JP2009029688A - ZnO系基板及びZnO系基板の処理方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】結晶成長に適した表面を有するZnO系基板及びZnO系基板の処理方法を提供する。
【解決手段】
MgXZn1−XO基板(0≦X<1)の結晶成長を行う側の表面におけるOH基の存在が略0となっているように形成する。このための基板処理方法として、MgXZn1−XO基板の結晶成長を行う側の表面における最終処理は、pH3以下の酸性ウェットエッチングで行われる。以上により、Znの水酸化物の発生を防ぐことができ、ZnO系基板上の薄膜の結晶欠陥密度を非常に小さくすることができる。
【選択図】 図1
【解決手段】
MgXZn1−XO基板(0≦X<1)の結晶成長を行う側の表面におけるOH基の存在が略0となっているように形成する。このための基板処理方法として、MgXZn1−XO基板の結晶成長を行う側の表面における最終処理は、pH3以下の酸性ウェットエッチングで行われる。以上により、Znの水酸化物の発生を防ぐことができ、ZnO系基板上の薄膜の結晶欠陥密度を非常に小さくすることができる。
【選択図】 図1
Description
本発明は、ZnO系薄膜等の結晶成長に適したZnO系基板及びZnO系基板の処理方法に関する。
エレクトロニクスといえばシリコンを筆頭とする半導体材料が活躍する分野であるが、近年、要求される機能に対して、シリコン材料自身の物性限界から、その機能を満足するようなデバイス構成ができなくなってきている。例えば、150℃以上の高温動作、高電界耐圧のなさ等である。
その一方でその物質種の多さと機能の多様性から、高温超伝導体のYBCO、紫外発光材料ZnO、有機EL等に代表される酸化物や有機物質が次世代を担う材料として注目を集めている。これらがシリコンという材料に制約され、発現できなかった機能を実現する可能性がある。例えば、ZnOはその多機能性、発光ポテンシャルの大きさなどが注目されている。
ZnOを用いたデバイスを作製するには、ZnO薄膜を結晶成長させる成長用基板として、従来サファイア基板が用いられていた。しかし、サファイア基板では、薄膜材料であるZnOとの格子不整合が18%程度と大きいものであった。そのため、従来の薄膜においては、格子欠陥が多数発生したり、モザイクネスが大きくなるなど、高品質の単結晶薄膜を形成することが困難であった。ZnOの発光ポテンシャルの高さ等は、高品質の単結晶薄膜で発揮されるのであり、サファイア基板上に積層されたZnO薄膜で構成されたデバイスの性能については、本来ZnOがもつ性能を十分に発揮することができず、必ずしも最適な成長用基板ではない。
そこで、ZnOとの格子不整合が小さい、ScAlMgO4(SCAM)結晶等を成長用基板として用いることが提案されている。しかし、ScAlMgO4基板は、特殊な基板であり、このままでは産業応用に結びつかない。産業としてもっとも望ましいのはZnO基板を使うことである。
Applied Surface Science 237(2004)p.336-342/Ulrike Diebold et al Applied Physics Letters 89(2006)p.182111-182113/S.A.Chevtchenko et al
Applied Surface Science 237(2004)p.336-342/Ulrike Diebold et al Applied Physics Letters 89(2006)p.182111-182113/S.A.Chevtchenko et al
ところが、ZnO基板は、ウェットエッチングによって清浄面を出す等といった通常の研磨だけではエピタキシャル成長に適した平坦で清浄な表面を得ることができない(例えば非特許文献1、2参照)。エピタキシャル成長に適した表面を得るためには、平坦化プロセスで良く知られているCMP(Chemical Mechanical Polishing)が用いられる。
CMPによる方法では、例えば、コロイダルシリカを分散したアルカリ性水性研磨スラリーを回転式片面研磨装置などの研磨パッドとZnO基板等の被加工物との間に供給しながら化学機械研磨が行われる。研磨剤として使われるコロイダルシリカ(直径が〜5nm程度の小さなSiO2の粒)は、アルカリ性溶液の中でないと凝集してしまうため、上記のようにアルカリ性水性研磨スラリーを用いるが、コロイダルシリカによって研磨されると、研磨剤の成分であるシリカがZnO表面に付着するとともに、スラリー中のアルカリ性水溶液に曝したことによって、ZnO基板表面にZnの水酸化物であるZn(OH)xが形成される。
上記のうち、シリカの付着はその後のZnO系薄膜の結晶成長の時、Siの拡散となって現れる。図8は、ZnO基板上にMgZnO薄膜を形成した場合、ZnO基板とMgZnO薄膜との界面にSiが存在すると、どの程度MgZnO薄膜中にSiが拡散していくのかを示す図である。横軸は対数スケールで界面Si濃度を、縦軸は対数スケールでZnO薄膜中のSi濃度を示す。
図8に示されるように、界面Si濃度が上昇するにしたがって、MgZnO薄膜中のSi濃度も上昇していくことがわかり、ZnO基板表面に付着したシリカの濃度が高くなれば、それだけ、MgZnO薄膜中に拡散していくSiも増加するので、ドナーとして働くSiは、p型化する場合や、デバイス作製時に問題となる。
一方、ZnO基板表面の水酸化物の形成は、ZnO基板上に形成した結晶膜に欠陥が発生し、ピット密度増という形で悪影響を及ぼす。図13(a)は、CMPを行ったZnO基板上にMgZnO薄膜を結晶成長させて、MgZnO薄膜表面を光学顕微鏡で観察した暗視野像である。光学顕微鏡の倍率は1000倍にして観測した。図からわかるように白く抜けている丸い点が結晶欠陥(ピット)である。この個数を計数した結果、ピット密度は3.1×105個/cm2であった。
また、Znの水酸化物であるZn(OH)xは、水和物をつくり、ゲル状の不定形物質なので、上記シリカや、その他の不純物粒子等のパーティクルがゲル状Zn(OH)x中に取り込まれることで、ZnO基板上に残留しやすくなり、前述のようにZnO基板表面からシリカが結晶成長膜へ拡散したり、また、基板表面の清浄化が行いにくいという問題も発生する。
本発明は、上述した課題を解決するために創案されたものであり、結晶成長に適した表面を有するZnO系基板及びZnO系基板の処理方法を提供することを目的としている。
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、MgXZn1−XO基板(0≦X<1)の結晶成長を行う側の表面におけるOH基の存在が略0となっていることを特徴とするZnO系基板である。
また、請求項2記載の発明は、前記結晶成長を行う側の表面は、+C面を有する基板主面であって、基板主面の法線を基板結晶軸のc軸からm軸方向に傾斜させていることを特徴とする請求項1記載のZnO系基板である。
また、請求項3記載の発明は、前記MgXZn1−XO基板(0≦X<1)に結晶成長されたMgYZn1−YO(0≦Y<1)薄膜の表面を光学的手段で観測した時の欠陥密度が1×106cm−2以下になっていることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載のZnO系基板である。
また、請求項4記載の発明は、MgXZn1−XO基板(0≦X<1)の結晶成長を行う側の表面における最終処理は、pH3以下の酸性ウェットエッチング処理であることを特徴とするZnO系基板の処理方法である。
本発明のZnO系基板は、結晶成長側の表面におけるOH基の存在を略0にするように形成しているので、Znの水酸化物の発生を防ぐことができ、ZnO系基板上にZnO薄膜又はMgZnO薄膜を形成した場合に、これら薄膜の結晶欠陥密度を非常に小さくすることができる。また、Znの水酸化物の発生がなくなることにより、シリカ等のパーティクルの付着も減少させることができ、結晶成長に適した表面を形成することができる。
また、ZnO系基板の表面の最終処理をpH3以下の酸性ウェットエッチング処理とすることで、結晶成長側の表面におけるOH基の存在を略0にするようにすることができるので、上記同様の効果が発生する。また、上記のエッチングにより、ZnOとシリカ等のパーティクルとのゼータ電位を同極性とすることができるので、付着の発生をさらに抑えることができる。
本発明では、MgXZn1−XO基板(0≦X<1)を用い、この基板の結晶成長側表面をシリカ等のパーティクル付着やZnの水酸化物Zn(OH)xの発生がない、結晶成長に適した表面とするための構成を考え出した。上記MgXZn1−XO基板(0≦X<1)のうち、X=0のZnO基板を用いて以下のように考察を行った。
まず、パーティクル付着を防ぐための指針になるものは溶液中の固体のゼータ電位である。図9は、ゼータ電位の定義を示すもので、固体と液体の境界付近における液体中のイオンの振る舞いを表す。溶液中で固体表面は一般的に帯電する。固体表面が帯電すると、溶液中のイオン等の固体表面と反対の荷電を持つ帯電粒子は固体表面に引きつけられる。このとき、図9のように、上下に電界をかけると、固体表面の帯電によるクーロン力の及ぶ範囲により、イオンが動きだす境界面が存在する。この境界面の十分遠方に対する電位をゼータ電位という。
ところで、ゼータ電位は、アルカリ性や酸性を表すpH(ペーハー)に依存することが知られている。以下にSiで良く知られた例を示し、ゼータ電位とpH、ゼータ電位と粒子付着について説明する。図10は、大見忠弘著「ウルトラスクリーンULSI技術」培風館からの引用であり、ゼータ電位のpH依存性の一例を示す。D1(▼表示による曲線)がポリスチレンラテックス(PSL)におけるゼータ電位のpH(ペーハー)依存性を示す。一方、D2(●表示による曲線)は、Si基板表面におけるゼータ電位のpH(ペーハー)依存性を示す。このように、物質の種類が異なれば、ゼータ電位のpH依存性も異なる。
次に、Si基板表面へのパーティクルの付着についてゼータ電位との関係を示すのが図11である。図11も図10同様、大見忠弘著「ウルトラスクリーンULSI技術」培風館からの引用である。粒径や濁度等の測定に標準物質として用いられている上記PSL(ポリスチレンラテックス)をパーティクルに代用し、PSLを溶け込ませた溶液中にSi基板を浸漬させた。P1(●表示による曲線)が溶液をフッ酸溶液とし、そのpHを3.3にしたときの溶液中のPSL濃度(cm−3)とSi基板表面に付着したPSL吸着濃度(cm−3)との関係を示す。
一方、P2(○表示による曲線)は、溶液を超純水とし、そのpHを6にしたときの溶液中のPSL濃度(cm−3)とSi基板表面に付着したPSL吸着濃度(cm−3)との関係を示す。P1の場合pH3.3なので、図10を参照すると、PSLのゼータ電位は約50mVの正電位、Si基板表面のゼータ電位は約−20mVの負電位となって、PSLとSi基板表面のゼータ電位が異極性となるために、相互に引き合い、PSL濃度が増加していくと、それに比例してSi基板表面に吸着するPSLの濃度が大きくなっている。
一方、P2の場合pH6なので、図10を参照すると、PSLのゼータ電位は約−20mVの負電位、Si基板表面のゼータ電位は約−60mVの負電位となって、PSLとSi基板表面のゼータ電位が同極性となるために、相互に反発し合い、PSL濃度が増加しても、Si基板表面に吸着するPSL濃度は、ほとんど変化せず、非常に低いレベル(102cm−3未満)に留まっている。このように、パーティクル付着については、付着するパーティクルと固体表面とのゼータ電位が同極性であれば、互いの間に斥力が働き、パーティクル付着は発生しにくいということがわかる。
次に、ZnO基板の+C面におけるゼータ電位とコロイダルシリカにおけるゼータ電位のpH依存性を図2に示す。Z1(黒四角表示による曲線)はZnO基板の+C面におけるゼータ電位のpH依存性を、Z2(○表示による曲線)はコロイダルシリカおけるゼータ電位のpH依存性を、また、Z3(●表示による曲線)は前述のPSLにおけるゼータ電位のpH依存性を示す。
これだけを見ると、pHが5.5よりアルカリ側(5.5以上)ではコロイダルシリカやPSLとZnOはゼータ電位が同極性になり、上述したように、パーティクル付着は起きないはずであるが、ZnOの場合は単純ではなく、図12に示すように付着が起こる。
図12(a)は、ZnO基板の+C面に対してCMP処理を行った後、この+C面をpH4.5のHF溶液にて10分エッチングを行い、その後に2μm×2μmの視野でAFM(原子間力顕微鏡)による撮像を行ったものであり、図の点線で囲まれた領域では、パーティクルが埋まっているように見える。そこで、図12(a)の表面をEPMA(電子線マイクロアナライザー)を用いて調べた結果を図12(b)に示す。横軸は、EPMAで検出された特性X線のエネルギーを、縦軸は強度(カウント数)を表す。物質Si(シリコン)を示すエネルギー1.74keVの位置にピークが見られるので、研磨剤であるコロイダルシリカ(SiO2)が付着しているものと考えられる。
この理由を、図3に基づいて説明する。図3の左右の縦軸は酸化還元電位を、横軸はpHを示す。aとbの平行の点線で挟まれた領域が水中における平衡図を示す。また、水中における平衡図の中の斜線の領域がZn(OH)2の安定領域を表す。また、図中の数字で表されたラインは、各種の平衡状態を示す。例えば、数字の3はZn2++2H2O=HZnO2−+3H+、数字の4はHZnO2−=ZnO2 2−+H+であり、イオン平衡を示す。また、数字の5はZn(OH)2+2H+2e−=Zn+2H2Oと金属/水酸化物の平衡を、6はZn2++2H2O=Zn(OH)2+2H+、7はZn(OH)2=HZnO2−+H+、8はZn(OH)2=ZnO2 2−+2H+と水溶液/水酸化物の平衡を表す。10はHZnO2−+3H+ +2e−=Zn+2H2O、11はZnO2 2−+4H++2e−=Zn+2H2Oで水溶液/金属の平衡を表している。
図3からわかるように、pHが5.5以上のアルカリ側でZn(OH)2の安定領域がある。Znの水酸化物Zn(OH)2はゲル状物質であり、いわばZnO基板表面がネバついた状態になっており、粘着剤のような役割を果たしている。したがって、pHを5.5以上にしてZnO基板表面のゼータ電位とコロイダルシリカのゼータ電位とを同極性にしても、pHを5.5以上ではZn(OH)2の安定領域があり、Zn(OH)2が粘着剤の役目をして容易に反発して分離できないようになっている。
この状態の表面をXPS(X線光電子分光法)を用いて測定すると図4、5のデータが得られた。図4は、ZnO基板表面における酸素(O)の内殻電子状態差を表しており、電子1s軌道の結合エネルギーを示す。また、図5は、ZnO基板表面における亜鉛(Zn)の内殻電子状態差を表しており、電子2p3/2軌道の結合エネルギーを示す。なお、図4、5共に、横軸は結合エネルギー(Binding Energy)を、縦軸は強度を表す。
図4、5ともに、S1の曲線が基板処理がない場合を示すが、特に図4に表わされた高エネルギー側のピークの膨らみにより、明らかにOH基の存在が確認できる。この状態ではZnO基板上に結晶成長した薄膜の結晶欠陥を示すピット密度が増える。ZnO基板上にMgZnO薄膜を形成してMgZnO薄膜の結晶欠陥密度(ピット密度)を調べたのが図1である。ピット密度は、上述した図13の画像に示されるように、MgZnO薄膜表面を光学顕微鏡で観察した暗視野像を撮像し、図に示される白く抜けている丸い点、すなわちピットを計数して算出した。この処理をMgZnO薄膜の成長温度を変えて行い、これをプロットしたものが図1である。
従来のCMPによる研磨を行ったZnO基板を用いた場合のデータを逆白三角(▽)で示す。図に示すように、ピット密度を減少させるためには、成長温度を上げる必要がある。また、基板温度750℃〜850℃の範囲では、ピット密度が1×106cm−2より上側に集中している。
そこで、ZnO基板表面にZn(OH)2が安定して存在できないようにし、かつコロイダルシリカの付着を防ぐためには、図2、3より、ZnO基板表面をpH5.5未満(pH5.5よりも酸性側)の状態にすることが少なくとも必要である。pH5.5未満では、一応、ZnO基板とコロイダルシリカとのゼータ電位極性は同極性の領域が存在しているので、付着が起こりにくいと言えるが、途中で、ZnO基板とコロイダルシリカとのゼータ電位極性が異極性になる領域もあり、また、コロイダルシリカだけでなく、他のPSL等のようなパーティクルの付着を防ぐことも考えると、ZnO基板とコロイダルシリカとPSLの各ゼータ電位がすべて同極性を維持でき、かつ、Zn(OH)2が発生しない領域として、図2からpH3以下という数値が導かれる。したがって、ZnO基板表面をpH3又はpH3よりも酸性側の状態にすることが望ましい。
一方、ZnO基板表面をpH3以下(pH3又はpH3よりも酸性側)のHCl(塩酸)溶液等によりウェットエッチング処理を行った後、ZnO基板表面のXPS測定を行った。図4、5のS2の曲線が上記基板処理を行ったZnO基板表面における酸素(O)の内殻電子状態差、亜鉛(Zn)の内殻電子状態差を表す。図4、5を比較すると、特に図4の方がピーク形状が変化しており、OH基由来の信号が弱くなっていることを示しているので、OH基が非常に減少したことがわかる。このように、ZnO基板表面をOH基がほとんどない状態にするためには、基板表面の最終処理をpH3以下の酸性ウェットエッチングで行うのが良い。
また、上記のようにpH3以下の酸性ウェットエッチングの基板処理を行ったZnO基板上にMgZnO薄膜を形成し、MgZnO薄膜におけるピット密度を観測すると、図13(b)のようになった。撮像条件は、図13(a)と同じで、MgZnO薄膜表面を光学顕微鏡で観察した暗視野像である。光学顕微鏡の倍率は1000倍にして観測した。図13(a)と対比すればわかるように、ピットの数が激減しており、ピット密度は1.8×104個/cm2となった。
また、MgZnO薄膜の成長温度を変えて、各ピット密度を算出してプロットした。これが、図1に示すで表された黒丸(●)のデータであり、基板処理有りと記載された領域にかなり含まれている。成長温度750℃〜850℃の範囲で比較してみると、基板処理無しの場合と比べて、ピット密度はかなり減少していることがわかる。また、成長温度750℃以上では、基板処理有りのデータ(●)は、すべてピット密度1×106個/cm2以下となっており、基板処理無しのデータ(逆白三角:▽)とは明確に差が出ている。
さらに、点線で表したPのラインは、ZnO基板表面の状態によって変化するピット密度の下限値を示すが、このラインで比較してもわかるように、ピット密度が小さい同一の値で比較した場合、基板処理を行った方が基板上に形成する薄膜の成長温度を低くすることができる。したがって、水酸化物発生を防ぎ、ゼータ電位を同極性にしてパーティクルの付着を防止するためにはpH3以下のエッチング処理が望ましい。
次に、MgXZn1−XO基板(0≦X<1)の結晶成長側表面の基板処理実施例を説明する。以下のいずれの実施例においても、MgXZn1−XO基板における結晶成長側の基板主面は、図6、7のように形成される。まず、図6を用いて基板主面法線と基板結晶軸であるc軸、m軸、a軸との関係を説明する。図6に示されるように、MgXZn1−XO基板(0≦X<1)は、+C面を有する基板主面の法線がc軸から傾斜しており、少なくともc軸からm軸方向に傾斜させた法線を持つ基板主面となるように研磨されている。図6は、基板主面の法線Zが、基板結晶軸のc軸から角度Φ傾斜し、かつ法線Zを基板結晶軸のc軸m軸a軸の直交座標系におけるc軸m軸平面に射影(投影)した射影(投影)軸がm軸の方へ角度Φm、c軸a軸平面に射影した射影軸がa軸の方へ角度Φa傾斜している場合を示す。
ここで、基板主面の法線を少なくともc軸からm軸方向に傾斜させている理由について説明する。図7(a)に示されるのは、+C面を有する基板主面の法線Zがa軸方向にも、m軸方向にも傾斜しておらず、c軸と一致する場合の模式図である。基板1の主面の鉛直方向となる法線Zがc軸方向と一致している場合であり、各a軸、m軸、c軸は直交している。
しかし、バルク結晶は、その結晶がもつ劈開面を使用しないかぎり、図7(a)のようにウエハ主面の法線方向がc軸方向と一致することがなく、C面ジャスト基板にこだわると生産性も悪くなる。現実には、ウエハ主面の法線Zはc軸から傾き、オフ角を有する。例えば、図7(b)に示されるように、主面の法線Zがc軸m軸平面内に存在し、かつ法線Zがc軸からm軸方向にのみθ度傾斜しているとすると、基板1の表面部分(例えばT1領域)の拡大図である図7(c)に表されるように、平坦な面であるテラス面1aと、法線Zが傾斜したことにより生じる段差部分に等間隔で規則性のあるステップ面1bとが生じる。
ここで、テラス面1aがC面(0001)となり、ステップ面1bはM面(10−10)に相当する。図のように、形成された各ステップ面1bは、m軸方向にテラス面1aの幅を保ちながら、規則的に並ぶことになる。すなわち、テラス面1aと垂直なc軸と基板主面の法線Zとはθ度のオフ角を形成する。
このように、ステップ面をM面相当面となるようにすれば、主面上に結晶成長させたZnO系半導体層においては平坦な膜とすることができる。主面上にはステップ面1bによって段差部分が発生するが、この段差部分に飛来した原子は、テラス面1aとステップ面1bの2面との結合になるので、テラス面1aに飛来した場合よりも原子は強く結合ができ、飛来原子を安定的にトラップすることができる。
表面拡散過程で飛来原子がテラス内を拡散するが、結合力の強い段差部分や、この段差部分で形成されるキンク位置にトラップされて結晶に組み込まれることによって結晶成長が進む沿面成長により安定的な成長が行われる。ところで、図7(c)に表されるような、等間隔で規則性のあるステップ面1bの状態を維持するためには、ステップ面1bが化学的に安定していることが必要であり、それにはM面が優れている。
特に基板処理時には、pH3以下の酸性ウェットエッチングを用いる必要があるので、結晶成長面の安定性を確保するためには、MgXZn1−XO基板における結晶成長側の主面が、+C面を有し、主面のc軸がm軸方向にオフ角を有するように構成することが望ましい。また、実施例では、MgXZn1−XOでX=0としたZnO基板を用いた。上記ウェットエッチング用酸性溶液には、HCl(塩酸)、HF(フッ酸)、HNO3(硝酸)等を用いることができるが、特にHClが望ましい。
(実施例1)
まず、ZnO基板の主面をコロイダルシリカを用いて研磨を施し、1〜2分子層程度のステップ構造を有する表面を得る。このときの加工ダメージが大きい場合は、次に、pHが1以下の酸によるダメージ層の除去エッチングを行う。その後、pH2±0.5の酸によるエッチングによりZn(OH)2を取り除く。
まず、ZnO基板の主面をコロイダルシリカを用いて研磨を施し、1〜2分子層程度のステップ構造を有する表面を得る。このときの加工ダメージが大きい場合は、次に、pHが1以下の酸によるダメージ層の除去エッチングを行う。その後、pH2±0.5の酸によるエッチングによりZn(OH)2を取り除く。
(実施例2)
まず、ZnO基板の主面をコロイダルシリカを用いて研磨を施し、1〜2分子層程度のステップ構造を有する表面を得る。このときの加工ダメージが大きい場合は、pHが1以下の酸によるエッチングを行った後、ZnO基板上のシリカの溶解を行うためにpH3.5±1のフッ素を含む酸によるエッチングを実施する。最後に、pH2±0.5の酸によるエッチングを行う。
まず、ZnO基板の主面をコロイダルシリカを用いて研磨を施し、1〜2分子層程度のステップ構造を有する表面を得る。このときの加工ダメージが大きい場合は、pHが1以下の酸によるエッチングを行った後、ZnO基板上のシリカの溶解を行うためにpH3.5±1のフッ素を含む酸によるエッチングを実施する。最後に、pH2±0.5の酸によるエッチングを行う。
(実施例3)
まず、ZnO基板の主面をコロイダルシリカを用いて研磨を施し、1〜2分子層程度のステップ構造を有する表面を得る。このときの加工ダメージが大きくない場合には、pHが3以下の酸によってエッチングを行う。このエッチング時間はpHによって異なるが少なくても15秒以上は必要である。
まず、ZnO基板の主面をコロイダルシリカを用いて研磨を施し、1〜2分子層程度のステップ構造を有する表面を得る。このときの加工ダメージが大きくない場合には、pHが3以下の酸によってエッチングを行う。このエッチング時間はpHによって異なるが少なくても15秒以上は必要である。
上記いずれの実施例においても、図4に示すようにOH基の減少が見られた。
1 MgXZn1−XO基板
Claims (4)
- MgXZn1−XO基板(0≦X<1)の結晶成長を行う側の表面におけるOH基の存在が略0となっていることを特徴とするZnO系基板。
- 前記結晶成長を行う側の表面は、+C面を有する基板主面であって、基板主面の法線を基板結晶軸のc軸からm軸方向に傾斜させていることを特徴とする請求項1記載のZnO系基板。
- 前記MgXZn1−XO基板(0≦X<1)に結晶成長されたMgYZn1−YO(0≦Y<1)薄膜の表面を光学的手段で観測した時の欠陥密度が1×106cm−2以下になっていることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載のZnO系基板。
- MgXZn1−XO基板(0≦X<1)の結晶成長を行う側の表面における最終処理は、pH3以下の酸性ウェットエッチング処理であることを特徴とするZnO系基板の処理方法。
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