台所に設置されるシステムキッチン50は、図9に示すように、流し台キャビネット51と、これに互いに隣接して設置されるコンロ用キャビネット52と、それらを被覆する1枚の天板53とを備えている。このシステムキッチン50においては、天板53のうち流し台キャビネット51を被覆する流し台領域Aにはシンク54が形成されており、このシンク54に対して水栓61から湯水が供給されることになる。コンロ用キャビネット52を被覆するコンロ領域Bの前面部寄りには長方形の開口部56が切り抜かれて、その開口部56から1台のコンロ55がコンロ用キャビネット52上に落とし込まれている。また、この流し台領域Aと、コンロ領域Bの中間には、調理台ユニット領域Cが形成され、ユーザは、かかる調理台ユニット領域Cの上面に貼り渡されている天板53上において食物を調理し、或いは調理に必要な器具や食器等を載置する。
ここで一般的にシステムキッチンとは、収納用の各種フロアキャビネットを併設し、該フロアキャビネット上にはワークトップを有し、必要によってシンクあるいは加熱調理機器を配した、モジュール化されコーディネートされた組み合わせ型キッチンであり、広義には、間仕切り収納キャビネットやダイニングカウンターを含む。これらワークトップ又はカウンターを総称して、以下天板という。
図10は、かかるコンロ領域B並びに調理台ユニット領域Cにおける使用例を示している。
この図10に示す例において、先ずコンロ領域Bでは、コンロ55本体を構成する本体ケース81が天板上から落とし込み状態に固定装着されている。このコンロ55本体には、複数のガスバーナ84が配設されており、上面に設けられたカバー83には、該各ガスバーナ84が臨むバーナ用開口部85が開設されている。さらに、前記バーナ用開口部85上方には五徳86が配設され、バーナの炎や、炎により生じた熱気が五徳86の爪部に載置された調理鍋74等の底面に沿って五徳86の外側に放出されるようになっている。即ち、ガスバーナ84を燃焼させることにより、前記五徳86に載置した調理鍋74内の食材等を加熱調理することが可能となる。
また、調理台ユニット領域Cでは、実際に食物を切り刻み、加工するためのまな板91や、洗浄した食器類を乾燥させるためのステンレス製の食器篭92等が載置される。さらには、トースター65,ジューサー69,炊飯器71等のような実際の調理に必要な調理用機器等が所狭しと配置されることになる。これら各調理用機器は、コンセント61やプラグ67を介して電源が供給される。
これらトースター65やジューサー69、炊飯器71等の各種調理用機器の代替として、例えば泡立て器や食器洗い機等の各種調理用機器をこの調理台ユニット領域Cに配置する場合もあり、同じくコンセント61からの電源を供給することになる。
ところで、数多くのレシピが研究されつつある中、和洋東西多彩を極めた多岐にわたる調理が家庭においても実現可能となった昨今において、多くの調理用機器を同時に動作させる必要性も高まっている。
しかしながら、上述の如き従来のシステムキッチンにおいて多くの調理用機器を同時に動作させるためには、面積が限定された調理台ユニット領域Cにおいて、多くの調理用機器を配置しなければならない。このため、食器籠92を含め他の食器を置くスペースや、まな板91を使用して食物を加工するためのスペースが必然的に小さくなる。また、調理台ユニット領域Cに隣接するコンロ領域Bにおいてもガスコンロを利用して調理鍋に入れた食物等を同時に煮たりする場合もあるが、かかるガスコンロからの熱が調理台ユニット領域C上に置いてある調理用機器に伝熱することもあるため、かかる調理用機器の配置箇所において更なる制約がかかる。
一方、多くのガスコンロを用いて一度に多くの食物等を同時に煮炊きする場合には、ガスコンロを増設する必要があるところ、上述のガスコンロ領域Bにおける天板上の占有率を高く設定するとともに調理台ユニット領域Cの占有率を低く設定したい場合もある。また、図10に示す既存のシステムキッチンにおいては、本体ケースが天板上から落とし込み状態に固定装着されるものであり、ガスコンロを増設し、ガスコンロ領域を大幅に移動させることはできなかった。
従って、調理台ユニット領域Cやコンロ領域Bの天板上における占有比率をユーザの意思に応じて可変とすることにより、かかる調理をより効率的に実現ことが望まれている。
特にこのような要請に応えるためには、ガスコンロの配置の自由度をいかにして向上させるかが最重要課題となる。かかる課題を解決すべく、電磁誘導を利用して加熱調理する誘導加熱機器を上記ガスコンロの代替として用いる手法が従来において提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
この特許文献1に示される誘導加熱機器100は、例えば図11に示すように、調理鍋等に代表される負荷部98とこの負荷部98を誘導加熱する磁気発生部99とを備え、この磁気発生部99は、上記負荷部98を載置するためのトッププレート103と、トッププレート103の下部に設けられ、上記誘導加熱を実行するための高周波磁界を発生する一次コイル104とこの一次コイル104を駆動するインバータ107とを備え、このインバータ107には電源コード109を介して電源が供給されることになる。
ユーザは、この磁気発生部99を天板上の任意の位置に配置することができるため、調理台ユニット領域Cとコンロ領域Bとを区別することなく、誘導加熱機器100と調理用機器との間で自由な配置のバリエーションを楽しむことが可能となる。
特開平5−184471号公報
特開2006−230516号公報
以下、本発明を実施するための最良の形態として、飲食店や家庭等において食物を調理する際に適用されるシステムキッチンについて、図面を参照しながら詳細に説明する。
本発明を適用したシステムキッチン1は、少なくともワークトップ又はカウンター(以下、これらを天板という)を有するシステムキッチンであって、図1に示すように、キャビネット11と、このキャビネット11における上面を被覆する天板13と、この天板13に隣接する流し台領域Aにおいて形成されたシンク14と、シンク14に対して湯水を供給するための水栓15とを備えている。以下では、システムキッチン1を、キッチンの作業台を壁面から分離し、島(Island)型に設けたいわゆるアイランドキッチンとして適用する場合について説明をするが、かかる場合に限定されるものではなく、シンク、コンロのある作業台を1列に並べたいわゆる1列型キッチン、或いはシンク、コンロをL字型に並べたいわゆるL型キッチンとして適用するようにしてもよい。
キャビネット11は、例えば前面側に片開き可能に軸着されている図示しない扉や収納用引出を設けてもよく、これら各扉や収納用引出内には、主として台所用具や食器等を収納可能な棚やケース等を設けるようにしてもよい。
シンク14には、水切り用の凹み部等が形成されており、底面には排水口が設けられている。このシンク14において、凹み部並びに排水口は、プレス成形や注型成形、インジェクション成形等の方法により互いに一体に成形されている。シンク14の材質は、特に限定されるものではないが、耐熱性のある樹脂やステンレス鋼板等の金属を用いることも可能である。
天板13は、表面が平滑なガラス板で構成されている。この天板13上には、食材等を加熱調理するための調理鍋やポット等に代表される調理用容器や、実際に食材を切り刻み、加工するためのまな板がユーザ任意の位置に載置可能な構成とされている。この天板13は、全ての領域が同素材で構成される場合に限定されるものではなく、後述するコイルユニットを配置する範囲について上述の如きガラス板等で構成されていればよい。
この天板13上には、調理用容器が複数に亘り任意の位置に載置される場合もあるし、まな板以外に、図示しない食器篭や炊飯器、ジューサー等といった各種調理用容器20がそれぞれ任意の位置に載置される場合もある。即ち、この天板13は、調理用容器20が載置される可能性があることから、耐熱性、耐衝撃性、耐薬品性、機械的強度に優れた材料で構成する必要があるところ、通常、耐熱ガラスやセラミックス等で構成される。
ちなみに、本発明を適用したシステムキッチン1では、天板13上に載置された調理用容器20につき、IHヒーターを利用して誘導加熱する。実際にこの誘導加熱は、天板13の下部に配設されたコイルユニット3を介して実行していくことになる。また、このシステムキッチン1では、ユーザがこれらコイルユニット3を操作するための操作板95が天板13側方に配設されてなるとともに、この操作板95を介してユーザの操作を受けてコイルユニット3に制御信号を送信するための中央制御ユニット94が内部に実装されている。
コイルユニット3は、少なくとも1箇所に亘り移動自在に配置されてなる平板状のベースプレート4に搭載されている。以下では、図1に示すように、天板13の長手方向Xに4列のベースプレート4a〜4dを配列させた場合を例にとり説明をする。このとき、ベースプレート4a〜4dをユーザによる指示に基づいて制御することとする。ちなみに、以下の説明においては、このベースプレート4の個数を4つとする場合を例にとり説明をするが、かかる個数はこれに限定されるものではない。
また、これらベースプレート4a〜4dは、天板13の幅方向Yに移動自在とされているものとする。なお天板13上には、これらベースプレート4a〜4dが配列されている箇所に応じたマーキングが描かれていてもよい。
ベースプレート4は、天板13下部における空間19中に配設される。この空間19は、天板13と底板の周囲を側壁で囲むことにより形成された開空間として構成される。ちなみに、この空間19は、天板13上において調理用容器20が載置可能な位置に対応させて形成されている。
このようにシステムキッチン1においては、コイルユニット3a〜3d(ベースプレート4a〜4d)を幅方向Yに移動させることができるため、天板13上の略全ての領域で、鍋等の調理用容器を誘電加熱することができる。即ち、本実施形態のシステムキッチン1は、流し台領域A以外の領域が、従来のコンロ領域及び調理台ユニット領域の両方の機能を兼ね備えた加熱調理領域Dとして機能させることが可能となる。このため、ユーザは、天板13上の任意の位置で加熱調理を行うことができると共に、天板13上の任意の位置でまな板等を載置して調理を行うことができ、更には天板13上の任意の位置に各種調理用機器を載置することができる。
また、このベースプレート4a〜4dと後述するこのベースプレート4a〜4dにおけるY方向の移動機構とは、それぞれ筐体5a〜5dにそれぞれ搭載される。ちなみに、上述した空間19は、この筐体5が少なくとも2以上に亘って配設可能なスペースがあればよい。
筐体5は、図2(a)に示すように4方向が側壁131により包囲されるとともに底面132が形成され、上面が開放された箱体として構成されている。この筐体5は、ベースプレート4の移動可能なY方向へ向けて細長の矩形領域を少なくとも側壁131により包囲する構成としている。即ち、この筐体5は、一の筐体5内に一のベースプレート4を配設することができる構成としている。
この筐体5は、隣接する他の筐体5との間で互いに嵌合可能なキー溝133が周囲に所定の間隔をおいて形成されている。実際にこの筐体5を配設する際には、既に配設された隣接する他の筐体5のキー溝133と、新たに配設すべき筐体5におけるキー溝とを嵌合させる。そして、隣接する他の筐体5のキー溝133により案内させてながら、新たに配設すべき筐体5を下ろしていくことになる。これにより、取り付け時の位置決めを容易に行うことが可能となる。また、各筐体5の底面132は、ネジ135により螺着可能とされている。ネジ135の代わりに、ビス又はボルトとナットを使用して固定するようにしてもよい。これにより筐体5がずれないように強固に固定することが可能となる。
図2(b)は、実際にこのキー溝133によりガイドさせることにより隣接する筐体5を配設した例を示している。図2(c)は、他の配置例を示している。キー溝133をこの筐体5を構成する何れの側壁131に対して設けておくことにより、図2(c)のように、隣接する筐体5同士を互いに直交するようにして配設することが可能となる。
図3は、この筐体5の中にコイルユニット3並びにそのY方向への移動機構を実装した例を示す平面図である。本実施形態のシステムキッチン1におけるコイルユニット3a〜3dは、夫々縦方向Yに伸びるレール256に係合するレール係合部材257上に載置されている。このレール係合部材257は、駆動モータ260及びギアボックス258等からなる移動制御部によってレール256上を移動する。
図4は、中央制御ユニット94やコイルユニット3a〜3dの駆動部を示すブロック図であり、図5はコイルユニット3a〜3dの構造を示す断面図である。
中央制御ユニット94は、CPU等で構成される制御部401と、液晶パネル等を介してユーザに対して所定の情報を表示する表示部363とを備え、この制御部401から、駆動モーター260やギアボックス258に制御信号を送信可能としているとともに、操作板95a、95bを介したユーザからの入力信号を制御部401を介して受け付ける。
操作板95には、ユーザが実際にコイルユニット3a〜3dを操作するためのキー及びボタン等が設けられている。この操作板95においてユーザから入力された内容は、制御部401へ通知され、制御部401は、接続された制御回路347へこれを通知し、制御回路347はかかる入力された内容に基づいてコイルユニット3a〜3dの各構成要素を制御していくことになる。なお、この操作板95は、液晶のタッチパネル等を想定しているが、これに限定されるものではなく、例えば、無線通信でユーザからの入力内容を送信するためのリモートコントローラで構成されていてもよい。
コイルユニット3a〜3dの駆動部は、インバータブロック331と、制御ブロック332に大別されて構成されている。このインバータブロック331は、実際に誘導加熱する高周波磁界を制御するためのブロックであり、制御ブロック332は、コイルユニット3全体を制御するためのブロックである。
インバータブロック331は、家庭用のAC200V(50/60Hz)の電源を電源プラグ329から電源コード330を介して受給する整流回路333と、この電源コード330と整流回路333との間に配設された電流検知コイル344と、この整流回路333に接続されてなり、鉄心にコイルを巻回すことにより構成されるチョークコイル334と、このチョークコイル334との間で直列LC回路を構成するコンデンサ335と、整流回路333の出力端子間を直列に接続するようにして配設される第1のスイッチング素子336並びに第2のスイッチング素子337と、これらスイッチング素子336,337に対して並列に接続される2つの共振コンデンサ338,339と、これら共振コンデンサ338,339の接続点に短絡されるカーレントトランス340と、インバータブロック331の内部の何れかに実装される回路保護サーモ341とを備えている。このインバータブロック331におけるカーレントトランス340の一端側と、上記スイッチング素子336,337の接続点には、さらに誘導加熱コイル342が接続され、この誘導加熱コイル342の略中心付近には鍋温度検知サーミスタ350が設けられている。
制御ブロック332は、インバータブロック331における電流検知コイル344に接続される一次電流検知回路345と、整流回路333へ供給される電流を検知するための電源電圧検知回路346と、少なくとも一次電流検知回路345並びに電源電圧検知回路346に接続されてなり、この制御ブロック332全体を制御するための中央演算ユニットとしての役割を担う制御回路347と、この制御回路347と上記スイッチング素子336,337とに接続されるインバータ駆動回路348と、接続された回路保護サーモ341からの検知情報を制御回路347へ送信するための温度検知回路349と、カーレントトランス340並びに制御回路347に夫々接続されるコイル電流検知回路351と、温度検知サーミスタ350並びに制御回路347に夫々接続される鍋温度検知回路352とを少なくとも備えている。また、この制御ブロック332は、制御回路347に対して更に冷却ファン354と、アラーム362と、表示部363と、操作部357とを接続して構成されている。
図5に示すように、上述した各構成要素は、筐体305内部に実装されている。特に、インバータブロック331及び制御ブロック332は、載置台306上に載置されて取り付けられることになる。また、この筐体305には、冷却用ファン354の配設位置近傍の底面に吸気口358が形成されており、さらに一の側面には排気口359が形成されている。
次に、インバータブロック331の各構成要素について詳細に説明する。整流回路333は、接続された電源プラグ329からの電源用電流を整流するために配設されたものであって、供給された交流としての電源用電流を直流に変換する。チョークコイル334とコンデンサ335とにより構成されるLC直列回路は、いわゆる平滑回路を構成する。スイッチング素子336,337は、例えばトランジスタ等で構成され、各スイッチング素子336,337のエミッタとコレクタには逆導通用のダイオード362,363がそれぞれ並列接続される。スイッチング素子336のベースにはインバータ駆動回路348からの駆動信号QAが供給され、スイッチング素子337のベースにはインバータ駆動回路348からの駆動信号QBが供給される。即ち、インバータ駆動回路348は、この駆動信号QAと駆動信号QBとを交互に供給することにより、共振コンデンサ338,339と誘導加熱コイル342に共振電流を流すことが可能となる。
誘導加熱コイル342は、図5に示すように、筐体305の上面305aに対向させて配設されている。この誘導加熱コイル342における巻き数は、上記調理用容器20を加熱する際における電力を支配するものであり、調理用容器20における底板の表皮抵抗や共振電流の大きさとの関係において最適に調整されている必要がある。この誘導加熱コイル342は、上記供給される共振電流に基づいて共振されることになり、その結果、高周波磁界を発生させることが可能となる。
回路保護サーモ341は、温度の変化に応じて抵抗値が変化するサーミスタ等で構成されており、主としてインバータブロック331や制御ブロック332を構成する空間の温度を測定するものである。
温度検知サーミスタ350は、回路保護サーモ341と同様にサーミスタで構成されている。この鍋温度検知サーミスタ350は、天板13を介して調理用容器20の温度を検知するためのものであり、上述の如く誘導加熱コイル342の中心付近に配設される。更にまた、カーレントトランス340は、誘導加熱コイルに流れる共振電流の電流値を検知するためのコイル等である。
次に、制御ブロック332の各構成要素について詳細に説明する。一次電流検知回路345は、接続された電流検知コイル344を介して、電源プラグ329を介して供給される電源用電流の電流値を検知する。そして、一次電流検知回路345は、検知した電流値を制御回路347へと通知する。
電源電圧検知回路346は、電源プラグ329からの電源用電流に基づく電圧を検知し、この検知した電圧を制御回路347へ通知するものである。
制御回路347は、例えばCPU等で構成される中央制御ユニット358内に設けられている。そして、制御回路347には、上述した一次検知回路345により検知された電流値が通知され、電源電圧検知回路346により検知された電圧が通知された場合には、これらを参照しつつ、設定された電力となるようにインバータ駆動回路348を制御する。また、制御回路347は、操作部357を介したユーザからの命令を解釈し、これに基づいてインバータ駆動回路348、冷却ファン354及びアラーム362を制御すると共に、表示部363を介して所定の情報を表示する。
インバータ駆動回路348は、正弦波信号を発振させるための発振回路であり、制御回路347による制御に基づいて、上記駆動信号QA又は駆動信号QBを生成するものである。
温度検知回路349は、回路保護サーモ341における抵抗値の変化を検出するものである。この温度検知回路349は、検出した回路保護サーモ341の抵抗値の変化に基づき、筐体305の内部の温度を検知する。この温度検知回路349は、検知した筐体305内部の温度を制御回路347へ通知する。制御回路347は、温度検知回路349からの通知を介して筐体305内部の温度を随時認識することが可能となる。これにより、例えば運転中において冷却ファン等が停止した場合、及び吸気口358又は排気口359が詰まった場合等のように冷却性能が低下し、筐体305の内部の温度が急激に上昇した場合には、制御回路347は、温度検知回路349を介してこれを認識し、コイルユニット3a〜3dの動作を停止させることも可能となる。
コイル電流検知回路351は、カーレントトランス340により検知された共振電流の電流値を読み取り、これを制御回路347へ通知するものである。この制御回路347は、コイル電流検知回路351を介して共振電流の電流値を随時認識することができる。これにより、制御回路347は、例えば、調理用容器20の材質や形状に応じて決定される誘導加熱に必要な電力に対して、必要以上の共振電流が流れるのを抑制することが可能となり、更には、誘導加熱中において調理用容器20が外された場合において、コイルユニット3a〜3dの動作を停止させるとともに、アラーム362を介してこれをユーザに通知することも可能となる。
鍋温度検知回路352は、鍋温度検知サーミスタ350における抵抗値の変化を検出し、この検出した鍋温度検知サーミスタ350の抵抗値の変化に基づき、調理用容器20の温度を検知するものである。そして、鍋温度検知回路352は、検知した調理用容器20の温度を制御回路347へ通知する。これにより、制御回路347は、温度検知回路349からの通知を介して調理用容器20の温度を随時認識することが可能となり、例えば調理用容器20の底部の温度が規定値以上に上昇した場合には、コイルユニット3a〜3dの動作を停止させることも可能となる。
冷却ファン354は、制御回路347による制御に基づいて回転し、この冷却ファン354の回転に応じて、吸気口358から冷却風が吸い込まれる。そして、この吸い込まれた冷却風は、インバータブロック331や制御ブロック332上を通過することによりこれらを冷却し、排出口359から外部へと排出される。
アラーム362は、制御回路347による制御に基づいて所定の音を発生させる音声発振器で構成される。
次に、コイルユニット3a〜3dの動作、即ち、上述の如く構成されたコイルユニット3a〜3dにより、調理用容器20を誘導加熱する方法について説明する。
先ず、天板13上の任意の位置に鍋等の調理用容器20を載置し、この調理用容器20の直下域にコイルユニットを移動させる。次に、調理用容器20の直下域に配置されたコイルユニットにより、調理用容器20を誘電加熱する。具体的には、先ず、電源プラグ329から電源コード330を介して電源用電流を受給する。この受給した電源用電流は、整流回路333において整流されることになる。このとき、インバータ駆動回路348は、制御回路347による制御の下で、スイッチング素子336,337に供給する駆動信号QA、QBを調整する。
図6(a)は誘導加熱コイル342に流れる共振電流を示す図であり、図6(b)スイッチング素子336に対して供給される駆動信号QAを示す図であり、図6(c)は、スイッチング素子337に対して供給される駆動信号QBを示す図である。図6(a)〜(c)に示すように、インバータ駆動回路348は、制御回路347による制御下で、時点t0から時点t1に至るまで駆動時間がT1である駆動信号QAをON出力する。この駆動時間T1の間では、スイッチング素子336及びダイオード362と、誘導加熱コイル342と、共振コンデンサ338とで形成される閉回路で共振することになる。そして、インバータ駆動回路348は、時点t1となったときに駆動信号QAをOFFにする。
次に、インバータ駆動回路348は、制御回路347による制御下で、時点t2から駆動時間がT2である駆動信号QBをON出力する。この駆動時間T2の間では、スイッチング素子337及びダイオード363と、誘導加熱コイル342と、共振コンデンサ339とで形成される閉回路で共振することになる。なお、この駆動時間T2は、上記駆動時間T1と同一である。
このように閉回路を変えて誘導加熱コイル342を共振させることにより、誘導加熱コイル342において高周波磁界を発生させることができる。この発生させられた高周波磁界は、天板13を介して調理用容器20の底板を通過していくことになる。この調理用容器20の底板は、金属製であるため、この高周波磁界を金属製の底板に通すことにより、渦電流が発生することになる。この渦電流と調理用容器20の持つ電気抵抗によりジュール熱が生じ、調理用容器20自体が発熱することになる。その結果、調理用容器20内にある食物を加熱調理することが可能となる。
本実施形態のシステムキッチン1においては、加熱調理台領域Dの横方向Xに複数個のコイルユニットを配列し、これらのコイルユニットを加熱調理台領域Dの縦方向Yに移動可能としているため、コイルユニットを移動させることにより、ユーザは、天板13上の任意の位置に加熱調理容器20を配置することができ、調理内容によって、適宜都合のよい場所で加熱調理することができる。また、加熱調理を行っていない領域は、全て調理台として使用可能であるため、調理台スペースの位置が限定されず、従来のシステムキッチンに比べて、調理台スペースを広くとることができる。更に、このシステムキッチン1においては、加熱調理台領域Dにおける略全ての領域が、誘電加熱領域でありかつ調理台領域であるため、調理台スペース及び加熱スペースの広さを適宜、フレキシブルに変更させることが可能となり、限られた天板13上のスペースを効率的に利用することが可能となる。
また本発明では、上記筐体5a〜5dが空間19に対して着脱自在に構成している。このため、コイルユニット3における電源プラグ329を取り外し、筐体5を空間19から取り出すのみの操作を行うことにより、空間19内に配設すべきコイルユニット3の数を減縮することが可能となる。また筐体5を空間内に配置し、電源プラグ329を差し込むのみの操作を行うことにより、空間19内に配設すべきコイルユニット3を増設することが可能となる。
図7は、コイルユニット3を2台のみ配置する構成とするために、筐体5c、筐体5dを取り外して空間19外へ出し、残りの筐体5a、5bのみを空間19内に残置することにより、コイルユニット3a、3bのみで誘導加熱可能なシステムとした例である。この後の使用において、コイルユニット3の増設を望む場合には、筐体5c、5dの何れかを空間19内に配置することにより、これを容易に実現することができる。また更にその後において、コイルユニット3の数を縮減したい場合には、筐体5を取り外すことにより、これを容易に実現することが可能となる。
このように、本発明を適用したシステムキッチン1では、コイルユニット3の増設を望む場合、並びに縮減したい場合において、これを容易に実現することができる。即ち、本発明を適用したシステムキッチン1では、天板13下に配置すべきコイルユニット3の数の事後的な改変を容易に行うことが可能となる。
また事後的な改変に加えて、製品を作る段階においても顧客のニーズに応じて天板13下に配置すべきコイルユニット3の数をその都度決めることが可能となる。例えば、ある顧客が多数のコイルユニット3の配置を望む場合において、製造の段階で筐体5を多数列に亘って配置すればよいし、ある顧客が少数のコイルユニット3の配置を望む場合において、製造の段階で筐体5を少なく配置すればよい。このような顧客毎の希望に応じてその都度コイルユニット3の数を各製品毎に異ならせることができるのは、筐体5の着脱という極めて容易な操作のみで、コイルユニット3の数を決めることができるためであり、各製品毎に顧客のニーズを反映させる新規なサービスを極めて少ない労力で実現することが可能となる。
また、本発明では、このコイルユニット3の配置の自由度をも向上させることが可能となる。上述した例では、筐体5を天板の長手方向Xへ複数列に亘り設ける場合を例にとり説明をしたが、これに限定されるものではなく、これと垂直な方向Yへ向けて複数列に配置するものであってもよい。また、この筐体5の配設方向をX方向、Y方向に混在させるようにしてもよい。本発明は、このような様々なコイルユニット3の配置形態のバリエーションを実現する上でも、筐体5の着脱という極めて容易な操作のみで可能となる。
図8は、故障したコイルユニット3を取り替える場合について示している。この図8の例においては、コイルユニット3c_1が故障した場合であり、これを収容する筐体5c_1を先ず取り出す。次に、これとは別の正常品としてのコイルユニット3c_2を収容する筐体5c_2を替わりに空間19内に配置する。これにより、筐体5の着脱という極めて容易な作業で交換を行うことができることから、短時間でシステムを復旧させることができ、修理コストも抑えることが可能となる。
即ち、本発明では、天板13下に配設すべき複数のコイルユニット3を互いに一体化した一つのシステムとして構成するのではなく、あくまで互いに独立した筐体5内に収容し、互いに分離して着脱自在とすることができるシステムとして構成している。このため、天板13下に配置した複数のコイルユニット3のうちの一つが故障した場合においても、当該故障したコイルユニット3を収容する筐体5のみを交換することで対処することが可能となる。