ところで、緊急度が高いほど車両に「より大きな力」を発生させなくては障害物との衝突を回避することができない。このような「運転者による運転操作」に伴って「車両の障害物との衝突を回避しやすくする(回避する)ための力」を「その車両に発生させる」ように「運転者の操作を補助することにより同車両に衝突回避運動を生じさせる電気負荷装置(例えば、電動式パワーステアリング装置、ギア比可変ステアリング及び電気制御ブレーキ等であって、以下「第1電気負荷装置」とも称呼する。)」は、車両に発生させる力の大きさが大きいほど、より大きな電力を必要とする。即ち、緊急度が高く、従って、衝突を回避するために短時間に大きな衝突回避操作が必要な場合、「衝突を回避しやすくするための力」を車両に発生させる電気負荷装置には大電力が必要である。更に、緊急度が高いときには、運転者は例えば短時間に大きな操舵とともに急制動を行うことが多い。その結果、電動式パワーステアリング装置、ギア比可変ステアリング及び電気制御ブレーキ等の複数の電気負荷装置が同時に作動させられる。よって、緊急度が高いとき、複数の電気負荷装置に電力を供給しているバッテリには「大きな電力を供給すること」が要求される場合が多い。
加えて、衝突回避操作が行われる場合、車両の挙動は不安定になり易い。そのため、緊急度が高い場合には、車両の挙動を安定させることにより衝突回避操作に伴う車両の衝突回避運動を補助する制御が行われることが多い。このような衝突回避運動を補助する制御は、車両運動性能に影響を与える車両特性因子を切換える電気負荷装置(例えば、減衰力可変式サスペンション装置及び剛性可変式スタビライザ装置等であって、以下「第2電気負荷装置」とも称呼する。)により行われる。この結果、緊急度が高い場合には第1電気負荷装置と第2電気負荷装置とが同時に作動させられるので、更に多くの電力が必要とされる。
しかしながら、バッテリは劣化するにしたがって大きくなる内部抵抗を不可避的に有するので、劣化したバッテリを用いて電気負荷装置に大きな電流を流そうとすると、バッテリ自体に流れる大電流によりバッテリでの電圧降下が非常に大きくなる。特に、上述したように、複数の電気負荷装置が同時に作動される場合、バッテリでの電圧降下は極めて大きくなる。その結果、バッテリが劣化している場合、電気負荷装置に大電流を流し得るような大きな電圧が電気負荷装置に加わらない場合がある。
一方、前述したように、単数の電気負荷装置に大きな電流を流す必要が生じた場合、又は、複数の電気負荷装置のそれぞれに比較的大きな電流を流す必要が生じた場合、バッテリに流れる電流も大きくなる。そのため、バッテリの内部抵抗が極端に大きくない場合(バッテリが劣化していない場合)であっても、バッテリの内部抵抗による電圧降下は大きくなる。従って、バッテリの電圧(発生電圧)が低下している場合には、各電気負荷装置に加わる電圧が各電気負荷装置が必要とする電圧以下になってしまう場合がある。他方、バッテリの残量(バッテリが放電しきるまでに同バッテリが供給し得る総電力量)が低下している場合、単数の電気負荷装置が単独で大電流を必要としたり、或は、複数の電気負荷装置が同時に比較的大きな電流を必要とすると、その時点において大きな電力が一気に消費されるので、バッテリの放電が急速に進行してバッテリが必要な電圧を発生できなくなる場合がある。
以上のことから、特に、緊急度が大きくなった時点において、「バッテリが劣化している(内部抵抗が大きくなっている)」、「バッテリの電圧が低下している」及び「バッテリの残量が低下している」等、バッテリの能力(バッテリの電力を供給する能力)が小さいと、電気負荷装置に十分な電圧が印加されないために電気負荷装置に流れる電流が不足し、その電気負荷装置が運転者の操作を補助することにより車両に発生させる「障害物との衝突を回避しやすくするための力」が減少してしまう場合が生じる。
本発明による車両の制御装置は、上記課題に鑑みてなされたものであって、第1電気負荷装置、警報装置、指標値取得手段及び第1制御手段、を備える。
前記第1電気負荷装置は、「運転者による運転操作」に伴って「車両に搭載されたバッテリから電力が供給され」、「車両の障害物との衝突を回避しやすくするための力」を同車両に発生させるように「同運転者の操作を補助する」ことにより同車両に衝突回避運動を生じさせるようになっている。「車両の障害物との衝突を回避しやすくするための力」を車両に発生させるとは、そのような力を車両に付与することである。この場合、第1電気負荷装置は、電流が流れることにより機械的動力を発生する電気的駆動装置(例えば、電動式パワーステアリング装置、ギア比可変ステアリング及び電気制御ブレーキ)であって、運転者の操作を補助することにより、障害物との衝突を回避する「衝突回避運動」を車両に発生させる際に作動される電気負荷装置である。
前記警報装置は、例えば、音、光及び振動等により乗員に警報を発生する装置である。
前記指標値取得手段は、前記車両が前記障害物との衝突を回避するための緊急の度合い(衝突回避操作を開始すべき緊急度又は衝突回避操作を開始すべき必要度)を表す緊急度指標値を取得するようになっている。この場合、前記緊急度指標値は、例えば、車両(自車両)と障害物(例えば、先行車等)との間の距離が小さいほど及び/又は車両と障害物とが接近する際の相対速度(即ち、接近速度)が大きいほど、大きくなるように取得され得る。
前記第1制御手段は、前記緊急度指標値が第1所定値より大きくなった場合、前記警報装置を作動させるようになっている。
更に、前記第1制御手段は、バッテリ能力取得手段と、所定値設定手段と、を含む。
前記バッテリ能力取得手段は、前記バッテリの「電力を供給する能力」であるバッテリ能力を取得するようになっている。バッテリ能力は、バッテリが所定の要求電力を供給し得る能力(電力を供給する能力に関する値)であり、「バッテリの電力供給能力」とも称呼される。即ち、バッテリ能力は、「単数」又は「バッテリに対して並列接続された複数」の電気負荷装置に、各電気負荷装置が必要とする電圧(動作保証可能最低電圧)以上の電圧をその電気負荷装置に印加しながら、その電気負荷装置が要求する電流を流すことができる時間」と実質的に等価であると言うことができる。従って、上述したように、「バッテリの劣化が進行している(内部抵抗が所定値よりも大きくなっている)」、「バッテリの電圧が所定電圧よりも低下している」及び「バッテリの残量が所定残量よりも低下している」等の各場合は、「バッテリ能力」が所定値より「小さい」場合に含まれる。このバッテリ能力は、例えば、
(1)エンジン始動前におけるバッテリの電圧を検出し、その検出したバッテリの電圧が小さいときは大きいときよりも小さい値として取得されてもよく、
(2)これまでのバッテリの電圧履歴に基づいてバッテリの電圧が低電圧であった履歴(低電圧であった頻度)が多いときは少ないときよりも(バッテリの劣化が進行していると考えられるから)小さい値として取得されてもよく、
(3)バッテリの残量(充電総量、即ち、放電し得る電力の総量)を検出し、その検出した残量が少ないときは多いときよりも小さい値として取得されてもよく、
(4)実際のバッテリの性状(例えば、バッテリの内部抵抗の抵抗値及び電解液濃度等のバッテリの状態を表すバッテリ状態量)に基いて取得されてもよい。
前記所定値設定手段は、前記取得されたバッテリ能力が小さいときは同バッテリ能力が大きいときよりも前記第1所定値を小さい値に設定するようになっている。
これによれば、バッテリ能力が小さいときは同バッテリ能力が大きいときよりも、警報装置を作動させる閾値である第1所定値が小さくなるので、車両の乗員に対して緊急度が低い段階で警報が発生されることになる。この結果、運転者は、バッテリ能力が小さいときは大きいときよりも早い時点で警報を受けるので、緊急度が高くなってから警報を受ける場合に比較して穏やかな衝突回避操作を行うことができる。運転者により穏やかな衝突回避操作が行われた場合、第1電気負荷装置が「運転者の操作を補助する」ことにより「障害物との衝突を回避しやすくする」ために「車両に発生させる力」は、運転者により短時間に大きな衝突回避操作が行われた場合に比較して小さくなる。従って、第1電気負荷装置が必要とする電力(電流)も小さくなるので、バッテリに要求される電力(電流)も小さくなる。よって、バッテリの能力が低下していても「障害物との衝突を回避しやすくするための力」が減少(不足)することを回避することができる。
換言すると、衝突回避操作時に第1電気負荷装置に流れる電流を小さくすることができるので、バッテリでの電圧降下分が過大にならない。従って、第1電気負荷装置に印加される電圧が大きく低下することを回避することができる。その結果、第1電気負荷装置が「同装置に印加される電圧が閾値電圧(動作保証可能最低電圧)以下となった場合に機能を停止する」ように構成されている場合であっても、同装置に印加される電圧が同閾値電圧以下に低下しないので、第1電気負荷装置が機能を停止してしまうことを回避することができる。
一方、本発明による他の車両の制御装置は、上記課題に鑑みてなされたものであって、第1電気負荷装置、第2電気負荷装置、指標値取得手段及び第2制御手段、を備える。
前記第1電気負荷装置は、上述した第1電気負荷装置と同じ電気負荷装置であって、「運転者による運転操作」に伴って「車両に搭載されたバッテリ」から電力が供給され「同車両の障害物との衝突を回避しやすくするための力」を「同車両に発生させる」ように「同運転者の操作を補助する」ことにより「同車両に衝突回避運動」を生じさせるようになっている。
前記第2電気負荷装置は、前記バッテリから電力が供給されることにより「前記第1電気負荷装置によりもたらされる前記衝突回避運動」を補助するようになっている。この場合、第2電気負荷装置は、電流が流れることにより作動して、車両の運動特性(バネ上とバネ下との間の減衰力、バネ定数及び/又はロール剛性配分等)を切り換え、以って「車両の挙動を安定化」させることにより「衝突回避操作に伴う車両の衝突回避運動」を補助する電気負荷装置(例えば減衰力可変式サスペンション装置及び剛性可変式スタビライザ装置等)である。
前記指標値取得手段は、上述した指標値取得手段と同じであって、前記車両が前記障害物との衝突を回避するための緊急の度合いを表す緊急度指標値を取得するようになっている。
前記第2制御手段は、前記緊急度指標値が第2所定値より大きくなった場合、前記第2電気負荷装置を作動させるようになっている。
更に、前記第2制御手段は、バッテリ能力取得手段と、所定値設定手段と、を備える。
前記バッテリ能力取得手段は、前記バッテリの能力を上述のように取得するようになっている。
前記所定値設定手段は、前記取得されたバッテリ能力が小さいときはバッテリ能力が大きいときよりも前記第2所定値を小さい値に設定するようになっている。
これによれば、前記第2電気負荷装置が、バッテリ能力が小さいときはバッテリ能力が大きいときよりも早い時点で作動されることになる。この結果、実際に衝突回避運動を行うための力を車両に発生させるように「運転者による操作を補助する第1電気負荷装置」が作動する時点よりも早い時点において「同第1電気負荷装置による衝突回避運動を補助する第2電気負荷装置」が作動する可能性が高くなる。即ち、第1電気負荷装置が電力を必要とする時点と、第2電気負荷装置が電力を必要とする時点と、を異なる時点にすることができる。従って、第1電気負荷装置が電力を必要とする時点においてバッテリが要求される電流(総電流量)は、少なくとも第2電気負荷装置に流れる電流分だけ小さくなる可能性が高くなる。
この結果、各電気負荷装置には十分な電圧が印加される可能性が高くなるので、「障害物との衝突を回避しやすくするための力」が減少(不足)することを回避することができる。更に、第1電気負荷装置が作動を開始する前に第2電気負荷装置が作動させられているので、第1電気負荷装置が作動を開始した時点から車両の挙動を安定化させることができる。その結果、衝突回避が容易になるので第1電気負荷装置が必要とする電力(電流)を小さくすることも可能となる。従って、例えば、バッテリ残量が低いことによりバッテリ能力が低くなっている場合であっても、バッテリは第1電気負荷装置が必要とする電力を同第1電気負荷装置に供給することができる。
更に、上述したように、第1電気負荷装置が作動させられるときに第2電気負荷装置に流れる電流分だけバッテリに流れる電流を小さくすることができるので、バッテリでの電圧降下分が過大とならない。従って、第1電気負荷装置が作動させられるときに同第1電気負荷装置に印加させる電圧が大きく低下することを回避することができる。その結果、第1電気負荷装置が、同装置に印加される電圧が閾値電圧(動作保障可能最低電圧)以下となった場合に機能を停止するように構成されている場合であっても、同装置に印加される電圧が同閾値電圧以下に低下しないので、第1電気負荷装置が機能を停止してしまうことを回避することができる。
この車両の制御装置は、更に制御増大量設定手段を含むことが好適である。
前記制御増大量設定手段は、前記取得された緊急度指標値が第3所定値より大きくなったときは同緊急度指標値が同第3所定値以下のときよりも、前記第1電気負荷装置による運転者の操作の補助により前記車両に発生させられる「前記衝突を回避しやすくするための力」が所定増大量だけ大きくなるように同第1電気負荷装置を制御するようになっている。更にこの制御増大量設定手段は、前記取得されたバッテリ能力が小さいときは同バッテリ能力が大きいときよりも同所定増大量を小さい値に設定するようになっている。
これによれば、前記緊急度指標値が第3所定値より大きいときは第3所定値以下のときよりも、前記衝突回避運動をもたらすための前記車両に発生させられる力が所定増大量だけ大きい値に設定される。例えば、第1電気負荷装置が電動式パワーステアリング装置であった場合、前記緊急度指標値が第3所定値より大きいときは第3所定値以下のときよりも、同一の操舵に対して付与されるアシストトルクの大きさが所定増大量だけ大きい値に設定される。この結果、運転者はより容易に衝突回避操作を行うことができる。但し、このように制御を行うと、第1電気負荷装置はより多くの電力(電流)を必要とすることになる。
そこで、この制御装置は、前記所定増大量を、バッテリ能力が小さいときはバッテリ能力が大きいときよりも小さい値(所定増大量が0の場合も含む。)に設定する。この結果、バッテリ能力が小さいときはバッテリ能力が大きいときよりも、第1電気負荷装置が必要とする電力も小さくなるので、バッテリが要求される電流も小さくなる。従って、衝突回避操作時に第1電気負荷装置に流れる電流を小さくすることができるので、バッテリでの電圧降下分が過大とならない。その結果、第1電気負荷装置が作動させられるときに同第1電気負荷装置に印加させる電圧が大きく低下することを回避することができる。よって、第1電気負荷装置が、同装置に印加される電圧が閾値電圧(動作保証可能最低電圧)以下となった場合に機能を停止するように構成されている場合であっても、同装置に印加される電圧が同閾値電圧以下に低下しないので、第1電気負荷装置が機能を停止してしまうことを回避することができる。
以下、添付の図を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について説明する。
<第1実施形態>
図1は本発明の第1実施形態に係る車両の制御装置(以下、「第1装置」と称呼する。)を概略的に示している。第1装置は車両10に搭載されている。
車両10は、電力供給装置20、電動式パワーステアリング装置(以下、「EPS」と称呼する。)30、電動式ギア比可変ステアリング装置(以下、「VGRS」と称呼する。)40、減衰力可変式サスペンション装置(以下、「AVS」と称呼する。)50及び警報装置60、を備えている。
電力供給装置20は、バッテリ21、レギュレータ内蔵式オルタネータ22、導電線23a、23b、24、24a、24b、24c、及び、ヒューズ25、26、27を含んで構成されている。
バッテリ21は、正極端子(+端子)21aと負極端子(−端子)21bとを有し、正極端子21aと負極端子21bとの間に電位差を発生するようになっている。バッテリ21は、本例においては、定格電圧12Vの鉛バッテリである。バッテリ21の負極端子21bは接地されている(即ち、車体に電気的に接続されている。)。
オルタネータ22は第1端子22aと第2端子22bとを有している。オルタネータ22は、エンジンによって駆動されることにより発電する交流発電機、調圧器及び整流器(何れも図示を省略)を有し、第1端子22aと第2端子22bとの間に12Vの直流電圧を発生するようになっている。第1端子22aは導電線23a及び導電線23bを通してバッテリ21の正極端子21aと接続されている。第2端子22bは接地されている。
導電線24の一端は、導電線23aと導電線23bとの接続点Pに接続されている。これにより、導電線24はバッテリ21の正極端子21aに接続されている。
EPS30の一端(電力供給端子)31は、導電線24aにより導電線24に分岐点B1にて接続されている。EPS30の他端(接地端子)32は接地されている。これにより、EPS30の他端32はバッテリ21の負極端子21bと電気的に接続されている。
VGRS40の一端(電力供給端子)41は、導電線24bにより導電線24に分岐点B2にて接続されている。VGRS40の他端(接地端子)42は接地されている。これにより、VGRS40の他端42はバッテリ21の負極端子21bと電気的に接続されている。
AVS50の一端(電力供給端子)51は、導電線24cにより導電線24の他端部B3に接続されている。AVS50の他端(接地端子)52は接地されている。これにより、AVS50の他端52はバッテリ21の負極端子21bと電気的に接続されている。
ヒューズ25は、導電線24aに介装(直列に挿入)されている。ヒューズ25は、導電線24aにEPS30の定格電流以上の電流が流れると導電線24aを電気的に切断するようになっている。
ヒューズ26は、導電線24bに介装(直列に挿入)されている。ヒューズ26は、導電線24bにVGRS40の定格電流以上の電流が流れると導電線24bを電気的に切断するようになっている。
ヒューズ27は、導電線24cに介装(直列に挿入)されている。ヒューズ27は、導電線24cにAVS50の定格電流以上の電流が流れると導電線24cを電気的に切断するようになっている。
EPS30は、周知の構成を備え、(例えば、特開2007−131214号公報を参照。)電気負荷として図示しない電動機(直流モータ)を有する。EPS30は、後述する電子制御装置70の指示信号に基づいてバッテリ21及びオルタネータ22から供給される電力により電動機を駆動させるようになっている。
EPS30の電動機は、図示しない動力伝達機構を介して、運転者の操舵に対して所定のアシストトルク(操舵補助トルク)を図示しない操舵軸に付与するようになっている。運転者の操舵に対して所定のアシストトルクを付与することにより運転者は容易に障害物との衝突を回避することができるようになる。従って、運転者の操舵に対してアシストトルクを付与することは「障害物との衝突を回避しやすくするための力」を車両に発生させるように運転者の操作を補助することに相当する。即ち、EPS30は、前記第1電気負荷装置に相当する。
一般に、必要とするアシストトルクが大きければ電動機に必要な電流(電力)の大きさも大きくなり、操舵角速度が速ければ電動機に必要な電流(電力)の大きさも大きくなる。即ち、運転者により急激な衝突回避操作が行われた場合、EPS30の電動機に必要な電流(電力)の大きさも大きくなる。
VGRS40は、周知の構成を備え(例えば、特開2005−297807号公報、特開2005−14680号公報、特開2005−162124号公報及び特開2001−48027号公報を参照。)、電気負荷として図示しない電動式アクチュエータを有する。VGRS40は、後述する電子制御装置70の指示信号に基づいてバッテリ21及びオルタネータ22から供給される電力により電動式アクチュエータを駆動させるようになっている。
VGRS40の電動式アクチュエータは、運転者の運転状況(例えば、操舵角及び車速等)に応じてステアリングギア比(入力操舵角に対する出力操舵角の比率)を変更して、変更したステアリングギア比に応じて図示しない操舵軸を回転させるようになっている。ステアリングギア比を大きくすること(即ち、クイック度が大きい場合)は、「障害物との衝突を回避する力」を車両に発生させるように運転者の回避操舵操作を補助することに相当する。従って、VGRS40は、前記第1電気負荷装置に相当する。
一般に、VGRS40の電動式アクチュエータは、ステアリングギア比を大きくするほど、即ち、同じ操舵操作角(入力操舵角)に対して出力操舵角を大きくするほど、大きな電流(電力)を必要とする。即ち、障害物との衝突を回避するためにステアリングギア比を大きくすると、VGRS40の電動式アクチュエータに必要な電流(電力)の大きさも大きくなる。
AVS50は、周知の構成を備え(例えば、特開2003−146043を参照。)、電気負荷として図示しない電動式アクチュエータを有する。AVS50は、後述する電子制御装置70の指示信号に基づいてバッテリ21及びオルタネータ22から供給される電力により電動式アクチュエータを駆動させるようになっている。
AVS50の電動式アクチュエータは、運転者の運転状況(例えば、操舵角及び車速等)及び路面状態(例えば、車体の上下加速度等)に応じて、図示しないサスペンション装置に備えられたショックアブソーバーの可変絞りの開度を調整することによりショックアブソーバーの減衰力を変更し、以って、サスペンション装置の減衰力を変更するようになっている。AVS50の電動式アクチュエータは、サスペンション装置の減衰力を変更することにより、車両の運動特性を切換えて、車両の挙動を安定させることにより衝突回避操作に伴う車両の衝突回避運動の補助を行う。このように、AVS50は、前記第2電気負荷装置に相当する。
AVS50は、減衰力を変更するために前記可変絞りの開度を調整するときに電力を消費する。
警報装置60は、インストルメントパネル等に設けられたウォーニングランプ(警報光発生装置)及び車室内に設けられたブザー(警報音発生装置)からなっている。なお、警報装置60は、乗員(運転者)の座席及び/又はステアリングホイールを振動させる装置等の機械的警報装置であってもよい。
第1装置は、上記電子制御装置70、バッテリ能力取得手段としてのバッテリセンサ71、障害物センサ72、運転状況センサ73、車両状況センサ74を備えている。
電子制御装置70は、CPU、RAM、ROM及び入出力ポートを含む周知のマイクロコンピュータである。入出力ポートは、EPS30(EPS30の電動機)、VGRS40(VGRS40の電動式アクチュエータ)、AVS50(AVS50の電動式アクチュエータ)、警報装置60、バッテリセンサ71、障害物センサ72、運転状況センサ73及び車両状況センサ74と接続されている。入出力ポートは、バッテリセンサ71、障害物センサ72、運転状況センサ73及び車両状況センサ74からの信号をCPUに供給するようになっている。入出力ポートは、CPUの指示に応じてEPS30、VGRS40、AVS50及び警報装置60に指示信号(駆動信号)を出力するようになっている。
バッテリセンサ71は、周知の構成を備え(例えば、特開2007−85772号公報を参照。)、バッテリ21の電圧及び電流を検出するようになっている。バッテリセンサ71は検出した情報を電子制御装置70に出力するようになっている。
障害物センサ72は、車両10の走行方向前方の障害物(先行車等)を認識するとともに、車両10からその認識した障害物までの距離Lr及び車両10とその障害物との相対速度Vr等の障害物情報を検出するようになっている。
相対速度(接近速度)Vrは、車両10と障害物とが近づく方向の速度の場合に正の値となり、車両10と障害物とが同じ速度の場合に「0」となり、車両10と障害物とが離れる方向の速度の場合に負の値となるように求められる。走行方向前方の障害物は、CCDカメラ、赤外線及びミリ波レーダ等を用いた周知の手法に基づいて認識される。障害物センサ72は検出した情報を電子制御装置70に出力するようになっている。
運転状況センサ73は、車速Vに応じた周期でパルス信号を出力する車速センサ、ステアリングホイール(操舵入力軸)の操舵角θに応じた信号を出力するステアリングセンサ、操舵軸(操舵入力軸又は操舵出力軸)に加わる操舵トルクTRに応じた信号を出力する操舵トルクセンサ及びブレーキペダルのストロークSに応じた信号を出力するストロークセンサ等の運転状況を検出するセンサを含むセンサ群からなっている。
車両状況センサ74は、車両10の車体の上下加速度に応じた信号を出力する上下加速度センサ、車両10の前後加速度に応じた信号を出力する前後加速度センサ及び車両10の重心回りの回転角速度に応じた信号を出力するヨーレートセンサ等の車両状況を検出するセンサを含むセンサ群からなっている。
次に、上記のように構成された第1装置の作動について図2のフローチャートを参照しながら説明する。
CPUは、図示しないイグニッション・キー・スイッチがオフ位置からエンジン始動位置へと変更されたとき、図2のフローチャートに示されたルーチンの処理をステップ200から開始し、続くステップ210にて、バッテリ21の能力(バッテリ能力)Dbを取得する。より具体的に述べると、CPUは、イグニッション・キー・スイッチがオフ位置からエンジン始動位置へと変更されたとき、図示しないスタータを回転させるのに先立ってバッテリセンサ71によりエンジン始動前のバッテリ電圧を取得し、基準となる電圧からその取得したバッテリ電圧を減じた値(基準となる電圧からのバッテリ電圧の低下分)が大きいほどバッテリ能力Dbを小さい値として取得する。
続いてCPUは、ステップ220へ進んで取得したバッテリ能力Dbが予め定められた所定の値(閾値バッテリ能力)Dthよりも小さいか否かを判定する。いま、バッテリ21の能力が低下していないと仮定すると、バッテリ能力Dbは所定の値Dthよりも大きい。この場合、CPUは、ステップ220にて「No」と判定してステップ230へ進み、後述する図3のステップ320にて用いられる第1所定値Wthに予め定められた非低下時所定値W1を設定し、ステップ290へ進んで図2に示されたルーチンを終了する。
一方、CPUは、所定時間の経過毎に繰り返し実行する図3のフローチャートに示されたルーチンに従って処理を行う。CPUは、所定のタイミングにて図3のステップ300から処理を開始し、ステップ310にて、車両10が障害物(先行車等)を回避するための緊急の度合いを表す緊急度指標値Peを取得する。
具体的には、CPUは、障害物検知センサ61により検出された車両10から障害物(先行車)までの距離Lr及び車両10と障害物との相対速度Vrとを取得する。そして、CPUは、取得した距離Lrと取得した相対速度Vrとを以下の式(1)に代入することにより必要回避時間Tbを演算する。また、CPUは、相対速度Vrが「0」又は負の場合、必要回避時間Tbに非常に大きな一定値Tbmaxを代入する。
必要回避時間Tb=Lr/Vr …(1)
その後、CPUは、必要回避時間Tbが小さい場合は大きい場合よりも緊急度指標値Peを大きい値として取得する(例えば、Pe=Pe0/Tb;Pe0は定数)。即ち、必要回避時間Tbが小さくなるほど緊急度指標値Peは大きくなるように求められる。
続いて、CPUは、ステップ320へ進み、取得した緊急度指標値Peが図2のステップ230(又は後述するステップ240)にて設定した第1所定値Wth(この場合、第1所定値Wthは非低下時所定値W1に設定されている。)よりも大きいか否かを判定する。
緊急度指標値Peが第1所定値Wth以下である場合、CPUはステップ320にて「No」と判定してステップ330へ進み、警報装置60を作動させない(オフ状態に設定する。)。そして、CPUはステップ390へ進んで一旦本ルーチンを終了する。
また、緊急度指標値Peが第1所定値Wthより大きくなった場合、CPUはステップ320にて「Yes」と判定してステップ340へ進み、警報装置60を作動させる(オン状態に設定する。)。そして、CPUはステップ390へ進んで一旦本ルーチンを終了する。この結果、第1装置は、緊急度指標値Peが第1所定値Wthより大きくなった場合、警報装置60から警報を発生させることにより、乗員に緊急度が高いことを警報することができる。以上が、バッテリ21の能力が低下していない場合の第1装置の作動である。
一方、バッテリ21の能力が低下したと仮定すると、図2のステップ210にて取得されるバッテリ能力Dbは閾値バッテリ能力Dthより小さくなる。よって、CPUは、ステップ220に進んだとき、同ステップ220にて「Yes」と判定し、ステップ240に進んで前記第1所定値Wthに低下時所定値W2を設定する。この低下時所定値W2は、前記非低下時所定値W1よりも小さい値に予め設定されている。即ち、バッテリ21の能力が低下していてバッテリ能力Dbが前記所定の値Dthよりも小さい場合、前記第1所定値Wthが、前記非低下時所定値W1よりも小さい値である低下時所定値W2に設定される。そしてCPUは、ステップ290へ進んで図2に示されたルーチンを終了する。
この場合においても、CPUは、所定のタイミングにて図3に示したルーチンの処理をステップ300から開始し、ステップ310にて緊急度指標値Peを取得する。そして、CPUはステップ320にて緊急度指標値Peが低下時所定値W2に設定されている第1所定値Wthよりも大きいか否かを判定する。このとき、CPUは緊急度指標値Peが第1所定値Wthより大きいと判定すると、ステップ340に進んで警報装置60により警報を発生させる。
このように、バッテリ21の能力が小さいときには警報を発生するか否かの閾値である第1所定値Wthが、バッテリ21の能力が大きいときの第1所定値Wth(即ち、非低下時所定値W1)よりも小さい低下時所定値W2に設定される。従って、バッテリ21の能力が小さいときはバッテリ能力が大きいときよりも乗員に対して緊急度が低い段階で警報が発せられることになる。
この結果、運転者はバッテリ能力Dbが小さいときは同バッテリ能力Db大きいときよりも早い時点で警報を受ける。従って、運転者は緊急度が高くなってから警報を受ける場合に比較して穏やかな衝突回避操作を開始することができる。運転者により穏やかな衝突回避操作が行われた場合、第1電気負荷装置(EPS30及びVGRS40等)が運転者による回避操作を補助することにより、車両10に発生させられる(車両10に付与される)「障害物との衝突を回避しやすくするための力(例えば、EPS30によるアシストトルク)」は、運転者により急激な衝突回避操作が行われた場合に比較して小さくなる。従って、EPS30及びVGRS40等の第1電気負荷装置が必要とする電力も小さくなるので、バッテリが要求される電流も小さくなる。よって、EPS30及びVGRS40等には衝突回避操作に対して十分な電流が流れる。その結果、前記「障害物との衝突を回避しやすくするための力」は減少(不足)することがない。
更に、第1装置によれば、運転者に穏やかな衝突回避操作を行わせることにより、衝突回避操作時にEPS30及びVGRS40等の第1電気負荷装置に流れる電流を小さくすることができるので、バッテリ21の内部抵抗による電圧降下分を小さくすることができる。従って、EPS30及びVGRS40等の第1電気負荷装置に印加する電圧が大きく低下することを回避することができる。その結果、これらの第1電気負荷装置が「印加される電圧が閾値電圧(動作保証可能最低電圧)以下となった場合に機能を停止するような保護回路」を備えている場合であっても、第1電気負荷装置に印加される電圧が同閾値電圧以下に低下しないので、第1電気負荷装置が機能を停止してしまうことを回避することができる。
また、バッテリ能力Dbが予め定められた所定の値Dth以上であった場合、乗員に対して緊急度が低い段階で警報が発せられることがないので、乗員に対して過度の警報を発することを避けることができる。
なお、バッテリ能力Dbは、例えば、CPUが、所定のタイミングにて、バッテリセンサ71から得られる「バッテリ21の電圧及び電流」に基いて「バッテリ21の内部抵抗(正極端子21aと負極端子22bとの間の電気抵抗値)」を取得し、その取得したバッテリ21の内部抵抗が大きい場合(バッテリ劣化度が大きい場合)は小さい場合(バッテリ劣化度が小さい場合)よりも「小さくなるように」取得されてもよい。このようなバッテリ能力Dbの一つであるバッテリ劣化度の取得手法は、例えば、特開2007−85772号公報に開示されている。この場合、CPUは図2のルーチンを、バッテリ能力Dbが更新される毎に実行することができる。
また、バッテリ能力Dbは、例えば、CPUがエンジン始動操作時毎に上記のようにバッテリ電圧を取得するとともに、その電圧の履歴を不揮発性メモリに記憶しておき、その記憶された履歴から「バッテリ21の電圧が低電圧であった履歴(頻度)が多い」と判定されるほど小さくなるように取得されてもよい。また、バッテリ能力Dbは、例えば、CPUが所定のタイミングにてバッテリセンサ(バッテリ残量計)71を用いることによりバッテリ21の残量を取得し、その取得したバッテリ21の残量が少ない場合は多い場合よりも小さくなるように取得されてもよい。
なお、第1装置において、CPUによる図3のステップ310の処理及び障害物センサ72は緊急度指標値取得手段に相当する。CPUによる図3のステップ320、ステップ330及びステップ340の処理は第1制御手段に相当する。CPUによる図2のステップ210の処理及びバッテリセンサ71はバッテリ能力取得手段に相当する。CPUによる図2のステップ220、ステップ230及びステップ240の処理は所定値設定手段に相当する。
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態に係る車両の制御装置(以下、「第2装置」と称呼する。)は、上述の第1装置の構成と同じ装置(ハードウェア)を有している。
第2装置のCPUは、図4及び図5のフローチャートに示されたルーチンに従って処理を行う。図4のフローチャートに示されたルーチンはステップ430及びステップ440において第1装置の図2のフローチャートと相違しており、図5のフローチャートに示されたルーチンはステップ530及びステップ540において第1装置の図3のフローチャートと相違している。
第2装置のCPUは、図2のルーチンが実行される場合と同じタイミングにて図4のステップ400から処理を開始し、ステップ410にて、ステップ210と同様にバッテリ能力Dbを取得する。次にCPUは、ステップ420へ進み、ステップ220と同様に取得したバッテリ能力Dbが予め定められた所定の値(閾値バッテリ能力)Dthよりも小さいか否かを判定する。いま、バッテリ21の能力が低下していないと仮定すると、バッテリ能力Dbは所定の値Dthよりも大きい。この場合、CPUは、ステップ420にて「No」と判定してステップ430へ進み、後述する図5のステップ520にて用いられる第2所定値Athに予め定められた非低下時所定値A1を設定し、ステップ490へ進んで本ルーチンを一旦終了する。
一方、CPUは、所定時間の経過毎に繰り返し実行する図5のフローチャートに示されたルーチンの処理をステップ500から処理を開始し、ステップ510にて、ステップ310と同様に前記緊急度指標値Peを取得する。そしてCPUはステップ520に進み、取得した緊急度指標値Peが図4のステップ430(又は後述するステップ440)にて設定した第2所定値Ath(この場合、第2所定値Athは非低下時所定値A1に設定されている。)よりも大きいか否かを判定する。
緊急度指標値Peが第2所定値Ath以下である場合、CPUはステップ520にて「No」と判定してステップ530へ進み、AVS50の減衰力を通常用の減衰力(例えば、ソフト)に設定する。そして、CPUはステップ590へ進んで一旦本ルーチンを終了する。
また、緊急度指標値Peが第2所定値Athより大きくなった場合、CPUはステップ520にて「Yes」と判定してステップ540へ進み、AVS50の減衰力を通常用の減衰力よりも大きな緊急用の減衰力(ハード、即ち、車両の挙動をより安定させる側の減衰力)に設定するように電動式アクチュエータを作動させる。そして、CPUはステップ590へ進んで一旦本ルーチンを終了する。この結果、第2装置は、車両の挙動を安定させることにより「衝突回避操作に伴う車両の衝突回避運動を補助する制御」を行うことになる。以上が、バッテリ21の能力が低下していない場合の第2装置の作動である。
一方、バッテリ21が劣化するなどによりバッテリ21の能力が低下したと仮定すると、図4のステップ410にて取得されるバッテリ能力Dbは閾値バッテリ能力Dthよりも小さくなる。よって、CPUは、ステップ420に進んだとき、同ステップ420にて「Yes」と判定し、ステップ440に進んで前記第2所定値Athに低下時所定値A2を設定する。この低下時所定値A2は、前記非低下時所定値A1よりも小さい値に予め設定されている。即ち、バッテリ21の能力が低下していてバッテリ能力Dbが前記所定の値Dthよりも小さい場合、前記第2所定値Athが、前記非低下時所定値A1よりも小さい値である低下時所定値A2に設定される。そしてCPUは、ステップ490へ進んで本ルーチンを一旦終了する。
この場合においても、CPUは、所定のタイミングにて図5に示したルーチンの処理をステップ500から開始し、ステップ510にて緊急度指標値Peを取得する。そして、CPUはステップ520にて緊急度指標値Peが低下時所定値A2に設定されている第2所定値Athよりも大きいか否かを判定する。このとき、CPUは緊急度指標値Peが第2所定値Athより大きいと判定すると、ステップ540に進んで緊急用の減衰力に設定するように電動式アクチュエータを作動させる。
このように、バッテリ21の能力が大きいときには車両の挙動を安定化させるか否かの閾値である第2所定値Athが、バッテリ21の能力が大きいときの第2所定値Ath(即ち、非低下時所定値A1)よりも小さい低下時所定値A2に設定される。従って、バッテリ能力Dbが小さいときはバッテリ能力Dbが大きいときよりも早い時点で車両の挙動を安定させるように第2電気負荷装置(AVS50)の電動式アクチュエータが作動され、それにより衝突回避操作に伴う車両の衝突回避運動を補助する制御が行われることになる。
また、「障害物との衝突を回避しやすくするための力」を車両に発生させる際に作動する第1電気負荷装置(EPS30及びVGRS40等)は、緊急度が高まった場合(緊急度指標値Peが非常に大きくなるような状況)に作動させられる。従って、この装置によれば、第1電気負荷装置が作動させられる時点よりも早い時点において衝突回避運動を補助する第2電気負荷装置(AVS50等)が作動する確率が非常に高くなる。即ち、第1電気負荷装置が電力を必要とする時点と、第2電気負荷装置が電力を必要とする時点と、を異なる時点にすることができる。従って、EPS30及びVGRS40等の第1電気負荷装置が電力を必要とする時点においてバッテリが要求される電流(総電流量)は第1電気負荷装置と第2電気負荷装置とが同時に作動させられる場合より小さくなる。よって、EPS30及びVGRS40等の第1電気負荷装置が運転者の衝突回避操作を補助することにより車両に発生させられる「障害物との衝突を回避しやすくするための力」が減少(不足)することを回避することができる。
更に、第2装置によれば、EPS30及びVGRS40等の第1電気負荷装置が作動させられる衝突回避操作時に、AVS50等の第2電気負荷装置に流れる電流分だけバッテリ21に流れる電流を小さくすることができるので、バッテリ21の内部抵抗による電圧降下分を小さくすることができる。従って、EPS30及びVGRS40等の第1電気負荷装置が作動させられるときに同第1電気負荷装置に印加される電圧が大きく低下することを回避することができる。その結果、第1電気負荷装置が、同装置に印加される電圧が閾値電圧以下となった場合に機能を停止するように構成されている場合であっても、同装置に印加される電圧が同閾値電圧以下に低下しないので、第1電気負荷装置が機能を停止してしまうことを回避することができる。
加えて、第2装置は、第1装置と同様、バッテリ21をオルタネータ22によって充電している。従って、第2装置においては、バッテリ残量が低下している場合、第2電気負荷装置が先に作動されてバッテリ残量が更に低下しても、第1電気負荷装置が作動されるまでにバッテリ21がオルタネータ22によって効率よく充電される。このため、第1電気負荷装置の作動時に、バッテリ21が第1電気負荷装置に対して「第1電気負荷装置が必要とする電力」を供給できる可能性が高まるので、第1電気負荷装置が運転者の衝突回避操作を補助することにより車両に付与する「障害物との衝突を回避しやすくするための力」が減少(不足)することを回避することができる。
第2装置において、CPUによる図5のステップ510の処理及び障害物センサ72は緊急度指標値取得手段に相当する。CPUによる図5のステップ520、ステップ530及びステップ540の処理は第2制御手段に相当する。CPUによる図4のステップ410の処理及びバッテリセンサ71はバッテリ能力取得手段に相当する。CPUによる図4のステップ420、ステップ430及びステップ440の処理は所定値設定手段に相当する。
<第3実施形態>
次に、本発明による第3実施形態に係る車両の制御装置(以下、「第3装置」と称呼する。)について説明する。
第3装置は、図1に示した上述の第1装置と同じ装置(ハードウェア)を有している。
第3装置は、緊急度指標値Peが後述する第3所定値Tthよりも大きいとき、緊急度指標値Peが第3所定値Tth以下であるときよりも、同一の操舵トルクTRに対してEPS30により付与されるアシストトルクが所定増大量ΔTだけ大きくなるようにEPS30を制御するようになっている。更に、第3装置は、前記取得したバッテリ能力Dbが小さい場合は同バッテリ能力Dbが大きい場合よりも、その所定増大量ΔTを小さい値(0を含む値)に設定するようになっている。
第3装置の作動について図6及び図7のフローチャートを参照して説明する。第3装置のCPUは、図2のルーチンが実行される場合と同じタイミングにて図6のステップ600から処理を開始し、ステップ610にてステップ210と同様にバッテリ能力Dbを取得する。次いでCPUは、ステップ620へ進み、バッテリ能力Dbが予め定められた所定の値Dthよりも小さいか否かを判定する。
いま、バッテリ21の能力が低下していないと仮定すると、バッテリ能力Dbは所定の値Dthよりも大きい。この場合、CPUは、ステップ620にて「No」と判定してステップ630へ進み、後述する図7のステップ740にて用いられるアシストトルクの所定増大量ΔTに、予め定められた非低下時所定増大量ΔT1を設定する。
一方、CPUは、所定時間の経過毎に繰り返し実行する図7のフローチャートに示されたルーチンに従って処理を行う。CPUは、所定のタイミングにて図7のステップ700から処理を開始し、ステップ710にて、ステップ310と同様に前記緊急度指標値Peを取得する。次にCPUは、ステップ720へ進み、取得した緊急度指標値Peが予め設定されている第3所定値Tthよりも大きいか否かを判定する。なお、前記第3所定値Tthは、前記第1所定値Wthにおける低下時所定値W2と同じ値であることが好ましい。
緊急度指標値Peが第3所定値Tth以下である場合、CPUはステップ720にて「No」と判定してステップ730へ進み、EPS30によって付与するアシストトルクTを決定するためのテーブル(即ち、トルクセンサにより検出された所定の操舵トルクTRの大きさ(入力)とEPS30が付与する所定のアシストトルクの大きさ(出力)との関係を規定したアシスト力決定テーブル)に「通常用アシストテーブル」を設定する。
この通常用アシストテーブルは、ステップ730中の線C1により示したように、トルクセンサにより検出された所定の操舵トルクTRの大きさ(入力)に対するEPS30が付与する所定のアシストトルクTの大きさ(出力)の関係f(即ち、T=f(TR))を規定するテーブルである。
この通常用アシストテーブルによれば、操舵トルクTRの絶対値が正の所定値TR0以上の領域において、操舵トルクTRの絶対値の増大につれてアシストトルクTの絶対値が大きくなるようにアシストトルクTが決定される。即ち、通常用アシストテーブルによれば、緊急度指標値Peが第3所定値Tth以下である場合の「通常時のアシストトルク」をTnと表すとき、例えば、|TR|≧TR0においてT=Tn=f(TR)=k・TR(kは、正の比例定数)であり、|TR|<TR0においてT=Tn=f(TR)=0となるように、アシストトルクT=Tnが定められる。そして、CPUはステップ790へ進んで一旦本ルーチンを終了する。
また、緊急度指標値Peが第3所定値Tthより大きくなった場合、CPUはステップ720にて「Yes」と判定してステップ740へ進み、EPS30によって付与するアシストトルクTを決定するためのテーブル(アシスト力決定テーブル)に「緊急用アシストテーブル」を設定する。この緊急用アシストテーブルは、ステップ740中の線C2及び線C3により示したように、検出された操舵トルクTRの大きさ(入力)に対してEPS30が付与する所定のアシストトルクTの大きさ(出力)の関係g(即ち、T=g(TR))を規定するテーブルである。
この緊急用アシストテーブル(関係g)によれば、アシストトルクの絶対値が操舵トルクTRの絶対値が正の所定値TR0以上の領域において、アシストトルクTは、操舵トルクTRに対して通常用アシストテーブルにより定められるアシストトルクTnの絶対値よりも図6のステップ630にて(又は後述するステップ640にて)設定した所定増大量ΔTだけ大きい値になるように設定される。
即ち、緊急用アシストテーブルによれば、緊急度指標値Peが第3所定値Tthより大きい場合に付与される緊急時のアシストトルクをTeと表すとき、例えば、TR≧TR0においてT=Te=g(TR)=Tn+ΔT=f(TR)+ΔT=k・TR+ΔTであり、TR≦−TR0においてT=Te=g(TR)=−||Tn|+ΔT|=−||f(TR)|+ΔT|=−|−k・TR+ΔT|であり、|TR|<TR0においてT=Te=g(TR)=0となるように、アシストトルクT=Teが定められる。この場合、所定増大量ΔTは、非低下時所定増大量ΔT1であるので、アシストトルクTは線C2に示したように決定される。その後、CPUはステップ790へ進んで一旦本ルーチンを終了する。
この結果、第3装置によれば、緊急度指標値Peが第3所定値Tthより大きい場合には緊急度指標値Peが第3所定値Tth以下である場合よりもEPS30が付与するアシストトルクの大きさが(所定増大量ΔT=ΔT1だけ)大きくなるので、より容易に衝突回避操作を行うことができる。以上が、バッテリ21の能力が低下していない場合の第3装置の作動である。
一方、バッテリ21が劣化するなどによりバッテリ21の能力が低下したと仮定すると、図6のステップ610にて取得されるバッテリ能力Dbは所定の値Dthよりも小さくなる。よって、CPUは、ステップ620に進んだとき、同ステップ620にて「Yes」と判定し、ステップ640に進んで前記所定増大量ΔTに、予め定められた低下時所定増大量ΔT2を設定する。この低下時所定増大量ΔT2は、前記非低下時所定増大量ΔT1よりも小さい値(低下時所定増大量ΔT2は、「0」も含む。即ち、ΔT2≧0)に予め設定されている。即ち、バッテリ21の能力が低下していてバッテリ能力Dbが前記所定の値Dthよりも小さい場合、前記所定増大量ΔTが、前記非低下時所定増大量ΔT1よりも小さい値である低下時所定増大量ΔT2に設定される。そしてCPUは、ステップ690へ進んで図6のルーチンを終了する。
この場合においても、CPUは、所定のタイミングにて図7に示したルーチンの処理をステップ700から開始し、ステップ310と同様にしてステップ710にて緊急度指標値Peを取得する。そして、CPUはステップ720にて緊急度指標値Peが予め設定されている第3所定値Tthよりも大きいか否かを判定する。
このとき、緊急度指標値Peが第3所定値Tth以下であると、CPUはステップ730に進んで能力Dbが小さいときと同様の処理を行う。即ち、CPUは、アシストトルクTを決定するためのテーブルに「通常用アシストテーブル」を設定する。
これに対し、緊急度指標値Peが第3所定値Tthより大きくなった場合、CPUはステップ720からステップ740に進み、アシストトルクTを決定するためのテーブルに「緊急用アシストテーブル」を設定する。この場合、ステップ640にて所定増大量ΔTが非低下時所定増大量ΔT1よりも小さいに低下時所定増大量ΔT2設定されている。従って、例えば、TR≧TR0においてT=Te=g(TR)=Tn+ΔT2=f(TR)+ΔT2=k・TR+ΔT2であり、TR≦−TR0においてT=Te=g(TR)=−||Tn|+ΔT2|=−||f(TR)|+ΔT2|=−|−k・TR+ΔT2|であり、|TR|<TR0においてT=Tn=g(TR)=0となるように、アシストトルクT=Teが定められる。即ち、アシストトルクTは線C3に示したように決定される。その後、CPUはステップ790へ進んで一旦本ルーチンを終了する。
この結果、EPS30が付与するアシストトルクの所定増大量ΔTは、バッテリ能力Dbが小さいときは同バッテリ能力Dbが大きいときよりも小さくなる。従って、同じ操舵トルクに対してEPS30が必要とする電力も小さくなるので、バッテリ21が要求される電流も小さくなる。よって、EPS30が発生する「障害物との衝突を回避しやすくするための力」であるアシストトルクは減少(不足)することがない。
更に、第3装置によれば、バッテリ能力Dbが小さいときは同バッテリ能力Dbが大きいときよりも衝突回避操作時にEPS30に流れる電流を小さくすることができるので、バッテリ21の内部抵抗による電圧降下分を小さくすることができる。従って、EPS30に印加する電圧が大きく低下することを回避することができる。その結果、EPS30が、EPS30に印加される電圧が閾値電圧以下となった場合に機能を停止するように構成されている場合であっても、EPS30に印加される電圧が同閾値電圧以下に低下しないので、EPS30が機能を停止してしまうことを回避することができる。
第3装置において、CPUにより処理される図6及び図7のフローチャートに示されたルーチンが制御増大量設定手段に相当する。
なお、アシスト力決定テーブルに、通常時(Pe≦Tthの場合)は図7のステップ730にて示したテーブルに換えて、図8のステップ830にて示したテーブル(T=k・TR)を設定するとともに、緊急時(Pe>Tth)は図7のステップ740にて示されたテーブルに換えて、図8のステップ840にて示したテーブル(T=(k+Δk)・TR)を設定してもよい。この場合、図6のステップ630を「Δkに所定の値Δk1(>0)を設定する」ステップとし、図6のステップ640を「Δkに所定の値Δk1よりも小さいΔk2(>0)を設定する」ステップとしておく。この場合、Δkが所定増大量に相当し、Δk1及びΔk2が非低下時所定増大量及び低下時所定増大量にそれぞれ相当する。換言すると、前記所定増大量は一定値でなくてもよい。
なお、第3装置において上述の第1装置及び第2装置と同様の方法により緊急度指標値Peを取得してもよく、緊急度指標値Peをステアリングセンサにより取得された操舵角θの操舵角速度dθ/dtが大きい場合は操舵角速度dθ/dtが小さい場合よりも大きい値として取得してもよい。
<第4実施形態>
次に、本発明による第4実施形態に係る車両の制御装置(以下、「第4装置」と称呼する。)について説明する。
第4装置は、図1に示した上述の第1装置と同じ装置(ハードウェア)を有している。
第4装置は、緊急度指標値Peが後述する第4所定値Qthよりも大きいとき、緊急度指標値Peが第4所定値Qth以下であるときよりも、VGRS40により設定されるステアリングギア比(クイック度)が所定増大量ΔQだけ大きくなるようにVGRS40を制御するようになっている。更に、第4装置は、前記取得したバッテリ能力Dbが小さい場合は同バッテリ能力Dbが大きい場合よりも、その所定増大量ΔQを小さい値(0を含む値)に設定するようになっている。
第4装置作動について図9及び図10のフローチャートを参照して説明する。第4装置のCPUは、図2のルーチンが実行される場合と同じタイミングにて図9のステップ900から処理を開始し、ステップ910にてステップ210と同様にバッテリ能力Dbを取得する。次いでCPUは、ステップ920へ進み、バッテリ能力Dbが予め定められた所定の値Dthよりも小さいか否かを判定する。
いま、バッテリ21の能力が低下していないと仮定すると、バッテリ能力Dbは所定の値Dthよりも大きい。この場合、CPUは、ステップ920にて「No」と判定してステップ930に進み、後述する図10のステップ1040にてVGRS40が増大させるステアリングギア比であるクイック度Qの所定増大量ΔQに、予め定められた非低下時所定増大量ΔQ1を設定する。
一方、CPUは、所定時間の経過毎に繰り返し実行する図10のフローチャートに示されたルーチンに従って処理を行う。CPUは、所定のタイミングにて図10のステップ1000から処理を開始し、ステップ1010にて、ステップ310と同様に前記緊急度指標値Peを取得する。次にCPUは、ステップ1020へ進み、取得した緊急度指標値Peが予め設定されている第4所定値Qthよりも大きいか否かを判定する。
緊急度指標値Peが第4所定値Qth以下である場合、CPUはステップ1020にて「No」と判定してステップ1030に進み、VGRS40によって出力される出力操舵角φを決定するためのテーブルに「通常用クイック度テーブル」を設定する。この通常用クイック度テーブルは、ステップ1030中の線D1により示したように、ステアリングセンサにより検出された所定の入力操舵角θの大きさ(入力)に対してVGRS40が出力する所定の出力操舵角φの大きさ(出力)の関係h(即ち、φ=h(θ))を規定するテーブルである。
この通常用クイック度テーブルによれば、入力操舵角θの絶対値の増大につれて出力操舵角φの絶対値が大きくなるように決定される。即ち、通常用アシストテーブルによれば、緊急度指標値Peが第4所定値Qth以下である場合の「通常時のクイック度」をQnと表すとき、例えば、φ=Qn・θとなるように定められる。そして、CPUはステップ1090へ進んで一旦本ルーチンを終了する。
また、緊急度指標値Peが第4所定値Qthより大きくなった場合、CPUはステップ1020にて「No」と判定してステップ1040へ進み、VGRS40によって出力される出力操舵角φを決定するためのテーブルに「緊急用クイック度テーブル」を設定する。この緊急用クイック度テーブルは、ステップ1040中の線D2及び線D3により示したように、ステアリングセンサにより検出された所定の入力操舵角θの大きさ(入力)に対してVGRS40が出力する所定の出力操舵角φの大きさ(出力)の関係i(即ち、φ=i(θ))を規定するテーブルである。
この緊急用クイック度テーブル(関係i)によれば、クイック度Qが通常用クイック度テーブルにより定められるクイック度Qnよりも図9のステップ930にて(又は後述するステップ940にて)設定した所定増大量ΔQだけ大きい値になるように設定される。
即ち、緊急用クイック度テーブルによれば、「緊急度指標値Peが第4所定値Qthより大きい場合に設定される緊急時のクイック度」をQeと表すとき、出力操舵角φは、例えば、φ=i(θ)=Qe・θ=(Qn+ΔQ)・θで定められる。その後、CPUはステップ1090へ進んで一旦本ルーチンを終了する。
この結果、第4装置によれば、緊急度指標値Peが第4所定値Qthより大きい場合には緊急度指標値Peが第4所定値Qth以下である場合よりもVGRS40が出力する出力操舵角φの大きさが(所定増大量ΔQ・θ=ΔQ1・θだけ)大きくなるので、より容易に衝突回避操作を行うことができる。以上が、バッテリ21の能力が低下していない場合の第4装置の作動である。
一方、バッテリ21が劣化するなどによりバッテリ21の能力が低下したと仮定すると、図9のステップ910にて取得されるバッテリ能力Dbは所定の値Dthよりも小さくなる。よって、CPUは、ステップ920に進んだとき、同ステップ920にて「Yes」と判定し、ステップ940に進んで前記所定増大量ΔQに、予め定められた低下時所定増大量ΔQ2を設定する。この低下時所定増大量ΔQ2は、前記非低下時所定増大量ΔQ1よりも小さい値(低下時所定増大量ΔQ2は、「0」も含む。)に予め設定されている。即ち、バッテリ21の能力が低下していてバッテリ能力Dbが前記所定の値Dthよりも小さい場合、前記所定増大量ΔQが、前記非低下時所定増大量ΔQ1よりも小さい値である低下時所定増大量ΔQ2に設定される。そしてCPUは、ステップ990へ進んで図9のルーチンを終了する。
この場合においても、CPUは、所定のタイミングにて図10に示したルーチンの処理をステップ1000から開始し、ステップ310と同様にしてステップ1010にて緊急度指標値Peを取得する。そして、CPUはステップ1020にて緊急度指標値Peが予め設定されている第4所定値Qthよりも大きいか否かを判定する。
このとき、緊急度指標値Peが第4所定値Qth以下であると、CPUはステップ1030に進んで能力Dbが小さいときと同様の処理を行う。即ち、CPUは、入力操舵角θと出力操舵角θとの関係を規定するためのテーブルに「通常用クイック度テーブル」を設定する。
これに対し、緊急度指標値Peが第4所定値Qthより大きくなった場合、CPUはステップ1020からステップ1040に進み、入力操舵角θと出力操舵角φとの関係を規定するためのテーブルに「緊急用クイック度テーブル」を設定する。この場合、ステップ940にて所定増大量ΔQが非低下時所定増大量ΔQ1よりも小さいに低下時所定増大量ΔQ2設定されている。従って、例えば、φ=i(θ)=Qe・θ=(Qn+ΔQ)・θ=(Qn+ΔQ2)・θとなるように、出力操舵角φが定められる。即ち、出力操舵角φは線D3に示したように決定される。その後、CPUはステップ1090へ進んで一旦本ルーチンを終了する。
この結果、VGRS40が増大させるステアリングギア比の所定増大量ΔQは、バッテリ能力Dbが小さいときは同バッテリ能力Dbが大きいときよりも小さくなる。従って、同じ入力操舵角に対してVGRS40が必要とする電力も小さくなるので、バッテリ21が要求される電流も小さくなる。よって、VGRS40が発生する「障害物との衝突を回避しやすくするための力」である出力操舵角は減少することがない。
更に、第4装置は、バッテリ能力Dbが小さいときは同バッテリ能力Dbが大きいときよりも衝突回避操作時にVGRS40に流れる電流を小さくすることができるので、バッテリ21の内部抵抗による電圧降下分を小さくすることができる。従って、VGRS40に印加する電圧が大きく低下することを回避することができる。その結果、VGRS40が、VGRS40に印加される電圧が閾値電圧以下となった場合に機能を停止するように構成されている場合であっても、VGRS40に印加される電圧が同閾値電圧以下に低下しないので、VGRS40が機能を停止してしまうことを回避することができる。
第4装置において、CPUにより処理される図9及び図10のフローチャートに示されたルーチンが制御増大量設定手段に相当する。
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記各実施形態において、第1電気負荷装置は、EPS30及び/又はVGRS40であったが、第1電気負荷装置は、電動式後輪操舵装置(4WS及びアクティブリアステア等)及び電子制御ブレーキ装置であってもよい。
また、第1電気負荷装置は、運転者の衝突回避操作を補助する以下のような装置を含んでいると言うことができる。
(1)運転者による操舵操作に伴って車両に搭載されたバッテリから電力が供給されて力を発生し、その力により転舵(タイヤの向きを変更)することにより車両の進行方向を変更させ、車両に衝突回避運動を生じさせる装置(例えば、電動式パワーステアリング装置)。
(2)運転者による制動操作に伴って車両に搭載されたバッテリから電力が供給されて力を発生し、その力により車両制動力を発生させることにより車両を減速させ、車両に衝突回避運動を生じさせる装置(例えば、電子制御ブレーキ装置又は電気式制動装置)。
また、上記各実施形態において第2電気負荷装置は、AVS50であったが、第2電気負荷装置は、剛性可変式スタビライザ装置であってもよく、車両の運動特性を切換えて、車両の挙動を安定させることにより衝突回避操作に伴う車両の衝突回避運動を補助する電気負荷装置であればよい。
また、上記各実施形態において、車両10が障害物(先行車等)との衝突を回避するための緊急の度合いを表す緊急度指標値は、車両10から障害物までの距離Lr及び車両10と障害物との相対速度Vrとに基づいて取得されたが、緊急度指標値は、他の公知の方法を用いて取得してもよい。
また、本発明による車両の制御装置は、第1装置、第2装置、第3装置及び第4装置のうち少なくとも2つの装置を併せ持つ車両の制御装置としてもよい。この中で、第1装置と第2装置との組み合わせ、第1装置と第3装置との組み合わせ、第1装置と第4装置との組み合わせ、第2装置と第3装置との組み合わせ、第2装置と第4装置との組み合わせ、及び、第1〜第3装置の組み合わせ、第1〜第4装置の組み合わせ等は特に好ましい態様である。
第1装置と第2装置とを併せ持つ場合、第1所定値Wthと第2所定値Athとにおける非低下時所定値W1とA1とは同じ値であるか又はA1がW1よりも小さい値であってもよい。この何れの場合においても、低下時所定値W2と低下時所定値A2とは同じ値であってよい。これによれば、バッテリの能力が低下しているときはバッテリの能力が低下していないときよりも早い時点で警報が発せられると同時に第2電気負荷装置が作動させられる。通常、運転者は警報の後に第1電気負荷装置を作動させることが多い。従って、第1電気負荷装置が電力を必要とする時点においては、第2電気負荷装置は既に作動を完了しているから、第1電気負荷装置が作動するときにバッテリが要求される電流(総電流量)は、より確実に小さくなる。
更に、第1装置と第2装置とを併せ持つ場合、低下時所定値A2は低下時所定値W2よりも小さい値であることが好ましい。これによれば、バッテリの能力が低下しているときはバッテリの能力が低下していないときよりも「早い時点で警報が発せられ(W2<W1であるため。)、且つ、その警報が発せられる時点よりも早い時点にて第2電気負荷装置が作動させられる(A2<W2であるため。)」。従って、第1電気負荷装置が電力を必要とする時点においてバッテリが要求される電流(総電流量)は、より確実に小さくなる。
第1装置と「第3装置及び/又は第4装置」とを併せ持つ場合、第1所定値Wthにおける低下時所定値W2と「第3所定値Tth及び/又は第4所定値Qth」とは同じ値であることが好ましい。これによれば、バッテリの能力が低下しているときはバッテリの能力が低下していないときよりも早い時点で警報が発せられるとともに第1電気負荷装置が必要とする電流が減少するので、第1電気負荷装置が電力を必要とする時点においてバッテリが要求される電流(総電流量)は、より確実に小さくなる。
また、上記第1装置においては、バッテリの能力Dbが閾値バッテリ能力Dbth以上であるとき第1所定値Wthを非低下時所定値W1に設定し、バッテリ能力Dbが閾値劣化度Dbthより小さいとき第1所定値Wthを非低下時所定値W1より小さい低下時所定値W2に設定していた。これに対し、第1装置は、バッテリの能力Dbが小さくなるほど第1所定値Wthが連続的に小さくなるように第1所定値Wthを設定してもよい。
同様に、第2装置は、バッテリの能力Dbが小さくなるほど第2所定値Athが連続的に小さくなるように第2所定値Athを設定してもよい。
更に、第3装置は、バッテリの能力Dbが小さくなるほど所定増大量ΔTが小さくなるように所定増大量ΔTを設定してもよく、第4装置は、バッテリの能力Dbが小さくなるほど所定増大量ΔQが小さくなるように所定増大量ΔQを設定してもよい。
加えて、上記各実施形態の装置は、EPS30とVGRS40との両者を備えていたが、これらのうちEPS30のみを備えていてもよい。また、上記各実施形態における、バッテリ能力Dbが閾値バッテリ能力Dthより小さいか否かの判定は、「バッテリ21の劣化度が閾値劣化度より大きいか否か」、「バッテリ21の内部抵抗が閾値内部抵抗よりも大きいか否か」、「バッテリ21の残量が閾値残量よりも小さいか否か」、「バッテリ21の発生電圧が閾値電圧より小さいか否か」のうちの一つ以上の判定に置換してもよい。