JP2009029923A - 変性エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂及びその製造方法 - Google Patents

変性エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】エポキシ樹脂との相溶性が良好な変性エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂を提供すること。
【解決手段】下記一般式(1)で表される変性エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂:(式中、Aは、水素原子もしくは一個のエポキシ基及びフェニレンエーテル基を含む特定の1価の有機基。mは1以上の整数を示し、R,Rは、それぞれ独立に、水素原子又は1価の官能基を示し、X,Yは、それぞれ独立に、2価以上の官能基を示し、Uは、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基、アリールカルバモイル基又はグリシジル基のいずれかを示す)。
Figure 2009029923

【選択図】なし

Description

本発明は、例えば、半導体の電子部品を搭載する回路基板原料として好適な変性エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂、エポキシ樹脂組成物、変性エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂の製造方法等に関する。
プリント配線基板用の絶縁材料として、コストパフォーマンスに優れるエポキシ樹脂が広く用いられている。近年、配線の高密度化への対応などから、エポキシ樹脂にはさらなる高機能化が求められている。そのような高機能化の要求項目の一つとして、衛星通信などの高周波領域で使用されるプリント配線基板においては、信号の遅滞を防ぐため低誘電率や低誘電正接といった誘電特性に優れる絶縁材料が要求されている。
ここで、誘電特性に優れる材料の一つとして、ポリフェニレンエーテルを使用することが1970年代ごろから知られている。しかしながら、高分子量のポリフェニレンエーテルは溶融粘度が高く、成形加工性に劣る場合がある。また、エポキシ樹脂との相溶性が乏しく、得られる配合物の機械的強度に劣る場合がある。
このような事情に鑑み、例えば、特許文献1や特許文献2には、ポリフェニレンエーテルを再分配反応させ低分子量化した後、エピクロロヒドリンによりエポキシ化したポリフェニレンエーテルが知られている。
特開平9−235349号公報 特許第3248424号公報
しかしながら、上記特許文献1や特許文献2に記載されたポリフェニレンエーテルについても、エポキシ樹脂との相溶性等の観点から、なお改善の余地を有するものであった。
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、エポキシ樹脂との相溶性が良好な変性エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂を提供することを課題とする。
本発明者らは、特定の構造式で表される変性エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂が、エポキシ樹脂と良好な相溶性を示すことを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の変性エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂等を提供する。
[1] 下記一般式(1)で表される変性エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂:
Figure 2009029923
(式中、Aは、水素原子もしくは下記一般式(2)
Figure 2009029923
で表される構造を示し、m及びnは1以上の整数を示し、R,R,R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は1価の官能基を示し、X,X,Y,Y及びZは、それぞれ独立に、2価以上の官能基を示し、Uは、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基、アリールカルバモイル基又はグリシジル基のいずれかを示す)。
[2] 前記Aが水素原子であると共に、前記Xが下記一般式(3)
Figure 2009029923
(式中、a1は0以上の整数を示し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は1価の官能基を示し、Uは前記と同義を示す)
で表される構造を示し、前記Yが下記一般式(4)
Figure 2009029923
(式中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は1価の官能基を示す)
で表される構造を示す、上記[1]に記載の変性エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂。
[3] 数平均分子量が4000以下である、上記[2]に記載の変性エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂。
[4] 前記Aが上記一般式(2)で表される構造を示すと共に、前記Xが下記一般式(3)
Figure 2009029923
(式中、a1は0以上の整数を示し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は1価の官能基を示し、Uは前記と同義を示す)
で表される構造を示し、前記Xが下記一般式(5)
Figure 2009029923
(式中、a2は0以上の整数を示し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は1価の官能基を示し、Uは前記と同義を示す)
で表される構造を示し、前記Y,Yが下記一般式(4)
Figure 2009029923
(式中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は1価の官能基を示す)
で表される構造を示す、上記[1]に記載の変性エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂。
[5] 前記Zが、下記一般式(6)
Figure 2009029923
(式中、R,R10,R11及びR12は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の官能基を示す)
で表される構造を示す、上記[1]又は[4]に記載の変性エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂。
[6] 数平均分子量が8000以下である、上記[4]又は[5]に記載の変性エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂。
[7] 上記[1]〜[6]のいずれか記載の変性エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂と、エポキシ樹脂と、硬化剤とを含むエポキシ樹脂組成物。
[8] 前記硬化剤が酸無水物系硬化剤である、上記[7]に記載のエポキシ樹脂組成物。
[9] 上記[7]又は[8]に記載のエポキシ樹脂組成物を用いて形成された電子部材。
[10] エポキシプリプレグ、前記エポキシプリプレグを用いた積層板、樹脂シート及び前記樹脂シートを用いた積層板のいずれかである、上記[9]に記載の電子部材。
[11] 上記[1]〜[6]のいずれか記載の変性エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂を製造する方法であって、
(A)ポリフェニレンエーテルに含まれるフェノール性水酸基と、エポキシ樹脂に含まれるエポキシ基とを付加反応させる付加反応工程と、
(B)前記フェノール性水酸基と、前記エポキシ基との付加反応により生じたアルコール性水酸基を変性する工程と、
を含む、変性エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂の製造方法。
[12] 前記変性は、エステル化、ウレタン化又はグリシジル化による変性である、上記[11]に記載の変性エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂の製造方法。
本発明によれば、エポキシ樹脂との相溶性が良好な変性エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂を提供することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、発明の実施の形態)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変形して実施することができる。
本実施の形態の変性エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂は、一般式(1)で表される特定の構造を有する樹脂である。
Figure 2009029923
一般式(1)において、Aは、水素原子もしくは一般式(2)で表される構造を示す。
Figure 2009029923
一般式(1)又は(2)において、R,R,R及びRで示される1価の官能基としては、例えば、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいシクロアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基等が挙げられる。なお、R〜Rはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
,R,R及びRで示される置換されていてもよいアルキル基の「アルキル基」としては、炭素数が1〜6、好ましくは1〜3の、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を示し、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などが挙げられ、好ましくは、メチル基、エチル基であり、より好ましくはメチル基である。
,R,R及びRで示される置換されていてもよいシクロアルキル基の「シクロアルキル基」としては、炭素数が3〜8のシクロアルキル基を示し、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などが挙げられ、好ましくは、シクロペンチル基、シクロヘキシル基である。
,R,R及びRで示される置換されていてもよいアリール基の「アリール基」としては、例えば、フェニル基、ナフチル基などが挙げられ、好ましくはフェニル基である。
,R,R及びRで示される置換されていてもよいアラルキル基の「アラルキル基」としては、アルキル部分が上記で定義された「アルキル基」であり、アリール部分が上記で定義された「アリール基」であるアラルキル基が挙げられ、例えば、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、1−ナフチルメチル基などが挙げられ、好ましくはベンジル基である。
,R,R及びRで示される置換されていてもよいアルコキシ基の「アルコキシ基」としては、炭素数が1〜6、好ましくは1〜3の、直鎖状又は分岐鎖状のアルコキシ基を示し、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基などが挙げられ、好ましくはメトキシ基、エトキシ基である。
,R,R及びRで示されるアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基は、置換可能な位置に、1又は2以上の置換基で置換されていてもよい。かかる置換基としては、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)、炭素数1〜6のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基)、アラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基)などが挙げられる。
,R,R及びRとしては、エポキシ樹脂との相溶性、ポリフェニレンエーテル樹脂の耐熱性の観点から、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基であり、さらに好ましくはメチル基である。
また、一般式(1)において、mは、ポリフェニレンエーテル単位の平均の繰り返し数を表し、1以上20以下、好ましくは1以上10以下の整数を示す。mを20以下とすることにより、樹脂の溶融粘度を過度に高めることなく、プリプレグ等の製造を円滑に行い得るというメリットがある。
さらに、一般式(2)において、nは、ポリフェニレンエーテル単位の平均の繰り返し数を表し、1以上20以下、好ましくは1以上10以下の整数を示す。nを20以下とすることにより、上記と同様に樹脂の溶融粘度を過度に高めることなく、プリプレグ等の製造を円滑に行い得るというメリットがある。
mとnとの和は、2以上40以下、好ましくは2以上20以下の整数である。mとnとの和を40以下とすることにより、ケトン類溶剤への溶解性が良好となる傾向にある。
一般式(1)又は(2)において、X,X,Y,Y及びZで示される2価の官能基としては、例えば、単結合、置換されていてもよいアルキレン基、置換されていてもよいアリーレン基等が挙げられる。
,X,Y,Y及びZで示される置換されていてもよいアルキレン基の「アルキレン基」としては、前記「アルキル基」から、任意の位置の水素原子をさらに1個除いて誘導される2価の基を意味し、例えば、メチレン基、エチレン基、メチルエチレン基、エチルエチレン基、1,1−ジメチルエチレン基、1,2−ジメチルエチレン基、トリメチレン基、1−メチルトリメチレン基、2−メチルトリメチレン基、テトラメチレン基等が挙げられ、好ましくは、メチレン基、エチレン基、メチルエチレン基、1,1−ジメチルエチレン基、トリメチレン基である。
,X,Y,Y及びZで示される置換されていてもよいアリーレン基の「アリーレン基」としては、前記「アリール基」から、任意の位置の水素原子をさらに1個除いて誘導される2価の基を意味する。
,X,Y,Y及びZで示される置換されていてもよいアルキレン基、アリーレン基は、置換可能な位置に、1又は2以上の置換基で置換されていてもよい。かかる置換基としては、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)、炭素数1〜6のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基)、アラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基)などが挙げられる
また、Xとしては、一般式(3)
Figure 2009029923
で表される構造を有しているのが、エポキシ樹脂との相溶性が向上し得、さらに、ポリフェニレンエーテルのエポキシ化が容易となる傾向にあるため好ましい。
一般式(3)において、R及びRで示される1価の官能基としては、上記のR〜Rで示した1価の官能基と同様のものが挙げられ、中でも、樹脂の粘度を低減でき、エポキシ化ポリフェニレンエーテル中のポリフェニレンエーテル骨格の割合を高くできる傾向にあるため、好ましくは水素原子もしくは炭素数1〜6のアルキル基であり、より好ましくは水素原子、メチル基であり、さらに好ましくはメチル基である。
また、一般式(3)において、a1は、一般式(3)で表される構造単位の平均の繰り返し数を表し、0以上10以下、好ましくは0以上8以下の整数を示す。a1を10以下とすることにより、良好な誘電率を達成し得る傾向にある。
また、Xとしては、一般式(5)
Figure 2009029923
で表される構造を有しているのが、エポキシ樹脂との相溶性が向上し得、さらに、ポリフェニレンエーテルのエポキシ化が容易となる傾向にあるため好ましい。
一般式(5)において、R及びRで示される1価の官能基としては、上記のR〜Rで示した1価の官能基と同様のものが挙げられ、中でも、樹脂の粘度を低減でき、エポキシ化ポリフェニレンエーテル中のポリフェニレンエーテル骨格の割合を高くできる傾向にあるため、好ましくは水素原子もしくは炭素数1〜6のアルキル基であり、より好ましくは水素原子、メチル基であり、さらに好ましくはメチル基である。
また、一般式(5)において、a2は、一般式(5)で表される構造単位の平均の繰り返し数を表し、0以上10以下、好ましくは0以上8以下の整数を示す。a2を10以下とすることにより、良好な誘電率を達成し得る傾向にある。
また、Y及びYとしては、一般式(4)
Figure 2009029923
で表される構造を有しているのが、エポキシ樹脂との相溶性が向上し、さらに、ポリフェニレンエーテルのエポキシ化が容易となる傾向にあるため好ましい。
一般式(4)において、R及びRで示される1価の官能基としては、上記のR〜Rで示した1価の官能基と同様のものが挙げられ、中でも、樹脂の粘度を低減することができる傾向にあるため、好ましくは水素原子もしくは炭素数1〜6のアルキル基であり、より好ましくは水素原子、メチル基であり、さらに好ましくはメチル基である。
また、Zとしては、一般式(6)
Figure 2009029923
で表される構造を有しているのが好ましい。
前記Aが水素原子である場合、上記一般式(1)で表される変性エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂の数平均分子量としては、好ましくは4000以下、より好ましくは500〜3500である。一方、前記Aが上記(2)で表される場合、変性エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂の数平均分子量としては、好ましくは8000以下、より好ましくは1000〜7000、さらに好ましくは2000〜6000である。数平均分子量を上記範囲に設定することにより、樹脂の溶融粘度を過度に高めることなく、プリプレグ等の製造を円滑に行い得るというメリットがある。なお、本実施の形態において、数平均分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィー法により測定されるポリスチレン換算値を意味する。
一般式(1)又は(2)において、Uは、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基、アリールカルバモイル基又はグリシジル基のいずれかを示す。
アルキルカルボニル基の「アルキル基」としては、上記で定義されたアルキル基が挙げられ、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基であり、より好ましくは、メチル基、イソプロピル基である。
アリールカルボニル基の「アリール基」としては、上記で定義されたアリール基が挙げられ、好ましくは、フェニル基、ナフチル基であり、より好ましくは、フェニル基である。
アルキルカルバモイル基の「アルキル基」としては、上記で定義されたアルキル基が挙げられ、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基であり、より好ましくは、メチル基、イソプロピル基である。
アリールカルバモイル基の「アリール基」としては、上記で定義されたアリール基が挙げられ、好ましくは、フェニル基、ナフチル基であり、より好ましくは、フェニル基である。
また、Uで示されるアルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基、アリールカルバモイル基又はグリシジル基は、置換可能な位置に、1又は2以上の置換基で置換されていてもよい。かかる置換基としては、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)、炭素数1〜6のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基)、アラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基)などが挙げられる。
本実施の形態の変性エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂は、いかなる方法で製造されてもよいが、
工程(A):ポリフェニレンエーテルに含まれるフェノール性水酸基と、エポキシ樹脂に含まれるエポキシ基とを付加反応させる付加反応工程(エポキシ化ポリフェニレンエーテルを調製する工程)、及び、
工程(B):前記付加反応により生じたアルコール性水酸基を変性する工程、
を含むことが、製造工程中にゲル化を起こし難く、良好な電気特性を有した樹脂を得る観点から好適である。
原料であるポリフェニレンエーテルとしては、特に限定されないが、好ましくは分子量20000以上の成分割合が実質的に10%以下、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは実質的に含まれないポリフェニレンエーテルを用いる。分子量20000以上の成分割合を実質的に10%以下とすることは、エポキシ化ポリフェニレンエーテルを用いた硬化物の均一性を向上させる観点、及び、エポキシ樹脂による付加反応の際にゲル化を起こす危険性を低減する観点から好適である。
なお、本実施の形態において、「硬化物として均一」とは、光学顕微鏡による1000倍の画像で、1μm以上の海島構造が観察されないことを意味する。また、「分子量20000以上の成分が実質的に10%以下」であるとは、ゲル浸透クロマトグラフィーによる分子量測定において、分子量20000以上のピーク検出面積が10%以下であることを意味する。
また、ポリフェニレンエーテルの数平均分子量は、特に限定されないが、好ましくは1000〜10000、より好ましくは1000〜4000である。数平均分子量を1000以上に設定することは、電気特性を向上させる観点から好適である。一方、10000以下に設定することは、樹脂粘度が高くなり過ぎることを防止し、成形時にかすれやボイドが発生する危険性を低減する観点から好適である。
さらに、ポリフェニレンエーテルの1分子当たりの水酸基個数としては、特に限定されないが、平均で好ましくは1.2個以上、より好ましくは1.5個以上、さらに好ましくは1.7個以上である。水酸基個数が平均で1.2個以上であると、エポキシ化合物との反応性が向上し、得られる重合体の性質がエポキシ樹脂に近くなるため、エポキシ樹脂との相溶性が向上し、さらに、その後の硬化も容易となる傾向がある。通常、エポキシ樹脂の場合、積層板を作製する条件として180℃で1時間硬化させるが、1分子当たりの水酸基個数が平均で1.2個以上であると、当該条件により硬化させることが容易となる傾向にある。
本実施の形態に用いられるポリフェニレンエーテルを製造する方法としては、特に限定されず、例えば、フェノール性水酸基を2個以上有するフェノール性化合物を種結晶として、2,6キシレノールを付加させていく方法や、高分子量ポリフェニレンエーテルを再分配反応に供し、数平均分子量や水酸基個数を上記の好ましい範囲に調整する方法等が挙げられる。
高分子量ポリフェニレンエーテルを再分配反応に供する方法としては、例えば、文献「Joural of Organic Chemistry,34,297〜303(1968)」に示されているように、高分子量ポリフェニレンエーテル樹脂をラジカル開始剤の存在下で、ビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビフェニル、ジヒドロキシジフェニルエーテル、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ピロガロール等のポリフェノール性化合物と反応させて、高分子量ポリフェニレンエーテル樹脂の分子量を低下させる方法等を用いることができる。
再分配反応で用いられるラジカル開始剤としては、ジクミルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル―2,5−ジ(tert−ブチルクミルパーオキシ)ヘキシン−3、2,5−ジメチル2,5−ジ−tert−ブチルパーオキシヘキサン、α,α’−ビス(tert−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン〔(1,4又は1,3)−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンともいう〕、過酸化ベンゾイル等の過酸化物が挙げられる。中でも、過酸化ベンゾイルが、反応を制御し易く、また、アルカリ洗浄時にフェノール基数が増加する傾向にあるため好ましい。過酸化ベンゾイルを使用した場合、得られたポリフェニレンエーテルを核磁気共鳴装置により測定すると、通常、ベンジル基やベンゾイル基のピークが観察される。
本実施の形態の製造方法は、上記ポリフェニレンエーテルのフェノール性水酸基とエポキシ樹脂のエポキシ基を付加反応させる工程(A)を含む。反応条件としては、通常、触媒存在下、100℃〜200℃で1〜20時間反応させることによって行われる。触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の金属水酸化物;ナトリウムメチラート、ナトリウムブチラート等の金属アルキレート;テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロミド等の4級アンモニウム塩;テトラフェニルホスホニウムブロミド、アミルトリフェニルホスホニウムブロミド等のホスホニウム塩;2−メチルイミダゾール、2−メチル−4−イミダゾール等のイミダゾール化合物;N、N―ジエチルエタノールアミン等のアミン類;塩化カリウム等の金属ハロゲン化物等が挙げられ、好ましくは、ナトリウムメチラート、テトラメチルアンモニウムクロライド、トリ−o−トリルホスフィンである。これらの触媒は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
ポリフェニレンエーテルをエポキシ化する際のエポキシ樹脂としては、平均で2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物であれば特に限定されず、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ヒンダート型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ビスAノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン/フェノールエポキシ樹脂、脂環式アミンエポキシ樹脂、脂肪族アミンエポキシ樹脂及びこれらをハロゲン化したエポキシ樹脂等が挙げられ、中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂が、エポキシ変性後の樹脂の粘度を低減し得、また、他のエポキシ樹脂との相溶性が良好となる傾向にあるため好ましい。これらの化合物は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
本実施の形態の製造方法は、上記の工程(A)の後、生じたアルコール性水酸基を変性する工程(B)を含む。変性としては、特に限定されないが、エステル化、ウレタン化又はグリシジル化等により変性するのが好ましい。
工程(B)においては、エポキシ化ポリフェニレンエーテルのアルコール性水酸基を変性することによって、樹脂のモル体積が上昇し、エポキシ樹脂との相溶性を向上させることができる。さらに、上記変性によって、アルコール性水酸基の水素結合に起因する樹脂粘度の増加を抑制することができるため、樹脂組成物中に硬化促進剤をより多く含有させることができ、硬化物の耐熱性を向上させる観点からも好適である。
エポキシ化ポリフェニレンエーテルをエステル化する方法としては、特に限定されず、例えば、アルコール性水酸基をエステル交換する方法が挙げられる。具体的には、エポキシ化ポリフェニレンエーテルのトルエン溶液に、エステル化合物を添加し、加熱することにより行うことができる。この際、反応を促進させる触媒等を、適宜用いてもよい。
エステル化に用いられるエステル化合物としては、特に限定されないが、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソブチル、吉草酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸イソブチル、ナフトエ酸エチル、ナフトエ酸プロピル等が挙げられる。さらに、エステル化には、例えば、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸ブチル、アセト酢酸イソブチル、アセトプロピオン酸メチル、アセトプロピオン酸エチル、アセトプロピオン酸プロピル、アセトプロピオン酸ブチル、アセトプロピオン酸イソブチル等のβ―ケトエステルも使用できる。
エポキシ化ポリフェニレンエーテルをウレタン化する方法としては、特に限定されず、例えば、エポキシ化ポリフェニレンエーテルのトルエン溶液に、フェニルイソシアネートなどのイソシアネート化合物を添加し、加熱することにより行うことができる。この際、反応を促進させる触媒等を、適宜用いてもよい。
ウレタン化に用いられるイソシアネート化合物としては、特に限定されず、例えば、フェニルイソシアネートノボラック、トルイルイソシアネートノボラック等の多官能イソシアネート;トリレンジイソシアネート、ジフェニルエーテル−4、4’−ジイソシアネート等の2官能イソシアネート;フェニルイソシアネート、トルイルイソシアネート、エチルフェニルイソシアネート、t−ブチルフェニルイソシアネート、オクチルフェニルイソシアネート、シクロヘキシルフェニルイソシアネート、ベンジルイソシアネート、ナフチルイソシアネート、フェノキシフェニルイソシアネート、プロピルイソシアネート、イソブチルイソシアネート、t−ブチルイソシアネート、アリルイソシアネート等の単官能イソシアネート等が挙げられる。中でも、イソシアネート化合物として、単官能イソシアネートを使用すると、樹脂粘度の低減効果が大きくなる傾向にあるため好ましい。
エポキシ化ポリフェニレンエーテルをグリシジル化する方法としては、特に限定されず、例えば、アルコール性水酸基に対して1当量以上、好ましくは5当量以上のエピクロルヒドリンにエポキシ化ポリフェニレンエーテルを溶解した後、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物を添加する方法が挙げられる。この際、必要に応じて、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライドなどの4級アンモニウム塩を添加してもよい。アルカリ金属水酸化物の量は、アルコール性水酸基に対して1当量以上用い、反応条件は、通常、50〜100℃で1〜10時間反応させる。反応後、水洗またはろ過により生成塩を除去し、未反応のエピクロルヒドリンを揮発回収するか、メタノール等の貧溶剤を投入して重合体を析出させることにより、本実施の形態の変性エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂を得ることができる。
本実施の形態の変性エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂は、エポキシ樹脂との相溶性が良好であるため、エポキシ樹脂と共に均質なワニスを構成し、さらに硬化剤を添加することで、回路基板等の原料として好適なエポキシ樹脂組成物を与える。
硬化剤としては、多官能エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂及びエポキシ樹脂中のエポキシ基と反応して3次元網状構造を形成するものであれば特に限定されず、例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルヘキサヒドロフタル酸、無水メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水ドデセニルコハク酸、無水トリアルキルテトラヒドロフタル酸、スチレン−マレイン酸共重合体等の酸無水物系硬化剤;ジシアンジアミド、脂肪族ポリアミド等のアミド系硬化剤;ジアミノジフェニルメタン、メタフェニレンジアミン、アンモニア、トリエチルアミン、ジエチルアミン等のアミン系硬化剤;ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、p−キシレンノボラック樹脂等のフェノール系硬化剤等の顕在型硬化剤や潜在型硬化剤を用いることができ、中でも、硬化物中の水酸基量が減少し、電気特性、特に誘電正接に優れた硬化物が得られる傾向にあるため、酸無水物系硬化剤を用いるのが好ましく、無水フタル酸、スチレン−マレイン酸共重合体等の酸無水物系硬化剤がより好ましい。上記硬化剤は単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
硬化剤の量としては、特に限定されないが、エポキシ樹脂組成物中の全エポキシ基に対して、好ましくは0.1〜10当量、より好ましくは0.3〜3当量、さらに好ましくは0.5〜1.5当量である。
なお、エポキシ樹脂組成物には硬化反応を促進するために、さらに硬化促進剤が含まれていてもよい。樹脂組成物に硬化促進剤を含有させることで、樹脂組成物のガラス転移温度が上昇し、硬化物の耐熱性が向上する傾向にある。特に、本実施の形態においては、エポキシ化ポリフェニレンエーテルの変性によって、アルコール性水酸基の水素結合に起因する樹脂粘度の増加を抑制することができるため、硬化促進剤をより多く含有させることができ、結果として、硬化物の耐熱性が向上し得る。硬化促進剤としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−メチル−4−エチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール類;1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン等の3級アミン類;トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類;テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィンテトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩等が挙げられ、中でも、2−メチルイミダゾールが好ましい。これらは単独もしくは2種類以上を併用してもよい。
本実施の形態のエポキシ樹脂組成物を含有するワニスの調製には、公知のポリフェニレンエーテル含有エポキシ樹脂組成物のワニス調製に用いられるジクロロメタンやクロロホルムなどのハロゲン系溶剤や、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤に加えて、ケトン系溶剤を用いることができる。ケトン系溶剤としては、例えばメチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等の脂肪族ケトン、アセトフェノン等の芳香族ケトン等が挙げられる。
また、例えば、ジシアンジアミド等のケトン系溶剤に溶解しにくい硬化剤や硬化促進剤を使用する場合には、主溶剤としてケトン系溶剤を使用した場合であっても、補助溶剤として、例えば、ジメチルホルムアミド、メチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メシチレン等の溶剤を使用することで、溶解性を向上させることが可能である。
ワニス中の固形分濃度は特に限定されないが、30質量%〜80質量%であるのが好ましい。
本実施の形態のプリプレグは、上記ワニスを基材に含浸させた後、溶媒の乾燥、加熱により半硬化させて作製することができる。基材としては、ガラスクロス、アラミドクロス、ポリエステルクロス、ガラス不織布、アラミド不織布、ポリエステル不織布、パルプ紙、リンター紙等が挙げられる。基材に含浸するワニスの量は特に限定されないが、乾燥後の樹脂含有量がプリプレグの質量に対し30〜70質量%となるように含浸させるのが好ましい。
本実施の形態の積層板は、プリプレグ、硬化性樹脂金属箔複合体、フィルム及び銅箔を目的に応じた層構成で積層し加圧加熱することにより製造することができる。積層板を製造する方法としては、例えば、基板上にプリプレグと硬化性樹脂金属箔複合体を複数枚重ね合わせ、加熱加圧下に各層間を接着すると同時に熱架橋を行い、所望の厚みの積層板を得たり、基板上に硬化性樹脂金属箔複合体を複数枚重ね合わせて、加熱加圧下に各層間を接着すると同時に熱硬化を行い、所望の厚みの積層板を得たりすることができる。金属箔は表層としても中間層としても用いることができる。また積層と硬化を複数回繰り返して逐次多層化することも可能である。
以下に実施例を示して、本実施の形態をより詳細に説明する。なお、以下において%とは、質量%を意味する。
[測定方法]
本明細書中の物性等の測定方法は以下の通りである。
(1)数平均分子量
昭和電工社製shodex A−804、A−803、A−802、A802をカラムとして使用してゲル浸透クロマトグラフィー分析を行い、分子量既知のポリスチレンの溶出時間との比較で数平均分子量を求めた。
(2)フェノール性水酸基量、1分子当たりの水酸基個数
ポリフェニレンエーテルを塩化メチレンに溶解後、0.1Nテトラエチルアンモニウムハイドロキシドのメタノール溶液を添加して激しく撹拌した後、318nmにおける吸光度を測定した。1kg当たりのフェノール性水酸基量を、0.1Nテトラエチルアンモニウムハイドロキシドのメタノール溶液を添加しない場合との吸光度の差から算出した(単位:meq/kg)。測定したフェノール性水酸基量と数平均分子量から、1分子当たりの水酸基個数を算出した。
(3)エポキシ当量
JIS K 7236に準じて測定した。
(4)ガラス転位温度(Tg)
SII社製DSC6220を使用して、昇温速度20℃/分の条件下でDSC法により測定した。
(5)溶融粘度
英弘精機社製のRS600を使用して、160℃における溶融粘度を測定した。
(6)ハンダ耐熱
積層板作製後、オートクレーブを用いて、121℃で2時間加熱した後に288℃に設定したハンダ浴に20秒含浸させて、板の膨れをみた。試験を3回繰り返し、一つでも膨れを生じたものを×、膨れを生じなかったものを○とした。
(7)銅剥離強度
JIS C 6481に準じて測定した。
(8)誘電率、誘電正接
JIS C 6481に基づき、アジレントテクノロジー社製LCRメーター4284Aを用いて測定した。
(9)エポキシ樹脂との相溶性試験1
各変性エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂と、これと同量のビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭化成エポキシ(株) AER260)もしくはオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂(旭化成エポキシ(株) AER4152)を混合し、170℃のホットプレート上で均一に攪拌した後、そのままホットプレート上に放置した。1時間放置後でも均一に混合したものを○、30分〜1時間の間に分離したものを△、30分未満に分離したものを×とした。
(10)エポキシ樹脂との相溶性試験2
各変性エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂と、これと同量のビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭化成エポキシ(株) AER260)もしくはオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂(旭化成エポキシ(株) AER4152)を混合し、樹脂溶液が50%になるようにトルエン/メチルエチルケトン=1/1の溶液に溶解後、3日間放置した。2層に分離しないものを○、2層に分離するものを×とした。
[製造例1:ポリフェニレンエーテルI]
数平均分子量20000の高分子量ポリフェニレンエーテル(旭化成株式会社製 SA202)100質量部及びビスフェノールA30質量部をトルエン100質量部に加熱溶解させた。この中に過酸化ベンゾイル20質量部を加え、90℃にて60分間攪拌し再分配反応させた。さらに過酸化ベンゾイル10質量部を加え、90℃にて30分間攪拌し、再分配反応を完結させた。反応混合物を1000質量部のメタノールに投入し沈殿物を得て、これを濾別した。さらにメタノール1000質量部で濾別物を洗浄し、ポリフェニレンエーテルIを得た。ゲル浸透クロマトグラフィーによる分子量測定の結果、数平均分子量は1900で、分子量20000以上の成分を実質的に含んでいなかった。また1分子当たりのフェノール性水酸基個数は平均で1.7個であった。
[製造例2:ポリフェニレンエーテルII]
特開2003−261674に準じて製造した。すなわち、反応器底部に酸素含有ガス導入の為のスパージャー、攪拌タービン翼及びバッフル、反応器上部のベントガスラインに還流冷却器を備えた1.5リットルのジャケット付き反応器に、0.2512gの塩化第二銅2水和物、1.1062gの35%塩酸、3.6179gのジ−n−ブチルアミン、9.5937gのN,N,N’,N’−テトラメチルプロパンジアミン、211.63gのメタノール及び493.80gのn−ブタノール、180.0gの2,6−ジメチルフェノールを入れた。使用した溶媒の組成重量比はn−ブタノール:メタノール=70:30である。次いで激しく攪拌しながら反応器へ180ml/minの速度で酸素をスパージャーより導入を始めると同時に、重合温度は40℃を保つようにジャケットに熱媒を通して調節した。酸素を導入し始めてから120分後、酸素含有ガスの通気をやめ、ポリフェニレンエーテルIIを得た。ゲル浸透クロマトグラフィーによる分子量測定の結果、数平均分子量は2700であり、分子量20000以上の成分は0.5%であった。また1分子当たりのフェノール性水酸基個数は平均で1.8個であった。
[製造例3:ポリフェニレンエーテルIII]
底栓弁つきのリアクターにメシチレン300gを入れ、90℃に加熱後、数平均分子量20000の高分子量ポリフェニレンエーテル(旭化成ケミカルズ(株) SA202)100gおよびビスフェノールA2gを溶解させた。この中に過酸化ベンゾイルの10%メシチレン溶液20gを120分かけて添加し、90℃にて60分間攪拌し再分配反応させた。この反応溶液に、炭酸水素ナトリウム水を添加し十分洗浄した後に、水溶液のみを取り除いて、ポリフェニレンエーテルIIIを得た。ゲル浸透クロマトグラフィーによる分子量測定の結果、数平均分子量は8400であり、分子量20000以上の成分は36.2%であった。また、1分子当たりのフェノール性水酸基個数は平均で1.4個であった。
[実施例1:ウレタン変性エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂I]
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(JER社 YL983U)40gを100℃に加熱し、触媒としてナトリウムメチラート(NaOCH)を0.005g添加し、約15分攪拌した。その後、160℃まで加熱して、ポリフェニレンエーテルIを60g添加した。そのまま160℃〜170℃で3時間加熱し、エポキシ化ポリフェニレンエーテルI(エポキシ化PPEI)を得た。エポキシ化ポリフェニレンエーテルIのエポキシ当量は538、160℃溶融粘度は25000mPa・sであった。得られたエポキシ化ポリフェニレンエーテルIを100質量部取り、トルエン100質量部に70℃で溶解後、2−メチルイミダゾールを0.04質量部添加し、十分攪拌した。その後、フェニルイソシアネート7.6質量部をゆっくり添加し、70℃で300分間撹拌し、ウレタン変性エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂I(ウレタン変性エポキシ化PPEI)を得た。得られたウレタン変性エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂Iのエポキシ当量は560、160℃の溶融粘度は19000mPa・sであった。また、エポキシ樹脂との相溶性を評価し、結果を表1に示した。
[実施例2:ウレタン変性エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂II]
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭化成エポキシ(株) A250)30質量部を70℃に加熱し、触媒としてナトリウムメチラート(NaOCH)を0.02質量部添加し、15分間加熱した。その後、180℃まで加熱し、ポリフェニレンエーテルIIを70質量部添加し、そのまま5時間かけて反応させ、エポキシ化ポリフェニレンエーテルII(エポキシ化PPEII)を得た。エポキシ化ポリフェニレンエーテルIIのエポキシ当量は909、160℃溶融粘度は100000mPa・sであった。得られたエポキシ化ポリフェニレンエーテルIIを使用して、ウレタン変性エポキシ化ポリフェニレンエーテルIと同様の方法により、フェニルイソシアネートを反応させて、ウレタン変性エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂II(ウレタン変性エポキシ化PPEII)を得た。ウレタン変性エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂IIのエポキシ当量は930、180℃の溶融粘度は44000mPa・sであった。また、エポキシ樹脂との相溶性を評価し、結果を表1に示す。
[参考例1:ウレタン変性エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂III]
ポリフェニレンエーテルIIIを使用した以外は、実施例1と同様の方法により製造を試みたが、エポキシ化ポリフェニレンエーテルの製造段階で高粘度化し、最終的にゲル化したため、その後のウレタン化(変性)工程を行うことが困難であった。
[実施例3:エステル変性エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂I]
エポキシ化ポリフェニレンエーテルIを100質量部取り、メシチレン100質量部に130℃で溶解した。溶解後、安息香酸メチル8.8質量部を添加し、更に300分間加熱して、エステル変性エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂Iを得た。得られたエステル変性エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂Iのエポキシ当量は550、160℃の溶融粘度は53000mPa・sであった。また、エポキシ樹脂との相溶性を評価し、結果を表1に示した。
[実施例4:エステル変性エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂II]
エポキシ化ポリフェニレンエーテルIIを100質量部取り、メシチレン100質量部に130℃で溶解した。溶解後、アセト酢酸メチル10.1質量部を添加し、更に300分間加熱して、エステル変性エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂IIを得た。得られたエステル変性エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂IIのエポキシ当量は915、160℃の溶融粘度は55000mPa・sであった。また、エポキシ樹脂との相溶性を評価し、結果を表1に示した。
[実施例5:グリシジル変性エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂I]
エポキシ化ポリフェニレンエーテルIを50質量部取り、エピクロルヒドリン250質量部に溶解後、50質量%の水酸化ナトリウム水溶液5質量部を60℃にて60分間かけて添加し、その後60℃で60分間撹拌した。この反応溶液に水50質量部を加え、撹拌後静置して水層を分離させることで生成塩を除去した後、エピクロルヒドリンを減圧蒸留で除去し、グリシジル変性エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂Iを得た。得られたグリシジル変性エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂Iのエポキシ当量は430、160℃の溶融粘度は9000mPa・sであった。また、エポキシ樹脂との相溶性を評価し、結果を表1に示した。
[実施例6:グリシジル変性エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂II]
エポキシ化ポリフェニレンエーテルIIを使用して、実施例5と同様の方法でグリシジル化を行うことにより、グリシジル変性エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂IIを得た。グリシジル変性エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂IIのエポキシ当量は625、160℃溶融粘度は24000mPa・sであった。また、エポキシ樹脂との相溶性を評価し、結果を表1に示した。
Figure 2009029923
表1の結果から明らかなように、実施例1〜6の変性エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂は、ポリフェニレンエーテルとエポキシ化合物を付加反応させることによって得たエポキシ化ポリフェニレンエーテルを、さらに変性することによって、樹脂のモル体積が上昇し、エポキシ樹脂との相溶性が良好となった。
これに対して、比較例1及び2のエポキシ化ポリフェニレンエーテルは、エポキシ化ポリフェニレンエーテルの変性を行っていないため、実施例の樹脂と比べて、エポキシ樹脂との相溶性に劣っていた。
[積層板]
実施例1〜6(変性エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂)及び比較例1〜2(エポキシ化ポリフェニレンエーテル)の樹脂、オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂(旭化成エポキシ(株) AER4152)、硬化剤として無水ヘキサヒドロフタル酸及び硬化促進剤として2−メチルイミダゾールを、表2に示した割合(質量部)で、ワニスの170℃ゲルタイムが4分〜5分の間になるように、ワニス固形分に対し0.1〜0.3質量%の範囲で調整して添加した。得られた樹脂組成物をガラスクロス(旭シュエーベル株式会社製 商品名2116)に含浸させ、乾燥することにより樹脂含有量50質量%のプリプレグを得た。上記プリプレグを4枚重ね、その上下に厚み35μmの銅箔を重ね合わせたものを温度190℃、圧力20kg/cmの条件下で60分加熱加圧することにより実施例7〜12及び比較例3〜4の積層板を作製した。これらの各積層板に関して、各種物性を評価し表2にまとめた。
Figure 2009029923
表2の結果から明らかなように、実施例7〜12では、本実施の形態の変性エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂を用いたことによりエポキシ樹脂との相溶性が改善し、耐熱性及び銅剥離強度に優れた積層板を得ることできた。また、エポキシ樹脂との相溶性が改善されたことにより樹脂組成物の相分離が抑制され、誘電率や誘電正接の値も良好であった。さらに、変性することによって、アルコール性水酸基の水素結合に起因する樹脂粘度の増加が抑制されており、樹脂組成物中に硬化促進剤を多く含有させる可能であったため、積層板の耐熱性をさらに向上させることが可能であった。
これに対して、比較例3〜4では、エポキシ化ポリフェニレンエーテルが変性されていないため、エポキシ樹脂との相溶性に劣り、これらを用いて製造した積層板の耐熱性、銅剥離強度及び誘電特性等が、実施例の積層板に比べて劣っていた。
本発明の変性エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂は、エポキシ樹脂との相溶性に優れ、これを用いて製造された積層板は、耐熱性及び誘電特性等に優れているため、プリント配線基板の絶縁材料として好適に用いることができる。

Claims (12)

  1. 下記一般式(1)で表される変性エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂:
    Figure 2009029923
    (式中、Aは、水素原子もしくは下記一般式(2)
    Figure 2009029923
    で表される構造を示し、m及びnは1以上の整数を示し、R,R,R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は1価の官能基を示し、X,X,Y,Y及びZは、それぞれ独立に、2価以上の官能基を示し、Uは、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基、アリールカルバモイル基又はグリシジル基のいずれかを示す)。
  2. 前記Aが水素原子であると共に、前記Xが下記一般式(3)
    Figure 2009029923
    (式中、a1は0以上の整数を示し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は1価の官能基を示し、Uは前記と同義を示す)
    で表される構造を示し、前記Yが下記一般式(4)
    Figure 2009029923
    (式中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は1価の官能基を示す)
    で表される構造を示す、請求項1に記載の変性エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂。
  3. 数平均分子量が4000以下である、請求項2に記載の変性エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂。
  4. 前記Aが上記一般式(2)で表される構造を示すと共に、前記Xが下記一般式(3)
    Figure 2009029923
    (式中、a1は0以上の整数を示し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は1価の官能基を示し、Uは前記と同義を示す)
    で表される構造を示し、前記Xが下記一般式(5)
    Figure 2009029923
    (式中、a2は0以上の整数を示し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は1価の官能基を示し、Uは前記と同義を示す)
    で表される構造を示し、前記Y,Yが下記一般式(4)
    Figure 2009029923
    (式中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は1価の官能基を示す)
    で表される構造を示す、請求項1に記載の変性エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂。
  5. 前記Zが、下記一般式(6)
    Figure 2009029923
    (式中、R,R10,R11及びR12は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の官能基を示す)
    で表される構造を示す、請求項1又は4に記載の変性エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂。
  6. 数平均分子量が8000以下である、請求項4又は5に記載の変性エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の変性エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂と、エポキシ樹脂と、硬化剤とを含むエポキシ樹脂組成物。
  8. 前記硬化剤が酸無水物系硬化剤である、請求項7に記載のエポキシ樹脂組成物。
  9. 請求項7又は8に記載のエポキシ樹脂組成物を用いて形成された電子部材。
  10. エポキシプリプレグ、前記エポキシプリプレグを用いた積層板、樹脂シート及び前記樹脂シートを用いた積層板のいずれかである、請求項9に記載の電子部材。
  11. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の変性エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂を製造する方法であって、
    (A)ポリフェニレンエーテルに含まれるフェノール性水酸基と、エポキシ樹脂に含まれるエポキシ基とを付加反応させる付加反応工程と、
    (B)前記フェノール性水酸基と、前記エポキシ基との付加反応により生じたアルコール性水酸基を変性する工程と、
    を含む、変性エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂の製造方法。
  12. 前記変性は、エステル化、ウレタン化又はグリシジル化による変性である、請求項11に記載の変性エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂の製造方法。
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