JP2004033237A - 清掃用シート - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の清掃用シート1は、清掃面が繊維材料から構成されており、水性洗浄剤が含浸されている。清掃面は、繊度0.5〜20dtexである繊維を主体とする第一の領域31と、繊度0.005〜0・45dtexである繊維及び/又は繊維断面形状において90度以下の角部を有する繊維を主体とする第二の領域32とを有している。第一の領域31及び第二の領域32は一枚のシートから一体的に形成されている。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水性洗浄剤の含浸された湿式の清掃用シートに関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
本出願人は先に特開平7−184815号公報において、フローリング等に存在する髪の毛や綿埃等を良好に除去することができる清掃用シートを提案した。また特開2001−198066号公報において、土埃や皮脂汚れ等の除去性を向上させたウェットタイプの清掃用シートを提案した。これらの清掃用シートは、清掃部と該清掃部に連結された棒状の把手とを具備したモップタイプの清掃具(例えば特開昭10−314096号公報や実開平2−11952号公報)に装着されて使用されることで、簡便性や操作性に一層優れるものとなる。
【0003】
しかしながら、捕集可能なダストの粒径はシートの種類に依存し、小粒径のダストほど完全な捕集が困難になる。そして、前記シートは、非常に小粒径の土埃等、特に5μm以下程度の大きさの土埃等の除去性が、シートの掻き取り性不足及び清掃具使用による清掃圧力不足に起因して必ずしも満足なものとはいえなかった。特に、非常に小粒径の土埃等が水性及び/又は油性の汚れと混合して付着しているこびりつき汚れ、例えば台所等に付着しているこびりつき汚れに対する清掃性能が不足していた。
【0004】
清掃具使用による簡便性を維持しつつ、シートの掻き取り性向上を目的として、分割繊維等の極細繊維を用いた清掃用シートが提案されている。しかしそのような清掃用シートは、繊維密度が高く繊維自由度が低いために髪の毛等の捕集性が十分でなく、且つ清掃時の摩擦抵抗が大きくなるために操作性が良好でない。特に操作性は、ドライシートよりも摩擦抵抗が高くなるウエットシートにおいて重要な要求性能となる。
【0005】
そこで、極細繊維を用いたシートの表面を起毛させることや、繊維径の異なる複数枚のシートの貼り合わせることが提案されている。しかし、耐擦性低下に起因して清掃時に繊維の脱落が起こり、また製造工程の複雑化に起因してコストが高くなるという問題があった。
【0006】
従って、本発明は、髪の毛や綿埃等の比較的大きなゴミのみならず、こびりつき汚れや非常に小粒径の土埃等に対する清掃性能が高く、また清掃時の摩擦抵抗が低く操作性の良好な清掃用シートを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、清掃面が繊維材料から構成されており、水性洗浄剤が含浸されている清掃用シートにおいて、
前記清掃面が、繊度0.5〜20dtexである繊維を主体とする第一の領域と、繊度0.005〜0・45dtexである繊維及び/又は繊維断面形状において90度以下の角部を有する繊維を主体とする第二の領域とを有しており、
前記第一の領域及び前記第二の領域が、一枚のシートから一体的に形成されている清掃用シートを提供することにより前記目的を達成したものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1には、本発明の清掃用シートの第一の実施形態の模式図が示されている。清掃用シート1は矩形のものであり、繊維材料から構成された三層構造となっている。清掃用シート1は、内層2を構成するシートと、該内層2を挟持する二枚の外層3を構成するシートとの積層シートからなる。各外層3,3は同一の又は異なる種類のシートから構成されている。各外層3,3における外面は清掃用シート1の清掃面を構成している。
【0009】
各外層3,3は、第一の領域31及び第二の領域32を有している。各領域31,32は、外層3を構成する一枚のシートから一体的に構成されており、貼り合わせや縫い合わせなどによる継ぎ目や段差は存在していない。これによって、継ぎ目や段差が存在している場合に比べ不要な凹凸ができないので、清掃時に引掛かりがなく、また不要な圧力集中が生じないという利点がある。
【0010】
第一の領域31は、繊度0.5〜20dtex、好ましくは0.6〜5dtexである繊維を主体としている。第一の領域31は、髪の毛や綿埃等の比較的大きなゴミの捕集に用いられる領域である。繊度が0.5dtexに満たないと、第一の領域31と清掃対象面との接触確率が高くなって摩擦抵抗が高くなり操作性が低下する。20dtex超であると、繊維の動きが低下して髪の毛等の捕集性が低下し、またシート自体が固くなって風合いが低下してしまう。なお「第一の領域31が、繊度0.5〜20dtexである繊維を主体としている。」とは、第一の領域31における単位重量当たり、繊度0.5〜20dtexである繊維の本数が最も多いことをいう(以下「主体としている」の意味はこれと同じである)。
【0011】
第二の領域32は、繊度0.005〜0.45dtex、好ましくは0.007〜0.35dtexである繊維を主体としている。つまり、第二の領域32に含まれる繊維は、第一の領域31に含まれる繊維よりも微細なものである。第二の領域は、こびりつき汚れや非常に小粒径(例えば5μm以下)の土埃等の捕集に用いられる領域である。繊度が0.005dtex未満であると、繊維強度が低すぎるので、繊維の破断及び毛羽立ちが起こる。0.45dtex超であると、掻き取り性が不足して、非常に小粒径の土埃等の捕集性が低下してしまう。
【0012】
第二の領域32は、前述した繊維に代えて又はそれに加えて、繊維断面形状において90度以下、好ましくは50度以下の角部を有する繊維を主体としていてもよい。このような繊維を用いると、角部によるよごれの掻き取り効果によって、こびりつき汚れや非常に小粒径の土埃等を効率的に除去・捕集できる。本明細書において「角部」とは、二つの平面の交差位置に形成される部位のみならず、一つの平面と一つの曲面との交差位置や、二つの曲面の交差位置に形成される部位も包含する。更に凸形状の一つの曲面における変曲点の部位、例えば楕円形における変曲点の部位も「角部」に包含される。角部が曲面で形成される場合、角部の角度は該曲面の接線の交差角度から求められる。繊維断面形状において90度以下の角部を有する繊維の典型的な例としては、分割された分割繊維が挙げられる。斯かる繊維の断面形状は典型的には扇形である。例えば八分割された分割繊維には二つの平面が交差することで形成された45度の角部が存在している。
【0013】
特に好ましい実施形態においては、第二の領域32は、繊度0.005〜0.45dtex、好ましくは0.007〜0.35dtexであり、且つ繊維断面形状において90度以下、好ましくは50度以下の角部を有する繊維を主体としている。このような繊維を用いることによって、こびりつき汚れや非常に小粒径の土埃等の掻き取り効果が一層向上し、また捕集効果も一層向上する。
【0014】
掻き取り性を一層向上させる観点から、第二の領域32は、第一の領域31に比べて繊維密度が高いことが好ましい。
【0015】
清掃用シート1は、図2(a)に示すように、平坦な面を有するヘッド部41と該ヘッド部41に連結された棒状の把手42とを具備したモップタイプの清掃具4における該ヘッド部41の平坦な面に装着されて用いられる。ヘッド部41の平坦面は、長手方向及び幅方向を有する矩形となっている。図2(b)に示すように、清掃用シート1は、その第一の領域31及び第二の領域32の長手方向が、ヘッド部41における平坦面の長手方向と一致するように装着される。且つ清掃用シート1は、その第二の領域32が、ヘッド部41における平坦面の幅方向中央部に位置するように装着される。図2(b)から明らかなように、清掃具4における把手42の取り付け位置は、ヘッド部41における平坦面の幅方向中央部に対応する位置となっている。従って、ヘッド部41における平坦面の幅方向中央部は、清掃具4を用いた清掃時に最も力が加わる位置となる。換言すれば、清掃用シート1においては、第二の領域32が、清掃用シート1の使用時に清掃面における力の最も加わる場所及び/又はその近傍に配置されている。これによって、こびりつき汚れや非常に小粒径の土埃等の掻き取り除去及び捕集を極めて効率的に行うことができる。その結果、清掃後の清掃対象面には小粒径の土埃等が残らず、仕上がりが良好となる。しかも、清掃後における第二の領域32は、従来の清掃用シート以上に汚れているので、十分に清掃ができたという実感を使用者に与えるという効果もある。
【0016】
清掃面における第一の領域31及び第二の領域32は、いずれも細長い帯状の形状をしており、長手方向が一致するように配置されている。帯状の形状とすることで、後述する清掃用シート1の製造方法において、その生産性を向上させることができる。第一の領域31は、清掃面の幅方向両側部にそれぞれ存在し、第二の領域32を挟むように配置されている。第二の領域32は、清掃面の幅方向中央部に配置されている。清掃面における第一の領域31と第二の領域32との面積比は、第一の領域31:第二の領域32=9:1〜2:8、特に8:2〜5:5であることが、髪の毛や綿埃等の比較的大きなゴミと、こびりつき汚れや非常に小粒径の土埃等とをバランス良く捕集できる点から好ましい。また、清掃面の幅を10cmとした場合、第二の領域32はその幅が1〜8cm、特に1.5〜6.5cm、とりわけ2〜5cmであることが、こびりつき汚れや非常に小粒径の土埃等と髪の毛や綿埃等の比較的大きなゴミとをバランスよく効率的に捕集する点、及び清掃対象面との摩擦力を過度に高めない点から好ましい。各領域における1つの領域当たりの大きさは、各領域で目的とする性能を発現可能であれば特に制限はないが、1cm2以上であることが好ましく、3cm2以上であることが特に好ましい。
【0017】
清掃用シート1における外層3を構成するシートは、分割繊維を主体としている不織布から構成されていることが好ましい。これによって、一枚のシート中に継ぎ目や不要な段差を形成することなく、第一の領域31及び第二の領域32を一体的に形成することができる。この観点から、外層3を構成するシートは、スパンレース不織布からなることが好ましい。この理由は次の通りである。スパンレース不織布は、一般にステープルファイバからなる繊維のウエブに高圧水流を付与して繊維を交絡させることで得られる。この水流交絡の際に、高圧水流によって分割繊維に所定の外力を加えて該分割繊維を分割することで第二の領域32を形成することができる。一方第一の領域31は、分割繊維の交絡は起こるが該分割繊維が分割しないような条件でウエブに高圧水流を付与することで形成することができる。即ち、スパンレース不織布を用いることで、スパンレース不織布の形成を、第一の領域31及び第二の領域32の形成と同時に行えるという利点がある。
【0018】
以上の説明から明らかなように、外層3を構成するシートにおいては、第一の領域31の分割繊維は未分割であることが好ましく、第二の領域32の分割繊維は分割されていることが好ましい。この場合、第一の領域31における分割繊維はそのすべてが未分割であることを要せず、清掃用シート1の製造過程において不可避的に分割されてしまった繊維が存在することは許容される。同様に、第二の領域32における分割繊維はそのすべてが分割されていることを要せず、未分割の繊維が存在することは許容される。第二の領域32の形成条件にもよるが、第二の領域32における分割繊維の分割率は一般に60〜95%程度である。分割率は次の方法で求める。第二の領域32を電子顕微鏡観察する。所定の範囲内において、分割された状態にある分割繊維の本数nを数える。また、同範囲内における分割繊維の最大分割可能本数mを数える。分割率はn/m×100から求める。なお、「分割された状態にある分割繊維の本数」とは、例えば8分割の分割繊維が8本に分割されている状態の場合は8本であり、8分割中5本が分割されており3本が分割されていない状態の場合は5本である。また「分割繊維の最大分割可能本数」とは、例えば8分割の繊維を用いた場合、前記範囲内において、分割前の状態を想定したときに存在するであろうと考えられる分割繊維の本数がdであるときにはm=8dとなる。
【0019】
本明細書において分割繊維とは、外力や化学物質などによって複数本に分割可能になっている繊維をいう。分割繊維としては、二種以上の樹脂から構成される六分割、八分割、十六分割などの分割繊維を用いることができる。分割繊維を構成する樹脂としては、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂などを挙げることができる。分割前の分割繊維の繊度は、第一の領域31における分割繊維の繊度とほぼ等しい。
【0020】
外層3を構成するシートは分割繊維のみから構成されていてもよく、或いは分割繊維に加えて他の繊維を含んでいてもよい。他の繊維としては、外層3における髪の毛等の捕集性、嵩高さ及び風合い向上を向上させる目的で加えられるアクリル繊維や、水性洗浄剤の含浸を容易にする(親水性にする)目的で加えられるレーヨン繊維などが挙げられる。外層3を構成するシートにおけるこれらの繊維の配合量は30〜70重量%、特に40〜60重量%であることが、分割繊維による掻き取り性と、他の繊維によって得られる特性の両立の点から好ましい。一方、分割繊維の配合量は、30〜70重量%、特に40〜60重量%であることが、同様の理由によって好ましい。
【0021】
各外層3を構成するシートは、それぞれその坪量が10〜90g/m2、特に15〜40g/m2であることが、各種清掃性能を効果的に発現させる点から好ましい。
【0022】
二枚の外層3,3によって挟持されている内層2は、清掃用シート1に嵩高さやクッション性を付与し、清掃用シート1の清掃面がフローリングなどの清掃対象面と十分に接触できるようにする部位、水性洗浄剤を含浸保持する部位、及びシート自体の強度を向上させる部位として用いられる。この観点から、内層2は、嵩高い(見掛け密度が低い)、クッション性が高い、強度が高い等の特性を有するシートから選択されることが好ましい。そのようなシートとしては、例えばエアスルー不織布、スパンボンド不織布、レジンボンド不織布、エアレイド不織布、樹脂製ネットなどが挙げられ、特にエアスルー不織布又はスパンボンド不織布又は樹脂製ネットを用いることが好ましい。
【0023】
内層2がエアスルー不織布から構成される場合、該不織布を構成する繊維としては各種熱接着性繊維を用いることが好ましい。熱接着性繊維としては例えば芯鞘型複合繊維やサイド・バイ・サイド型複合繊維のような各種複合繊維が挙げられる。エアスルー不織布はその坪量が20〜100g/m2、特に25〜50g/m2であることが、清掃用シート1に十分な嵩高さやクッション性を付与し得る点から好ましい。
【0024】
内層2及び二枚の外層3,3は所定手段によって接合一体化されて一枚の清掃用シート1を形成している。各層の接合手段に特に制限はなく、例えばヒートエンボスや超音波エンボスによる部分的な接合、ホットメルト粘着剤等の接着剤を用いた部分的な接着などを用いることができる。また外層3,3がスパンレース不織布から構成され且つ内層が各種不織布から構成されている場合には、内層2上にステープルファイバからなる繊維のウエブを積層し、その状態下に高圧水流を付与することで、ウエブ内の繊維を交絡させて外層3を形成すると共にウエブの構成繊維と内層2の構成繊維とを交絡させることで、内層2と外層3とを一体化させることもできる。内層2及び二枚の外層3,3から構成されている清掃用シート1は、その坪量が40〜200g/m2、特に55〜100g/m2であることが、広い面積を清掃するのに必要な量の洗浄剤を含浸させ得る点から好ましい。
【0025】
先に述べた通り清掃用シート1には水性洗浄剤が含浸されている。従って、非常に小粒径の土埃等が水性や油性の汚れと混合して付着している場合であっても、前述した第二の領域32に存在する微細な繊維と水性洗浄剤との相乗作用によって良好な清掃性能が得られる。水性洗浄剤は、清掃用シート1の重量(乾燥状態)当たり、100〜500重量%、特に120〜400重量%、とりわけ140〜350重量%含浸されていることが、こびりつき汚れや土埃に対する十分な清掃性能を発現させる点、過剰量の洗浄剤の放出及びそれに起因する清掃対象面の損傷を防止する点から好ましい。水性洗浄剤の含浸率は、水性洗浄剤を清掃用シート1に含浸させてそのままの状態またはマングル処理等で過剰の水性洗浄剤を除去した後、清掃用シート1の重量に対して無荷重下で測定される。
【0026】
水性洗浄剤は、25℃での粘度が20〜30000mPa・s、特に100〜1000mPa・s、とりわけ300〜800mPa・sであることが好ましい。この範囲の粘度の水性洗浄剤を用いることにより、(1)清掃初期に清掃対象面に放出される水性洗浄剤の量が低減されて、清掃の最初から最後までの水性洗浄剤の放出量が均一になり、(2)広い面積の清掃対象面に対する清掃持続性が向上し、(3)清掃初期でも水性洗浄剤の放出量が低いので、清掃用シート1の清掃対象面に対する摩擦抵抗値が低下し、(4)清掃初期でも水性洗浄剤の放出量が低いので、清掃用シート1表面の繊維自由度が大きく、清掃対象面の上にある髪の毛や綿埃を繊維によって絡み取って保持できるという利点がある。粘度はブルックフィールド型粘度計を用いて測定される。使用ローター及び回転数は、水性洗浄剤の粘度に応じて適宜変更する。
【0027】
水性洗浄剤は水を媒体とし、界面活性剤、アルカリ剤、増粘剤及び水溶性溶剤を含有することが好ましい。水性洗浄剤に含有される各成分はすべて実質的に水溶性であることが好ましい。水性洗浄剤中に含有される不揮発残留成分については、10重量%以下であることが清掃後の仕上がり性の面で好ましく、特に5重量%以下、とりわけ1重量%以下であることが好ましい。更に、水性洗浄剤には、必要に応じ、香料、防黴剤、除菌剤、色素(染料、顔料)、キレート剤、ワックス剤、忌避剤等を含有させることもできる。
【0028】
次に本実施形態の清掃用シート1の好ましい製造方法を説明する。先ず常法に従い、内層2を構成するエアスルー不織布を製造する。これとは別に、カード機を用い、分割繊維のステープルファイバを原料としてカードウエブを製造する。このウエブをエアスルー不織布の一方の面上に重ね合わせる。両者を図3に示すワイヤメッシュ5上に載置して搬送する。ノズル(図示せず)から高圧水流を吐出させ、搬送されているウエブ上に付与する。このとき、初めにワイヤメッシュ5における幅方向全域に相対的に低いエネルギーの水流を付与し(図3中、符号Lで示す)、次いで幅方向中央部にのみ相対的に高いエネルギーの水流を付与する(図3中、符号Hで示す)。これによって、幅方向両側部においては、分割繊維を分割させることなく該分割繊維を交絡させ且つ分割繊維と内層2の構成繊維とを交絡させる。また幅方向中央部においては、分割繊維を分割させ、分割した繊維を交絡させ、更に分割した繊維と内層2の構成繊維とを交絡させる。このようにして、内層2と外層3とを一体化させる。次いで、内層2における他方の面(つまり外層3が積層されていない面)にも分割繊維のウエブを重ね合わせ、前述した操作と同様の操作を行う。その後、シートを乾燥させ、水性洗浄剤を所定量含浸させることで清掃用シート1が得られる。内層2のエアスルー不織布に代えて樹脂製ネットなどの目の粗い材を用いる場合には、一方の面からの水流の付与によって両面の分割繊維の分割が可能となる。
【0029】
次に本発明の第二の実施形態について図4を参照しながら説明する。第二の実施形態については、第一の実施形態と異なる点についてのみ説明し、特に説明しない点については、第一の実施形態に関して詳述した説明が適宜適用される。また、図4において、図1〜図3と同じ部材に同じ符号を付してある。図4(a)に示すように、本実施形態の清掃用シート1’は、周縁部が連続的な山型状にカットされた2枚のスパンレース不織布6,6が、ヒートシールによって形成された貼り合わせ部7によって貼り合わされて挿入空間Sを有する扁平な袋状に形成されたものである。この貼り合わせ部7の外側には、清掃用シート1’の周縁部に沿う幅10mm〜30mmの非貼り合わせ部8が設けられている。スパンレース不織布6は、分割繊維を有して構成されている。
【0030】
図4(a)に示す清掃用シート1’は、図4(b)に示す清掃具4’に装着されて用いられる。清掃具4’は、平坦な面を有するヘッド部41’と該ヘッド部41’に連結された把手42’とを具備している。ヘッド部41’は、縦長で且つ厚さが横巾より小である扁平形状をしている。ヘッド部41’の前方部は、少なくともその上面がヘッド部41’の先端部に向けて傾斜面となしてあり、且つ該先端部における該傾斜面とヘッド部41’の底面とのなす角度が鋭角となっている。ヘッド部41’は、その後端部において、柄42’の先端部に、該柄42’の延長方向にヘッド部41’の先端部を向けて結合している。柄42’は、その一部がヘッド部41’の上面よりも上方に位置する形状となしてある。ヘッド部41’には、ヘッド部41’に装着される清掃用シート1’の固定部43’が設けられている。
【0031】
本実施形態の清掃用シート1’においては、清掃具4’のヘッド部41’における底面46’に対応する領域が清掃面となる。この清掃面は、第一の実施形態と同様に、第一の領域31及び第二の領域32を有している。図4(a)に示すように、第一の領域31は、清掃面における幅方向両側部の位置に、長手方向へ延びる帯状に形成されている。第二の領域32は、幅方向中央部の位置に、長手方向へ延びる帯状に形成されている。第二の領域32が形成されている斯かる領域は、清掃具4’を用いた清掃時に、清掃面における力の最も加わる場所及び/又はその近傍に相当する。従って、清掃対象面に存するこびりつき汚れや非常に小粒径の土埃等が、第二の領域32によって効果的に捕集される。
【0032】
清掃用シート1’おける第一の領域31及び第二の領域32は、一枚のスパンレース不織布から一体的に形成されており、両領域間に貼り合わせや縫い合わせ等による継ぎ目や段差は存在していない。このような清掃用シート1’は、第一の実施形態における清掃用シート1と同様の方法で製造することができる。
【0033】
本発明は前記実施形態に制限されない。例えば第一の領域31及び第二の領域32の配置パターンとしては前記実施形態以外のものを用いることもできる。例えば第1の実施形態における両領域31,32の配置パターンの他の例として図5に示すパターンを用いることもできる。図5に示す清掃用シート1”における清掃面は、二種類の第一の領域及び同じく二種類の第二の領域を有している。第一の領域は、幅広の領域31aと幅狭の領域31bとからなる。一方、第二の領域も、幅広の領域32aと幅狭の領域32bとからなる。これらの領域はいずれも清掃用シート1”の長手方向に延びる帯状の形状をしている。第一の領域における幅広の領域31aは、清掃面における長手方向両側部にそれぞれ位置している。二つの幅広の領域31aのすぐ内側には、第二の領域における幅狭の領域32bがそれぞれ位置している。各幅狭の領域32bのすぐ内側には、第一の領域における幅狭の領域31bがそれぞれ位置している。そして、両幅狭の領域31b,31bの間の位置(この位置は、清掃面における幅方向中央部に相当する)には、第二の領域における幅広の領域32aが位置している。
【0034】
本実施形態の清掃用シート1”においては、各領域31a,31b,32a,32bの幅は、第一の実施形態における対応する領域の幅よりも狭くなっている。こうすることで、清掃面における第二の領域の面積率が第一の実施形態より高い場合であっても、第一の領域による髪の毛等の捕集性を大きく低下させずに、第二の領域によるこびりつき汚れや非常に小粒径の土埃等の捕集性を高めることができる。また、第二の領域の面積率が高くなることに起因する摩擦係数の増加による操作性の低下を防止することもできる。
【0035】
〔実施例1〕
図1に示す清掃用シートを、図3に示す方法に従い製造した。シートの詳細は以下の表1に示す通りである。水性洗浄剤として、カーボポールETD2020(日光ケミカル社製の増粘剤)/2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール/エタノール/ドデシルグルコシド(縮合度1.4)/イオン交換水=0.07/0.1/6/0.1/93.73(重量%)の組成のものを用いた。水性洗浄剤の25℃における粘度及び含浸率は表1に示す通りである。
【0036】
〔実施例2〕
実施例1と同様にして清掃用シートを製造した。但し、第一の領域及び第二の領域の配置パターンは図5に示すものとした。
【0037】
〔比較例1〕
表1に示す組成の不織布をスパンレース法で製造する以外は実施例1と同様にして清掃用シートを得た。この清掃用シートは単層構造であり、第一の領域及び第二の領域は形成されていなかった。
【0038】
〔比較例2〕
ポリプロピレンのメルトブローン不織布の各面に、スパンレース法によって分割繊維及びアクリル繊維からなるスパンレース不織布を積層一体化させた。各不織布の詳細は表1に示す通りである。その後は実施例1と同様にして清掃用シートを得た。この清掃用シートは三層構造であり、第一の領域及び第二の領域は形成されていなかった。
【0039】
〔性能評価〕
実施例及び比較例で得られた清掃用シートについて以下の方法で土埃捕集率、米粒の捕集率、髪の毛の捕集率を測定した。また六畳目の醤油乾燥汚れの除去性及び清掃具の操作性を評価した。これらの結果を表1に示す。
【0040】
〔土埃捕集率〕
図2に示す清掃具に清掃用シートを装着した。100cm×100cmのフローリング(松下電工製 ウッディタイルMT613T)上にJIS試験用ダスト7種(関東ローム層、細粒)を0.1g散布し(ハケを用いて全面に均一散布)、フローリングを1往復で4列清掃した。この操作を連続6回した後、汚れた清掃シートを乾燥させて重量(シート+洗浄剤不揮発成分+ダスト)を測定し、含浸前に測定したシート重量と理論上残留する洗浄剤不揮発成分重量を差し引いてダストの捕集量を算出した。捕集されたダストの重量を、散布した全ダスト重量(0.6g=0.1g×6回)で除し、これに100を乗じて、その値を土埃捕集率(%)とした。併せて、清掃後の清掃用シートの清掃面中央部におけるダストの付着状態を目視観察した。更に電子顕微鏡観察も行い、捕集されたダストの粒径を測定した。
【0041】
〔米粒の捕集率〕
図2に示す清掃具に清掃用シートを装着した。30cm×60cmのフローリング(松下電工製 ウッディタイルMT613T)上に米粒を5個散布し、その上に清掃用シートを乗せて一定のストローク(60cm)で2往復清掃して清掃用シートに捕集された米粒の数を測定した。この操作を連続6回実施して、30個中何個の米粒が捕集されたかを測定した。捕集された米粒の数を30で除し、これに100を乗じて、その値を米粒の捕集率(%)とした。
【0042】
〔髪の毛の捕集率〕
図2に示す清掃具に清掃用シートを装着した。30cm×60cmのフローリング(松下電工製 ウッディタイルMT613T)上に約10cmの髪の毛を5本散布し、その上に清掃用シートを乗せて一定のストローク(60cm)で2往復清掃して清掃用シートに捕集された髪の毛の本数を測定した。この操作を連続6回実施して、30本中何本の髪の毛が捕集されたかを測定した。捕集された髪の毛の数を30で除し、これに100を乗じて、その値を髪の毛の捕集率(%)とした。
【0043】
〔六畳目の醤油乾燥汚れの除去性〕
フローリング(面積:一畳)上に市販の醤油を一滴(0.02g)たらして、ドライヤーで乾燥させた。図2に示す清掃具に清掃用シートを装着して別のきれいなフローリングを5畳分連続して清掃した後に、乾燥した醤油汚れが付着したフローリング一畳を清掃して以下の基準で評価を行った。尚、先に清掃する五畳分のフローリングの清掃方法は、約90cmの距離を一往復拭くのを1ストロークとし、それを一畳の長手方向(180cm)に二列、短手方向(90cm)に四列拭いて一畳の清掃を完結した。醤油汚れの付着したフローリングは汚れの上のみを拭いて、その清掃回数と汚れ落ちの関係を評価した。
○:10往復以下の清掃で完全に汚れが除去できた。
○〜△:15往復の清掃で完全に汚れが除去できた。
△:20往復の清掃で完全に汚れが除去できた。
△〜×:30往復の清掃で完全に汚れが除去できた。
×:30往復を超えても完全に汚れは除去できなかった。
【0044】
〔清掃具の操作性〕
図2に示す清掃具に清掃用シートを装着して、フローリング板(松下電工製 ウッデイタイルEタイプ KER501)を片手で拭き始める時の清掃具の操作性を以下の基準で評価した。
○:片手で軽く拭け、押してから引く際のターン時にも清掃具のヘッド部が浮かない。
○〜△:片手で軽く拭けるが、ターン時にも清掃具のヘッド部が若干浮くことがある。
△:片手で軽く拭けるが、押してから引く際のターン時に清掃具のヘッド部が浮く。
×:清掃具を押し始める時に非常に力が必要で、さらにターン時にはヘッド部が逆さにひっくり返ることがある。
【0045】
【表1】
【0046】
表1に示す結果から明らかなように、実施例の清掃用シート(本発明品)は、こびりつき汚れや非常に小粒径のゴミの代表例である土埃の捕集性に優れ、且つ比較的大きなゴミの代表例である米粒及び髪の毛の捕集性にも優れていることが判る。しかも、清掃後のシートには、従来の清掃用シート以上に汚れが付着するので十分な清掃実感を使用者に与える。また、水性洗浄剤の作用によって、醤油乾燥汚れも十分に除去されることが判る。更に、水性洗浄剤が含浸されていても清掃時の操作性が低下しないことが判る。
【0047】
【発明の効果】
本発明の清掃用シートは、髪の毛や綿埃等の比較的大きなゴミのみならず、こびりつき汚れや、5μm以下程度の非常に小粒径の土埃等に対する清掃性能が高い。従って清掃後の清掃対象面の仕上がりが良好になる。しかも、清掃後のシートには、従来の清掃用シート以上に汚れが付着するので十分な清掃実感を使用者に与える。
また本発明の清掃用シートは、清掃時の摩擦抵抗が低く操作性が良好である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の清掃用シートの第一の実施形態を示す模式図である。
【図2】図1に示す清掃用シートが装着される清掃具及び該清掃用シートの装着状態を示す斜視図である。
【図3】図1に示す清掃用シートの製造方法を示す模式図である。
【図4】本発明の清掃用シートの第二の実施形態を示す模式図、並びに該清掃用シートが装着される清掃具及び該清掃用シートの装着状態を示す斜視図である。
【図5】図1に示す清掃用シートの他の形態を示す模式図である。
【符号の説明】
1 清掃用シート
2 内層
3 外層
31 第一の領域
32 第二の領域
Claims (6)
- 清掃面が繊維材料から構成されており、水性洗浄剤が含浸されている清掃用シートにおいて、
前記清掃面が、繊度0.5〜20dtexである繊維を主体とする第一の領域と、繊度0.005〜0・45dtexである繊維及び/又は繊維断面形状において90度以下の角部を有する繊維を主体とする第二の領域とを有しており、
前記第一の領域及び前記第二の領域が、一枚のシートから一体的に形成されている清掃用シート。 - 前記第二の領域が、前記清掃用シートの使用時に前記清掃面における力の最も加わる場所及び/又はその近傍に配置されている請求項1記載の清掃用シート。
- 坪量が40〜200g/m2の不繊布から構成されており、前記清掃面が分割繊維を有している請求項1又は2記載の清掃用シート。
- 前記清掃面がスパンレース不織布から構成されており、前記第一の領域が、未分割の分割繊維から構成されていると共に、前記第二の領域が、分割された分割繊維から構成されている請求項1〜3の何れかに記載の清掃用シート。
- 前記第二の領域が帯状の形状をしている請求項1〜4の何れかに記載の清掃用シート。
- 前記水性洗浄剤の25℃での粘度が20〜30000mPa・sであり、該水性洗浄剤がシート重量(乾燥基準)当たり100〜500重量%含浸されており、平坦な面を有するヘッド部と該ヘッド部に連結された把手とを具備した清掃具における該ヘッド部の平坦な面に装着されて用いられる請求項1〜5の何れかに記載の清掃用シート。
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