JP2022170976A - シワ改善のための皮膚外用剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】天然から得られるペンタデカン酸トリグリセリドを配合するシワ改善のための皮膚外用剤を提供する。【解決手段】藻類由来の下記式(I):TIFF2022170976000008.tif28170(式中、R1、R2及びR3は、それぞれ飽和脂肪酸残基であって、その少なくとも1つがペンタデカン酸残基である。)で表される2種以上のトリグリセリド混合物と、低重合PEG含有非イオン界面活性剤と、を含有するシワ改善のための皮膚外用剤。【選択図】図2

Description

本発明は、ペンタデカン酸トリグリセリド混合物と特定の界面活性剤とを含有するシワ改善のための皮膚外用剤に関する。
皮膚の表皮および真皮は、表皮細胞、線維芽細胞およびこれらの細胞の外にあって皮膚構造を支持するコラーゲン等の細胞外マトリックスにより構成されている。若い皮膚においては、線維芽細胞の増殖が活発で、皮膚組織の相互作用が恒常性を保つことにより水分保持、柔軟性、弾力性等が確保され、肌は外見的にも張りや艶があってみずみずしい状態に維持される。ところが、紫外線の照射、空気の著しい乾燥、過度の皮膚洗浄等、ある種の外的因子の影響があったり、加齢が進んだりすると、線維芽細胞の増殖能が低下し、細胞外マトリックスの構成成分の産生量が減少するとともに、架橋による弾力性低下を引き起こす。その結果、皮膚の保湿機能や弾力性が低下し、角質の異常剥離が始まるため、肌は張りや艶を失い、肌荒れ、シワ形成等の皮膚の老化症状を呈するようになる。このように、皮膚の老化に伴う変化、すなわち、シワ形成、くすみ、きめの消失、弾力性の低下等には、線維芽細胞の増殖能の低下が深く関与していると考えられる。このような考えに基づき、線維芽細胞の増殖を促進し、皮膚の老化を防止または改善できる、合成または天然物系の化粧料および医薬部外品について種々の提案がなされている。
例えば、本発明者らは、ペンタデカン酸トリグリセリドを含む組成物が、コラーゲンの産生を促進し、シワ改善作用を有すること見出し、すでに報告している(特許文献1参照)。特許文献1では、この組成物がヒト皮膚線維芽細胞においてI型コラーゲン産生を促進し、マウスに経口投与したときに皮膚の保湿性維持作用を有することが報告されている。
WO2021/020514
しかし、ペンタデカン酸トリグリセリドは、分子内における長鎖飽和酸の存在により極性の低い物質であることから、水に溶けにくく高濃度で化粧水等に含有させることが困難であった。また、皮膚に塗布したときの吸収性や細胞内への浸透性も予測することができなかった。本発明は、かかる問題を解決することにより、天然から得られるペンタデカン酸トリグリセリドを配合するシワ改善のための皮膚外用剤を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明者らが鋭意検討を行った結果、ペンタデカン酸を主に含む飽和脂肪酸により構成されるトリグリセリド混合物(以下、「PdATG」と称する場合がある。)と、特定の界面活性剤と、を用いることで、シワ改善効果の優れた皮膚外用剤が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の実施形態を含む。
(1)藻類由来の下記式(I):
Figure 2022170976000002
(式中、R、R及びRは、それぞれ飽和脂肪酸残基であって、その少なくとも1つがペンタデカン酸残基である。)で表される2種以上のトリグリセリド混合物と、低重合PEG含有非イオン界面活性剤と、を含有するシワ改善のための皮膚外用剤。
(2)上記トリグリセリド混合物は、当該混合物に含まれる総脂肪酸質量に対し、50質量%以上のペンタデカン酸を含有する、(1)に記載の皮膚外用剤。
(3)上記トリグリセリド混合物は、当該混合物に含まれる総脂肪酸質量に対し、20~40質量%の偶数鎖脂肪酸を含有し、当該偶数鎖脂肪酸は、パルミチン酸及び/又はミリスチン酸を含む(1)又は(2)に記載の皮膚外用剤。
(4)上記藻類が、ラビリンチュラ類のシゾキトリウム属又はオーランチオキトリウム属に属する微細藻類である(1)~(3)のいずれか一項に記載の皮膚外用剤。
(5)上記低重合PEG含有非イオン界面活性剤が、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリン型、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油脂肪酸エステル型、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油型、PCAイソステアリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油型、ポリオキシエチレン脂肪酸型、ポリオキシエチレンソルビトール型及びポリオキシエチレンアルキルエーテル型からなる群より選択される一種または数種である(1)~(4)のいずれか一項に記載の皮膚外用剤。
(6)水性組成物中に上記トリグリセリド混合物を0.0004~0.5質量%含有する
(1)~(5)のいずれか一項に記載の皮膚外用剤。
本発明によれば、天然から得られるペンタデカン酸トリグリセリドと低重合PEG含有非イオン界面活性剤とを配合することで、シワ改善効果が認められた皮膚外用剤を提供することができる。
図1は、ヒト線維芽細胞のI型コラーゲン産生に与えるPdATGの影響を調べた結果である。 図2は、PdATG配合化粧水又は無配合の化粧水を塗布した被験者のシワグレードの変化を目視判定した結果である。 図3は、PdATG配合化粧水又は無配合の化粧水を塗布した被験者の最大シワ最大深さの変化を抗シワガイドラインに沿った製品評価試験で用いられるレプリカによるシワ測定法により判定した結果である。
本発明の一実施形態における皮膚外用剤は、有効成分としてのペンタデカン酸トリグリセリド混合物と、界面活性剤とを含む。以下、これらについて詳細に説明するが、各実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。
(有効成分)
本実施形態の皮膚外用剤に含まれる有効成分は、下記式(I)で表されるペンタデカン酸トリグリセリドを含む。用語、「ペンタデカン酸トリグリセリド」とは、下記式(I)に示すR、RおよびRの少なくとも1つ、好ましくは何れか2つ、例えば、RとRまたはRとRが、さらに好ましくはR、RおよびRの3つがペンタデカン酸残基であるトリグリセリドをいう。ペンタデカン酸のグリセリドへの結合位置は、1~3位のいずれであってもよい。
Figure 2022170976000003
式中、R、RおよびRで表されるいずれか1つの残基は、ペンタデカン酸残基以外の飽和脂肪酸残基であってもよい。「飽和脂肪酸」とは、分子内に二重結合、三重結合を持たない脂肪酸の総称であり、C2n+1COOHの化学式で示される。この飽和脂肪酸は、直鎖状または分枝状の飽和脂肪酸であり、酪酸(C4)、吉草酸(C5)、カプロン酸(C6)、エナント酸(C7)、カプリル酸(C8)、ペラルゴン酸(C9)、カプリン酸(C10)、ラウリン酸(C12)、ミリスチン酸(C14)、パルミチン酸(C16)、マルガリン酸(C17)、ステアリン酸(C18)、アラキジン酸(C20)、ベヘン酸(C22)、リグノセリン酸(C24)およびセロチン酸(C26)等の直鎖状飽和脂肪酸や、2-ヘキシルデカン酸(C16)、13-メチルペンタデカン酸(C16)、16-メチルヘプタデカン酸(C18)等の分枝状飽和脂肪酸が挙げられる。
本発明の有効成分は、2種以上のペンタデカン酸トリグリセリドを含む混合物であればよく、個々のトリグリセリドにおける脂肪酸組成は限定されないが、当該混合物に含まれる総脂肪酸質量に対し、50質量%以上のペンタデカン酸を含有することが好ましい。また、有効成分としてのトリグリセリド混合物は、この混合物に含まれる総脂肪酸質量に対し、20~40質量%の偶数鎖脂肪酸を含有することが好ましく、この偶数鎖脂肪酸は、パルミチン酸及び/又はミリスチン酸を含む。
本発明の有効成分は、式Iの化合物以外のトリグリセリドとともに混合物の状態で存在してもよく、トリグリセリドの総量に対して、少なくとも1質量%、好ましくは50質量%以上、より好ましくは90質量%以上の純度で含まれていれば混合物自体で有効成分としての機能を発揮することができる。
(トリグリセリド混合物の製造方法)
本発明の有効成分であるトリグリセリド混合物は、天然に存在するものであればその供給源は特に限定されない。生物が体内で生産する脂質、例えば家畜や家禽の脂肪、魚介類の油脂、植物油または脂質生産性の微生物が挙げられる。工業的な生産性の観点から、藻類、細菌、真菌(酵母を含む)、及び/又は原生生物などの微生物が好ましい。好ましい微生物には、黄金藻類(ストラメノパイル界の微生物等)、緑藻類、珪藻類、渦鞭毛藻類、酵母、並びにケカビ属及びモルティエラ属の真菌からなる群より選択されるものが含まれる。微生物群ストラメノパイルのメンバーには、微細藻類が含まれる。微細藻類とは、酸素を発生する光合成を行う生物の中からコケ植物、シダ植物、及び種子植物を除いた残りのうちの、細胞サイズが直径1μm~100μmのものをいう。微細藻類の近縁の原生生物であるラビリンチュラ類も含まれる。ラビリンチュラ類は、光合成を行わない従属栄養性の海生真核微生物であり、亜熱帯や熱帯を中心に広く分布している。一般には、ラビリンチュラ類は、ラビリンチュラ科(Labyrinthulidae)と、ヤブレツボカビ科(Thraustochytriidae)とに大別されており、ラビリンチュラ属(Labyrinthula)、オーランチオキトリウム属(Aurantiochytrium)、シゾキトリウム属(Schizochytrium)、スラウストキトリウム属(Thraustochytrium)、アプラノキトリウム属(Aplanochytrium)、オブロンギキトリウム属(oblongichytrium)、ボトリオキトリウム属(Botryochytrium)、ジャポノキトリウム属(Japonochytrium)等が属している。
培養するラビリンチュラ類としては、オーランチオキトリウム属、シゾキトリウム属、又は、スラウストキトリウム属がより好ましい。これらの種類は、脂質等の産生能が比較
的高く、スクアレン等の炭化水素類を産生し得るため、食用の用途や、バイオ燃料用原料の用途等に好適に用いられる。
ラビリンチュラ類の培養は、回分培養、連続培養、流加培養等のいずれの培養方式で行ってもよい。また、ラビリンチュラ類の培養は、振盪培養、通気培養、通気攪拌培養、エアリフト培養、静置培養等の適宜の培養方法で行うことができる。これらの培養方法の中でも、通気攪拌培養又はエアリフト培養がより好ましい。ラビリンチュラ類の培養に用いる培養装置としては、例えば、機械攪拌型リアクタ、エアリフト型リアクタ、充填層型リアクタ、流動層型リアクタ等を用いることができる。培養容器としては、培養の目的や培養容量等に応じて、タンク、ジャーファーメンタ、フラスコ、ディッシュ、カルチャーバッグ、チューブ、試験管等の各種の容器を用いることができる。培養容器は、ステンレス、ガラス等の無機材料や、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート共重合体、ポリプロピレン等の有機材料等、適宜の材質であってよい。
ラビリンチュラ類の培養は、適宜の温度条件、pH条件、通気条件等の下で行うことができる。培養温度は、5℃以上40℃以下とすることが好ましく、10℃以上35℃以下とすることがより好ましく、10℃以上30℃以下とすることが更に好ましい。また、pHは、2以上11以下とすることが好ましく、4以上9以下とすることがより好ましく、6以上8以下とすることが更に好ましい。
ラビリンチュラ類の培養は、ラビリンチュラ類の属や種、培地組成、培養条件等に応じて、適宜の間隔で継代しながら行うことができる。例えば、ラビリンチュラ類は、培養を開始した後、約2日で対数増殖期が終了し、約7日で死滅期に入る。そのため、ラビリンチュラ類の継代は、1日以上10日以下の間隔で行うことが好ましく、2日以上7日以下の間隔で行うことがより好ましく、2日以上5日以下の間隔で行うことが更に好ましい。また、ラビリンチュラ類の培養時間は、ラビリンチュラ類の属や種、培地組成、培養条件、培養の目的等に応じて、適宜の時間として行うことができる。特に、ラビリンチュラ類藻類のオーランチオキトリウム属藻類は、汽水域に生息する従属栄養性藻類であり、水中の栄養分を同化して脂質を生産し、細胞内に蓄積する特徴を有するため好ましい。
オーランチオキトリウム属藻類は、所望のトリグリセリドを生産する能力の優れた株を用いるのが好ましい。そのような藻類株は、天然に採取および分離されたものであっても、突然変異誘導およびスクリーニングを経てクローニングされたものであっても、あるいは遺伝子組み換え技術を利用して樹立されたものであってもよい。例えば、オーランチオキトリウムSp.SA-96株、NIES-3737株、オーランチオキトリウムNB6-3株、またはオーランチオキトリウムmh1959株は、奇数鎖脂肪酸のペンタデカン酸(PDA)を含有するトリグリセリドと、高度不飽和脂肪酸のドコサヘキサエン酸(DHA)やドコサペンタエン酸(DPA)を含有するトリグリセリドを細胞内に大量に蓄積する性質を有するため、本発明のペンタデカン酸トリグリセリドの製造に用いる微生物として、特に好ましい。
上記オーランチオキトリウム属藻類の培養は、当該技術分野において確立された方法で行われる。即ち、通常の維持培養は、適切に成分調製した培地に藻類を播種し、定法に従い行われる。オーランチオキトリウム属藻類を培養するための培地は、本質的に、塩分、炭素供給源および窒素供給源を含有する。一般的に、微細藻類の培養には、いわゆるGTY培地(人工海水10~40g/L、D(+)グルコース20~100g/L、トリプトン10~60g/L、酵母抽出物5~40g/L)が用いられる。
炭素源としてはグルコース、フルクトース、スクロース等の糖類がある。これらの炭素源を、例えば、培地1リットル当たり20~120gの濃度で添加する。
オーランチオキトリウム属藻類は海洋性藻類であり、培地には適切な量の人工海水が添加される。好ましくは、人工海水は、最終的な培地の塩分濃度が海水(塩分濃度3.4%(w/v))の約10%(v/v)~約100%(v/v)、例えば塩分濃度が約1.0~3.0%(w/v)となるように添加される。
一般的に、微細藻類の培養培地には、グルタミン酸ナトリウム、尿素等の有機窒素、または酢酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム等の無機窒素、または酵母抽出物、コーンスチープリカー、ポリペプトン、ペプトン、トリプトン等の生物由来消化物等の、様々な窒素源が添加され得る。特に、オーランチオキトリウム属藻類の培養に用いる培地に添加する窒素源として、様々な動物の細胞から液体成分を抽出して得られる細胞抽出物が好んで用いられる。培養細胞産物を取得するために細胞を工業的スケールで大量培養しなければならない場合に、細胞由来のアミノ酸、核酸、ビタミン、ミネラル等の栄養素に富み、低コストで入手可能な細胞抽出物の利用は極めて有利である。
しかしながら、上記のように、細胞抽出物をベースに調製した培地を使用すると、培養藻類が生産するトリグリセリド中の奇数脂肪酸の割合が著しく低下してしまうため、本発明の目的物を効率的に生産する場合、培地の窒素源として細胞抽出物を利用することが出来なかった。そこで、本発明者らは、強酸処理した細胞抽出物を添加して調製した藻類培養培地中でオーランチオキトリウム属藻類を培養したところ、当該処理をしない細胞抽出物を添加した場合と比較して、奇数鎖脂肪酸の生産量が劇的に増大することを見出し、奇数鎖脂肪酸を主要成分として含有するトリグリセリドを製造する方法をすでに報告している(特開2017-063633号公報)。
さらに、本発明の好ましい実施形態において、オーランチオキトリウム属藻類を培養するための基本培地は、2%以上のグルコースと0.5~4%のグルタミン酸ナトリウム、0.1~2%の酵母エキス、1~3.3%海水塩、2~20%ホエイ(動物性または植物性)を加えた培地にバリンを10~50mMとプロピオン酸ナトリウム10~50mMを添加する。動物性または植物性のホエイは、豆腐ホエー(大豆ホエー)が好ましい。この基本培地に、2%以上のグルコースと0.5~4%のグルタミン酸ナトリウム、0.1~2%の酵母エキス、1~3.3%海水塩、2~20%ホエイ(動物性または植物性)にて、20~30℃で72時間前培養したオーランチオキトリウムの培養液を2%以上加える。このオーランチオキトリウム添加培養液に、空気を通気させ、穏やかに攪拌する。培養は、20~30℃、pHは5.0~8.5に保持(pH調整には、1.0MのNaOH溶液を用いる)して、48~200時間行う。培養後、遠心分離にてペンタデカン酸トリグリセリドを生産したオーランチオキトリウム細胞を回収することができる(WO2020/054804号パンフレット参照)。
上記のような方法にて得られた培養液から遠心分離または濾過等により回収したペレットを、凍結乾燥または加温による乾燥等により乾燥させる。または、培養後の藻類細胞が懸濁した培地をそのままトリグリセリドの抽出ステップに用いてもよい。抽出は、異なる有機溶媒を用いて複数回行ってもよい。有機溶媒としては、n-ヘキサン・エタノール混合溶媒、クロロホルム・メタノール混合溶媒、またはエタノール・ジエチルエーテル混合溶媒等の極性溶媒と弱極性溶媒の混合液を用いることができる。得られた抽出液は、当業者に既知の方法で精製される。
トリグリセリドを分離する手法は、当業者に既知の分画手法が採用される。分画するトリグリセリド分子の極性、溶媒への溶解度、融点、比重、分子量等の様々な物理化学的特性を利用して分離精製が行われてもよく、好ましくはカラムクロマトグラフィー技術が用いられる。トリグリセリド分離手段の条件は、トリグリセリド混合物の組成および分画すべきトリグリセリドの種類に依存して、当業者による通常の条件検討により設定することが出来る。
藻類である、シゾキトリウム属及びオーランチオキトリウム属藻類は、奇数鎖脂肪酸トリグリセリドおよび高度不飽和脂肪酸トリグリセリドのいずれも細胞内で合成して蓄積することが出来る。そのため、得られた藻類細胞にエタノール、ヘキサンまたは酢酸エチルを加え脂質を抽出後、溶媒を留去し、藻類脂質を得る。この脂質を5℃にて、静置することで、ペンタデカン酸トリグリセリドを析出することが出来る。精製されたペンタデカン酸トリグリセリド「PdATG」の組成は、HPLC-MS、HPLC、ガスクロマトグラフィー等により分析することができる。
オーランチオキトリウム属藻類は、奇数鎖脂肪酸トリグリセリドおよび高度不飽和脂肪酸トリグリセリドのいずれも細胞内で合成して蓄積することが出来る。そのため、得られたオーランチオキトリウム細胞にヘキサンまたは酢酸エチルを加え脂質を抽出後、この脂質溶液に過酸化水素水を加えるか、オゾンを通気することにより不飽和脂肪酸を酸化分解する。反応終了後、炭酸水素ナトリウムおよび炭酸ナトリウムまたはイオン交換樹脂にて酸化物を取り除き、ペンタデカン酸トリグリセリド「PdATG」を得る。精製されたペンタデカン酸トリグリセリド「PdATG」の組成は、HPLC-MS、HPLC、ガスクロマトグラフィー等により分析することができる。
(界面活性剤)
本実施形態の皮膚外用剤に含まれる界面活性剤としては、非イオン性のものであれば、天然、合成のいずれの界面活性剤も使用できる。非イオン性界面活性剤は、本発明に係る皮膚外用剤において、皮膚に対する刺激性の低いものとなることからも使用することが好ましい。非イオン性界面活性剤としては、例えばグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキルグリコシド等が挙げられる。
さらに本発明の有効成分であるペンタデカン酸トリグリセリド混合物の水溶性を向上させる観点から、低重合ポリエチレングリコール含有非イオン界面活性剤(本願明細書においては、「低重合PEG含有非イオン界面活性剤」と略記することもある。)が好ましい。ここで、「低重合」とは特に限定されるものではないが、例えば、重合度(2~450)程度、好ましくは(3~100)、さらに好ましくは(5~30)程度のものである。この低重合PEG含有非イオン界面活性剤は、上記したような低重合PEGを他の疎水性分子例えば炭素数12~18程度の高級アルコールなど、に結合させた形態で、エステル型やエーテル型などの各種のタイプのものが含まれる。より具体的には、例えば、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリン型、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油脂肪酸エステル型、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油型、PCAイソステアリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油型、ポリオキシエチレン脂肪酸型、ポリオキシエチレンソルビトール型又はポリオキシエチレンアルキルエーテル型から選ばれる一種または数種を使用することができる。
さらに好ましくは、上記低重合PEG含有非イオン界面活性剤は、イソステアリン酸PEG-6グリセリル、イソステアリン酸PEG-8グリセリル、ヤシ油脂肪酸PEG-7グリセリル又はポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエートから選択される一種または数種である。本実施形態における低重合PEG含有非イオン界面活性剤の濃度は、本発明の効果が発揮できる範囲であれば特に限定されないが、好ましくは、0.1~10質量%、より好ましくは、0.3~5質量%である。
(皮膚外用剤)
本実施形態の皮膚外用剤としては、化粧水、乳液、クリーム、軟膏、ローション、オイル、パック等の基礎化粧料、石鹸、クレンジングクリーム、クレンジングローション、洗顔料等の皮膚洗浄料、シャンプー、リンス、トリートメント等の洗髪用化粧料や、ヘアクリーム、ヘアスプレー、ヘアトニック、ヘアジェル、ヘアローション、ヘアオイル、ヘアエッセンス、ヘアウォーター、ヘアワックス、ヘアフォーム等の整髪料、育毛・養毛料、ファンデーション、白粉、おしろい、口紅、頬紅、アイシャドウ、アイライナー、マスカラ、眉墨、まつ毛等のメークアップ化粧料、美爪料等の仕上げ用化粧料、香水類、歯磨き類、含嗽剤等の口腔用組成物等の化粧料組成物、外用薬用製剤、軟膏、ハップ剤、浴用剤、薬用歯磨き、口中清涼剤等の薬用口腔用組成物、薬用化粧品、染毛剤、育毛剤、脱毛防止剤、除毛剤等の毛髪溶剤液臭・防臭防止剤、衛生用品、衛生綿類、ウエットティシュ等の外用医薬部外品、外用医薬品等が挙げられる。
これらの皮膚外用剤は、化粧品、医薬部外品および医薬品等に慣用される他の成分、例えば、粉末成分、液体油脂、固体油脂、ロウ、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル、シリコーン、保湿剤、水溶性高分子、増粘剤、皮膜剤、紫外線吸収剤、金属イオン封鎖剤、低級アルコール、多価アルコール、糖、アミノ酸、有機アミン、高分子エマルジョン、pH調整剤、皮膚栄養剤、ビタミン、酸化防止剤、酸化防止助剤、香料、水等を必要に応じて配合し、常法により製造することができる。
その他の皮膚外用剤に配合可能な成分としては、例えば、防腐剤(エチルパラベン、ブチルパラベン等)、消炎剤(例えば、グリチルリチン酸誘導体、グリチルレチン酸誘導体、サリチル酸誘導体、ヒノキチオール、酸化亜鉛、アラントイン等)、美白剤(例えば、アスコルビン酸およびその誘導体、胎盤抽出物、ユキノシタ抽出物、アルブチン等)、各種抽出物(例えば、オウバク、オウレン、シコン、シャクヤク、センブリ、バーチ、セージ、ビワ、ニンジン、アロエ、ゼニアオイ、アイリス、ブドウ、ヨクイニン、ヘチマ、ユリ、サフラン、センキュウ、ショウキュウ、オトギリソウ、オノニス、ニンニク、トウガラシ、チンピ、トウキ、海藻等)、賦活剤(例えば、ローヤルゼリー、感光素、コレステロール誘導体等)、血行促進剤(例えば、ノニル酸ワレニルアミド、ニコチン酸ベンジルエステル、ニコチン酸β-ブトキシエチルエステル、カプサイシン、ジンゲロン、カンタリスチンキ、イクタモール、タンニン酸、α-ボルネオール、ニコチン酸トコフェロール、イノシトールヘキサニコチネート、シクランデレート、シンナリジン、トラゾリン、アセチルコリン、ベラパミル、セファランチン、γ-オリザノール等)、抗脂漏剤(例えば、硫黄、チアントール等)、抗炎症剤(例えば、トラネキサム酸、チオタウリン、ヒポタウリン等)および殺菌剤(例えば、トリクロサン、塩化セチルピリジニウム、チモール類、塩化ベンザルコニウム等)等が挙げられる。
本実施形態の皮膚外用剤の投与対象は、好ましくは温血脊椎動物であり、より好ましくは哺乳動物である。本明細書において哺乳動物は、例えば、ヒト、並びにサル、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタなどの非ヒト哺乳動物が挙げられる。本実施形態の皮膚外用剤は、皮膚におけるコラーゲン産生の促進、シワの改善、毛髪のハリ若しくはコシの付与、または毛髪の感触改善を所望するヒトの対象者に適用することが好ましい。
本実施形態の皮膚外用剤における前記有効成分を皮膚に塗布する量は、個体の状態、体重、性別、年齢、投与スケジュール、製剤形態又はその他の要因により適宜決定することができる。例えば、有効成分は、1日1回~数回に分け、または任意の期間および間隔で皮膚に塗布され得る。本実施形態の皮膚外用剤の総量中、前記有効成分の含有量は、0.0001質量%以上が好ましく、0.0004質量%以上がより好ましく、0.001質量%以上がさらに好ましい。また、1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.01質量%以下がさらに好ましい。本発明の有効成分は極性の低い化合物であることから水性媒体中に高濃度で溶解することが難しい。そこで、本実施形態の皮膚外用剤を調製する際に、低重合PEG含有非イオン界面活性剤と共存させることでその水溶性を向上させることができる。例えば、後述する実施例で使用するChemonic APLI-7を10質量%含有することで、水溶液中で0.5質量%まで上記有効成分を溶解させることができる。したがって、本発明の好ましい実施形態における皮膚外用剤は、有効成分のトリグリセリド混合物の含有量が0.0004~0.5質量%含む水性組成物である。
(作用効果)
本発明の有効成分であるペンタデカン酸トリグリセリドは、分子内に少なくとも1つのペンタデカン酸を含むが、ペンタデカン酸のような奇数鎖脂肪酸は、TCAサイクルを正常に維持する機能がある。脂肪酸は体内で酸化され、炭素数2個(C2)のアセチル-CoAとなってクエン酸サイクル(TCAサイクル)に入り、補酵素NAD (ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)やFAD(フラビンアデニンジヌクレオチド)をNADHやFADHに還元し、電子伝達系によりATPを産生する。ここで、炭素数が偶数の脂肪酸は、全ての炭素鎖がC2のアセチル-CoAに分解されてTCAサイクルに利用されるが、ペンタデカン酸のような奇数鎖脂肪酸の場合は、分解の最後にC3のプロピオニル-CoAが残る。
プロピオニル-CoAは、C4のメチル-マロニル-CoAに変換され、ビタミンB12を補酵素とする酵素メチルマロニル-CoAムターゼによって、TCAサイクルの一員であるスクシニル-CoAに変換される。TCAサイクルに導入されたスクシニル-CoAは、酵素スクシニルCoAシンセターゼによってコハク酸になる。この反応で、シグナル伝達物質であるGTP(グアノシン三リン酸)が生産される。TCAサイクルにおいて、GTPが生産されるのはこの反応だけである。なお、TCAサイクルにおいてATPは生産されない。
GTPはG-タンパク質と呼ばれる膜タンパク質に結合してシグナルを伝達する。GTPが結合した活性型Gタンパク質は、細胞の様々な生理機能を活性化させる重要な役割を担っている。したがって、奇数鎖脂肪酸は、C2のアセチル-CoAから出発するATP生産に加えて、C3のプロピオニル-CoAから出発する細胞の生理機能活性化にも関与することが示唆される。
TCAサイクルを構成する分子は他の様々な代謝経路にも関与するものであるため、構成分子のいずれかが不足してTCAサイクルが充分に機能しなくなくなる場合がある。そのような場合、奇数鎖脂肪酸が上記のように分解されて生成されたスクシニル-CoAがTCAサイクルに補充される(この現象を補充反応(anaplerosis)と呼ぶ)。また、逆にTCAサイクルの分子が過剰に存在する場合は、いずれかの構成分子を抜き取る反応(cataplerotic reaction)が生じ、TCAサイクルが正常に保たれる。奇数鎖脂肪酸は、プロピオニル-CoAを経由してスクシニル-CoAを補充することにより、TCAサイクルを正常に維持する機能を担っている。
本発明の有効成分は、このような奇数鎖脂肪酸、特に、ペンタデカン酸を、トリグリセリド混合物中の総脂肪酸質量に対し、50質量%以上含有するとともに、20~40質量%の偶数鎖脂肪酸、好ましくは、パルミチン酸及び/又はミリスチン酸を含有することによりTCAサイクルの機能をより一層正常に維持することができると考えられる。一般に、遊離脂肪酸は細胞に対して毒性を有するが、本発明の有効成分はトリグリセリドの状態で存在するため安定性が高く、生体内でペンタデカン酸の徐放性作用があり、大量に投与しても毒性がなく、皮膚外用剤として適していると考えられる。
本実施形態の皮膚外用剤が、肌の美しさを高めると同時に、シワを改善する作用効果は上記メカニズムに限定されず、また如何なる理論にも拘束されないが、ヒト皮膚正常線維芽細胞においてのタイプIコラーゲン産生効果を有し、顆粒層への影響では、バリア機能の向上傾向が考えられ、Caspase-14発現誘導により、フィラグリン前駆体を分解して天然保湿因子をつくり、角質層のバリア機能、水分保持機能の維持に関与、肌のハリや透明感を良くすることで、肌の美しさを高めると考えられる。そして、フェラグリン産生による保湿とコラーゲン産生という内面効果により、シワ改善効果を発揮すると考えられる。
次に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に何ら制約されるものではない。なお、以下の実施例において、各種成分の添加量を示す数値の単位%は、質量%を意味する。
(製造例1)オーランチオキトリウムを用いたペンタデカン酸トリグリセリドの製造
オーランチキトリウムmh1959株(国立大学法人 宮崎大学農学部 林 雅弘教授より購入)を、3.6%のグルコースと0.5%のグルタミン酸ナトリウム、0.2%の酵母エキス、1%海水塩、10%ホエイを含む培地を用いて、25℃で72時間前培養した。これを以下の基本培地に対し2%となるように加え、空気を通気させ、穏やかに攪拌した。基本培地1kgは、3.6%のグルコースと0.5%のグルタミン酸ナトリウム、0.2%の酵母エキス、1%海水塩、10%ホエイを加えた培地にバリンを50mMとプロピオン酸ナトリウム25mMを添加して調製した。培養は、25℃、pHは7.40~7.75に保持(pH調整には、1.0M NaOH溶液を用いる)して、72~96時間培養した。
培養後、3000rpmで15分間遠心分離して、藻体約20gを回収した。得られたオーランチキトリウムの藻体20gに、ヘキサンまたは酢酸エチルを加え、脂質を抽出した。抽出した脂質溶液に過酸化水素水を加え(必要に応じて水を加える)、室温でオゾンを通気した。反応終了後、炭酸水素ナトリウムおよび炭酸ナトリウムまたはイオン交換樹脂にて酸化物を取り除き、温度低下と共に析出するペンタデカン酸トリグリセリド混合物2gを得た。
(ペンタデカン酸トリグリセリドの組成分析)
製造例1で得られたペンタデカン酸トリグリセリドを含む脂質に14%BF-メタノール0.50mLと酢酸メチル0.25mLとを加え、70℃、30分間加熱して脂肪酸のメチルエステル(FAME)を得た。反応液にn-ヘキサンを正確に1.0mLと5mLの生理食塩水を加え、激しく混合した。混合液を2800rpm、10分間遠心分離し、n-ヘキサン層をガスクロマトグラフィーの試料とした。
島津製作所社製ガスクロマトグラフ装置GC-2025を用いて、上記試料を分析した。分析条件は、Agilent J&W GCカラムDB-23(30m×0.25mm)を用い、1μLの試料をインジェクトして、キャリヤーガス(He、14psi)にてFID(水素炎イオン化型検出器)で検出した。FAMEの分子種は脂肪酸メチルエステル標準品(GLサイエンス社製)の保持時間をもとに同定した。脂肪酸組成は面積比から求めた。求めた組成は質量比である。奇数鎖脂肪酸の割合は、総脂肪酸量に奇数鎖脂肪酸(C13、C15、C17)の割合(%)を掛けて求めた。得られた結果を以下の表1に示す。
Figure 2022170976000004
表1に示した結果より、製造例1で得られたトリグリセリド中の奇数鎖脂肪酸の含量は、質量比で68.3%であった。また、脂肪酸としては、主として、ペンタデカン酸残基(C15)とパルミチン酸残基(C16)からなるトリグリセリドであることがわかった。
(ペンタデカン酸トリグリセリドの質量分析)
製造例1で得られたペンタデカン酸トリグリセリドを含む脂質を、Thermo Fischer社製Orbitrap質量分析計Exactive Plus(AMR社製DARTイオン源)を用いて質量分析法にて解析した。その結果、主要なマススペクトルピークのフラグメント組成から、製造例1で得られたペンタデカン酸トリグリセリドは、ペンタデカン酸残基(C15)のみで形成されるトリグリセライドとペンタデカン酸残基(C15)2単位にパルミチン酸残基(C16)を1単位含むトリグリセリドを主として含むトリグリセリド混合物であることがわかった。
(実施例1)ヒト皮膚線維芽細胞におけるI型コラーゲン産生促進効果の検証
0.5%ウシ胎仔血清(FBS)を含有するダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)を含む96穴プレートに、ヒト皮膚線維芽細胞を2.0×10cells/wellの密度で播種し、24時間インキュベートした。0~40μg/mLの各濃度で、製造例1で得られたペンタデカン酸トリグリセリド混合物を添加した0.5%FBSを含有するDMEMに培地交換し、さらに24時間インキュベートした。培養上清を回収し、含有するI型コラーゲン量をELISA法にて定量した。細胞の総タンパク量をBCA法にて測定し、産生したI型コラーゲン量を単位タンパクあたりで表記した結果を表2及び図1に示す。
Figure 2022170976000005
表2及び図1において、I型コラーゲンの測定値は、各濃度4つのサンプルの平均値および標準偏差値であり、試料濃度が0μg/mLのときの平均値に比べて、スチューデントのt検定においてp<0.01で有意差がある場合を**で示す。
表2および図1の結果より、培地に添加したペンタデカン酸トリグリセリド混合物(PdATG)の濃度依存的にヒト線維芽細胞が産生するI型コラーゲン量の増加が認められた。
(実施例2)
製造例1で得られたペンタデカン酸トリグリセリド混合物(PdATG)の水溶液中における溶解性を検討するために、種々の界面活性剤を添加した水溶液に、最終濃度でそれぞれ0.01、0.05、0.1、0.2、0.5、0.8及び1.0質量%となるようにPdATGを添加して、目視による可溶化最大濃度を調べた。その結果、非イオン性界面活性剤であるヤシ油脂肪酸PEG-7グリセリル(Chemonic APLI-7:(日本ルーブリゾール株式会社)を用いた場合には、PdATGが最大で0.5質量%まで可溶化することができた。一方、アニオン性又はカチオン性、および両性等の非イオン性以外の界面活性剤を用いた場合にはいずれも、PdATGの可溶化と共に、脂質の分解を引き起こしてしまい、可溶化最大濃度としては上記非イオン性界面活性剤の場合とあまり変わりはないものの、活性成分を正しく乳化することは難しかった。そこで、上記非イオン界面活性剤を用いて、以下の配合組成の化粧水を作製し、これをヒト被験者に塗布してモニター試験を行った。
(実施例3)
PdATGを1%となるようにスクワラン(プリピュア3759-LQ-(JP):クローダジャパン株式会社)に配合した有効成分組成物(TdATG1%、スクワラン99%含有)を調製した。この有効成分組成物又は溶媒対照物質としてのスクワラン(プリピュア3759-LQ-(JP):クローダジャパン株式会社)各1g及びヤシ油脂肪酸PEG-7グリセリル(Chemonic APLI-7:日本ルーブリゾール株式会社)8gを200mLビーカーにとり、よく混ぜ合わせた。これにペンチレングリコール20g、1,3-ブチレングリコール(1,3-BG)100g及びフェノキシエタノール4gを混ぜ合わせた。これを、別にあらかじめ80℃に加温した精製水867gに混ぜ合わせ、以下の表3に示した化粧水(配合品及び無配合品)を製造した。
Figure 2022170976000006
(試験例1)
上記化粧水(配合品又は無配合品)を用い、25名(32~58歳、平均年齢約46歳)の被験者で、肌塗布試験を行った。
・対象者:32~58歳の健常女性、左右の目尻にシワグレード1~3(日本香粧品学会の「化粧品機能評価法ガイドライン」参照)を有する25例。
・デザイン:二重盲検無作為化比較試験(同験者によるハーフフェイス比較試験)
・試験品:PdATGを0.001%配合した化粧水(配合品)、配合なし化粧水(無配合品)
・期間 :1日2回朝晩使用する。4週間連続塗布
・評価項目:試験品塗布開始前及び試験終了時の同一部位の熟練担当者(医師)による目視評価並びにレプリカ採取による二次元機器測定
目視評価結果
シワグレード標準に基づき医師による目視評価の結果を図2に示す。図2(A)は、配合品を塗布した被験者の試験開始時(0W)及び4週間後(4W)のスコア平均値を、図2(B)は、無配合品を塗布した被験者の試験開始時(0W)及び4週間後(4W)のスコア平均値である。図2に示したように、配合品を塗布した被験者では、4週間後のシワグレードが試験開始時に比べて有意に(p<0.05)低下していた。一方、無配合品を塗布した被験者では試験開始時と4週間後で有意な差が認められなかった。
なお、シワグレード標準は以下のとおりである。
グレード1:不明瞭な浅いシワが僅かに認められる。
グレード2:明瞭な浅いシワが僅かに認められる。
グレード3:明瞭な浅いシワが認められる。
二次元機器測定
エクザファイン(EXAFINE、株式会社ジーシー製)を用いて、目の際から約5mm離れた部位から10×10mm以上の範囲でレプリカを採取した。斜光照明による二次元画像解析装置(株式会社アサヒテクノラボ社)を用いて、各種シワ解析パラメータを算出した。その中で、最大シワ最大深さを算出した平均値を図3に示す。図3(B)に示したように、無配合品を塗布した被験者の4週間後の数値は有意に上昇していたが、配合品を塗布した被験者では低下傾向が認められた。よって、PdATG配合化粧水は、シワの悪化を防いでいると考えられる。
なお、実施例3の化粧水組成において、スクワラン、ペンチルグルコール、1,3-BG、フェノキシエタノールは、一般的化粧水組成においても配合される点から配合されたが、これらの配合の有無により、特に本発明に係る有効成分組成物による皮膚のシワ改善効果に差異は生じるものではないことは、別途確認した。
本発明の皮膚外用剤の適用は、皮膚のシワ改善に有効であることが確認できた。したがって、本発明の皮膚外用剤は、シワを改善するための化粧品として利用できる可能性がある。


Claims (6)

  1. 藻類由来の下記式(I):
    Figure 2022170976000007
    (式中、R、R及びRは、それぞれ飽和脂肪酸残基であって、その少なくとも1つがペンタデカン酸残基である。)で表される2種以上のトリグリセリド混合物と、低重合PEG含有非イオン界面活性剤と、を含有するシワ改善のための皮膚外用剤。
  2. 前記トリグリセリド混合物は、当該混合物に含まれる総脂肪酸質量に対し、50質量%以上のペンタデカン酸を含有する、請求項1に記載の皮膚外用剤。
  3. 前記トリグリセリド混合物は、当該混合物に含まれる総脂肪酸質量に対し、20~40質量%の偶数鎖脂肪酸を含有し、当該偶数鎖脂肪酸は、パルミチン酸及び/又はミリスチン酸を含む請求項1又は2に記載の皮膚外用剤。
  4. 前記藻類が、ラビリンチュラ類のシゾキトリウム属又はオーランチオキトリウム属に属する微細藻類である請求項1~3のいずれか一項に記載の皮膚外用剤。
  5. 前記低重合PEG含有非イオン界面活性剤が、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリン型、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油脂肪酸エステル型、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油型、PCAイソステアリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油型、ポリオキシエチレン脂肪酸型、ポリオキシエチレンソルビトール型及びポリオキシエチレンアルキルエーテル型からなる群より選択される一種または数種である請求項1~4のいずれか一項に記載の皮膚外用剤。
  6. 水性組成物中に前記トリグリセリド混合物を0.0004~0.5質量%含有する請求項1~5のいずれか一項に記載の皮膚外用剤。

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