JP2009013544A - 嵩高不織布およびその製造方法 - Google Patents

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彰彦 川中
Mitsuhiro Aota
光弘 青田
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Abstract

【課題】 表面に凹凸を有し、嵩高性及び柔軟性に優れた嵩高不織布を提供する。
【解決手段】 分割型複合繊維を含む繊維ウェブに三次元的交絡処理を行い、分割型複合繊維を割繊させて極細繊維を含む交絡不織布を得た後、前記交絡不織布の表面にほぐし加工を行い、分割型複合繊維の未分割繊維をさらに割繊させるとともに、構成する繊維を再配列させることにより、不織布表面に繊維同士の複数本絡み合う繊維束および窪みを含む凹凸を有する嵩高不織布を得る。
【選択図】 図5−a

Description

本発明は、表面に凹凸を有し、嵩高性及び柔軟性に優れた嵩高不織布、およびその製造方法に関する。
日常生活において、緩衝材や吸収材、また物体の表面を清拭するため、不織布がその手段として広く用いられている。そして、それらの用途に使用される不織布は、用途に合わせて、疎水性の繊維のみからなる不織布、親水性繊維のみからなる不織布、あるいはこれらの繊維を混綿させた不織布などが提案されている。このような不織布は、不織布を構成する繊維に機能を付与する他に、不織布表面の構造に特徴を持たせることで、目的に合わせた不織布となるよう改良している。
例えば、特許文献1(特開平11−318791号公報)では、吸水性繊維及び/または親水性繊維を含むスパンレース不織布の表面を起毛させ、その起毛長(0.4mm以上)と起毛された繊維の割合(不織布の表面積1.6×10-5cm2あたり少なくとも1本)を所定の範囲とすることで嵩高く、手触りのよい不織布とすることが開示されている。加えて、不織布の表面をニードル、または金属バーにて繊維を部分的に切断、起毛を行う処理により、不織布表面付近はその繊維密度が疎になり、不織布中心付近は繊維密度が変化しないので、不織布の厚み方向に対して粗密構造を持った不織布とすることが開示されている。
また、特許文献2(特開平10−33441号公報)では、繊維の断面径が0.5〜5μmのアクリル系合成繊維からなり、不織布表面を起毛させた清掃用モップシートが開示されている。
また、表面に皺状の凹凸を有する不織布として特開平09−111631では、熱収縮率の異なる繊維ウェブを積層し、熱処理を行うことにより、熱収縮率の大きい繊維層を収縮させて、不織布表面に多くの皺が発生させた凹凸を有する不織布を開示している。
特開平11−318791号公報 特開平10−33441号公報 特開平09−111631号公報
しかし従来の不織布には、以下の問題点があった。特許文献1で開示されている不織布では、起毛させた後の不織布の嵩高さが十分でなく、さらに起毛によって一部の繊維が切断されるため、切断された繊維が使用の際に不織布から脱落することがあった。さらに特許文献1の不織布では、不織布内部に繊維密度が密な部分を残しているため、強度低下は少ないが、伸張時の伸びが不足したり、使用時に不織布が硬く感じられたりすることがあった。
また、特許文献2で開示されている不織布では、最適な繊維長は3〜20mmであり、湿式抄紙によるものであるため、紙状の厚みの小さい不織布しかで得ることができず、嵩高性や手持ち感が十分とはいえなかった。加えて、湿式抄紙によって製造した不織布であるため、不織布が硬く、使用した際の使用感が良好ではなかった。
さらに、特許文献3の不織布では、低温で大きく熱収縮する繊維(熱収縮繊維)と、その温度では収縮しない繊維(非熱収縮繊維)を選択する必要があるため、使用できる繊維に制限があった。加えて、熱収縮繊維を含む繊維層が緻密になるので、風合いが硬くなる傾向にあった。
本発明は、従来の不織布が有する課題に鑑みてなされたものであり、不織布表面に凹凸を有し、優れた嵩高性、柔軟性を有する嵩高不織布を得ることを目的とする。
本発明の嵩高不織布は、1dtex以下の極細繊維を含み、不織布表面に凹凸を有する不織布であって、前記不織布表面は、繊維同士の複数本絡み合う繊維束と、その付近の窪みを含み、前記繊維束に占める極細繊維の繊維本数が、窪みに占める極細繊維の繊維本数よりも多いことを特徴とする。
本発明の嵩高不織布の製造方法は、分割型複合繊維を含む繊維ウェブに、三次元的交絡処理を行い、分割型複合繊維を割繊させて、極細繊維を含む交絡不織布を得た後、前記交絡不織布の表面に、ほぐし加工を行い、分割型複合繊維の未分割繊維をさらに割繊させるとともに、構成する繊維を再配列させて不織布表面に繊維同士の複数本絡み合う繊維束および窪みを含む凹凸を形成させることを特徴とする。
本発明のワイパーは、前記不織布に洗浄成分を付着させたことを特徴とする。
本発明の嵩高不織布は、繊維束による凸部と、その付近の窪みによる凹部からなる凹凸構造を有するので、嵩高性に優れている。また、不織布を構成する繊維に極細繊維を含み、繊維束を構成する極細繊維の繊維本数が、その付近の窪みを構成する極細繊維の繊維本数より多いので、不織布表面は柔軟であり、対象面に触れたときの触感が柔らかい。
本発明の嵩高不織布は、1dtex以下の極細繊維を含み、不織布表面に凹凸を有する不織布であって、前記不織布表面は、繊維同士の複数本絡み合う繊維束と、その付近の窪みを含み、前記繊維束に占める極細繊維の繊維本数が、窪みに占める極細繊維の繊維本数よりも多いことを特徴とする。本発明でいう繊維束とは、不織布表面を構成する複数本の繊維が絡み合ったものであり、具体的には三次元的交絡処理を施して構成する繊維を再配列させることにより形成されるものをいう。本発明の繊維束は、三次元的交絡処理を施して一旦繊維束を形成させたものを、さらに繊維同士の絡み合いがほぐされるか、撚り合わされるかして、再配列させることで形成したものであることが好ましい。不織布表面に繊維束を形成することにより、その部分は周囲よりも盛り上がった凸部を不織布表面に形成するので、嵩高性及び柔軟性を有する。例えば、ワイパーとして使用した場合、特に汚れを掻き落とす効果の高い部分となる。前記繊維束および窪みにおける極細繊維の繊維本数は、不織布表面または表面付近の断面を顕微鏡等で観察することにより確認できる。例えば、不織布表面または表面付近の断面を観察できるように電子顕微鏡で100〜200倍に拡大して観察するとよい。
また、不織布表面に形成される繊維束は、その付近に形成される窪みに比べて極細繊維の繊維本数が多くすることにより、繊維束が対象面に最初に接触して刺激を感じにくい触感、すなわち、極細繊維による表面の触感が柔らかい不織布が得られる。さらに、極細繊維による毛細管現象の影響が強くなり、液体の吸収速度が向上する。
本発明でいう繊維束の付近の窪みとは、三次元的交絡処理により再配列されたときに、繊維束の付近において構成する繊維が繊維束を形成するために集められて、繊維の構成本数が少なくなった部分(繊維密度の小さい部分)をいう。前記窪みは、部分的に構成繊維の繊維密度が小さく、空隙が多い構造であるため、触感が特に柔軟なものとなる。また、液体の保液部分として寄与したり、例えば、ワイパーとして使用したりした場合、窪みに汚れを保持され、汚れの脱落(再付着)を防止する効果を発揮する。このような不織布表面に凹凸を有する不織布は、例えば、後述する不織布加工方法、ほぐし加工方法等により得ることができる。
本発明に用いられる極細繊維の繊度は、1dtex以下である。好ましい極細繊維の繊度は、0.05〜0.5dtexであることが好ましい。繊度が1dtexを越えると、触感や柔軟性が悪くなり、さわった際にチクチクとした刺激を感じたり、不織布が硬いと感じることがある。さらに、ワイパーとして使用した場合、微細な汚れ、ほこり等を捕捉する機能が低下する傾向にある。
本発明の嵩高不織布において、不織布に占める1dtex以下の極細繊維の割合は、10質量%以上であることが好ましい。不織布に占める極細繊維の割合が所定の範囲を満たすことにより、不織布は触感がより柔らかいものとなり、不織布の吸液性も向上する。不織布に占める好ましい極細繊維の割合は、30質量%以上である。
前記極細繊維は、分割型複合繊維の割繊によって生じた極細繊維であることが好ましい。前記分割型複合繊維は、異なる2以上の成分から成る分割型複合繊維であり、高圧水流、エメリー加工など物理的衝撃により各成分に割繊する分割型複合繊維であることが好ましい。このような分割型複合繊維を用いることにより、部分的に極細繊維の発生量をコントロールすることができる。特に、前記分割型複合繊維を含む三次元的交絡処理を施した交絡不織布の不織布表面に、エメリー加工等のほぐし加工を施すことにより、交絡不織布のゆるやかな凹凸の凸部が選択的に割繊されて、所望の不織布表面を得ることができる。
前記分割型複合繊維は、繊維断面において構成成分のうち少なくとも1成分が2個以上に区分されてなり、構成成分の少なくとも一部が繊維表面に露出し、その露出部分が繊維の長さ方向に連続的に形成されている繊維断面構造を有することが好ましい。前記分割型複合繊維の断面形状としては、例えば、放射状、オレンジ状、層状などが挙げられる。このような断面形状を有する分割型複合繊維では、割繊によって生じた極細繊維の断面形状が異形断面を有するため、例えば、ワイパーとして使用した場合、表面の汚れに対して優れた除去効果が発揮される。
前記分割型複合繊維を構成する成分の組合せは、特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリプロピレン,ポリエチレン等のポリオレフィン、ナイロン6等のポリアミドなどの樹脂成分を2以上組み合わせた分割型複合繊維が使用できる。これらの樹脂成分の具体的な組合せとしては、ポリエチレンテレフタレート/ナイロン6、ポリプロピレン/ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート/ポリプロピレン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
前記分割型複合繊維の各成分の分割数について特に限定はないが、好ましい分割数は4分割〜32分割である。分割数が4分割よりも少ないと、割繊後の極細繊維の繊度が大きくなり、触感が悪く、刺激感を有することがある。分割数が32分割よりも多くなると、水流交絡などの繊維を交絡させる過程や、不織布の表面を加工する工程で十分に割繊されないことがある。より好ましい分割数は、8〜16分割である。
前記分割型複合繊維の繊度は、0.8〜4.4dtexであることが好ましい。より好ましくは、1〜3.9dtexである。分割型複合繊維の繊度が0.8dtex未満であると、繊維ウェブを作製する際カードに巻き付くといった工程性の低下が大きくなる。また、繊度が4.4dtexを越えると、分割数によっては、分割後の繊維の繊度が大きくなり、触感が低下するか、柔軟性が低下する傾向にある。また、繊度が4.4dtexを超えると、未分割状態の分割型複合繊維が残った場合の触感が悪くなる傾向にある。
不織布に占める分割型複合繊維の割合は、10質量%以上であることが好ましい。より好ましくは、30〜80質量%である。分割型複合繊維の割合が10質量%未満であると、不織布の触感が硬いものとなることがある。
本発明の嵩高不織布は、前記極細繊維が上記範囲内含まれていれば、得ようとする不織布の性能に応じて、親水性繊維、疎水性繊維など他の繊維を混合して使用することができる。他の繊維としては、例えば、コットン,パルプ,および麻などの天然繊維、ビスコースレーヨン,および溶剤紡糸セルロースなどの再生繊維、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、およびアクリルなどの合成繊維等から、1種または2種以上選択される。例えば、表面処理剤を付着させたワイパー、または液体を吸収させる吸収材不織布として使用する場合、含浸させる表面処理剤、あるいは吸収させる液体の性質にあった繊維を使用することが好ましい。水性の表面処理剤あるいは液体を含浸もしくは吸収させるのであれば、コットン、ビスコースレーヨン等の親水性繊維の含有量を多くすることが好ましい。ワックスなどの油性の表面処理剤あるいは液体を含浸もしくは吸収させるのであれば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンなどの疎水性繊維の含有量を多くすることが好ましい。
前記他の繊維の繊度は、3.9dtex以下であることが好ましい。より好ましくは、0.7dtex〜3.3dtexの範囲内にある。他の繊維の繊度が3.9dtexを越えると、不織布が硬く、触感が悪くなり、使用した際に刺激による不快感が生じることがある。
前記嵩高不織布の不織布表面を構成する繊維束は、不織布縦方向(MD方向)に対して斜め方向から横方向に多数延びていることが好ましい。通常の交絡不織布においても微小な繊維束が形成されるが、不織布縦方向に平行に配列するものがほとんどであり、縦方向(MD方向)に対して斜め方向から横方向に存在する繊維束はまれである。本発明の嵩高不織布の表面上に形成される繊維束は、一旦構成繊維をほぐした上で再配列されるため、不織布縦方向に配列しているものは少なく、ほとんどの繊維束が、不織布縦方向にある程度の角度を有して形成されている。繊維束が斜め方向または横方向に多数延びていると、不織布の斜め方向又は横方向の不織布強力が低下を抑制したり、繊維束に方向性が多岐にわたるので、表面の触感が柔軟になる。また、ワイパーとして用いた場合、対象面をどの方向に拭き取っても、汚れに繊維束が当たり、汚れを擦り落とす作用があり、拭きむらが少なく、優れた汚れ除去性を得ることができる。
前記嵩高不織布は、不織布縦方向(MD方向)3cm、不織布横方向(CD方向)3cmの中において、長さ1cm以上の繊維束を含むことが好ましい。通常の交絡不織布においても微小な繊維束は形成されるが、長さが1cm以上のものはない。長さ1cm以上の繊維束を含むことにより、対象面に対する接触面積が向上し、触感が柔軟である。例えば、ワイパーとして用いた場合、接触面積が大きくなるので、拭き取り性がさらに向上する。繊維束の長さは、不織布表面を顕微鏡等で観察することにより確認できる。例えば、不織布表面を観察できるように拡大鏡で10〜50倍に拡大して観察するとよい。繊維束が「への字」、「S字」など屈曲または湾曲している場合は、各辺の中心線の長さを測定し、合計して測定することができる。図3に、繊維束が屈曲または湾曲している場合の測定方法を示す。前記繊維束は、「への字」、「S字」など屈曲または湾曲していることが好ましい。繊維束が屈曲または湾曲していることにより、繊維束と窪みで形成される凹凸差が大きくなり、嵩高性が大きくなる。また、不織布表面の意匠性を与える。さらに、繊維束が様々な方向に延びるので、凹凸を有しながらも均一な触感を有し、柔軟性も得られる。例えば、ワイパーに用いた場合、繊維束が屈曲または湾曲していると、ゴミや汚れを掻き取る効果が向上し、窪み内に保持する効果も向上する。
前記嵩高不織布の目付は、特に限定されないが、目付100g/m2〜300g/m2の不織布であることが好ましい。目付が100g/m2よりも小さいと、使用した際に、手持ち感が悪く、嵩高性も不足するため、良好な使用感が得られないことがある。不織布の目付が300g/m2を越えると、嵩高性が高くなりすぎて、持ちにくく使用感が悪化することがあり、それに加えてコストの面で不利である。より好ましい本発明の不織布における目付の範囲は150g/m2〜250g/m2である。
以下、本発明の嵩高不織布について図面を用いて説明する。図1は、本発明の嵩高不織布の表面部分の概略図を示す。図2は、本発明嵩高不織布の表面に形成される繊維束部分を拡大した概略図を示す。本発明の嵩高不織布10において、不織布表面に繊維束11およびその付近に窪み12を形成している。繊維束11は、主として不織布縦方向(MD方向)に対して、斜め方向または横方向に多数延びている。また、繊維束11は、屈曲または湾曲している。このような繊維束及び窪みは、例えば、不織布表面に対してほぐし加工をすることで、繊維同士の交絡が一旦ほぐされ、繊維同士が再び絡み合い、再配列することで、繊維束11を形成させることができる。また、繊維同士を絡み合わせ再配列させることで、高い繊維密度の繊維束11が形成されるため、繊維束11の付近には、繊維密度が低くなった窪み12が形成される。繊維束11は、不織布表面において凸部を形成し、窪み12は、不織布表面において凹部分を形成し、不織布表面に凹凸を有したものとなる。
以下、本発明の嵩高不織布について製造方法の一例を挙げて説明する。
前記嵩高不織布は、前記分割型複合繊維、必要に応じて他の繊維を用いて繊維ウェブを作製し、この繊維ウェブの構成繊維を三次元的に交絡させることで、原反となる交絡不織布を得ることができる。繊維ウェブは、例えば、カードウェブ(例えば、パラレルウェブ、ランダムウェブ、セミランダムウェブ、クロスウェブ、およびクリスクロスウェブ)、エアレイウェブ、湿式抄紙ウェブ、スパンボンドウェブ、およびメルトブローウェブのいずれであってもよい。繊維ウェブは、交絡処理による繊維同士の交絡性を考慮すると、カードウェブであることが好ましい。このとき、繊維ウェブを積層する場合、各層の構成繊維、その配合量を変えることができる。また、他のシートを積層してもよい。
前記繊維ウェブは、最終的に得られる不織布の目付を100g/m2〜300g/m2としたとき、何層かの繊維ウェブを積層して作製するが、このとき、機械方向に対して斜め方向に交互に折り重なるようにして、繊維ウェブを積層させることが好ましい。このように積層させる繊維ウェブとしては、クロスウェブまたはクリスクロスウェブであることが好ましい。このように繊維ウェブを積層することで、繊維ウェブの目付ムラが減少される。それに加えて、このように積層された繊維ウェブからなる交絡不織布は、後述するほぐし加工を施したときに、不織布表面がほぐされて、繊維同士の交絡が再配列されて、繊維束が発生しやすくなる。また、繊維束の方向が、不織布縦方向(MD方向)に対して斜め方向又は横方向に延びる繊維束を多数有したものを得ることができる。
前記繊維ウェブは、三次元的に交絡させて、本発明の嵩高不織布の原反となる交絡不織布を作製するとよい。前記繊維ウェブの構成繊維を三次元的に交絡させる方法としては、ニードルパンチ法、水流交絡法などが挙げられ、ニードルパンチ法による交絡処理を行った後、高圧水流を用いた水流交絡法で交絡処理を行い、繊維ウェブの構成繊維を交絡させることが好ましい。ニードルパンチ法による交絡処理は、針を繊維ウェブ内部に何度も打ち込み、引き抜くことで交絡させるため、繊維ウェブを構成する繊維同士が三次元的に交絡させる効果が高い。また針を高速で繊維ウェブに打ち込むため、繊維ウェブに物理的衝撃を加えることもできるため、繊維ウェブに含まれる分割型複合繊維の一部は、ニードルパンチ法による交絡処理だけでも分割させることができる。
前記繊維ウェブは、ニードルパンチ法による交絡処理を行った後、引き続いて高圧水流による水流交絡法を行うことで、さらに構成繊維を三次元的に交絡、また構成する分割型複合繊維の割繊処理が行われ、本発明の嵩高不織布の原反である交絡不織布となり、好ましい。水流交絡法による交絡処理は、構成繊維を交絡させる効果が高く、当てた箇所に対する物理的衝撃が特に大きいことから、繊維ウェブの構成繊維を三次元的に交絡させるのと同時に、繊維ウェブに含まれる分割型複合繊維の割繊を同時に行う方法として、最も適した交絡処理である。本発明では、ニードルパンチ法による交絡処理をあらかじめ行った繊維ウェブに対し、高圧水流を用いた水流交絡法を行うことで、構成繊維の三次元的な交絡と、構成する分割型複合繊維の高い分割率を達成している。
前記交絡不織布は、目付が100g/m2〜300g/m2であるとき、不織布の厚みが0.8mm以上3mm以下であることが好ましく、1mm以上2.5mm以下であることがより好ましい。交絡不織布の厚みが0.8mm未満であると、手持ち感が得られないことがある。交絡不織布の厚みが3mmを越えると、嵩高不織布が厚手になりすぎるため、使用感が低下し、またコスト的にも不利である。
前記交絡不織布には、ほぐし加工が施される。ほぐし加工の方法としては、例えば、研磨布で布帛表面を擦る方法、針を植毛した針布を用いる方法、金属バーを布帛表面に押し当てる方法等が挙げられる。特に、研磨布で布帛表面を擦ることで表面を処理するエメリー加工で処理することが好ましい。エメリー加工は、布帛表面を起毛させる表面処理方法のひとつであるが、従来の処理方法と比較して柔軟で細かい布帛表面を得られる処理方法である。本発明の嵩高不織布は、1dtex以下の極細繊維を含み、未割繊の分割型複合繊維を含む交絡不織布に対し、研磨布によるエメリー加工を行うことで、交絡不織布表面のゆるやかな凹凸の凸部(微小な繊維束)が強い力で選択的に研磨されて、未割繊の分割型複合繊維をさらに割繊されて、繊維束の極細繊維の繊維本数が、その付近の極細繊維の繊維本数よりも多い嵩高性と触感が特に柔軟な嵩高不織布を得ることができる。
また、前記ほぐし加工において、不織布表面を回転運動しながらほぐすことにより、ほぐし効果が高いとともに、交絡不織布に形成される微小な繊維束を再配列させて、不織布縦方向に対して繊維束に所定の角度を付与することができる。特に、研磨布を用いたエメリー加工では、研磨布が回転運動をしながら不織布表面を擦るため、不織布表面の構成繊維間の交絡をほぐす効果が高く、不織布表面の構成繊維は、研磨布の激しい摩擦により十分にほぐれた状態となり、好ましい。また、不織布内部にもほぐし作用が伝わるので、不織布の厚みが大きく、嵩高な不織布が得られる。
配列性を持たない、十分にほぐれた不織布表面の構成繊維に対し、さらに研磨布によるエメリー加工を行うことで、ほぐされていた繊維は撚り合わされることで、再び不織布表面を形成するようになり、繊維束となって不織布表面に再配列される。このとき、本発明の嵩高不織布の原反となる交絡不織布を製造する際にクロスレイウェブ、またはクリスクロスウェブを用いて製造していると、繊維ウェブが不織布縦方向(CD方向)に対して斜め方向に交互に積層されているため、斜め方向に再配列しやすい。
本発明の嵩高不織布において、採用することが好ましいエメリー加工は、不織布表面を構成する繊維間の交絡をほぐす効果が高く、加えてほぐした繊維同士を擦り合わせることで、擦り合わされた繊維同士に強い圧力を加えることができる。これにより、本発明の嵩高不織布の原反である交絡繊不織布が、割繊が行われていない分割型複合繊維を含んでいたとしても、このほぐし加工を採用することで、本発明の嵩高不織布に含まれる分割型複合繊維の分割率をさらに高めることができる。
本発明の嵩高不織布において、研磨布を用いて、原反である交絡不織布表面を構成する繊維間の交絡をほぐす際、使用する研磨布に塗布される研磨剤は粒度100メッシュ〜1000メッシュの研磨剤であることが好ましい。研磨剤の粒度が100メッシュよりも大きいものであると、表面処理した際に、不織布への引っかかりが大きくなるため、表面処理が施しにくく、表面処理の過程で不織布が破れる恐れがある。逆に使用する研磨布の研磨剤の粒度が1000メッシュよりも細かい研磨剤であると、不織布表面の繊維をほぐす効果が十分でなく、また不織布表面にほぐされた繊維が発生しにくいため、洗浄効果を発揮する繊維束が発生しにくくなるため好ましくない。本発明の嵩高不織布を作製するのに際し、表面処理で使用する研磨布に塗布される研磨剤の粒度は、200メッシュから500メッシュであることがさらに好ましい。
本発明の嵩高不織布は、必要に応じて構成する繊維同士を結合してもよい。結合方法としては、例えば、バインダー樹脂によるケミカルボンド、熱接着性繊維によるサーマルボンドなどが挙げられる。柔軟性を考慮すると、実質的に結合処理を施さない方がよい。
このようにして得られる本発明の嵩高不織布は、不織布表面の平均摩擦係数(MIU)が1.0以上、かつ不織布表面の平均摩擦係数の平均偏差(MMD)が0.4以下であることが好ましい。不織布表面の平均摩擦係数(MIU)は不織布と接した面との間に生じた摩擦係数の平均値であり、数値が大きいほど、対象物との間に生じる摩擦力が大きく滑りにくくなる。一方、不織布表面の平均摩擦係数の平均偏差(MMD)は摩擦係数のばらつきを指し示す数値であり、この値が大きくなるほど摩擦係数の値はばらつきが大きくなり、表面の触感はザラザラした感じがつよいものとなる。前記嵩高不織布が所定の範囲を満たすことで、対象面に接触したとき、極細繊維を含む繊維束とその付近の窪みによる適度な摩擦が生じ、ざらつき感がなく、繊毛のように肌触りがよい。より好ましい不織布表面の平均摩擦係数(MIU)、不織布表面の平均摩擦係数の平均偏差(MMD)の範囲は、不織布表面の平均摩擦係数(MIU)が1.2以上、かつ不織布表面の平均摩擦係数の平均偏差(MMD)が0.35以下である。
本発明の嵩高不織布は、ほぐし加工されることで、不織布の厚みが増加する。本発明の嵩高不織布においては、ほぐし加工後の不織布厚みは、ほぐし加工前の不織布厚みと比較して、厚みが1.1倍以上に増加していることが好ましい。ほぐし加工することで厚みが増加した不織布は、不織布表面付近の繊維が十分にほぐされているため、触感が柔軟である。また、不織布内部も適度にほぐされているので、手に持って使用した際、適度な厚みがあり、良好な使用感を得ることができる。ほぐし加工後の嵩高不織布と表面処理前の交絡不織布の1cm2あたり2.94cNの荷重を加えた状態での厚みを比較した場合、片面のみ表面処理を行った場合は、厚みが1.05倍以上2.5倍以下、好ましくは1.1倍以上2倍以下、両面表面処理を行った場合は、厚みは1.1倍以上3倍以下、好ましくは1.2倍以上2.5倍以下の範囲内で厚みが増加する。厚みの増加が不十分な場合、繊維束の形成及び/又は割繊が不十分で柔軟性が得られないことがある。厚みが出過ぎると取り扱いがしにくい場合があり、また、基布へのダメージが大きく紙粉が出たり、強度が不足したりする場合がある。また、ほぐし加工前後の厚みの比率は、ほぐし加工条件の選定の指標としても用いることができる。上記厚みの比率となるようにほぐし加工条件を選定することでも、本発明の嵩高不織布を得ることができる。
本発明の嵩高不織布は、ほぐし加工前後における不織布の引張強度の比率によっても、ほぐし加工条件の選定の指標としても用いることができる。特に、嵩高な不織布を得ようとする場合、不織布内部も適度にほぐされている方がよい。不織布内部がほぐされることにより、不織布の引張強度が低下する傾向にある。特に、不織布縦方向(MD方向)の強度低下が大きい。その理由は、原反の交絡不織布の構成繊維が縦方向に配列していたのに対し、本発明の嵩高不織布は、ほぐし加工により大きな繊維束が不織布縦方向(MD方向)対して斜めの方向に配列するためとも推定される。ほぐし加工前の交絡不織布と、ほぐし加工後の嵩高不織布において、不織布縦方向(MD方向)の引張強度を比較すると、0.4〜0.8倍となって引張強度が低下していることが好ましい。不織布縦方向(MD方向)の強度が低下することで、不織布全体が空隙の多い構造となり、柔軟性が向上しているともいえる。本発明の嵩高不織布において、ほぐし加工前の交絡不織布原反と、本発明の嵩高不織布の不織布縦方向(MD方向)の引張強度を比較した場合、嵩高不織布の強度低下の範囲は、ほぐし加工前と比較して0.45〜0.75倍の強度となることがより好ましい。
また、ほぐし加工前後の不織布の不織布縦方向(MD方向)における10%伸長時モジュラスも5〜90%低下していることが好ましい。好ましくは50〜90%の低下である。上記範囲を満足することにより、不織布表面および内部がほぐされて、より柔軟な不織布になっているといえる。ほぐし加工前後における不織布の縦方向(MD方向)の10%伸長時モジュラスの比率によっても、ほぐし加工条件の選定の指標としても用いることができる。
本発明の嵩高不織布において、ほぐし加工前の交絡不織布原反と、ほぐし加工を行った後の嵩高不織布を比較した場合、不織布縦方向(MD方向)の引張強度、ならびに10%モジュラスの測定値が減少しているが、不織布横方向(CD方向)は引張強度、ならびに10%モジュラスの測定値が大きく減少しない。これは、ほぐし加工により、加工前には繊維の配列が見られなかった不織布横方向(CD方向)に対し、再配列によって生じる繊維束が配列するため、大きく低下しないと考えられる。
本発明の嵩高不織布は、極細繊維を含み、また不織布表面の繊維がほぐされているため、吸水性が高く、含水量は500%以上であることが好ましい。含水量が500%以上であると、例えばワイパーとして使用した場合、対象物表面の水分を吸収する効果が高く好ましい。より好ましい含水量は700%以上である。
本発明のワイパーは、不織布表面に複数の繊維束と、その付近に形成される窪みからなる凹凸構造を有しているため、そのまま使用しても物体表面の清拭不織布として使用できる。不織布表面に繊維束及び窪みを具備していることにより、大小のゴミや汚れを効率よく捕捉し、保持することができる。また、繊維束がほぐされるか、不織布縦方向に対して斜め方向又は横方向に延びるか、所定の長さを有することにより、捕捉効果はより向上し、好ましい。
前記嵩高不織布に各種洗浄成分を含浸、塗布等により付着することで、その洗浄能力をさらに高めることができる。洗浄成分として使用できるものは特に限定されず、揮発性あるいは不揮発性の洗浄成分、不揮発性の洗浄成分、固形状の洗浄成分など、いずれの洗浄成分であってもよい。
本発明のワイパーに付着される洗浄成分は、不織布の質量に対して5質量%〜1000質量%であることが好ましい。不織布に付着する洗浄成分の質量が5質量%よりも小さいと、その洗浄効果が発揮されにくい、あるいは使用者が洗浄効果を確認しにくい場合がある。逆に不織布に付着する洗浄成分が不織布の質量に対し1000質量%を越えると、コスト面で不利であるばかりか、不織布全体が重くなりすぎるか、剤が多すぎるため使用感が悪化するといった問題が発生する。
前記洗浄成分は、工業的に一般に用いられている加工方法で付着させることができる。具体的には、例えば、スプレー法、ロールタッチ法、コーティング法、または浸漬(ディップ)法等の方法を使用することができる。
本発明の嵩高不織布は、不織布表面に所定の凹凸を有することにより、不織布全体が柔らかく、手触りの良好な嵩高不織布となる。また、不織布表面付近は空隙の多い構造となることから、ワイパー、また各種液体を吸収させる吸収材として使用した際、この空隙に汚れや液体を取り込みやすく、好ましい。また、緩衝材や吸音材、保温材として使用した場合、この空隙が衝撃や音の伝播、温度変化を遮蔽する効果があり、好ましく使用できる。
以下、本発明の不織布について実施例を挙げて具体的に説明する。
[実施例1]
本発明の不織布を作製するにあたり、構成繊維として次に示す繊維を採用した。
分割型複合繊維:ポリエチレンテレフタレートとポリプロピレンの2成分からなる分割型複合繊維(ダイワボウポリテック(株)製 16分割型複合繊維DF−1 3.3dtex×45mm)
ポリエステル繊維:ポリエチレンテレフタレート繊維(東洋紡績(株)製 70W 1.6dtex×44mm)
この2種類の繊維を、質量比で分割型複合繊維:ポリエステル繊維=50:50となるように混綿した。
前記の条件で混綿した原綿をパラレルカードウェブとして、クロスレイヤーを用いて積層し、目付約50g/m2になるように積層した。積層した繊維ウェブに対してニードルパンチ法で処理を行った。処理条件はストローク数を50ストローク(単位)、ペネ数40N/cm2、深度7mmである。ニードルパンチ処理はニードルパンチ処理後2枚重ねて再びニードルパンチ処理を行った。この処理を行った繊維ウェブをさらに2枚重ねた後、同条件でニードルパンチ処理を行った。
前記ニードルパンチ処理した繊維ウェブに対して水流交絡処理を行い、表面処理前の不織布を完成させた。水流交絡は5MPaの高圧柱状水流を噴射した後、8.5MPaの高圧柱状水流を噴射した。この処理を繊維ウェブ両面に対して行った。繊維ウェブは高圧柱状水流を噴射する際、4m/分の速度で移動させた。この条件で水流交絡処理をすることで、ほぐし加工前の交絡不織布を得た。
前記のニードルパンチと水流交絡処理を行った交絡不織布に対し、研磨布を用いたエメリー加工によるほぐし加工を行った。ほぐし加工に使用した研磨布は400メッシュの研磨材を使用した。回転運動の回転数は540rpmとした。この表面処理を両面に施して、本発明の嵩高不織布を得た。
[比較例1]
実施例1と同条件でパラレルカードウェブを作製し、ニードルパンチ処理と水流交絡処理を行い、ほぐし加工を施す前の交絡不織布を比較例1とした。
(不織布の評価方法)
作製した実施例1、比較例1の不織布の評価方法として次の方法で評価を行った。
(1)不織布表面及び不織布断面の観察
作製した不織布に対して、その表面状態を確認するため、デジタルスチールカメラにて不織布表面の繊維のほぐれている状態、また、ほぐされた繊維同士で構成される繊維束とそれによって発生する窪みの状態を確認した。また、表面の状態をさらに拡大して観察を行うため、走査型電子顕微鏡で不織布表面を観察した。また不織布表面の繊維の状態、不織布厚みを観察するため、不織布断面を走査型電子顕微鏡で観察を行った。断面の観察により、不織布に対するほぐし加工によって発生した表面の状態を確認した。
(2)厚み
厚み測定機(商品名:THICKNESS GAUGE モデルCR−60A (株)大栄科学精器製作所製)を用い、試料1cm2あたり2.94cNの荷重を加えた状態で測定した。
(3)官能試験
作製した実施例1、比較例1の不織布に対し、不織布表面の触感を評価するために官能試験を行った。官能試験は、不織布表面を触り、以下の項目について官能試験を行った。
(A)触感
・評価『1』:薄くて硬い
・評価『2』:厚みがあるが、少し硬い
・評価『3』:厚みがありソフト
(B)フィット感
・評価『1』:硬くてフィットしない
・評価『2』:柔らかくある程度狭い場所にフィットする
・評価『3』:柔らかく狭い場所にもフィットする
(C)肌触り
・評価『1』:硬くてチクチクする
・評価『2』:柔らかいがチクチクする
・評価『3』:柔らかくチクチクしない
(4)ワイピング性試験
作製した不織布のワイピング性の評価として、ワイピング試験を行うことで清拭用不織布としての評価を行った。ワイピング試験の手順を次に示す
・手順1:作製した不織布を30cm四方に切断する
・手順2:切断した不織布に洗浄成分を250質量%しみこませる。
・手順3:車のボディを往復運動させて拭きながら拭き上げる
この手順により評価を行う。評価対象として、次の項目を評価した。
(A)拭き心地
・評価『1』:重くて作業しづらい
・評価『2』:少し重いが作業には問題ない
・評価『3』:軽いが少し抵抗感がある
・評価『4』:軽くて楽に拭ける
(B)液残り
・評価『1』:拭いた後の水滴が大きく、表面がなかなか乾かない
・評価『2』:拭いた後の水滴がやや大きく、表面が乾燥するのに少し時間がかかる
・評価『3』:拭いた後の水滴が小さく、表面がすぐに乾く
・評価『4』:拭いた後の水滴が微小で、表面がすぐに乾く
(C)拭き取り性
拭き取り性について(a)対象面、と(b)基布、の評価を行い、それぞれを次のように評価した。
(a)対象面
・評価『1』:きれいに拭き取られていない
・評価『2』:5〜6回の往復運動できれいに拭き取れる
・評価『3』:3〜4回の往復運動できれいに拭き取れる
・評価『4』:1〜2回の往復運動できれいに拭き取れる
(b)基布
・評価『1』:不織布表面の一部でしか汚れを取っていない
・評価『2』:不織布の表面でしか汚れを取っていない
・評価『3』:不織布の一部が内部まで汚れを取り込んでいる
・評価『4』:不織布の内部まで汚れを取り込んでいる
(5)不織布表面の摩擦係数(MIU)、表面摩擦係数の平均偏差(MMD)測定
作製した不織布に対して、不織布表面の摩擦係数(MIU)、表面摩擦係数の平均偏差(MMD)測定を行った。測定する不織布表面の平均摩擦係数(MIU)は不織布表面と物体の間で発生する摩擦力の大きさであり、この値が大きいほど、不織布は滑りにくくなる。また、測定する不織布表面の平均摩擦係数の平均偏差(MMD)は不織布表面における平均摩擦係数のばらつきの大きさを測る値であり、この値が大きいほど不織布表面を手で触った際のざらつき感がなくなる。
なお、各試料につき5回測定し、その平均値を試料の値とした。
(6)含水量測定
作製した不織布に対して、不織布にどれだけの水分を含むことができるかを評価するため含水量の測定を行った。測定の手順は次の通りである。
・手順1:作製した不織布を10cm×10cmに切断し、乾燥状態での質量(乾燥時不織布質量:WNW1(g))を測定する。
・手順2:1200ccの水に1.2ccの食器用中性洗剤を滴下した溶液を用意する。
・手順3:切断した不織布試験片を手順2で用意した溶液中に10分間浸す。
・手順4:10分経過後、水分を含ませた状態の不織布試験片の質量(湿潤時不織布質量:WNW2(g))を測定する。
・手順5:乾燥時不織布質量、湿潤時不織布質量から含水量(%)を算出する。
含水量、の算出式を(数1)に示す。
(評価結果)
実施例1の不織布において、不織布表面をデジタルスチールカメラで撮影した写真を図4−aおよび図4−bに示す。また、実施例1の不織布表面に形成した繊維束および窪みを撮影した走査型電子顕微鏡の不織布表面写真を図5−aおよび図5−bに示す。比較例1の不織布表面を走査型電子顕微鏡により撮影した写真を図6に示す。また、実施例1の不織布断面を走査型電子顕微鏡によって観察し、撮影した写真を図7に示す。
図4−a、図4−b、図5−a、および図5−bから、本発明の嵩高不織布表面の構造は、ほぐし加工によって大きく変化していることがわかった。図6に示すとおり、比較例1(ほぐし加工前)の不織布表面は微小な繊維束状の構造が見られた。しかし、図4−a、図4−b、図5−a、および図5−bに示すとおり、ほぐし加工した実施例1の不織布表面写真からは、比較例1よりも大きな長さ1mm以上の繊維束が形成されていることがわかった。このような繊維束は、ほぐし加工前の不織布に形成された微小な繊維束がほぐし加工によりほぐされて、複数のほぐされた繊維束が組み合わされるか、再配列されて形成したものと考えられる。図5−aから、馬蹄形の繊維束と、その手前に形成された低い繊維密度の窪みが形成していることを確認できた。一方、図6から、比較例1の不織布表面には、このような表面構造は確認できず、繊維同士の間隔もほぐされることなく、密な状態であることが確認できた。
また、図4−a、図4−b、図5−a、および図5−bから、実施例1の不織布は、繊維束を構成する極細繊維の繊維本数が、窪みを構成する極細繊維の繊維本数よりも多いことが確認できた。その理由は、微小な繊維束に存在する未割繊の分割型複合繊維がほぐし加工により割繊されたこと、及び繊維の交絡がほぐされ再配列されて、微小な繊維束の周囲の繊維も集めて高い繊維密度の繊維束と、低い繊維密度の窪みを形成していたためと考えられる。
さらに、図4−a、図4−b、図5−a、および図5−bから、実施例1の不織布表面に形成された繊維束は、機械方向(不織布製造時のカードウェブの進行方向)に対して斜め方向〜垂直方向に延びる形で形成されていることから、繊維束は不織布全体においてあらゆる方向に延びていることが確認できた。
実施例1および比較例1の不織布の目付、厚み、および実施例1の不織布と比較例1の不織布の厚み比の測定結果を表1に示す。
実施例1および比較例1の不織布の引張強力、伸度、および10%伸張時モジュラスの測定結果を表2に示す。
実施例1および比較例1の不織布に対して行った官能試験の結果を表3に示す。
実施例1の本発明不織布と表面処理を行わない不織布(比較例1)に対して行ったワイピング試験の結果を表4に示す。
実施例1の本発明不織布と、表面処理を行わない不織布(比較例1)に対して行った、不織布表面の摩擦係数(MIU)、表面摩擦係数の平均偏差(MMD)測定結果を表5に示す。
・MMD(平均摩擦係数の平均偏差)・・・値が大きくなるほどざらつき感がなくなる
・MIU(平均摩擦係数)・・・値が大きくなるほど滑りにくい
・測定回数・・・n=5
実施例1の本発明不織布と表面加工を行わない不織布(比較例1)に対して、不織布にどれだけの水分を含むことができるかを評価するため含水量の測定結果を表6に示す。
表1に示すとおり、実施例1の不織布は、比較例1(ほぐし加工前)に比べて、厚みが1.28倍となり、嵩高性を有するものであった。また、表2に示すとおり不織布縦方向の引張強度および10%伸長時モジュラスも所定の範囲を満足するものであった。表2に示すように、不織布縦方向(MD方向)の引張強力、10%伸張時モジュラスの値が低下したのは、本発明の嵩高不織布が表面および内部がほぐされた、空隙の多い構造となり、さらに、不織布縦方向に配列していた構成繊維が、繊維束を形成して不織布縦方向以外の方向に再配列したためであると推定される。このことは、不織布横方向(CD方向)の引張強力、10%伸張時モジュラスの値が、実施例1と比較例1の不織布で変化がないことから認められる。
さらに、本発明の嵩高不織布は、不織布表面の所定の凹凸を有するため、ワイパーとして使用した場合、特に優れた性質を示した。まず、表5に示した不織布表面の平均摩擦係数(MIU)と平均摩擦係数の平均偏差(MMD)の測定結果から、本発明の不織布は表面処理前(比較例1)と比較して、不織布表面の平均摩擦係数は高く、平均摩擦係数の平均偏差は低いものであった。この結果から、不織布が乾燥した状態で手に持って使用した場合、手に刺激感を感じることなく使用できるという優れた性質を持つことが確認できた。そのことは、実際に手で不織布表面を触って評価した不織布表面の官能試験結果(表3)の結果でも示しており、表面処理前の不織布(比較例1)がチクチクとした刺激感を手に感じるのに対し、表面処理後の実施例1ではそのような刺激感がなくなり、触感、肌触り共に向上していることが確認できた。
本発明の嵩高不織布は、触感、肌触りも優れており、ワイパーとして使用した場合の特性も優れていることが確認できる。ワイピング試験結果(表4)、含水率の測定結果(表6)から、今回測定を行ったすべても項目について、その性能が向上することを確認できた。
拭き心地、拭き取り性が改良されたのは、不織布に含まれる分割型複合繊維の割繊がさらに進んだためと考えられる。不織布をほぐし加工する際、研磨布を不織布表面に接触させるため、不織布表面を構成する繊維束において分割型複合繊維はほとんどが割繊し、極細繊維が多く存在していたため、ワイパーとしての性能が向上すると考えられる。さらに、拭き取り性の向上には不織布表面に形成された大きく、ほぐされた繊維束および窪みが存在することにより、物体表面の汚れを拭き取った場合、大きな汚れはこの繊維束によって掻き取られて保持される。さらに、小さい汚れに関しては、大きい繊維束形成によって繊維束周辺に形成される窪みや空隙に取り込まれ、そこで保持される。この構造により、本発明の不織布は汚れの種類を問わず優れた清拭性を有するものとなる。
上記のように、本発明の嵩高不織布は、ほぐし加工により、分割型複合繊維を用いた場合はさらに割繊が進み、加えて不織布表面には構成繊維がほぐさされることで、微小な空間が多数形成される。さらに不織布内部もほぐし加工による力学的作用(物理的作用)により、空隙の多い嵩高な構造となる。この結果、水分等の液体と接触させた際、毛細管現象が発生しやすく、かつ、そのようにして取り込んだ液体を蓄える空隙が不織布内部に多く存在するため、液残り性や含水性が高いワイパーに適した不織布が得られる。
本発明の嵩高不織布は、柔軟性、吸液性、嵩高性を生かした用途に使用することが可能であり、例えば、ワイパー、フィルター、各種吸収性シート、緩衝材、吸音材、保温材などの用途に用いることができる。
本発明の嵩高不織布の表面部分の概略図を示す。 本発明の嵩高不織布の不織布表面に形成される繊維束を拡大した概略図を示す。 本発明の嵩高不織布の不織布表面に形成される繊維束の長さの測長方法を示す。 本発明の嵩高不織布(実施例1)の不織布表面をデジタルスチールカメラにて撮影した写真を示す。 本発明の嵩高不織布(実施例1)の不織布表面をデジタルスチールカメラにて撮影した写真(繊維束及び窪み)を示す。 本発明の嵩高不織布(実施例1)の不織布表面を走査型電子顕微鏡にて30倍に拡大し、撮影した写真を示す。 本発明の嵩高不織布(実施例1)の不織布表面を走査型電子顕微鏡にて30倍に拡大し、撮影した写真(繊維束及び窪み)を示す。 従来の交絡不織布の不織布表面を走査型電子顕微鏡にて30倍に拡大し、撮影した写真を示す。 本発明の嵩高不織布(実施例1)の不織布断面を走査型電子顕微鏡にて30倍に拡大し、撮影した写真を示す。
符号の説明
10 嵩高不織布
11 繊維束
12 窪み

Claims (12)

  1. 1dtex以下の極細繊維を含み、不織布表面に凹凸を有する不織布であって、前記不織布表面は、繊維同士の複数本絡み合う繊維束と、その付近の窪みを含み、前記繊維束に占める極細繊維の繊維本数が、窪みに占める極細繊維の繊維本数よりも多い嵩高不織布。
  2. 前記不織布に占める極細繊維の割合は、10質量%以上である、請求項1に記載の嵩高不織布。
  3. 前記極細繊維は、分割型複合繊維の割繊によって生じた極細繊維である、請求項1または2に記載の嵩高不織布。
  4. 前記繊維束は、繊維同士の交絡が窪みよりほぐされている、請求項1に記載の嵩高不織布。
  5. 前記嵩高不織布は、不織布縦方向(MD方向)3cm、不織布横方向(CD方向)3cmの中において、長さ1cm以上の繊維束を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の嵩高不織布。
  6. 前記嵩高不織布は、平均摩擦係数(MIU)が1.0以上、平均摩擦係数の平均偏差(MMD)が0.4以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の嵩高不織布。
  7. 分割型複合繊維を含む繊維ウェブに、三次元的交絡処理を行い、分割型複合繊維を割繊させて、極細繊維を含む交絡不織布を得た後、
    前記交絡不織布の表面に、ほぐし加工を行い、分割型複合繊維の未分割繊維をさらに割繊させるとともに、構成する繊維を再配列させて不織布表面に繊維同士の複数本絡み合う繊維束および窪みを含む凹凸を形成させる、嵩高不織布の製造方法。
  8. 前記ほぐし加工は、研磨布により研磨するエメリー加工である、請求項7に記載の嵩高不織布の製造方法。
  9. 試料1cm2あたり2.94cNの荷重を加えて測定される前記交絡不織布の厚みに対して、不織布の厚みが1.05〜3倍となるようにほぐし加工を行う、請求項7または8に記載の嵩高不織布の製造方法。
  10. 前記交絡不織布における縦方向(MD方向)の引張強さに対して、不織布の引張強さが0.8〜0.5倍となるようにほぐし加工を行う、請求項7または8に記載の嵩高不織布の製造方法。
  11. 前記繊維ウェブがクロスレイウェブまたはクリスクロスウェブである、請求項7に記載の嵩高不織布の製造方法。
  12. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の不織布に、洗浄成分を付着させたワイパー。
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