JP2009036105A - バルブタイミング調整装置 - Google Patents

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憲 堀
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茂之 草野
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Abstract

【課題】高応答性と高耐久性とを両立させるバルブタイミング調整装置を提供すること。
【解決手段】バルブタイミング調整装置の位相調整機構において、クランク軸からのトルク伝達により正回転中の遊星キャリアを逆回転させて内燃機関のクランク軸及びカム軸2間の相対位相を始動位相の側へと変化させる場合に、電動モータに対する通電をカットしてモータ軸から遊星キャリアへ伝達するモータトルクを消失させつつ(S102)、電動ブレーキに対して通電を施してモータ軸から遊星キャリアへ伝達するブレーキトルクを発生させる(S103)。
【選択図】図9

Description

本発明は、クランク軸からのトルク伝達によりカム軸が開閉する吸気弁及び排気弁のうち少なくとも一方のバルブタイミングを調整する内燃機関のバルブタイミング調整装置に関する。
従来、バルブタイミングを決めるクランク軸及びカム軸間の相対位相(以下、「機関位相」という)を位相調整機構によって調整するバルブタイミング調整装置が知られている。
このようなバルブタイミング調整装置の一種として特許文献1には、クランク軸からのトルク伝達により正回転する位相調整機構の入力回転体に電動モータの出力回転体を連繋させて、当該電動モータにより位相調整機構を駆動するようにしたものが、開示されている。具体的に、特許文献1に開示の装置では、出力回転体からのモータトルクの伝達により入力回転体を正逆回転させることで、当該入力回転体の回転状態に応じた機関位相の調整が可能となっている。
特開2005−171990号公報
さて、特許文献1に開示の装置において、クランク軸からのトルク伝達により正回転する入力回転体を高応答性により素早く逆回転させる必要があるときには、入力回転体のイナーシャに対抗し得る大きなモータトルクを発生させなければならない。しかし、大きなモータトルクを発生させる場合、電動モータへの通電を制御する通電制御回路部に大電流が流れて焼損等の故障を招来するおそれがあった。尚、入力回転体の逆回転時における高い応答性は、例えばフェイル時や作動停止時等、内燃機関の始動を許容する始動位相の側へ機関位相を急速に変化させて機関始動性を確保する必要がある場合に、要求される。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、高応答性と高耐久性とを両立させるバルブタイミング調整装置を提供することにある。
請求項1に記載の発明は、クランク軸からのトルク伝達によりカム軸が開閉する吸気弁及び排気弁のうち少なくとも一方のバルブタイミングを調整する内燃機関のバルブタイミング調整装置において、出力回転体を有し、当該出力回転体を回転駆動するモートルクを通電により発生させる電動モータと、出力回転体を制動するブレーキトルクを通電により発生させる電動ブレーキと、クランク軸からのトルク伝達により正回転し出力回転体からのトルク伝達により正逆回転する入力回転体を有し、当該入力回転体の回転状態に応じて機関位相を調整する位相調整機構と、電動モータに対する通電及び電動ブレーキに対する通電を制御する通電制御回路部であって、正回転中の入力回転体を逆回転させることにより位相調整機構にて機関位相を変化させる場合に、電動モータに対する通電をカットしつつ電動ブレーキに対して通電を施す通電制御回路部と、を備えることを特徴とする。
このような発明によると、クランク軸からのトルク伝達により正回転する入力回転体を逆回転させて機関位相を変化させるとき(以下、「逆回転位相変化時」ともいう)には、通電制御回路部から電動ブレーキに対して通電を施すことにより、出力回転体を制動するブレーキトルクを発生させて入力回転体へと伝達することができる。ここで電動ブレーキは、回転エネルギーを熱エネルギーへ変換しつつ出力回転体を制動することができるので、入力回転体のイナーシャに対抗し得る大きなブレーキトルクを小電流の通電にて発生することが可能である。しかも、逆回転位相変化時には、電動モータに対する通電制御回路部からの通電をカットしてモータトルクの発生を止めることになるので、通電制御回路部に大電流が流れて故障を招来する事態を回避することができる。以上によれば、大きなブレーキトルクの発生により逆回転位相変化時の応答性を高めるのと両立して、通電制御回路部の故障の回避により耐久性を高めることができるのである。
請求項2に記載の発明によると、位相調整機構は、入力回転体の逆回転により、遅角側及び進角側のうち内燃機関の始動を許容する始動位相の側へ機関位相を変化させる。これによれば、例えばフェイル時や作動停止時等において機関位相を始動位相の側へ急速に変化させる必要がある場合には、電動ブレーキへの通電によりブレーキトルクを発生して入力回転体を素早く逆回転させることで、機関始動性の確保が可能となる。
請求項3に記載の発明によると、通電制御回路部は、複数のスイッチング素子を有し、それらスイッチング素子のオンオフにより電動モータに対して通電を施す。これによれば、逆回転位相変化時においては、複数のスイッチング素子のオンオフによる電動モータへの通電をカットすることで、それらスイッチング素子に大電流を流さないようにすることができる。したがって、大電流が流れることにより各スイッチング素子が焼損する等して、通電制御回路部が故障に到る事態を回避することができる。
請求項4に記載の発明によると、電動ブレーキは、出力回転体に摩擦接触することによりブレーキトルクを発生する摩擦部材と、摩擦部材を出力回転体に摩擦接触させるための電磁駆動力を通電により発生するソレノイドと、を有する。これによれば、ソレノイドへの通電により電磁駆動力を発生させて摩擦部材を出力回転体に摩擦接触させることで、回転エネルギーを高効率にて熱エネルギーへと変換しつつ出力回転体を制動することができる。したがって、逆回転位相変化時において入力回転体のイナーシャに対抗し得る大きなブレーキトルクを発生させる必要があっても、ソレノイドへの通電電流を可及的に小さくすることができるのである。
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態によるバルブタイミング調整装置1を示している。バルブタイミング調整装置1は車両に搭載され、内燃機関のクランク軸(図示しない)からカム軸2へ機関トルクを伝達する伝達系に設置されている。
(基本構成)
まず、バルブタイミング調整装置1の基本構成について説明する。バルブタイミング調整装置1は、電動モータ4、電動ブレーキ5、通電制御回路部6及び位相調整機構8等を組み合わせてなり、クランク軸とカム軸2との間の機関位相によって決まるバルブタイミングを調整する。尚、本実施形態においてカム軸2は内燃機関の吸気弁を開閉するものであり、バルブタイミング調整装置1は当該吸気弁のバルブタイミングを調整する。
図1,2に示すように電動モータ4は、ハウジング10、軸受12、モータ軸14、永久磁石18及びモータステータ16を備えた埋設磁石型ブラシレスモータである。ハウジング10は、チェーンケース等の内燃機関の固定節9に固定される。ハウジング10内には、二つの軸受12及びモータステータ16が収容固定されている。各軸受12は、モータ軸14の軸本体14aを正逆回転自在に支持している。モータ軸14において軸本体14aから外周側へ突出するロータ部14bの内部には、その回転方向に等間隔に並ぶ形態で複数の永久磁石18が埋設されている。回転方向において隣り合う永久磁石18同士は、相反する極性の磁極をロータ部14bの外周壁側に形成している。モータステータ16はロータ部14bの外周側に同心的に配置されており、モータコア16a及びモータコイル16bを有している。モータコア16aは鉄片を積層して形成され、モータ軸14の回転方向に等間隔に複数設けられている。各モータコア16aには、モータコイル16bが個別に巻装されている。
図1,3に示すように電動モータ4は、さらに三つの回転角センサSU,SV,SWを備えている。各回転角センサSU,SV,SWは例えばホール素子等からなり、モータ軸14の回転方向に所定間隔をあけて位置決めされている。回転角センサSU,SV,SWは、それぞれモータ軸14に装着されたセンサ磁石20が磁極により形成する磁界を感知することで、モータ軸14の実回転位置を表す検出信号を出力する。
図1に示すように各モータコイル16bは、通電制御回路部6と電気的に接続されており、それらモータコイル16bへの通電が通電制御回路部6によって制御されるようになっている。通電制御回路部6により制御された通電に従って電動モータ4は、各永久磁石18に作用する回転磁界を各モータコイル16bの励磁によって形成し、当該形成磁界に応じた方向のモータトルクをロータ部14bに発生させてモータ軸14を正逆回転駆動する。ここで本実施形態では、モータ軸14に関して、図2の時計方向及び反時計方向がそれぞれ正回転方向及び逆回転方向と定義されている。尚、各モータコイル16bへの通電が通電制御回路部6によってカットされるときには、それらモータコイル16bの励磁によって各永久磁石18に作用する回転磁界が消失するので、モータトルクの発生は停止することになる。
図1,4に示すように電動ブレーキ5は、ドラム102、シュー104、ライニング106、リターンスプリング108、ソレノイド110及びステー112を備えた摩擦接触型電磁ブレーキである。ドラム102は、有底の二重円筒状に形成されてモータ軸14のロータ部14bに同軸上に固定されており、それによってモータ軸14と一体に正逆回転可能となっている。ドラム102においてモータ軸14の軸本体14aが貫通する底部は、耐摩耗性の高い金属からなる摺接面102aをロータ部14bとは反対側に形成している。尚、本実施形態では、モータ軸14及びドラム102が共同して特許請求の範囲に記載の「出力回転体」を構成している。
シュー104は円環板状に形成され、軸本体14aの外周側に同心的に配置されている。シュー104は、それに突出形成されたガイド部104aが電動モータ4のハウジング10に支持されることにより、軸方向に往復移動可能となっている。金属製のシュー104においてドラム102の摺接面102aと軸方向に正対する面には、樹脂等の摩擦材からなるライニング106が固定されている。尚、本実施形態では、ライニング106が特許請求の範囲に記載の「摩擦部材」に相当している。
リターンスプリング108は、本実施形態では金属製の皿ばねであり、ハウジング10に固定されたステー112とシュー104との間に介装されている。リターンスプリング108は、ステー112及びシュー104間において圧縮変形することにより、シュー104を軸方向のドラム102と反対側へと付勢する復原力を発生する。ソレノイド110は軸本体14aの外周側に同心的に配置され、シュー104のライニング106とは反対側に一体移動可能に固定されている。ソレノイド110は、鉄心からなるブレーキコア110aと、ブレーキコア110aに巻装されたブレーキコイル110bとを有している。
図1に示すように、ブレーキコイル110bは通電制御回路部6と電気的に接続されており、当該ブレーキコイル110bへの通電が通電制御回路部6によって制御されるようになっている。通電制御回路部6により制御された通電に従ってソレノイド110は、電磁駆動力としてドラム102に作用する磁気吸引力をブレーキコイル110bの励磁により形成することで、シュー104及びライニング106と一体に軸方向のドラム102側へと移動する。これにより、ライニング106はドラム102の摺接面102aに摩擦接触することになるので、当ドラム102がモータ軸14と一体に回転しているときには、モータ軸14を制動するブレーキトルクを発生させることができるのである。尚、ブレーキコイル110bへの通電が通電制御回路部6によってカットされるときには、ソレノイド110及びドラム102間の磁気吸引力が消失するので、リターンスプリング108の復原力によってライニング106が摺接面102aから離間し、ブレーキトルクの発生が停止することになる。
さて、以上説明した電気系要素4,5,6に対し、図1に示す位相調整機構8は、駆動側回転体22、従動側回転体24、遊星歯車ユニット30及びリンクユニット50を備えている。
駆動側回転体22は、内燃機関のクランク軸との間にタイミングチェーンが巻き掛けられるタイミングスプロケットである。クランク軸から機関トルクが駆動側回転体22へ入力されるときには、駆動側回転体22はクランク軸と連動して図5〜7の時計方向へ回転する。図1に示すように、従動側回転体24は内燃機関のカム軸2に同軸上に固定されており、カム軸2と共に図5〜7の時計方向へ回転する。以上により本実施形態では、モータ軸14の正回転方向が内燃機関の回転方向と同一方向に、またモータ軸14の逆回転方向が内燃機関の回転方向と反対方向に設定されている。
図1,5に示すように遊星歯車ユニット30は、太陽歯車31、遊星キャリア32、遊星歯車33及び伝達回転体34等から構成されている。太陽歯車31は駆動側回転体22に同心的に螺子止めされており、クランク軸からの機関トルクの伝達によって駆動側回転体22と一体に回転する。太陽歯車31は、歯先円が歯底円の外周側にある外歯車部35を有している。遊星キャリア32は継手37を介してモータ軸14の軸本体14aに連繋しており、モータ軸14からモータトルクが伝達されることによってモータ軸14と一体に正逆回転する。遊星キャリア32は、駆動側回転体22に対して偏心する円筒面状の外周面部により偏心部38を形成している。尚、本実施形態では、遊星キャリア32が特許請求の範囲に記載の「入力回転体」に相当している。
遊星歯車33は、太陽歯車31の内周側に偏心して配置され、遊星ベアリング40を介して偏心部38に嵌合している。遊星歯車33は、歯先円が歯底円の内周側にあると共に歯数が太陽歯車31の外歯車部35よりも多い内歯車部39を有している。遊星歯車33の内歯車部39は、偏心側とは反対側において太陽歯車31の外歯車部35と噛合しており、駆動側回転体22に対する遊星キャリア32の相対回転に応じて遊星運動する。伝達回転体34は、従動側回転体24の外周側に同心的に嵌合している。伝達回転体34には、回転方向に等間隔に並ぶ複数の係合孔部48が設けられ、それに対応して遊星歯車33には、各係合孔部48内に遊挿される複数の係合突部49が設けられている。以上により本実施形態では、各係合突部49が係合孔部48に係合することで遊星歯車33の自転運動が抽出されて、伝達回転体34の回転運動へと変換されるようになっている。
図1,6,7に示すようにリンクユニット50は、リンク52,53、案内部54及び可動体56等から構成されている。尚、図6,7では、断面を表すハッチングを省略している。図1,6に示すように第一リンク52は、駆動側回転体22に回り対偶によって連繋している。第二リンク53は、従動側回転体24に回り対偶によって連繋していると共に、可動体56を介した回り対偶によって第一リンク52に連繋している。図1,7に示すように案内部54は、伝達回転体34において遊星歯車33とは反対側の端面を含む部分により形成されている。案内部54は渦巻溝状の案内溝58を形成しており、当該案内溝58に可動体56が滑動自在に嵌合している。
以上の構成により位相調整機構8は、遊星キャリア32の回転状態に応じて作動することにより、機関位相を調整する。具体的には、モータ軸14が駆動側回転体22と同速にて正回転することにより遊星キャリア32が駆動側回転体22に対して相対回転しないときには、遊星歯車33が遊星運動することなく回転体22,34と一体に回転する。故に、可動体56は案内溝58内を案内されず、それによってリンク52,53の相対位置関係が変化しないので、モータ軸14と位相調整機構8とが連れ回り状態となって機関位相が保持される。
一方、モータ軸14が駆動側回転体22よりも高速に正回転することにより遊星キャリア32が駆動側回転体22に対して相対回転するときには、遊星歯車33が遊星運動して伝達回転体34が駆動側回転体22に対する進角側(図7の時計方向)へ相対回転する。その結果、可動体56が案内溝58内を案内されて、従動側回転体24が駆動側回転体22に対する進角側(図6の時計方向)へ相対回転するようにリンク52,53の相対位置関係が変化するため、機関位相が進角する。
また一方、モータ軸14が駆動側回転体22よりも低速に正回転する又は逆回転することにより遊星キャリア32が駆動側回転体22に対して相対回転するときには、遊星歯車33が遊星運動して伝達回転体34が駆動側回転体22に対する遅角側(図7の反時計方向)へ相対回転する。その結果、可動体56が案内溝58内を案内されて、従動側回転体24が駆動側回転体22に対する遅角側(図6の反時計方向)へ相対回転するようにリンク52,53の相対位置関係が変化するため、機関位相が遅角する。
尚、ここで本実施形態では、図6,7に示すように従動側回転体24が駆動側回転体22に対して最遅角することにより機関位相として実現される最遅角位相が、内燃機関の始動を許容すると共に燃費を向上させる始動位相となっている。したがって、バルブタイミング調整装置1の故障によるフェイル時(特に低温下でのフェイル時)や、内燃機関の停止に伴うバルブタイミング調整装置1の作動停止時には、機関位相を最遅角位相まで急速に変化させることを可能にする応答性が要求されるのである。
(通電制御回路部の特徴的構成)
以下、通電制御回路部6の特徴的構成を、図1,3,8を参照しつつ説明する。図1に示すように通電制御回路部6は、電子コントロールユニット(ECU)60、モータドライバ70及びブレーキドライバ120を備えている。本実施形態においてECU60は電動モータ4の外部に、またモータドライバ70及びブレーキドライバ120は電動モータ4の内部に配置されているが、それら回路要素60,70,120を電動モータ4の外部又は内部に纏めて配置するようにしてもよい。
ECU60はマイクロコンピュータを主体に構成されており、図3に示すようにモータドライバ70及びブレーキドライバ120と電気接続されている。ECU60は、内燃機関を制御する機能と共に、電動モータ4及び電動ブレーキ5への通電処理全体を制御する機能を備えている。
ECU60は、モータドライバ70から与えられる電動モータ4の実回転方向Dr及び実回転数Sr等に基づいて機関位相の実位相を算出すると共に、内燃機関の運転状況等に基づいて機関位相の目標位相を算出する。さらにECU60は、算出した実位相及び目標位相の位相差に基づいて、電動モータ4における目標回転方向Dt及び目標回転数St並びに電動ブレーキ5に対する目標通電電流量Itを設定し、それらの設定結果を制御指令として各ドライバ70,120に与えるのである。
モータドライバ70には、専用の電気回路要素によってハード的に構成された信号生成ブロック72及び通電ブロック74が設けられている。信号生成ブロック72は、電動モータ4の各回転角センサSU,SV,SWと、ECU60と、通電ブロック74とに電気的に接続されている。信号生成ブロック72は、モータ軸14の実回転位置を表す各回転角センサSU,SV,SWの検出信号に基づいて電動モータ4の実回転方向Dr及び実回転数Srをそれぞれ算出し、それらの算出結果をECU60及び通電ブロック74に与える。
図8に示すように通電ブロック74は、インバータ部76及び駆動部78を備えているブリッジ回路からなるインバータ部76は、上段スイッチング素子FU,FV,FW及び下段スイッチング素子GU,GV,GWを有している。上段スイッチング素子FU,FV,FWと下段スイッチング素子GU,GV,GWとは、符号の末尾が同じもの同士で電気的に接続されており、それらの接続点間において電動モータ4の各モータコイル16bがスター結線されている。
駆動部78は制御ICからなり、ECU60と、信号生成ブロック72と、インバータ部76の各スイッチング素子FU,FV,FW,GU,GV,GWとに電気的に接続されている。駆動部78は、ECU60から与えられる目標回転方向Dt及び目標回転数Stと、信号生成ブロック72から与えられる実回転方向Dr及び実回転数Srとに基づいて、各スイッチング素子FU,FV,FW,GU,GV,GWを個別にオンオフ駆動する。その結果、電動モータ4の各モータコイル16bが所定順序で通電されて励磁することにより、モータ軸14にはモータトルクが発生することになる。
図3に示すようにブレーキドライバ120は、昇圧レギュレータ等の専用の電気回路要素によってハード的に構成され、ECU60と、電動ブレーキ5のソレノイド110のブレーキコイル110bとに電気的に接続されている。ブレーキドライバ120は、ECU60から与えられる目標通電電流量Itに対してブレーキコイル110bへの実通電電流量Irが一致するように、ソレノイド110を通電駆動する。その結果、ライニング106がソレノイド110共に移動してドラム102と摩擦接触することにより、回転中のモータ軸14にはブレーキトルクが発生することになる。
(通電制御回路部の特徴的作動)
以下、通電制御回路部6の特徴的作動を、図9を参照しつつ説明する。電動モータ4の実回転方向Drが正回転方向となっているとき、機関位相を目標位相の側となる遅角側へ変化させるために目標回転方向Dtが逆回転方向に設定されると(S101)、ECU60は逆回転位相変化処理を実行する。
具体的に逆回転位相変化処理では、まず、零に設定した目標回転数Stをモータドライバ70の駆動部78に与えることにより、電動モータ4の各モータコイル16bに対する通電をカットして、モータ軸14のモータトルクを消失させる(S102)。続いて、逆回転位相変化処理では、最大値に設定した目標通電電流量Itをブレーキドライバ120に与えることにより、電動ブレーキ5のソレノイド110のブレーキコイル110bに対し最大電流量の通電を施して、モータ軸14に逆回転方向のブレーキトルクを作用させる(S103)。そして、以上の逆回転位相変化処理を、機関位相の実位相が目標位相と一致するまで実行するのである(S104)。
このように本実施形態によると、クランク軸からのトルク伝達によって正回転中のモータ軸14及び遊星キャリア32を逆回転させて機関位相を遅角側へ変化させるときには、それらモータ軸14及び遊星キャリア32に作用するブレーキトルクを電動ブレーキ5によって発生する。このとき電動ブレーキ5は、モータ軸14が持つ回転エネルギーを、ライニング106及びドラム102間の摩擦により発生する熱エネルギーへと、高い効率にて変換することができる。故に、電動ブレーキ5に対する実通電電流量Irを可及的に小さく抑えつつ、モータ軸14及び遊星キャリア32等のイナーシャに対抗し得る大きなブレーキトルクを発生させることができるのである。しかも、このときには、電動モータ4に対する通電をカットしてモータトルクの発生を止めることになるので、電動モータ4に直接接続された通電制御回路部6のスイッチング素子FU,FV,FW,GU,GV,GW等に大電流が流れて焼損等の故障を招来する事態を、回避することができる。
以上によれば、バルブタイミング調整装置1において目標位相を最遅角位相とするフェイル時や作動停止時に大きなブレーキトルクを発生して応答性を高めることにより、機関位相を当該最遅角位相まで急速に変化させることができるので、機関始動性が確保され得る。また、それと両立して、通電制御回路部6の故障回避作用によりバルブタイミング調整装置1の耐久性を高めることができるので、当該装置1に対する信頼性も確保され得る。
尚、通電制御回路部6について、実回転方向Drが正回転方向であっても目標回転方向Dtが正転方向に設定されるときには、所望の機関位相を実現するための目標回転数Stを設定して電動モータ4に対する通電を実施する(S105)と共に、目標通電電流量Itを零に設定して電動ブレーキ5に対する通電をカットする(S106)。これによれば、従来と同様なバルブタイミング調整が可能となるのである。
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は当該実施形態に限定して解釈されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態に適用することができる。
具体的に電動モータ4は、埋設磁石型ブラシレスモータ以外、例えば、表面磁石型ブラシレスモータ等であってもよい。
電動ブレーキ5は、摩擦接触型電磁ブレーキ以外、例えば、磁界に応じて通過磁束を変化させるヒステリシス部材を利用したヒステリシス型電磁ブレーキや、磁界又は電界に応じて粘度が変化する機能性流体を利用した流体ブレーキ等であってもよい。
通電制御回路部6は、電動モータ4に対する通電及び電動ブレーキ5に対する通電を制御可能な構成であれば、上述した回路要素60,70,120を備える構成以外であってもよい。例えば、回路要素60,70,120のうち少なくとも二つの機能を一ユニットによって果たすようにしてもよいし、モータドライバ70の一部の機能をマイクロコンピュータによって果たすようにしてもよいのである。
通電制御回路部6が実行する逆回転位相変化処理では、上述したように電動モータ4に対する通電をカットした後に電動ブレーキ5に対して通電を開始する以外にも、電動ブレーキ5に対する通電開始後に電動モータ4に対する通電をカットするようにしてもよいし、電動ブレーキ5に対する通電と電動モータ4に対する通電カットとを実質的に同時に開始するようにしてもよい。
位相調整機構8は、モータ軸14が駆動側回転体22よりも逆回転することにより遊星キャリア32が駆動側回転体22に対して相対回転するとき、機関位相が進角する構成であってもよく、その場合には、例えば始動位相が最進角位相に設定される。また、位相調整機構8は、伝達トルクに応じてクランク軸及びカム軸2間の機関位相を調整可能な構成であれば、上述した遊星歯車ユニット30を備える構成以外であってもよい。例えば、クランク軸及びカム軸とそれぞれ連動して回転する二つの回転体毎に、遊星歯車と噛合する太陽歯車を設けて、当該遊星歯車の遊星運動により機関位相を変化させる構成の位相調整機構8等を用いてもよいのである。
そして、本発明は、上述した吸気弁のバルブタイミングを調整する装置以外にも、排気弁のバルブタイミングを調整する装置や、吸気弁及び排気弁の双方のバルブタイミングを調整する装置に適宜適用することができる。
本発明の一実施形態によるバルブタイミング調整装置を示す構成図であって、図6のI−I線断面図である。 図1のII−II線断面図である。 図1の通電制御回路部の特徴的構成を示すブロック図である。 図1の電動ブレーキの要部を模式的に示す斜視図である。 図1のV−V線断面図である。 図1のVI−VI線断面図である。 図1のVII−VII線断面図である。 図3の通電ブロックの詳細構成を示すブロック図である。 図1の通電制御回路部の特徴的作動を示すフローチャートである。
符号の説明
1 バルブタイミング調整装置、2 カム軸、5 電動ブレーキ、6 通電制御回路部、8 位相調整機構、10 ハウジング、14 モータ軸(出力回転体)、14a 軸本体、14b ロータ部、16 モータステータ、16b モータコイル、18 永久磁石、22 駆動側回転体、24 従動側回転体、30 遊星歯車ユニット、32 遊星キャリア(入力回転体)、50 リンクユニット、60 ECU、70 モータドライバ、72 信号生成ブロック、74 通電ブロック、76 インバータ部、78 駆動部、102 ドラム(出力回転体)、102a 摺接面、104 シュー、104a ガイド部、106 ライニング(摩擦部材)、108 リターンスプリング、110 ソレノイド、110b ブレーキコイル、120 ブレーキドライバ、FU,FV,FW 上段スイッチング素子(スイッチング素子)、GU,GV,GW 下段スイッチング素子(スイッチング素子)、Dr 実回転方向、Dt 目標回転方向、Sr 実回転数、St 目標回転数、Ir 実通電電流量、It 目標通電電流量

Claims (4)

  1. クランク軸からのトルク伝達によりカム軸が開閉する吸気弁及び排気弁のうち少なくとも一方のバルブタイミングを調整する内燃機関のバルブタイミング調整装置において、
    出力回転体を有し、当該出力回転体を回転駆動するモートルクを通電により発生させる電動モータと、
    前記出力回転体を制動するブレーキトルクを通電により発生させる電動ブレーキと、
    前記クランク軸からのトルク伝達により正回転し前記出力回転体からのトルク伝達により正逆回転する入力回転体を有し、当該入力回転体の回転状態に応じてクランク軸及びカム軸間の相対位相を調整する位相調整機構と、
    前記電動モータに対する通電及び前記電動ブレーキに対する通電を制御する通電制御回路部であって、正回転中の前記入力回転体を逆回転させることにより前記位相調整機構にて前記相対位相を変化させる場合に、前記電動モータに対する通電をカットしつつ前記電動ブレーキに対して通電を施す通電制御回路部と、
    を備えることを特徴とするバルブタイミング調整装置。
  2. 前記位相調整機構は、前記入力回転体の逆回転により、遅角側及び進角側のうち前記内燃機関の始動を許容する始動位相の側へ前記相対位相を変化させることを特徴とする請求項1に記載のバルブタイミング調整装置。
  3. 前記通電制御回路部は、複数のスイッチング素子を有し、それらスイッチング素子のオンオフにより前記電動モータに対して通電を施すことを特徴とする請求項1又は2に記載のバルブタイミング調整装置。
  4. 前記電動ブレーキは、
    前記出力回転体に摩擦接触することにより前記ブレーキトルクを発生する摩擦部材と、
    前記摩擦部材を前記出力回転体に摩擦接触させるための電磁駆動力を通電により発生するソレノイドと、
    を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のバルブタイミング調整装置。
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