JP2009057211A - 吸着ロール - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 ロールのウェブを吸着する部分を、筒状多孔室セラミックス焼結体とし、ロール内部を負圧とすることにより、前期課題を解決した。ウェブの前面を均等に吸着できるために、吸着、搬送案内するさいの印刷、塗布、検査などの処理が、ウェブに対して均等に行うことができ、また処理中の面粗度も低いため、ウェブに処理中にウェブ表面の凹凸による不具合が出にくくなる。
【選択図】 図2
Description
近年、前記処理の精度、均一性は大幅な改善が求められている。先行文献に示されている技術では、ウェブを吸着されている面と考えた場合に、その中でのロール材質の違いや、スルーホール部分の存在により、ウェブが均一に吸着され、搬送案内や各種処理をすることは難しく、従来技術ではいずれも解決することができない。
本発明が解決しようとする課題は、吸着ロールを改善することにより、ウェブの吸着、搬送案内、処理において、ウェブを極めて均一に平滑性を保った状態とすることである。
請求項1に記載の本発明はロール内部を大気圧以下に減圧することによりロール表面で帯状のウェブを吸着して搬送案内する吸着ロールであって、少なくとも帯状のウェブと接する部分が筒状多孔質セラミック焼結体からなる吸着ロールである。ウェブと接する部分が筒状多孔質セラミック焼結体であり、ウェブと接する微細気孔のすべてから均等に吸着ができるために、送り中のウェブを均一な状態で送ることが可能になる。このことは、一部を多孔体で製作したロールや、スルーホールタイプの吸着ロールでは不可能であった。また、セラミック質であるために、長期に渡る使用でも磨耗や腐食の影響がほとんどない。さらに、高温中の用途でもセラミックスは耐熱性に優れるために好適する。
請求項8に記載の本発明は補強体の熱膨張係数と筒状多孔質セラミック焼結体の熱膨張係数との差が1.0×106(K−1)以下である請求項6か請求項7のいずれかに記載の吸着ロールである。使用温度が常温でない場合や、環境によって変化する場合、筒状多孔質セラミック焼結体と補強体はその熱膨張係数の差によっては、接合が外れたり、応力により破壊したりする。本発明のように熱膨張係数の差を1×10−6(K−1)以下と小さい組合せにすることにより、これらの不具合は起こりにくくなる。
例としては、たとえば筒状多孔質セラミック焼結体が微細で連通した開気孔を持つアルミナセラミックスと、補強体である緻密なアルミナセラミックスと組み合わせたり、筒状多孔質セラミック焼結体を微細な気孔を有する炭化珪素セラミックスとし、補強体が比較的大きな連通した気孔を有する多孔質炭化珪素セラミックスという組み合わせなども可能である。
請求項10に記載の本発明は、請求項6に記載の一体に接合する方法が、ガラス系または有機物系いずれかの接着剤にて接着されていることを特徴とする請求項6から請求項9のいずれかに記載の吸着ロールである。筒状多孔質セラミック焼結体と補強体とを一体とするには、焼きばめ、冷やしばめ、一体焼結、拡散接合などの手段が取れるが、最も適しているのはガラス系、セラミック系または有機物系の接着剤を使った一体化である。他の方法と比較して、一体化工程での失敗が少なく、費用面や製造のしやすさでも最も好ましい。また、使用上では使用温度がたとえば200℃と高い場合でも、ガラス系の接着剤や高温まで使用できる有機物系の接着剤であれば使用することができる。
1.吸着した部分のウェブ全体を均一に吸着することができる。そのために、ウェブに皺が生じたり、変形するといった問題が解決できる。また、吸着するウェブがロールの表面をすべて覆う必要がなく、ウェブ形状や吸着形態の自由度が高い。
2.従来の多孔質セラミックを用いた吸着ロールなどと比較して、吸着ロール表面の面粗さを低くすることができる。そのため、吸着面の凹凸(面粗度)が、ウェブに転写される現象を、小さく抑えることができる。
3.前記1及び2の特徴より、ウェブの吸着、送りの際に変形が無く、面粗度もよく均一な吸着ができる。そのために、吸着、搬送案内の際に印刷、光学的な検査、塗布、転写などの処理を高品位にて行なうことができる。
まず、吸着部および補強体以外の端部5は、図3を用いて説明するが、鉄材をはじめとする金属材料やセラミック材料にて製作することができる。その際には図4のように両端が一体化している構造も含めて、一般的な形態で製作すればよい。
ロールの内部を負圧とすることに関しては、従来用いられている一般的な方法をいずれも用いることができる。代表的な形態としては図3〜図6に示すように、ロールの中心部付近の空孔部分から、ロールの端部の任意の位置に、真空ポンプなどの減圧装置で内部の気体が移動できる状態に設ければよい。
次に、プレス体に中間加工を施した後、脱脂、焼結を行なう。脱脂は前記成型用バインダーを除去するためであり、脱脂だけを行なってその後に焼結を行なっても、脱脂と焼結を連続的に行なってもどちらでもかまわない。そのセラミック材料に合わせた焼結温度で焼結を行なう。
得られた焼結体を、所望の形状、寸法となるように機械加工を行なう。外径、内径、端部と大きく分けて3箇所の加工が必要となるが、これらは円筒研削盤、内面研削盤、平面研削盤、マシニングセンタなど各種の加工機械にて行なう。この際に、外形は所望の寸法より若干大きめに仕上げておく。
次に、別に準備したロール端部の部材と、筒状多孔質セラミック焼結体を一体化する。このロール端部の部材は、負圧を生じさせる真空ポンプなどとロール中央部を接続するための部分を少なくとも一箇所含む。一体化にはどのような方法も取れるが、筒状多孔質セラミック焼結体端部およびその周辺を接着剤による固定を行なうか、またはボルトなどを使って機械的に固定してもよい。
1.筒状多孔質セラミック焼結体の製造
原料粉末として0.25%のマグネシア成分を含むアルミナ粉末を2種用意した。それぞれの平均粒子径は(a)2μmと(b)0.3μmである。
2. ロールの端部
前記1.とは別に図3の5に示すように、クロムモリブデン鋼でロールの端部の部材を準備した。部材には一箇所の真空引き用の穴6を設けた。
3. 組み立て
前記1.及び2.にて準備した筒状多孔質セラミック焼結体1およびロール端部の部材5をエポキシ系の接着剤にて、筒状多孔質セラミック焼結体の端部をロール端部の部材に接着した後に1日間乾燥させた。両者は強固に一体化しており、模式図3に示す吸着ロールを得た。この後、一体化した状態で円筒研削盤にて筒状多孔質セラミック焼結体の外周部を仕上げ研削し、本発明の吸着ロールを得た。この吸着ロールをNo.1とした。
(実施例2)
吸着ロールの半径及び、筒状多孔質セラミック焼結体の厚さを以下の表1に示すよう設定し、ロールを得た。筒状多孔質セラミック焼結体の材質はすべてアルミナ−20質量%炭化チタンとした。いずれも気孔率は40%、平均気孔径は2μmである。
表1の結果に示すように、ロールの半径と筒状多孔質セラミック焼結体の厚さの比が10以上であるロールNo.2、No.3、No.4、No.6、No.7は良好な吸着力が得られた。
(実施例3)
本発明の、筒状多孔質セラミック焼結体を気孔率が15%で外周表面の開気孔の平均気孔径が0.4μmである窒化珪素とした吸着ロールを製作した。筒状多孔質セラミック焼結体のウェブを吸着する部分の面粗さを加工時の砥石の番手などを変えることによって表2に示すよう、それぞれに変えて試験を行なった。この吸着ロールにて、ポリエチレン系で厚さ10μmのウェブを吸着、送り中に図9に示すような形態でスクリーン印刷処理を行なった。棒状の塗布工具10は、先端から速乾性のスラリー11がウェブの幅方向に対して均等に出てくるようにしてある。
本発明の吸着ロールで請求項3の条件を満たすものは、極めて微小な面の状態を制御したい場合に特に有効であった。ただし、一般的な精度の塗布や印刷の場合は試料No.28、No.29程度でも使用に問題ない場合が多い。
(実施例4)
実施例1では0.25%のマグネシア成分を含むアルミナを筒状多孔質セラミック焼結体として用いたが、請求項5に示すいずれのセラミック材料(アルミナ、ジルコニア、シリカ、炭化珪素、イットリア、マグネシア、炭化チタン、窒化チタン、炭化タングステン)でも、気孔の状態を制御することにより同様の吸着ロールを得ることができた。
(実施例5)
アルミナ基の筒状多孔質セラミック焼結体1の厚さを1mmとし、その内面側に補強体2を一体に接合した吸着ロールを製作した。アルミナ基の筒状多孔質セラミック焼結体1の気孔率は30%、平均気孔径は1.0μmである。この模式図を図1に示す。
補強体2として用いたのは円筒状の緻密質(密度99%)のアルミナ焼結体であり、その外形は筒状多孔質セラミック焼結体1の内径より20μm小さくした。この円筒状の補強体の外周にあたる部分は、一部を除いて研削にて削り取り、各角に円弧が残った5角筒形状とし、さらに内面からの減圧を筒状多孔質セラミック焼結体に伝達できるように、内面から外面まで複数のスリット13を設けた。この補強体の5つの円弧12にそれぞれに有機接着剤を塗布し、筒状多孔質セラミック焼結体1の内面に接着し、乾燥した。
一体化したものに、焼入れ鋼製の端部をさらに接着することにより、補強体を有する吸着ロールを得た。
補強体を有する吸着ロールの利点を以下に示す。
1.補強体により補強されているために、吸着ロールに生じるたわみなどの変形が少ない。そのために、吸着ロールが長い場合でも、たわみを最小限に抑えることができる。また、補強があるために、更なる吸着力を必要とする場合などは、筒状多孔質セラミック焼結体を薄くすることも可能となる。
2.補強体と筒状多孔質セラミック焼結体の熱膨張係数が小さいために、温度変化などによる変形や破壊が起こらない。本実施例では筒状多孔質セラミック焼結体の熱膨張係数は7.5×10−6(K−1)であり、補強体のそれは7.4×10−6(K−1)とほぼ同じであった。そのために、吸着ロールの焼入れ鋼端部が温度変化により収縮するのを妨げ、熱膨張差によって生じる変形や筒状多孔質セラミック焼結体の割れを大幅に緩和することができる。逆に熱膨張差が1.0×10−6(K−1)以上と大きくなれば、補強体と筒状多孔質セラミック焼結体の熱膨張差により、両者の分離や、筒状多孔質セラミック焼結体の割れなどにつながるために、熱膨張差は1.0×10−6(K−1)以下がより望ましい。
3.補強体は緻密質のセラミックスも用いることができるために、曲げやねじれなどの応力から筒状多孔質セラミック焼結体を保護するのが容易になる。
(実施例6)
実施例5と同様に、アルミナ基の筒状多孔質セラミック焼結体1の厚さを1mmとし、その内面側に補強体2を一体に接合した吸着ロールを製作した。アルミナ基の筒状多孔質セラミック焼結体1の気孔率は30%、平均気孔径は1.0μmである。
この場合の補強体は円筒状の多孔質アルミナ焼結体22であり、この模式図を図10に示す。補強体の気孔率は50%で、平均気孔径は10μmであった。補強体のほうが気孔率、平均気孔径ともに高い。補強体内部の3より減圧を行なうことにより、筒状多孔質セラミック焼結体1は表面にウェブを良好に吸着することができた。
この場合は、緻密質セラミックスを用いた場合と異なり、外形の一部を削り取ることや、溝入れも省くことができる。
2 補強体
3 ロール内部の空間
4 円筒状の補強体を削った部分
5 ロール端部
6 真空引き経路
7 ウェブの進行方向を変えるローラー
8 印刷用ロール
9 ウェブ
10 塗布工具
11 塗布されるスラリー
12 接着部
13 真空引き経路となるスリット
14 リング状のスリット(6と常時連通している)
15 印刷されたウェブの部分
22 補強体(多孔質セラミックス)
100 吸着ロール全体
A ウェブを処理する機構が設置される場所
Claims (11)
- ロール内部を大気圧以下に減圧することによりロール表面で帯状のウェブを吸着して搬送案内する吸着ロールであって、
少なくとも帯状のウェブと接する部分が筒状多孔質セラミック焼結体からなる吸着ロール。 - ロールの半径と筒状多孔質セラミック焼結体の厚さの比が10以上であり、かつ、筒状多孔質セラミック焼結体の厚さが0.5mm以上である請求項1に記載の吸着ロール。
- 筒状多孔質セラミック焼結体の少なくともウェブと接する部分の面粗さが、算術平均粗さRaが1.5μm以下かつ最大高さRzが15μm以下である請求項1または請求項2に記載の吸着ロール。
- 筒状多孔質セラミック焼結体の少なくともウェブと接する外周部の平均気孔径が2μm以下(0は含まず)で気孔率が15〜40%であり、気孔により少なくとも外周面と内周面で通気可能である請求項1から請求項3のいずれかに記載の吸着ロール。
- 筒状多孔質セラミック焼結体の材質がアルミナ、ジルコニア、シリカ、炭化珪素、イットリア、マグネシア、炭化チタン、窒化チタン、炭化チタン、炭化タングステン、窒化珪素、窒化アルミのいずれか1種または2種以上を基とするセラミックスである請求項1から請求項4のいずれかに記載の吸着ロール。
- 筒状多孔質セラミック焼結体の筒内に、略円筒状の補強体が嵌合され、筒状多孔質セラミック焼結体の内周部と補強体の外周部とが一体に接合されている請求項1から請求項5のいずれかに記載の吸着ロール。
- 補強体の材質が筒状多孔質セラミック焼結体よりも気孔率または平均気孔径の少なくとも一方、もしくは両方が高い多孔質セラミック焼結体からなる請求項6に記載の吸着ロール。
- 補強体の熱膨張係数と筒状多孔質セラミック焼結体の熱膨張係数との差が1.0×10−6(K−1)以下である請求項6か請求項7のいずれかに記載の吸着ロール。
- 補強体の材質が筒状多孔質セラミック焼結体と同種のセラミックスを基とすることを特徴とする請求項6から請求項8のいずれかに記載の吸着ロール。
- 請求項6に記載の一体に接合する方法が、ガラス系または有機物系いずれかの接着剤にて接着されていることを特徴とする請求項6から請求項9のいずれかに記載の吸着ロール。
- 補強体の形状が、円筒形状の一部を削り取った形状であり、その削り取った部分の少なくとも一部が、ロール内部の減圧を筒状多孔質セラミック焼結体のウェブと接する部分に及ぼし吸着する経路の一部である請求項6から請求項10のいずれかに記載の吸着ロール。
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