JP2009016771A - ウエハ支持ガラス - Google Patents

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Abstract

【課題】端面に加えられた衝撃力により欠けや割れの発生することのない端面に耐衝撃性を有するウエハ支持ガラスを提供する。
【解決手段】ウエハ支持ガラスGPは、所定直径を有する半導体ウエハに接着してこの半導体ウエハを支持する所定直径よりも大きな直径Lを有するウエハ支持ガラスであって、ウエハ支持ガラスの少なくとも端面に耐衝撃性を備える。耐衝撃性は化学強化処理によりウエハ支持ガラスの表面に圧縮応力層を形成することが好ましい。
【選択図】図3

Description

本発明は、半導体ウエハを接着して支持するとともに、端面に加えられた力により欠けや割れの発生することのない端面の耐衝撃性を有するウエハ支持ガラスに関する。
近年、携帯電話やICカード等の電子機器の高機能化に伴い、その内部に実装される半導体素子(LSI、ICなど)の薄型化又は小型化が進んでいる。また、線幅を狭くすることなく記憶容量を増すために半導体ウエハを数層重ね合わせた三次元実装タイプの半導体素子、例えばSDカードなどが増えつつある。
特に薄型化という面では、三次元実装タイプの半導体素子では厚さ50μmから100μmの半導体回路を複数積層しており、さらに1枚の半導体回路の厚さを50μm以下とした半導体素子の開発が進められている。このような、半導体回路を薄層化する技術の一つとして、パターン形成された半導体ウエハの裏面を研削する裏面研削処理が知られている。この裏面研削処理は、両面粘着テープを介して半導体ウエハのパターン形成された表面を剛性を有するウエハ支持ガラスへ接着固定し、高速回転する砥石等を用いて半導体ウエハの裏面を研削するものである。
ここで、裏面研削処理に用いられるウエハ支持ガラスとしては、上下面を高精度に研磨したガラスプレートが用いられる。裏面研削処理が施された半導体ウエハは、ウエハ支持ガラスから分離されウエハダイシング等の工程へ搬送される。この半導体ウエハとウエハ支持ガラスとを分離するウエハ剥離装置としては、例えば、特許文献1又は特許文献2に記載されている。このウエハ剥離装置では、半導体ウエハとウエハ支持ガラスを両面接着テープにより接着固定した処理対象物に紫外線を照射した後、接着された半導体ウエハとウエハ支持ガラスの周辺部より互いを引き離す方向に物理的な力を加えることにより剥離が行われている。なお、厚さ50μm以下の半導体ウエハは自重でたわんでしまうため、裏面研削処理からダイシング工程までウエハ支持ガラスで半導体ウエハを支持することが必須となっている。
また、ウエハ支持ガラスは何度も洗浄工程を繰り返し使われる。この洗浄工程では、半導体ウエハを支持する時に用いた接着剤や粘着剤の強固な残渣も取り除かなければならない。そのため、洗浄も強力なシャワーによる圧力をウエハ支持ガラスの端面にかなり大きな衝撃が加わることがある。これらの衝撃により端面にカケや割れが生じ、ウエハ支持ガラスとして使用できなくなってしまうことが起きる。
特開2005−057046号公報 特開2006−156633号公報
しかしながら、特許文献1又は特許文献2に示す工程では、ウエハ支持ガラスをストッカに収納する際や、ウエハ支持ガラスを位置決めする際に、ストッカの壁面や位置決め用ピンとウエハ支持ガラスの端面が接触又は衝突する。このため、ウエハ支持ガラスの端面に欠けや割れを生じる虞があった。
このような欠けや割れにより生じたガラスの粒又は粉塵は、飛散してウエハ表面のパターン上に付着することがあり、また、欠けや割れの発生と同時に端面近傍の半導体ウエハへ機械的ダメージが加わることもあり、パターン欠陥の半導体素子の不良原因となるなどの問題があった。
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、半導体ウエハを接着して支持するとともに、端面に加えられた衝撃力により欠けや割れの発生することのない端面に耐衝撃性を有するウエハ支持ガラスを提供することにある。
第1の観点によるウエハ支持ガラスは、所定直径を有する半導体ウエハに接着してこの半導体ウエハを支持する所定直径よりも大きな直径を有するウエハ支持ガラスであって、ウエハ支持ガラスの少なくとも端面に耐衝撃性を備えた。
第1の観点によるウエハ支持ガラスは、その直径が半導体ウエハの直径よりも大きいため半導体ウエハが受ける衝撃を身代わりとなって受けることができる。また、その衝撃を受けてもウエハ支持ガラスの端面は耐衝撃性を備えているため、欠けや割れによりガラスの粒又は粉塵を生じることがなく、半導体ウエハに影響を与えない。なお、ウエハ支持ガラスの実際の使われ方から端面の耐衝撃性が重要であったにもかかわらず端面の耐衝撃性を向上したウエハ支持ガラスが注目されていなかったが、第1の観点によるウエハ支持ガラスは端面の耐衝撃性を向上させた。
第2の観点においては、ウエハ支持ガラスは、化学強化処理による圧縮応力層を備える。
第2の観点によるウエハ支持ガラスは、化学強化処理により端面への耐衝撃性が約7倍以上に上がる。
第3の観点によるウエハ支持ガラスは第2の観点において、NaO又はLiOを含む。
NaOを含むウエハ支持ガラスはイオン交換されることにより化学強化するための必須成分であり、LiOを含むウエハ支持ガラスは容易に厚い圧縮応力層を得ることができる。
第4の観点によるウエハ支持ガラスは、コーティング処理によるコーティング層を備える。
第4の観点によるコーティングにより、化学強化処理と同等の圧縮応力層が形成され耐衝撃性が増す。
第5の観点によるウエハ支持ガラスは圧縮応力層の深さが15μm以上220μm以内である。
ウエハ支持ガラスに耐衝撃性を備えるために、ウエハ支持ガラスの圧縮応力層の深さは15μm必要である。またウエハ支持ガラスは圧縮応力層の深さは深い方が好ましい。しかし、圧縮応力層厚みが220μmより大きな圧縮応力層の厚みであると形状自体にソリやうねりが発生しやすくなるので、圧縮応力層の深さは220μm以内が好ましい。
第6の観点によるウエハ支持ガラスは、第1面、第2面及び端面を有し、端面は面取り部又は第1面と第2面とを結ぶ曲面が形成されている。
端面に面取り部又は曲面が形成されていないとウエハ支持ガラスの搬送時などで端面にキズが入りやすくなり、このキズが入ると衝撃が加えられた際に大きく伝播して行く。端面に面取り部又は曲面が形成さえているとキズが入ることが少なくなる。
第7の観点によるウエハ支持ガラスの端面は、算術平均粗さが440nm以下である。
算術平均粗さRaで440nm以下であれば、衝撃が加えられた際に欠けや割れが生じることが少なくなる。
第8の観点によるウエハ支持ガラスは厚さが0.3mm以上1.1mm以下である。
0.3mm厚以上のウエハ支持ガラスは半導体ウエハを安定的に支持できる。
本発明のウエハ支持ガラスは、端面に加えられた衝撃力により欠けや割れの発生することが少ない。このため、欠けや割れによるガラス粉又はガラス片により半導体ウエハが不良品となることが少なくすることができる。
以下、図面を参照しながら本実施形態を説明するが、以下の図面に描かれている各部材の縮尺は理解を助けるため実際の縮尺とは異なっている。
<ガラスプレートの接着と剥離>
図1は、半導体回路が形成された半導体ウエハSWにウエハ支持ガラスとしてのガラスプレートGPを貼り付けてからガラスプレートGPを剥離するまでのフローチャートである。図2Aから図2Cは、フローチャートの各工程を示した断面図である。本実施形態では、半導体ウエハSWには、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)又はガリウム砒素(GaAs)などを結晶化されたウエハに対して適用できる。
ステップS11では、真空チャンバ内において両面接着フィルムADの片面を半導体ウエハSWの表面に貼り付ける。そして、両面接着フィルムADの他面にガラスプレートGPの第1面を接着する。半導体ウエハSWの直径が200mmであればガラスプレートGPの直径は201mmとなり若干ガラスプレートGPが大きくなっている。図2A(a)は半導体ウエハSWとガラスプレートGPとを接着・固定した状態である。真空チャンバ内で接着処理するため、両面接着フィルムADと半導体ウエハSW又はガラスプレートGPとの間に空気が入ることがない。詳細は例えばWO2002/056352に開示されている。なお、両面接着フィルムADは、ベースシートの一方の面に紫外線照射により粘着性が低下する粘着剤を有し他方の面に弱粘着性の粘着剤を有する三層構造とされている。両面接着フィルムADの代わりに液状樹脂を塗布してもよい。
次に、ステップS12では、ガラスプレートGPを下にして研削装置(ダイヤモンドグラインダー)31により半導体ウエハSWの裏面を所定厚さまで研削する。図2A(b)は研削の工程を示している。最初の半導体ウエハSWの裏面位置を点線で示しており、その状態から研削された状態を示している。ICカード用の半導体ウエハSWであれば一般に100μm前後まで削られるが、三次元実装用の半導体ウエハSWであれば一般に50μm前後まで研削される。裏面研削により薄型化される半導体ウエハSWは、高精度に均一な厚さ分布が求められる。この点、プラスチック製のウエハ支持部材と比べ、ガラスプレートGP自体は研削や研磨により均一な厚さに加工できるため、半導体ウエハSWの厚さを高精度に研削することが可能となる。図2B(c)は研磨された半導体ウエハSWの断面図である。
ステップS13では、ガラスプレートGPを両面接着フィルムADから剥離し易いように、ガラスプレートGPを介して紫外線を両面接着フィルムADに照射する。その後、ガラスプレートGPの第2面にガラス用剥離テープDTを接着する。可撓性のガラス用剥離テープDTはステップS14でガラスプレートGPを剥離する際の保護用のフィルムである。図2B(d)はガラス用剥離テープDTが接着されたガラスプレートGPを示した図である。
ステップS14では、半導体ウエハSWを平板の真空チャック35に取り付け、真空引きすることで半導体ウエハSWが真空チャック35に固定される。また真空チャックにはガラスプレートGPを剥離する剥離装置(不図示)が取り付けられている。図2B(e)は半導体ウエハSWが真空チャック35に装着された状態を示す断面図である。真空チャック35の変わりに静電チャックを用いても良い。
ステップS15では、剥離装置は、ガラス用剥離テープDTを一端から持ち上げることによりガラスプレートGPの一端を持ち上げる。紫外線を照射して両面接着フィルムADの接着力は低下し剥離し易い状態になっているが、小さい力でガラスプレートGPを剥離するため一端からめくるようにして持ち上げる。小さい力でガラスプレートGPが剥離できるということは、半導体ウエハSWにも小さい力しか及ばず、半導体ウエハSWの表面に形成された半導体回路に物理的変形をほとんど生じさせない。
図2C(f)はガラスプレートGPの一端から剥離されて行く途中の状態を示した図である。
ステップS16では、両面接着フィルムADを半導体ウエハSWの表面から剥離する。図2C(g)は両面接着フィルムADを半導体ウエハSWから剥離する状態である。
ステップS17において、真空チャック35の真空引きを開放して真空チャック35から半導体ウエハSWを取り外す。その後半導体ウエハSWは、ダイシング工程などに搬送される。
<実施形態1:化学強化されたガラスプレートGP>
上述したように、ガラスプレートGPは半導体ウエハSWの半導体回路を破損することなく、両面接着フィルムADを有する半導体ウエハSWからガラスプレートGPを剥離することができる。そして、半導体ウエハがストッカの壁面や位置決め用ピンと接触する代わりにガラスプレートGPの端面が接触又は衝突するため、端面が耐衝撃性を有する必要がある。
<<ガラス基材>>
ガラス基材は3種類用意した。それぞれをガラスNo.1、ガラスNo.2、ガラスNo.3と名付け、それぞれの組成は表1に示した。使用した原料は、酸化物、炭酸塩、硝酸塩及び水酸化物等を用いた。
(表1)
ガラス溶解して徐冷した後において上記ガラス組成になるように、各原料を秤量する。そして、得られた原料混合物の約3.6kgを1.5リットルの白金坩堝に入れて1500〜1600°Cで5〜8時間加熱してガラス融液とし、撹拌して脱泡及び均質化を行う。
その後加熱した鉄板上にガラス融液を流し出した。同じく加熱したもう1つの鉄板を用いて、流れ出たガラス融液の上からすぐにプレスした。プレスされることにより、外径約210mmで厚さ約3mmに成形されたガラス基材を得ることができる。
ガラスNo.1及びガラスNo.2に含まれるLiOは、ガラス表層部でイオン交換処理浴中の主としてNaイオンとイオン交換されることにより、ガラスを化学強化するための成分である。4%未満ではこのイオン交換性能が低下し、10%を超えると耐失透性と化学的耐久性とがともに悪化する。このためLiOの割合は、4〜10%に限定される。特に好ましくは4〜7%である。なお、図1のステップS13で説明したように、両面接着フィルムADに紫外線を照射する必要があるためガラスプレートGPは紫外線透過性が必要である。
NaOは、ガラス表層部でイオン交換処理浴中の主としてKイオンとイオン交換されることにより、ガラスを化学強化するための必須成分である。6%未満では耐失透性が悪化するとともに化学強化層が浅くなり、熔解時の粘性が上昇するので熔解性が低下する。15%を超えると化学的耐久性が劣化するととともにヌープ硬さが小さくなる。このためNaOの割合は、6〜14%に限定される。特に好ましくは9〜14%である。
LiOを含むガラス基材は容易に厚い圧縮応力層を得ることができるため、化学強化処理時間も短い時間で済む。また、厚い圧縮応力層を持っているので、化学強化処理後でも研磨工程に入れることができるしキズにも強い。一方、LiOを含まないガラスNo.3のガラス基材は素材単価が安価である。しかし、適量の圧縮応力層を得るにはガラスNo.1又はガラスNo.2と比較して化学強化処理時間を長く取らなければならない。
<<ガラスプレートGPの端面(周縁部)>>
図3(a)は、ガラスプレートGPを示した斜視図であり、(b)及び(c)はそのガラスプレートGPの端面の拡大図である。
プレスされたガラス基材は、外径約210mmで厚さ約3mmである。このガラス基材を加工して、外径Lが201mmで厚さDDが0.5mm又は1.0mmのガラス形状加工物を得る。加工は、まず、外形Lを204mm程度に削る外形加工を行う。そして、ガラス形状加工物の端面PEの研削加工と上下面GP1及びGP2の研削加工を行う。さらに、上下面GP1及びGP2の研磨加工が含まれる。端面PEの研磨加工は必要に応じて行う。
図3(b)及び(c)に示すように端面は、面取処理又は曲面処理のいずれかの処理を施す。面取処理又は曲面処理を施しておかないと、前述した化学強化処理を行う際にガラスプレートGPが破損するおそれがある。
また、端面に面取りがされていないとガラスプレートGPの搬送時などで端面にキズが入りやすくなる。このキズはガラスプレートGPが衝撃を受けるごとにクラックとして大きく伝播して行くので端面は面取り部CF又は曲面CCを形成している。
<<ガラス基材に対して施した処理>>
イオン交換法によるガラスの強化は高温でガラス中のアルカリイオンを溶融塩の他のアルカリイオンと交換しガラス表面に圧縮応力層を形成させる方法である。本実施形態においてガラスプレートGPは以下に説明するように、3種類のガラス基材に対して異なる処理を施すことで5種類のガラスプレートGPを製作した。
[実施例1のガラスプレートGP]
実施例1のガラスプレートGPは、まずガラスNo.1のガラス基材を徐冷した後、外形加工、端面研削加工(600番仕上げ)、上下面研削加工、及び上下面研磨加工を施し、外径201mm、板厚み0.5mmのガラス形状加工物を形成して製造される。そして、ガラス形状加工物は380°Cに保ったKNO(硝酸カリウム):NaNO(硝酸ナトリウム)=60%:40%の混塩の処理浴中に3時間浸漬させられる。これにより、ガラス形状加工物の表面部は、Liイオン及びNaイオンと処理浴中のNaイオン及びKイオンとがそれぞれイオン交換させられ、ガラス形状加工物の表面部が化学強化させた実施例1のガラスプレートGPが完成する。
[実施例2のガラスプレートGP]
実施例1と同様に、実施例2のガラスプレートGPは、ガラスNo.1のガラス基材を徐冷した後、外形加工、端面研削加工、上下面研削加工、端面研磨加工、及び上下面研磨加工を施し、外径201mm、板厚み0.5mmのガラス形状加工物を形成して製造される。そして、ガラス形状加工物は380°Cに保ったKNO:NaNO=60%:40%の混塩の処理浴中に3時間浸漬させられる。つまり、実施例1のガラスプレートGPと比較して端面が研磨加工されている点で異なる実施例2のガラスプレートGPが完成する。
[実施例3のガラスプレートGP]
実施例3のガラスプレートGPは、ガラスNo.1のガラス基材を徐冷した後、外形加工、端面研削加工(600番仕上げ)、上下面研削加工、及び上下面研磨加工を施し、外径201mm、板厚み1.0mmのガラス形状加工物を形成して製造される。ガラス形状加工物のイオン交換は実施例1と同じ処理が施される。つまり、実施例3のガラスプレートGPは板厚み1.0mmである点で実施例1のガラスプレートGPと異なる。
[実施例4のガラスプレートGP]
実施例4のガラスプレートGPは、ガラスNo.2のガラス基材を徐冷した後、外形加工、端面研削加工(600番仕上げ)、上下面研削加工、上下面研磨加工を施し、外径201mm、板厚み0.5mmのガラス形状加工物を形成して製造される。そして、ガラス形状加工物は360°Cに保ったKNO:NaNO=60%:40%の混塩の処理浴中に3時間浸漬される。これにより、ガラス形状加工物の表面部は、Liイオン及びNaイオンと処理浴中のNaイオン及びKイオンとがそれぞれイオン交換させられ、ガラス形状加工物の表面部が化学強化させた実施例4のガラスプレートGPが完成する。
[実施例5のガラスプレートGP]
実施例5のガラスプレートGPは、まずガラスNo.3のガラス基材を徐冷した後、外形加工、端面研削加工(600番仕上げ)、上下面研削加工、及び上下面研磨加工を施し、外径201mm、板厚み0.5mmのガラス形状加工物を形成して製造される。そして、ガラス形状加工物は430°Cに保ったKNO=100%の処理浴中に20時間浸漬させられる。これにより、ガラス形状加工物の表面部は、Naイオンと処理浴中のKイオンとがそれぞれイオン交換させられ、ガラス形状加工物の表面部が化学強化させた実施例5のガラスプレートGPが完成する。
さて、下記は実施例1から実施例5と比較した比較例であり、比較例として3種類の例を示す。
[比較例1のガラスプレートGP]
比較例1のガラスプレートGPは、まずガラスNo.1のガラス基材を徐冷した後、外形加工、端面研削加工(600番仕上げ)、上下面研削加工、及び上下面研磨加工を施し、外径201mm、板厚み0.5mmのガラス形状加工物を形成して製造される。しかし化学強化処理はガラス形状加工物に対して一切行っていない。この点で実施例1のガラスプレートGPと異なる。
[比較例2のガラスプレートGP]
比較例2のガラスプレートGPは、パイレックス(登録商標)ガラスに外形加工、端面研削加工、上下面研削加工、端面研磨加工、及び上下面研磨加工を施し、外径201mm、板厚み0.5mmのガラス形状加工物を形成して製造される。化学強化処理はガラス形状加工物に対して一切行っていない。
[比較例3のガラスプレートGP]
比較例3のガラスプレートGPは、パイレックス(登録商標)ガラスに外形加工、端面研削加工、上下面研削加工、端面研磨加工、及び上下面研磨加工を施し、外径201mm、板厚み1.0mmのガラス形状加工物を形成して製造される。化学強化処理はガラス形状加工物に対して一切行っていない。比較例2及び比較例3で使用したパイレックス(登録商標)ガラスは、化学的耐久性の非常によいガラスとして知られており、特に比較例3の板厚1.0mmのガラスプレートは半導体ウエハSWを支持するガラスプレートとして現在一般的に使われている。文献によるとパイレックス(登録商標)ガラスのガラス組成は、SiOが81wt%、Bが13wt%、NaOが4wt%、Alが2wt%である。
以上を整理した表2を以下に示す。
(表2)
<<ガラスプレートGPの端面への耐衝撃性>
実施例1ないし実施例5のガラスプレートGP並びに比較例1ないし比較例3のガラスプレートGPについて端面への耐衝撃性を測定した。各実施例又は各比較例とも3枚から10枚のガラスプレートGPに対して測定を行った。なお、本実施形態の端面への耐衝撃性はガラスプレートGPの径方向から加えられる衝撃に対する耐性であり、その測定方法は図5Aないし図5Cを使って後述する。なお、ガラスプレートGPにキズが入っていれば耐衝撃性を測定した値に誤差が生じてしまうため、衝撃を与えるサンプルであるガラスプレートGPは1枚に付き1度の衝撃のみを与え、そのガラスプレートGPが割れなかったとしても2度目の衝撃測定用に使用していない。
[実施例1のガラスプレートGP]
実施例1のガラスプレートGPは、圧縮応力層の厚みが約100μmであり、耐衝撃度測定において、落下距離14cmではガラスプレートGPは割れず、落下距離24cmではガラスプレートGPは破壊した。
[実施例2のガラスプレートGP]
実施例2のガラスプレートGPは、圧縮応力層の厚みが約100μmであり、耐衝撃度測定において、落下距離14cmではガラスプレートGPは割れず、落下距離24cmではガラスプレートGPは破壊した。
[実施例3のガラスプレートGP]
実施例3のガラスプレートGPは、圧縮応力層の厚みが約100μmであり、耐衝撃度測定において、落下距離14cmでも、落下距離24cmでも、また落下距離34cmでもガラスプレートGPは割れなかった。
[実施例4のガラスプレートGP]
実施例4のガラスプレートGPは、圧縮応力層の厚みが約100μmであり、耐衝撃度測定において、落下距離14cmではガラスプレートGPは割れず、落下距離24cmではガラスプレートGPは破壊した。
[実施例5のガラスプレートGP]
実施例5のガラスプレートGPは、圧縮応力層の厚みが約25μmであり、耐衝撃度測定において、落下距離14cmではガラスプレートGPは割れず、落下距離24cmではガラスプレートGPは破壊した。
[比較例1のガラスプレートGP]
比較例1のガラスプレートGPは、圧縮応力層の厚みがなく、耐衝撃度測定において、落下距離2cmでガラスプレートGPは破壊した。
[比較例2のガラスプレートGP]
比較例2のガラスプレートGPは、圧縮応力層の厚みがなく、耐衝撃度測定において、落下距離2cmでガラスプレートGPは破壊した。
[比較例3のガラスプレートGP]
比較例3のガラスプレートGPは、圧縮応力層の厚みがなく、耐衝撃度測定において、落下距離14cmではガラスプレートGPは3枚中2枚が割れず、3枚中1枚が破壊した。落下距離24cmではガラスプレートGPは破壊した。
以上の結果を表3に示す。
(表3)
<実施例1〜5のガラスプレートGPと比較例1〜3のガラスプレートGPとの考察>
<<ガラスプレートGPの化学強化処理>>
実施例1のガラスプレートGPと比較例1のガラスプレートGPとは、同じガラス基材でさらに同じ形状で同じ端面処理を施しており、異なる点は実施例1のガラスプレートGPがイオン交換による化学強化処理が施されているのに対して、比較例1のガラスプレートGPがイオン交換による化学強化処理が施されていないところである。比較例1のガラスプレートGPは落下距離2cmで破壊してしまうのに対し、実施例1のガラスプレートGPは落下距離が14cmでも割れなかった。つまり、イオン交換による化学強化処理を行うと、端面への耐衝撃性の測定における高さが約7倍以上に上がることから端面への耐衝撃性の向上にはイオン交換による化学強化処理が重要であるとわかる。
化学強化処理が重要であることが次のことからも理解できる。
比較例1のガラスプレートGPと比較例2のガラスプレートGPとは、同じ形状で同じ厚さ、ともにイオン交換による化学強化処理が施されていない。両者の異なる点は比較例1のガラスプレートGPのガラス基材がガラスNo.1であるのに対して、比較例2のガラスプレートGPがパイレックス(登録商標)ガラスである点、さらに比較例1のガラスプレートGPが600番仕上げで研削処理しているのに対して、比較例2のガラスプレートGPが研磨処理である点である。比較例2のパイレックス(登録商標)ガラスの方が比較例1の化学強化しないガラスNo.1よりガラス自身の強度(例えば、ヤング率)は高いので端面への耐衝撃性があると思われる。そして、比較例2のガラスプレートGPの端面も研磨仕上げであるから比較例1の600番仕上げ研削処理より残留キズが小さく少ないので割れにくいはずである。
しかし、比較例1のガラスプレートGPも比較例2のガラスプレートGPも落下距離2cmで破壊してしまった。このことからガラス基材の種別にはあまり関係なく、化学強化していないガラスの端面は耐衝撃性に関して非常に低いことが伺える。すなわち、端面への耐衝撃性の向上にはイオン交換による化学強化処理が重要である。
端面への耐衝撃性の向上にはイオン交換による化学強化処理が重要であることが、次のことからも理解できる。
実施例1、実施例4及び実施例5は、同じ形状で同じ厚さ、同じ端面処理を施している。一方、これらはそれぞれのガラス基材がガラスNo.1、ガラスNo.2及びガラスNo.3を採用しており、異なるガラス基材に応じて最適なイオン交換による化学強化処理が行われており、後述する圧縮応力層の測定により、実施例1及び実施例4の圧縮応力層の深さは約100μmであり、実施例5の圧縮応力層の深さは約25μmである。
耐衝撃度の結果は、どれもみな落下距離14cmで割れなかったが落下距離24cmで破壊した。つまり、端面への耐衝撃性は化学強化処理を施したガラスプレートGPであればガラス基材の種別にはあまり関係ないということである。また、圧縮応力層の深さが約25μm程度であれば圧縮応力層の深さにも依存しなかったと言える。
なお、本実施形態の端面への耐衝撃性の測定は、ガラスプレートGPに与える衝撃は1度だけという条件で測定した。なぜなら、ガラスプレートGPの上下面や端面にキズが入った状態で端面への耐衝撃性の測定を行うと、圧縮応力層の深さが浅い実施例5の端面への耐衝撃性は低いと判定される可能性があるからである。
さらに、端面への耐衝撃性の向上にはイオン交換による化学強化処理が重要であることが、次のことからも理解できる。
実施例3及び比較例3は、ともに外径201mm、厚み1.0mmで上下面が研磨されている。一方実施例3はガラス基材がガラスNo.1で最終端面処理を600番仕上げ研削処理とし、比較例3はガラス基材がパイレックス(登録商標)ガラスで最終端面処理を研磨仕上げとした。実施例3は落下距離34cmでもガラスプレートが破壊しなかったのに対し、比較例3は落下距離が24cmで割れた。現在通常使われている半導体ウエハ支持ガラスであるパイレックス(登録商標)ガラスより、イオン交換による化学強化処理を施したガラスプレートGPの方が端面への耐衝撃性を有していることを意味する。
以上の結果から、圧縮応力層は重要で位置決めピンなどとの当接又は洗浄工程などで、加えられる衝撃に耐えられるようガラスプレートGPには圧縮応力層深さ15μmは必要と考えられる。ガラスプレートGPは何度も繰り返し使われるため圧縮応力層の深さは深い方がキズが入りにくい。しかし、圧縮応力層厚みが220μmより大きな圧縮応力層の厚みを持った時には、形状自体にソリやうねりが発生しやすくなる。つまり厚みはガラスプレートGPの形状自体にソリなどが生じないように圧縮応力層厚み220μm以下が好ましいと言える。さらに好ましくは圧縮応力層深さ25μmから100μmが良い。
<<ガラスプレートGPの端面の面荒さ>>
実施例1ないし実施例5及び比較例1ないし比較例3のガラスプレートGPは、厚さが0.5mm又は1.0mmで薄く、曲面であるため、端面の面粗さを容易に測定できない。そこで、ガラスNo.1、ガラスNo.2及びガラスNo.3、それぞれに対して、外径20mmで、厚さが1.0mmの上下面を研削処理品又は研磨処理品を作製し、その平面部である上下面の算術平均粗さRaを測定し、端面の面粗さの代用結果を得た。ガラスNo.1、ガラスNo.2及びガラスNo.3の種類の違いによる差異は見受けられなかった。
400番仕上げ研削処理品 :Ra=470〜630 nm
600番仕上げ研削処理品 :Ra=350〜440 nm
研磨処理品(光学研磨レベル) :Ra=1.0〜1.6 nm
なお、上記測定において測定装置は、Veeco社製の接触式粗さ計(型式:Dektak 6M)を用いた。算術平均粗さRa(nm)を用いて評価した。
実施例1のガラスプレートGPと実施例2のガラスプレートGPとは、同じガラス基材でさらに同じ形状で同じ化学強化処理を施しており、異なる点は実施例1のガラスプレートGPの端面が600番仕上げの研削処理であるのに対して実施例2のガラスプレートGPの端面が研磨処理であるところである。両者とも落下距離14cmで割れなかったが落下距離24cmで破壊した。落下距離14cmの端面への耐衝撃性を確保するのであれば、研磨処理まで行う必要がなく600番仕上げの研削処理による最終端面処理を行えば充分である。別言すれば端面の面粗さが算術平均粗さRaで440nm以下であればよいと言い換えることができる。
<<ガラスプレートGPの厚み>>
実施例1と実施例3は、ガラス基材、形状、端面処理及びイオン交換処理がすべて同じであり、実施例1のガラスプレートGPの板厚が0.5mmで、実施例3のガラスプレートGPの板厚が1.0mmである点で異なる。端面への耐衝撃性の測定の結果において、実施例1は落下距離14cmで割れなかったが落下距離24cmで破壊した。一方、実施例3は落下距離34cmでも割れなかった。
上述した通り、比較例3は半導体ウエハSWを支持するガラスプレートとして現在一般的に使われている。
実施例1及び比較例3のガラスプレートGPは、ともに直径201mm、上下面が研磨されている。一方実施例1はガラス基材が厚さ0.5mmのガラスNo.1で、最終端面処理を600番仕上げ研削処理とし、比較例3は厚さが1.0mmのパイレックス(登録商標)ガラスで最終端面処理を研磨仕上げとした。実施例1も比較例3は、ともに落下距離24cmでガラスプレートGPが破壊した。実施例1は落下距離が14cmで割れなかった。比較例3は落下距離14cmで測定した3枚中2枚が割れず、3枚中1枚が破壊した。これは、比較例3のガラスプレートと比較すると、実施例1のガラスプレートは同等又はそれ以上の端面への耐衝撃性を有していることを示している。つまり、イオン交換による化学強化処理を施すことにより、現在一般的に使われている比較例3と同等以上の端面への耐衝撃性を、半分の板厚0.5mmで実現できている。
ガラスプレートGPはできる限り薄い方がよい。なぜなら、ガラスプレートGPで支持された半導体ウエハSW(厚さ30μmから50μm)も、ガラスプレートGPの要らない半導体ウエハSW(厚さ50μm以上)も、半導体製造装置上では同じ条件で処理されることになる。ガラスプレートGPができる限り薄いと半導体ウエハSW側の厚み制限が緩和され自由度が増えるからである。その意味での厚み上限もほぼ1.1mmに相当する。
ガラスプレートGPが0.3mmより薄くては、ウエハ支持ガラスとして剛性を保つことができず半導体ウエハを安定的に支持できなかった。したがってガラス板の厚みは、0.3mm以上1.1mm以下であることが望ましく、0.5mm以上1.0mm以下であればさらに望ましい。
0.3mm厚のガラスプレートGPが水平方向に支持された際にでもこのガラスプレートGPが自重で曲がることはない。50μm厚さの半導体ウエハSWはたわんでしまうが、この半導体ウエハSWを0.3mm厚のガラスプレートGPに接着した場合であっても、0.3mm厚のガラスプレートGPは50μm厚さの半導体ウエハSWを水平に支持することができる。
なお、特開2005−057046号公報又は特開2006−156633号公報などで使用されるガラスプレートGPの厚みは0.625mm、0.725mm、0.825mm、1.000mmの4種である。そのため、本実施例1などの厚さ0.5mmのガラスプレートGPを使用すれば、端面への耐衝撃性以外に、軽量化、耐久性の向上、高硬度化、可撓性の向上も図ることができる。
<<ガラスプレートGPの圧縮応力層の測定方法>>
図4は、ガラスプレートGPの圧縮応力層厚みの測定方法を示した図である。
圧縮応力層厚みの測定(その1)
化学強化による圧縮応力がガラスプレートGP内に存在すると、光弾性効果により圧縮応力部分は複屈折性を示す。直交させた偏光板の間にガラスプレートGPを載置させて、そのガラスプレートGPの向きを調整すると、暗視野中にくっきりと明るい領域が見えてくる。この明るい領域の幅を計測することで圧縮応力層厚みを測定することができる。圧縮応力層が比較的深く入った実施例1ないし実施例4(ガラスNo.1又はガラスNo.2)については、本方法で圧縮応力層厚みを測定した。圧縮応力層が比較的浅く入った実施例5(ガラスNo.3)は、明るい領域が薄すぎて厚みを正しく計測できなかった。
図4(a)に示した外径201mmのガラスプレートGPは、まず、幅2mmのライン42A及びライン42Bに沿ってダイヤモンドカッターで切断した。その後、切断した帯状ガラス片の中央部付近を幅20mmでライン43A及びライン43Bに沿って、同じくダイヤモンドカッターで切断した。切り出したガラス片はライン42A及びライン42Bに沿って切断した切断面を研削研磨した。ガラス片はその研磨後厚み約0.3mmに仕上げ上下面が研磨面の研磨ガラス片44へと変身させた。
図4(b)に示した透明なスライドガラス47の上に、研磨ガラス片44の一方の研磨面を接触させ、ホットメルト接着剤で固定した。余分なホットメルト接着剤を取り除いた後は、ガラス片44の研磨面全体がスライドガラス47を通し透明で光透過することを確認した。ガラス片44の面45Bは図4(a)でのライン43Bに沿って切断した切断面であり、面45Aはライン43Aに沿って切断した切断面である。面49は図4(a)に示したガラスプレートGPの上面に相当し、面48はガラスプレートGPの下面に相当する。
図4(c)に示したそれぞれ偏光面を直交させた偏光板51Aと偏光板51Bの間に、研磨ガラス片44を接着したスライドガラス47が挿入される。そして偏光板51Bの下部に配置された光源53が白色光を照射する。研磨ガラス片44を接着したスライドガラス47は、偏光板51Aの上部の方向から観察される。観察された研磨ガラス片44の結果概略を図4(d)に示す。直交させた偏光板51A及び51Bを通して上部の方向から観察すると、圧縮応力層が存在しないガラス片では真っ暗で何も見えない。しかし、イオン交換による化学強化処理を施し圧縮応力層が存在すると明るく観察できる。研磨ガラス片44は、面48及び面49に沿って明るく透過した領域44T1及び領域44T2が観察できるので、これら領域44T1及び領域44T2は圧縮応力層である。また中心領域44T3も少し明るく観察できた。この領域中心領域44T3は引っ張り応力が発生している領域である。また、不透過領域44B1及び領域44B2は真っ暗な線として存在した。この領域はちょうど圧縮応力と引っ張り応力が打ち消しあって、応力の発生が抑えられた場所で、直交偏光板の間では真っ暗な領域として観察できる。
測長機能を付属させた顕微鏡55を使って、明るい部分の厚みをミクロン単位で計測することで、圧縮応力層の深さを測定することができる。面48及び面49はガラスプレートGPの上下面に相当し、硝酸塩融液によるイオン交換の最前面でもある。面48及び面49から、不透過領域44B1及び領域44B2までの厚みDEをミクロン単位で計測した。但し、実施例6は、圧縮応力層の厚みが厚いため圧縮応力と引っ張り応力が打ち消しあった不透過領域44B1及び領域44B2とのコントラストが低く正確に測定することができなかった。そのため、以下の測定方法で測定した。
圧縮応力層厚みの測定(その2)
ガラスのような透明物体を直線偏光光が通過するとき、その物体に生じている力(本実施例では圧縮応力)によって光が影響を受ける。この影響を測定することで物体の内部に働く力を解析することできる。本法は光弾性解析法と呼ばれておりJIS規格(R−3222)として一般化されており表面応力計として市販されている。圧縮応力層が比較的浅く入った実施例5(ガラスNo.3)は、光弾性解析法を使って圧縮応力層の厚みを測定した。図4(a)に示すガラスプレートGPをそのまま用いた。なお、本方法を使って、圧縮応力層が比較的深く入った実施例1ないし実施例4(ガラスNo.1又はガラスNo.2)の計測を試みたが、解析に必要な像を検出することができず、計測自体ができなかった。
<<ガラスプレートGPの端面への耐衝撃性の測定方法>>
半導体ウエハSWを支持するガラスプレートGPの直径は、支持される半導体ウエハSWの直径よりも直径が少し大きい。その理由は、半導体ウエハSW自身が受ける衝撃をガラスプレートGPが身代わりとなって受けるためである。その衝撃とは、位置決め時の不図示の位置決めピンとの衝突であったり不図示の搬送ハンドとの衝突であったり、ガラスプレートGPの洗浄であったり又は不図示のストッカの壁面との衝突である。このようにガラスプレートGPへの搬送等による主な衝撃はガラスプレートGPの端部に加わる衝撃となるため、ガラスプレートGPを水平に置きガラスプレートGPの中心に向かって硬球を落下させる硬球落下強度試験による衝撃とは力の加わる方向が異なる。また、この硬球落下強度試験では、搬送等に生じるガラスプレートGPの端面への衝撃に対する耐性を評価することが困難であった。
今回の採用する耐衝撃度測定における端部への衝撃は、上記硬球落下強度試験に代わって、ガラスプレートGPの端部に搬送時などと同様の衝撃を加えその耐衝撃性を評価するものである。
図5Aは、ガラスプレートGPの端面への耐衝撃性の測定に用いる耐衝撃性測定器70を示した図で、(a)はその側面図であり(b)はその正面図である。また図5Bは耐衝撃性測定器70のガラスプレートGP付近の拡大図である。図5Cは耐衝撃性測定の際の耐衝撃性測定器70の使われ方を示した図である。
図5Aに示すように、耐衝撃性測定器70は910(Z方向)×450(X方向)×18(Y方向)mmのレッドオーク材からなるベース73とそのベース73に取り付けられたガラス受け土台74とを有する。ガラス受け土台74はガラスプレートGPを垂直に立てる土台であり、ガラスプレートGPを垂直に軽く支えるゴム円板78をベース73上に設置している。本実施形態では直径201mmのガラスプレートGPを用いたので、直径100mmのゴム円板78を用いた。
ベース73は、4つの固定ガイド支持金具77が取り付けられており、その固定ガイド支持金具77によりベース73に平行に2つの固定ガイド部材76が取り付けられている。2つの固定ガイド部材76は溝を有する2つの移動ガイド部材75に嵌まり込むようになっている。おもり板71はレッドオーク材からなる600(Z方向)×140(X方向)×18(Y方向)mmの大きさであり約1.5kgの重さである。おもり71は、その両側面にそれぞれ移動ガイド部材75を取り付けてある。このため、おもり板71は移動ガイド部材75及び固定ガイド部材76を介してベース73に平行に滑らせることができる。そしてゴム円板78の厚さを調整してちょうどおもり板71の厚さ中央付近にガラスプレートGPが衝突するようにしている。
図5Bに示すように、おもり板71を上部から落下させてガラスプレートGPに最初に衝突するAP地点(図5内に示す。)とする。おもり板71のAP地点では、耐衝撃度試験の落下ごとにガラスプレートGPとおもり板71とが衝突する。このおもり板71がAP地点でガラスプレートGPの端面の形状にそった陥没が発生しないように、0.2(Z方向)×60(X方向)×15(Y方向)mmのおもり板用ステンレス板82を配置した。ガラスプレートGPのAP地点がおもり板用ステンレス板82に直接当たると、衝撃で割れるよりもまずキズが入り、そのキズを起点としてそのおもり板71の重み又は圧縮力で割れるおそれがある。そこでおもり板用ステンレス板82上に5(Z方向)×20(X方向)×10(Y方向)mmの発泡ウレタン83を貼り付けた。発泡ウレタン83の役目は緩衝材として機能する。なおおもり板71、おもり板用ステンレス板82及び発泡ウレタン83を合計して1.5kgとした。
ガラス受け土台74とガラスプレートGPが接するBP地点でもガラスプレートGPの端面の形状にそった陥没が発生しないように、0.2(Z方向)×60(X方向)×15(Y方向)mmのガラス受け用ステンレス板84を配置した。また、ガラス受け板用ステンレス板84の上に接着用の塩化ビニル製粘着テープ85を貼り付けた。塩化ビニル製粘着テープ85の役目は緩衝材としての機能の他ガラスプレートGPの滑り止めの役目も担わした。
また、図5A及び図5Bに示すように、おもり板71がAP地点の高さから下方10mmで止まるようにベース73上にストッパー81を配置した。これは、衝撃力だけでガラスプレートGPの耐衝撃性を確認するためである。すなわち、おもり板71、おもり板用ステンレス板82及び発泡ウレタン83を合計して1.5kgあるため、衝撃力だけでなくガラスプレートGPに対する圧縮力だけでガラスプレートGPが割れてしてしまうおそれがある。実際に、0.1mm厚さのガラスプレートGPではおもり板71をそっと置いただけで0.1mm厚さのガラスプレートGPは割れてしまった。そこでストッパー81を配置しておもり板71による衝撃力だけがガラスプレートGPに加わるようにしている。
図5Cに示すように耐衝撃性測定器70が傾き角θに傾いた状態でガラスプレートGPの耐衝撃性の測定を行った。ガラスプレートGPを安定にゴム円板78に保持するため、傾き角θは約6〜7°の角度とした。ガラスプレートGPを所定の位置に静止させ、おもり板71を所定の落下距離FLにまで持ち上げて自然落下させた。落下距離は1cm単位で計測した。上述したように耐衝撃度の測定に際して、測定バラツキも考慮して同一条件で作製したガラスプレートGPは最低3枚以上を用いて同じ落下距離の耐衝撃性を測定した。また、衝撃を与えるサンプルであるガラスプレートGPは1枚に付き1度の衝撃のみを与えた。ところで、ガラスプレートGPを透明ポリエチレン袋に入れて測定するとよい。衝撃によりガラスプレートGPが粉々に割れても透明ポリエチレン袋に入っていれば飛散しないからである。また発泡ウレタン83は衝突ごとに亀裂が入ってしまったので衝突ごとに交換して貼り直した。塩化ビニル製粘着テープ85は発泡ウレタン83ほど頻繁に亀裂が入らなかったので必要に応じて交換した。
<実施形態2:コーティング強化されたガラスプレートGP>
実施形態1では、化学強化されたガラスプレートGPを説明した。化学強化されたガラスプレートGP以外に、コーティング強化されたガラスプレートGPであっても端面が耐衝撃性を有するガラスプレートGPを提供することができる。以下にこの条件を満たすコーティング強化されたガラスプレートGPについて説明する。
<ガラス基材>
コーティング強化されたガラスプレートGPに用いるガラス基材は上記実施形態1と同様のガラスNo.1、ガラスNo.2、ガラスNo.3を使用した。化学強化をする必要がないので、0.5mm厚又は1.0mm厚の低アルカリガラスもしくは無アルカリガラスであってもよい。実施形態1と同様に、0.3mm厚から1.1mm厚のガラス基材がウエハに接着して支持するガラス基材として好ましい。また、ガラス基材の端面処理は算術平均粗さRaが400nm以下に加工する。
<コーティング剤>
ガラス基材の端面の耐衝撃性を向上させるためのコーティング剤は、ポリエーテルサルホンを有し、このコーティング剤の溶媒が芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、エステル類、ケトン類、ニトリル類、スルホキシド類のいずれかを含む。溶媒は、ポリエーテルサルホンをコーティング剤中で安定なものとするために、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、エステル類、ケトン類、ニトリル類、スルホキシド類のいずれかに属する化学種から2種以上選択する。
ガラス基材へコーティング剤を塗布する方法は、ディップコート、フローコート、スピンコート、ロールコート、スプレーコート、スクリーン印刷、フレキソ印刷等の方法によって行うことができる。コーティング剤をガラス基材に塗布した後、乾燥工程、250℃〜400℃の焼成工程を経てコーティング強化されたガラスプレートGPを得ることができる。
コーティング膜の膜厚は、2μm及至10μm、より好ましくは4μm及至8μmが好ましい。コーティング膜の膜厚が2μm未満では、ガラス基材の端面の耐衝撃性向上の効果が小さく、コーティング膜の膜厚を10μm超では、端面の耐衝撃性向上の効果は小さいからである。コーティング膜の形成は基材の片面又は両面であってもよいがガラス基材の端面にはコーティング膜が形成されていることが好ましい。コーティングにより、化学強化処理と同等な圧縮応力層が形成され耐衝撃性が増すからである。
本実施例では、200mm半導体ウエハSWを前提に説明してきたが、300mm半導体ウエハSW又は次世代の450mm半導体ウエハSWに対しても本発明のウエハ支持ガラスを適用できる。
また、本実施形態では紫外線照射により粘着性が低下する粘着剤を有する両面接着フィルムADを使用した例を挙げた。両面接着フィルムADには、100°Cから250°Cの加熱により接着層の粘着性が低下する粘着剤を有するものもある。ウエハ支持ガラスはプラスチック素材と異なり耐熱性にも優れている。この点プラスチック製のウエハ支持部材は耐熱温度が低いため、材質により約100℃以上では使用できないものもある。このため、加熱により接着層の粘着性を低下させる両面接着フィルムを使った半導体ウエハSWの研削等においても、本発明のウエハ支持ガラスを適用することができる。
また、ウエハ支持ガラスは、プラスチック製のウエハ支持部材とは異なり、ガラスとシリコンウエハの膨張係数は通常同じ範囲であるため、温度が変化した場合でも、膨張差による影響を受けにくく、プラスチック製のウエハ支持部材のように温度の変化に対して反りが発生するおそれがほとんどない。
半導体回路が形成された半導体ウエハSWにガラスプレートGPを貼り付けてからガラスプレートGPを剥離するまでのフローチャートである。 (a)は半導体ウエハSWとガラスプレートGPとを接着・固定した状態である。 (b)は研削の工程を示している。 (c)は研削された半導体ウエハSWの断面図である。 (d)はガラス用剥離テープDTが接着されたガラスプレートGPを示した図である。 (e)は半導体ウエハSWが真空チャックに装着された状態を示す断面図である。 (f)はガラスプレートGPの一端から剥離されて行く途中の状態を示した図である。 (g)は両面接着フィルムADを半導体ウエハSWから剥離する状態である。 (a)は、ガラスプレートGPを示した斜視図である。 (b)及び(c)はそのガラスプレートGPの端面の拡大図である。 ガラスプレートGPの圧縮応力層厚みの測定方法を示した図である。 耐衝撃性測定器70を示した図である。 耐衝撃性測定器70のガラスプレートGP付近の拡大図である。 耐衝撃性測定の際の耐衝撃性測定器70の使われ方を示した図である。
符号の説明
AD … 両面接着フィルム
DE … 厚み
DD … 厚さ
DT … ガラス用剥離テープ
GP … ガラスプレート(GP1,GP2 … 上下面)
L … 外径
PE … 端面(周縁部)
SW … 半導体ウエハ
31 … 研削装置(ダイヤモンドグラインダー)
35 … 真空チャック
42A,42B,43A,43B … ライン
44 … 研磨ガラス片
44T1,44T2,44T3 … 領域
44B1,44B2 … 不透過領域
47 … スライドガラス
45A,45B,49,48 … 面
51A,51B … 偏光板
53 … 光源
70 … 耐衝撃性測定器
71 … おもり板
73 … ベース
74 … ガラス受け土台
75 … 移動動ガイド部材
76 … 固定ガイド部材
78 … ゴム円板
81 … ストッパー
82 … おもり板用ステンレス板
83 … 発泡ウレタン
84 … ガラス受け板用ステンレス板
85 … 塩化ビニル製粘着テープ

Claims (8)

  1. 所定直径を有する半導体ウエハに接着してこの半導体ウエハを支持する前記所定直径よりも大きな直径を有するウエハ支持ガラスであって、前記ウエハ支持ガラスの少なくとも端面に耐衝撃性を備えたことと特徴とするウエハ支持ガラス。
  2. 前記ウエハ支持ガラスは、化学強化処理による圧縮応力層を備えることを特徴とする請求項1に記載のウエハ支持ガラス。
  3. 前記ウエハ支持ガラスは、NaO又はLiOを含むことを特徴とする請求項2に記載のウエハ支持ガラス。
  4. 前記ウエハ支持ガラスは、コーティング処理によるコーティング層を備えることを特徴とする請求項1に記載のウエハ支持ガラス。
  5. 前記圧縮応力層の深さは15μm以上220μm以内であることを特徴とする請求項2ないし請求項3のいずれか一項に記載のウエハ支持ガラス。
  6. 前記ウエハ支持ガラスは、第1面、第2面及び端面を有し、
    前記端面は面取り部又は前記第1面と第2面とを結ぶ曲面が形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載のウエハ支持ガラス。
  7. 前記ウエハ支持ガラスの端面は、算術平均粗さが440nm以下であることを特徴とする請求項6に記載のウエハ支持ガラス。
  8. 前記ウエハ支持ガラスは厚さが0.3mm以上1.1mm以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載のウエハ支持ガラス。
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