JP2009051874A - 耐熱性液状フェノールノボラック樹脂、その製造方法ならびにその硬化物 - Google Patents

耐熱性液状フェノールノボラック樹脂、その製造方法ならびにその硬化物 Download PDF

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Abstract

【課題】
無溶剤ないしは少量の溶剤の存在下で封止に適した流動性と吸湿性、耐熱性を発揮する液状タイプのフェノールノボラック樹脂組成物を提供することにある。
【解決手段】
特定の液状フェノールノボラック樹脂に、特定の固形フェノールノボラック樹脂を溶解させた25℃での回転粘度が200Pa・s以下であることを特徴とする耐熱性液状フェノールノボラック樹脂、好ましくは該液状フェノールノボラック樹脂100重量部に対し、該固形フェノールノボラック樹脂が1〜40重量部からなる耐熱性液状フェノールノボラック樹脂により解決される。
【選択図】なし

Description

本発明は、低吸湿性、耐熱性に優れた硬化物が得られる液状タイプのフェノールノボラック樹脂組成物、その製造方法およびそれを用いたエポキシ樹脂硬化物に関し、さらに詳細には半導体(IC)封止材に適し、特にフリップチップ実装やチップサイズパッケージなどの半導体封止材料に適する半導体封止用硬化剤に関する。
また、本発明の耐熱性液状フェノールノボラック樹脂は各種バインダー、コンパウンド、コーティング材、積層材、成形材料等のエポキシ樹脂用硬化剤として使用される他、エポキシ化ノボラック樹脂の原料としても使用することができる。
従来から、電子材料用、特に半導体(IC)封止の分野では生産性、コスト等の面より樹脂封止が主流であり、作業性、成形性、電気特性、耐湿性、機械特性等に優れることから現状ではエポキシ樹脂組成物が主として用いられている。この硬化剤としては、フェノールノボラック樹脂、各種アミン類、酸無水物が挙げられるが、特に半導体(IC)封止用としては、耐熱性、信頼性の面からフェノールノボラック樹脂が主として用いられている。
近年、電子機器の更なる軽薄短小化、多機能化、半導体(IC)の高集積化が著しく加速しており、パッケージをプリント配線板(PCB)に取り付ける際の実装方式も、従来のピン挿入方式(DIP)から表面実装方式(BGA,SOP,SiP,CSP)が主流となってきている。更にはフリップチップ実装方式が高密度実装に有効な実装技術として適用され始めており、これらの封止材料としても使用されつつある。
これらは、液状のエポキシ樹脂と液状の酸無水物、アミン、アミド等の硬化剤が用いられ、フェノールノボラック硬化剤としては半固形〜固形フェノールノボラック樹脂又は溶剤に溶解したフェノールノボラック樹脂として用いられている。このような半固形〜固形フェノールノボラック樹脂を用いた封止材は、当然のことながら流動性が悪く、溶剤を用いたものは、溶剤が硬化後封止材中に含まれて性能に悪影響を及ぼす。
又、酸無水物を用いて、無溶媒の封止材を構成することも試みられているが、硬化後の封止材が熱水の存在、たとえばプレッシャークッカー試験の条件で加水分解を起こして、生成した酸がアルミニウム等の金属基板や配線を腐食させるために、耐湿寿命の低下を招いている。又、アミン、アミド基は強い活性を有することから信頼性の面からも好ましくない。
さらには、液状フェノールノボラック樹脂にイミド化合物を含有させた耐熱性液状フェノールノボラック樹脂が開示されている(特許文献1)が、流動性において十分であるとは言えない。
特開2001−214028号公報
本発明の目的は、上記従来の問題点を解決し、無溶剤ないしは少量の溶剤の存在下で封止に適した流動性と吸湿性、耐熱性を発揮する液状タイプのフェノールノボラック樹脂組成物を提供することにある。
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、液状フェノールノボラック樹脂に特定の固形フェノールノボラック樹脂を溶解させることにより、流動性、低吸湿性を有し、耐熱性、機械特性、エポキシ樹脂との硬化特性に優れた液状フェノールノボラック樹脂を見出し、本発明に至った。
即ち、本発明の課題は、一般式(1)で示される液状フェノールノボラック樹脂に、下記一般式(2)及び/または一般式(3)で示される固形フェノールノボラック樹脂を溶解させた耐熱性液状フェノールノボラック樹脂により解決される。
Figure 2009051874

(式中nは、平均重合度0〜5で、R1、R2、R3、R4、R5は同一でも異なっていてもよく、水素又は炭素原子数1〜4の直鎖又は分岐状のアルキル基、又はアリール基を示す。)
Figure 2009051874

(式中nは、平均重合度0〜5を示す。)
Figure 2009051874

(式中nは、平均重合度0〜5を示す。)
また、本発明は、上記一般式(1)で示される液状フェノールノボラック樹脂に、上記一般式(2)及び/または一般式(3)で示される固形フェノールノボラック樹脂を溶融混合することを特徴とする耐熱性液状フェノールノボラック樹脂の製造方法である。
本発明で得られた耐熱性液状フェノールノボラック樹脂は、流動性、低吸湿性、耐熱性、機械特性、エポキシ樹脂との硬化特性に優れているだけでなく、エポキシ化ノボラック樹脂の原料としても利用できる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において用いられる上記一般式(1)で示される液状フェノールノボラック樹脂は、R1〜R5が水素又は炭素数1〜4のアルキル基又はアリール基であり、同一でも異なっていてもよいが、R1又R5のオルソ位がアリール基で、R2〜R4が水素原子である液状フェノールノボラック樹脂が好適に用いられる。
平均重合度を示すnは、25℃で液体状態を呈し、且つ低粘度化の観点から、0〜5であり、0〜3が好ましく、0〜2がより好ましい。また、同様の観点から上記一般式(1)で示される液状フェノールノボラック樹脂の重量平均分子量は、800以下が好ましく、600未満がより好ましい。
上記一般式(2)で示される固形フェノールノボラック樹脂としては、低粘度化の観点から平均重合度nは、0〜5であり、0〜3が好ましく、0〜2がより好ましい。また、同様の観点から上記一般式(2)で示される固形フェノールノボラック樹脂の重量平均分子量は800以下が好ましく、600未満がより好ましい。
更に、上記一般式(3)で示される固形フェノールノボラック樹脂としては、低粘度化の観点から平均重合度nは、0〜5であり、0〜3が好ましく、0〜2がより好ましい。また、同様の観点から上記一般式(3)で示される固形フェノールノボラック樹脂の重量平均分子量は900以下が好ましく、800未満がより好ましい。
ここで、重量平均分子量とはGPC分析によるポリスチレン換算の重量平均分子量のことを示す。
本発明の耐熱性液状フェノールノボラック樹脂の形態にするには、上記一般式(1)で示される液状フェノールノボラック樹脂中に一般式(2)及び/または一般式(3)で示される固形フェノールノボラック樹脂を溶解して製造する。
溶解する方法としては、特に制限はないが、上記一般式(1)で示される液状フェノールノボラック樹脂中に一般式(2)及び/または一般式(3)で示される固形フェノールノボラック樹脂を溶融混合する方法が簡便で好ましい。
一般式(2)及び/または一般式(3)で示される固形フェノールノボラック樹脂を有機溶媒に溶解させて一般式(1)で示される液状フェノールノボラック樹脂と混合させる方法も考えられるが、有機溶媒を除去する点を考慮する必要がある。
本発明の製造方法における溶融混合温度は、一般式(2)及び/または一般式(3)で示される固形フェノールノボラック樹脂の融点にもよるが、通常、40〜250℃であり、50℃〜200℃が好ましく、70℃〜170℃がより好ましい。
また、本発明の製造方法における溶融混合時間は、その温度にもよるが、通常は10時間以内で行う。
本発明で使用する一般式(1)の液状フェノールノボラック樹脂および得られる耐熱性液状フェノールノボラック樹脂は、25℃において液体状態を呈するものであり、試料約1.2mlをE型粘度計(東機産業(株)製)を使用し25℃で測定した回転粘度の値が200Pa・s以下、好ましくは100Pa・s以下、より好ましくは80Pa・s以下、さらに好ましくは60Pa・s以下、最も好ましくは40Pa・s以下である。
本発明で得られる耐熱性液状フェノールノボラック樹脂は、25℃で液状あるいは200Pa・s以下の粘度を有すれば何ら問題はなく、一般式(1)で示される液状フェノール樹脂と、一般式(2)及び/または一般式(3)で示される固形フェノールノボラック樹脂との使用割合については、特に制限はない。
しかし、個々のフェノール樹脂の性質を考慮すると、上記一般式(1)で示される液状フェノール樹脂100重量部に対し、一般式(2)及び/または一般式(3)で示される固形フェノールノボラック樹脂を1〜40重量部使用するのが好ましい。
特に流動性特性および耐熱性を考慮すれば、上記一般式(1)で示される液状フェノール樹脂100重量部に対し、一般式(2)及び/または一般式(3)で示される固形フェノールノボラック樹脂を1〜35重量部がより好ましく、2〜30重量部がさらに好ましく、4〜30重量部が最も好ましい。
また、本発明において用いられる一般式(2)及び一般式(3)で示される固形フェノールノボラック樹脂は、許される使用量の範囲内であれば、単独若しくは2種以上を配合して用いても何ら問題はない。
本発明で得られる耐熱性液状フェノールノボラック樹脂は、そのままエポキシ樹脂の硬化剤としてバインダー、コーティング材、積層材、成形材料等の用途に使用することもできるし、エピクロルヒドリンと反応させることによりエポキシ樹脂とすることもできる。さらにはこれらを用いた硬化物とすることもできる。
本発明の耐熱性液状フェノールノボラック樹脂をエポキシ樹脂用硬化剤として使用する場合には、該フェノールノボラック樹脂とエポキシ樹脂及び硬化促進剤をそれぞれ所定量混合し、100℃〜250℃温度範囲で硬化させる。
使用するエポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂などのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ハロゲン化エポキシ樹脂など分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂が挙げられる。これらエポキシ樹脂は単独もしくは2種以上を混合して使用しても何ら問題ない。
好ましいエポキシ樹脂としては、低粘度化の観点より25℃において液状状態のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂が挙げられる。
硬化促進剤としては、エポキシ樹脂をフェノールノボラック樹脂で硬化させる為の公知の硬化促進剤を用いることができる。例えば、有機ホスフィン化合物及びそのボロン塩、3級アミン、4級アンモニウム塩、イミダゾール類及びのテトラフェニルボロン塩などを挙げることができるが、この中でも硬化性の面や低粘度化の観点より25℃において液状状態の2−エチル−4−メチルイミダゾールが好ましい。
本発明の耐熱性液状フェノールノボラック樹脂をエピクロルヒドリンと反応させてエポキシ樹脂とする方法については、例えば、該フェノールノボラック樹脂に過剰のエピクロルヒドリンを加え、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物の存在下に50〜150℃、好ましくは60〜120℃の範囲で1〜10時間程度反応させる方法が挙げられる。この場合、エピクロルヒドリンの使用量は、該フェノールノボラック樹脂の水酸基当量に対して2〜15倍モル、好ましくは2〜10倍モルである。また、使用するアルカリ金属水酸化物の使用量は、該フェノールノボラック樹脂の水酸基当量に対して0.8〜1.2倍モル、好ましくは0.9〜1.1倍モルである。
反応後の後処理については、反応終了後、過剰のエピクロルヒドリンを蒸留除去し、残留物をメチルイソブチルケトン等の有機溶剤に溶解し、ろ過し水洗して無機塩を除去し、次いで有機溶剤を留去することにより、目的とするエポキシ樹脂を得ることができる。
このようにして得られたエポキシ樹脂と該フェノールノボラック樹脂を硬化剤として新たなエポキシ樹脂組成物とすることもできる。
得られたエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて、無機充填材、離型剤、着色剤、カップリング剤、難燃剤等を添加または予め反応して用いることができる。特に半導体封止用途に使用する場合、無機充填材の添加は必須となる。このような無機充填材の例として、非晶性シリカ、結晶性シリカ、アルミナ、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、硫酸バリウムなどをあげることができるが、特に非晶性シリカ、結晶性シリカなどが好ましい。また、これら添加剤の配合割合は公知の半導体封止用エポキシ樹脂組成物における割合と同様でよい。
本発明で得られる耐熱性液状フェノールノボラック樹脂は、半導体装置を封止する場合の硬化剤として使用することもでき、該フェノール樹脂をエポキシ樹脂化して半導体装置の封止材に用いることも可能であり、さらには該フェノール樹脂と得られたエポキシ樹脂とを含有するエポキシ樹脂組成物として半導体装置の封止材として使用することもできる。
利用できる半導体装置としては、リードフレーム、配線板、ガラス、シリコンウエバ等の基盤に半導体チップ、トランジスター、ダイオード、発光ダイオード、サイリスター等の能動素子、コンデンサ、抵抗体、抵抗アレイ、コイル、スイッチ等の受動素子などを搭載した電子部品が挙げられる。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。しかし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、本文中「部」は重量部を示す。
参考例1
<一般式(1)で示される液状フェノールノボラック樹脂Aの合成>
温度計、仕込・留出口、冷却器および攪拌機を備えた容量1000容量部のガラス製フラスコにo−アリルフェノール536部(4.0モル)、42%ホルマリン57.1部(0.8モル)、及び蓚酸5.4部を4つ口フラスコに入れ、100℃で5h反応させた後160℃まで昇温して脱水し、後減圧40torrで未反応成分を除去した。得られた液状フェノールノボラック樹脂の回転粘度は1.7Pa・s(25℃)であった。ゲル浸透クロマトグラフ分析(以下GPCと略記することもある。)によるポリスチレン換算数平均分子量(Mn)は496で、重量平均分子量(Mw)は541であった。
参考例2
<一般式(2)で示される固形フェノールノボラック樹脂の合成>
温度計、仕込み・留出口、冷却器および攪拌機を備えた容量1000容量部のガラス製フラスコにフェノール400部(4.26モル)、サリチルアルデヒド46.84部(0.38モル)、及びパラトルエンスルホン酸1部を4つ口フラスコに入れ、窒素気流下にて130℃で反応させ、95℃まで冷却した。25%水酸化ナトリウム水溶液にて中和を行った後、90℃以上の純水400部を投入し、水洗した。その後、内温を150℃まで昇温し、減圧−スチーミング処理にて未反応成分を除去した。得られた樹脂は25℃では固形であり、該樹脂の150℃の溶融粘度は、0.9Pa・sであった。GPC分析によるポリスチレン換算数平均分子量(Mn)は554で、重量平均分子量(Mw)は616であった。
実施例1
<耐熱性液状フェノールノボラック樹脂の合成>
容量500容量部のガラス製フラスコに、上記参考例1で合成した一般式(1)の液状フェノールノボラック樹脂Aを100部、上記参考例2で合成した一般式(2)の固形フェノールノボラック樹脂を4.2部添加し、窒素気流下、120℃で2h攪拌し、耐熱性液状フェノールノボラック樹脂を得た。得られた耐熱性液状フェノールノボラック樹脂の回転粘度は3.0Pa・s(25℃)であった。GPC分析によるポリスチレン換算数平均分子量(Mn)は498で、重量平均分子量(Mw)は546であった。
実施例2〜4、比較例1
表1および表2に示す組成割合にて、実施例1と同様に行った。
得られた樹脂の物性値を表1および表2に示した。
参考例3
<一般式(3)で示される固形フェノールノボラック樹脂の合成>
温度計、仕込み・留出口、冷却器および攪拌機を備えた容量1000容量部のガラス製フラスコにフェノール400部(4.26モル)、40%グリオキザール86.9部(0.60モル)、及びパラトルエンスルホン酸1部を4つ口フラスコに入れ、窒素気流下にて120℃で反応させ、80℃まで冷却した。25%水酸化ナトリウム水溶液にて中和を行った後、90℃以上の純水400部を投入し、水洗した。その後、内温を180℃まで昇温し、減圧−スチーミング処理にて未反応成分を除去した。得られた樹脂は25℃では固形であり、該樹脂の200℃の溶融粘度は、20Pa・sであった。GPC分析によるポリスチレン換算数平均分子量(Mn)は580で、重量平均分子量(Mw)は746であった。
実施例5
<耐熱性液状フェノールノボラック樹脂の合成>
容量500容量部のガラス製フラスコに、上記参考例1で合成した液状フェノールノボラック樹脂A100部、参考例3で合成した固形フェノールノボラック樹脂を4.2部添加し、窒素気流下、170℃で2h攪拌し、耐熱性液状フェノールノボラック樹脂を得た。得られた耐熱性液状フェノールノボラック樹脂の回転粘度は2.9Pa・s(25℃)であった。GPC分析によるポリスチレン換算数平均分子量(Mn)は509で、重量平均分子量(Mw)は589であった。
実施例6〜7、比較例2〜3
表1および表2に示す組成割合にて、実施例5と同様に行った。
得られた樹脂の物性値を表1および表2に示した。
実施例8
<耐熱性液状フェノールノボラック樹脂の合成>
容量500容量部のガラス製フラスコに、上記参考例1で合成した液状フェノールノボラック樹脂A100部、上記参考例2で合成した固形フェノールノボラック樹脂を11.4部、上記参考例3で合成した固形フェノールノボラック樹脂を11.4部添加し、窒素気流下、170℃で2h攪拌し、耐熱性液状フェノールノボラック樹脂を得た。得られた耐熱性液状フェノールノボラック樹脂の回転粘度は45.9Pa・s(25℃)であった。GPC分析によるポリスチレン換算数平均分子量(Mn)は523で、重量平均分子量(Mw)は634であった。
参考例4
<一般式(1)で示される液状フェノールノボラック樹脂Bの合成>
温度計、仕込・留出口、冷却器および攪拌機を備えた容量1000容量部のガラス製フラスコにo−アリルフェノール536部(4.0モル)、42%ホルマリン22.9部(0.32モル)、及び蓚酸5.1部を4つ口フラスコに入れ、100℃で5h反応させた後160℃まで昇温して脱水し、後減圧40torrで未反応成分を除去した。得られた液状フェノールノボラック樹脂の回転粘度は0.9Pa・s(25℃)であった。ゲル浸透クロマトグラフ分析(以下GPCと略記することもある。)によるポリスチレン換算数平均分子量(Mn)は465で、重量平均分子量(Mw)は495であり、繰り返し単位nの平均値は0.2であった。
実施例9
<耐熱性液状フェノールノボラック樹脂の合成>
容量500容量部のガラス製フラスコに、上記参考例4で製造した液状フェノールノボラック樹脂Bを100部、参考例2で合成した固形フェノールノボラック樹脂Aを22.7部添加し、窒素気流下、120℃で2h攪拌し、耐熱性液状フェノールノボラック樹脂を得た。得られた耐熱性液状フェノールノボラック樹脂の回転粘度は16.6Pa・s(25℃)であった。GPC分析によるポリスチレン換算数平均分子量(Mn)は483で、重量平均分子量(Mw)は526であった。
実施例10〜11、比較例4
表1および表2に示す組成割合にて、実施例9と同様に行った。
得られた樹脂の物性値を表1および表2に示した。
なお、本発明で得られた樹脂および硬化剤の分析方法は以下のとおりである。
フェノールノボラック樹脂
(1)、ゲル浸透クロマトグラフ分析:GPC測定方法
・型式:HLC−8220 東ソー(株)製
・カラム:TSK−GEL Hタイプ
G2000H×L 4本
G3000H×L 1本
G4000H×L 1本
・測定条件:カラム圧力 13.5MPa
・溶解液:テトラヒドロフラン(THF)
・フローレート:1ml/min.
・測定温度:40℃
・検出器:スペクトロフォトメーター(UV−8020)
・RANGE:2.56 WAVE LENGTH 254nm & RI
(2)、ICI粘度
・ICIコーンプレート粘度計のプレート温度を150℃に設定する。
・使用コーンを試料粘度に応じ、選択する。
・150℃のホットプレート中心に試料を乗せ、更にコーンをその上に接触させる。
・90sec.後モータースイッチを入れ、指示値が安定した点で数値を読み取る。
・ n=2の平均値を粘度値とする。
(3)、回転粘度(E型粘度)
・試料約1.2mlをカップに入れ、E型粘度計(東機産業(株)製)を使用し測定する。
・指示値が安定した点で数値を読み取る。
(4)、OH当量
(概要;塩化アセチルでアセチル化を行い、過剰の塩化アセチルを水で分解しアルカリで滴定する方法)
・試料1gを精秤し、1,4−ジオキサン;10mlを加え溶解する。
・溶解を確認後、1.5mol/L塩化アセチル/無水トルエン溶液;10mlを加え、0℃まで冷却する。
・ピリジン;2mlを加え、60±1℃のウォーターバス中で1Hr.反応させる。
・反応後、冷却し純水;25mlを加え、よく混合させることで塩化アセチルを分解させる。
・アセトン;25ml、フェノールフタレインを加える。
・1mol/L−水酸化カリウムを用いて、試料溶液が赤紫色に呈色するまで滴定を行う。
・ブランク(試料なし)について上記操作にて同時に測定を行う。
次式により計算し、求める。
OH当量[g/eq.]=(1000×W)/(f×(B−A))
ここで
W:試料重量[g]
f:1mol/L−水酸化カリウムのファクター=1.000
B:ブランク測定に要した1mol/L−水酸化カリウム量[ml]
A:試料測定に要した1mol/L−水酸化カリウム量[ml]
硬化剤
(5)、吸水率測定
・150℃×5Hr.+180℃×8Hr.にて注型し、下記サイズに硬化させる。
サイズ;(φ50±1)×(3±0.2)(径×厚;mm)
・表面を良く拭き取り、試料重量を測定する。
・100mlサンプル瓶に入れ、純水を80mlを加える。
・熱風循環式乾燥器中にて、95℃×24Hr.吸水させる。
・24Hr.後、乾燥器より取り出し、低温恒温水槽に浸けて25℃に冷却する。
・冷却後、表面に付着した水分を良く拭き取り重量を測定する。
・次式により計算し、吸水率を求める。
吸水率[%]=((B−A)/A)×100
A:吸水前重量[g]
B:吸水後重量[g]
(6)、ガラス転位温度(Tg)測定
・150℃×5Hr.+180℃×8Hr.にて注型、硬化させた試料を下記サイズにカットする。
サイズ;(50±1)×(40±1)×(100±1)(縦×横×高;mm)
・測定装置;TMA−60(SHIMADZU製)に試料をセットし、N雰囲気にて測定。
・昇温速度;3℃/min.で350℃まで測定し、変曲点の温度を求めガラス転位温度(Tg)とする。
(7)、硬化物機械特性(弾性率・変位・応力・歪み)測定
・150℃×5Hr.+180℃×8Hr.にて注型、硬化させた試料を下記サイズにカットする。
・サイズ;(75±1)×(6±1)×(4±1)(縦×横×厚;mm)
・測定装置;オートグラフ (型式;AG−5000D SHIMADZU製)
ヘッドスピード;2mm/min. 2点間距離;50mm 室温下にて
圧縮曲げ試験を行う。
参考例1〜4で合成したフェノールノボラック樹脂の物性特性を表2に示した。
表1および表2で合成した各フェノールノボラック樹脂を硬化剤として、エポキシ樹脂としてはジャパンエポキシレジン株式会社製エピコート828EL(ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂、エポキシ当量186g/eq)を、硬化促進剤として四国化成株式会社製2E4MZ(2−エチル−4−メチルイミダゾール)を使用した。上記エポキシ樹脂と同当量比で配合し、150℃に加熱、溶融混合し、真空脱泡後150℃に加熱された金型に注形し、150℃にて5h、180℃にて8h硬化し、エポキシ樹脂硬化物を得た。得られたエポキシ樹脂硬化物の配合と物性特性を表3および表4に併せて示した。
本発明では、予め合成した液状フェノールノボラック樹脂と、特定の固形フェノールノボラック樹脂とを特定の割合で溶融混合することにより、耐熱性および流動性を兼ね備えたフェノールノボラック樹脂を簡便な方法で製造することができる。
Figure 2009051874

Figure 2009051874
Figure 2009051874



Figure 2009051874

Claims (9)

  1. 下記一般式(1)で示される液状フェノールノボラック樹脂に、
    Figure 2009051874


    (式中nは、平均重合度0〜5で、R1、R2、R3、R4、R5は同一でも異なっていてもよく、水素又は、置換又は非置換の炭素原子数1〜4の直鎖又は分岐状のアルキル基、置換又は非置換のアリール基を示す。)
    下記一般式(2)及び/または一般式(3)で示される固形フェノールノボラック樹脂を溶解し、
    Figure 2009051874

    (式中nは、平均重合度0〜5を示す。)
    Figure 2009051874


    (式中nは、平均重合度0〜5を示す。)
    25℃での回転粘度が200Pa・s以下であることを特徴とする耐熱性液状フェノールノボラック樹脂。
  2. 上記一般式(1)で示される液状フェノールノボラック樹脂100重量部に対し、一般式(2)及び/または一般式(3)で示される固形フェノールノボラック樹脂が1〜40重量部からなる請求項1に記載の耐熱性液状フェノールノボラック樹脂。
  3. 上記一般式(2)及び/または一般式(3)で示される固形フェノールノボラック樹脂を溶融混合して溶解させることを特徴とする請求項1または2に記載の耐熱性液状フェノールノボラック樹脂。
  4. 上記一般式(1)で示される液状フェノールノボラック樹脂に、一般式(2)及び/または一般式(3)で示される固形フェノールノボラック樹脂を溶融混合することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐熱性液状フェノールノボラック樹脂の製造方法。
  5. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐熱性液状フェノールノボラック樹脂または請求項4に記載の製造方法により得られた耐熱性液状フェノールノボラック樹脂を含むエポキシ樹脂用硬化剤。
  6. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐熱性液状フェノールノボラック樹脂または請求項4に記載の製造方法により得られた耐熱性液状フェノールノボラック樹脂をエポキシ化したエポキシ化ノボラック樹脂。
  7. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐熱性液状フェノールノボラック樹脂または請求項4に記載の製造方法により得られた耐熱性液状フェノールノボラック樹脂と請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐熱性液状フェノールノボラック樹脂または請求項4に記載の製造方法により得られた耐熱性液状フェノールノボラック樹脂をエポキシ化したエポキシ化ノボラック樹脂とを含有配合してなるエポキシ樹脂組成物。
  8. 請求項7に記載のエポキシ樹脂組成物を用いた硬化物。
  9. 請求項8に記載の硬化物を含む半導体装置。
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