JP2009024086A - 担持型固形蓄熱材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 相変化物質、多孔質微粒子、水溶性ポリマー及び架橋剤を水中に分散させた混合物を高圧乳化するとともに、水溶性ポリマーと架橋剤を反応させて、相変化物質を担持した多孔質微粒子を樹脂で被覆した担持型固形蓄熱材の製造方法である。水溶性ポリマーと架橋剤を反応させた樹脂で多孔質微粒子を高密度で被覆するため、相変化物質の漏出がなく、また、各成分を水中に分散しながら相変化物質の担持と樹脂の被覆を同時複合的に処理するため、製造が簡便で、多孔質微粒子に相変化物質を均一に担持できる。
【選択図】 なし
Description
これら蓄熱材は、液体等の形態で空調システムへ媒体として組み込まれるなどしており、これによって夜間の電力需要量の格差を解消でき、もって現在、地球規模で問題視されているエネルギーの過剰消費を抑えて、環境保全に繋がることが期待される。
また、上記空調システムだけではなく、住建造物の外壁や内壁、衣料、或はインテリアなどにも蓄熱性を付与して、エネルギー消費をさらに抑制することが要請される。
そこで、この問題点を解決するために、相変化物質をエマルション化、或はカプセル化したり、他の物質に担持するといった手法が検討されている。
このうち、エマルション型蓄熱材はカプセル型に比べて調製が容易であるため、コスト的に有利であるが、エマルションであるが故に、蓄熱材料として使用する際には常に水を揮発させぬよう、容器等に充填、或は密閉して使用する必要がある。また、エマルションを他の素材へ添加、又は他の素材をエマルションへ添加した場合には凝集物が発生したり、或はエマルションであるために相変化物質が素材より漏れ出す恐れがある。
一方、カプセル型においては、水の存在がなくても相変化物質が外界へ漏れ出すことはないが、他の素材へ添加、混合し二次化加工を施す際にカプセル壁が壊れることにより相変化物質が漏れ出し、求められる加工性を充分に満足できない問題がある。
さらに、相変化物質を他の物質に担持させた蓄熱材では、相変化物質が液体となったとき、やはり外部へ漏れ出す恐れがあり、使用に耐え得るだけの実用的な性能を具備させることが今後の課題である。
(1)特許文献1
蓄熱材の外部への漏出を防止する目的で(段落5〜6、28)、発泡ガラス、発泡粘土などの多孔質微粒子に相変化物質を溶融状態にして含浸させる工程と(段落7、14)、アクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂、フッ素樹脂などの液剤を蓄熱材含浸多孔質担持体に噴射などで被覆する工程(段落12、15〜17)とからなる蓄熱材の製造方法が開示されている(請求項1と5)。
また、実施例1〜2では、多孔質微粒子に相変化物質を担持させる際に、真空ポンプによって負圧下に両物質を置いている(段落24〜25)。
ケイ藻土、シリカなどの多孔質微粒子に融点以上の温度で相変化物質を担持させる工程と、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂などの硬化性樹脂と層状珪酸塩とを混合して硬化性樹脂組成物を調製する工程と、蓄熱材含浸多孔質担持体と上記樹脂組成物を混合して樹脂を硬化させ、多孔質担持体を樹脂で被覆する工程とからなる蓄熱材の製造方法が開示されている(請求項1、3、9、段落56)。
当該蓄熱材では、被覆層の耐熱性が向上するとともに、層状珪酸塩の使用で蓄熱材の揮発防止を改善できる効果が記載されている(段落8、54)。
また、上記担持工程では、相変化物質の融点以上でヘンシェルミキサーにより高速回転させながら、液状の相変化物質を多孔質微粒子に滴下させ、また、樹脂コート工程では無溶剤下で行うことも可能であるとしている(段落86〜88)。
また、上記特許文献1(実施例1〜2)では、真空下に置いた相変化物質へ液状の相変化物質を吸引させることにより、また、上記特許文献2(実施例1)では、相変化物質の融点以上でミキサーにより高速回転させながら、液状の相変化物質を多孔質微粒子に滴下することにより、いずれも粉体状の多孔質微粒子へ液状の相変化物質を担持させている。このため、多孔質微粒子の全体に均一に相変化物質を担持させることが困難であり、局所的に相変化物質が担持されない多孔質微粒子が残存したり、相変化物質が多孔質微粒子へ担持されずに残存するという恐れがあり、得られた蓄熱材の性能は、たとえ同一ロットであってもバラツキが大きいという生産上の問題がある。
その中でも、C8〜C40の脂肪族炭化水素類が好ましく、具体的には、ドデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、オクタデカン、ノナデカン、エイコサン、ヘネイコサン、ドコサン、テトラコサン、ヘキサコサン、ヘプタコサン、オクタコサン、トリアコンタンなどのノルマルパラフィン、その各種イソ体であるイソパラフィン、分子内の一部に環構造を含む各種のシクロパラフィンである。より好ましくはC10〜C30の飽和脂肪族炭化水素類であり、特に、n−テトラデカン、n−ペンタデカン、n−ヘキサデカン、n−オクタデカン、或はこれらの混合物が好適である。
上記相変化物質は、取り出したい温度及び熱量と、相変化物質の融点とを考慮して、単用又は併用できることはいうまでもない。
酸化物系無機材料としては、非晶質湿式法シリカ、非晶質乾式法シリカ、珪藻土、ゼオライト、アルミナ、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、結晶性層状ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カルシウム、酸化チタン、アパタイト、ガラスなどが挙げられる。
炭素或いは窒素系材料としては、活性炭、カーボン、パーライト、炭化ケイ素、炭化チタン、窒化ケイ素、結晶性セルロース、連続気泡性ウレタンなどが挙げられる。
なかでも、強度があり、吸油量が200mL/100g以上である材料が好ましいことから、本発明4に示すように、シリカ(非晶質湿式法、乾式法によるシリカを含む)、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムが好適である。
尚、上記吸油量とは、JIS K 6220に準拠して測定される値であり、吸油量が高いほど、相変化物質成分としての飽和脂肪族炭化水素の吸収、吸着による担持量が増す。
上記カルボキシル基含有ポリマーを構成する不飽和カルボン酸は、(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、(無水)シトラコン酸、或はこれらの塩や半エステルなどである。尚、(メタ)アクリル酸はアクリル酸とメタクリル酸を包含する概念である。
また、当該カルボキシル基含有ポリマーを構成する疎水性モノマーは、(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、ビニルエステル系モノマー、ビニルエーテル系モノマー、ビニル芳香族系モノマー、オレフィン系モノマーなどであり、(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、ビニル芳香族系モノマーが好ましい。
上記(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとしては、アクリル酸エチル、アクリル酸プロビル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジルなどのアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジルなどのメタクリル酸エステル類などが挙げられる。
上記ビニルエステル系モノマーとしては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニルなどが挙げられる。
上記ビニルエーテル系モノマーとしては、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルn−ブチルエーテル、ビニルフェニルエーテル、ビニルシクロヘキシルエーテルなどが挙げられる。
上記ビニル芳香族系モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、スチレンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。
上記オレフィン系モノマーとしては、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1などのモノオレフィン系モノマー、或はブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジオレフィン系モノマーなどが挙げられる。
また、上記カルボキシル基含有ポリマーの場合、水溶性や相変化物質が担持された多孔質微粒子の分散性を向上させるため、その他のモノマーを併用することができる。
その他のモノマーとしては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート系モノマー、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリルレート系モノマー等の水酸基、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドを有するモノマーなどが挙げられる。
上記水溶性ポリマーがカルボキシル基含有ポリマーである場合、不飽和カルボン酸と疎水性モノマーとの割合は、重量比で不飽和カルボン酸/疎水性モノマー=100/0〜3/97が好ましく、さらに好ましくは100/0〜25/75である。不飽和カルボン酸が少ないと、中和後の水溶性ポリマーの水に対する溶解性が低下し、ポリマーが水に不溶化し、水中分散下において相変化物質が担持された多孔質微粒子を樹脂により被覆できなくなる恐れがある。
上記ポリアクリルアミド類はポリアクリルアミド、カチオン性ポリアクリルアミド、両性ポリアクリルアミドなどをいう。
上記デンプン類はデンプン、酵素変性デンプン、エステル化デンプン、エーテル化デンプン、カチオン化デンプンなどをいう。
上記セルロース類はカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロースなどをいう。
このカルボキシル基含有ポリマーを製造するためには、不飽和カルボン酸と疎水性モノマー、又はさらにその他のモノマーを、バルク重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合或はその他の方法で重合するのが一般的である。
重合で得られたカルボキシル基含有ポリマーは任意の中和率でアルカリ中和し、カルボン酸塩を形成させることにより、良好な水溶性ポリマーとなる。
カルボン酸塩を有する水溶性ポリマーは相変化物質が担持された多孔質微粒子を水中へ分散させる役割をも担うため、アクリル酸やマレイン酸などの不飽和カルボン酸とスチレンや(メタ)アクリレートなどの疎水性モノマーとの共重合体のように、親水部分と疎水部分を適正に共有するポリマーが好ましい。
しかしながら、カルボン酸塩のままでは、架橋剤との反応速度が上がらず、架橋構造が形成されにくいため、乾燥時に中和剤が揮発し、カルボキシル基が再生するにつれて架橋反応が進行するカルボン酸塩が望ましい。即ち、中和剤がブロック剤として働いているため、カルボン酸のアミンを有する水溶性ポリマーと架橋剤との共存下での保存安定性と、乾燥時の高反応性を両立できるものが望ましい。
従って、水酸化ナトリウムなどを中和剤に用いると、架橋速度が遅く、架橋型樹脂が形成されにくいため、カルボキシル基含有ポリマーの中和剤としては、アンモニアやアミンが好ましい(つまり、当該カルボキシル基はアミン塩化やアンモニウム塩化されたものが好ましい;本発明3参照)。また、アミンの中でも、高沸点アミンは架橋速度が遅いため、モノメチルアミン、ジメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミンのような沸点100℃以下であり、揮発性の高い塩基(低沸点アミン)がより好ましい。
上記架橋剤としては、本発明5に示すように、オキサゾリン系化合物、カルボジイミド系化合物、アジリジン系化合物、ヒドラジン系化合物よりなる群から選ばれた化合物の少なくとも一種が好ましく、なかでもカルボキシル基と架橋剤との共存下での保存安定性、及び架橋剤自体の毒性を考慮すると、オキサゾリン系化合物が特に好ましい。
上記オキサゾリン系化合物としては、オキサゾリン基を少なくとも2個以上有するものであれば良く、具体的には、2−メチル−2−オキサゾリン、2−エチル−2−オキサゾリン、2−イソプロピル−2−オキサゾリン、2−n−プロピル−2−オキサゾリン、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリンなどであり、市販品にはエポクロス(日本触媒(株)製)などが挙げられる。
上記カルボジイミド系化合物としては、カルボジイミド基を少なくとも2個以上有するものであれば良く、市販品にはカルボジライト(日清紡績(株)製)などが挙げられる。
上記アジリジン系化合物としては、アジリジン基を少なくとも2個以上有するものであれば良く、具体的には、1−(メチレン−ジ−p−フェニレン)ビス−3,3−アジリジニル尿素、1,1′−(ヘキサメチレン)ビス−3,3−アジリジニル尿素、エチレンビス−(2−アジリジニルプロピオネート)、2,4,6−トリアジリジニル−1,3,5−トリアジンなどであり、市販品にはケミタイト(日本触媒(株)製)などが挙げられる。
上記ヒドラジン系化合物としては、ヒドラジン基を少なくとも2個以上有するものであれば良く、具体的には、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジドなどが挙げられる。
一方、本発明の水溶性ポリマーがポリビニルアルコール類やポリアクリルアミド類である場合には、これらがカルボキシル基を有しないため、架橋剤にはエポキシ樹脂、ポリイソシアネートなどが使用できる。
単に水中に、相変化物質や多孔質微粒子などの上記成分を分散しただけでは、多孔質微粒子への吸着性を考えると、水分子が多孔質微粒子に担持され、相変化物質が担持されない事態も起こり得る。上記高圧乳化処理はこれを防止するためのもので、各種ミキサー、高圧乳化機、高圧吐出型乳化機、高剪断型乳化分散機、その他の任意の混合機を用いて、上記成分の混合物を微細乳化することを基本原理とする。
本発明の水溶性ポリマーと架橋剤との反応は加熱乾燥による架橋が基本である。従って、相変化物質を担持した多孔質微粒子の表面には、上記架橋反応で生成した架橋型樹脂が緻密に被覆することになる。
水溶性ポリマーと架橋剤との反応温度は60℃以上が適しており、好ましくは80℃であり、また、分散水を蒸発させてパウダー状の担持型蓄熱材を得る場合には、本発明6に示すように、100℃以上がより好ましい。水溶性ポリマーがカルボキシル基含有ポリマーの場合、オキサゾリン系化合物のような架橋剤との架橋反応では150℃以上が好適である。
反応温度が低いと、水溶性ポリマー及び架橋剤の反応速度が上がらず、緻密な構造を有する架橋型樹脂が得られず、得られる担持型蓄熱材より相変化物質がブリードする(漏れ出す)恐れがある。また、分散水を蒸発させてパウダー状の担持型蓄熱材を得る場合における乾燥温度の上限は200℃が望ましい。乾燥温度が200℃より高いと、相変化物質の蒸気圧により乾燥工程時に徐々に相変化物質が揮発し、得られた担持型蓄熱材の熱量を損なう恐れがある。さらに、パウダー状の担持型蓄熱材を得る場合の乾燥時間としては、より短時間であることが望ましく、10分以内、さらに望ましくは5分以内である。乾燥時間が10分より長いと、相変化物質の蒸気圧により乾燥工程時に徐々に相変化物質が揮発し、得られた担持型蓄熱材の熱量を損なうという問題が生じる。このように、乾燥温度及び乾燥時間を制御することが可能な乾燥設備としては、公知の間接加熱型、および直接加熱型の粉体乾燥機を用いることが望ましい。
水溶性ポリマーがカルボキシル基含有ポリマーであり、架橋剤がオキサゾリン系化合物の場合、カルボン酸を有する水溶性ポリマーとオキサゾリン基を有する架橋剤との配合割合は、固形分換算で、水溶性ポリマーの遊離カルボン酸モル量と、架橋剤のオキサゾリン基モル量との比で表すと、カルボン酸量/オキサゾリン基量=100/20〜100/120が好ましく、より好ましくは100/20〜100/100である。
水溶性ポリマーの配合割合が多すぎると、架橋型樹脂の架橋密度が上がらず、得られた担持型蓄熱材から相変化物質がブリードする恐れが生じ、また、オキサゾリン基を含有する架橋剤が多すぎると、系中に含まれる水溶性ポリマーの割合が低下することにより、相変化物質を担持させた多孔質微粒子を良好に分散できなくなる恐れがある。
さらに、多孔質微粒子と、水溶性ポリマー及び架橋剤の合計樹脂成分との重量割合は、多孔質微粒子/合計樹脂成分=90/10〜10/90、好ましくは60/40〜40/60で適宜配合することが望ましい。
多孔質微粒子の割合が多く合計樹脂成分の割合が少なすぎると、相変化物質を担持させた多孔質微粒子を被覆するための水溶性ポリマー及び架橋剤の量が不充分であり、乾燥後に得られた粉体状の蓄熱材より相変化物質がブリードする恐れがあり、また、多孔質微粒子が少なく合計樹脂成分の割合が多すぎると、相変化物質を担持させるための多孔質微粒子が不充分であり、この場合も、乾燥後に得られた粉体状の蓄熱材より相変化物質がブリード恐れがある。
以上の通り、本発明により得られる担持型蓄熱材は、簡便な手法で製造でき、かつ得られた蓄熱材は性能のバラツキが少なく、相変化物質のブリードもないことから、他の素材へ容易に添加、混合できる。
また、本発明は下記の実施例、試験例に拘束されることはなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意の変形をなし得ることは勿論である。
下記の実施例1〜6は水溶性ポリマーを溶解させたイオン交換水に相変化物質、多孔質微粒子、架橋剤を分散させ、高圧乳化処理をした後、乾燥による架橋処理を施した例であり、このうち、実施例1〜3は乾燥温度を変化させた例である。実施例4〜5は水溶性ポリマーのカルボン酸基量と架橋剤のオキサゾリン基量の比率を変化させた例である。実施例6は水溶性ポリマーがアクリルポリマーである例、他の実施例は共にマレイン酸系ポリマーの例である。
尚、図1の上寄り欄〜中央寄り欄には、実施例1〜6及び比較例1〜4についての水溶性ポリマー、相変化物質、多孔質微粒子及び架橋剤などの添加量や種類、乾燥条件などをまとめた。
水溶性ポリマーとしてマレイン酸半エステル−スチレン共重合体のアンモニウム塩(第一工業製薬(株)製;DKSディスコートN−14)29.5部に、イオン交換水112.6部を加えて溶解させ、ポリマー溶液を調製した。
このポリマー溶液に相変化物質として融点約25℃のn−パラフィン混合物((株)ジャパンエナジー製;カクタスノルマルパラフィンTS−897)60部を加え、45℃にて均一に分散させた。この分散液に、さらに多孔質微粒子((株)トクヤマ製;トクシールNP)20部を加え、均一に混合してスラリーとし、架橋剤としてオキサゾリン系化合物((株)日本触媒製;エポクロスK−2010E)27.9部を加えた後、マントンガウリン社製の高圧乳化機により300kg/cm2の圧力で高圧乳化し、スラリー液を得た。尚、水溶性ポリマーのカルボキシル基と架橋剤のオキサゾリン基の官能基量比は100/100であった。
次いで、このスラリー液を、乾燥機(ホソカワミクロン(株)製;ドライマイスタDMR−MINI)にて、入口温度100℃、出口温度90℃の条件で乾燥させ、水溶性ポリマーを架橋させることにより、相変化物質を多孔質微粒子に担持させ、樹脂で被覆した担持型固形蓄熱材を得た。
上記実施例1の水溶性ポリマー29.5部に、イオン交換水112.6部を加えて溶解させ、ポリマー溶液を調製した。
このポリマー溶液に相変化物質として融点約25℃のn−パラフィン混合物((株)ジャパンエナジー製;カクタスノルマルパラフィンTS−897)60部を加え、45℃にて均一に分散させた。この分散液に、さらに多孔質微粒子((株)トクヤマ製;トクシールNP)20部を加え、均一に混合してスラリーとし、同実施例1の架橋剤27.9部を加えた後、マントンガウリン社製の高圧乳化機により300kg/cm2の圧力で高圧乳化し、スラリー液を得た。尚、水溶性ポリマーのカルボキシル基と架橋剤のオキサゾリン基の官能基量比は上記実施例1と同じであった。
次いで、このスラリー液を、乾燥機(ホソカワミクロン(株)製;ドライマイスタDMR−MINI)にて、入口温度140℃、出口温度90℃の条件で乾燥させ、水溶性ポリマーを架橋させることにより、担持型固形蓄熱材を得た。
上記実施例1の水溶性ポリマー29.5部にイオン交換水112.6部を加えて溶解させ、ポリマー溶液を調製した。
このポリマー溶液に相変化物質として融点約25℃のn−パラフィン混合物((株)ジャパンエナジー製;カクタスノルマルパラフィンTS−897)60部を加え、45℃にて均一に分散させた。この分散液に、さらに多孔質微粒子((株)トクヤマ製;トクシールNP)20部を加えて、均一に混合してスラリーとし、同実施例1の架橋剤27.9部を加えた後、マントンガウリン社製の高圧乳化機により300kg/cm2の圧力で高圧乳化し、スラリー液を得た。尚、水溶性ポリマーのカルボキシル基と架橋剤のオキサゾリン基の官能基量比は上記実施例1と同じであった。
次いで、このスラリー液を、乾燥機(ホソカワミクロン(株)製;ドライマイスタDMR−MINI)にて、入口温度180℃、出口温度90℃の条件で乾燥させ、水溶性ポリマーを架橋させることにより、担持型固形蓄熱材を得た。
実施例1の水溶性ポリマー38部にイオン交換水110.5部を加えて溶解させ、ポリマー溶液を調製した。
このポリマー溶液に相変化物質として融点約25℃のn−パラフィン混合物((株)ジャパンエナジー製;カクタスノルマルパラフィンTS−897)60部を加え、45℃にて均一に分散させた。この分散液に、さらに多孔質微粒子((株)トクヤマ製;トクシールNP)20部を加え、均一に混合してスラリーとし、同実施例1の架橋剤21.5部を加えた後、マントンガウリン社製の高圧乳化機により300kg/cm2の圧力で高圧乳化し、スラリー液を得た。尚、水溶性ポリマーのカルボキシル基と架橋剤のオキサゾリン基の官能基量比は100/60であった。
次いで、このスラリー液を、乾燥機(ホソカワミクロン(株)製;ドライマイスタDMR−MINI)にて、入口温度180℃、出口温度90℃の条件で乾燥させ、水溶性ポリマーを架橋させることにより、担持型固形蓄熱材を得た。
上記実施例1の水溶性ポリマー53.3部にイオン交換水106.7部を加えて溶解させ、ポリマー溶液を調製した。
このポリマー溶液に相変化物質として融点約25℃のn−パラフィン混合物((株)ジャパンエナジー製;カクタスノルマルパラフィンTS−897)60部を加え、45℃にて均一に分散させた。この分散液に、さらに多孔質微粒子((株)トクヤマ製;トクシールNP)20部を加え、均一に混合してスラリーとし、同実施例1の架橋剤10部を加えた後、マントンガウリン社製の高圧乳化機により300kg/cm2の圧力で高圧乳化し、スラリー液を得た。尚、水溶性ポリマーのカルボキシル基と架橋剤のオキサゾリン基の官能基量比は100/20であった。
次いで、このスラリー液を、乾燥機(ホソカワミクロン(株)製;ドライマイスタDMR−MINI)にて、入り口温度180℃、出口温度90℃の条件で乾燥させ、水溶性ポリマーを架橋させることにより、担持型固形蓄熱材を得た。
水溶性ポリマーとしてポリアクリル酸アンモニウム塩(第一工業製薬(株)製;シャロール AH−103P)9.7部に、イオン交換水121.0部を加えて溶解させ、ポリマー溶液を調製した。
このポリマー溶液に相変化物質として融点約25℃のn−パラフィン混合物((株)ジャパンエナジー製;カクタスノルマルパラフィンTS−897)60部を加え、45℃にて均一に分散させた。この分散液に、さらに多孔質微粒子((株)トクヤマ製;トクシールNP)20部を加え、均一に混合してスラリーとし、同実施例1の架橋剤39.3部を加えた後、マントンガウリン社製の高圧乳化機により300kg/cm2の圧力で高圧乳化し、スラリー液を得た。尚、水溶性ポリマーのカルボキシル基と架橋剤のオキサゾリン基の官能基量比は100/60であった。
このスラリー液を、乾燥機(ホソカワミクロン(株)製;ドライマイスタDMR−MINI)にて、入口温度180℃、出口温度90℃の条件で乾燥させ、水溶性ポリマーを架橋させることにより、担持型固形蓄熱材を得た。
上記実施例1の水溶性ポリマー38部にイソプロピルアルコール110.5部を加えて溶解させ、ポリマー溶液を調製した。
このポリマー溶液に相変化物質として融点約25℃のn−パラフィン混合物((株)ジャパンエナジー製;カクタスノルマルパラフィンTS−897)60部を加え、45℃にて均一に分散させた。この分散液に、さらに多孔質微粒子((株)トクヤマ製;トクシールNP)20部を加え、均一に混合してスラリーとし、上記実施例1の架橋剤21.5部を加えた後、マントンガウリン社製の高圧乳化機により300kg/cm2の圧力で高圧乳化し、スラリー液を得た。尚、水溶性ポリマーのカルボキシル基と架橋剤のオキサゾリン基の官能基量比は100/60であった。
次いで、このスラリー液を、乾燥機(ホソカワミクロン(株)製;ドライマイスタDMR−MINI)にて、入口温度180℃、出口温度90℃の条件で乾燥させ、水溶性ポリマーを架橋させることにより、固形蓄熱材を得た。
上記実施例1の水溶性ポリマー38部にイオン交換水110.5部を加えて溶解させ、ポリマー溶液を調製した。
このポリマー溶液に相変化物質として融点約25℃のn−パラフィン混合物((株)ジャパンエナジー製;カクタスノルマルパラフィンTS−897)60部を加え、45℃にて均一に分散させた。この分散液に、さらに多孔質微粒子((株)トクヤマ製;トクシールNP)20部と、同実施例1の架橋剤21.5部を加えて混合し、スラリー液を得た。尚、水溶性ポリマーのカルボキシル基と架橋剤のオキサゾリン基の官能基量比は上記比較例1と同じであった。
次いで、このスラリー液を、乾燥機(ホソカワミクロン(株)製;ドライマイスタDMR−MINI)にて、入口温度180℃、出口温度90℃の条件で乾燥させ、水溶性ポリマーを架橋させることにより、固形蓄熱材を得た。
デシケータ内に多孔質微粒子((株)トクヤマ製;トクシールNP)20部と、相変化物質として融点25℃のn−パラフィン混合物((株)ジャパンエナジー製;カクタスノルマルパラフィンTS−897)60部とを収容し、真空ポンプでデシケータを負圧にすることで、相変化物質を多孔質微粒子に担持させた。
次いで、相変化物質を担持させた多孔質微粒子をデシケータから取り出し、粉体混合機(ホソカワミクロン(株)製;ラボミクサLV−1)にて撹拌させながら、上記実施例1の水溶性ポリマー38部、同実施例1の架橋剤21.5部を加え、45℃の温度下で10分間撹拌して粉体を得た。尚、水溶性ポリマーのカルボキシル基と架橋剤のオキサゾリン基の官能基量比は上記比較例1と同じであった。
次いで、この粉体を熱風乾燥機にて180℃で1分間乾燥させ、架橋させることにより、固形蓄熱材を得た。
上記実施例1の66.7部にイオン交換水103.3部を加えて溶解させ、ポリマー溶液を調製した。
このポリマー溶液に相変化物質として融点約25℃のn−パラフィン混合物((株)ジャパンエナジー製;カクタスノルマルパラフィンTS−897)60部を加え、45℃にて均一に分散させた。この分散液に、さらに多孔質微粒子((株)トクヤマ製;トクシールNP)20部を加え、均一に混合してスラリーとし、マントンガウリン社製の高圧乳化機により300kg/cm2の圧力で高圧乳化して、スラリー液を得た。
次いで、このスラリー液を、乾燥機(ホソカワミクロン(株)製;ドライマイスタDMR−MINI)にて、入口温度180℃、出口温度90℃の条件で乾燥させることにより、固形蓄熱材を得た。
そこで、上記実施例1〜6及び比較例1〜4で得られた各固形蓄熱材について、下記の要領でブリードアウト及び熱量の評価試験に供した。
(a)熱量測定
示差走査熱量計を使用し、昇温速度5℃/分で−13℃から65℃へ昇温させて、潜熱量を測定した。
但し、この場合、一種類の蓄熱材について、サンプルを変え、同様の試験を5回繰り返し、その平均値及び標準偏差を求めることで、融解熱量平均値により蓄熱材の性能を評価するとともに、標準偏差により蓄熱材の性能バラツキを評価した。
蓄熱材をあぶらとり紙((株)箔一製)1枚の上へ1.0gを載せ、60℃に設定した恒温槽にて2時間保温した。その間、30分毎にあぶらとり紙上で蓄熱材をかき混ぜ、あぶらとり紙と蓄熱材とが均一に接触するようにした。
2時間後、あぶらとり紙より蓄熱材を取り除き、蓄熱材からの相変化物質のブリードアウト状態を目視観察して、蓄熱材の漏出防止安定性の優劣を評価した。
その評価基準は次の通りである。
○:試験後、あぶらとり紙への相変化物質の染み込みがなく、蓄熱材から相変化物質のブリードがなかった。
△:試験後、あぶらとり紙への相変化物質の染み込みが目視で僅かに確認された(上記ブリードが少なかった)。
×:試験後、あぶらとり紙への相変化物質の染み込みが目視で多く確認された(上記ブリードが多かった)。
分散媒として水ではなくイソプロピルアルコールを使用した比較例1では、水溶性ポリマーの溶解性が低いことから樹脂の被覆も不充分であるため、蓄熱材のブリードアウト評価は悪く、熱量も不足していた。
また、分散媒としての水を使用しないで、負圧処理にて相変化物質を多孔質微粒子に担持した後、水溶性ポリマー及び架橋剤を添加した比較例3では、熱量は上記比較例1より増していたが、相変化物質が均一に担持されないために蓄熱材の性能のバラツキが大きいうえ、この担持効率や樹脂の被覆効率が低いためにブリードアラト評価は低かった。
これに対して、実施例1〜6では概ねブリードアウト評価に優れ、熱量も高く、蓄熱材の性能のバラツキも小さかった。
以上の通り、実施例1〜6を比較例1又は3に対比すると、蓄熱材としての熱量を増し、性能のバラツキを低減し、且つ、多孔質微粒子からの相変化物質のブリードアウトを防止する点で、水を分散媒として、相変化物質、多孔質微粒子、水溶性ポリマー及び架橋剤を添加しながら、多孔質微粒子への相変化物質の担持と樹脂の被覆を施す本発明の方法の優位性が、上記比較例に対して確認できた。
従って、実施例1〜6をこの比較例2に対比すると、相変化物質の担持効率を増して熱量を充分に確保し、性能のバラツキを低減するには、高圧乳化処理を施すことの必要性が確認できた。
また、高圧乳化処理を施しながら、架橋剤を使用しなかった比較例4では、被覆樹脂の緻密化が不足することから、ブリードアウト評価は悪く、熱量も低かった。このため、熱量やブリードアウト評価を向上するには、水溶性ポリマーと共に架橋剤を使用することの重要性が明らかになった。
先ず、乾燥温度を変化させて水溶性ポリマーと架橋剤との反応条件を変えた実施例1〜3については、熱量やブリードアウトの評価はあまり変わらず、基本的な架橋反応を進行させて被覆樹脂を緻密化すれば、良好な担持型蓄熱材が得られることが分かった。
また、実施例4〜5は実施例1などに対して、水溶性ポリマーのカルボキシル基と架橋剤のオキサゾリン基の官能基量を変化させているが、カルボキシル基量の減少に伴い、被覆樹脂の緻密化の度合が若干下がり、実施例5ではブリードアウト評価は△の方向に少し後退し、熱量も少し低減した(但し、この実施例5にあっても、比較例に対して蓄熱材としての実用水準は充分に保持していた)。
さらに、水溶性ポリマーがマレイン酸系ポリマーである実施例1〜5と、同ポリマーがアクリルポリマーである実施例6の間で、熱量やブリードアウトの評価に基本的な差異はなかった。また、前述した通り、実施例1〜6に亘って蓄熱材の性能のバラツキは小さかった。
Claims (7)
- 相変化物質、多孔質微粒子、水溶性ポリマー及び架橋剤を水中に分散させた混合物を高圧乳化するとともに、水溶性ポリマーと架橋剤を反応させて、相変化物質を担持した多孔質微粒子を樹脂で被覆することを特徴とする担持型固形蓄熱材の製造方法。
- 水溶性ポリマーがアクリルポリマー、マレイン酸系ポリマーよりなることを特徴とする請求項1に記載の担持型固形蓄熱材の製造方法。
- 水溶性ポリマーがカルボキシル基含有ポリマーであり、当該カルボキシル基がアンモニウム塩化又はアミン塩化されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の担持型固形蓄熱材の製造方法。
- 多孔質微粒子がシリカ、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムより選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の担持型固形蓄熱材の製造方法。
- 架橋剤がオキサゾリン系化合物、カルボジイミド系化合物、アジリジン系化合物、ヒドラジン系化合物よりなる群から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とした請求項1〜4のいずれか1項に記載の担持型固形蓄熱材の製造方法。
- 水溶性ポリマーと架橋剤を100℃以上で架橋反応させることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の担持型固形蓄熱材の製造方法。
- 相変化物質が、C8〜C40のノルマルパラフィン、イソパラフィン、シクロパラフィンよりなる群から選ばれた脂肪族炭化水素類の少なくとも一種であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の担持型固形蓄熱材の製造方法。
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