JP2009013373A - 培土固化用水性合成樹脂エマルジョン、およびそれを乾燥してなる培土固化用水性合成樹脂エマルジョン粉末、並びにそれを用いた育苗培土およびその製法。 - Google Patents

培土固化用水性合成樹脂エマルジョン、およびそれを乾燥してなる培土固化用水性合成樹脂エマルジョン粉末、並びにそれを用いた育苗培土およびその製法。 Download PDF

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Abstract

【課題】
培土に対し良好な浸透性を有するとともに、培土等や保水材・吸水材等と均一に混ざり、特に、培土の造粒や乾燥においても、マイグレーションが発生せず、高い均一強度を有する育苗培土が得られる培土固化用水性合成樹脂エマルジョンを提供する。
【解決手段】
アクリル系モノマー、ビニル系モノマー、およびスチレン系モノマー群から選ばれた少なくとも1種のモノマー成分(a)を主成分として重合してなる合成樹脂(A)が、ポリビニルアルコール系樹脂(B)により分散安定化されていることを特徴とする培土固化用水性合成樹脂エマルジョン。
【選択図】なし

Description

本発明は、山土やピートモス等の培土の固化に使用する、培土固化用水性合成樹脂エマルジョン、およびその培土固化用水性合成樹脂エマルジョンを乾燥してなる再乳化性の培土固化用水性合成樹脂エマルジョン粉末、並びにそれを用いた育苗培土およびその製法に関するものである。
近年、農園芸作業の合理化・省力化や生産性の向上などの目的で、プラスチック製育苗箱等を使用して育苗の集中管理が行われている。このような育苗方法は、生育が均一で強健な苗を得やすく、輸送も容易である。そして、この苗は育苗した培土と共に機械移植する方法が行われてきている。特に、水稲の田植えは、育苗箱で育苗した苗を田植え機で移植するのが一般的である。このようにして移植された苗は、培土の付いたままの状態で移植されるため、活着が早く、しかも活着率も高く普及が進んでいる。
しかしながら、このような方法においては、苗を育苗した培土と共に移植する際に、苗の根部の培土(根鉢部分)の崩壊や根部の欠損が、特に、比較的重い培土を使用した時などに生じ易く、移植の作業効率を低下させたり、苗の活着率の低下を招いたりするという問題があった。
このような問題を解決する方法として、育苗した苗の移植前に、アルギン酸塩水溶液を用いて培土を灌水・散水や浸漬等の処理をし、培土を固化する方法(特許文献1参照)が提案されている。しかしながら、この方法では、移植に際し崩壊等を起こさない程度に培土を固化するには、比較的粘度の高いアルギン酸塩水溶液を使用する必要がある。粘度が高いアルギン酸水溶液を使用すると、この粘度の高い水溶液では培土に浸透するのに時間を要したり、また、浸透に時間がかかると、特に灌水・散水に際して、培土に浸透する前にアルギン酸塩水溶液が培土表面からこぼれ落ち、作業場を汚してその清掃に時間が要したりする等、結果として作業性などの効率が悪くなるおそれもある。
さらに、粘土−水溶性有機高分子化合物複合体の水懸濁液を用いて、上記同様に処理して培土を固化する方法(特許文献2参照)や、ゲル化性水溶性ポリマー水溶液と浸透剤水溶液を組み合わせた液(バインダー)で、上記同様に処理して培土を固化する方法(特許文献3参照)が提案されている。
しかしながら、特許文献2の方法でも、培土への浸透性が悪い上に、処理作業が煩雑で、かつ培土が固化して移植可能となるまでの時間がかかり、生産性に劣る。また、特許文献3の方法では、培土への浸透性を改善するため、界面活性剤類が使用されており、環境上好ましくない上に、培土の性質によりゲル化する時間が影響を受けてしまうことや、培土の撥水性レベル等により配合量を調整する必要があること等の煩雑さがある。
そこで、バインダーの培土への浸透性を改善すべく、エマルジョンを用いて、培土を固化することが行われ、具体的に、特許文献4では、酢酸ビニルアルコールエマルジョンを用い、このエマルジョン粘度を上げるため、エマルジョンにPVAを混合したものをバインダーとして用いている。
しかしながら、一般に、エマルジョンを調製する際には、界面活性剤を必要とするため、環境上好ましくないことがある。また、エマルジョンを培土のバインダーとして使用した場合には、一般に、培土の造粒や熱乾燥時等にエマルジョンのマイグレーションが発生する。仮に、マイグレーションの発生が抑えられていたとしても、浸透性の問題が未解決であることが多い。このように、マイグレーションが発生、または浸透性が不充分であると、培土全体として強度にばらつきが生じ、水を吸収すると崩壊しやすくなることが予想される。
ここで、マイグレーションとは、「例えば、織物の樹脂加工において、樹脂液に浸漬後直ちに高温で乾燥を行うと樹脂液が織物表面に移行し、表面に樹脂が多く分布して耐摩耗性を低下し、風合いを害する」とされており(化学大辞典/共立出版)、このような表面への移行現象のことを意味する。特にエマルジョンのような樹脂分散系液においては、一般的に、粒子径の影響が大きく、小さい粒子径を持つエマルジョンほど、その現象が著しい。
一方で、育苗箱中の培土としては、一般に、山土を主体とするが、育苗箱の運搬、田植え機へのセット等の作業のため、培土の軽量化が特に求められている。また、培土の主体である山土に関しても、昨今の自然環境破壊への配慮から入手困難となってきているという問題もある。
そこで、現在では、培土の主体として、ピートモスを用い、これにベントナイト,ゼオライト等の粘度質材の被膜を形成させたものを、培土として用いること等(特許文献5,6参照)が提案されていている。しかしながら、これらはバインダーを用いていないことから、加圧・圧縮成型後、粉砕して培土を形成しているため、吸水性が悪く、膨潤復元化に非常に長い時間が必要となっている。
そこで、ピートモスやベントナイト等を培土に用いる場合にも、バインダーとしてエマルジョンを使用するが考えられるが、このようにエマルジョンを使用した場合には、上記マイグレーション等の問題が生じるものと予想される。
特許第2923544号 特開平7−170854号 特許第3541256号 特開2006−61081号 特開平9−74896号 特開平11−215917号
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、培土に対し良好な浸透性を有するとともに、培土や保水材・吸水材等と均一に混ざり、特に、培土の乾燥においては、マイグレーションが発生せず、高い均一強度を有する育苗培土が得られる培土固化用水性合成樹脂エマルジョンおよびそれを乾燥してなる培土固化用水性合成樹脂エマルジョン粉末、並びにそれを用いた育苗培土およびその製法の提供を目的とする。
上記目的を達成するため、本発明は、アクリル系モノマー、ビニル系モノマー、およびスチレン系モノマー群から選ばれた少なくとも1種のモノマー成分(a)を主成分として重合してなる合成樹脂(A)が、ポリビニルアルコール系樹脂(B)により分散安定化されている培土固化用水性合成樹脂エマルジョンを第1の要旨とする。
また、その培土固化用水性合成樹脂エマルジョンを乾燥してなる再乳化性の培土固化用水性合成樹脂エマルジョン粉末を第2の要旨とし、上記培土固化用水性合成樹脂エマルジョン、および培土固化用水性合成樹脂エマルジョン粉末を再乳化してなる水性合成樹脂エマルジョンの少なくとも一方と、培土とを用いた育苗培土を第3の要旨とし、その育苗培土の製法を第4の要旨とする。
すなわち、本発明者らは、培土に対する浸透性・均一分布性が高く、培土が均一強度を有するようになる培土固化用材料を得るため、鋭意検討を重ねた。その結果、上記特定のモノマー等を主成分として重合してなる合成樹脂(A)が、ポリビニルアルコール系樹脂(B)により分散安定化されているエマルジョンを用いると、一般に培土として用いられる山土等だけでなく、ピートモス等の培土全体と均一に混ざり、混合状態で安定するようになる。具体的には、バインダーとしての結合性等を有するエマルジョンが、培土全体にムラなく浸透し、マイグレーションが発生せず、均一に分布して安定化するため、培土の固化の程度が、均一強度を持つようになることを見出し、本発明を完成した。これは、ポリビニルアルコール系樹脂(B)を乳化剤として用いることから、特定モノマーをポリマー化した合成樹脂粒子を、水溶性のポリビニルアルコール系樹脂が保護コロイドとして覆うため、分散安定化するとともに合成樹脂粒子表面の親水性が増すことから、培土等と均一に混和するためであると思われる。また、乾燥した後においても、親水性により培土自体は高度な吸水性・保水性等を保持できるようになる。
なお、本発明において育苗培土とは、培土固化用水性合成樹脂エマルジョン、および培土固化用水性合成樹脂エマルジョン粉末を再乳化してなる水性合成樹脂エマルジョンの少なくとも一方と、培土とを用いてなるもののことをいい、本発明において培土とは、育苗に適した配合組成物(例えば、pH調整剤、ミネラルなどを配合)からなる、山土、ピートモス等を主体とする土壌のことをいい、好ましくは団粒構造を有するものである。そして、本発明においてはポリビニルアルコールを、以下「PVA」と略すことがある。
このように、本発明は、アクリル系モノマー、ビニル系モノマー、およびスチレン系モノマー群から選ばれた少なくとも1種のモノマー成分(a)を主成分として重合してなる合成樹脂(A)が、PVA系樹脂(B)により分散安定化されている培土固化用水性合成樹脂エマルジョンである。このため、培土に対し良好な浸透性を有するとともに、培土を構成する山土等や、保水材・吸水材(例えば、ピートモス、ベントナイト、ゼオライト、ポリアクリルアマイド等)等と均一に混ざるようになる。特に、育苗培土の造粒・乾燥においても、バインダーのマイグレーションが発生しにくくなる。したがって、本発明は、エマルジョンが培土全体に均一に分布するようになり、結果として、均一強度を有する育苗培土を得ることが可能となる。特に、比較的重い培土を使用した時等に、移植時における苗の根部の培土(根鉢部分)の崩壊や根部の欠損を起こさせないようにするのに有用である。
上記合成樹脂(A)が、20℃の水に対する溶解度が1重量%以上である親水性モノマーを、全モノマー成分に対して10重量%以上含有するモノマーの重合より得られたものであると、それを用いて得られる育苗培土の吸水速度や保水性がより一層優れるようになる。
上記合成樹脂(A)のガラス転移温度が、−20〜+15℃の範囲内であることが、夏場・冬場の育苗作業を考慮すれば好ましく、そして、この温度範囲内であると、培土のバインダーとしての程よい結合力が得られるようになる。
上記合成樹脂(A)の平均粒子径が、0.1〜2μmの範囲内であると、均一分布性とマイグレーション防止性とのバランスがより一層向上するようになる。
PVA系樹脂(B)が、活性水素を有するPVA系樹脂(B1)および側鎖に1,2−ジオール結合を有するPVA系樹脂(B2)の少なくとも一方であると、重合時にモノマーとの反応性が良好であるためグラフト化が容易に進行し、重合安定性に一層優れ、経時安定性の良い、そして不揮発分の高い培土固化用水性合成樹脂エマルジョンが得られやすくなる。
PVA系樹脂(B)の一部が、合成樹脂(A)にグラフトしていると、経時の貯蔵安定性や培土類等との混和安定性がより一層優れるようになる。
上記培土固化用水性合成樹脂エマルジョンを乾燥してなる再乳化性の培土固化用水性合成樹脂エマルジョン粉末であると、紙袋包装が可能で重量が軽くなることから輸送コストを低減でき、また保存方法や取り扱い上容易になる。
平均粒径1〜5mmの育苗培土が、育苗培土全体の60重量%以上であると、育苗培土全体として通気性と保水性のバランスの取れた、育苗に望ましい団粒構造の培土となるようになる。
培土固化用水性合成樹脂エマルジョン、および培土固化用水性合成樹脂エマルジョン粉末を再乳化してなる水性合成樹脂エマルジョンの少なくとも一方と、培土とを含有する混合物を、造粒成形する育苗培土の製法によると、育苗に望ましい団粒構造の培土を作成しやすくなる。
つぎに、本発明の実施の形態について詳しく説明する。
本発明の培土固化用水性合成樹脂エマルジョン(以下、「エマルジョン」という)は、アクリル系モノマー、ビニル系モノマー、およびスチレン系モノマー群から選ばれた少なくとも1種のモノマー成分(a)を主成分として重合してなる合成樹脂(A)が、PVA系樹脂(B)により分散安定化されているエマルジョンである。
そして、このエマルジョンは、上記アクリル系モノマー、ビニル系モノマー、およびスチレン系モノマー群から選ばれた少なくとも1種のモノマー成分(a)等を乳化重合等して、合成樹脂(A)を得る際に、乳化剤としてPVA系樹脂(B)を存在させる等して得られるものであり、通常、均一な乳白色であって、合成樹脂(A)が、PVA系樹脂(B)の水溶液中に、分散し安定状態になっているものをいう。
ついで、上記合成樹脂(A)について詳細に述べる。
《合成樹脂(A)について》
〈合成樹脂(A)を形成するモノマー〉
本発明に係る合成樹脂(A)を形成するモノマーとしては、アクリル系モノマー、ビニル系モノマー、およびスチレン系モノマー群から選ばれた少なくとも1種のモノマー成分(a)を、主成分として含有したものである。そして、上記モノマー成分(a)として、好ましくは、官能基を含有しないアクリル系モノマー、官能基を含有しないビニル系モノマー、およびスチレン系モノマー群から選ばれた少なくとも1種のモノマー成分(a1)である。
上記アクリル系モノマー(a)としては、特に限定されるものではないが、官能基を含有するモノマーと、官能基を含有しないモノマーとがあげられ、官能基を含有するアクリル系モノマーについては、官能基含有モノマー(x)の項で後述する。官能基を含有しないアクリル系モノマー(a1)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の脂肪族(メタ)アクリレートやフェノキシ(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート等の炭素数が1〜6のアルコキシ基と炭素数が1〜4のアルキル鎖を有するアルコキシアルキル(メタ)アクリレート等があげられる。これらは、単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。中でも、2−メトキシエチル(メタ)アクリレートや、アルキル基の炭素数が1〜18の脂肪族(メタ)アクリレートが好ましく、特にはアルキル基の炭素数が1〜3の脂肪族(メタ)アクリレートとアルキル基の炭素数が4〜18の脂肪族(メタ)アクリレートとを併用することも好ましい。
なお、ここで(メタ)アクリレートとは、アクリレートまたはメタクリレートを意味するものである。
上記ビニル系モノマー(a)としても、官能基を含有するモノマーと、官能基を含有しないモノマーとがあげられ、官能基を含有するビニル系モノマーについては、官能基含有モノマー(x)の項で後述する。官能基を含有していないビニル系モノマー(a1)としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウリル酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のカルボン酸ビニル系モノマー、エチレン等のオレフィン系モノマー、塩化ビニル等のハロゲン化オレフィン系モノマー、メチルビニルエーテル等のビニルエーテル系モノマー等があげられる。これらは、単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
上記スチレン系モノマー(a)としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン等があげられる。これらは、単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
さらに、上記官能基を含有しないアクリル系モノマー、官能基を含有しないビニル系モノマー、およびスチレン系モノマー群から選ばれた少なくとも1種のモノマー成分(a1)とともに、官能基を含有するアクリル系モノマー,官能基を含有するビニル系モノマー等の官能基含有モノマー(x)を併せて用いることが特に好ましい。これにより、本発明のエマルジョンからなる樹脂自体の強靭性を向上させることや、培土を固化するのに必要なエマルジョンの配合量を少なくしても同等の固化性を保持することができる。
かかる官能基含有モノマー成分(x)としては、例えば、ヒドロキシ基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマー、グリシジル基含有モノマー、加水分解性シリル基含有モノマー、アセトアセチル基含有モノマー、ビニル基含有モノマー、アミド基含有モノマー、カルボニル基含有モノマー、ニトリル基含有モノマー、アミノ基含有モノマー等があげられる。中でもヒドロキシ基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマー、グリシジル基含有モノマー、アセトアセチル基含有モノマー等を用いることが好ましい。
ヒドロキシ基含有モノマーとしては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の炭素数が1〜4のアルキル鎖を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等があげられ、中でもヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが好ましい。
カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸等のエチレン性不飽和カルボン酸等があげられ、中でもメタクリル酸が好ましい。
グリシジル基含有モノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等があげられ、中でも、エマルジョンからなる樹脂の強靭性の向上の観点から、グリシジル(メタ)アクリレートが好ましい。
加水分解性シリル基含有モノマーとしては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン等があげられ、中でも、培土材料への固化性の観点から、ビニルトリメトキシシランが好ましい。
アセトアセチル基含有モノマーとしては、例えば、アセト酢酸ビニルエステル、アセト酢酸アリルエステル、ジアセト酢酸アリルエステル、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエチルクロトナート、アセトアセトキシプロピル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシプロピルクロトナート、2−シアノアセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート等があげられ、中でも、培土材料への固化性の観点から、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
ビニル基含有モノマーとしては、分子構造中にビニル基を2個以上有するモノマーであることが好ましく、例えば、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,2−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート等があげられ、中でも、樹脂自体の強靭性の向上の観点から、エチレングリコールジ(メタ)アクリレートが好ましい。
アミド基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、t−ブチルアクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等があげられ、中でも、親水性・保水性の観点から、アクリルアミドが好ましい。
カルボニル基含有モノマーとしては、例えば、ダイアセトンアクリルアミド等があげられ、中でも、親水性・保水性、及び培土材料への固化性の観点から、ダイアセトンアクリルアミドが好ましい。
ニトリル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリロニトリル等があげられる。
アミノ基含有モノマーとしては、例えば、アミノエチルエステルタイプのジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート等があげられる。
上記官能基含有モノマー成分(x)は、単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
本発明に係る合成樹脂(A)は、アクリル系モノマー、ビニル系モノマー、およびスチレン系モノマー群から選ばれた少なくとも1種のモノマー成分(a)を主成分として重合してなるものであるが、ここで主成分とは、全体の過半を占める成分をいい、全体が主成分のみからなる場合を含む意味である。
また、本発明において好ましくは、官能基を含有しないアクリル系モノマー、官能基を含有しないビニル系モノマー、およびスチレン系モノマー群から選ばれた少なくとも1種のモノマー成分(a1)と、官能基含有モノマー成分(x)とを重合成分として含有する。かかる官能基含有モノマー成分(x)の含有割合は、全モノマー成分に対して0.01〜30重量%であることが好ましく、0.1〜25重量%であることがより好ましく、0.5〜20重量%であることがさらに好ましい。すなわち、少なすぎると樹脂の強靭性の向上、および培土材料への固化性の改善が不充分になる傾向がみられ、逆に、多すぎると重合不良となったり、樹脂が脆くなったりする傾向がみられるからである。
また、本発明において、上記の重合成分の中でも、親水性を有するモノマーを用いることが、培土に対する浸透性や保水性の点で、特に好ましい。
本発明において、「親水性を有する」とは、20℃の水に対する溶解度が1重量%以上、好ましくは1.5重量%以上であることを意味するものである。
上記重合成分の中で、親水性を有するモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチルアクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、およびアミノエチルエステルタイプのジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、(メタ)アクリル酸等があげられ、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。中でも、メチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メタクリル酸が好ましく、より好ましくはメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートである。但し、これらモノマーに限定されるものではなく、溶解度が上記範囲のものであれば適宜用いられる。
なお、上記親水性を有するモノマーの20℃の水に対する溶解度の一例を示すと、例えば、下記の通りである。
メチルメタクリレート :1.72 重量%
ヒドロキシエチルメタクリレート :∞ 重量%
ヒドロキシプロピルメタクリレート :13.4 重量%
2−エトキシエチルアクリレート :5.5 重量%
2−メトキシエチルメタクリレート :1.38 重量%
メタクリル酸 :約18 重量%
酢酸ビニル :2.3 重量%
上記合成樹脂(A)が、上記親水性を有するモノマーを、全モノマー成分に対して10重量%以上含有するモノマーの重合により得られたものであることが好ましく、より好ましくは20重量%以上、さらに好ましくは30重量%以上であり、特には50重量%以上であることが好ましい。すなわち、培土と混和等して乾燥した後においても、その培土自体は速やかな吸水速度と保水性、特に灌水・散水および浸漬等においては高度な吸水速度が求められ、上記親水性を有するモノマーの含有割合が低すぎると、所望の高度な吸水速度が得られない傾向があり、灌水・散水および浸漬等に時間がかかれば、農園芸作業の合理化・省力化にも影響が出てくることが考えられるからである。なお、親水性を有するモノマーの含有割合の上限としては、通常80重量%であり、残りが疎水性モノマーであることが好ましい。
〈その他の成分〉
本発明においては、前記したモノマー成分(a)等の重合成分の重合の際に、必要に応じて、重合開始剤、重合調整剤等の他の成分を適宜用いることができる。
「重合開始剤」
上記重合開始剤としては、通常の乳化重合に使用できるものであれば、特に制限されるものではないが、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の無機過酸化物;有機過酸化物、アゾ系開始剤、過酸化水素、ブチルパーオキサイド等の過酸化物;およびこれらと酸性亜硫酸ナトリウムやL−アスコルビン酸等の還元剤とを組み合わせたレドックス重合開始剤等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上を併せて用いることができる。これらの中でも、乳化重合が容易な点で、無機酸化物、特には過硫酸アンモニウムや過硫酸カリウムが好ましい。
「重合調整剤」
上記重合調整剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができる。このような重合調整剤としては、例えば、連鎖移動剤、バッファー等があげられる。
ここで、上記連鎖移動剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール;アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、フルフラール、ベンズアルデヒド等のアルデヒド類;および、ドデシルメルカプタン、ラウリルメルカプタン、ノルマルメルカプタン、チオグリコール酸、チオグリコール酸オクチル、チオグリセロール等のメルカプタン類等があげられる。これらは、単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
連鎖移動剤を用いることにより重合を安定に行わせることができるが、合成樹脂(A)の重合度を低下させ、その結果、得られる樹脂の強靭性や培土への接着性などを低下させる可能性があるため、連鎖移動剤を使用する場合には、その使用量をできる限り少なくすることが望ましい。
ここで、前記バッファーとしては、例えば、酢酸ソーダ、酢酸アンモニウム、第二リン酸ソーダ等があげられる。これらは、単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
本発明においては、上記以外に、必要に応じて、補助乳化剤、可塑剤、造膜助剤等の他の成分を適宜用いることができる。
「補助乳化剤」
上記補助乳化剤としては、乳化重合に用いることができるものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、界面活性剤、PVA系樹脂以外の保護コロイド能力を有する水溶性高分子、水溶性オリゴマー等の公知のものの中から、適宜選択することができる。
ここで、上記界面活性剤としては、特に制限されるものではないが、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤;カチオン性界面活性剤;プルロニック型構造を有するものやポリオキシエチレン型構造を有する等のノニオン性界面活性剤;構造中にラジカル重合性不飽和結合を有する反応性界面活性剤等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。これらの中でも、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤が好ましい。このような界面活性剤を使用することにより、乳化重合をスムーズに進行させ、重合を容易にコントロールでき、かつ、重合中に発生する粗粒子やブロック状物の発生を抑制することができる。また、界面活性剤は、エマルジョンの表面張力を低下させることができることから、使用する培土の撥水性が高い場合には、灌水・散水及び浸漬する際の吸水・浸透性を改良することができる。
しかしながら、これら界面活性剤を乳化剤として多く使用すると、育苗性が低下することも予想されるため、その使用量はPVA系樹脂(B)に対して補助的な量であること、すなわち、できる限り少なくすることが望ましい。
ここで、前記PVA系樹脂(B)以外の保護コロイド能力を有する水溶性高分子としては、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等があげられる。この水溶性高分子は、本発明において保護コロイド能力を有するPVA系樹脂と併用してもよい。上記例示のセルロース系水溶性高分子は、特に大きな保水材・吸水材としての効果を有する。よって、セルロース系水溶性高分子を、保護コロイド剤として用いる他、保水材・吸水材として培土用各種材料の一つとして配合して使用することもできる。さらに、水性合成樹脂エマルジョン粒子の粒子径コントロールや粘性を変化させる点で効果がある。ただし、その使用量によってはエマルジョンの粘度を高めることがあるので、予め確認してから乳化重合に使用することが望ましい。
ここで、前記水溶性オリゴマーとしては、例えば、スルホン酸基、カルボキシル基、水酸基、アルキレングリコール基等の親水性基を有する重合度が、10〜500程度の重合体または共重合体が好適にあげられる。
この水溶性オリゴマーの具体例としては、例えば、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸共重合体等のアミド系共重合体、メタクリル酸ナトリウム−4−スチレンスルホネート共重合体、スチレン/マレイン酸共重合体、メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、ポリ(メタ)アクリル酸塩等があげられる。さらに、スルホン酸基、カルボキシル基、水酸基、アルキレングリコール基等を有するモノマーや、ラジカル重合性の反応性乳化剤を、予め単独または他のモノマーと共重合してなる水溶性オリゴマー等もあげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。これらの中でも、エマルジョン粉末の再乳化性を付与できる点、顔料および炭酸カルシウム等のフィラーとの混和安定性の点で、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸共重合体、メタクリル酸ナトリウム−4−スチレンスルホネート共重合体が好ましい。水溶性オリゴマーは、乳化重合を開始する前に、予め重合したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
「可塑剤および造膜助剤」
上記可塑剤としては、例えば、塗料用・接着剤用に汎用的に使用されるアジペート系可塑剤、フタル酸系可塑剤、燐酸系可塑剤等があげられる。また、上記造膜助剤としては、例えば、「CS−12」(チッソ社製)等があげられる。
これら重合開始剤、重合調整剤、補助乳化剤、可塑剤、造膜助剤等の他の成分の使用量は、本発明の目的を阻害しない限りにおいて特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
このように合成樹脂(A)は、前記重合成分〔モノマー成分(a)、好ましくはモノマー成分(a1)、さらに好ましくはモノマー成分(a1)および官能基含有モノマー成分(x)等〕や重合開始剤等その他の成分を用いて、重合することにより得られるものであり、本発明の水性合成樹脂エマルジョンは、この合成樹脂(A)が、PVA系樹脂(B)によって分散安定化しているものである。
この合成樹脂(A)の分散状態としては、合成樹脂(A)が、平均粒子径0.1〜2μmの粒子状に分散していることが好ましい。より好ましくは、平均粒子径0.2〜1μmであり、さらに好ましくは、0.3〜1μmである。すなわち、平均粒子径が小さすぎると、マイグレーション防止効果が少なく、培土全体に均一に分布しない傾向がみられ、また、平均粒子径が大きすぎると、マイグレーション防止効果はあるものの、培土と均一に混ざりにくく、培土に用いられるピートモスの繊維部分やベントナイト粉末表面のくぼみなどに、粒子が部分的に引っかかる状態で存在し、均一分布性・浸透性に劣る傾向がみられるからである。
ここで、合成樹脂(A)の平均粒子径は、慣用の方法、例えばレーザー解析/散乱式粒度分布測定装置「LA−910」(堀場製作所社製)により測定することができる。
上記合成樹脂(A)のガラス転移温度は、特に限定されるものではないが、冬場・夏場の育苗作業を考慮すれば、−20〜+15℃の範囲内であることが好ましい。より好ましくは、−15〜+10℃の範囲内であり、さらに好ましくは、−7〜+5℃の範囲内である。すなわち、ガラス転移温度が低すぎると、これをバインダーに使用した培土が、保管中などにおいて固まってしまう傾向がみられ、逆に、高すぎると、冬場の寒い状況下ではバインダーとしての結合力が低下する傾向がみられるからである。
《PVA系樹脂(B)について》
本発明において、上記合成樹脂(A)の分散を安定化する分散安定剤(乳化剤)としては、PVA系樹脂(B)が用いられる。そして、乳化重合等して合成樹脂(A)を得る際に、乳化剤として、PVA系樹脂(B)を加えると、樹脂粒子(疎水コロイド系)の乳化・分散の安定性が著しく増大する。これはPVA系樹脂(B)が、樹脂粒子表面にグラフトや吸着することにより、樹脂粒子を包みこんだ状態で存在するためである。この場合のPVA系樹脂(B)を保護コロイドといい、エマルジョンを蒸発凝固しても、元のコロイド溶液に戻すことができるようになる。
上記PVA系樹脂(B)としては、特に限定されるものではないが、次に示す特定の平均ケン化度および平均重合度を有するものが、特に好ましい。
PVA系樹脂(B)の平均ケン化度としては、80〜99.9モル%であることが好ましく、より好ましくは、85〜99.5モル%である。すなわち、ケン化度が小さすぎると安定に重合が進行しにくく、重合が完結したとしても水性エマルジョンの保存安定性が劣る傾向がみられ、逆に、大きすぎると再分散し難くなる傾向がみられるからである。なお、本発明において、ケン化度は、JISK 6726に準拠して求めることができる。
また、PVA系樹脂(B)の平均重合度としては、50〜3000であることが好ましく、より好ましくは、200〜2000であり、さらに好ましくは、200〜500である。すなわち、平均重合度が小さすぎると、乳化重合時の保護コロイド能力が不充分となり重合が安定に進行しない傾向がみられ、逆に、大きすぎると、重合時に増粘して反応系が不安定になり分散安定性が低下する傾向がみられるからである。なお、本発明において、平均重合度は、JISK 6726に準拠して求めることができる。
そして、PVA系樹脂(B)の中でも、特に、活性水素を有するPVA系樹脂(B1)、および側鎖に1, 2−ジオール結合を有するPVA系樹脂(B2)の少なくとも一方であることが好ましい。これらは、重合時にモノマーとの反応性が良好であるため重合安定性に優れ、不揮発分の高いエマルジョンが得られる傾向にあるからである。このように、不揮発分の高いエマルジョンが得られると、輸送コストの低減、エマルジョンの乾燥性の向上、特に、噴霧乾燥時における乾燥熱エネルギーの省力化ができるようになる。
上記活性水素を有するPVA系樹脂(B1)としては、例えば、アセトアセチル基変性PVA系樹脂、メルカプト基変性PVA系樹脂、ジアセトンアクリルアミド変性PVA系樹脂等があげられる。これらは、単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これらの中でも、重合安定性を改善できる点、エマルジョン粉末の再乳化性を向上できる点、合成樹脂(A)へのグラフト率が高くなるため、皮膜の耐水性を向上できる点等の理由から、アセトアセチル基変性PVA系樹脂が最も好ましい。
上記アセトアセチル基変性PVA系樹脂におけるアセトアセチル化度は、0.01〜10モル%であることが好ましい。より好ましくは、0.01〜6モル%であり、さらに好ましくは、0.03〜3モル%であり、特に好ましくは、0.03〜2モル%であり、最も好ましくは、0.03〜1モル%である。アセトアセチル化度が小さすぎると、重合安定性、皮膜の耐水性および機械安定性が低下する傾向や、さらに、耐煮沸性やフィラー類などとの混和性が低下する傾向がみられ、逆に、大きすぎると、乳化重合時の重合安定性が不良となる傾向がみられるからである。
上記アセトアセチル基変性PVA系樹脂における分子上に存在するアセトアセチル基は、分子内の一定領域にブロック状に固まって配置しているものよりも、分子内において相対的にランダムに配置されているものの方が好ましい。
上記アセトアセチル基変性PVA系樹脂における平均ケン化度は、95モル%以上であることが好ましい。より好ましくは、97〜99.8モル%である。平均ケン化度が小さすぎると、安定に重合が進行しにくくなり、重合が完結したとしてもエマルジョンの保存安定性が良好でなくなる傾向がみられ、逆に、大きすぎると、重合安定性が悪くなり、重合途中でゲル化することがあり、重合が完結したとしても再乳化し難くなる傾向がみられるからである。
上記アセトアセチル基変性PVA系樹脂における平均重合度は、50〜2000であることが好ましく、200〜600であることがより好ましい。小さすぎると、乳化重合時の保護コロイド能力が不充分になり重合が安定に進行しない傾向がみられ、逆に、大きすぎると、重合時に増粘して反応系が不安定になり、分散安定性が低下する傾向がみられる。
次に、本発明のPVA系樹脂(B)として好ましく用いられる、側鎖に1,2−ジオール結合を有するPVA系樹脂(B2)について説明する。このB2は、公知のものであり、通常、下記一般式(1)で示される1,2−ジオール構造単位を含有するPVA系樹脂があげられる。
Figure 2009013373
このような側鎖に1,2−ジオール結合を有するPVA系樹脂(B2)は、例えば、(ア)酢酸ビニルと3,4−ジアセトキシ−1−ブテンとの共重合体をケン化する方法、(イ)酢酸ビニルとビニルエチレンカーボネートとの共重合体をケン化及び脱炭酸する方法、(ウ)酢酸ビニルと2,2−ジアルキル−4−ビニル−1,3−ジオキソランとの共重合体をケン化及び脱ケタール化する方法、(エ)酢酸ビニルとグリセリンモノアリルエーテルとの共重合体をケン化する方法、等により得られる。
上記側鎖に1,2−ジオール結合を有するPVA系樹脂(B2)における平均ケン化度は、85モル%以上であることが好ましい。より好ましくは90〜99.8モル%である。すなわち、平均ケン化度が小さすぎると、エマルジョンの重合時の安定性が低下して目的とする水性エマルジョンを得ることが困難になる傾向がみられるからである。
上記側鎖に1,2−ジオール結合を有するPVA系樹脂(B2)における側鎖の1,2−ジオール結合量は、1〜15モル%であることが好ましく、より好ましくは1〜12モル%、さらに好ましくは2〜10モル%、さらに特に好ましくは2〜8モル%である。すなわち、1,2−ジオール成分の含有量が少なすぎると、エマルジョンの機械安定性や皮膜の耐水性などが低下する傾向がみられ、逆に、多すぎると、重合時の安定性が低下し、不揮発分の高い安定なエマルジョンが得られにくくなる傾向がみられるからである。
上記側鎖に1,2−ジオール結合を有するPVA系樹脂(B2)における平均重合度は、50〜3000が好ましく、より好ましくは100〜2000、さらに好ましくは100〜1000、特に好ましくは200〜500である。すなわち、重合度が小さすぎると、PVA系樹脂を工業的に製造することは困難となる傾向がみられ、逆に、大きすぎると、エマルジョンの粘度が高くなり過ぎたり、エマルジョンの重合安定性が低下したりする傾向がみられるからである。
本発明において、分散安定化剤(乳化剤)として使用するPVA系樹脂(B)の使用量は、合成樹脂(A)を形成する全モノマー成分100重量部(以下「部」と略す)に対して、3〜20部配合することが好ましく、より好ましくは4〜10部である。すなわち、上記PVA系樹脂(B)の使用量が少なすぎると、乳化重合の際の保護コロイド量が不足することとなり、重合安定性が不良となる傾向がみられ、逆に、多すぎると、水性合成樹脂エマルジョン粉末とした場合には再乳化性は良好となるものの粉末中に水溶性成分が多く存在することとなり、応用用途での耐水性が低下する傾向がみられるからである。
本発明において、PVA系樹脂(B)として、上記のB1及びB2以外の変性タイプや非変性タイプの、部分または完全ケン化されたPVA系樹脂を、本発明の目的を阻害しない範囲において併用することができる。
特に、PVA系樹脂(B)として、アニオンを有する基を含むPVA系樹脂を併用することも好ましく、このアニオンを有する基としては、スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基等をあげることができるが、これらの中でも、エマルジョン中のpHに関係なく、安定して強い電荷反発が得られる点から、スルホン酸基が好ましい。
本発明では、PVA系樹脂(B)は、通常、水系媒体を用いて水溶液としたものが、乳化重合の過程において使用される。ここで水系媒体とは、水、または水を主体とするアルコール性溶媒をいい、好ましくは水のことをいう。
このPVA系樹脂水溶液におけるPVA系樹脂(B)の量(不揮発分)について、特に限定されるものではないが、取り扱いの容易性の観点からは、PVA系樹脂水溶液の5〜30重量%であることが好ましい。
《合成樹脂(A)のグラフト化について》
さらに、本発明においては、PVA系樹脂(B)の少なくとも一部が、前記の合成樹脂(A)にグラフトしていることが、エマルジョン自体の貯蔵安定性や育苗培土類などとの混和安定性等の点から好ましい。
このグラフト化は、例えば、PVA系樹脂(B)の水溶液中に、前記モノマー成分(a)を含有する所定の混合モノマーの一部と重合開始剤とを加えて、70〜85℃の条件下で初期の重合を行わせ、ついで、この樹脂粒子の乳化・分散液に、残りに混合モノマーと重合開始剤を連続して滴下し、重合させることにより得られる。
PVA系樹脂(B)が合成樹脂(A)にグラフトした場合に、下記式(1)で表される値(W)が50重量%以上であることが好ましい。より好ましくは60〜95重量%であり、さらに好ましくは65〜85重量%である。かかる値は、グラフト化程度の目安になるものであり、この値が低すぎると、グラフト化の程度が低く、乳化重合時の保護コロイド作用が低下して重合安定性や得られたエマルジョンの経時安定性などが低下したり、加えて培土類等との混和性・固化性やマイグレーション防止性が低下したりする等の傾向がみられ、逆に、高すぎると、グラフト化の程度が高く、重合中にエマルジョンが増粘したりゲル化したりする傾向がみられるからである。
式(1)の値(W)は、以下のようにして算出される。即ち、対象となるエマルジョン等を、40℃×16時間乾燥して、厚さが約0.5mmの皮膜を作製し、それを23℃×65%RH下に2日間放置する。その皮膜を、沸騰水中で8時間抽出を行った後、アセトン中で8時間抽出を行い、グラフト化していない樹脂等を除去する。この場合の、抽出前の皮膜絶乾重量をw(g)、抽出後の皮膜絶乾重量をw(g)とし、下記の式より求める。
W(重量%)=(w)/(w)×100 …(1)
:抽出前の皮膜絶乾重量(g)
:抽出後の皮膜絶乾重量(g)
なお、抽出前の皮膜絶乾重量(w)は、予め、抽出試験サンプルとは別のサンプルを105℃×1時間乾燥させ、皮膜絶乾重量を算出したものであり、抽出後の皮膜絶乾重量(w)は、抽出後のサンプルを105℃×1時間乾燥させた時の重量である。これらwとwの重量の算出は、それぞれ別のサンプルを用いたものであるため、同一条件下での取り扱いとすべく、両サンプルの乾燥にともなう揮発分割合により補正して、両サンプルの皮膜絶乾重量を算出した。
上記式(1)の値(W)が50重量%以上に調整する方法としては、乳化重合温度を従来よりもやや高くしたり、重合用触媒として使用する過硫酸塩に極微量の還元剤(例えば、酸性亜硫酸ソーダ等)を併用したりする等の方法があげられる。
《エマルジョンおよびエマルジョン粉末について》
上記の各成分を用い、PVA系樹脂(B)を乳化剤として、乳化重合等することにより水性合成樹脂エマルジョンが製造される。そして、この水性合成樹脂エマルジョンを乾燥することにより、本発明の、再乳化性の培土固化用水性合成樹脂エマルジョン粉末(以下、これを「エマルジョン粉末」という)が製造される。これらエマルジョンおよびエマルジョン粉末の製法についての詳細は後述する。
ここで、エマルジョン粉末とは、例えば、水などの水系媒体にエマルジョン粉末を分散すると再乳化して元のエマルジョン(以下、これを「再乳化エマルジョン」という)状態に戻ることができる粉末のことをいう。また、上記エマルジョンおよび再乳化エマルジョンの少なくとも一方を、以下「エマルジョン類」と略す。
〈各種の添加剤〉
本発明のエマルジョン類、およびエマルジョン粉末に対しては、各々必要に応じて、各種の添加剤をさらに加えることができる。
このような添加剤としては、例えば、無機または有機のフィラー類、水溶性添加剤(水溶性樹脂類)、顔料・フィラー等の分散剤、浸透剤・濡れ剤、抗粘結剤、増粘剤、pH調整剤、防腐剤、酸化防止剤等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
上記水溶性添加剤(水溶性樹脂類)としては、保水剤・吸水剤、増粘剤として効果的であるヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、澱粉誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイドが特に良い。また、水溶性アルキド樹脂、水溶性フェノール樹脂、水溶性ウレア樹脂、水溶性メラミン樹脂、水溶性グアナミン樹脂、水溶性ナフタレンスルホン酸樹脂、水溶性アミノ樹脂、水溶性ポリアミド樹脂、水溶性アクリル樹脂、水溶性ポリカルボン酸樹脂、水溶性ポリエステル樹脂、水溶性ポリウレタン樹脂、水溶性ポリオール樹脂、および、水溶性エポキシ樹脂等も、培土の固化強度を向上させるなどの点で効果的である。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。粉末状の水溶性添加剤であれば、一度溶解してからエマルジョン類に直接添加してもよい。
上記浸透剤・濡れ剤としては、塗料、接着剤、プラスチック類等へのコート剤等に使用されているものであれば、特に制限されるものではなく、いずれのものでも使用可能である。例えば、スルホコハク酸系(ペレックスOTP/花王社製)、アセチレン系(サーフィノール440/日信化学社製)等が一般的である。また、加えて乳化重合用に使用される乳化剤,界面活性剤等も、本発明の目的を阻害しない限りにおいて使用できる。
浸透剤・濡れ剤は、灌水・散水や浸漬処理して固化する際において、エマルジョン等の吸水・浸透が遅く、作業性などに差し障りがある場合には、エマルジョン等に、浸透剤・濡れ剤を添加して表面張力を低下させ、吸水・浸透を速めることが必要である。
浸透剤・濡れ剤の使用量は、培土を形成する材料自体の表面の撥水性等にも影響を受けるが、エマルジョン等の不揮発分に対して、0.05〜1%程度が適当である。これらの使用量が少ないと期待する水の吸水・浸透速度にならなかったり、作業効率の改善が不充分となったりする傾向がみられ、逆に、多くてもさらなる効果は期待できず、無駄になってしまう傾向がみられるからである。
上記抗粘結剤としては、例えば、不活性な無機粉末または有機粉末があげられる。この無機粉末としては、炭酸カルシウム、タルク、クレー、ドロマイト、無水珪酸、アルミナホワイト等があげられ、また、有機粉末としては、合成樹脂のガラス転移温度が70℃以上のエマルジョン類を噴霧乾燥してなる樹脂粉末等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これらの中でも、無水珪酸、炭酸カルシウム、クレー等が好ましい。抗粘結剤を添加することにより、抗粘結剤で樹脂粉末をまぶすような状態にして貯蔵中などにおいて粒子同士が粘結して凝集しブロッキングするのを防止することができる。
抗粘結剤の使用方法としては、エマルジョン類に混合したり、エマルジョン粉末に混合したり、噴霧乾燥時にエマルジョンと別のノズルから抗粘結剤を噴霧する等があげられる。
抗粘結剤の使用量は、エマルジョン等の不揮発分に対して、5〜30重量%程度であることが好ましい。
以上の添加剤の添加方法としては、一般に、液状の添加剤であれば、直接または水で希釈してからエマルジョン類に添加することが好ましい。また、粉末状の水溶性添加剤であれば、エマルジョン類に直接添加してもよいが、水で溶解してからエマルジョン類に添加、もしくはエマルジョン粉末に直接添加して用いることが好ましい。さらに、粉末状の非水溶性添加剤であれば、エマルジョン粉末に直接添加して用いることが好ましい。そして、エマルジョン粉末に液状添加剤を含有させたい場合には、この液状添加剤をエマルジョン類に添加してから噴霧、乾燥することが好ましい。
〈再乳化性向上のための後添加〉
一方、エマルジョン粉末の水への再乳化性をより向上させるため、乾燥前のエマルジョン、またはエマルジョン粉末に、未変性PVA、変性PVA、上記水溶性添加剤(水溶性樹脂類)からなる群から選ばれる1種以上を添加(この添加を「後添加」という)することが好ましい。特に好ましくは、乾燥前のエマルジョンに後添加し、これを噴霧乾燥してエマルジョン粉末とすることである。これら後添加する樹脂の中でも、未変性PVAがより好ましい。
上記後添加用の未変性PVAとしては、その平均ケン化度が、85モル%以上であることが好ましく、より好ましくは、87モル%以上である。また、平均ケン化度の上限値としては、特に限定されるものではないが、99.5モル%以下であることが好ましく、より好ましくは、95モル%以下である。平均ケン化度が小さすぎると耐水性が著し低下する傾向がみられ、逆に、大きすぎると耐水性が良くなるが、水への再乳化性を悪くする傾向がみられるからである。
また、後添加用の未変性PVAの平均重合度としては、50〜3000であることが好ましく、より好ましくは、200〜2000であり、さらに好ましくは、300〜600である。平均重合度が小さすぎると耐水性が低下する傾向がみられ、逆に、大きすぎると再乳化性が低下する傾向がみられるからである。
後添加用の未変性PVAの使用量としては、乾燥前のエマルジョンの不揮発分100部に対して、2〜30部であることが好ましく、より好ましくは、5〜20部である。使用量が少なすぎると再乳化性向上が充分でない傾向がみられ、逆に、多すぎるとエマルジョン粉末の耐水性が充分でなくなる傾向がみられるからである。
上記後添加用の変性PVAとしては、特に限定されるものではないが、例えば、上記後添加用の未変性PVAに対し、カルボン酸変性、スルホン酸変性、アセトアセチル基変性、メルカプト基変性、カルボニル基変性、シラノール基変性、アミノ基変性、カチオン基変性、アミド基変性、側鎖に1,2−ジオール結合を導入する等の変性を行った変性PVAをあげることができる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。これらの中でも、アセトアセチル基変性PVA、側鎖に1,2−ジオール結合を有する変性PVAが好ましい。
ここで、上記アセトアセチル基変性PVAとしては、アセトアセチル化度が0.01〜10モル%であることが好ましく、より好ましくは0.03〜6モル%である。また、上記側鎖に1,2−ジオール結合を有する変性PVA系樹脂としては、側鎖の1,2−ジオール結合の含有量が1〜15モル%であることが好ましく、より好ましくは1〜12モル%である。
そして、後添加用の未変性PVA、変性PVAの添加としては、通常、乳化重合後であって乾燥前のエマルジョンに添加することが好ましいが、使用する未変性PVA、変性PVAの種類、添加量および用途に応じて、エマルジョン粉末に加えても良い。
重合度の高いPVAは、乳化重合中においては、その重合安定性から使用し難いが、重合後の後添加であれば、特に問題なく使用することができる。ただし、水への溶解性が容易でないものは、再乳化性に悪影響を与える場合があるため、事前に水への溶解性を確認した上で使用することが望ましい。
また、アセトアセチル基変性PVAおよびカルボニル基変性PVAの少なくとも一方を、後添加した場合、及び/又はアセトアセチル基含有モノマーおよびカルボニル基含有モノマーの少なくとも一方をモノマー成分として重合している場合、更にこれらのエマルジョンからなるエマルジョン粉末を再乳化してエマルジョン状態に戻した場合等に、必要に応じて、これらの架橋剤として用いられるイソシアネート系化合物、アジリジン系化合物、エポキシ基含有化合物、アミン系化合物、アルデヒド系化合物、メチロールメラミン系ポリマー等と適宜組み合わせて使用することもできる。
次に、本発明のエマルジョン、エマルジョン粉末についての製法について説明する。
《エマルジョンの製法について》
本発明のエマルジョンは、PVA系樹脂(B)を乳化剤として用いて、モノマー成分(a)を含有する重合成分を、乳化重合して製造するものである。
通常、乳化重合は、乳化剤および前記したモノマー成分(a)等のモノマー成分以外に、重合開始剤、重合調整剤、補助乳化剤等のような前記した他の成分を、必要に応じて用いて行う。また、重合の反応条件は、特に制限されるものではなく、モノマーの種類、目的等に応じて適宜選択することができる。
上記乳化重合の方法としては、特に制限されるものではなく、例えば、反応缶に、水、PVA系樹脂(B)、必要により他の保護コロイドを仕込み、昇温して、モノマー成分(a)等のモノマー成分と重合開始剤とともに滴下して重合する、モノマー滴下式乳化重合法;および、滴下するモノマーを予めPVA系樹脂と水とで分散・乳化させた後、滴下して重合する、乳化モノマー滴下式乳化重合法等があげられるが、重合工程の管理やコントロール性等の点から、モノマー滴下式乳化重合法が好ましい。
乳化重合過程をさらに具体的に説明にする。ただし、これに限定されるものではない。
まず、反応缶に水、PVA系樹脂、必要に応じて補助乳化剤を仕込み、これを昇温(例えば65〜90℃)した後、モノマー成分の一部と重合開始剤とを、この反応缶に添加して、初期重合を行う。ついで、残りのモノマー成分を、一括または滴下しながら反応缶に添加し、必要に応じて、さらに重合開始剤を添加しながら重合を進行させる。重合反応が完了したと判断されたところで、反応缶を冷却し、目的とするエマルジョンを得ることができる。
《エマルジョン粉末の製法について》
本発明においては、前記乳化重合により得られたエマルジョンに、必要に応じて、添加剤等を加え、それを乾燥することによって、再乳化性のエマルジョン粉末とすることができる。この粉末は、通常、培土に使用するに際して再乳化し、再乳化エマルジョンとして用いる。
乾燥方法は、特に制限されるものではないが、例えば、噴霧乾燥、凍結乾燥、凝析後の温風乾燥等があげられる。これらの中でも、生産コスト、省エネルギーの観点から、噴霧乾燥することが好ましい。
噴霧乾燥の場合、その噴霧形式は、特に制限されるものではなく、例えば、ディスク式、ノズル式等の形式により行うことができる。噴霧乾燥の熱源としては、例えば、熱風、加熱水蒸気等があげられる。噴霧乾燥の条件としては、噴霧乾燥機の大きさ、種類、エマルジョンの不揮発分、粘度、流量等に応じて適宜選択することができる。噴霧乾燥の温度は、通常は、80〜150℃程度である。
噴霧乾燥処理について、さらに具体例をあげて説明する。
まず、エマルジョン中の不揮発分を調整し、これを噴霧乾燥機のノズルより連続的に供給し、霧状にしたものを温風により乾燥させて粉末化させる。場合により、調整した噴霧液を噴霧に際して、予め加温してノズルより連続的に供給し、霧状にしたものを温風により乾燥させて粉末化させることも可能である。加温することで乾燥スピードが速くなり、かつ噴霧液の粘度低下に伴い、噴霧液の高不揮発化が可能で、生産コストの低減にも寄与することができる。
《再乳化エマルジョンの製法について》
上記再乳化エマルジョンは、エマルジョン粉末に、水などの水系媒体を加えることにより得られる。具体的には、例えば、40%分散液を作るとすれば、ビーカーに水を60部取り、攪拌しながらママコにならないようにエマルジョン粉末の40部を加えて分散する。その後回転数を800〜1000回転に上げて10分ほど攪拌し、作成することが出来る。また、エマルジョン粉末に加える水系媒体の配合量は、エマルジョン粉末に対して2〜5倍量であることが好ましく、通常、不揮発分が、20〜50重量%程度のエマルジョンになるように、配合する。
以上より得られた本発明のエマルジョン、および再乳化エマルジョンは、培土等のバインダーとして、これらの配合物を結合・固化し、形状を保持する機能を持ち、機械移植時における苗の根部の培土(根鉢部分)の崩壊や根部の欠損を、特に比較的重い培土を使用した時などに起こさせないようにするのに有用である。そして、移植後においては、これら培土自体の水の吸収および苗の成長に伴い、自然に崩壊していく。やがて合成樹脂(A)自体も自然崩壊していく自然環境に優しいタイプの結合剤である。
つぎに、上記得られたエマルジョンおよび再乳化エマルジョンの少なくとも一方(エマルジョン類)を用いた育苗培土について説明する。
《育苗培土について》
本発明の育苗培土は、上記エマルジョン類と、培土とを用いて構成される。
上記育苗培土を構成する培土としては、特に限定されるものではないが、例えば、山土、ピートモス等があげられ、通常、山土等に、保水材・吸水材(例えば、ピートモス、ベントナイト、バーミキュライト、パーライト、ゼオライトなど)や、さらに育苗の種類などにより窒素系,カリ系,リン酸系肥料や、土壌のpH調整剤(例えば、消石灰、保水剤としても効果的なピートモスなど)、殺菌剤・防腐剤等を適宜配合したものがあげられる。
また、培土としての形状は、特に限定されるものではなく、無定形状であっても、粒状等の形状を有していてもよい。
培土としては、通常、大きさ数ミリ程度の粒状や棒状の培土が用いられ、好ましくは粒状培土の平均粒径が1〜5mmであり、より好ましくは、1.5〜4mmである。平均粒径が大きすぎると、培土自体の通気と保水のバランスが崩れて通気が多くなりすぎ、培土全体として固化性が充分でない、すかすか状態になる傾向がみられ、逆に、小さすぎると、通気が少なくなりすぎ、いずれも育苗に適した団粒構造の培土にならなくなり、かつ、培土全体が締まって密度が高くなり、培土は重くなってしまう傾向がみられるからである。
また、粒状培土としては、例えば、培土を造粒した造粒培土等があげられる。この造粒培土の造粒方法としては、従来公知の圧縮成型方式、押出し方式など、転動方式、そして板状等に固めた培土を粉砕等して育苗に程よい大きさに分級する等の方法があげられるが、とくに好ましくは、生産効率の点から、押出し方式による粒状、棒状の培土製造の方法があげられる。
上記培土と上記エマルジョン類との配合割合としては、培土100部に対して、エマルジョン類の不揮発分0.1〜10部であることが好ましく、より好ましくは、1〜5部である。エマルジョン類が多すぎると、培土の固化性が高まり硬くなりすぎ且つ吸水性が低下して苗の根の成長が抑えられる傾向がみられ、逆に、少なすぎると、固化性が不充分で容易に崩壊し、団粒構造が崩れてしまう傾向がみられるからである。
本発明の育苗培土の製法としては、上記エマルジョン類を、培土に、灌水・散水、浸漬、散布、混合する等、エマルジョン類と培土とが接触させる方法であれば、特に制限されるものではないが、エマルジョン類と培土とを均一に混ぜることが好ましい。これらの撹拌・混合には、従来公知の混合機が使用できる。例えば、2重円錐片混合機、V型混合機、水平円錐型混合機、垂直スクリュー型混合機、ミユーラ型混合機、副軸ローター型混合機、モルタルミキサーなどが使用できるが、特に好ましくは、V型混合機である。
特に、粒状の育苗培土を得るためには、上記エマルジョン類を、上記造粒培土等の粒状の培土に、灌水・散水、浸漬、散布、混合等することや、未だ粒状となっていない培土とエマルジョン類とを混合し、その混合物を造粒成形すること等があげられる。中でも、培土とエマルジョン類とを混合し、その混合物を造粒成形することが好ましい。
具体的には、エマルジョン類と培土とを含有する混合物を、圧縮成型式、押出し式、転動方式、そして板状等に固めた培土を粉砕等して造粒することがあげられ、特に好ましくは、押出し方式の造粒成型である。
そして、育苗培土としては、平均粒径1〜5mmの育苗培土を、育苗培土全体の60重量%以上含有していることが、通気と保水のバランスが良く、育苗に適した団粒土壌となることから、特に好ましい。
〈機械移植等のための固化培土〉
エマルジョン類を用いて、機械移植等のために培土を固化する場合には、不揮発分および使用量等を調整して、培土の硬さ等をコントロールすることができる。
例えば、培土のバインダーとして使用する際においては、エマルジョン類の不揮発分や使用量等は、培土を形成する材料の種類、苗の種類と生育状況及び必要とされる培土の硬さなどにより適宜選択される。
特に、培土のバインダーとしてエマルジョン類を用いる場合は、通常、エマルジョン類を水で、10〜50倍程に希釈して、すなわち不揮発分を1〜5重量%程度に希釈して使用する。不揮発分量が多すぎると、育苗培土の固化性は高まる一方、硬くなり過ぎて育苗の妨げになることや吸水速度が遅くなること等の傾向がみられ、逆に、少なすぎると、固化性が不充分で、移植時などにおいて根鉢部分の培土の崩壊が起こりやすくなる傾向がみられるからである。
そして、育苗の機械移植の際などに、培土を固化する具体例としては、まず、育苗用のプラスチック製セルトレー(例えば、タキイ種苗社製:規格128穴)に、培土(例えば、タキイ種苗社製:種まき培土)を詰め、育苗した苗の機械移植前に、希釈したエマルジョン(不揮発分:約4.5重量%に調整)、または再乳化エマルジョン(不揮発分を約4.5重量%に調整)を、このセルトレーに充分に培土全体に行き渡るように、灌水・散水及び浸漬し、固化する等があげられる。これにより、機械移植に供する固化培土が得られるようになる。
以下、実施例をあげて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
なお、例中、「部」、「%」とあるのは、断りのない限り重量基準を意味する。
まず、実施例および比較例で用いる各成分の材料の配合割合について、下記の表1に示す。また、各合成樹脂の計算上のガラス転移温度と、実施例および比較例で得られたエマルジョンの上記式(1)で算出される値(W)を、下記の表1に併せて示した。なお、実施例6は、後添加PVAの添加する前のエマルジョンの上記式(1)で算出される値(W)を示した。
Figure 2009013373
〔実施例1〕
攪拌機と還流冷却器とを備えた2Lサイズのステンレス製反応缶に、790部の水と、アセトアセチル基変性PVA(日本合成化学工業社製、平均ケン化度:約98モル%、平均重合度:約400、アセトアセチル化度:0.5モル%)46部を仕込み、反応缶を85℃に加熱して、アセトアセチル基変性PVAを水に溶解させた。つぎに、この反応缶の温度を80℃に保ち、ここに、予め混合しておいた混合モノマー〔ブチルアクリレート362部/メチルメタクリレート296部=55/45(親水性モノマー:45%)〕の66部を添加して、重合開始剤として過硫酸アンモニウム水溶液(濃度:2.5%)19部を用いて、初期重合反応を1時間行った。次いで、残りの混合モノマー592部を、反応缶に4時間に渡って滴下して、重合開始剤として過硫酸アンモニウム水溶液(濃度:2.5%)38部を、さらに加えながら滴下重合を進行させた。滴下終了後に、過硫酸アンモニウム水溶液(濃度:2.5%)6部を加え、80℃で1時間熟成させ、不揮発分45.3%のエマルジョン(平均粒子径0.45μm)を得た。得られたエマルジョンの上記式(1)で算出される値(W)は、78重量%であった。
上記混合モノマー(ブチルアクリレート/メチルメタクリレート=55/45)からなる合成樹脂の計算上のガラス転移温度(Tg)は、それぞれのホモポリマーのTgを−52℃、105℃とした場合、−1.2℃である。
上記計算上のガラス転移温度は、Foxの式を用いて算出した(日本エマルジョン工業会規格/JFE、合成樹脂エマルジョンの皮膜硬さ表示方法/107−1996)。以下同様の方法により算出する。
〔実施例2〕
混合モノマーの種類と組成比をブチルアクリレート296.1部/スチレン230.3部/ヒドロキシエチルメタクリレート131.6部=45/35/20(親水性モノマー:20%)に変更した以外は、実施例1と同様にして、エマルジョン(不揮発分45.1%、平均粒子径0.65μm)を製造した。得られたエマルジョンの上記式(1)で算出される値(W)は、72重量%であった。
上記混合モノマー(ブチルアクリレート/スチレン/ヒドロキシエチルメタクリレート=45/35/20)からなる合成樹脂の計算上のガラス転移温度(Tg)は、それぞれのホモポリマーのTgを−52℃、100℃、55℃とした場合、+6.0℃である。
〔実施例3〕
実施例1のアセトアセチル基変性PVAを、側鎖に1,2−ジオール結合を有するPVA(日本合成化学工業社製、重合度300、ケン化度99.1モル%、側鎖の1,2−ジオール結合の含有量8モル%)に変更した以外は、実施例1と同様にして、エマルジョン(不揮発分45.6%、平均粒子径0.47μm)を製造した。得られたエマルジョンの上記式(1)で算出される値(W)は、79重量%であった。
上記混合モノマーからなる合成樹脂の計算上のガラス転移温度(Tg)は、実施例1と同様である。
〔実施例4〕
混合モノマーの種類と組成比を、ブチルアクリレート423.8部/メチルメタクリレート231部/アセトアセトキシエチルメタクリレート3.2部=64.4/35.1/0.5(親水性モノマー:35.6%)に変更した以外は、実施例3と同様にして、エマルジョン(不揮発分45.3%、平均粒子径0.51μm)を製造した。得られたエマルジョンの上記式(1)で算出される値(W)は、75重量%であった。
上記主混合モノマー(ブチルアクリレート423.8部/メチルメタクリレート231部=64.7/35.3)からなる合成樹脂の計算上のガラス転移温度(Tg)は、それぞれのホモポリマーのTgを−52℃、105℃とした場合、−14.0℃である。
〔実施例5〕
混合モノマーの種類と組成比を、ブチルアクリレート329部/メチルメタクリレート329部=50/50(親水性モノマー:50%)に変更した以外は、実施例1と同様にして、エマルジョン(不揮発分45.3%、平均粒子径0.51μm)を製造した。得られたエマルジョンの上記式(1)で算出される値(W)は、74重量%であった。
上記混合モノマー(ブチルアクリレート/メチルメタアクリレート=50/50)からなる合成樹脂の計算上のガラス転移温度(Tg)は、それぞれのホモポリマーのTgを−52℃、105℃とした場合、+5.9℃である。
〔実施例6〕
混合モノマーの種類と組成比を、ブチルアクリレート362部/スチレン282.8部/メタクリル酸13.2部=55/43/2(親水性モノマー:2%)に変更した以外は、実施例3と同様にして、エマルジョン(不揮発分45.0%、平均粒子径0.55μm)を製造した。得られたエマルジョンの上記式(1)で算出される値(W)は、63重量%であった。
上記主混合モノマー(ブチルアクリレート362部/スチレン282.8部=56.1/43.9)からなる合成樹脂の計算上のガラス転移温度(Tg)は、それぞれのホモポリマーのTgを−52℃、100℃とした場合、−3.9℃である。
〔実施例7〕(エマルジョン粉末用原液)
実施例1において、重合終了後に平均重合度500、ケン化度88モル%の部分ケン化PVA「ゴーセノールGL05/日本合成化学工業社製」の20%水溶液276部を加え充分に攪拌した以外は実施例1と同様にして、エマルジョン(不揮発分45.5%、平均粒子径0.45μm)を製造した。得られたエマルジョンの上記式(1)で算出される値(W)は、75重量%であった(但し、ステンレス製反応缶に仕込んだ水量は640部)。
なお、本エマルジョンを、下記の製造例1(エマルジョン粉末の製造)記載の方法で粉末化した。
この主モノマーからなる合成樹脂の計算上のガラス転移温度(Tg)は、実施例1と同様である。
(製造例1:エマルジョン粉末の製造)
エマルジョンの不揮発分を調整し、抗粘結剤として平均粒子径約0.02μmの珪酸微粉末を用い、エマルジョンの不揮発分に対して15%の割合での存在下において、ノズル式の噴霧乾燥機により、150℃の温風下にて噴霧乾燥させ、エマルジョン粉末を得た。
〔比較例1〕
実施例1のエマルジョンに代えて、スミカフレックスS−400HQ/EVA(PVA保護コロイド系エチレン・酢酸ビニル系エマルジョン/住化ケムテックス社製)を使用した(不揮発分;55%、Tg:0℃、粒子径:2.5μm、上記式(1)で算出される値(W):57%)。そして、固化性試験,浸透性試験には約2.3%に希釈して、マイグレーション防止性試験には約4.5%に希釈して試験に供した。
〔比較例2〕
実施例1のエマルジョンに代えて、SARTOMER SMA 2000H/ 水溶性スチレン・無水マレイン酸樹脂(不揮発分:25%/川原油化社製)を使用した。固化性試験,浸透性試験には約2.3%に希釈して、マイグレーション防止性試験には約4.5%に希釈して試験に供した。
上記のようにして得られた実施例および比較例の各エマルジョンを用い、下記の方法に従って、育苗培土の固化性試験、吸水・浸透性試験、マイグレーション防止性試験を、測定・評価した。その結果を、後記の表2に示す。なお、実施例7については、得られたエマルジョン粉末を再乳化して不揮発分45%に調整したエマルジョンの評価結果を示す。
〈育苗培土の固化性試験〉
育苗用のプラスチック製セルトレー(タキイ種苗社製:規格128穴)に、培土(タキイ種苗社製:種まき培土)を詰め、水で希釈したエマルジョン類(不揮発分:約2.3%に調整)を、該セルトレーの上から充分に培土全体に行き渡るように散水し、室温下で2日間乾燥した。各セルトレーから、固化した育苗培土を家庭用フォークで刺して取り出し、根鉢部分の培土の固化状況を目視にて評価した。具体的には、育苗培土の固化状況は根鉢部分の培土の崩壊度を下記の基準で評価した。評価A−Bを合格レベルとした。
A:根鉢部分の培土の崩壊度が20%未満――移植に際し、まったく問題ないレベル。
B:根鉢部分の培土の崩壊度が20%以上50%未満――移植に際し、実用上問題ないレベル。
C:根鉢部分の培土の崩壊度が50%以上――移植に際し、問題になることが予想されるレベル。
〈上面灌水・散水時の培土への浸透性試験〉
育苗用のプラスチック製セルトレー(タキイ種苗社製:規格128穴)に、培土(タキイ種苗社製:種まき培土)を詰め、水で希釈したエマルジョン類(不揮発分:約2.3%に調整)を、該セルトレーの上から散水し、培土全体に行き渡り、セルトレーの下から固化液が染み出る時間を以って下記の基準で評価した。評価A−Bを合格レベルとした。
A:セルトレーの下から固化液が染み出る時間が10秒未満――まったく問題ないレベル。
B:セルトレーの下から固化液が染み出る時間が10秒以上30秒未満――実用上問題ないレベル。
C:セルトレーの下から固化液が染み出る時間が30秒以上――作業上問題になるレベル。
〈マイグレーション防止性試験〉
東洋濾紙No.2を正確に10cm角に切り、23℃×65%RH×24時間調湿後、1枚毎に重量を測定する(A)。1枚毎にエマルジョン類(不揮発分を約4.5%に調整)に含浸させ、5枚を重ねたままの状態でマングルを使用して、エマルジョン類が濾紙から滴り落ちない程度に軽く絞る。ついで、直ちに5枚を重ねたままネットで挟んで、130℃×10分間乾燥し、更に1枚毎に130℃×10分間乾燥する。再度、23℃×65%RH×24時間調湿後、1枚毎の重量を測定する(B)。この含浸して乾燥した各濾紙の平均樹脂着量を、計算により算出する(C)。下記の式(2)より1枚毎の平均着量に対する樹脂付着増減率(重量%)を求め、下記の基準で評価した。
◎:平均着量に対する増減率(重量%)が10%未満――非常に良好
○:平均着量に対する増減率(重量%)が10以上20%未満――良好
△:平均着量に対する増減率(重量%)が20以上40%未満――やや不良
×:平均着量に対する増減率(重量%)が40%以上――不良
濾紙1枚毎の平均着量に対する増減率(重量%)=(B−A)/C …(2)
A:各濾紙の重量(g)
B:エマルジョン類(不揮発分を約4.5%に調整)を含浸させ乾燥した各濾紙の23℃×65%RH×24時間調湿後の重量(g)
C:各濾紙の平均樹脂着量(g)=濾紙5枚に含浸した樹脂の全重量(g)/5
Figure 2009013373
上記の結果から、実施例で得られたエマルジョン類は、育苗培土としての要求性能に対応した固化性試験、浸透性試験、マイグレーション防止性試験においていずれも良好なものであったのに対して、比較例の従来品では、かかる要求性能をすべて満足するものではなかった。
本発明のエマルジョン類は、土壌表面、特に河川堤防、道路法面などの傾斜地、海岸などの砂地や埋立地など、一般に緑が困難とされている地表面の緑化用のバインダーとしても使用できる。

Claims (11)

  1. アクリル系モノマー、ビニル系モノマー、およびスチレン系モノマー群から選ばれた少なくとも1種のモノマー成分(a)を主成分として重合してなる合成樹脂(A)が、ポリビニルアルコール系樹脂(B)により分散安定化されていることを特徴とする培土固化用水性合成樹脂エマルジョン。
  2. 合成樹脂(A)が、20℃の水に対する溶解度が1重量%以上である親水性モノマーを全モノマー成分に対して10重量%以上含有するモノマーの重合より得られたものであることを特徴とする請求項1に記載の培土固化用水性合成樹脂エマルジョン。
  3. 合成樹脂(A)のガラス転移温度が、−20〜+15℃の範囲内であることを特徴とする請求項1または2に記載の培土固化用水性合成樹脂エマルジョン。
  4. 合成樹脂(A)の平均粒子径が、0.1〜2μmの範囲内であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の培土固化用水性合成樹脂エマルジョン。
  5. ポリビニルアルコール系樹脂(B)が、活性水素を有するポリビニルアルコール系樹脂(B1)であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の培土固化用水性合成樹脂エマルジョン。
  6. ポリビニルアルコール系樹脂(B)が、側鎖に1,2−ジオール結合を有するポリビニルアルコール系樹脂(B2)であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の培土固化用水性合成樹脂エマルジョン。
  7. ポリビニルアルコール系樹脂(B)の一部が、合成樹脂(A)にグラフトしていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の培土固化用水性合成樹脂エマルジョン。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の培土固化用水性合成樹脂エマルジョンを乾燥してなる再乳化性の培土固化用水性合成樹脂エマルジョン粉末。
  9. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の培土固化用水性合成樹脂エマルジョン、および請求項8に記載の培土固化用水性合成樹脂エマルジョン粉末を再乳化してなる水性合成樹脂エマルジョンの少なくとも一方と、培土とを用いてなることを特徴とする育苗培土。
  10. 平均粒径1〜5mmの育苗培土が、育苗培土全体の60重量%以上であることを特徴とする請求項9に記載の育苗培土。
  11. 請求項9または10に記載の育苗培土の製法であって、請求項1〜7のいずれか一項に記載の培土固化用水性合成樹脂エマルジョン、および請求項8に記載の培土固化用水性合成樹脂エマルジョン粉末を再乳化してなる水性合成樹脂エマルジョンの少なくとも一方と、培土とを含有する混合物を、造粒成形することを特徴とする育苗培土の製法。
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