度の値を温度推移から積算する方法を説明するための図である。図4の上段左のグラフにおいては横軸を時間t、縦軸を温度Tとして温度推移が示されている。また、上段右の図は上段左のグラフの領域αの部分を拡大して示した図である。また、下段には焼戻後の外輪1の硬度Hを温度推移から積算するための計算式が示されている。図3および図4を参照して、加熱時間調節工程における加熱を終了すべきタイミングの決定方法を具体的に説明する。
上述のように、定数a、bおよびcを求めて式(A)を確定することにより、図3に示すような焼戻温度Tと焼戻時間tとの関係を示す条件線図を作製することができる。焼戻条件は、図3からおおよそ求めることができ、焼戻温度が高温になるほど短時間での焼戻が可能になる。このため、焼戻温度を高くすることが、熱処理時間の低減という観点からは望ましい。しかし、温度ムラによる焼戻ムラが発生しやすくなると考えられるので、焼戻温度は、熱処理時間と焼戻ムラとの兼ね合いを考慮して決定される。
焼戻温度が決定されると、図1に示す第1のパソコン4に加熱パターンが入力され、第1の放射温度計3から出力されたの温度データに基づき、PID制御により温度制御信号が高周波電源を含む誘導コイル2に出力され、外輪1の加熱温度が制御される。このとき同時に、第2の放射温度計5から出力された温度データに基づき、式(A)が用いられて、第2のパソコン6において加熱を終了すべきタイミングが決定される。
ここで、第2の放射温度計5からの温度データは刻一刻と変化するので、H(焼戻後の硬度)の値は図4に示すように微小時間Δtごとに積算されることが望ましい。そして、硬度Hが58HRC以上62HRC以下の所望の値となった時点で、第2のパソコン6から加熱終了信号が出力され、誘導コイル2による外輪1の加熱が終了されるとともに、冷却水噴出装置7から外輪1に対して冷却水が噴射されることにより外輪1が冷却され、焼戻が終了する。
本実施の形態の高周波焼戻方法によれば、被処理物である外輪1の加熱履歴を正確に把握することが可能であり、外輪1に必要な加熱履歴を与えることにより、適正な焼戻を実施することができる。さらに、本実施の形態の高周波焼戻方法では、被処理物の加熱を終了すべきタイミングを決定するための焼戻時間tは上述の式(A)に基づいて算出されるため、焼戻の条件決定が容易で、かつ被処理物の品質を安定させることができる。
以上のように、本発明の一実施の形態である高周波焼戻設備を用いて、本発明の一実施の形態である高周波焼戻方法が実施され、被処理物である外輪1は本発明の一実施の形態である高周波焼戻製品となる。
本実施の形態の高周波焼戻製品である外輪1は、焼戻の条件決定が容易であるため製造コストが低減され、かつ温度制御による焼戻が実施されているため品質が安定している。
なお、本実施の形態においては、本発明の高周波焼戻製品の一例として、JIS規格SUJ2製の転がり軸受6206型番外輪について説明したが、本発明の高周波焼戻製品はこれに限られない。すなわち、前述のように材料ごとに定数a、bおよびcを求めておくことにより、種々の材料からなる被処理物の焼戻に対して式(A)を適用して焼戻を実施し、種々の材料からなる本発明の高周波焼戻製品を提供することができる。
以下、本発明の実施例について説明する。本発明の高周波焼戻方法および高周波焼戻装置において、熱処理条件(焼戻条件)を変化させた場合の、焼戻後の被処理物の品質を確認する実験を行なった。以下、実験の手順を説明する。図1に示す高周波焼戻設備を使用して、JIS規格SUJ2製6206型番外輪を被処理物とし、本発明の高周波焼戻方法を実施した。ただし、図1の第1の放射温度計3と第2の放射温度計5とは1つの放射温度計で両者を兼用した。焼戻の際の昇温速度は100℃/秒、焼戻時の最高到達温度は240℃〜300℃、電源の周波数は80kHzとし、焼戻後の被処理物の硬度の目標値を60HRCとして実験を実施した。表1に実験の結果を示す。
上記実験結果から、本発明の高周波焼戻方法および高周波焼戻設備によれば、焼戻の条件決定が容易で、かつ被処理物の品質を安定させることが可能な高周波焼戻方法および高周波焼戻設備を提供することができることが確認された。さらに、上記実験結果から、本発明の高周波焼戻製品によれば、製造コストが低減され、かつ品質の安定した高周波焼戻製品を提供することができることが確認された。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明の高周波焼戻方法、高周波焼戻設備および高周波焼戻製品は、被処理物を高周波加熱により加熱して焼戻す高周波焼戻方法、高周波焼戻装置および高周波加熱により加熱されて焼戻された高周波焼戻製品に特に有利に適用され得る。
1 被処理物(外輪)、2 誘導コイル、3 第1の放射温度計、4 第1のパソコン、5 第2の放射温度計、6 第2のパソコン、7 冷却水噴出装置。
Claims (4)
- 被処理物を高周波加熱により加熱して焼戻す高周波焼戻方法であって、
前記被処理物の加熱温度を調節する加熱温度制御工程と、
前記被処理物の加熱時間を調節する加熱時間制御工程とを備え、
前記加熱温度制御工程は、
前記被処理物の温度を測定し、温度データを出力する加熱温度制御用測温工程と、
前記加熱温度制御用測温工程において出力された前記温度データに基づき、前記被処理物の加熱温度を調節するための加熱温度制御信号を出力する加熱温度調節工程と、
前記加熱温度調節工程において出力された前記加熱温度制御信号に基づき、前記被処理物を高周波加熱により加熱する加熱工程とを含み、
前記加熱時間制御工程は、
前記被処理物の温度を測定し、温度データを出力する加熱時間制御用測温工程と、
前記加熱時間制御用測温工程において出力された前記温度データに基づき、前記被処理物の加熱を終了すべきタイミングを決定して加熱終了信号を出力する加熱時間調節工程と、
前記加熱時間調節工程において出力された前記加熱終了信号に基づき、前記被処理物の加熱を終了する加熱終了工程とを含み、
前記加熱時間調節工程において、前記被処理物の加熱を終了すべきタイミングを決定するための焼戻時間tは以下の式
H=a・log(t)+b・(1/T)+c
H:被処理物の硬度、t:焼戻時間、T:被処理物の温度、a、b、c:定数
に基づいて算出されることを特徴とする、高周波焼戻方法。 - 被処理物を高周波加熱により加熱して焼戻すための高周波焼戻設備であって、
前記被処理物の加熱温度を調節するための加熱温度制御手段と、
前記被処理物の加熱時間を調節するための加熱時間制御手段とを備え、
前記加熱温度制御手段は、
前記被処理物の温度を測定し、温度データを出力する加熱温度制御用測温手段と、
前記加熱温度制御用測温手段に接続され、前記加熱温度制御用測温手段から出力された前記温度データに基づき、前記被処理物の加熱温度を調節するための加熱温度制御信号を出力する加熱温度調節手段と、
前記加熱温度調節手段に接続され、前記加熱温度調節手段から出力された前記加熱温度制御信号に基づき、前記被処理物を高周波加熱により加熱する加熱手段とを含み、
前記加熱時間制御手段は、
前記被処理物の温度を測定し、温度データを出力する加熱時間制御用測温手段と、
前記加熱時間制御用測温手段に接続され、前記加熱時間制御用測温手段から出力された前記温度データに基づき、前記被処理物の加熱を終了すべきタイミングを決定して加熱終了信号を出力する加熱時間調節手段と、
前記加熱時間調節手段に接続され、前記加熱時間調節手段から出力された前記加熱終了信号に基づき、前記被処理物の加熱を終了させる加熱終了手段とを含み、
前記加熱時間調節手段において、前記被処理物の加熱を終了すべきタイミングを決定するための焼戻時間tが以下の式
H=a・log(t)+b・(1/T)+c
H:被処理物の硬度、t:焼戻時間、T:被処理物の温度、a、b、c:定数
に基づいて算出されることを特徴とする、高周波焼戻設備。 - 前記加熱時間制御用測温手段を複数個含む、請求項2に記載の高周波焼戻設備。
- 請求項2または3のいずれか1項に記載の高周波焼戻設備を用い、請求項1に記載の高周波焼戻方法で焼戻が実施された高周波焼戻製品。
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