JP2009013163A - 化粧品添加剤 - Google Patents

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勇介 宮▲崎▼
Takashi Senba
尚 仙波
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Abstract

【課題】優れた化粧品添加剤を提供する。
【解決手段】炭素源を含む培地中で微生物を培養し、該培地を独自の精製方法により精製することによって取得し得る固形のSTL組成物からなる化粧品添加剤を提供する。上記化粧品添加剤は、化粧品に保水性等の好ましい特性を与え、不要な着色等の問題もなく、水性の化粧品にも好適に用い得る。
【選択図】なし

Description

本発明は、化粧品に関するものであり、詳しくは、化粧品の添加剤に関するものである。
化粧品には消費者の嗜好および体質等に合わせた様々なニーズが存在する。また、化粧品においては微妙な差異がその価値を大きく変化させる。したがって、より細やかな上記ニーズへの対応および新たな差異を生み出すために、新規な化粧品添加剤が常に探索されている。
新規な化粧品添加剤を作製するために用い得る有望な素材の一つに、近年研究が進んでいるバイオサーファクタントがある。微生物が作り出す機能性物質であるバイオサーファクタントは、疎水性部分と親水性部分とを有する両親媒性物質である。特に、糖脂質型のバイオサーファクタントは、優れた生分解性を示す天然の界面活性剤として注目されており、さらに高い保湿効果および乳化作用を示すため、化粧品、食品等の添加剤としても用いられ得ることが知られている(非特許文献1)。
糖脂質型のバイオサーファクタントの一例として、サクシノイルトレハロース脂質(STL:Succinoyl Trehalose Lipid)がある。サクシノイルトレハロース脂質は、次のような手法により取得される。
特許文献1および非特許文献2では、ロドコッカス エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)SD−74株を、脂肪酸または植物油脂を含む培地中で好気的に培養することによって、サクシニルトレハロース脂質混合物を生産している。また、特許文献2においては、ロドコッカス エスピー(Rhodococcus sp.)TB−42株を、不飽和炭化水素、ハロゲン炭化水素等を含む培地中で好気的に培養することによって、サクシニルトレハロース脂質混合物を生産している。
このように、サクシニルトレハロース脂質は、炭素源を含む培地中で微生物を培養して得られるため、不純物が混ざった混合物として生産される。化粧品添加剤として用いる場合、上記混合物を精製することが好ましい。特に、脱水および脱油を施し、固形のサクシニルトレハロース脂質組成物を得ることは、保存、輸送、使用等の観点から見ても好ましい。
例えば、非特許文献3では、サクシニルトレハロース脂質混合物を含む培養液から菌体、残存基質等を除去した後、培養液を酸性にすることでサクシニルトレハロース脂質を酸析させている。そして、この酸析物を水で2回洗浄後にメタノールに溶解させ、この溶液をヘキサンにより3回洗浄した後に、メタノールを留去することによって脱油し、固形のサクシニルトレハロース脂質組成物を回収している。
特開昭62−83896号公報(1987年4月17日公開) 特開平10−72478号公報(1998年3月17日公開) Y.Ishigamiら、J.Jpn.Oil Chem.Soc.,36(11):847−851(1987) Y.Uchidaら、Agric.Biol.Chem.,53(3):765−769(1989) Y.Uchidaら、Agric.Biol.Chem.,53(3):757−763(1989)
しかしながら、新規化粧品添加剤として、固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物を利用することには困難性があった。
一つの理由として、従来の手法により取得された固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物は、薄茶色であった。有色の物質を化粧品添加剤として用いる場合、製品である化粧品を不必要に着色してしまい好ましくない。
また、本発明者らが検討した結果、従来の手法により取得された固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物は、水性の溶媒にほとんど溶解せず、得られた溶液も濁っていることを見出した。したがって、水溶液として用いることが困難であるため、水性の化粧品、特に化粧水等に対する添加剤として不適当であった。
さらに、固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物が、化粧品添加剤として好ましい性質を有するか否かはこれまで検証されていなかった。
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、優れた新規化粧品添加剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、独自の精製方法によって得た固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物が、白色であり、水に良好に溶解して無色透明な溶液となり、高い保水性等の好ましい特性を有しているため、化粧品添加剤として好適に用いることができることを見出し、発明を完成させた。
すなわち、本発明に係る化粧品添加剤は、炭素源を含む培地中で微生物を培養して得られ、すくなくとも下記(A)〜(C)のいずれか一つ以上の性質を有する固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物からなることを特徴としている:(A)水にすくなくとも1重量%溶解し得る;(B)白色である;(C)水に1重量%溶解させたときの水溶液の波長660nmにおける光透過率が95%以上である;または(D)メタノールに5重量%溶解させたときの溶液の吸光度が、波長400nm〜700nmの領域にわたって0.05以下である。
本発明に係る化粧品添加剤はまた、炭素源を含む培地中で微生物を培養して得られ、すくなくとも下記(A)〜(C)のいずれか一つ以上の性質を有する固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物が、溶媒に溶解されてなるものであってもよい:(A)水にすくなくとも1重量%溶解し得る;(B)白色である;(C)水に1重量%溶解させたときの水溶液の波長660nmにおける光透過率が95%以上である;または(D)メタノールに5重量%溶解させたときの溶液の吸光度が、波長400nm〜700nmの領域にわたって0.05以下である。
本発明に係る化粧品添加剤はさらに、炭素源を含む培地中で微生物を培養して得られるサクシノイルトレハロース脂質が、1重量%以上、水性の溶媒に溶解されてなるものであってもよい。
前記化粧品添加剤では、前記サクシノイルトレハロース脂質が5重量%以上、前記溶媒に溶解されていることが好ましい。
前記化粧品添加剤ではまた、波長660nmにおける光透過率が95%以上であることが好ましい。
前記化粧品添加剤ではさらに、アルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンをさらに含有することが好ましい。アルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンをさらに含有することによって、サクシノイルトレハロース脂質が水性の溶媒に良好に溶解された状態とすることができる。
本発明に係る固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物の使用は、炭素源を含む培地中で微生物を培養して得られ、すくなくとも下記(A)〜(C)のいずれか一つ以上の性質を有する固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物の、化粧品の製造のための使用であることを特徴としている:(A)水にすくなくとも1重量%溶解し得る;(B)白色である;(C)水に1重量%溶解させたときの水溶液の波長660nmにおける光透過率が95%以上である;または(D)メタノールに5重量%溶解させたときの溶液の吸光度が、波長400nm〜700nmの領域にわたって0.05以下である。
本発明に係るサクシノイルトレハロース脂質溶液の使用は、炭素源を含む培地中で微生物を培養して得られるサクシノイルトレハロース脂質が、1重量%以上、水性の溶媒に溶解されてなるサクシノイルトレハロース脂質溶液の、化粧品の製造のための使用であることを特徴としている。
また、本発明に係る保湿剤は、上記の本発明に係る化粧品添加剤を含むことを特徴としている。
また、本発明に係る皮膚バリア機能改善剤は、上記の本発明に係る化粧品添加剤を含むことを特徴としている。
本発明によれば、化粧品に保水性等の好ましい特性を与え、不要な着色等の問題もなく、水性の化粧品にも好適に用い得る新規化粧品添加剤を提供することができる。
〔第1の実施形態(固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物)〕
本発明は、固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物からなる化粧品添加剤を提供する。用語「化粧品添加剤」とは、化粧品に添加する目的で用いられる物質が意図される。すなわち、「固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物からなる化粧品添加剤」とは、「化粧品に添加する目的で用いられる、固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物」が意図される。
本明細書において用いられる場合、用語「組成物」とは、各種成分が一物質中に含有されている形態が意図され、「サクシノイルトレハロース脂質組成物」とは、サクシノイルトレハロース脂質を一成分とする組成物が意図される。一実施形態において、サクシノイルトレハロース脂質は、サクシノイルトレハロース脂質組成物に50重量%以上含まれていればよく、80重量%以上含まれていることが好ましく、90重量%以上含まれていることがより好ましい。また、用語「固形」とは、粉状、顆粒状等を含む、一定の形状を有している物質の性質が意図され、「固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物」とは、サクシノイルトレハロース脂質を一成分とする組成物であって、一定の形状を有しているものが意図される。
また、一実施形態において、本発明に係る化粧品添加剤として用いられる固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物は、炭素源を含む培地中で微生物を培養して得られる。
本明細書中で使用する限り、「微生物」は、サクシノイルトレハロース脂質を生産し得る微生物であることが意図される。このような微生物は、特に限定されないが、ロドコッカス属に属する微生物であることが好ましく、ロドコッカス・エリスロポリス SD−74株、ロドコッカス・エスピー TB−42株、またはロドコッカス・バイコヌレンシス NBRC 100611株であることが好ましい。
本明細書中で使用する限り、「炭素源」とは、上記微生物が培養中に吸収利用する炭素化合物であり、特に天然油脂、炭化水素、脂肪酸、脂肪酸エステル、または高級アルコールであることが好ましい。ここで、炭素化合物は、炭素と水素、窒素等との化合物が意図される。一実施形態において、本発明に係る製造方法において用いられる炭素源は天然油脂であり得、動物油脂であっても植物油脂であってもよいが、入手がより容易であるため、植物油脂であることが好ましい。上記製造方法において用いられる植物油脂は、例えばパーム油、ヤシ油、大豆油、オリーブ油、サフラワー油、菜種油、トウモロコシ油、綿実油、トール油等であることが好ましいが、これに限定されない。
また、炭素源として用いる炭化水素としては、n−デカン、n−ウンデカン、n−トリデカン、n−テトラデカン、n−ペンタデカン、n−ヘキサデカン、n−ヘプタデカン、n−オクタデカン、n−ノナデカン等のノルマルアルカン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン等のノルマルアルケン、等を好適に使用することが可能である。
炭素源として用いる脂肪酸としては、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸(ラウリン酸)、トリデカン酸、テトラデカン酸(ミリスチン酸)、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸(ステアリン酸)、オレイン酸等を好適に使用することが可能である。また、脂肪酸エステル、ウンデシルアルコール、ドデシルアルコール(ラウリルアルコール)等の高級アルコールを炭素源として用いてもよい。
一つの局面において、炭素源を含む培地中で微生物を培養して得られるサクシニルトレハロース脂質は、糖部分がトレハロースであり、トレハロース1モル当りコハク酸および脂肪酸がそれぞれ1〜2モルエステル結合した糖脂質である。この糖脂質の脂肪酸部分は、培養基質である炭素源を変えることによって、それぞれ異なった脂肪酸が結合する。
実施例において後述するように、本発明に係る化粧品添加剤は、優れた保水力、優れた耐硬水性、および低発泡性を有しており、化粧品の添加剤として好適に用いることができる。
さらに、一実施形態において、本発明に係る化粧品添加剤として用いられる固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物は、白色であり得る。一つの局面において、本発明に係る固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物をメタノールに5重量%溶解させた溶液は、可視光領域(波長400nm〜700nmの領域)にわたって、吸光度が0.15を超えることがなく、好ましくは0.1を超えることがなく、より好ましくは0.05を超えることがない。なお、上記吸光度は分光光度計(UV−2550、島津製作所)によって測定された値である。
一方、従来技術に係る固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物は、薄茶色であり(非特許文献3参照)、白色ではなかった。従来技術に係る固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物をメタノールに5重量%溶解させた溶液は、波長が400nm〜550nmの領域において吸光度が0.05を超え、波長が400nm〜450nmの領域において吸光度が0.1を超え、波長が400nm〜420nmの領域において吸光度が0.15を超えていた。
本実施形態に係る固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物は、白色であるので、様々な用途に好適に用いることができる。例えば、食品、化粧品等の添加剤として本実施形態に係る組成物を用いた場合、食品、化粧品等を不要に着色しないため、好適に用いることができる。
また、さらに、一実施形態において、本発明に係る化粧品添加剤として用いられる固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物は、水性の溶媒に対する良好な可溶性を有している。一つの局面において、上記組成物は、水にすくなくとも1重量%均質に溶解し得、好ましくは、3重量%、5重量%、7重量%、または7.5重量%均質に溶解し得る。一方、従来技術に係る固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物は、後述するように、水に1重量%以上溶解しない。本実施形態に係る固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物は、水に均質に溶解するため、水溶液として扱うことが可能であり、水を主成分とした食品または化粧品において好適に用いることができるが、用途はこれに限定されず、水溶液として用い得る用途であれば如何なる用途にも用い得る。
なお、さらに、一実施形態において、本発明に係る化粧品添加剤として用いられる固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物は、後述するように、水に溶解させたとき無色透明の溶液となる。上記無色透明を、水溶液の濁度を示す指標として一般に用いられる波長660nmにおける光透過率によって表せば、該光透過率は、95%以上であり得、好ましくは97%以上であり得、より好ましくは99%以上であり得る。なお、上記光透過率は、上記サクシノイルトレハロース脂質組成物を純度が95%以上の水に1重量%溶解し、上記分光光度計を用いて、波長660nmでの光透過率を測定して得られる。
後述する実施例において示すように、一実施形態において、本発明に係る固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物をpH7.0で水に1重量%溶解させたときの水溶液の、波長660nmにおける光透過率は99.5%となる。一方、従来技術に係る固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物は、後述する実施例に示すように、水に1重量%混合したときの水溶液の、波長660nmにおける光透過率が4.8%となる。以上のように、本発明に係る固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物は、従来技術に係る固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物と比べ、非常に透明度の高い溶液を形成し得る。
以上のように、本実施形態に係る固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物を用いれば、後述するような無色透明のサクシノイルトレハロース脂質溶液を作製し得る。
本発明に係る化粧品添加剤として用いられる固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物は、一実施形態において、炭素源を含む培地中で微生物を培養する工程と、上記培養工程によって得られた生成物を析出させる析出工程と、上記析出工程によって得られた析出物からSTL組成物を抽出する抽出工程と、上記抽出工程によって得られた抽出物から脂溶性物質を取り除く脂溶性物質除去工程とを包含する製造方法により製造され得る。以下上記製造方法について詳細に説明する。
(培養工程)
炭素源を含む培地中で微生物を培養する工程は慣用的な方法に従って行われ、炭素源を添加した培地に、必要に応じて窒素源、無機塩等の栄養分を添加してもよい。培地中に添加される炭素源としては、上述した各炭素源が好適に用いられ、培地中の炭素源の添加濃度は、5〜20%であることが好ましく、10%であればより好ましい。培地中に添加される窒素源としては、微生物の培養に際して通常使用される窒素含有の有機物または無機物が用いられ、例えば硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、リン酸水素カリウム、リン酸二水素カリウム等を使用可能である。上述した他に、微生物の生育に必要であれば、酵母エキス、ペプトン等の栄養素を培地に添加してもよい。
培養は、振とう攪拌による好気的条件下で行われ、培養温度は、20〜35℃であることが好ましく、30℃であることがより好ましい。培養pHは、5.5〜9.5であることが好ましい。また、培養期間は、15〜50g/lの濃度のサクシノイルトレハロース脂質混合物が生成されるまで培養することが好ましく、後述する実施例においては、培養5日後にサクシノイルトレハロース脂質濃度が15g/lに達していることから、5〜12日間培養することが好ましい。
炭素源を含む培地中で微生物を培養する工程においては、当該微生物を本培養する前にシード培養してもよい。微生物をシード培養することによって、最適な条件に微生物を調整することが可能であり、その結果効率よくサクシノイルトレハロース脂質を製造することができる。
(析出工程)
次に、上記培養工程によって微生物によって産生された生成物(STL)を析出させる(析出工程)。つまり、微生物が培地中に生成するSTLを含む培地あるいは培養液に対して析出を行う。このとき、析出の対象となる当該培地あるいは当該培養液は、微生物を培養した培養液を遠心分離し、培養液中から菌体および残存基質を取り除いたものであってもよい。ここで、「析出させる」とは、培地中に溶解した物質を、固体として取り出すことが意図される。すなわち、本発明に係る析出工程においては、培養工程において微生物が培地中に生成した糖脂質を、培地中から固形物として取り出すことができる。
析出工程では、培養液中からSTLを固形物として分離することができる方法であれば特に限定されず、慣用的な方法が用いられ得る。たとえば、上記培養工程において微生物を培養した培地を酸性にし、培地中の酸性物質を析出させることによって酸性の糖脂質であるSTLを析出させることができる(酸析)。具体的には、培養液中(対象物)のpHを低下させることにより析出させる。培養液のpHを低下させるためには、酸性物質、たとえば、HClを添加すればよい。その後、たとえば、遠心処理を行ない析出物を取り出す。以下、析出工程を経て得られた生成物を、「析出生成物」と称する。
(抽出工程)
次に、析出生成物からSTL組成物を抽出する(抽出工程)。抽出工程では、析出生成物に、水と相溶せず、かつ糖脂質が可溶である溶媒を添加することによって、析出生成物中に含まれるSTLを溶媒層に溶解させる。ついで、STLが溶解した溶媒層を分離することによって、水溶性物質を除去したSTL組成物を得ることができる。なお、「水溶性物質」は、水に対して可溶な物質であり、培地中から析出させた固形物状の析出物が水と共に包含している塩等の水溶性の不純物であるといえる。ここで、「塩」とは酸の水素原子を金属または他の金属性基で置き換えた化合物である。
微生物を培養した培地から析出させた上述の析出生成物は、含水しており水溶性の不純物を多く含んでいる。このような析出生成物は、さらに脂溶性の不純物を含んでおり、固形物状であるため、これを水で洗浄しても析出物内部に含まれる水溶性物質を十分に取り除くことは困難であったが、水と相溶せず、かつ糖脂質が可溶である溶媒を用いた抽出工程により、水溶性物質を除去したSTL組成物を得ることができる。
抽出工程においては、溶媒を添加して抽出する対象物である析出物から完全に水溶性物質を取り除く必要はなく、抽出処理の前後において、析出物中の水溶性物質の量が減少していればよい。これにより、不純物の含有量が低下したSTL組成物を得ることが可能である。
ここで、析出物に添加する溶媒としては、水溶性物質を溶解しえる他の溶媒(たとえば水)と相溶せず、かつ糖脂質が可溶である溶媒を用いることができる。そのような溶媒としては、エステル系溶媒、アルコール系溶媒、または炭化水素系溶媒が挙げられ、具体的には、例えば酢酸エチル、1−ブタノール、キシレン等が挙げられる。析出物に添加する溶媒の量は、析出物量に対して0.1〜10倍重量であることが好ましく、析出物量と同等であることがより好ましい。
抽出工程について、溶媒として酢酸エチルを用いた場合を例にして説明する。まず、培養液から培養生成物を析出させ、析出した析出物に酢酸エチルを添加し十分に攪拌し、酢酸エチル層および水層の2層に分離させる。ついで、上層に形成された酢酸エチル層を分液漏斗等によって分離する。酢酸エチル層には水溶性物質は溶解せず、STLが溶解しているため、酢酸エチル層を分離することによって糖脂質から水溶性物質を除去することが可能である。ついで、例えばエヴァポレーター等を用いて、酢酸エチル層から酢酸エチルを除去することによって、水溶性物質が除去された固体状のSTL組成物を得ることができる。
なお、上述の説明では、析出工程と抽出工程とを順次行う場合について説明したが、必ずしもこれに限られない。例えば、培養生成物を培地または培養液中から析出させずに、生成物が溶解した培地または培養液に溶媒を添加し溶媒層を分離することによって、水溶性物質を取り除いたSTL組成物を得ることも可能である。このとき、微生物を培養した培養液から、遠心分離等によって、菌体および残存基質を取り除いたものを、溶媒を用いて水溶性物質を除去する対象としてもよい。すなわち、抽出工程において、溶媒を用いて水溶性物質を除去する対象となる物質は、培養中の微生物が培地中に生成するSTLを含む培地あるいは培養液、または、反応系から分離された固体状のSTL混合物であってもよい。
この抽出工程までを経て得られた生成物を「抽出生成物」と称する。
(脂溶性物質除去工程)
次に、上記脱水生成物から、脂溶性物質を取り除く(脂溶性物質除去工程)。ここで「脂溶性物質」とは、脂に対して可溶な物質であることが意図される。
水溶性物質が取り除かれた固形物状のSTL組成物から脂溶性物質を取り除く方法は、STLと脂溶性物質とを分離させることが可能な方法であれば特に限定されず、慣用的な方法を用いることができる。例えば、まず、抽出生成物から溶媒を留去し、ついで、溶媒を留去して得られた固形物に糖脂質と脂溶性物質とを分離させることが可能な溶媒を添加し、当該溶媒層を除去することによって、脂溶性物質が除去された糖脂質を得ることができる。これにより、糖脂質から効率よく脂溶性の不純物を取り除くことができる。
ここで、糖脂質と脂溶性物質とを分離させることが可能な溶媒とは、糖脂質が難溶または不溶であり、脂溶性物質が可溶な溶媒である。このような溶媒として、例えばヘキサンを用いた場合、培養液から析出した生成物から、溶媒を用いて水溶性物質を除去した後、この溶媒を留去して得られる固形物をヘキサンに懸濁し、ろ過または遠心分離してヘキサンを除去する。これにより、STL組成物から効率よく脂溶性の不純物を取り除くことができる。
〔第2の実施形態(サクシノイルトレハロース脂質溶液)〕
本発明はまた、サクシノイルトレハロース脂質溶液からなる化粧品添加剤を提供する。用語「サクシノイルトレハロース脂質溶液」とは、サクシノイルトレハロース脂質を包含する溶液が意図される。
一実施形態において、本発明に係る化粧品添加剤として用いられるサクシノイルトレハロース脂質溶液は、本発明に係る固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物が溶媒に溶解されてなる。上記溶媒は、サクシノイルトレハロース脂質を溶解し得る溶媒であればよく、そのような溶媒としては、上述したように、有機溶媒または水性の溶媒を用い得る。当業者であれば、上記溶液の用途に合わせて適宜溶媒を選択し得る。用語「水性の溶媒」とは、水または親水性の溶媒を主体とした溶媒が意図され、好ましくは疎水性の溶媒が全く含まれていないものが意図される。
一実施形態において、本発明に係る化粧品添加剤として用いられるサクシノイルトレハロース脂質溶液は、炭素源を含む培地中で微生物を培養して得られるサクシノイルトレハロース脂質が1重量%以上、水性の溶媒に溶解されてなり、好ましくは、サクシノイルトレハロース脂質が3重量%、5重量%、または7重量%以上、水性の溶媒に溶解されてなる。後述するように、従来技術に係る固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物は、1重量%以上水性の溶媒に溶解し得ず、したがって、従来、炭素源を含む培地中で微生物を培養して得られるサクシノイルトレハロース脂質が1重量%以上水性の溶媒に溶解されてなる溶液は存在していなかった。本実施形態に係る化粧品添加剤として用いられるサクシノイルトレハロース脂質溶液は、水性の溶媒にサクシノイルトレハロース脂質が高濃度に溶解しているので、保存、輸送、使用等の際に好適に用いることができる。
一つの局面において、本実施形態に係るサクシノイルトレハロース脂質溶液は無色透明である。上記無色透明を、水溶液の濁度を示す指標として一般に用いられる波長660nmにおける光透過率によって表せば、該光透過率は、95%以上であり得、好ましくは97%以上であり得、より好ましくは99%以上であり得る。なお、上記光透過率は、上記分光光度計を用いて、波長660nmでの光透過率を測定して得られる。上述したように、従来技術に係る固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物は、溶解した溶液を濁らせるため、従来、サクシノイルトレハロース脂質が1重量%以上水性の溶媒に溶解されてなる溶液において、波長660nmでの光透過率が5%以上である溶液は存在していなかった。本実施形態に係るサクシノイルトレハロース脂質溶液は、無色透明の水溶液なので、例えば、食品、化粧品等の添加剤として用いた場合、食品、化粧品等を不要に着色しないため好ましい。
(調製方法)
本発明に係る化粧品添加剤として用いられるサクシノイルトレハロース脂質溶液の調製方法について以下に説明する。一実施形態において、本発明に係る化粧品添加剤として用いられるサクシノイルトレハロース脂質溶液は、炭素源を含む培地中で微生物を培養して得られる固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物を溶媒に溶解させることによって調整させる。上記溶媒が有機溶媒である場合、定法を用いれば容易にサクシノイルトレハロース脂質溶液を調製し得る。
上記溶媒が水性の溶媒である場合は、例えば、以下の方法によってサクシノイルトレハロース脂質溶液を調製し得る。
まず、上記固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物と水性の溶媒とを混合して混合液とする。このとき、上記固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物の主成分であるサクシノイルトレハロース脂質は、分子構造中にカルボキシル基を有する酸性の物質であるため、上記混合液は、通常酸性となっている。
ここで、上記サクシノイルトレハロース脂質組成物を十分に溶解させるためには、上記混合液を中性にすることが好ましい。上記混合液の中和は、例えば、水酸化ナトリウム溶液などのアルカリ性物質を該混合液に添加して、アルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンを該混合液にさらに包含させることによって行い得る。
アルカリ金属イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン等を用い得、アルカリ土類金属イオンとしては、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、ベリリウムイオン等を用い得るが、これらに限られない。上記溶媒のpHを適切に調整し得るイオンであればよい。
また、高濃度の上記固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物を水性の溶媒に溶解させる場合、完全に溶解させるために、上記混合物を超音波処理することが好ましい。
以上のように、本発明に係る化粧品添加剤は、上述したような独自の製造方法により製造し得る新規な固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物から製造されていればよく、該組成物が、溶媒に溶解された形態であっても、固体のまま用いられていても、化粧品添加剤として用いるためのその他の修飾を受けていても、上述した特性を有し得ることを当業者は容易に理解する。したがって、上記新規な固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物は、化粧品、例えば、化粧水、乳液、美容液、洗顔料、パック、シェービングクリーム、日焼けクリーム、日焼け止めクリーム、日焼けローション、日焼け止めローション、化粧石鹸、ファンデーション、おしろい、パウダー、口紅、リップクリーム、アイライナー、アイクリーム、アイシャドウ、マスカラ、シャンプー、リンス、染毛剤等の製造に好適に用いることができる。上記化粧品の製造工程では、例えば、任意の形態の上記組成物を該化粧品の原材料に配合する過程を有している。上記組成物が配合されていることによって、上記化粧品は保水性等の化粧品として好ましい特性が付与される。以上のように、本発明を別の表現で表せば、化粧品の製造のための、上記固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物またはその溶液の使用であり得る。
〔第3の実施形態(本発明に係る保湿剤)〕
本発明に係る保湿剤は、上述の本発明に係る化粧品添加剤を含むものであればよい。
本明細書において「保湿剤」とは、皮膚の水分を保つ作用を有するものを意味する。
本発明に係る保湿剤によれば、優れた保湿作用を発揮する。例えば優れた保湿剤として知られているヒアルロン酸Naと同等の保湿効果を得ることができる。さらに、ヒアルロン酸Na等の従来公知の保湿剤は高価なものが多かったが、本発明に係る化粧品添加剤が含有するサクシノイルトレハロース脂質組成物は安価に製造することができる。そのため、高い保湿効果を有する保湿剤を安価に提供できるという効果を奏する。
本発明に係る保湿剤に含まれる、本発明に係る化粧品添加剤の含有量は、特に限定されるものではないが、保湿剤の全量に対して、0.0001重量%以上100重量%以下の範囲とすることが好ましく、さらに好ましくは、0.001重量%以上90重量%以下である。この範囲であれば、より優れた保湿効果を得ることができる。
また、本発明に係る保湿剤が、本発明に係る化粧品添加剤以外の成分を含む場合、当該成分としては特に限定されないが、例えば、保湿用の化粧料に一般に用いられている油性成分、界面活性剤、紫外線吸収剤、低級アルコール、防腐剤、殺菌剤、色剤、粉末、香料、水溶性高分子、緩衝剤、従来公知の保湿剤を、本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合できる。
〔第4の実施形態(本発明に係る皮膚バリア機能改善剤)〕
本発明に係る皮膚バリア機能改善剤は、上述の本発明に係る化粧品添加剤を含むものであればよい。
本明細書において「皮膚バリア機能」とは、皮膚が外的刺激から生体を保護することを意味する。外的刺激としては、物理的、化学的、生物学的な様々な刺激がある。皮膚バリア機能が低下すると、外的刺激によって肌荒れ、皮膚の汚染および接触皮膚炎のような様々な皮膚炎等を起こす。また、皮膚バリア機能の低下は、皮膚からの水分蒸散量を増加させ、皮膚の乾燥(ドライスキン)や痒みを引き起こす。
本明細書において「皮膚バリア機能改善剤」とは、上述した皮膚バリア機能を改善する剤を意味する。皮膚バリア機能は、例えば、皮膚からの水分蒸散量等により測定される。そのため、皮膚バリア機能の改善は、上記水分蒸散量等を抑制する量により測定してもよい。
本発明に係る皮膚バリア機能改善剤によれば、優れた皮膚バリア機能改善効果を発揮する。例えば優れた皮膚バリア機能改善剤として知られているN‐ラウロイル‐L‐グルタミン酸とL‐リジンとの縮合物のナトリウム塩より優れた皮膚バリア機能改善効果が得られる。さらに、N‐ラウロイル‐L‐グルタミン酸とL‐リジンとの縮合物のナトリウム塩より優れた皮膚バリア機能を有すること等から、従来公知の皮膚バリア機能改善剤に比べて少量にて同等の効果を得ることができる。本発明に係る化粧品添加剤が含有するサクシノイルトレハロース脂質組成物は安価に製造することができる。そのため、高い皮膚バリア機能改善効果を有する皮膚バリア機能改善剤を安価に提供できるという効果を奏する。
本発明に係る皮膚バリア機能改善剤に含まれる、本発明に係る化粧品添加剤の含有量は、特に限定されるものではないが、皮膚バリア機能改善剤の全量に対して、0.0001重量%以上100重量%以下の範囲とすることが好ましく、さらに好ましくは、0.001重量%以上90重量%以下である。この範囲であれば、より優れた皮膚バリア機能改善効果を得ることができる。
また、本発明に係る皮膚バリア機能改善剤が、本発明に係る化粧品添加剤以外の成分を含む場合、当該成分としては特に限定されないが、例えば、皮膚バリア機能改善用の化粧料に一般に用いられている油性成分、界面活性剤、紫外線吸収剤、低級アルコール、防腐剤、殺菌剤、色剤、粉末、香料、水溶性高分子、緩衝剤、従来公知の皮膚バリア改善剤を、本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合できる。
〔STLのその他の用途〕
上述のように本発明に包含されるSTLは、化粧品添加剤、保湿剤、皮膚バリア機能改善剤の成分として極めて有効であるが、その用途はこれに限定されない。皮膚に限らず、毛髪等の生体の様々な部位に塗布等してもよい。例えば、ダメージヘア改善(痛んだ髪質の改善)等の毛髪処理剤としても使用可能である。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら限定されない。
〔実施例1:STLの生産〕
非特許文献2に記載の方法に従って、ロドコッカス・エリスロポリス SD−74株を以下の条件でシード培養した。本実施例において用いたロドコッカス・エリスロポリス SD−74株は、植物油脂資化性菌として分離され、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに、「受託番号:FERM P−21299」として寄託されている。
500ml容坂口フラスコ中のFPY培地100ml(フルクトース2%、ポリペプトン0.5%、酵母エキス0.5%、NaNO0.1%、KHPO0.1%、MgSO−7HO0.02%)にプレート上に形成された菌体コロニーを植菌し、30℃で38時間振とう培養を行った。
改変MedD培地(1L当たり、KHPO5.44g、KHPO10.45g、KNO3g、MgSO−7HO0.1g、KSO35g、酵母エキス3g、パーム油100mlを含む溶液を、水道水で1Lにメスアップ)6000mlに、シード培養後の培養液全量を接種し、以下の条件で本培養を開始した。10Lジャー培養槽を用いて、培養温度30℃で、500rpmで攪拌させながら培養した。培地のpHを7.0に設定し、5N KOHを自動添加することによって培地のpHを維持した。
〔実施例2:STLの定量〕
上記本培養中の培地から、2日に1回程度サンプリングを行い、培養液中のSTL濃度を以下に示すように定量した。
サンプリングした培養液を15000rpmで10分間遠心分離し、上層の油成分が混入しないように注意して水層を抜き出した。抜き出した液体を適宜希釈した後、以下に示すアンスロン硫酸法によってトレハロース濃度を定量した。まず、希釈した試料1mlにアンスロン試薬(75%硫酸に0.2%の濃度でアンスロンを溶解させることによって、測定時に調整)5mlを添加し攪拌した。攪拌後の溶液を沸騰水中で10分間反応させ、5分間氷冷することによって反応を停止させた後、室温で20分間放置した。
得られた反応液に対して波長620nmの吸光度を測定した。スタンダードとして4mMトレハロースを20倍希釈したものを用いた。STLは1分子のトレハロースを含んでいるため、トレハロース濃度としてSTL濃度を定量した。STLの分子量を840としてSTLの重量濃度を算出した。結果を図1に示す。培養開始120時間後にパーム油600mlを追加し、200時間後にパーム油300mlをさらに追加した。図1のSTL生産のタイムコースに示すように、培養285時間後に培養液のSTL濃度が37g/Lになった。
〔実施例3:STLの分離・精製〕
実施例1で得られた培養285時間後の培養液860mlを、6000rpmで30分間遠心分離し、液中の菌体および残存基質を除去した後、6N HCLを40ml添加し、溶液のpHを2.98にした。溶液中に白色のゲル状析出物が析出した。この溶液を6000rpmで30分間遠心分離することによって、液層を除去した結果、湿重量182gの析出物が得られた。
得られた析出物に186gの酢酸エチルを添加し、十分に攪拌した。水層と酢酸エチル層とに分離した溶液を、分液漏斗を用いて分離し上層の酢酸エチル層を回収した。回収した酢酸エチル溶液から、エヴァポレーターを用いて酢酸エチルを除去した。酢酸エチルを除去して得られた固形物を等量のヘキサンで懸濁した後、懸濁液を遠心分離してヘキサンを除去する工程を3回繰り返した。ヘキサンを除去して得られた液体をエヴァポレーターで乾固し、白色固形物12.6gを得た。この白色固形物を50g/lの濃度で蒸留水中に加え、NaOHを添加して中性にしたところ、白色固形物が蒸留水中で溶解し始めた。さらに溶液を超音波処理したところ、約5分後には白色固形物が蒸留水中に完全に溶解した。
さらに検討しところ、上述の方法で得た白色固形物は、7.5%の濃度であっても水溶液中に均質に溶解させることが可能であった。
〔比較例1:従来技術に係るSTLの分離・精製〕
実施例1で得られた培養液を、6000rpmで30分間遠心分離し、液中の菌体および残存基質を除去した後、6N HCLを加え、溶液のpHを3以下とした。析出した酸析物(271.5g)に滅菌水500mLを加えてよく懸濁させた後に遠心分離し、上澄みを捨てることによって、該酸析物を洗浄した。洗浄後の酸析物の湿重量は125.9gであった。
次に、メタノールを500mLを加えて上記酸析物を完全に溶かし、ヘキサンを500mL加えてよく攪拌した後に、メタノール層を分液した。このヘキサンを用いた操作を3回繰り返した。最後に、メタノールを留去し、薄茶色の固形物(17.1g)を得た。以上に記載の、従来の方法で製造したSTLの固形物(薄茶色)は、1%の濃度でも水溶液中に溶解しなかった。以下、実施例上記の方法で製造したSTLの固形物(以下、新法STLと称する)および、従来の方法で製造したSTLの固形物(以下、従来法STLと称する)とについて、さらに詳しく比較する。
〔実施例4:STL溶液の吸光スペクトルの測定〕
上記の方法で製造したSTLの固形物は、上述したように、従来の方法で製造したSTLの固形物とは異なり、白色であった。これを定量的に観察するために、STL溶液の可視光領域での吸光スペクトルを測定した。
新法STLおよび従来法STLをそれぞれメタノールに溶解させ、濃度が5重量%のSTL溶液を調製した。なお、新法STLはメタノールに完全に溶解したが、従来法STLはメタノールに完全に溶解せず、一部成分がとけ残っていた。そのため、従来法STL溶液については、フィルター(0.45μm)を通し、透明な液体とした。
上記のように調製したSTL溶液の可視光領域での吸光スペクトルを分光光度計(UV−2550、島津製作所)を用いて測定した。結果を図2に示す。図2に示すように、新法STL溶液は、全領域で吸光度が0.05を超えることは無かった。一方、従来法STLは、波長が550nm以下の領域において、吸光度が高くなって(0.05を超えて)いた。すなわち、新法STLは白色であり、従来法STLが着色されていることが定量的に示された。
〔実施例5:STL水溶液の光透過率の測定〕
新法STLを用いて、pH7.0、濃度1%(w/v)のSTL水溶液を調製した。また、同様に、従来法STLについても、pH7.0にて、1%(w/v)となる量にて、純水に混合した。ただし、従来法STLは1%(w/v)の濃度では、水に完全に溶解しなかった。
次に、波長660nmにおけるそれぞれの光透過率を上記分光光度計を用いて測定した。その結果、波長660nmにおける光透過率は、新法STLの水溶液が99.5%、従来法STLの混合液が4.8%となった。新法STLは、従来法STLに比べ非常に透明度の高い水溶液を形成し得ることができることが示された。
〔実施例6:STLの保水力測定〕
実施例3で得られたSTLの保水力測定を以下の方法で行った。まず、5wt%の濃度でSTLを蒸留水に溶解し、NaOHによりpHを7.0にすることによって、STL(ナトリウム塩)の5wt%水溶液を調整した。また、比較対照として、グリセリンの5wt%水溶液を調整した。
ついで、5×5cmに切り取ったろ紙に、上記のように調整した各5wt%水溶液10μlを浸透させ、ろ紙の重量変化を毎分8分まで測定した。経時的な重量変化をグラフ化し、グラフの傾きから水分蒸発速度を算出した。さらに水のみを浸透させたろ紙の重量変化を測定し、産出した傾きを100として、相対水分蒸発速度を算出した。相対水分蒸発速度から、次式により相対保水力を算出した。結果を表1に示す。
相対保水力(%)=100−相対水分蒸発速度
Figure 2009013163
表1に示すように、保水力を有することが一般的に知られているグリセリンよりも、本発明により得られたSTLは高い保水力を示した。すなわち、本発明に係るSTLは、高い保水力を有しているため、例えば保湿剤として化粧品用途等に好適に用いられ得る。
〔実施例7:STLの耐硬水性試験〕
実施例3で得られたSTLの耐硬水性試験を以下の方法で行った。まず、0.1wt%のSTL水溶液(pH7.0)を調製した。また、比較対照として、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(LAS)の0.1重量%水溶液を調製した。
ついで、上記のように調整した各0.1wt%水溶液80gに対して、CaCl水溶液(炭酸カルシウム換算で10重量%)を添加して、5分間攪拌することにより様々な硬度を有する水溶液を調製した。得られた水溶液について、波長650nmにおける光透過率を測定した。光透過率の測定結果を図3に示す。
図3に示すように、STL水溶液は、300ppmの硬度においても不溶性の塩を形成せず、LASに比べ非常に優れた耐硬水性を示した。すなわち、本発明に係るSTLは、優れた耐硬水性を有しているため、例えば、様々な成分が配合される化粧品においても濁りまたは沈殿を生じさせることがないため、化粧品添加剤等として好適に用いることができる。
〔実施例8:STLの起泡力の測定〕
実施例3で得られたSTLの起泡力の測定を以下の方法で行った。まず、0.1wt%のSTL水溶液(pH7.0)を調製した。また、比較対照として、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(LAS)の0.1重量%水溶液を調製した。
ついで、上記のように調整した各0.1wt%水溶液50gをそれぞれ異なるミキサーに充填した。そして、各水溶液を、3000rpmの回転速度で、一回につき15秒間ずつ複数回にわたって攪拌した。各回の攪拌直後における液面の高さを図4に示す。
図4に示すように、STL水溶液は、攪拌してもほとんど泡を発生させず、LASに比べ低発泡性の界面活性剤であることが示された。すなわち、低発泡性の界面活性剤である本発明に係るSTLは、例えば、化粧品の一成分として用いた場合、製品を泡立たせることないため、化粧品添加剤等として好適に用いることができる。
〔実施例9:即時保湿作用試験〕
本実施例では実施例3で得たSTLの即時保湿作用を確認した。
まず、被験者5名の前腕内側部2cm×2cmの面積に対して、1重量%STL−Na溶液10μlを塗布した。また、陽性対照として1重量%ヒアルロン酸Na水溶液を前腕内側部2cm×2cmの別区域に塗布した。
塗布前、塗布後、塗布から15分、30分、45分後における塗布区域の皮膚表面水分量を、SKICON‐200EX(I.B.S.Co.Ltd.社製)を用いて測定した。次に塗布後の各測定における、塗布前の皮膚表面水分量を100%としたときの相対値を算出した。結果を図5に示す。図5はSTLの即時保湿作用を確認した結果を示す図である。図5に示すようにSTL−Naを塗布した部位では、高い保湿効果を有することで知られるヒアルロン酸Naと同等の水分量を示した。
〔実施例10:即時皮膚バリア機能改善作用試験〕
本実施例では実施例3で得たSTLの即時皮膚バリア機能改善作用を確認した。
まず、被験者5名の前腕内側部2cm×2cmの面積に対して、2重量%SDSの2時間閉塞パッチにて擬似的に荒れ肌を作成した。次に、荒れ肌を作成した部位(被験部位)に1重量%のSTL‐Na水溶液10μlを塗布した。また、陽性対照として、1重量%のN‐ラウロイル‐L‐グルタミン酸とL‐リジンとの縮合物のナトリウム塩(以下、説明の便宜のため「化合物A」と表記する。化合物Aは特開2005−53802を参考に調整してもよい)水溶液を前腕内側部2cm×2cmの別区域に塗布した。SDSパッチ貼付前、SDSパッチ除去直後、1時間後、2時間後及び4時間後の時点での皮膚表面水分蒸散量を測定した。測定にはサイクロン水分蒸散計AS−CT1(アサヒバイオメッド社製)を用いた。SDSパッチ貼付前の皮膚表面水分蒸散量を0%、SDSパッチ除去直後(荒れ肌状態)の測定値を100%として、SDSパッチ除去から1時間後、2時間後及び4時間後の皮膚表面水分蒸散量の相対値を算出した。結果を図6に示す。図6はSTLの即時皮膚バリア機能改善作用を確認した結果を示す図である。供試したサンプルの両者(STL−Na、化合物A)は、共に皮膚表面水分蒸散量の顕著な減少、即ち肌荒れ状態の改善作用を示した。さらに、STL−Naは、皮膚バリア機能改善効果を示す従来公知の物質である化合物Aよりもさらに皮膚表面水分蒸散量を低く抑えることができることが示された。
本発明によれば、化粧品に保水性等の好ましい特性を与え、不要な着色等の問題もなく、水性の化粧品にも好適に用い得る新規化粧品添加剤を提供することができるので、化粧品製造分野において有用である。また、ダメージヘア改善等の毛髪処理剤としても有用である。
図1は、STL生産のタイムコースを示す図である。 図2は、STL溶液の吸光スペクトルを示す図である。 図3は、STL溶液の耐硬水性試験の結果を示す図である。 図4は、STL溶液の起泡力の測定結果を示す図である。 図5はSTLの即時保湿作用を確認した結果を示す図である。 図6はSTLの即時皮膚バリア機能改善作用を確認した結果を示す図である。

Claims (14)

  1. 炭素源を含む培地中で微生物を培養して得られ、水にすくなくとも1重量%溶解し得る固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物からなることを特徴とする化粧品添加剤。
  2. 炭素源を含む培地中で微生物を培養して得られ、白色である固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物からなることを特徴とする化粧品添加剤。
  3. 炭素源を含む培地中で微生物を培養して得られ、メタノールに5重量%溶解させたときの溶液の吸光度が、波長400nm〜700nmの領域にわたって0.05以下である固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物からなることを特徴とする化粧品添加剤。
  4. 炭素源を含む培地中で微生物を培養して得られ、水に1重量%溶解させたときの水溶液の、波長660nmにおける光透過率が95%以上である固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物からなることを特徴とする化粧品添加剤。
  5. 炭素源を含む培地中で微生物を培養して得られ、すくなくとも下記(A)〜(C)のいずれか一つ以上の性質を有する固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物が、溶媒に溶解されてなることを特徴とする化粧品添加剤:
    (A)水にすくなくとも1重量%溶解し得る;
    (B)白色である;
    (C)水に1重量%溶解させたときの水溶液の、波長660nmにおける光透過率が95%以上である。
  6. 炭素源を含む培地中で微生物を培養して得られるサクシノイルトレハロース脂質が、1重量%以上、水性の溶媒に溶解されてなることを特徴とする化粧品添加剤。
  7. 前記サクシノイルトレハロース脂質が5重量%以上、前記溶媒に溶解されていることを特徴とする請求項6に記載の化粧品添加剤。
  8. アルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンをさらに含有することを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載の化粧品添加剤。
  9. 炭素源を含む培地中で微生物を培養して得られ、水にすくなくとも1重量%溶解し得る固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物の、化粧品の製造のための使用。
  10. 炭素源を含む培地中で微生物を培養して得られ、白色である固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物の、化粧品の製造のための使用。
  11. 炭素源を含む培地中で微生物を培養して得られ、水に1重量%溶解させたときの水溶液の、波長660nmにおける光透過率が95%以上である固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物の、化粧品の製造のための使用。
  12. 炭素源を含む培地中で微生物を培養して得られるサクシノイルトレハロース脂質が、1重量%以上、水性の溶媒に溶解されてなるサクシノイルトレハロース脂質溶液の、化粧品の製造のための使用。
  13. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の化粧品添加剤を含むことを特徴とする保湿剤。
  14. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の化粧品添加剤を含むことを特徴とする皮膚バリア機能改善剤。
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