本発明の磁界及び近接場光発生素子は、透光性及び絶縁性を有する基板と、前記基板に積層されており、一対の電極部、及び、前記一対の電極部を電気的に接続すると共に光源から光が照射されることによって近接場光を発生する狭窄部が形成された非透光性を有する導体と、前記光源から前記狭窄部に照射されて前記導体の表面にスポット領域を形成する光が前記導体を越えて前記光源とは反対側に達するのを阻止する遮光手段とを備えている。
本発明の磁界及び近接場光発生素子によると、電流経路が導体に設けられた狭窄部で狭窄され、導体の狭窄部近傍に強い磁界が発生する。したがって、特許文献2のようにヨーク延長部による所望の位置での磁界発生を行わなくてよく、ヨーク延長部を用いた場合のような磁界の減衰位置での磁界発生を行わなくて済み、減衰または遅延が少ない磁界及び近接場光発生素子を提供できる。また、導体に電流を流すと狭窄部の近傍に磁界が発生し、狭窄部に光を照射すると狭窄部の近傍に近接場光が発生するので、磁界及び近接場をどちらも狭窄部近傍にのみ発生させることができる。また、光アシスト磁気記録技術は、熱揺らぎに強い高保磁力を有する光アシスト磁気記録媒体に対して磁気記録を行う技術であり、光アシスト磁気記録媒体の表面に光を照射し、局所的に光アシスト磁気記録媒体の温度を上げて光アシスト磁気記録媒体の保磁力を低下させ、磁化反転させる技術である。もし、所望の領域以外に伝播光である光が照射されてしまうと、保磁力が低下した当該領域は、光アシスト磁気記録媒体自身が作る磁界等を感じ、磁化反転してしまうおそれがある。しかしながら、本発明によれば、狭窄部に対して、光源から出射された伝播光である光のスポット領域が導体内に収まらない比較的大きい場合であっても、その光が導体を越えて光源とは反対側に到達するのを遮光手段が阻止する。そのため、光アシスト磁気記録媒体には伝播光である光源からの光が直接照射されず、狭窄部において発生した近接場光が照射される所望の領域以外の領域を昇温させるおそれがない。この結果、所望の領域以外において磁化反転が生じにくくなり、情報を正しく保持できる。本明細書における光のスポット領域とは、光が照射される領域において、ピーク強度に対して半値以上の強度となる領域のことをいう。
このように、本発明の磁界及び近接場光発生素子によると、近接場光による高密度磁気記録が可能となり、かつ、近接場光以外の光が光アシスト磁気記録媒体に照射されないため、光によって磁気情報が書き換えられなくなり、情報を正しく保持することが可能となる。このことにより、簡単な構成で高周波磁気記録媒体に適した磁界及び近接場光発生素子を提供することができる。
好ましくは、前記遮光手段が、前記狭窄部との間にスリットが形成されるように前記狭窄部から離隔して前記基板に積層された遮光材を含んでおり、前記光源から前記狭窄部に照射された光の偏光方向への前記スリットの幅が、前記光の波長よりも小さい。
光源からの伝播光を遮光するために、単純に狭窄部の幅を大きくすると、発生する磁界の大きさが小さくなってしまう。しかし、遮光材と狭窄部との間に上記のように幅の狭いスリットを形成することによって、発生磁界の大きさを損なうことなく遮光を行うことができる。なお、遮光材は、狭窄部以外の場所において導体と接触していてもよい。
好ましくは、前記遮光手段が、前記狭窄部を周縁の一部とする開口部を前記導体と共に形成する、前記基板に積層された第1遮光材を含んでおり、前記光源から前記狭窄部に照射された光の偏光方向への前記開口部の幅が、当該光の波長よりも小さい。
光源からの伝播光を遮光するために、単純に狭窄部の幅を大きくすると、発生する磁界の大きさが小さくなってしまう。しかし、第1遮光材と狭窄部との間に上記のように幅の狭い開口部を形成することによって、発生磁界の大きさを損なうことなく遮光を行うことができる。
これにより、開口部を挟む並列回路が形成されず、電流が第1遮光材を通過せずに狭窄部だけを通過するようになる。そのため、狭窄部を通過する電流が形成する磁界と開口部付近において反対方向となる磁界が、第1遮光材を電流が通過することに起因して形成されることがなくなる。したがって、効率的に磁界を発生させることができる。
このようにすることで、狭窄部への光照射を外部から行う必要がなく、半導体レーザ素子の出射部と狭窄部との間の距離が変動しないため、この距離を一定に保つためのサーボ機構が必要ではなくなる。したがって、よりコンパクトな磁界及び近接場光発生素子を提供することが可能となる。
また、本発明の情報記録再生装置は、上述した磁界及び近接場光発生素子と、光アシスト磁気記録媒体と、前記基板上に設けられており、前記光アシスト磁気記録媒体に記録された情報の再生を行う再生素子と、を備えている。
このようにすることで、1つの基板上に、磁界及び近接場光発生素子と再生素子とが設けられることになって、高密度での磁気記録と再生を行うことが可能となる。したがって、コンパクトな情報記録再生装置を提供することが可能となる。
別の観点において、本発明の情報記録再生装置は、上述した磁界及び近接場光発生素子と、光アシスト磁気記録媒体と、前記基板とは異なる基板上に設けられており、前記光アシスト磁気記録媒体に記録された情報の再生を行う再生素子と、を備えている。
<第1の実施の形態>
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る磁界及び近接場光発生素子を含む情報記録再生装置の概略図である。図1に示す情報記録再生装置は、レーザ光2を出射する半導体レーザ素子である光源1と、円盤形状を有する光アシスト磁気記録媒体6と、レーザ光2を集光する集光レンズ3と、光アシスト磁気記録媒体6への磁気情報の記録を行う磁界及び近接場光発生素子(記録素子)4とを有している。光アシスト磁気記録媒体6は、図示しない駆動機構に駆動されることよって、その軸を中心として回転する。磁界及び近接場光発生素子4は、サスペンション5の先端に固定されている。サスペンション5は、その先端が光アシスト磁気記録媒体6の径方向に変位するように、図示しない駆動機構によって駆動される。なお、本実施の形態において、光アシスト磁気記録媒体6に記録された磁気情報の再生を行う手段についての説明を省略する。
図2は、磁界及び近接場光発生素子4の斜視図である。図3は、磁界及び近接場光発生素子4を図2の紙面左側から見た側面図である。磁界及び近接場光発生素子4は、透光性及び絶縁性を有する石英からなる基板41と、基板41に積層された金からなる非透光性の導体膜43とを含んでいる。導体膜43は、一対の電極部43a、43bと、これら一対の電極部43a、43bを電気的に接続する狭窄部43cとから構成されている。一対の電極部43a、43bは、それぞれ、光アシスト磁気記録媒体6に面する基板41の主面と、側面との2面に跨って形成されている。狭窄部43cは、細長い矩形形状を有しており、基板41の主面において、一対の電極部43a、43bの端部を互いに結合している。狭窄部43cの幅は、各電極部43a、43bの幅よりも狭い。
図4は、主面における導体膜43付近の拡大平面図である。狭窄部43cの幅w1は、300nm程度である。基板41の主面には、ABS面(Air Bearing Surface)が設けられている。ABS面は、光アシスト磁気記録媒体6の回転時に発生する空力を利用して、基板41が、光アシスト磁気記録媒体6から十数nm程度の距離を保持して浮上できるように設計・形成された面である。
図4に示すように、基板41の主面には、狭窄部43cを含む導体膜43との間にスリット46が形成されるように、導体膜43から離隔した金からなる長方形の遮光材45が積層されている。スリット46の幅w2は100nmである。スリット46を隔てて離隔した導体膜43と遮光材45とは互いに接触しておらず、導体膜43に電流が流されても、遮光材45には電流が流れない。
光源1からは、波長650nmのレーザ光2が出射される。レーザ光2は、NA0.6の集光レンズ3によって集光され、サスペンション5の先端に設けられた磁界及び近接場光発生素子4の基板41を透過し、狭窄部43cに照射される。レーザ光2は、狭窄部43cと遮光材45とを結ぶ方向、つまり図4において紙面上下方向に直線偏光している。図1に示す情報記録再生装置は、光アシスト磁気記録媒体6の回転時の面ブレ等による、光源1と狭窄部43cとの距離の変動を防ぐために、狭窄部43cからの反射光を検出してフィードバックを行う、フォーカスサーボ機構を有している。
一対の電極部43a、43bの側面領域がそれぞれプラス極及びマイナス極となるように配線が接続されると、狭窄部43cを通過して電極部43aから電極部43bに向かって電流が流れる。そのとき、電流方向と直交する方向に沿った断面積が一対の電極部43a、43bにおけるよりも小さい狭窄部43c近傍には、大きな磁界が発生する。特に本実施の形態では、狭窄部43cの幅w1が300nm程度と非常に小さいので、狭窄部43c近傍に非常に大きな磁界が発生する。狭窄部43c近傍に強い磁界が形成される理由は、アンペールの法則によって説明することができる。電流が作る磁場は、流れる電流の大きさをI、電流の中心からの距離rの点での磁界の大きさをHrとすると、Hr=I/2πrで概算できる。ここで、狭窄部43cの幅が300nmであるときの導体端から50nm離れた点での磁界の大きさをH1、狭窄部でない幅5000nmの導体端から50nm離れた点での磁界の大きさをH2とすると、H1/H2=5050/350=14.4である。よって、幅300nmの狭窄部43cの導体端から50nmの位置に発生する磁界の大きさは、幅5000nmの導体端から50nm離れた点と比較して、14.4倍と見積もることができる。このような理由から、狭窄部43c近傍に大きな磁界が局所的に発生することがわかる。
狭窄部43c近傍に発生する磁界の方向は右ネジの法則によって説明することができる。例えば、電流が狭窄部43cを図4の紙面左側から右側に流れる場合、遮光材45及びスリット46には、紙面奥から手前に向かう方向の磁界が発生し、これが光アシスト磁気記録媒体6に対する記録磁界となる。これとは逆に、電流が狭窄部43cを図4の紙面右側から左側に流れる場合、遮光材45及びスリット46には、紙面手前から奥に向かう方向の磁界が発生する。このように、電流経路が導体膜43に設けられた狭窄部43cで狭窄され、強い磁界が狭窄部43c近傍に発生するので、従来技術のようにヨーク延長部による所望の位置での磁界発生を行わなくてよく、ヨーク延長部を用いた場合のような磁界の減衰位置での磁界発生を行わなくて済み、磁界の減衰または遅延を少なくすることができる。
図4に示すように、光源1から出射されたレーザ光2は、導体膜43の表面、つまり基板41に当接する面に、円形のスポット領域48を形成する。スポット領域48の直径は約600nmである。スポット領域48は、スリット46を跨いで狭窄部43c及び遮光材45上に形成される。狭窄部43cにレーザ光2が照射されることによって、狭窄部43cにおいて、レーザ光2の回折限界よりも小さいスポット径を有する近接場光が発生する。ここで言う近接場光は、具体的には局所プラズモンまたは表面プラズモン、エバネッセント光等であり、レーザ光2の波長よりも小さなサイズの狭窄部が存在する場合に、狭窄部において電界の集中が起こり、狭窄部の表面極近傍において発生するものである。狭窄部43cにおける導体膜43の膜厚は200nmであり、近接場光が効率よく発生するようにレーザ光2の波長よりも小さい。
このように、磁界及び近接場光発生素子4は、狭窄部43c近傍にて近接場光及び非常に大きい磁界を発生させることが可能である。したがって、近接場光を用いて光アシスト磁気記録媒体6への高密度磁気記録が可能となる。
遮光材45と狭窄部43cとの間に形成されたスリット46の幅方向は、スポット領域48を形成するレーザ光2の偏光方向と一致している。そして、スリット46の幅w2は、上述したように100nmとなっており、レーザ光2の波長650nmよりも小さい。したがって、スポット領域48を形成するレーザ光2はスリット46を透過することができない。また、狭窄部43c及び遮光材45は、共に非透光性を有しているので、レーザ光2を透過させない。このように、磁界及び近接場光発生素子4において、スポット領域48を形成するレーザ光2は、スポット領域48の全域において遮光される。したがって、光アシスト磁気記録媒体6には近接場光のみが照射され、レーザ光2は照射されない。
光アシスト磁気記録時には、狭窄部43cにおいて磁界及び近接場光が発生し、光アシスト磁気記録媒体6においてキュリー点以上に昇温された領域が狭窄部43cにて発生した磁界の方向に磁化される。このとき、レーザ光2がスポット領域48の全域において遮光されているため、伝播光であるレーザ光2が直接光アシスト磁気記録媒体6に照射されない。したがって、光アシスト磁気記録媒体6の所望の領域以外の領域が昇温するおそれがない。つまり、所望の領域以外の領域において、誤って、磁気情報が書き換えられる可能性が小さくなる。この結果、所望の領域以外において磁化反転が生じにくくなり、情報を正しく保持できる。よって、本実施の形態に係る磁界及び近接場光発生素子4は、簡単な構成で高周波磁気記録媒体に適したものであり、誤って磁気記録情報を書き換えてしまう可能性も低い。
一例として、磁界変調方式による記録について説明する。光アシスト磁気記録媒体6がキュリー点以上に昇温されるように、連続的にレーザ光2を狭窄部43cに照射しながら、線速が10m/sとなるように光アシスト磁気記録媒体6を回転させ、狭窄部43cに流れる電流の方向が20ナノ秒周期で変わるように、導体43に電流を流す場合を考える。この場合、狭窄部43c近傍に近接場光が発生し、光アシスト磁気記録媒体6が局所的に熱せられる一方で、狭窄部43c近傍に発生する磁界の方向が20ナノ秒周期で変わる。その結果、長さ約100nmの三日月形状の磁気ビットが形成される。また、別の例として、光変調方式による記録について説明する。この場合には、電流の流れる方向を1方向に固定して、光源1を点滅させる。線速が10m/s、光源1の点滅周期が20ナノ秒である場合、狭窄部43c近傍に一定方向の磁界が発生する状態で、20ナノ秒周期で光アシスト磁気記録媒体6が局所的に熱せられる。その結果、長さ約100nmの円形に近い磁気ビットが形成される。これらは単一磁気記録パターンを形成する例であるが、変調方式に準じたランダムパターンを形成することも可能である。
基板41上に導体膜43を形成するには、例えば、リソグラフィー技術とリフトオフ法を組み合わせたプロセスを利用すればよい。リソグラフィー法としては、例えば、電子線リソグラフィー法やフォトリソグラフィー法を用いることができる。導体膜43の材料としては、非透光性を有し、電気抵抗が小さく、近接場光発生効率のよい非磁性材料が好ましく、例えば、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、タンタル(Ta)、白金(Pt)、銅(Cu)、タングステン(W)やそれらの混合物を用いることができる。
遮光材45としては、例えば、銀、アルミニウム、タンタル、白金、銅、タングステン、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)といった金属、誘電体、または、これらの混合物を用いることができる。遮光材45は、導体膜43と同様の材料であってもよいし、導体膜43とは異なる材料であってもよい。また、遮光材45の平面形状は、長方形に限られるものではなく、レーザ光2をスポット領域48の全域において遮光できるものであれば、例えば、円形や多角形などの形状であってもよい。
基板41については、レーザ光2を透過する絶縁物質であればよく、石英基板以外に、例えば、ガラス基板、亜鉛酸化物(ZnO)基板、透明プラスチック基板を用いることができる。
<第2の実施の形態>
次に、本発明の第2の実施の形態に係る磁界及び近接場光発生素子及びこれを含む情報記録再生装置について説明する。なお、情報記録再生装置の構成は、図1に示したものと同じであるので、ここでは同じ符号を用いることとしてその説明を省略する。ただし、レーザ光2の波長及び集光レンズ3のNAは第1の実施の形態と同様であるとは限らない。
本実施の形態に係る磁界及び近接場光発生素子は、透光性及び絶縁性を有する基板(図2に示す符号41と同じもの)と、基板に積層された白金からなる非透光性の導体膜とを含んでいる。導体膜は、図2に示すのと同様に、基板41の主面と側面との2面に跨って形成されている。図5は、主面における導体膜53付近の拡大平面図である。導体膜53は、一対の電極部53a、53bと、これら一対の電極部53a、53bを電気的に接続する狭窄部53cとから構成されている。狭窄部53cの幅は、各電極部53a、53bの幅よりも狭い。狭窄部53cの幅w3は、300nm程度である。狭窄部53cは、基板41の主面において、一対の電極部53a、53bの端部を互いに結合している。なお、基板の主面には、第1の実施の形態と同様のABS面が設けられている。
図5に示すように、基板の主面には、電極部53aと電極部53bとの間に挟まされるように導体膜53と接触することによって、狭窄部53cを周縁の一部とする開口部56を導体膜53と共に形成する遮光材55が積層されている。開口部56の幅w4(狭窄部53cと遮光材55とを結ぶ方向への長さ)は100nmである。
遮光材55は、真性半導体であるゲルマニウムからなる。すなわち、遮光材55は絶縁性を有しているので、導体膜53に電流が流されても、遮光材55には電流が流れない。
光源1から出射された波長780nmのレーザ光2はNA0.6の集光レンズ3によって集光され、基板を透過し、狭窄部53cに照射される。レーザ光2は、狭窄部53cと遮光材55とを結ぶ方向、つまり図5において紙面上下方向に直線偏光している。
狭窄部53cを通過して電極部53aから電極部53bに向かって電流を流したとき、電流方向と直交する方向に沿った断面積が一対の電極部53a、53bにおけるよりも小さい狭窄部53c近傍には、大きな磁界が発生する。特に本実施の形態では、狭窄部53cの幅w3が300nm程度と非常に小さいので、狭窄部53c近傍に非常に大きな磁界が発生する。
狭窄部53c近傍に発生する磁界の方向は右ネジの法則によって説明することができる。例えば、電流が狭窄部53cを図5の紙面左側から右側に流れる場合、開口部56には、紙面手前から奥に向かう方向の磁界が発生し、これが光アシスト磁気記録媒体6に対する記録磁界となる。これとは逆に、電流が狭窄部53cを図5の紙面右側から左側に流れる場合、開口部56には、紙面奥から手前に向かう方向の磁界が発生する。
図5に示すように、光源1から出射された波長780nmのレーザ光2は、導体膜53の表面、つまり基板に当接する面に、円形のスポット領域58を形成する。スポット領域58の直径は約700nmである。スポット領域58は、開口部56を跨いで狭窄部53c及び遮光材55上に形成される。狭窄部53cにレーザ光2が照射されることによって、狭窄部53cにおいて、レーザ光2の回折限界よりも小さいスポット径を有する近接場光が発生する。狭窄部53cにおける導体膜53の膜厚は250nmであり、近接場光が効率よく発生するようにレーザ光2の波長よりも小さい。
このように、本実施の形態に係る磁界及び近接場光発生素子は、狭窄部53c近傍にて近接場光及び非常に大きい磁界を発生させることが可能である。したがって、近接場光を用いて光アシスト磁気記録媒体6への高密度磁気記録が可能となる。
導体膜53と遮光材55とによって画定された開口部56の幅方向は、スポット領域58を形成するレーザ光2の偏光方向と一致している。そして、開口部56の幅w4は、上述したように100nmとなっており、レーザ光2の波長780nmよりも小さい。したがって、スポット領域58を形成するレーザ光2は開口部56を透過することができない。また、狭窄部53c及び遮光材55は、共に非透光性を有しているので、レーザ光2を透過させない。なお、導体膜53及び遮光材55は、スポット領域58に比べて十分に大きな寸法を有しているので、スポット領域58の位置ずれに対する許容度が大きい。このように、磁界及び近接場光発生素子において、スポット領域58を形成するレーザ光2は、スポット領域58の全域において遮光される。したがって、光アシスト磁気記録媒体6には近接場光のみが照射され、レーザ光2は照射されない。
本実施の形態の磁界及び近接場光発生素子においては、狭窄部53cを有する導体膜53と絶縁性の遮光材55とが接触している。したがって、もし遮光材55が絶縁性を有していなければ、狭窄部53cと並列に遮光材55にも電流が流れ、電流経路が、狭窄部43cを流れる経路と、遮光材55を流れる経路との2経路となってしまう。この結果、右ネジの法則から、遮光材55を流れる電流は、狭窄部53cを流れる電流が発生させる磁界とは反対方向の磁界を発生させてしまうため、磁界発生の効率が悪くなってしまう。このように、磁界発生の効率の点から、遮光材55を絶縁性とすることが好ましい。ただし、遮光材55を導電性とすることも可能である。
光アシスト磁気記録時には、狭窄部53cにおいて磁界及び近接場光が発生し、光アシスト磁気記録媒体6においてキュリー点以上に昇温された領域が狭窄部53cにて発生した磁界の方向に磁化される。このとき、レーザ光2がスポット領域58の全域において遮光されているため、伝播光であるレーザ光2が直接光アシスト磁気記録媒体6に照射されない。したがって、光アシスト磁気記録媒体6の所望の領域以外の領域が昇温するおそれがない。つまり、所望の領域以外の領域において、誤って、磁気情報が書き換えられる可能性が小さくなる。この結果、所望の領域以外において磁化反転が生じにくくなり、情報を正しく保持できる。よって、本実施の形態に係る磁界及び近接場光発生素子は、簡単な構成で高周波磁気記録媒体に適したものであり、誤って磁気記録情報を書き換えてしまう可能性も低い。
なお、本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様に、磁界変調方式及び光変調方式による光アシスト磁気記録を行うことが可能であり、各種変調方式に準じたランダムパターンの形成が可能である。
狭窄部53cを有する導体膜53の形成方法や、導体膜53及び基板の材料の選定は、第1の実施の形態と同様に行うことができる。遮光材としては、光を透過させない絶縁性の材料を用いることができ、例えば、真性半導体であるシリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)や誘電体を用いることができる。
<第3の実施の形態>
次に、本発明の第3の実施の形態に係る磁界及び近接場光発生素子及びこれを含む情報記録再生装置について説明する。なお、情報記録再生装置の構成は、図1に示したものと同じであるので、ここでは同じ符号を用いることとしてその説明を省略する。ただし、レーザ光2の波長及び集光レンズ3のNAは第1の実施の形態と同様であるとは限らない。
本実施の形態に係る磁界及び近接場光発生素子は、透光性及び絶縁性を有する基板(図2に示す符号41と同じもの)と、基板に積層されたチタン(Ti)からなる非透光性の導体膜とを含んでいる。導体膜は、図2に示すのと同様に、基板41の主面と側面との2面に跨って形成されている。図6は、主面における導体膜63付近の拡大平面図である。導体膜63は、一対の電極部63a、63bと、これら一対の電極部63a、63bを電気的に接続する狭窄部63cとから構成されている。狭窄部63cの幅は、各電極部63a、63bの幅よりも狭い。狭窄部63cの幅w5は、200nm程度である。狭窄部63cは、基板41の主面において、一対の電極部63a、63bの端部を互いに結合している。なお、基板41の主面には、第1の実施の形態と同様のABS面が設けられている。
図6に示すように、基板の主面には、電極部63aと電極部63bとの間に挟まされるように導体膜63と接触することによって、狭窄部63cを周縁の一部とする開口部66を導体膜63と共に形成する遮光材65が積層されている。開口部66の幅w6(狭窄部63cと遮光材65とを結ぶ方向への長さ)は100nmである。さらに、基板の主面には、遮光材65との間に開口部66及び狭窄部63cを挟むように狭窄部63cと接触する長方形の遮光材67が積層されている。遮光材67は、真性半導体であるゲルマニウムからなる絶縁物である。
遮光材65は、真性半導体であるシリコンからなる。すなわち、遮光材65は絶縁性を有しているので、導体膜63に電流が流されても、遮光材65には電流が流れない。
光源1から出射された波長405nmのレーザ光2はNA0.85の集光レンズ3によって集光され、基板を透過し、狭窄部63cに照射される。レーザ光2は、狭窄部63cと遮光材65とを結ぶ方向、つまり図6において紙面上下方向に直線偏光している。
狭窄部63cを通過して電極部63aから電極部63bに向かって電流を流したとき、電流方向と直交する方向に沿った断面積が一対の電極部63a、63bにおけるよりも小さい狭窄部63c近傍には、大きな磁界が発生する。特に本実施の形態では、狭窄部63cの幅w5が200nm程度と非常に小さいので、狭窄部63c近傍に非常に大きな磁界が発生する。
狭窄部63c近傍に発生する磁界の方向は右ネジの法則によって説明することができる。例えば、電流が狭窄部63cを図6の紙面左側から右側に流れる場合、開口部66には、紙面手前から奥に向かう方向の磁界が発生し、これが光アシスト磁気記録媒体6に対する記録磁界となる。これとは逆に、電流が狭窄部63cを図6の紙面右側から左側に流れる場合、開口部66には、紙面奥から手前に向かう方向の磁界が発生する。
図6に示すように、光源1から出射された波長405nmのレーザ光2は、導体膜63の表面、つまり基板に当接する面に、円形のスポット領域68を形成する。スポット領域68の直径は約300nmである。スポット領域68は、開口部66を跨いで狭窄部63c、遮光材65及び遮光材67上に形成される。狭窄部63cにレーザ光2が照射されることによって、狭窄部63cにおいて、レーザ光2の回折限界よりも小さいスポット径を有する近接場光が発生する。狭窄部63cにおける導体膜63の膜厚は150nmであり、近接場光が効率よく発生するようにレーザ光2の波長よりも小さい。
このように、本実施の形態に係る磁界及び近接場光発生素子は、狭窄部63c近傍にて近接場光及び非常に大きい磁界を発生させることが可能である。したがって、近接場光を用いて光アシスト磁気記録媒体6への高密度磁気記録が可能となる。
導体膜63と遮光材65とによって画定された開口部66の幅方向は、スポット領域68を形成するレーザ光2の偏光方向と一致している。そして、開口部66の幅w6は、上述したように100nmとなっており、レーザ光2の波長405nmよりも小さい。したがって、スポット領域68を形成するレーザ光2は開口部66を透過することができない。また、狭窄部63c、遮光材65及び遮光材67は、共に非透光性を有しているので、レーザ光2を透過させない。なお、導体膜63、遮光材65、遮光材67は、スポット領域68に比べて十分に大きな寸法を有しているので、スポット領域68の位置ずれに対する許容度が大きい。このように、磁界及び近接場光発生素子において、スポット領域68を形成するレーザ光2は、スポット領域68の全域において遮光される。したがって、光アシスト磁気記録媒体6には近接場光のみが照射され、レーザ光2は照射されない。
本実施の形態の磁界及び近接場光発生素子においては、狭窄部63cを有する導体膜63と絶縁性の遮光材65とが接触している。したがって、もし遮光材65が絶縁性を有していなければ、狭窄部63cと並列に遮光材65にも電流が流れ、電流経路が、狭窄部63cを流れる経路と、遮光材65を流れる経路との2経路となってしまう。この結果、右ネジの法則から、遮光材65を流れる電流は、狭窄部63cを流れる電流が発生させる磁界とは反対方向の磁界を発生させてしまうため、磁界発生の効率が悪くなってしまう。このように、磁界発生の効率の点から、遮光材65を絶縁性とすることが好ましい。
また、本実施の形態の磁界及び近接場光発生素子においては、狭窄部63cと接触する遮光材67が絶縁性を有している。もし遮光材67が絶縁性を有していなければ、狭窄部63cと遮光材67とに電流が流れることになって、電流方向と直交する方向に沿った断面積が大きくなってしまう。その結果、狭窄部63c付近に発生する磁界が小さくなって、磁界の発生効率が低下してしまう。つまり、絶縁性の遮光材67を用いることで、遮光範囲を広げることができ、さらに、狭窄部63cを有した導体膜63と遮光材67とを接触させても、発生磁界の大きさを損なうことがなくなる。
光アシスト磁気記録時には、狭窄部63cにおいて磁界及び近接場光が発生し、光アシスト磁気記録媒体6においてキュリー点以上に昇温された領域が狭窄部63cにて発生した磁界の方向に磁化される。このとき、レーザ光2がスポット領域68の全域において遮光されているため、伝播光であるレーザ光2が直接光アシスト磁気記録媒体6に照射されない。したがって、光アシスト磁気記録媒体6の所望の領域以外の領域が昇温するおそれがない。つまり、所望の領域以外の領域において、誤って、磁気情報が書き換えられる可能性が小さくなる。この結果、所望の領域以外において磁化反転が生じにくくなり、情報を正しく保持できる。よって、本実施の形態に係る磁界及び近接場光発生素子は、簡単な構成で高周波磁気記録媒体に適したものであり、誤って磁気記録情報を書き換えてしまう可能性も低い。
なお、本実施の形態においても、第1及び第2の実施の形態と同様に、磁界変調方式及び光変調方式による光アシスト磁気記録を行うことが可能であり、各種変調方式に準じたランダムパターンの形成が可能である。
狭窄部63cを有する導体膜63の形成方法や、導体膜63及び基板の材料の選定は、第1及び第2の実施の形態と同様に行うことができる。遮光材65、67としては、光を透過させない絶縁性の材料を用いることができる。
<第4の実施の形態>
次に、本発明の第4の実施の形態に係る磁界及び近接場光発生素子及びこれを含む情報記録再生装置について説明する。本実施の形態においては、基板上に、磁界及び近接場光発生素子と共に、光源としての半導体レーザ発光素子及び光アシスト磁気記録媒体に記録された情報の再生を行う再生素子が一体形成されている。
図7は、本実施の形態に係る磁界及び近接場光発生素子を含む情報記録再生装置の概略図である。図7に示す情報記録再生装置は、半導体レーザ素子17(図9(a)参照)及び光アシスト磁気記録媒体に記録された情報の再生を行う再生素子15(図8参照)と一体形成された磁界及び近接場光発生素子(記録素子)14と、円盤形状を有する光アシスト磁気記録媒体6とを有している。光アシスト磁気記録媒体6は、図示しない駆動機構に駆動されることよって、その軸を中心として回転する。磁界及び近接場光発生素子14は、サスペンション5の先端に固定されている。サスペンション5は、その先端が光アシスト磁気記録媒体6の径方向に変位するように、図示しない駆動機構によって駆動される。
図8は、磁界及び近接場光発生素子14の斜視図である。磁界及び近接場光発生素子14は、透光性及び絶縁性を有するGaAs基板16と、GaAs基板16に積層された透光性及び絶縁性を有する透明薄膜層18と、透明薄膜層18に積層された金/チタンの2層構造を有する非透光性の導体膜73とを含んでいる。図10は、主面における導体膜73付近の拡大平面図である。導体膜73は、一対の電極部73a、73bと、これら一対の電極部73a、73bを電気的に接続する狭窄部73cとから構成されている。一対の電極部73a、73bは、それぞれ、光アシスト磁気記録媒体6に面する透明薄膜層18の主面と、側面との2面に跨って形成されている。狭窄部73cの幅w7は、150nm程度である。狭窄部73cは、一対の電極部73a、73bから離れる方向に膨らんだコの字形状を有しており、透明薄膜層18の主面において、一対の電極部73a、73bの端部を互いに結合している。狭窄部73cの幅は、各電極部73a、73bの幅よりも狭い。なお、透明薄膜層18の主面には、第1の実施の形態と同様のABS面が設けられている。
GaAs基板16上には、光源としての半導体レーザ素子17が形成されている(図9(a)参照)。半導体レーザ素子17からは波長650nmのレーザ光が出射される。出射されたレーザ光は、透明薄膜層18を透過し、狭窄部73cに照射される。半導体レーザ素子17のレーザ出射部から狭窄部73cまでの距離は50nmである。本実施の形態において、半導体レーザ素子17から出射されるレーザ光は円偏光である。
このように半導体レーザ素子17が磁界及び近接場光発生素子14と一体形成されているため、半導体レーザ素子17のレーザ出射部から狭窄部73cまでの距離が変化しないため、この距離を一定に保つためのサーボ機構が必要でなくなり、情報記録再生装置をよりコンパクトにすることが可能となる。
図10に示すように、透明薄膜層18の主面には、電極部73aと電極部73bとの間に挟まされるように導体膜73と接触することによって、狭窄部73cを周縁の一部とする開口部76を導体膜73と共に形成する遮光材75が積層されている。開口部76の幅w8(狭窄部73cと遮光材75とを結ぶ方向への長さ)は100nmであり、幅w8と直交する方向の幅w9は250nmである。さらに、透明薄膜層18の主面には、遮光材75との間に開口部76及び狭窄部73cを挟むように狭窄部73cと接触する凹形状の遮光材77が積層されている。遮光材77は、真性半導体であるシリコンからなる絶縁物である。
遮光材75は、真性半導体であるシリコンからなる。すなわち、遮光材75は絶縁性を有しているので、導体膜73に電流が流されても、遮光材75には電流が流れない。
狭窄部73cを通過して電極部73aから電極部73bに向かって電流を流したとき、電流方向と直交する方向に沿った断面積が一対の電極部73a、73bにおけるよりも小さい狭窄部73c近傍には、大きな磁界が発生する。特に本実施の形態では、狭窄部73cの幅w7が150nm程度と非常に小さいので、狭窄部73c近傍に非常に大きな磁界が発生する。
狭窄部73c近傍に発生する磁界の方向は右ネジの法則によって説明することができる。例えば、電流が狭窄部73cを図10の紙面左側から右側に流れる場合、開口部76には、紙面手前から奥に向かう方向の磁界が発生し、これが光アシスト磁気記録媒体6に対する記録磁界となる。これとは逆に、電流が狭窄部73cを図10の紙面右側から左側に流れる場合、開口部76には、紙面奥から手前に向かう方向の磁界が発生する。
図10に示すように、半導体レーザ素子17から出射された波長650nmのレーザ光は、導体膜73の表面、つまり透明薄膜層18に当接する面に、円形のスポット領域78を形成する。スポット領域78の直径は約900nmである。スポット領域78は、開口部76を跨いで狭窄部73c、遮光材75及び遮光材77上に形成される。狭窄部73cにレーザ光が照射されることによって、狭窄部73cにおいて、レーザ光の回折限界よりも小さいスポット径を有する近接場光が発生する。狭窄部73cにおける導体膜73の膜厚は金及びチタンを合わせて300nmであり、近接場光が効率よく発生するようにレーザ光の波長よりも小さい。
このように、本実施の形態に係る磁界及び近接場光発生素子は、狭窄部73c近傍にて近接場光及び非常に大きい磁界を発生させることが可能である。したがって、近接場光を用いて光アシスト磁気記録媒体6への高密度磁気記録が可能となる。
上述したように、半導体レーザ素子17から出射される波長650nmのレーザ光は円偏光である。ここで、開口部76は、幅w8が100nm、w9が250nmという寸法を有している。したがって、いずれの偏光方向に関しても、開口部76の幅は、スポット領域78を形成するレーザ光の波長よりも小さくなっている。したがって、スポット領域78を形成するレーザ光は開口部76を透過することができない。また、狭窄部73c、遮光材75及び遮光材77は、共に非透光性を有しているので、レーザ光を透過させない。なお、導体膜73、遮光材75、遮光材77は、スポット領域78に比べて十分に大きな寸法を有しているので、スポット領域78のサイズ変化に対する許容度が大きい。このように、磁界及び近接場光発生素子において、スポット領域78を形成するレーザ光は、スポット領域78の全域において遮光される。したがって、光アシスト磁気記録媒体6には近接場光のみが照射され、レーザ光は照射されない。
本実施の形態の磁界及び近接場光発生素子においては、狭窄部73cを有する導体膜73と絶縁性の遮光材75とが接触している。したがって、もし遮光材75が絶縁性を有していなければ、狭窄部73cと並列に遮光材75にも電流が流れ、電流経路が、狭窄部73cを流れる経路と、遮光材75を流れる経路との2経路となってしまう。この結果、右ネジの法則から、遮光材75を流れる電流は、狭窄部73cを流れる電流が発生させる磁界とは反対方向の磁界を発生させてしまうため、磁界発生の効率が悪くなってしまう。このように、磁界発生の効率の点から、遮光材75を絶縁性とすることが好ましい。
また、本実施の形態の磁界及び近接場光発生素子においては、狭窄部73cと接触する遮光材77が絶縁性を有している。もし遮光材77が絶縁性を有していなければ、狭窄部73cと遮光材77とに電流が流れることになって、電流方向と直交する方向に沿った断面積が大きくなってしまう。その結果、狭窄部73c付近に発生する磁界が小さくなって、磁界の発生効率が低下してしまう。つまり、絶縁性の遮光材77を用いることで、遮光範囲を広げることができ、さらに、狭窄部73cを有した導体膜73と遮光材77とを接触させても、発生磁界の大きさを損なうがなくなる。
光アシスト磁気記録時には、狭窄部73cにおいて磁界及び近接場光が発生し、光アシスト磁気記録媒体6においてキュリー点以上に昇温された領域が狭窄部73cにて発生した磁界の方向に磁化される。このとき、レーザ光がスポット領域78の全域において遮光されているため、伝播光であるレーザ光が直接光アシスト磁気記録媒体6に照射されない。したがって、光アシスト磁気記録媒体6の所望の領域以外の領域が昇温するおそれがない。つまり、所望の領域以外の領域において、誤って、磁気情報が書き換えられる可能性が小さくなる。この結果、所望の領域以外において磁化反転が生じにくくなり、情報を正しく保持できる。よって、本実施の形態に係る磁界及び近接場光発生素子は、簡単な構成で高周波磁気記録媒体に適したものであり、誤って磁気記録情報を書き換えてしまう可能性も低い。
図8に戻って、本実施の形態に係る磁界及び近接場光発生素子14には、半導体レーザ素子17に加えて、再生素子15もが一体形成されている。再生素子15は、磁気抵抗効果膜15aと、これを挟む一対のシールド膜15b、15cとから構成されている。シールド膜15bは、遮光材77と接触している。磁気抵抗効果膜15aは、例えば、巨大磁気抵抗(Giant magnetic resistance: GMR)効果またはトンネル磁気抵抗(Tunnel Magnetoresistive:TMR)効果を示す、外界に存在する磁界の大きさに応じて抵抗値が変化する膜である。すなわち、磁気抵抗効果膜15aの抵抗値は、光アシスト磁気記録媒体6に記録された磁化情報に応じて変化する。
ここで、磁界及び近接場光発生素子14の製造方法について、図9(a)及び図9(b)を参照して説明する。まず、図9(a)に示すように、GaAs基板16上に半導体レーザ素子17を形成する。その後、図9(b)に示すように、GaAs基板16上に透明薄膜層18を形成する。しかる後、透明薄膜層18上に、導体膜73、遮光材75、遮光材77及び再生素子15を形成する。このとき、半導体レーザ素子17から出射されたレーザ光が狭窄部73cに照射されるようにする。この後、ABS面の形成及びABS面の研磨を行うことによって、磁界及び近接場光発生素子14が完成する。
本実施の形態によれば、半導体レーザ素子17及び再生素子15が同じ基板16上に磁界及び近接場光発生素子14と一体形成されているので、光アシスト磁気記録再生装置をよりコンパクトなものとすることができる。
なお、本実施の形態においても、第1〜第3の実施の形態と同様に、磁界変調方式及び光変調方式による光アシスト磁気記録を行うことが可能であり、各種変調方式に準じたランダムパターンの形成が可能である。
導体膜73を形成するには、例えば、リソグラフィー技術とリフトオフ法を組み合わせたプロセスを利用すればよい。リソグラフィー法としては、例えば、電子線リソグラフィー法やフォトリソグラフィー法を用いることができる。導体膜73の材料としては、非透光性を有し、電気抵抗が小さく、近接場光発生効率のよい非磁性材料が好ましく、例えば、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、タンタル(Ta)、白金(Pt)、銅(Cu)、タングステン(W)やそれらの混合物を用いることができる。
遮光材75、75としては、例えば、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)といった金属、誘電体、または、これらの混合物を用いることができる。遮光材75は、遮光材77と同様の材料であってもよいし、遮光材77とは異なる材料であってもよい。また、遮光材75の平面形状は、長方形に限られるものではなく、レーザ光をスポット領域78の全域において遮光できるものであれば、例えば、円形や多角形などの形状であってもよい。
基板16については、レーザ光を透過する絶縁物質であればよく、石英基板以外に、例えば、シリコン、ガラス基板、タンタル、亜鉛酸化物(ZnO)基板、透明プラスチック基板を用いることができる。
半導体レーザ素子17の位置及び角度については、狭窄部73cに照射されたレーザ光がスポット領域78の全域において遮光される構成であればよい。例えば、半導体レーザ素子17から狭窄部73c近傍まで導波路等を備えた構造であってもよい。また、プロセス上発生する、スポット中心位置ズレやスポット領域78の直径の分布が予想されれば、その範囲を遮光できるように、遮光する構成を広くしておくことが望ましい。このようにすることで、プロセスによる個体差によって、照射位置にズレが生じても、レーザ光が光アシスト磁気記録媒体6に直接照射されることがなくなる。また、プロセス上発生する、スポット中心位置ズレやスポット領域78の直径の分布によって、光の照射強度に対する近接場光の強度に個体差が生じた場合、光アシスト磁気記録媒体6の再生信号特性をフィードバックして、照射するレーザパワーを最適化することが可能である。
本実施の形態の変形例について図11及び図12を参照して説明する。なお、図11及び図12において、図10に描かれているのと同様の部材には十の位をそれぞれ”8”及び”9”に変更した符号を用いることとして、その説明を省略する。
図11は、第1の変形例に係る磁界及び近接場光発生素子についての、導体膜付近の拡大平面図である。図11において、導体膜83には、幅w10の狭窄部83cが形成されている。そして、導体膜83と遮光材85とに囲まれて、幅w11(狭窄部83cと遮光材85とを結ぶ方向への長さ)の開口部86が形成されている。開口部86は、狭窄部83cに接する頂点を有する三角形形状を有している。
図12は、第2の変形例に係る磁界及び近接場光発生素子についての、導体膜付近の拡大平面図である。図12において、導体膜93には、幅w12の狭窄部93cが形成されている。そして、導体膜93と遮光材95とに囲まれて、幅w13(狭窄部93cと遮光材95とを結ぶ方向への長さ)の開口部96が形成されている。開口部96は、狭窄部93cに接する上底を有する台形形状を有している。本変形例では、遮光材96として、狭窄部93cに接する下底を有する台形形状のものが用いられている。
これら2つの変形例に示した以外にも、開口部の形状は、光の偏光方向への幅が波長よりも小さければ、半円形や多角形など任意の形状であってよい。また、遮光材の形状も適宜変更が可能である。
<第5の実施の形態>
次に、本発明の第5の実施の形態に係る磁界及び近接場光発生素子及びこれを含む情報記録再生装置について説明する。本実施の形態に係る情報記録再生装置においては、基板上に、磁界及び近接場光発生素子と共に、光源としての半導体レーザ発光素子が一体形成されている。そして、光アシスト磁気記録媒体に記録された情報の再生を行う再生素子が、磁界及び近接場光発生素子とは別の素子として別のサスペンションに固定されている。
図13は、本実施の形態に係る磁界及び近接場光発生素子を含む情報記録再生装置の概略図である。図13に示す情報記録再生装置は、半導体レーザ素子(図9(a)に示す符号17と同様のもの)と一体形成された磁界及び近接場光発生素子(記録素子)19と、円盤形状を有する光アシスト磁気記録媒体6とを有している。光アシスト磁気記録媒体6は、図示しない駆動機構に駆動されることよって、その軸を中心として回転する。磁界及び近接場光発生素子19は、サスペンション5の先端に固定されている。サスペンション5は、その先端が光アシスト磁気記録媒体6の径方向に変位するように、図示しない駆動機構によって駆動される。磁界及び近接場光発生素子19の導体膜及び遮光材に関する構成は、上述した第1〜第4の実施の形態で説明したいずれかと同じであってよい。
また、サスペンション5とは別の位置に配置されたサスペンション20には、図8に示す素子15と同様の光アシスト磁気記録媒体に記録された情報の再生を行う再生素子が固定されている。サスペンション20も、その先端が光アシスト磁気記録媒体6の径方向に変位するように、図示しない駆動機構によって駆動される。
そして、サスペンション5に固定された磁界及び近接場光発生素子19を用いて光アシスト磁気記録媒体6に光アシスト磁気記録を行い、サスペンション20に固定された素子21を用いて媒体6に記録された磁化情報の再生を行う。このようにすることで、光アシスト磁気記録素子19の製造を簡素化することができる。
なお、本実施の形態の一変形例として、半導体レーザ素子は、図1に示す光源1のように、磁界及び近接場光発生素子19の外に設けられていてもよい。