以下、本発明に係るテープカセット及び印字装置について、本発明を具体化した実施形態に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。
(第1実施形態)
第1実施形態に係るテープカセット及びテープ印字装置について図1及び図2に基づき説明する。図1はテープ印字装置のカセット収納部にテープカセットを装着する状態を示す要部拡大斜視図、図2はテープカセットの内部構成を模式的に示す平面図である。
図1において、テープカセット101は、テープ印字装置110に設けられたカセット収納部6に着脱可能となっている。テープカセット101は、上ケース2と下ケース3とを有する。上ケース2は下ケース3の上面を被覆する蓋部材であり、また、下ケース3には、図2で示すように、その中央部より若干上方位置にフィルムテープ17を巻回したテープスプール18が配置されている。また、下ケース3においてテープスプール18の右下方位置には、インクリボン19を巻回したリボンスプール20が配置され、更に、リボンスプール20からインクリボン19を引き出すとともに、文字等の印字にて消費されたインクリボン19を巻き取るリボン巻取スプール21が配置されている。
テープカセット101には、上ケース2及び下ケース3を貫通するようにヘッド挿通開口40が形成されている。ヘッド挿通開口40には、テープカセット101をカセット収納部6に収納した際に、後述するサーマルヘッド7が挿通される。ヘッド挿通開口40にて、サーマルヘッド7の下流側(図2中左側)には、分離部材4が形成されている。分離部材4は、後述するように、サーマルヘッド7による文字等の印字時に、プラテンローラ8とサーマルヘッド7とに挟まれてフィルムテープ17に圧接されたインクリボン19の送り方向の転換を行うとともに、インクリボン19をフィルムテープ17から分離する作用を行うものである。
また、テープカセット101には、分離部材4を介してインクリボン19が分離された後、文字等が印字されたフィルムテープ17をテープカセット1の外部に排出する排出口13が形成されている。
続いて、テープ印字装置110におけるカセット収納部6の構成について説明する。図1及び図2に示すように、テープ印字装置110のカセット収納部6には、サーマルヘッド7が固設されている。サーマルヘッド7は、縦長四角形の平板状であり、前面の左端縁部には、所定個数の各発熱素子が、該左端縁部の辺に沿って一列に配列されて形成されている。また、カセット収納部6には、プラテンホルダ46がホルダ軸47の回りに回動可能に支持されている。プラテンホルダ46にはプラテンローラ8が回転可能に支持されている。プラテンホルダ46は、図示しない弾性部材によりホルダ軸47の回りに反時計方向に付勢されており、フィルムテープ17への印字時には、モータ等により時計方向に駆動され、これによりプラテンローラ8はサーマルヘッド7に対して接離可能にされている。
また、カセット収納部6には、テープカセット101のリボン巻取スプール21に連結されるリボン巻取軸9が配設されている。リボン巻取軸9は、図示しないモータ等の駆動機構に連結されており、前記のように分離部材4を介して分離されたインクリボン19を巻き取るべくリボン巻取スプールの回転駆動を行うものである。
さらに、カセット収納部6には、テープカセット101の排出口13に隣接してはさみ式のカッタユニット14が配設されており、このカッタユニット14は、固定刃14Aと、固定刃14Aに対して作動して印字済みフィルムテープ17を切断する可動刃14Bとから構成されている。
また、カッタユニット14の下流側には、フィルムテープ17に形成された粘着剤層(後述する)を加熱するヒートローラ15と、このヒートローラ15に対向してヒートローラ15との協働により印字済みフィルムテープ17をテープ印字装置110の外部に送り出すテープ送りローラ16とから構成される搬送ローラ対48が配設されている。
前記のように構成されたテープカセット101をテープ印字装置110のカセット収納部6に収納してフィルムテープ17に文字等の印字を行う際、テープスプール18に巻回されたフィルムテープ17は、下ケース3の角部に設けられたテープ案内コロ30、下ケース3の内壁、アーム部41に形成された案内ピン42からアーム部41の開口43を経てサーマルヘッド7及びプラテンローラ8に向かって案内される。また、インクリボン19は、アーム部41の規制突起部44、45にて案内規制されつつ開口43を経てサーマルヘッド7及びプラテンローラ8に向かって案内される。
前記のように案内されたフィルムテープ17及びインクリボン19は、サーマルヘッド7とプラテンローラ8との間で重ね合わされ、この状態でサーマルヘッド7の発熱素子群が発熱駆動される。これにより、フィルムテープ17には、インクリボン19を介して文字等の印字が行われる。この後、インクリボン19は、サーマルヘッド7の下流側に送り出され、分離部材4を介してフィルムテープ17から分離された後、リボン巻取スプール21により巻き取られる。
また、インクリボン19及びサーマルヘッド7を介して文字等が印字されるとともに、分離部材4を介してインクリボン19が分離された後、フィルムテープ17は排出口13からテープカセット101の外部に排出され、更に、搬送ローラ対48を介してテープ印字装置110の外部に排出される。このとき、フィルムテープ17の粘着剤層は、搬送ローラ対48のヒートローラ15により加熱され、この結果、粘着剤層には、後述するように粘着性が発生する。
そして、フィルムテープ17が所望の長さになった時点で、カッタユニット14が駆動され、これによりフィルムテープ17は、カッタユニット14の固定刃14Aと可動刃14Bとの協働により、所望の長さで切断される。
次に、第1実施形態に係るインクリボンと印字テープの構成を図3に基づき説明する。図3は文字等の印字過程におけるインクリボンとフィルムテープとの関係を模式的に示す説明図である。図3で示すように、インクリボン19はベースフィルム22とインク層23から構成されている。印字テープとしてのフィルムテープ17は、透明フィルム25の一面(図3中透明フィルムの上側)に粘着剤層24が形成され、その他面(図3中透明フィルムの下側)に離型剤層26が形成されている。
前記粘着剤層24は常温では粘着性を帯びておらず、加熱されてはじめて粘着性を帯びるようになり、そして一旦加熱された後温度が下がっても、粘着性を有する特殊な性質を持つ材質で構成されている。粘着剤層24としては、例えば、特許第3394572号公報に記載されたヒートシールラベルに使用される粘着剤を使用することができる。この種の粘着剤はヒートローラ等により80℃〜100℃に加熱されると溶融され、粘着性を発生する特性を有する。第1実施形態においては、ヒートローラ15による加熱は80℃以上90℃未満で行われる。
また、前記フィルムテープ17は、透明フィルム25の片面に粘着剤層24を重ね合わされた状態で、粘着剤層24を内側にし、透明フィルム25の離型剤層26を外側にし、テープスプール18に巻回されて収納されている。粘着剤層24は離型剤層26を介して巻回されることから、粘着剤層24が、透明フィルム25に直接付着する不具合を回避できる。
また、このテープスプール18から引き出されたフィルムテープ17は、前記したように、テープ案内コロ30等により、テープ印字装置110のサーマルヘッド7とプラテンローラ8の間にある印字位置まで送り出される。フィルムテープ17は、印字位置にて、インクリボン19と重ね合わされ、前記フィルムテープ17の粘着剤層24とインクリボン19のインク層23とが接触するようになる。
このように、フィルムテープ17の粘着剤層24とインクリボン19のインク層23と接触する際、粘着剤層24とインク層23とが接触する接触箇所は、サーマルヘッド7とプラテンローラ8とに挟まれ、サーマルヘッド7は、図3で示すように、ベースフィルム22の他面(インク層23の裏面側)に接触し、インクリボン19のインク層23はサーマルヘッド7の加熱により溶融するとともに、粘着剤層24はサーマルヘッド7の加熱により、粘着性を帯びることになる。溶融されたインク層23が粘着剤層24に接着されることにより、文字等がフィルムテープ17に転写される。
また、テープ印字装置110において、サーマルヘッドの発熱部の駆動制御をする駆動制御装置(図示せず)を備えており、転写されたインク層23はフィルムテープ17に対して鏡像印刷されるように制御していることから、フィルムテープ17の透明フィルム25側から見て、正像印刷された文字等が視認できる。
次に、サーマルヘッド7を介して加熱される際にインク層が粘着剤層に転写される転写メカニズムについて、図4に基づき説明する。図4は、サーマルヘッド7により加熱される際にインク層23が粘着剤層24に転写される転写メカニズムを模式的に示す説明図である。図4に示すように、フィルムテープ17は、サーマルヘッド7とプラテンローラ8との間の印字位置にて、インクリボン19と重ね合わされた際、フィルムテープ17の粘着剤層24とインクリボン19のインク層23とが接触する。該接触部分において、サーマルヘッド7の加熱により、インク層23と粘着剤層24とは共に加熱されるが、インク層23から粘着剤層24への熱の伝達は、境界部分での伝達損失が発生することにより、インク層23と粘着剤層24の境界部で温度差が発生する。また、第1実施形態のテープカセット101に使用されるインクリボン19のインク層23には、90℃以上で溶融する高融点タイプのインクが使用されており、また、フィルムテープ17の粘着剤層24には、80℃以上で粘着性が発生する粘着剤が使用されていることから、図4で示すように、加熱部のインク層23Aの温度が90℃以上になると粘着剤層24Aの温度も80℃以上となり、この結果、加熱部におけるインク層23Aと粘着剤層24Aとが接着することになる。
一方、サーマルヘッド7による加熱の無い粘着剤層24Bの温度は、80℃未満であり、粘着性は帯びておらず、また、それに対応する部分のインク層23Bの温度も90℃未満であることから、サーマルヘッド7を通過し、サーマルヘッド7の下流側に配置されている分離部材4を経た後、図4で示すように、加熱されて粘着剤層24Aに接着されたインク層23Aのみがフィルムテープ17に移行される。残りの部分のインクリボンは、消費されたインクリボン19として、リボン巻取スプール21により巻き取られる。
図4で示すように、サーマルヘッド7は熱集中タイプのグレーズ構造となっており、インク層23と粘着剤層24に対してピンポイントに集中して加熱される。従って、加熱部のインク層23A及び粘着剤層24Aは、非加熱部のインク層23B及び粘着剤層24Bとの温度差が大きくなることから、加熱部のインク層23Aと非加熱部のインク層23B、及び、加熱部の粘着剤層24Aと非加熱部の粘着剤層24Bとの境界を明確に保ちながら接着することができる。
また、前記インク層23はワックス系インクであり、加熱後に冷却しても切れよく転写される。従って、加熱されたインク層23が冷却されても、加熱部の粘着剤層24Aと確実に接着でき、文字等が印字済みのフィルムテープ17に確実に転写される。
また、文字等が印字されたフィルムテープ17は、前記したようにテープ送りローラ16とヒートローラ15との協働により、切断装置としてのはさみ式のカッタユニット14まで引き出される。カッタユニット14の固定刃14Aと可動刃14Bの協働により、印字済みフィルムテープ17は所望の長さに切断できる。切断されたフィルムテープ17は、テープ送りローラ16とヒートローラ15の間を通過し、インク層23が接着された部分以外の粘着剤層24Bにて、ヒートローラ15の加熱により粘着性を帯びることになる。その後、粘着性の帯びた印字済みフィルムテープ17は切断されたままのライナーレステープとしてテープ印字装置110の外方へ排出される。
なお、上述したそれぞれの駆動制御は、印字装置が有する図示しないプロセッサ(例えば、CPU)によって制御される。例えば、サーマルヘッド7は、ヘッド駆動回路に基づいて動作する。テープ送りモータは、モータ駆動回路に基づいて動作する。カッタユニットは、カッタ駆動回路に基づいて動作する。圧接リリースモータは、圧接リリースモータ駆動回路に基づいて動作する。そして、これら駆動回路の動作は、プロセッサに基づいて動作する。この点は、後述する他の実施形態についても同様である。
このように、テープカセット101内に、粘着テープスプール及び貼り合せローラを内蔵することなく、テープ送りローラ16及びヒートローラ15をカッタユニット14の下流側に配置することにより、カッタユニット14をサーマルヘッド7の直ぐ下流側に配置してフィルムテープ17への文字等の印字直後に、印字済みフィルムテープ17を切断可能としたので、印字後におけるフィルムテープ17の前余白を短くしてフィルムテープ17のランニングコストを低減することが可能となる。
さらに、ヒートローラ15による加熱は80℃以上90℃未満で行うが、一方使用されているインクは高融点タイプ(インクの融点は90℃以上になっている)なので、ヒートローラ15において、粘着剤層24に接着されているインクは溶融することなく、インクの溶融等による印字不良を起こすおそれは無い。
また、ヒートローラ15は、印字済みフィルムテープ17の離型剤層26側(粘着剤層24の裏面側)から接触することから、粘着剤層との直接接触を避けることができ、加熱後の粘着剤層24がヒートローラ15に付着することが無い。
また、加熱された粘着剤層24はその後温度が下がっても、粘着性を保持していることから、前記のように作成されたライナーレステープは、粘着剤層24を介してそのまま被着体に貼り付けられる。これにより、使用者が従来のラミネートテープを使用するときのように、剥離紙をはがす手間は無くなる。さらに、前述のように、転写されたインク層23はフィルムテープ17に対して文字等が鏡像印刷されるため、使用者は透明なフィルムを通して、正像印刷された文字等として認識できる。なお、離型剤層も透明である。また、透明なフィルムを通してインク層を視認させるために、フィルム層とインク層の間に存在する粘着剤層が透明または半透明であることはいうまでもない。
なお、本第1実施形態の説明において示したテープ印字装置110、テープカセット101の外観形状は単なる一例であり、本発明はこの外観形状に限定されるものではない。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係るテープカセット及びテープ印字装置について図5及び図6に基づき説明する。図5は第2実施形態に係るテープ印字装置のカセット収納部にテープカセット及び補助カセットを装着する状態を示す要部拡大斜視図、図6はテープカセット及び補助カセットの内部構成を模式的に示す平面図である。
ここで、本第2実施形態に係るテープカセット101の構成は、前述した第1実施形態に係るテープカセット101の構成と同一である。また、本第2実施形態に係るテープ印字装置210の構成は、前述した第1実施形態に係るテープ印字装置110の構成と、ほぼ同一の構成である。以下の説明においては、前述した第1実施形態に係るテープカセット101、テープ印字装置110と同一の構成要素については同一の番号を付して説明する。
前述した第1実施形態に係るテープ印字装置110においては、テープ送りローラ16がテープ印字装置110に配設されていたが、本第2実施形態においては、前述した第1実施形態におけるテープ送りローラ16と同じ機能を有する送りローラ77が補助カセット70に配設されている。テープ印字装置210には、テープを送るためのローラは配設されていない。また、本第2実施形態においては、テープ印字装置210には、送りローラ77と連結するための送りローラ軸72、及び、補助紙媒体巻取スプール76と連結するための補助紙媒体巻取軸73が配設されている。
図5において、テープカセット101は、テープ印字装置210に設けられたカセット収納部6に着脱可能となっている。本第2実施形態のテープカセット101の構成は、前述した第1実施形態のテープカセット101と同一であるので、説明を省略する。
また、図5において、補助カセット70は、テープ印字装置210に設けられたカセット収納部6に着脱可能となっている。補助カセット70は、図6に示すように、補助紙媒体74を巻回した補助紙媒体スプール75が配置されている。また、補助紙媒体スプール75から補助紙媒体74を引き出し、補助紙媒体74を巻き取る補助紙媒体巻取スプール76が配置されている。
補助カセット70の外形形状は、カセットケース80によって規定されている。すなわち、補助カセット70は、カセットケース80内に、補助紙媒体74と送りローラ77が収納される構造となっている。
さらに、補助カセット70には、送りローラ77が回転可能な状態で配設されており、送りローラ77の一部は補助カセット70から露出している。すなわち、カセットケース80は開口を有している。また、印字時においては、送りローラ77はテープ印字装置210のヒートローラ15と対向する。すなわち、送りローラ77とヒートローラ15とが圧接可能となっている。
印字時において、補助紙媒体74は、送りローラ77に送られ、印字済みのフィルムテープ17とともに下流方向に送られる。その後、補助紙媒体74は、補助紙媒体巻取スプール76に送られる。すなわち、印字時においては、フィルムテープ17と補助紙媒体74とが接触するので、送りローラ77とフィルムテープ17とは接触しない。なお、接触する位置は、図6に示すように、ヒートローラと15と送りローラ77とが対向する位置である。
続いて、テープ印字装置210におけるカセット収納部6の構成について説明する。図5及び図6に示すように、テープ印字装置210のカセット収納部6には、サーマルヘッド7が固設されている。サーマルヘッド7は、図6に示すように、正面視略縦長四角形の平板状で、前面の左端縁部には、所定個数の各発熱素子が、該左端縁部の辺に沿って一列に配列されて形成されている。また、カセット収納部6には、ホルダ84がホルダ軸47の回りに回動可能に支持されており、ホルダ84にはプラテンローラ8が回転可能に支持されている。ホルダ84は、図示しない弾性部材によりホルダ軸47の回りに反時計方向に付勢されており、フィルムテープ17への印字時には、モータ等により時計方向に駆動され、これによりプラテンローラ8はサーマルヘッド7に対して接離可能にされている。また、ホルダ84には、ヒートローラ15が回転可能に支持されている。上述したとおり、ホルダ84は、図示しない弾性部材によりホルダ軸47の回りに反時計方向に付勢されており、フィルムテープ17への印字時には、モータ等により時計方向に駆動され、これによりヒートローラ15は送りローラ77に対して接離可能にされている。
また、上述したとおり、カセット収納部6には、補助カセット70の補助紙媒体巻取スプール76に連結される補助紙媒体巻取軸73が配設されている。補助紙媒体巻取軸73は、図示しないモータ等の駆動機構に連結されており、補助紙媒体巻取スプール76の回転駆動を行うものである。また、カセット収納部6には、送りローラ軸72が配設されている。送りローラ軸72は、図示しないモータ等の駆動機構に連結されており、送りローラ77の回転駆動を行うものである。
また、カッタユニット14の下流側には、フィルムテープ17に形成された粘着剤層(後述する)を加熱するヒートローラ15が配設されている。ヒートローラ15と送りローラ77との協働により、印字済みフィルムテープ17がテープ印字装置210の外部に送り出される。なお、以後の説明の便宜上、ヒートローラ15と送りローラ77との対を搬送ローラ対78と記載することがある。ヒートローラ15と送りローラ77が協働している間、補助紙媒体を印字済みフィルムテープ17とともに搬送するために、補助紙媒体巻取スプール76も回転駆動する。
また、インクリボン19及びサーマルヘッド7を介して文字等が印字されるとともに、分離部材4を介してインクリボン19が分離された後、フィルムテープ17は排出口13からテープカセット1の外部に排出され、更に、搬送ローラ対78を介してテープ印字装置210の外部に排出される。このとき、フィルムテープ17の粘着剤層は、搬送ローラ対48のヒートローラ15により加熱され、この結果、粘着剤層には、粘着性が発生する。
本第2実施形態に係るインクリボンと印字テープの構成は、前述した第1実施形態の構成(図2参照)と同一であるので説明を省略する。また、本第2実施形態に係るサーマルヘッド7を介して加熱される際にインク層が粘着剤層に転写される転写メカニズムについても、前述した第1実施形態のメカニズム(図3、4参照)と同一であるので説明を省略する。
文字等が印字されたフィルムテープ17は、前記したようにテープ送りローラ16とヒートローラ15との協働により、切断装置としてのはさみ式のカッタユニット14まで引き出される。カッタユニット14の固定刃14Aと可動刃14Bの協働により、印字済みフィルムテープ17は所望の長さに切断できる。切断されたフィルムテープ17は、テープ送りローラ16とヒートローラ15の間を通過し、インク層23が接着された部分以外の粘着剤層24Bにて、ヒートローラ15の加熱により粘着性を帯びることになる。その後、粘着性の帯びた印字済みフィルムテープ17は切断されたままのライナーレステープとしてテープ印字装置210の外方へ排出される。
上述したとおり、印字済みフィルムテープ17の粘着剤はヒートローラ15によって加熱されることにより、粘着性を帯びる。ここで、印字済みフィルムテープ17の粘着力が強い場合、粘着剤層と接触する面に粘着剤が転写されてしまうおそれがある。そこで、本第2実施形態では、補助紙媒体74と印字テープの粘着面とが接触するよう構成されている。また、接触する補助紙媒体74は、補助紙媒体巻取スプール76によって常に新しいものが搬送ローラ対78に送られる。そのため、印字済みフィルムテープ17の粘着剤が送りローラ77に付着することがない。また、印字済みフィルムテープ17の粘着剤が補助紙媒体74に付着したとしても、当該補助紙媒体74は、補助紙媒体巻取スプール76に送られるため、粘着剤が付着した補助紙媒体74がその後送られてくる印字済みフィルムテープ17に付着することがない。
このように、テープカセット101内に、粘着テープスプール及び貼り合せローラを内蔵することなく、搬送ローラ対78をカッタユニット14の下流側に配置することにより、カッタユニット14をサーマルヘッド7の直ぐ下流側に配置してフィルムテープ17への文字等の印字直後に、印字済みフィルムテープ17を切断可能としたので、印字後におけるフィルムテープ17の前余白を短くしてフィルムテープ17のランニングコストを低減することが可能となる。
ヒートローラ15による加熱は80℃以上90℃未満で行うが、一方使用されているインクは高融点タイプ(インクの融点は90℃以上になっている)なので、ヒートローラにおいて、粘着剤層24に接着されているインクは溶融することなく、インクの溶融等による印字不良を起こすおそれはない。
また、ヒートローラ15は、印字済みフィルムテープ17の離型剤層26側(粘着剤層24の裏面側)から接触することから、粘着剤層との直接接触を避けることができ、加熱後の粘着剤層24がヒートローラ15に付着することが無い。
また、加熱された粘着剤層24はその後温度が下がっても、粘着性を保持していることから、前記のように作成されたライナーレステープは、粘着剤層24を介してそのまま被着体に貼り付けられる。これにより、使用者が従来のラミネートテープを使用するときのように、剥離紙をはがす手間は無くなる。さらに、前述のように、転写されたインク層23はフィルムテープ17に対して文字等が鏡像印刷されるため、使用者は透明なフィルムを通して、正像印刷された文字等として認識できる。尚、離型剤層も透明である。また、透明なフィルムを通してインク層を視認させるために、フィルム層とインク層の間に存在する粘着剤層が透明または半透明であることはいうまでもない。
また、本第2実施例においては、印字済みフィルムテープ17を加熱する際に、印字済みフィルムテープ17の粘着剤層が送りローラ77に接触しないから、粘着剤が送りローラ77に付着することがないため、搬送不良が起きることを防ぐことができる。また、補助紙媒体74に粘着剤が付着したとしても、付着した粘着剤がその後送られてくる印字済みフィルムテープ17を汚すことも防ぐことができる。
さらに、補助紙媒体74として、印字済みフィルムテープ17と接触する面に剥離剤層が塗布しているものを用いることができる。これにより、補助紙媒体74と加熱された印字済みフィルムテープ17とがスムーズに剥離するので、テープ搬送を良好に行うことができる。
また、上記第2実施形態においては、テープカセット101と補助カセット70とを別個のものとして構成したが、図7に示すように、テープカセット及び補助カセットを一体として構成することもできる。
この場合、図8に示すとおり、テープカセット201には、補助紙媒体74、補助紙媒体巻取スプール76、送りローラ77、フィルムテープ17、インクリボン19等が配設されることになる。テープカセット201には、図8に示すとおり、切欠部を有している。この切欠部は、送りローラ77と排出口13との間に存在し、テープカセット201をテープ印字装置210に装着した場合に、この切欠部に、テープ印字装置210の固定刃14Aが位置することになる。テープカセット201を用いたテープ印字装置210においても、印字済みフィルムテープ17を加熱する際に、印字済みフィルムテープ17の粘着剤層が送りローラ77に接触しないから、粘着剤が送りローラ77に付着することがないため、搬送不良が起きることを防ぐことができる。また、補助紙媒体74に粘着剤が付着したとしても、付着した粘着剤がその後送られてくる印字済みフィルムテープ17を汚すことも防ぐことができる。
なお、本第2実施形態の説明において示したテープ印字装置210、テープカセット101及び201、補助カセット70の外観形状は単なる一例であり、本発明はこの外観形状に限定されるものではない。
(第3実施形態)
上述した第2実施形態においては、補助紙媒体は、印字済みのフィルムテープの搬送に伴って補助紙媒体巻取スプールに巻き取られるので、印字済みのフィルムテープを被着体に貼り付けるときに補助紙媒体を剥がす必要がない。
しかし、その反面、フィルムテープの粘着剤層が保護されないため、作成されたフィルムテープは、被着体に貼り付けていない状態での長期間の保管は容易ではない。
以下説明する第3実施形態は、この問題点を解決するものである。
第3実施形態に係るテープカセット、補助カセット、テープ印字装置について、図9及び図10に基づき以下説明する。
図9は、第3実施形態に係るテープ印字装置のカセット収納部にテープカセット及び補助カセットを装着する状態を示す要部拡大斜視図である。
図10は、テープカセット及び補助カセットの内部構成を模式的に示す平面図である。
第3実施形態のテープカセット101の構成は、上記第2実施形態に係るテープカセット101の構成と、同一である。
第3実施形態のテープ印字装置510の構成は、上記第2実施形態に係るテープ印字装置210の構成と、ほぼ同一である。
第3実施形態の補助カセット71の構成は、上記第2実施形態に係る補助カセット70の構成と、ほぼ同一である。
以下の説明においては、上記第2実施形態のテープカセット101、テープ印字装置210、補助カセット70と同一の構成要素については同一の番号を付して説明する。なお、同一の構成については説明を省略する。
(補助カセット)
まず、本実施形態における補助カセット71について説明する。補助カセット71は、テープ印字装置510に設けられたカセット収納部6に着脱可能である。
補助カセット71には、補助紙媒体スプール81及び送りローラ82が配置されている。補助紙媒体スプール81には、補助紙媒体74が巻回されている。
補助カセット71の外形形状は、カセットケース95によって規定されている。すなわち、補助カセット71は、カセットケース95内に、補助紙媒体74と送りローラ82が収納される構造となっている。
送りローラ82は、補助カセット71に回転可能に配置されている。また、送りローラ82の一部は、補助カセット71から露出している。すなわち、カセットケース95は開口を有している。また、補助カセット71は、ヒートローラ15と対向する位置でカセット収納部6に装着される。すなわち、送りローラ82とヒートローラ15とが圧接可能となっている。
(テープ印字装置)
次に、本実施形態におけるテープ印字装置510について説明する。カセット収納部6には、補助紙媒体巻戻軸85、送りローラ軸86が配置されている。補助紙媒体巻戻軸85は、補助カセット71がカセット収納部6に装着された場合に、補助紙媒体スプール81と連結する。補助紙媒体巻戻軸85は、図示しない駆動機構により回転する。補助紙媒体巻戻軸85が回転することにより、補助紙媒体74は、印字時の搬送方向とは逆方向に巻き戻される。
送りローラ軸86は、補助カセット71がカセット収納部6に装着された場合に、送りローラ82と連結する。送りローラ軸86は、図示しない駆動機構により回転する。送りローラ軸86が回転することにより、印字済みのフィルムテープ17に補助紙媒体74が貼り合されるとともに、印字済みのフィルムテープ17は、第2カッタユニット87(後述)に向かって搬送される。
第2カッタユニット87は、送りローラ軸86よりも搬送方向下流側に配置されている。第2カッタユニット87は、固定刃87A及び可動刃87Bにより構成される。可動刃87Bが固定刃87Aに向かって移動することにより、印字済みのフィルムテープ17が切断される。可動刃87Bは、図示しない駆動機構により駆動制御される。
また、サーマルヘッド7及びプラテンローラ8の位置で印字されたフィルムテープ17は、プラテンローラ8の回転によって第2カッタユニット87の位置まで搬送される。
図11は、印字済みフィルムテープ17に、補助紙媒体74が貼り合される様子を示した概略図である。図11に示すように、補助紙媒体74は、基材27及び剥離剤層28とから構成される。インク層23が付着された印字済みのフィルムテープ17と補助紙媒体74とが、ヒートローラ15及び送りローラ82の間で接触することにより、印字済みのフィルムテープ17に、補助紙媒体74が貼り合される。そして、補助紙媒体74が貼り合された印字済みのフィルムテープ17は、排出口5よりテープカセット101外に排出される。
このようにして作成されたフィルムテープ17は、粘着剤層24が補助紙媒体74によって保護されているため、被着体に貼り付けていない状態での長期間の保管(保存)が容易となる。被着体への貼り付け時には、補助紙媒体74が剥がされる。また、粘着剤層24と送りローラ82とが接することがないので、粘着剤層24の粘着剤が、送りローラ82に付着するおそれがない。また、カッタユニット14がサーマルヘッド7の搬送方向下流側に近接して配置されているので、作成されたフィルムテープ17の前端部の余白部分を短くすることができる。これにより、フィルムテープ17の消費量を抑制することができる。
また、上述した構成においては、テープカセット101と補助カセット71とを別個のものとしていたが、テープカセット及び補助カセットを一体として構成することもできる。
図12及び図13は、テープカセット及び補助カセットを一体としたテープ印字装置等を示した図である。
テープカセット501には、補助紙媒体74、送りローラ82、フィルムテープ17、インクリボン19等が配設される。
また、テープカセット501には、切欠部91を有している。切欠部91は、送りローラ82と排出口13との間に位置し、テープカセット501をテープ印字装置510に装着した場合に、切欠部91に、テープ印字装置510の固定刃14Aが位置することになる。
テープカセット501を用いたテープ印字装置510においても、印字済みフィルムテープ17を加熱する際に、印字済みフィルムテープ17の粘着剤層が送りローラ82に接触しないから、粘着剤が送りローラ82に付着することがない。これにより、搬送不良が起きることを防ぐことができる。また、排出口5から排出されるフィルムテープ17には、粘着剤層が基材によって保護されているから被着体に貼り付けていない状態での長期間の保管(保存)が容易となる。なお、被着体への貼り付け時には、補助紙媒体74が剥がされる。
なお、第3実施形態の説明において示したテープ印字装置、テープカセット、補助カセットの外観形状は単なる一例であり、本発明はこの外観形状に限定されるものではない。
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。第4実施形態は、上述した第3実施形態と同様に、印字済みフィルムテープには、補助紙媒体が貼り合せられた状態で排出される。ただし、補助カセットにヒートローラが配置されている点において、上述した第3実施形態と異なる。
図14は、第4実施形態に係るテープ印字装置のカセット収納部にテープカセット及び補助カセットを装着する状態を示す要部拡大斜視図である。図15は、テープカセット及び補助カセットの内部構成を模式的に示す平面図である。
ここで、本第4実施形態に係るテープカセット101の構成は、上記第3実施形態に係るテープカセット101の構成と、同一である。
また、第4実施形態に係るテープ印字装置610の構成は、上記第3実施形態に係るテープ印字装置510の構成と、ほぼ同一である。
また、第4実施形態に係る補助カセット88は、上記第3実施形態に係る補助カセット71と、ほぼ同一である。
上記各実施形態と同じ構成要素については同一の番号を付して説明する。
テープ印字装置610は、ヒートローラが配置されていない。また、テープ印字装置610には、ヒートローラ軸90が配置されている。ヒートローラ軸90は、補助カセット88(後述)がカセット収納部6に装着された場合に、ヒートローラ89(後述)と連結する。
ヒートローラ軸90の具体的な構成について説明する。ヒートローラ軸90の表面(ヒートローラ89との接触面)の一部または全部は、導電体で形成されている。テープ印字装置610が有する所定の供給源から供給された電流(電圧)が、ヒートローラ軸90の導電体に供給される。また、ヒートローラ軸90は、図示しない駆動機構により回転する。
(補助カセット)
次に、補助カセット88、及び、補助カセット88に配置されるヒートローラ89の具体的な構成について説明する。補助カセット88は、上述した補助紙媒体スプール81及び送りローラ82のほかに、ヒートローラ89を備えている。印字済みのフィルムテープ17は、送りローラ82及びヒートローラ89の間を搬送される。
補助カセット88の外形形状は、カセットケース96によって規定されている。すなわち、補助カセット88は、カセットケース96内に、補助紙媒体74、送りローラ82及びヒートローラ89が収納される構造となっている。
また、カセットケース96には、テープ出口93とテープ入口94とが設けられている。補助紙媒体74が貼り合わされた印字済みのフィルムテープ17は、テープ出口93より排出される。また、印字済みのフィルムテープ17は、テープ入口94より補助カセット88に進入する。
また、カッタユニット14は、補助カセット88のテープ入口94側に位置することになる。また、第2カッタユニット87は、補助カセット88のテープ出口93側に位置する。
ヒートローラ89の軸穴には、導電体が形成されている。この導電体は、ヒートローラ軸90の導電体と接触する。これにより、テープ印字装置610が有する所定の供給源から供給された電流(電圧)が、ヒートローラ89に伝わる。そして、ヒートローラ89の表面は、供給電流によって加熱される。また、ヒートローラ89の表面が加熱されることにより、該ヒートローラ89に接触するフィルムテープ17の粘着剤層24に粘着性が発生する。
なお、上述したヒートローラの構成は単なる一例である。すなわち、ヒートローラの表面に粘着剤層24に粘着性を発生させることができる熱量を生じさせることができるものであれば、どのような構成を採用してもよい。
また、ヒートローラ89は、ヒートローラ軸90の回転駆動によって回転する。これにより、印字済みのフィルムテープ17の搬送を行うことができる。
上述第4実施形態によれば、ヒートローラがテープ印字装置に配置されていないため、ヒートローラに故障が生じたとしても、補助カセットのみを交換すればよく、テープ印字装置自体を交換する必要がない。
また、上述した第4実施形態においては、テープカセット101と補助カセット88とを別個のものとして構成したが、図16及び図17に示すように、テープカセット及び補助カセットを一体として構成することもできる。この場合、テープカセット601には、補助紙媒体74、送りローラ77、ヒートローラ89、フィルムテープ17、インクリボン19等が配設されることになる。
また、テープカセット601には、図16に示すとおり、切欠部91を有している。切欠部91は、送りローラ82と排出口13との間に存在し、テープカセット601をテープ印字装置610に装着した場合に、切欠部91に、テープ印字装置610の固定刃14Aが位置することになる。テープカセット601を用いたテープ印字装置610においても、印字済みフィルムテープ17を加熱する際に、印字済みフィルムテープ17の粘着剤層が送りローラ82に接触しないから、粘着剤が送りローラ82に付着することがないため、搬送不良が起きることを防ぐことができる。また、排出口5から排出されるフィルムテープには、粘着剤層が補助紙媒体74によって保護されているから、保管が容易となる。被着体への貼り付け時には、補助紙媒体74が剥がされる。また、粘着剤層24と送りローラ82とが接することがないので、粘着剤層24の粘着剤が、送りローラ82に付着するおそれがない。
なお、第4実施形態の説明において示したテープ印字装置、テープカセット、補助カセットの外観形状は単なる一例であり、本発明はこの外観形状に限定されるものではない。
(第5実施形態)
次に、第5実施形態に係るテープカセット及びテープ印字装置について図18及び図19に基づき説明する。図18は第5実施形態に係るテープ印字装置のカセット収納部にテープカセットを装着する状態を示す要部拡大斜視図、図19はテープカセットの内部構成を模式的に示す平面図である。
なお、第5実施形態に係るテープカセット及びテープ印字装置の構成は、前記した第1実施形態に係るテープカセット1及びテープ印字装置110の構成と、基本的に同一の構成を有しており、従って、以下の説明においては、第1実施形態に係るテープカセット101、テープ印字装置110と同一の構成要素については同一の番号を付して説明し、また、第1実施形態のテープカセット101、テープ印字装置110と異なる構成に主眼をおいて説明する。
図18において、テープカセット301は、テープ印字装置310に設けられたカセット収納部6に脱着可能となっており、テープカセット301は、上ケース2と下ケース3とを有する。上ケース2は下ケース3の上面を被覆する蓋部材であり、また、下ケース3には、図18で示すように、その中央部より若干上方位置にフィルムテープ17を巻回したテープスプール18が配置されている。また、下ケース3においてテープスプール18の右下方位置には、インクリボン19を巻回したリボンスプール20が配置され、更に、リボンスプール20からインクリボン19を引き出すとともに、文字等の印字にて消費されたインクリボン19を巻き取るリボン巻取スプール21が配置されている。
テープカセット301には、上ケース2及び下ケース3を貫通するようにローラ配置部50が形成されており、ローラ配置部50には、テープカセット301をカセット収納部6に収納した際に、後述するプラテンローラ58が配置される。ローラ配置部50にて、サーマルヘッド57の下流側(図19中左側)には、分離部材4が形成されている。分離部材4は、後述するように、サーマルヘッド57による文字等の印字時に、プラテンローラ58とサーマルヘッド57とに挟まれてフィルムテープ17に圧接されたインクリボン19の送り方向の転換を行うとともに、インクリボン19をフィルムテープ17から分離する作用を行うものである。
また、テープカセット301には、分離部材4を介してインクリボン19が分離された後、文字等が印字されたフィルムテープ17をテープカセット1の外部に排出する排出口13が形成されている。
続いて、テープ印字装置310におけるカセット収納部6の構成について説明する。図18及び図19に示すように、テープ印字装置310のカセット収納部6には、ヘッド支持軸51の回りに回動可能に配設されたヘッド支持部材52に搭載されたサーマルヘッド57が設けられている。サーマルヘッド57は、縦長四角形の平板状で、前面の左端縁部には、所定個数の各発熱素子が、該左端縁部の辺に沿って一列に配列されて形成されている。また、カセット収納部6には、プラテンローラ58が回転可能に支持されている。
ここに、ヘッド支持部材52は、図示しない弾性部材によりヘッド支持軸51の回りに反時計方向に付勢されており、フィルムテープ17への印字時には、モータ等により時計方向に駆動され、これによりサーマルヘッド57はプラテンローラ58に対して接離可能にされている。
また、カセット収納部6には、テープカセット301のリボン巻取スプール21に連結されるリボン巻取軸9が配設されている。リボン巻取軸9は、図示しないモータ等の駆動機構に連結されており、前記のように分離部材4を介して分離されたインクリボン19を巻き取るべくリボン巻取スプールの回転駆動を行うものである。
更に、カセット収納部6には、テープカセット301の排出口13に隣接してはさみ式のカッタユニット14が配設されており、このカッタユニット14は、固定刃14Aと、固定刃14Aに対して作動して印字済みフィルムテープ17を切断する可動刃14Bとから構成されている。
また、カッタユニット14の下流側には、フィルムテープ17に形成された粘着剤層(後述する)を加熱するヒートローラ15と、このヒートローラ15に対向してヒートローラ15との協働により印字済みフィルムテープ17をテープ印字装置310の外部に送り出すテープ送りローラ16とから構成される搬送ローラ対49が配設されている。
前記のように構成されたテープカセット301をテープ印字装置310のカセット収納部6に収納してフィルムテープ17に文字等の印字を行う際、テープスプール18に巻回されたフィルムテープ17は、下ケース3の角部に設けられたテープ案内コロ30、下ケース3の内壁に形成された案内支持部53を経てサーマルヘッド57及びプラテンローラ58に向かって案内される。また、インクリボン19は、ローラ配置部50の端部に形成された案内支持部54にて案内支持されつつサーマルヘッド57及びプラテンローラ58に向かって案内される。
前記のように案内されたフィルムテープ17及びインクリボン19は、サーマルヘッド57とプラテンローラ58との間で重ね合わされ、この状態でサーマルヘッド57の発熱素子群が発熱駆動される。これにより、フィルムテープ17には、インクリボン19を介して文字等の印字が行われる。この後、インクリボン19は、サーマルヘッド57の下流側に送り出され、分離部材4を介してフィルムテープ17から分離された後、リボン巻取スプール21により巻き取られる。
また、インクリボン19及びサーマルヘッド57を介して文字等が印字されるとともに、分離部材4を介してインクリボン19が分離された後、フィルムテープ17は排出口13からテープカセット301の外部に排出され、更に、搬送ローラ対49を介してテープ印字装置310の外部に排出される。このとき、フィルムテープ17の粘着剤層は、搬送ローラ対49のヒートローラ15により加熱され、この結果、粘着剤層には、後述するように粘着性が発生する。
そして、フィルムテープ17が所望の長さになった時点で、カッタユニット14が駆動され、これによりフィルムテープ17は、カッタユニット14の固定刃14Aと可動刃14Bとの協働により、所望の長さで切断される。
続いて、第5実施形態に係るインクリボンと印字テープの構成を図20に基づき説明する。図20は文字等の印字過程におけるインクリボンとフィルムテープとの関係を模式的に示す説明図である。図20で示すように、インクリボン19はベースフィルム35とインク層34から構成されている。印字テープとしてのフィルムテープ17は、透明フィルム32の一面(図20中透明フィルムの下側)に粘着剤層33が形成され、その他面(図20中透明フィルムの上側)に離型剤層31が形成されている。
前記粘着剤層33は常温では粘着性を帯びておらず、加熱されてはじめて粘着性を帯びるようになり、そして一旦加熱された後温度が下がっても、粘着性を有する特殊な性質を持つ材質で構成されている。粘着剤層24としては、前記第1実施形態の場合と同様、例えば、特許第3394572号公報に記載されたヒートシールラベルに使用される粘着剤を使用することができる。この種の粘着剤はヒートローラ等により80℃〜100℃に加熱されると溶融され、粘着性を発生する特性を有する。第3実施形態においては、ヒートローラによる加熱は第1実施形態と同様80℃以上90℃未満で行われる。
また、前記フィルムテープ17は、片面に粘着剤層33を重ね合わされた状態で、粘着剤層33を内側にしてテープスプール18に巻回されて収納されている。透明フィルム32の粘着剤層33の裏面側に離型剤層31が形成されているため、仮に、テープスプール18に巻回されている状態で粘着剤層の一部が粘着性を帯びてしまっても、粘着剤層33がフィルムテープ17、テープカセットの内部、印字装置の各部に接着する不具合を起こすことはない。
また、このテープスプール18から引き出されたフィルムテープ17は、前記したように、テープ案内コロ30等により、テープ印字装置310のサーマルヘッド57とプラテンローラ58の間にある印字位置まで送り出される。フィルムテープ17は、印字位置にて、インクリボン19と重ね合わされ、前記フィルムテープ17の粘着剤層33とインクリボン19のインク層34とが接触するようになる。
このように、フィルムテープ17の粘着剤層33とインクリボン19のインク層34と接触する際、粘着剤層33とインク層34とが接触する接触箇所は、サーマルヘッド57とプラテンローラ58とに挟まれ、サーマルヘッド57は、図11で示すように、透明フィルム32の離型剤層31側に接触し、粘着剤層33はサーマルヘッド57の加熱により、粘着性を帯びることになると共に、インクリボン19のインク層34はサーマルヘッド57の加熱により溶融する。溶融されたインク層34が粘着剤層33に接着されることにより、文字等がフィルムテープ17に転写される。
また、テープ印字装置310において、サーマルヘッド57の発熱部の駆動制御をする駆動制御装置(図示せず)を備えており、転写されたインク層34はフィルムテープ17に対して鏡像印刷されるように制御していることから、フィルムテープ17の透明フィルム32側から見て、正像印刷された文字等が視認できる。
次に、サーマルヘッド57を介して加熱される際にインク層が粘着剤層に転写される転写メカニズムについて、図21に基づき説明する。図21は、サーマルヘッド57により加熱される際にインク層が粘着剤層に転写される転写メカニズムを模式的に示す説明図である。図21で示すように、フィルムテープ17は、サーマルヘッド57とプラテンローラ58との間の印字位置にて、インクリボン19と重ね合わされた際、フィルムテープ17の粘着剤層33とインクリボン19のインク層34とが接触する。該接触部において、サーマルヘッド57の加熱により、粘着剤層33はインク層34と共に加熱されるが、粘着剤層33からインク層34への熱の伝達は、境界部分での伝達損失が発生することにより、粘着剤層33とインク層34の境界部で温度差が発生する。また、第3実施形態のテープカセット301に使用されるフィルムテープ17の粘着剤層33には、80℃以上で粘着性が発生する粘着剤が使用されており、また、インクリボン19のインク層34には、60℃以上で溶融する低融点タイプのインクが使用されていることから、図21で示すように、加熱部の粘着剤層33Aの温度が80℃以上になるとインク層34Aの温度も60℃以上となり、この結果、加熱部における粘着剤層33Aとインク層34Aとが接着することになる。
一方、サーマルヘッド57による加熱の無い粘着剤層33Bの温度は、80℃未満であり、粘着性は帯びておらず、また、それに対応する部分のインク層34Bの温度も60℃未満であることから、サーマルヘッド57を通過し、サーマルヘッド57の下流側に配置されている分離部材4を経た後、図21で示すように、加熱されて粘着剤層33Aに接着されたインク層34Aのみがフィルムテープ17に移行される、残りの部分のインクリボンは消費されたインクリボン19として、リボン巻取スプール21により巻き取られる。
図21で示すように、サーマルヘッド57は熱集中タイプのグレーズ構造となっており、インク層34と粘着剤層33に対してピンポイントに集中して加熱される。従って、加熱部のインク層34A及び粘着剤層33Aは、非加熱部のインク層34B及び粘着剤層33Bとの温度差が大きくなることから、加熱部のインク層34Aと非加熱部のインク層34B、及び、加熱部の粘着剤層33Aと非加熱部の粘着剤層33Bとの境界を明確に保ちながら接着することができる。
また、前記インク層34はワックス系インクであり、加熱後に冷却しても切れよく転写される。従って、加熱されたインク層34が冷却されても、加熱部の粘着剤層33Aと確実に接着でき、文字等がフィルムテープ17に確実に転写される。
また、文字等が印字されたフィルムテープ17は、前記したようにテープ送りローラ16とヒートローラ15との協働により、切断装置としてのはさみ式のカッタユニット14まで引き出される。カッタユニット14の固定刃14Aと可動刃14Bの協働により、印字済みフィルムテープ17は所望の長さに切断できる。切断されたフィルムテープ17は、テープ送りローラ16とヒートローラ15の間を通過し、インク層34が接着された部分以外の粘着剤層33Bにて、ヒートローラ15の加熱により粘着性を帯びることになる。その後、粘着性の帯びた印字済みフィルムテープ17は切断されたままのライナーレステープとして印字装置外へ排出される。
このように、テープカセット301内に、粘着テープスプール及び貼り合せローラを内蔵することなく、テープ送りローラ16及びヒートローラ15をカッタユニット14の下流側に配置することにより、カッタユニット14をサーマルヘッド57の直ぐ下流側に配置してフィルムテープ17への文字等の印字直後に、印字済みフィルムテープ17を切断可能としたので、印字後におけるフィルムテープ17の前余白を短くしてフィルムテープ17のランニングコストを低減することが可能となる。
さらに、ヒートローラ15による加熱を80℃以上90℃未満で行うについて、インク層では60℃以上となり、インク層34として使用されているインクは低融点タイプ(インクの融点は60℃以上になっている)であるが、インクは文字等の印字時に一旦粘度の高い粘着剤中に溶け込んでいることから、ヒートローラ15の加熱により溶融し難くなり、ヒートローラ15による加熱時にインクの再溶融等に起因して印字不良を起こす虞は殆ど無い。尚、離型剤層も透明である。また、透明なフィルムを通してインク層を視認させるために、フィルム層とインク層の間に存在する粘着剤層が透明または半透明であることはいうまでもない。
また、ヒートローラ15は文字等の印字済みフィルムテープ17の離型剤層31側(粘着剤層33の裏面側)から接触することから、粘着剤層33との直接接触を避けることができ、加熱後の粘着剤層33がヒートローラ15に付着することは無い。
また、加熱された粘着剤層33はその後温度が下がっても、粘着性を持っていることから、このようにできたライナーレステープが使用者により被着体に貼り付けられる。今までのように、使用者がラミネートテープを使用するときに剥離紙をはがす手間は無くなる。さらに、前述のように、転写されたインク層34はフィルムテープ17に対して鏡像印刷されるため、使用者は透明なフィルムを通して、正像印刷された文字等が認識できる。
なお、第5実施形態の説明において示したテープ印字装置310、テープカセット301の外観形状は単なる一例であり、本発明はこの外観形状に限定されるものではない。
(第6実施形態)
次に、第6実施形態に係るテープカセット及びテープ印字装置について図22及び図23に基づき説明する。図22は第6実施形態に係るテープ印字装置のカセット収納部にテープカセットを装着する状態を示す要部拡大斜視図、図23はテープカセットの内部構成を模式的に示す平面図である。
ここで、第6実施形態に係るテープカセットの構成は、前述した第5実施形態に係るテープカセットの構成と同一である。また、第6実施形態に係るテープ印字装置の構成は、前述した第5実施形態に係るテープ印字装置310の構成と、ほぼ同一の構成である。以下の説明においては、前述した第5実施形態に係るテープカセット301、テープ印字装置310と同一の構成要素については同一の番号を付して説明する。
上記第5実施形態に係るテープ印字装置310においては、テープ送りローラ16がテープ印字装置310に配設されていたが、本第6実施形態においては、前述した第3実施形態におけるテープ送りローラ16と同じ機能を有する送りローラ77が補助カセット70に配設されている。テープ印字装置410にテープ送りローラは配設されていない。また、本第6実施形態においては、テープ印字装置410には、送りローラ77と連結するための送りローラ軸72、及び、補助紙媒体巻取スプール76と連結するための補助紙媒体巻取軸73が配設されている。
図22において、テープカセット301は、テープ印字装置410に設けられたカセット収納部6に着脱可能となっている。本第6実施形態のテープカセット301の構成は、前述した第5実施形態のテープカセット301と同一であるので、説明を省略する。
また、図23に示すように、補助カセット70は、テープ印字装置410に設けられたカセット収納部6に着脱可能となっている。補助カセット70は、図23に示すように、補助紙媒体74を巻回した補助紙媒体スプール75が配置されている。補助紙媒体スプール75から補助紙媒体74を引き出し、補助紙媒体74を巻き取る補助紙媒体巻取スプール76が配置されている。また、補助カセット70には、送りローラ77が回転可能な状態で配設されており、送りローラ77の一部は補助カセット70から露出している。また、印字時においては、送りローラ77はテープ印字装置410のヒートローラ15と対向する。
印字時において、補助紙媒体74は、送りローラ77に送られ、フィルムテープ17とともに下流方向に送られる。そして、その後、補助紙媒体巻取スプール76に送られる。すなわち、印字時においては、フィルムテープ17と補助紙媒体74とが接触するので、送りローラ77とフィルムテープ17とが接触しない。なお、接触する位置は、図23に示すように、ヒートローラ15と送りローラ77とが対向する位置である。
続いて、テープ印字装置410におけるカセット収納部6の構成について説明する。図22及び図23に示すように、テープ印字装置410のカセット収納部6には、ヘッド支持軸51の回りに回動可能に配設されたヘッド支持部材92に搭載されたサーマルヘッド57が設けられている。サーマルヘッド57は、図23において正面視略縦長四角形の平板状で、前面の左端縁部には、所定個数の各発熱素子が、該左端縁部の辺に沿って一列に配列されて形成されている。ここに、ヘッド支持部材92は、図示しない弾性部材によりヘッド支持軸51の回りに反時計方向に付勢されており、フィルムテープ17への印字時には、モータ等により時計方向に駆動され、これによりサーマルヘッド57はプラテンローラ58に対して接離可能にされている。また、カセット収納部6には、プラテンローラ58が回転可能に支持されている。また、ヘッド支持部材92には、ヒートローラ15が回転可能に支持されている。上述したとおり、ヘッド支持部材92は、図示しない弾性部材によりヘッド支持軸51の回りに反時計方向に付勢されており、フィルムテープ17への印字時には、モータ等により時計方向に駆動され、これによりヒートローラは送りローラ77に対して接離可能にされている。
また、上述したとおり、カセット収納部6には、補助カセット70の補助紙媒体巻取スプール76に連結される補助紙媒体巻取軸73が配設されている。補助紙媒体巻取軸73は、図示しないモータ等の駆動機構に連結されており、補助紙媒体巻取スプール76の回転駆動を行うものである。また、カセット収納部6には、送りローラ軸72が配設されている。送りローラ軸72は、図示しないモータ等の駆動機構に連結されており、送りローラ77の回転駆動を行うものである。
また、カッタユニット14の下流側には、フィルムテープ17に形成された粘着剤層を加熱するヒートローラ15が配設されている。ヒートローラ15と送りローラ77との協働により、印字済みフィルムテープ17がテープ印字装置410の外部に送り出される。なお、以後の説明の便宜上、ヒートローラ15と送りローラ77との対を搬送ローラ対79と記載することがある。ヒートローラ15と送りローラ77が協働している間、補助紙媒体を印字済みフィルムテープ17とともに搬送するために、補助紙媒体巻取スプール76も回転駆動する。
また、インクリボン19及びサーマルヘッド57を介して文字等が印字されるとともに、分離部材4を介してインクリボン19が分離された後、フィルムテープ17は排出口13からテープカセット301の外部に排出され、更に、搬送ローラ対79を介してテープ印字装置410の外部に排出される。このとき、フィルムテープ17の粘着剤層は、搬送ローラ対79のヒートローラ15により加熱され、この結果、粘着剤層には、粘着性が発生する。
本第6実施形態に係るインクリボンと印字テープの構成は、前述した第5実施形態の構成(図19参照)と同一であるので説明を省略する。また、本第6実施形態に係るサーマルヘッド57を介して加熱される際にインク層が粘着剤層に転写される転写メカニズムについても、前述した第5実施形態のメカニズム(図20、図21参照)と同一であるので説明を省略する。
文字等が印字されたフィルムテープ17は、前記したように送りローラ77とヒートローラ15との協働により、切断装置としてのはさみ式のカッタユニット14まで引き出される。カッタユニット14の固定刃14Aと可動刃14Bの協働により、印字済みフィルムテープ17は所望の長さに切断できる。切断されたフィルムテープ17は、送りローラ77とヒートローラ15の間を通過し、インク層34が接着された部分以外の粘着剤層33Bにて、ヒートローラ15の加熱により粘着性を帯びることになる。その後、粘着性を帯びた印字済みフィルムテープ17は切断されたままのライナーレステープとして印字装置外へ排出される。
上述したとおり、印字済みフィルムテープ17の粘着剤はヒートローラ15によって加熱されることにより、粘着性を帯びる。ここで、印字済みフィルムテープ17の粘着力が強い場合、粘着剤層と接触する面に粘着剤が転写されてしまう可能性がある。そこで、本第6実施形態では、補助紙媒体74と印字済みフィルムテープ17の粘着面とが接触するよう構成されている。また、接触する補助紙媒体74は、補助紙媒体巻取スプール76によって常に新しいものが搬送ローラ対79に送られる。そのため、印字済みフィルムテープ17の粘着剤が送りローラ77に付着することがない。また、印字済みフィルムテープ17の粘着剤が補助紙媒体74に付着したとしても、当該補助紙媒体74は、補助紙媒体巻取スプール76に送られるため、粘着剤が付着した補助紙媒体74がその後送られてくる印字済みフィルムテープ17に付着することがない。
このように、テープカセット301内に、粘着テープスプール及び貼り合せローラを内蔵することなく、送りローラ77及びヒートローラ15をカッタユニット14の下流側に配置することにより、カッタユニット14をサーマルヘッド57の直ぐ下流側に配置してフィルムテープ17への文字等の印字直後に、印字済みフィルムテープ17を切断可能としたので、印字後におけるフィルムテープ17の前余白を短くしてフィルムテープ17のランニングコストを低減することが可能となる。
ヒートローラ15による加熱を80℃以上90℃未満で行うについて、インク層では60℃以上となり、インク層34として使用されているインクは低融点タイプ(インクの融点は60℃以上になっている)であるが、インクは文字等の印字時に一旦粘度の高い粘着剤中に溶け込んでいることから、ヒートローラ15の加熱により溶融し難くなり、ヒートローラ15による加熱時にインクの再溶融等に起因して印字不良を起こすおそれは殆どない。尚、離型剤層も透明である。また、透明なフィルムを通してインク層を視認させるために、フィルム層とインク層の間に存在する粘着剤層が透明または半透明であることはいうまでもない。
また、ヒートローラ15は文字等の印字済みフィルムテープ17の離型剤層31側(粘着剤層33の裏面側)から接触することから、粘着剤層33との直接接触を避けることができ、加熱後の粘着剤層33がヒートローラ15に付着することは無い。
また、加熱された粘着剤層33はその後温度が下がっても、粘着性を持っていることから、このようにできたライナーレステープが使用者により被着体に貼り付けられる。今までのように、使用者がラミネートテープを使用するときに剥離紙をはがす手間は無くなる。さらに、前述のように、転写されたインク層34はフィルムテープ17に対して鏡像印刷されるため、使用者は透明なフィルムを通して、正像印刷された文字等が認識できる。
また、本第6実施形態においては、印字済みフィルムテープ17を加熱する際に、印字済みフィルムテープ17の粘着剤層が送りローラ77に接触しないから、粘着剤が送りローラ77に付着することがないため、搬送不良が起きることを防ぐことができる。また、付着した粘着剤がフィルムテープ17を汚すことも防ぐことができる。
さらに、補助紙媒体として、印字済みフィルムテープ17と接触する面に剥離剤層が塗布してあるものを用いることができる。これにより、補助紙媒体74と加熱された印字済みフィルムテープ17とがスムーズに剥離するので、テープ搬送を良好に行うことができる。
また、上記第6実施形態においては、テープカセット301と補助カセット70とを別個のものとして構成したが、図24に示すように、テープカセット及び補助カセットを一体として構成することもできる。この場合、図25に示すとおり、テープカセット401には、補助紙媒体74、補助紙媒体巻取スプール76、送りローラ77、フィルムテープ17、インクリボン19等が配設されることになる。テープカセット401には、図25に示すとおり、切欠部を有している。この切欠部は、送りローラ77と排出口13との間に存在し、テープカセット401をテープ印字装置410に装着した場合に、この切欠部に、テープ印字装置410の固定刃14Aが位置することになる。テープカセット401を用いたテープ印字装置410においても、印字済みフィルムテープ17を加熱する際に、印字済みフィルムテープ17の粘着剤層が送りローラ77に接触しないから、粘着剤が送りローラ77に付着することがないため、搬送不良が起きることを防ぐことができる。また、付着した粘着剤がフィルムテープ17を汚すことを防ぐことができる。
なお、本第6実施形態の説明において示したテープ印字装置410、テープカセット301及び401、補助カセット70の外観形状は単なる一例であり、本発明はこの外観形状に限定されるものではない。
(その他の実施形態)
上記第5実施形態及び第6実施形態に示したテープ印字装置等については、上記第3及び第4実施形態で示したテープ印字装置等の各要素を適用可能である。
例えば、図26に示すように、補助カセット71を装着するよう構成してもよい。
また、図27に示すように、テープカセットに補助紙媒体74を配置するよう構成してもよい。
また、図28に示すように、補助カセット88を装着するよう構成してもよい。
また、図29に示すように、テープカセットに補助紙媒体74及びヒートローラ89を配置するよう構成してもよい。
なお、上記各構成の採用に伴い、テープカセットの一部構成を変更すべきものであることはもちろんである。
次に、上述した第2カッタユニット87を有するテープ印字装置における各駆動手段の動作について説明する。以下においては、上述した第3実施形態(図9及び図10)に基いて説明を行うが、他の実施形態においても基本的動作は同じである。
図30は、搬送制御処理のフローチャートである。搬送制御処理は、テープ印字装置510有するプロセッサ(不図示)によって実行される。搬送制御処理は、印字制御の指令信号が出力されることにより実行が開始される。
図31〜38は、補助紙媒体74及びフィルムテープ17の搬送の様子を示した模式図である。
まず、S1において、プラテンローラ8を原点位置に移動させる(図31参照)。このとき、フィルムテープ17の先端は、カッタユニット14の周囲に位置している(図31参照)。
S2において、フィルムテープ17への印字動作、及び、フィルムテープ17の搬送動作を行う。これらの動作はすでに述べたとおりであるので、ここでの説明は省略する。
S3において、フィルムテープ17の先端が搬送ローラ対(ヒートローラ15及び送りローラ82)に到達したか否かの判断を行う。この判断は、プラテンローラの回転数に基いてフィルムテープ17の搬送量を算出することにより行われる。また、不図示のセンサによって、フィルムテープ17の先端位置を検出するように構成してもよい。
印字済みのフィルムテープ17の先端が搬送ローラ対に到達していないと判断した場合は(S3:NO)、S2に戻る。これにより、印字済みのフィルムテープ17の先端が搬送ローラ対に到着するまでの間、フィルムテープ17に対する印字動作及び搬送動作が継続して行われることになる。
印字済みのフィルムテープ17の先端が搬送ローラ対に到達したと判断した場合は(S3:YES)、S4に進む。
図32は、印字済みのフィルムテープ17の先端が搬送ローラ対に到達した様子を示すものである。
S4において、搬送ローラ対の駆動を開始する。搬送ローラ対の回転に基いて、印字済みのフィルムテープ17(インク層側)に、補助紙媒体74が貼り合わされる。また、補助紙媒体74が貼り合わされた印字済みのフィルムテープ17は、第2カッタユニット87に向かって搬送される。
S5において、印字が終了したか否かが判断される。印字が終了するまで、S4の処理(すなわち、フィルムテープ17の印字動作及び搬送動作)が繰り返されることになる(図33参照)。
印字が終了したと判断すると(S5:YES)、S6に移行する。
S6において、印字済みのフィルムテープ17は、搬送ローラ対に向かって搬送される(図34参照)。
S7において、印字済みのフィルムテープ17の後端がカッタユニット14(第1切断手段)よる切断位置(第1切断位置)に存在するか否かを判断する。この判断は、例えば、プラテンローラ8の回転量に基いて算出されたフィルムテープ17の搬送量によって行われる。また、第1切断予定位置に、所定の印字を行っておき、該印字内容を図示しないセンサで読み取ることにより、第1切断位置であるか否かを判断してもよい。
印字済みのフィルムテープ17の後端が第1切断位置に存在しないと判断した場合は(S7:NO)、S6に戻る。これにより、印字済みのフィルムテープ17が第1切断位置まで搬送されるまでの間、印字済みのフィルムテープ17の搬送動作が継続して行われることになる。
一方、印字済みのフィルムテープ17の後端が第1切断位置に存在すると判断した場合は(S7:YES)、S8に移行する。
S8において、印字済みフィルムテープ17を切断する。このとき、可動刃14Bが駆動制御される。また、印字済みのフィルムテープ17の切断時は、回転中のプラテンローラ8が停止駆動される。図34は、印字済みフィルムテープ17が、第1切断位置に存在する様子を示した図である。
印字済みのフィルムテープ17が切断された後、S9に移行する。
S9において、ヒートローラ15の回転駆動を再開させる。また、印字済みのフィルムテープ17は切断されているため、プラテンローラ8は回転駆動されない。これにより、切断後印字済みフィルムテープ17は、ヒートローラ15の回転駆動によって搬送されることになる。図35は、切断後印字済みのフィルムテープ17が、補助紙媒体74が貼り合せられながら第2カッタユニット87に向かって搬送される様子を示した図である。
S10において、印字済みのフィルムテープ17の後端が第2カッタユニット87(第2切断手段)による切断位置(第2切断位置)に存在するか否かを判断する。この判断は、ヒートローラ15の回転量に基いて算出された印字済みのフィルムテープ17の搬送量に基いて行われる。
印字済みのフィルムテープ17の後端が第2切断位置に存在しないと判断した場合は(S10:NO)、S9に戻る。これにより、印字済みのフィルムテープ17が第2切断位置まで搬送されるまでの間、印字済みのフィルムテープ17の搬送動作が継続して行われることになる。
一方、印字済みのフィルムテープ17の後端が第2切断位置に存在すると判断した場合は(S10:YES)、S11に移行する。
S11において、補助紙媒体74を切断する。このとき、可動刃87Bが駆動制御される。また、補助紙媒体74の切断時は、ヒートローラ15は停止駆動される。図36は、印字済みフィルムテープ17が、第2切断位置に存在する様子を示した図である。また、図37は、補助紙媒体74が、第2カッタユニット87によって切断された後の様子を示した図である。
補助紙媒体74が切断された後、S12に移行する。
S12において、プラテンローラ8を、サーマルヘッド7から離間させる。その後、S13に移行する。
S13において、補助紙媒体74を逆搬送させる。すなわち、補助紙媒体74を、印字時の搬送方向とは逆方向に巻き戻す。このとき、補助紙媒体スプール81が印字時の回転方向とは逆向きに回転する。これにより、補助紙媒体74は、補助紙媒体スプール81に巻き戻されることになる。
S14において、補助紙媒体74の逆搬送を終了するか否かを判断する。この判断は、送りローラ82の回転量によって算出された補助紙媒体74の逆搬送量に基いて行われる。補助紙媒体74の先端部がヒートローラ15付近まで巻き戻されたときに、逆搬送が終了する。
補助紙媒体の逆搬送を終了しないと判断した場合は(S14:NO)、S13に戻る。これにより、補助紙媒体74の逆搬送が終了するまでの間、補助紙媒体74の巻き戻し動作が継続して行われることになる。
一方、補助紙媒体の逆搬送を終了すると判断した場合は(S14:YES)、S15に移行する。
S15において、補助紙媒体スプール81の逆回転駆動を停止させる。図38は、補助紙媒体スプール81の逆回転を停止した状態を示した図である。
以上の処理によって、印字済みのフィルムテープ17が第2カッタユニット87によって切断された後、補助紙媒体74は、補助紙媒体スプール81に巻き戻されるので、補助紙媒体74を有効に利用することができる。また、巻き戻された補助紙媒体74の先端部は、図38に示した位置で次の貼り合せ動作まで待機するので、作成されるフィルムテープ17には、図39に示すように、長さ「t」だけ補助紙媒体74のみの部分が存在する。これにより、作成されたフィルムテープ17は、補助紙媒体74を剥がしやすい状態で保管されることになる。
なお、本発明は上記各第実施形態に限定されることはなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることはもちろんである。
例えば、第5実施形態等において、図40に示すベースフィルム36に弱粘着性のある粘着剤層37を介してトナーインクが一面に塗布されたトナーインク層38を備えたトナーインクリボン39を採用することもできる。
サーマルヘッド57を介して加熱される際にインク層が粘着剤層に転写される転写メカニズムは、図21と同様に、サーマルヘッド57によって加熱されたフィルムテープ17の粘着剤層33Aが溶融温度以上である80℃以上90℃未満に加熱され、粘着性を帯びる。そして、フィルムテープ17の粘着剤層33Aに接触したトナーインクリボン39のトナーインク層38が粘着剤層33Aに接着し、フィルムテープ17に転写される。この場合、トナーインクは90℃未満で溶融することがなく、粉体の状態でフィルムテープ17に転写されている。
印字後のフィルムテープ17はテープ送りローラ16とヒートローラ15の間を通過し、ヒートローラ15にて80℃以上90℃未満に加熱されることによって粘着剤層33Bが粘着性を帯びると共に、トナーインクは溶融することがなくフィルムテープ17に転写された状態が保たれる。
従って、印字後のフィルムテープ17を加熱することによってもインクは溶融することがないので、印字不良を起こす虞は無い。