以下、本発明に係る実施の一形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。
図1は、実施形態における光共振器の構成を示す部分断面斜視図である。図2は、実施形態の光共振器における2次元フォトニック結晶の構造を示す上面図である。
図1において、実施形態における光共振器REは、基板1と、基板1の一方の主面上に形成された第1クラッド層2と、第1クラッド層2上に形成されたコア層3と、コア層3上に形成された第2クラッド層4と、コア層3を伝播する光のうちから特定の波長の光を共振させる2次元フォトニック結晶10とを備えて構成される。本実施形態の光共振器REは、このように2次元の導波路構造となっている。
コア層3は、外部から当該光共振器REへ入射された光を第1クラッド層2とで形成される第1反射面および第2クラッド層4とで形成される第2反射面で反射を繰り返しながら面に水平な方向へ導く層である。第1および第2クラッド層2、4は、コア層3に光を閉じ込めるために設けられる層である。第1および第2クラッド層2、4の第2屈折率は、コア層の第1屈折率よりも低い。第1クラッド層2の屈折率は、第2クラッド層4の屈折率と同一でもよく、また、互いに異なっていてもよい。
第1および第2クラッド層2、4とコア層3とは、例えば、石英ガラス(SiO2)をベースに形成される。そして、屈折率を上げるために、コア層3には、ゲルマニウム(Ge)、リン(P)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)およびタンタル(Ta)などがドープ(添加)され、屈折率を下げるために、第1および第2クラッド層2、4には、ホウ素(B)およびフッ素(F)などがドープされる。また例えば、第1および第2クラッド層2、4とコア層3とは、半導体をベースに形成される。コア層3には、例えば、InGaAs系の半導体材料が用いられ、第1および第2クラッド層2、4には、例えば、InP系の半導体材料が用いられる。また例えば、第1および第2クラッド層2、4とコア層3とは、樹脂材料をベースに形成され、例えば、フッ化ポリイミドが用いられ、そのフッ素含有量を調整することによって屈折率が調整される。
なお、第1クラッド層2は、基板1と兼用されても良い。また、第2クラッド層4は、必ずしも備える必要がなく、クラッド層は、コア層3の少なくとも一方の面上に設けられればよい。この場合では、コア層3の上面に存在する空気がクラッド層として機能する。
2次元フォトニック結晶10は、図2に示すように、フォトニックバンドギャップを形成するように2次元の周期的な屈折率分布を持つ2次元フォトニック結晶領域11と、その結晶面と水平方向における、2次元フォトニック結晶領域11の周囲に設けられた光反射領域13とを備える光学素子である。そして、2次元フォトニック結晶10は、例えば、本実施形態では、コア層3の近傍における第1クラッド層2内に形成されている。なお、2次元フォトニック結晶10は、第2クラッド層4内に形成されてもよく、あるいは、コア層3の両側に、すなわち、第1および第2クラッド層2、4内にそれぞれ形成されてもよく、あるいは、コア層3内に形成されてもよい。
2次元の周期的な屈折率分布は、第1クラッド層2を形成する材料の屈折率と異なる屈折率の材料が格子点12として互いに異なる2方向(線形独立な2方向)に所定の周期(格子間隔、格子定数)で配列されることによって形成される。格子点12は、本実施形態では、例えば、第1クラッド層2に形成された柱状の凹部(空孔)から構成される。なお、第1クラッド層2を形成する材料の屈折率と異なる屈折率の材料が柱状の凹部(空孔)内に充填されてもよい。例えば、第1クラッド層2が上述のようにInPで形成される場合には、柱状の凹部(空孔)内には屈折率がInPより低いSiNなどが充填される。
ここで、注目すべきは、2次元フォトニック結晶10は、図2に示すように、光反射領域13の反射面13Sは、2次元フォトニック結晶領域11における回折光の複数の伝播方向のうちから偶数個の伝播方向が存在するように、360度を2分割した0度から180度未満の範囲を設定し、この範囲に存在する偶数個の各伝播方向を表す各単位ベクトルをすべて足し合わせて合成した合成ベクトルの方向が法線方向となるように配置され、2次元フォトニック結晶領域11の終端面11Sから光反射領域13の反射面13Sまでの距離は、複数の伝播方向のうちの一の伝播方向の回折光が反射面13Sで反射した場合に、この反射光の伝播方向および位相が複数の伝播方向のうちの他のいずれかの伝播方向における光の伝播方向および位相とそれぞれ一致するように設定されていることである。
光反射領域13は、2次元フォトニック結晶領域11から漏れ出た光を反射して再び2次元フォトニック結晶領域11へ戻すための光学素子である。光反射領域13は、例えば、2次元フォトニック結晶領域11の実効的な屈折率とは異なる屈折率を有する材料で構成される。このような構成の光反射領域11では、その屈折率が2次元フォトニック結晶領域11の実効的な屈折率とは異なるので、2次元フォトニック結晶領域11と光反射領域13との間に光学的な界面が形成される。このため、2次元フォトニック結晶領域11から漏れ出た光をこの界面(反射面13S)で反射して再び2次元フォトニック結晶領域11へ戻すことが可能となる。
また例えば、光反射領域13は、2次元フォトニック結晶領域11の実効的な屈折率より小さい屈折率を有する材料で構成される。光反射領域13の反射面13Sは、必ずしも全反射面である必要はなく、フレネル反射でよいが、2次元フォトニック結晶領域11から漏れ出た光は、後述するように、光反射領域13に斜め入射するから、このような構成の光反射領域11では、2次元フォトニック結晶領域11から漏れ出る光を全反射することが可能となる。もちろん、光反射領域11は、互いに異なる屈折率の材料を交互に積層したブラッグ反射鏡であってもよい。なお、フレネル反射では、斜め入射は、垂直入射の場合に較べてより大きな反射率が得られる。
また例えば、光反射領域13の反射面13Sは、2次元フォトニック結晶領域11面内で共振している光に対して全反射する全反射面である。このような構成では、共振している光が全反射するので、この光の波長に対して共振器の性能が向上する。
そして、2次元フォトニック結晶10における共振器の性能を向上させるためには、2次元の屈折率分布中に存在する或る周期が共振させたい波長(ここでは、媒質内波長)の整数倍と一致する必要がある。
一般に、2次元の周期構造において、その基本並進ベクトル(基本単位ベクトル)をa1、a2とし、基本逆格子ベクトルをb1、b2とすると、これらは、a1・b1=a2・b2=2π、a1・b2=a2・b1=0の規格直交条件を満たす必要があり、そして、逆格子ベクトルGm(=m1×b1+m2×b2、m1、m2は任意の整数)の方向は、格子面の法線方向であり、逆格子ベクトルの長さは、面間隔の逆数である。
したがって、2次元フォトニック結晶10において、2次元の屈折率分布中に存在する或る周期が共振させたい波長(ここでは、媒質内波長)の整数倍と一致するとは、言い換えれば、光の波数ベクトルにおける2次元フォトニック結晶面と平行な方向の成分kp(以下、「面内波数ベクトル」と呼称する。)がkp=(l1×b1+l2×b2)(ただし、l1、l2は、任意の整数)という関係にあることである。
この場合、2次元フォトニック結晶10内では、光は、ブラッグ回折によって得られた回折波と結合して定在波を形成し、共振状態となる。すなわち、回折することによって元の面内波数ベクトルkpからこの元の面内波数ベクトルkpと大きさが等しくあるいは略等しく向きが異なる面内波数ベクトルkp’が生成され、式1;kp’=kp+Gn=((l1+m1)×b1+(l2+m2)×b2)=(n1×b1+n2×b2)となる(ただし、n1、n2は、任意の整数)。
図3は、第1の場合における2次元フォトニック結晶の回折の様子を説明するための図である。図4は、格子間隔aの正方形格子から成る2次元周期構造における第2および第3の周期を説明するための図である。図5は、第2および第3の場合における2次元フォトニック結晶の回折の様子を説明するための図である。図4(A)および図5(A)は、第2の場合を示し、図4(B)および図5(B)は、第3の場合を示す。図6は、基本格子が三角格子である場合における2次元フォトニック結晶の回折の様子を説明するための図である。図7は、基本格子が長方形格子である場合における2次元フォトニック結晶の回折の様子を説明するための図である。図8は、反射面の面方向を説明するための図である。
図2に示すように、2次元フォトニック結晶10(2次元フォトニック結晶領域11)が格子間隔aの正方格子から成る場合、基本格子E1は、一辺の長さがaの正方形から成り、基本並進ベクトルa1、a2は、それぞれ、a1=(a,0)、a2=(0,a)と表され、基本逆格子ベクトルb1、b2は、それぞれ、b1=(2π/a,0)、b2=(0,2π/a)と表される。
このような格子間隔aの正方格子から成る2次元フォトニック結晶10(2次元フォトニック結晶領域11)では、図2に示すように、周期構造をとる第1方向および第2方向が基本格子E1における直交する2辺の各辺に沿った2方向にそれぞれ一致すると共に、第1方向の周期構造における第1周期および第2方向の周期構造における第2周期が正方格子の格子間隔aに一致する基本的な第1の2次元周期構造(第1の場合)がまず在る。
このような基本的な2次元周期構造に対して、式1は、例えば、l1=1、l2=0の場合に、(m1、m2)=(−2,0)、(−1,1)、(−1,−1)とすると、(n1、n2)=(−1,0)、(0,1)、(0,−1)となって、|kp|=|kp’|が成立する。基本並進ベクトルa1の方向および基本並進ベクトルa2の方向にy軸方向およびx軸方向がそれぞれ一致するように、2次元フォトニック結晶10(2次元フォトニック結晶領域11)の2次元平面にxy座標系を設定すると、これは、図3に示すように、太矢印で示すx軸方向(基本並進ベクトルa2方向)に伝播する光波(i)は、回折によって、太矢印で示すy軸方向(基本並進ベクトルa1方向)に伝播する光波(ii)((n1,n2)=(−1,−1))、太矢印で示す−x軸方向(基本並進ベクトル−a2方向)に伝播する光波(iii)((n1,n2)=(−1,0))、および、太矢印で示す−y軸方向(基本並進ベクトル−a1方向)に伝播する光波(iv)((n1,n2)=(0,−1))のいずれかに変換されることに相当する。
また、このような格子間隔aの正方格子から成る2次元フォトニック結晶10(2次元フォトニック結晶領域11)では、図2に示す前記周期方向および周期とは異なる周期方向および周期も存在し、例えば、図4(A)に示すように、周期構造をとる第1方向および第2方向が基本格子E1における直交する2対角に沿った2方向にそれぞれ一致すると共に、第1方向の周期構造における第1周期および第2方向の周期構造における第2周期が正方格子の格子間隔aの1/√2倍に一致する第2の2次元周期構造(第2の場合)も在る。
このような第2の2次元周期構造に対して、式1は、例えば、l1=1、l2=1の場合に、(n1、n2)=(1,−1)、(−1,−1)、(−1,1)で、|kp|=|kp’|が成立する。これは、図5(A)に示すように、太矢印で示すx軸方向から+45度方向に伝播する光波(i)は、回折によって、太矢印で示すx軸方向から+135度方向に伝播する光波(ii)((n1,n2)=(−1,1))、太矢印で示すx軸方向から+225度方向に伝播する光波(iii)((n1,n2)=(−1,−1))、および、太矢印で示す+x軸方向から+315度方向に伝播する光波(iv)((n1,n2)=(1,−1)のいずれかに変換されることに相当する。なお、反時計回りの方向をx軸方向からの正(プラス、+)方向としている。
また、このような格子間隔aの正方格子から成る2次元フォトニック結晶10(2次元フォトニック結晶領域11)では、例えば、図4(B)に示すように、y軸方向に隣接する2個の基本格子E1を周期構造の第1単位格子E21とした場合に、周期構造をとる第1方向および第2方向が単位格子E21における直交する2対角に沿った2方向にそれぞれ一致し、x軸方向に隣接する2個の基本格子E1を周期構造の第2単位格子E22とした場合に、周期構造をとる第3方向および第4方向が単位格子E22における直交する2対角に沿った2方向にそれぞれ一致すると共に、第1方向の周期構造における第1周期ないし第4方向の周期構造における第4周期が正方格子の格子間隔aの1/√5倍に一致す第3の2次元周期構造(第3の場合)も在る。
このような第3の2次元周期構造に対して、式1は、例えば、l1=1、l2=2の場合に、(n1、n2)=(−1,2)、(−2,1)、(−2,−1)、(−1,−2)、(1,−2)、(2,−1)、(2,1)で、|kp|=|kp’|が成立する。これは、図5(B)に示すように、太矢印で示す方向(i)に伝播する光波(i)(前記第1方向)は、回折によって、太矢印で示す方向(ii)方向に伝播する光波(ii)((n1,n2)=(−1,2))、太矢印で示す方向(iii)方向に伝播する光波(iii)((n1,n2)=(−2,1))、太矢印で示す方向(iv)方向に伝播する光波(iv)((n1,n2)=(−2,−1))、太矢印で示す方向(v)に伝播する光波(v)((n1,n2)=(−1,−2))、太矢印で示す方向(vi)方向に伝播する光波(vi)((n1,n2)=(1,−2))、太矢印で示す方向(vii)方向に伝播する光波(vii)((n1,n2)=(2,−1))、および、太矢印で示す方向(viii)方向に伝播する光波(viii)((n1,n2)=(2,1))のいずれかに変換されることに相当する。
上述では、第1ないし第3の場合について説明したが、より高次(他の周期方向および周期)の場合についても|kp|=|kp’|が成立可能である。そして、上述では、基本格子E1が正方格子の場合について説明したが、他の格子、例えば、図6および図7に示すように、三角格子や長方形格子の場合についても|kp|=|kp’|が成立可能である。
三角格子の場合について、一例を挙げると、格子間隔をaとすると、基本格子E1は、一辺の長さがaの菱形から成り、基本並進ベクトルa1、a2は、それぞれ、a1=(a,0)、a2=(a/2,(a√3)/2)と表され、基本逆格子ベクトルb1、b2は、それぞれ、b1=(2π/a,−(2π√3)/(3a))、b2=(0,(4π√3)/(3a))と表される。
このような三角格子の2次元周期構造に対して、式1は、例えば、l1=0、l2=1の場合に、(n1、n2)=(−1,0)、(−1,−1)、(0,−1)、(1,0)、(1,1)で、|kp|=|kp’|が成立する。これは、図6に示すように、太矢印で示す方向(i)(+y軸方向)に伝播する光波(i)は、回折によって、太矢印で示す方向(ii)方向に伝播する光波(ii)((n1,n2)=(−1,0))、太矢印で示す方向(iii)方向に伝播する光波(iii)((n1,n2)=(−1,−1))、太矢印で示す方向(iv)方向に伝播する光波(iv)((n1,n2)=(0,−1))、太矢印で示す方向(v)に伝播する光波(v)((n1,n2)=(1,0))、および、太矢印で示す方向(vi)方向に伝播する光波(vi)((n1,n2)=(1,1))のいずれかに変換されることに相当する。
長方形格子の場合について、一例を挙げると、格子間隔をb、cとすると、基本格子E1は、各辺の長さがb、cの長方形から成り、基本並進ベクトルa1、a2は、それぞれ、a1=(b,0)、a2=(0,c)と表され、基本逆格子ベクトルb1、b2は、それぞれ、b1=(2π/b,0)、a2=(0,2π/c)と表される。
このような長方形格子の2次元周期構造に対して、式1は、例えば、l1=1、l2=0の場合に、(n1、n2)=(−1,0)で、|kp|=|kp’|が成立する。これは、図7に示すように、太矢印で示す方向(i)(+x軸方向)に伝播する光波(i)は、回折によって、太矢印で示す方向(iii)方向に伝播する光波(iii)((n1,n2)=(−1,0)に変換されることに相当するが、(|kp|−|kp’|)/|kp|=20%以下であれば、2次元周期構造における共振器として機能し、この場合では、太矢印で示す方向(i)(+x軸方向)に伝播する光波(i)は、回折によって、太矢印で示す方向(ii)方向に伝播する光波(ii)((n1,n2)=(0,1)、太矢印で示す方向(iv)方向に伝播する光波(iv)((n1,n2)=(0,−1)、にも変換可能である。
2次元フォトニック結晶10(2次元フォトニック結晶領域11)内では、式1を満たす光波が共振するが、その共振器の性能を向上するためには、上記に例示した光波に対して、適切な反射面13Sを設ければよい。すなわち、2次元フォトニック結晶領域11に形成されている定在波が2次元フォトニック結晶領域11から漏れ出て光反射領域13の反射面13Sで反射し、この反射した反射光が2次元フォトニック結晶領域11に再び戻る場合に、この反射波が2次元フォトニック結晶領域11に形成されている定在波と重なるように、反射面13Sの方向、および、2次元フォトニック結晶領域11の終端面11Sから光反射領域13の反射面13Sまでの距離が設定されればよい。したがって、反射面13Sは、2次元フォトニック結晶領域11における回折光の複数の伝播方向のうちから偶数個の伝播方向が存在するように、360度を2分割した0度から180度未満の範囲を設定し、この範囲に存在する偶数個の各伝播方向を表す各単位ベクトルをすべて足し合わせて合成した合成ベクトルの方向が法線方向となるように配置され、2次元フォトニック結晶領域11の終端面11Sから光反射領域13の反射面13Sまでの距離は、複数の伝播方向のうちの一の伝播方向の回折光が反射面13Sで反射した場合に、この反射光の伝播方向および位相が複数の伝播方向のうちの他のいずれかの伝播方向における光の伝播方向および位相とそれぞれ一致するように設定されればよい。なお、360度を2分割した0度から180度未満の範囲とは、0度以上180度以下であって180度を含まない範囲であり、0度から180度未満の範囲には、例えば0度から80度以下の範囲や0度から150度以下の範囲など、0度から180度までの途中の角度以下の範囲が排除される。
反射面13Sの面方向について、一例を挙げると、上述の第2の2次元周期構造(第2の場合)の場合では、図8に示すように、360度を2分割した0度から180度未満の範囲に、光波(i)ないし光波(iv)のうちの光波(i)および光波(ii)が入るように設定すると、それら合成ベクトル((i)+(ii))の方向(0,1)を法線方向とする反射面13S1が設定され、前記範囲に、光波(i)ないし光波(iv)のうちの光波(ii)および光波(iii)が入るように設定すると、それら合成ベクトル((ii)+(iii))の方向(−1,0)を法線方向とする反射面13S2が設定され、前記範囲に、光波(i)ないし光波(iv)のうちの光波(iii)および光波(iv)が入るように設定すると、それら合成ベクトル((iii)+(iv))の方向(0,−1)を法線方向とする反射面13S3が設定され、そして、前記範囲に、光波(i)ないし光波(iv)のうちの光波(iv)および光波(i)が入るように設定すると、それら合成ベクトル((iv)+(i))の方向(1,0)を法線方向とする反射面13S4が設定される。こうして2次元フォトニック結晶領域11の周囲を全て取り囲むように光反射領域13の反射面13Sが設定される。前記xy座標系に図8の紙面に垂直な方向のz軸を加え、xyz直交座標系を設定し、各反射面13Sが平面を構成すると仮定すると、反射面13S1および反射面13S3は、zx平面に平行な平面であり、反射面13S2および反射面13S4は、yz平面に平行な平面である。
このような構成の2次元フォトニック結晶10を備える光共振器REでは、外部からコア層3へ光が入射されると、この入射された光は、第1クラッド層2とで形成される反射面および第2クラッド層4とで形成される反射面で反射を繰り返しながら面に水平な方向へコア層3を伝播して行く。この場合において、コア層3と第1クラッド層2とによって形成される反射面で反射する際に、その一部の光が第1クラッド層2の2次元フォトニック結晶10へ入射する。2次元フォトニック結晶10に入射された光は、上述の作用によって2次元フォトニック結晶10(2次元フォトニック結晶領域11)の格子定数に応じた波長の光が共振する。そして、本実施形態では、2次元フォトニック結晶10において、2次元フォトニック結晶領域11の周囲に、光反射領域13をさらに備え、光反射領域13の反射面13Sが上述のように設定されている。このため、反射面13Sで反射した反射光は、反射光が伝播する方向に元々ある定在波に対し、その共振状態を乱すことなく合成される。したがって、光反射領域13がたとえフレネル反射する光学素子であっても、共振器の性能をより向上することが可能となる。
また、背景技術では、共振器の性能を向上させるためには、格子数(周期数)を増やしたり、2次元の屈折率分布を形成する第1および第2媒質間における屈折率差を大きくしたりしたが、本実施形態では、光反射領域13の反射面13Sを調整することによって共振器の性能を向上しているので、背景技術のように格子数(周期数)を増やしたり、第1および第2媒質間の屈折率差を大きくしたりする必要がない。このため、共振器の性能と素子サイズとを独立に制御(設計)することができ、また、材料的な制約が軽減される。共振器の性能が同じ場合に、素子サイズを背景技術にかかる光共振器よりも小さくすることが可能となる。
本実施形態の2次元フォトニック結晶10を用いた光共振器REでは、共振させたい光の波長に応じて2次元フォトニック結晶10(2次元フォトニック結晶領域11)の格子定数aが設定され、所望の素子サイズに応じて2次元フォトニック結晶10(2次元フォトニック結晶領域11)の格子数が設定される。そして、設定された格子数に応じて、2次元フォトニック結晶領域11から光反射領域13へ光が漏れ出るように、2次元の屈折率分布を形成する第1および第2媒質間における屈折率差が適宜に設定される。
なお、背景技術には、本発明のように、光反射領域13の反射面13Sで反射した光と2次元フォトニック結晶領域11内の定在波を形成している光との干渉は、考慮されておらず、2次元フォトニック結晶領域11内の定在波を形成している光の定在波を乱さないように、反射面13Sで反射した光と2次元フォトニック結晶領域11内の定在波を形成している光とを干渉させるという考えは、記載も示唆もされておらず、論じられていない。このため、背景技術には、本発明のように、共振器の性能を向上させるために、光反射領域13の反射面13Sにおける面方向および位置を調整するという考えは、記載も示唆もされておらず、論じられていない。
以下、このような2次元フォトニック結晶10(10A〜10H)の各構成を例示し、より具体的に説明する。
なお、本明細書において、総称する場合には添え字を省略した参照符号で示し、個別の構成を指す場合には添え字を付した参照符号で示す。
まず、2次元の屈折率分布が周期aの正方格子から成る2次元フォトニック結晶10の場合について、複数の例を挙げて、説明する。
図9は、実施形態の2次元フォトニック結晶における第1の構成を示す平面図である。図10は、光反射領域の反射面の位置として不適当な位置を説明するための図である。
まず、第1の構成では、2次元フォトニック結晶10Aは、図9に示すように、2次元の屈折率分布が周期(格子間隔、格子定数)aの正方格子から成る2次元フォトニック結晶領域11Aと、2次元フォトニック結晶10Aの結晶面と水平方向における、2次元フォトニック結晶領域11Aの周囲に光反射領域13Aとを備える。2次元フォトニック結晶10A(2次元フォトニック結晶領域11A)の基本格子E1は、一辺の長さがaの正方形である。
このような構成の2次元フォトニック結晶10A(2次元フォトニック結晶領域11A)では、基本的な共振モードは、格子点12によって回折する回折光の伝播方向が正方格子における基本格子E1の各辺方向となる。そして、背景技術で説明したように、共振モードは、AモードないしDモードの4つのモードがあるが、まず、Aモードの場合について、光反射領域13Aの反射面13ASの配置について以下に説明する。
背景技術の説明と同様に、任意の格子点12の中心を座標原点として2次元フォトニック結晶10A(2次元フォトニック結晶領域11A)の2次元平面に、正方格子の基本格子E1における正方形の互いに直交する2辺の各辺に沿った方向をそれぞれx軸およびy軸として、xy座標系を設定すると、Aモードでは、図9に示すように、x軸方向に形成される電界のy方向成分の定在波の主成分Eyが+sinで始まり、y軸方向に形成される電界のx方向成分の定在波の主成分Exが−sinで始まるように、定在波が形成される。なお、2次元フォトニック結晶10A(2次元フォトニック結晶領域10A)の2次元平面内には、全領域に亘って定在波が形成されているが、図9には、説明に必要な定在波のみが図示されている。以下の図10ないし図12、図20ないし図23、および、図31も同様である。また、2次元フォトニック結晶10A(2次元フォトニック結晶領域11A)面内における共振波長は、周期(格子間隔、格子定数)aと同じである。
定在波なので、光は、或る所から他の所へ進行している、という表現は、適切ではないが、説明の便宜上、光がy軸方向に進行している場合を考える。
y軸方向に進行する光OP1は、2次元フォトニック結晶領域11Aを漏れ出ると、そのまま進行し、2次元フォトニック結晶領域11Aがその周囲を光反射領域13Aによって取り囲まれているので、光反射領域13Aの反射面13AS(図9に示す例では反射面13AS1)に到達する。反射面13AS1に到達した光OP1は、この反射面13AS1で反射し、再び2次元フォトニック結晶領域11Aに到達し、2次元フォトニック結晶領域11A内の定在波と干渉することになる。
Aモードの共振を阻害することなく干渉するためには、この反射面13AS1で反射して再び2次元フォトニック結晶領域11Aに到達した光OP1は、2次元フォトニック結晶領域11A内で定在波を形成している光と重なるように干渉する必要がある。
このように干渉するためには、第1に、この反射面13AS1で反射した光OP1は、2次元フォトニック結晶領域11Aにおいて光波がAモードで共振しているので、y軸方向に沿った方向またはx軸方向に沿った方向に進行しなければならない。+x軸方向に進行する場合には、一般に反射面では反射の法則に拠り入射角と反射角が等しいから、この反射面13AS1は、基本格子E1の2対角のうちのx軸方向から+45度方向となる第1対角方向に平行でなければならない。これは、反射面13AS1は、2次元フォトニック結晶領域11Aにおける回折光の複数の伝播方向(0度、±90度および180度)のうちから偶数個の伝播方向(180度および+90度)が存在するように360度を2分割した0度から180度未満の範囲を設定し、この範囲に存在する偶数個の各伝播方向(180度および+90度)を表す各単位ベクトル((0,−1)、(1,0))をすべて足し合わせて合成した合成ベクトルの方向((1,−1))が法線方向となるように配置されることを意味する。このような方向に反射面13AS1が設定されることによって、2次元フォトニック結晶領域11Aから漏れ出て反射面13AS1で反射しこの反射した反射光が再び2次元フォトニック結晶領域11Aに戻った場合に、この反射した反射光の伝播方向は、2次元フォトニック結晶領域11A内に元々形成されている定在波の伝播方向と重ね合うことになる。
そして、Aモードの共振を阻害することなく干渉するためには、第2に、この反射面13AS1で反射した光OP1は、x軸方向の定在波と位相が一致しなければならない。反射面13AS1の反射によって位相に変化が無く、そして、Aモードではx軸方向に形成される電界のy方向成分の定在波の主成分Eyが+sinで始まるから、反射面13AS1は、2次元フォトニック結晶領域11Aの最外周の格子点12から、格子点12が円柱形状である場合にはその中心から、a/√2の位置に配置されていなければならない。これは、2次元フォトニック結晶領域11Aの終端面11ASから光反射領域13Aの反射面13ASまでの距離が複数の伝播方向(0度、±90度および180度)のうちの一の伝播方向の回折光(本場合では0度)が反射面13AS1で反射した場合に、この反射光の伝播方向および位相が複数の伝播方向のうちの他のいずれかの伝播方向(本場合では+90度)における光の伝播方向および位相とそれぞれ一致するように設定されていることを意味する。このような位置に反射面13AS1が設定されることによって、2次元フォトニック結晶領域11Aから漏れ出て反射面13AS1で反射しこの反射した反射光が再び2次元フォトニック結晶領域11Aに戻った場合に、この反射した反射光の位相は、2次元フォトニック結晶領域11A内に元々形成されている定在波の位相と重ね合うことになる。
なお、例えば、図10に示すように、反射面13AS1が2次元フォトニック結晶領域11Aの最外周の格子点12からa/(2√2)の位置に配置されている場合(図10(A))や、反射面13AS1が2次元フォトニック結晶領域11Aの最外周の格子点12からa/(4√2)の位置に配置されている場合(図10(B))では、反射面13AS1で反射した光OP1は、x軸方向の定在波と位相が一致せず、Aモードの共振を阻害し、その結果、Aモードが不安定になる。
そして、Aモードでは、x軸方向に進行する光OP2も存在する。このx軸方向に進行する光OP2は、2次元フォトニック結晶領域11Aを漏れ出ると、そのまま進行し、2次元フォトニック結晶領域11Aがその周囲を光反射領域13Aによって取り囲まれているので、光反射領域13Aの反射面13AS(図9に示す例では反射面13AS2)に到達する。反射面13AS2に到達した光OP2は、この反射面13AS2で反射し、再び2次元フォトニック結晶領域11Aに到達し、2次元フォトニック結晶領域11A内の定在波と干渉することになる。
Aモードの共振を阻害することなく干渉するためには、反射面13AS1の場合と同様に、この反射面13AS2で反射して再び2次元フォトニック結晶領域11Aに到達した光OP2は、2次元フォトニック結晶領域11A内で定在波を形成している光が重なるように干渉する必要がある。
このように干渉するためには、第1に、反射面13AS1の場合と同様に、この反射面13AS2で反射した光OP2は、y軸方向に沿った方向またはx軸方向に沿った方向に進行しなければならない。−y軸方向に進行する場合には、一般に反射面では反射の法則に拠り入射角と反射角が等しいから、この反射面13AS2は、基本格子E1の2対角のうちのx軸方向から+135度(−45度)方向となる第2対角方向に平行でなければならない。これは、反射面13AS2は、2次元フォトニック結晶領域11Aにおける回折光の複数の伝播方向(0度、±90度および180度)のうちから偶数個の伝播方向(+90度および0度)が存在するように360度を2分割した0度から180度未満の範囲を設定し、この範囲に存在する偶数個の各伝播方向(+90度および0度)を表す各単位ベクトル((1,0)、(0,1))をすべて足し合わせて合成した合成ベクトルの方向((1,1))が法線方向となるように配置されることを意味する。このような方向に反射面13AS2が設定されることによって、2次元フォトニック結晶領域11Aから漏れ出て反射面13AS2で反射しこの反射した反射光が再び2次元フォトニック結晶領域11Aに戻った場合に、この反射した反射光の伝播方向は、2次元フォトニック結晶領域11A内に元々形成されている定在波の伝播方向と重ね合うことになる。
そして、Aモードの共振を阻害することなく干渉するためには、第2に、反射面13AS1の場合と同様に、この反射面13AS2で反射した光OP2は、−y軸方向の定在波と位相が一致しなければならない。反射面13AS2の反射によって位相に変化が無く、そして、Aモードではy軸方向に形成される電界のx方向成分の定在波の主成分Exが−sinで始まるから、反射面13AS2は、2次元フォトニック結晶領域11Aの最外周の格子点12から、格子点12が円柱形状である場合にはその中心から、a/√2の位置に配置されていなければならない。これは、2次元フォトニック結晶領域11Aの終端面11ASから光反射領域13Aの反射面13ASまでの距離が複数の伝播方向(0度、±90度および180度)のうちの一の伝播方向の回折光(本場合では+90度)が反射面13AS2で反射した場合に、この反射光の伝播方向および位相が複数の伝播方向のうちの他のいずれかの伝播方向(本場合では−180度)における光の伝播方向および位相とそれぞれ一致するように設定されていることを意味する。このような位置に反射面13AS2が設定されることによって、2次元フォトニック結晶領域11Aから漏れ出て反射面13AS2で反射しこの反射した反射光が再び2次元フォトニック結晶領域11Aに戻った場合に、この反射した反射光の位相は、2次元フォトニック結晶領域11A内に元々形成されている定在波の位相と重ね合うことになる。
さらに、上述のように進行方向を仮定すると、図示しないが、−y軸方向に進行する光および−x軸方向に進行する光も存在し、y軸方向に進行する光OP1およびx軸方向に進行する光OP2と同様に、光反射領域13Aの反射面が配置されることになる。
以上のように、格子定数aの正方格子によって2次元フォトニック結晶10A(2次元フォトニック結晶領域11A)が形成されている場合には、Aモードで共振するためには、光反射領域13Aの反射面13ASは、2次元フォトニック結晶領域11Aから(その最外周の格子点12から)a/√2の位置に配置される。より一般的には、この光反射領域13Aの反射面13ASは、Nを正整数とすると、2次元フォトニック結晶領域11Aから(その最外周の格子点12から)(N/√2)×aの位置に配置される。
BモードないしDモードの場合も、上述したAモードの場合と同様に光反射領域13の反射面13Sの配置位置について設定することができる。
図11は、実施形態の2次元フォトニック結晶における第2の構成を示す平面図である。図12は、実施形態の2次元フォトニック結晶における第3の構成を示す平面図である。
Bモードの場合では、2次元フォトニック結晶10Bは、図11に示すように、2次元の屈折率分布が周期(格子間隔、格子定数)aの正方格子から成る2次元フォトニック結晶領域11Bと、2次元フォトニック結晶10Bの結晶面と水平方向における、2次元フォトニック結晶領域11Bの周囲に光反射領域13Bとを備える。光反射領域13Bの反射面13BSは、基本格子E1の2対角のうちのいずれかの対角における方向と平行になる。そして、光反射領域13Bの反射面13BSは、2次元フォトニック結晶領域11Bの最外周の格子点12から、格子点12が円柱形状である場合にはその中心から、a/(2√2)の位置に配置される。より一般的には、この光反射領域13Bの反射面13BSは、Nを正整数とすると、2次元フォトニック結晶領域11Bから(その最外周の格子点12から)((2×N−1)/2√2)×aの位置に配置される。
Cモードの場合では、2次元フォトニック結晶10Cは、図12に示すように、2次元の屈折率分布が周期(格子間隔、格子定数)aの正方格子から成る2次元フォトニック結晶領域11Cと、2次元フォトニック結晶10Cの結晶面と水平方向における、2次元フォトニック結晶領域11Cの周囲に光反射領域13Cとを備える。光反射領域13Cの反射面13CSは、基本格子E1の2対角のうちのいずれかの対角における方向と平行になる。そして、光反射領域13Cの反射面13CSは、2次元フォトニック結晶領域11Cの最外周の格子点12から、格子点12が円柱形状である場合にはその中心から、a/√2またはa/(2√2)の位置に配置される。図12に示す例では、光反射領域13Cの反射面13CS1は、基本格子E1の2対角のうちの一方の対角における方向と平行であり、2次元フォトニック結晶領域11Cの最外周における円柱形状の格子点12の中心からa/√2の位置に配置され、基本格子E1の2対角のうちの他方の対角における方向と平行である反射面13CS2は、2次元フォトニック結晶領域11Cの最外周における円柱形状の格子点12の中心からa/2√2の位置に配置される。そして、より一般的には、この光反射領域13Cの反射面13CSは、Nを正整数とすると、2次元フォトニック結晶領域11Cから(その最外周の格子点12から)(N/√2)×aまたは((2×N−1)/2√2)×aの位置に配置される。
Dモードの場合は、DモードがCモードと縮退しているので、図示しないが、Cモードの場合と同様となる。なお、Dモードは、前述したように、90度回転することによりCモードと重なるので、2次元フォトニック結晶領域11から(その最外周の格子点12から)光反射領域13の反射面13までの距離の関係は、Cモードの場合と互いに入れ替わる。
以上のように、2次元の屈折率分布が周期(格子間隔、格子定数)aの正方格子から成る2次元フォトニック結晶10(10A〜10C)を備える光共振器REでは、2次元フォトニック結晶領域11の周囲に光反射領域13を、図9、図11および図12に示す上述の所定の面方向および位置に配置することによって、所定のモードで安定的に共振することができ、共振器の性能がより向上する。
図13は、実施形態の光共振器における共振器の性能を説明するための図である。図13(B)は、2次元フォトニック結晶の構造を示す平面図であり、図13(A)は、図13(B)に示すAA線での2次元フォトニック結晶におけるAモードの電磁界分布を示す図である。図14は、比較例の光共振器における共振器の性能を説明するための図である。図14(B)は、2次元フォトニック結晶の構造を示す平面図であり、図14(A)は、図14(B)に示すBB線での2次元フォトニック結晶におけるAモードの電磁界分布を示す図である。図13(A)および図14(A)の縦軸は、電磁界の大きさを示す。
本実施形態の光共振器REにおける共振器の性能を説明すると、例えば、図9に示す構造と同様に、終端面がΓ−M方向に平行な方向であって反射面13Sが本実施形態のように設定されている光反射領域13を有する図13(B)に示す2次元フォトニック結晶領域11を持つ光共振器REの場合では、シミュレーションすると、Γ−M方向に沿ったAA線におけるAモードの電磁界分布は、図13(A)に示すように、電磁界の大きさが2次元フォトニック結晶領域11の周辺部分もその中央部分も略一定で同じであり、均一な分布となっており、電磁界が2次元フォトニック結晶領域11に閉じ込められている。一方、比較例として、終端面がΓ−X方向に方向である図14(B)に示す2次元フォトニック結晶領域を持つ光共振器の場合では、シミュレーションすると、前記AA線に対応するΓ−X方向に沿ったBB線におけるAモードの電磁界分布は、図14(A)に示すように、電磁界の大きさが2次元フォトニック結晶領域11の中央部分で最も大きく周辺部分に行くに従って徐々に小さくなり、包絡線が山形の分布となっており、電磁界が2次元フォトニック結晶領域11から漏れ出ている。なお、上述では、2次元フォトニック結晶領域の面積が略同じとなるように、本実施形態の図13(B)で示す場合ではその周期数が50とされ、比較例の図14(B)で示す場合ではその周期数が34(≒50/√2)に設定されている。そして、2次元フォトニック結晶がInPのクラッド層で挟み込まれたInGaAsPのコア層の近傍に配置されている場合について、シミュレーションが行われた。
このように本実施形態の光共振器REでは、背景技術の光共振器よりも共振器の性能が向上していることが理解される。また、本実施形態の光共振器REでは、背景技術における周期数が無限である場合のように、面内方向の光の漏れが略無くなり、かつ、光の分布が2次元フォトニック結晶10内で略均一な好ましい分布とすることが可能となる。
このことは、AモードおよびBモードでは、面内方向だけでなく面に垂直な方向も漏れが略無くなることから、光共振器REにおける共振器の性能が一層向上することになる。
一方、このように共振器の性能が向上し、その結果、共振器の性能が完全になってしまうと、光が光共振器REの面に垂直な方向から射出されないことになる。光共振器REの面に垂直な方向から光を取り出すべく、例えば、2次元フォトニック結晶10(2次元フォトニック結晶領域11)における格子点12が非対称の形状とされる。格子点12は、例えば、2次元フォトニック結晶10(2次元フォトニック結晶領域11)の結晶面と水平方向の断面が三角形である三角柱形状とされる。このように格子点12の形状を非対称にすることによって、電界分布は略奇関数を保ちつつ、格子点12の非対称性によって背景技術で説明したような電界の打ち消し合いが無くなる。この結果、面に垂直な方向から光が射出される。
あるいは、光反射領域13の反射面13Sの位置を本実施形態の配置位置から、例えば格子定数の1/15ないし1/20程度ずらすように、光共振器REが構成されてもよい。すなわち、光反射領域13の反射面13Sの位置を本実施形態の配置位置から2次元フォトニック結晶領域11の終端面へ格子定数の1/15ないし1/20程度だけ近づけるまたは遠ざけるように、光共振器REが構成されてもよい。このように構成されることによって、共振器の性能が不完全になって、面に垂直な方向から光が射出される。
また、背景技術では、共振モードを選択することができないが、本実施形態では、上述のように、共振モードによって2次元フォトニック結晶領域11から(その最外周の格子点12から)光反射領域13の反射面までの距離が異なるので、2次元フォトニック結晶領域11から(その最外周の格子点12から)光反射領域13の反射面までの距離を所望の共振モードに応じて設定することによって、所望の共振モードで光共振器REを共振させることができる。すなわち、2次元フォトニック結晶領域11の終端面から光反射領域11の反射面11Sまでの距離は、所望の共振モードに応じて、2次元フォトニック結晶領域11の終端面を最外周の格子点とし、任意の正の整数をNとした場合に、(N×a)/(2√2)の長さとなる。
そして、この結果、光共振器REを所望の共振モードで安定的に共振させることも可能となる。
このように前記2次元フォトニック結晶10(10A〜10C)を備える光共振器REは、コア層3を伝播する光を、所定の共振モードでコア層3の面に垂直な方向へ射出することが可能となる。
また、共振モードには、上述のAモードないしDモードの電磁界分布による分類の他に、TE−LikeモードおよびTM−Likeモードの偏光による分類もある。TE−Likeモードは、コア層内における電磁界分布で、電界の主成分がコア層内に分布し、磁界の主成分がコア層面に対して垂直方向に分布している状態である。一方、TM−Likeモードは、コア層内における電磁界分布で、磁界の主成分がコア層内に分布し、電界の主成分がコア層面に対して垂直方向に分布している状態である。TE−LikeモードおよびTM−Likeモードは、上述のAモードないしDモードのそれぞれについて存在する。本光共振器REを半導体レーザの共振器として利用した場合では、コア層に相当する活性層には、多重量子井戸構造が用いられるが、一般に、多重量子井戸構造の活性層では、TEに対して利得が大きいので、通常、TE−Likeモードで共振する。
上述の実施形態において、光反射領域13の反射面13Sにおいて、TE−Likeモードでは電界の主成分が入射面に対して平行なので略p波として入射し、TM−Likeモードでは電界の主成分が入射面に対して垂直なので略s波として入射している。したがって、共振する反射率が得られると共に全反射を生じない程度に光反射領域13の屈折率を調整することによって、斜め入射の場合ではs波の方がp波よりもフレネル反射率が高いので、本実施形態の光共振器REを利用した半導体レーザは、TM−Likeモードで共振することが可能となる。
一例を挙げると、2次元フォトニック結晶がInPのクラッド層で挟み込まれたInGaAsPのコア層の近傍に配置されている光共振器REの場合では、2次元フォトニック結晶領域11の等価屈折率は、約3.25であり、光反射領域13に窒化シリコン(SiN)を使用すると、その屈折率は、2.32である。45度入射におけるp波およびs波の反射率がそれぞれ約33%および約57%であるため、光共振器REは、TM−Likeモードで共振することが可能となる。
図15は、正方格子の2次元フォトニック結晶におけるΓ−M方向の周期に共振波長を一致させる場合の共振作用を説明するための図である。図16は、Aモードにおける近視野の電界分布を示す図である。図17は、Bモードにおける近視野の電界分布を示す図である。図18は、Cモードにおける近視野の電界分布を示す図である。図19は、Dモードにおける近視野の電界分布を示す図である。図16ないし図19において、矢印が電界の方向および大きさを示している。
上述の第1ないし第3の構成では、2次元フォトニック結晶領域11内における共振波長が正方格子の格子定数と一致する場合ついて説明したが、図15に示すように、2次元フォトニック結晶領域11内における共振波長が正方格子の格子定数の1/√2倍と同じであってもよい。
すなわち、図15に示すように、a/√2に一致する媒質内波長λを持つ光Lは、正方格子における基本格子E1の対角方向であるΓ−M方向に進行すると、格子点12で回折される。この回折された光Lは、光Lの進行方向に対して0度、±90度、180度の方向に回折された光Lのみがブラッグ条件を満たすことになる。0度、±90度、180度の方向に回折された光Lは、その進行方向にも格子点12が存在するため、さらに、再度進行方向に対して0度、±90度、180度の方向に回折される。そして、Γ−M方向に進行する光Lは、1回または複数回のこのような回折を繰り返すことによって元の格子点12に戻る。このため、Γ−X方向に進行する光の場合と同様に、2次元フォトニック結晶10(2次元フォトニック結晶領域11)で共振作用が生じることになる。
このような共振作用で共振可能な共振モードには、正方格子における基本格子E1の辺方向であるΓ−X方向に進行する光の場合と同様に、4つのモードが存在する。任意の正方格子における2対角線の交点を座標原点として2次元フォトニック結晶10(2次元フォトニック結晶領域11)の2次元平面にσd1σd2座標系を設定すると、共振作用によって形成される定在波は、図16ないし図19に示すように、各モードに対し次のようになる。
第1のモード(以下、「Aモード」と呼称する。)では、σd1軸方向に形成される定在波の主成分Eσd2は、+sinで始まり、σd2軸方向に形成される定在波の主成分Eσd1は、+sinで始まる。この結果、電界分布は、図16に示すようになる。
第2のモード(以下、「Bモード」と呼称する。)では、σd1軸方向に形成される定在波の主成分Eσd2は、+sinで始まり、σd2軸方向に形成される定在波の主成分Eσd1は、−sinで始まる。この結果、電界分布は、図17に示すようになる。
第3のモード(以下、「Cモード」と呼称する。)では、σd1軸方向に形成される定在波の主成分Eσd2は、−cosで始まり、σd2軸方向に形成される定在波の主成分Eσd1は、+cosで始まる。この結果、電界分布は、図18に示すようになる。
第4のモード(以下、「Dモード」と呼称する。)では、σd1軸方向に形成される定在波の主成分Eσd2は、−cosで始まり、σd2軸方向に形成される定在波の主成分Eσd1は、−cosで始まる。この結果、電界分布は、図19に示すようになる。
なお、σd1軸方向に形成される定在波の主成分Eσd2は、σd1軸方向に形成される電界のσd2方向成分の定在波の主成分Eσd2の意味であり、σd2軸方向に形成される定在波の主成分Eσd1は、σd2軸方向に形成される電界のσd1方向成分の定在波の主成分Eσd1の意味であり、以下同様に、略記する。
図18および図19を見ると分かるように、これらの電界分布は、90度回転すると同じになるので、CモードとDモードとは、縮退していることになる。また、AモードおよびBモードでは、消失性干渉であり、理論的には、面に垂直な方向に光が射出されない。CモードおよびDモードでは、消失性干渉ではなく、理論的には、面に垂直な方向に光が射出される。
図20は、実施形態の2次元フォトニック結晶における第4の構成を示す平面図である。図21は、実施形態の2次元フォトニック結晶における第5の構成を示す平面図である。図22は、実施形態の2次元フォトニック結晶における第6の構成を示す平面図である。図23は、実施形態の2次元フォトニック結晶における第7の構成を示す平面図である。
Aモードの場合では、2次元フォトニック結晶10Dは、図20に示すように、2次元の屈折率分布が周期(格子間隔、格子定数)aの正方格子から成る2次元フォトニック結晶領域11Dと、2次元フォトニック結晶10Dの結晶面と水平方向における、2次元フォトニック結晶領域11Dの周囲に光反射領域13Dとを備える。光反射領域13Dの反射面13DSは、基本格子E1の辺のうちのいずれかの辺の方向と平行になる。そして、光反射領域13Dの反射面13DSは、2次元フォトニック結晶領域11Dの最外周の格子点12から、格子点12が円柱形状である場合にはその中心から、a/2の位置に配置される。より一般的には、この光反射領域13Dの反射面13DSは、Nを正整数とすると、2次元フォトニック結晶領域11Dから(その最外周の格子点12から)(N/2)×aの位置に配置される。
Bモードの場合では、2次元フォトニック結晶10Eは、図21に示すように、2次元の屈折率分布が周期(格子間隔、格子定数)aの正方格子から成る2次元フォトニック結晶領域11Eと、2次元フォトニック結晶10Eの結晶面と水平方向における、2次元フォトニック結晶領域11Eの周囲に光反射領域13Eとを備える。光反射領域13Eの反射面13ESは、基本格子E1の辺のうちのいずれかの辺の方向と平行になる。そして、光反射領域13Eの反射面13ESは、2次元フォトニック結晶領域11Eの最外周の格子点12から、格子点12が円柱形状である場合にはその中心から、a/4の位置に配置される。より一般的には、この光反射領域13Eの反射面13ESは、Nを正整数とすると、2次元フォトニック結晶領域11Eから(その最外周の格子点12から)(N/4)×aの位置に配置される。
Cモードの場合では、2次元フォトニック結晶10Fは、図22に示すように、2次元の屈折率分布が周期(格子間隔、格子定数)aの正方格子から成る2次元フォトニック結晶領域11Fと、2次元フォトニック結晶10Fの結晶面と水平方向における、2次元フォトニック結晶領域11Fの周囲に光反射領域13Fとを備える。光反射領域13Fの反射面13FSは、基本格子E1の辺のうちのいずれかの辺の方向と平行になる。そして、光反射領域13Fの反射面13FSは、2次元フォトニック結晶領域11Fの最外周の格子点12から、格子点12が円柱形状である場合にはその中心から、a/2またはa/4の位置に配置される。図22に示す例では、光反射領域13Fの反射面13FS1は、基本格子E1の互いに直交する2辺のうちの一方の辺における方向と平行であり、2次元フォトニック結晶領域11Fの最外周における円柱形状の格子点12の中心からa/2の位置に配置され、基本格子E1の互いに直交する2辺のうちの他方の辺における方向と平行である反射面13FS2は、2次元フォトニック結晶領域11Fの最外周における円柱形状の格子点12の中心からa/4の位置に配置される。そして、より一般的には、この光反射領域13Fの反射面13FSは、Nを正整数とすると、2次元フォトニック結晶領域11Fから(その最外周の格子点12から)(N/2)×aまたは(N/4)×aの位置に配置される。
Dモードの場合では、2次元フォトニック結晶10Gは、図23に示すように、2次元の屈折率分布が周期(格子間隔、格子定数)aの正方格子から成る2次元フォトニック結晶領域11Gと、2次元フォトニック結晶10Gの結晶面と水平方向における、2次元フォトニック結晶領域11Gの周囲に光反射領域13Gとを備える。光反射領域13Gの反射面13GSは、基本格子E1の辺のうちのいずれかの辺の方向と平行になる。そして、光反射領域13Gの反射面13GSは、2次元フォトニック結晶領域11Gの最外周の格子点12から、格子点12が円柱形状である場合にはその中心から、a/4またはa/2の位置に配置される。図23に示す例では、光反射領域13Gの反射面13GS1は、基本格子E1の互いに直交する2辺のうちの一方の辺における方向と平行であり、2次元フォトニック結晶領域11Gの最外周における円柱形状の格子点12の中心からa/4の位置に配置され、基本格子E1の互いに直交する2辺のうちの他方の辺における方向と平行である反射面13GS2は、2次元フォトニック結晶領域11Gの最外周における円柱形状の格子点12の中心からa/2の位置に配置される。そして、より一般的には、この光反射領域13Gの反射面13GSは、Nを正整数とすると、2次元フォトニック結晶領域11Gから(その最外周の格子点12から)(N/4)×aまたは(N/2)×aの位置に配置される。
以上のように、2次元の屈折率分布が周期(格子間隔、格子定数)aの正方格子から成る2次元フォトニック結晶10(10D〜10G)を備える光共振器REでは、2次元フォトニック結晶領域11の周囲に光反射領域13を、図20ないし図23に示す上述の所定の反射面方向および反射面位置で配置することによって、所定のモードで安定的に共振することができ、共振器の性能がより向上する。また、このような2次元フォトニック結晶10(10D〜10G)を備える光共振器REでは、背景技術における周期数が無限である場合のように、面内方向の光の漏れが略無くなり、かつ、光の分布が2次元フォトニック結晶10内で略均一な好ましい分布とすることが可能となる。
また、背景技術では、共振モードを選択することができないが、本実施形態では、上述のように、共振モードによって2次元フォトニック結晶領域11から(その最外周の格子点12から)光反射領域13の反射面までの距離が異なるので、2次元フォトニック結晶領域11から(その最外周の格子点12から)光反射領域13の反射面までの距離を所望の共振モードに応じて設定することによって、所望の共振モードで光共振器REを共振させることができる。すなわち、2次元フォトニック結晶領域11の終端面から光反射領域11の反射面11Sまでの距離は、所望の共振モードに応じて、2次元フォトニック結晶領域11の終端面を最外周の格子点とし、任意の正の整数をNとした場合に、(N/4)×aの長さとなる。
そして、この結果、光共振器REを所望の共振モードで安定的に共振させることも可能となる。
このように前記2次元フォトニック結晶10(10D〜10G)を備える光共振器REは、コア層3を伝播する光を、所定の共振モードでコア層3の面に垂直な方向へ射出することが可能となる。
上述では、2次元の屈折率分布が周期aの正方格子から成る2次元フォトニック結晶10において、回折光の伝播方向が正方格子の最も短い周期a(1次の周期)の周期方向である場合や、正方格子の次に短い周期a/√2(2次の周期)の周期方向である場合について説明したが、例えば、図4に示すように、回折光の伝播方向が正方格子の他の周期(より高次の周期)の周期方向である場合にも同様に説明することができる。このような場合でも、上述したように、光反射領域13の反射面13Sは、2次元フォトニック結晶領域11における回折光の複数の伝播方向のうちから偶数個の伝播方向が存在するように、360度を2分割した0度から180度未満の範囲を設定し、この範囲に存在する偶数個の各伝播方向を表す各単位ベクトルをすべて足し合わせて合成した合成ベクトルの方向が法線方向となるように配置されればよく、そして、2次元フォトニック結晶領域11の終端面11Sから光反射領域13の反射面13Sまでの距離は、複数の伝播方向のうちの一の伝播方向の回折光が反射面13Sで反射した場合に、この反射光の伝播方向および位相が複数の伝播方向のうちの他のいずれかの伝播方向における光の伝播方向および位相とそれぞれ一致するように設定されればよい。
また、上述では、正方格子内に存在する周期と共振波長の整数倍が一致した場合を例示したが、正方格子内に存在する周期と共振波長の半波長の奇数倍が一致した場合でも、同様の共振現象が生じ、これらについても所定の反射面13Sを選ぶことによって、共振器の性能を向上させることができる。
次に、2次元の屈折率分布が周期aの三角格子から成る2次元フォトニック結晶10の場合について、一例を挙げて、説明する。
図24は、三角格子の2次元フォトニック結晶におけるΓ−X方向の周期に共振波長を一致させる場合の共振作用を説明するための図である。図25は、αモードにおける近視野の電界分布を示す図である。図26は、γ1モードにおける近視野の電界分布を示す図である。図27は、γ2モードにおける近視野の電界分布を示す図である。図28は、βモードにおける近視野の電界分布を示す図である。図29は、δ1モードにおける近視野の電界分布を示す図である。図30は、δ2モードにおける近視野の電界分布を示す図である。図25ないし図30において、矢印が電界の方向および大きさを示している。
三角格子の場合では、代表的な方向として、三角形の高さ方向であるΓ−X方向および三角形の辺方向であるΓ−J方向がある。例えば、Γ−X方向に進行する光Lについて考えると、図24に示すように、この光Lは、Γ−X方向に進行すると、格子点12で回折される。この回折された光Lは、正方格子の場合と同様に、光Lの進行方向に対して0度、±60度、±120度、180度の方向に回折された光Lのみがブラッグ条件を満たすことになる。これら0度、±60度、±120度、180度の方向に回折された光Lは、その進行方向にも格子点12が存在するため、さらに、再度進行方向に対して0度、±60度、±120度、180度の方向に回折される。そして、Γ−X方向に進行する光Lは、1回または複数回のこのような回折を繰り返すことによって元の格子点12に戻る。このため、2次元フォトニック結晶10で共振作用が生じることになる。このように三角格子における基本格子E1の高さと一致した媒質内波長の光が共振する。
このような共振作用で発振可能な共振モードには、6つのモードが存在する。2次元フォトニック結晶10(2次元フォトニック結晶領域11)の2次元平面に、Γ−X方向のD1方向、Γ−X方向に対して反時計回りに60度の方向(時計回りに120度の方向)におけるもう一つの等価なΓ−X方向のD2方向、および、Γ−X方向に対して反時計回りに120度の方向(時計回りに60度の方向)におけるもう一つの等価なΓ−X方向のD3方向を設定すると、共振作用によって形成される定在波は、図25ないし図30に示すように、各モードに対し次のようになる。
第1のモード(以下、「αモード」と呼称する。)では、D1方向に形成される定在波の主成分ED1は、−sinで始まり、D2方向に形成される定在波の主成分ED2は、+sinで始まり、D3方向に形成される定在波の主成分ED3は、+sinで始まる。この結果、電界分布は、図25に示すようになる。
第2のモード(以下、「γ1モード」と呼称する。)では、D1方向に形成される定在波の主成分ED1は、+sinで始まり、D2方向に形成される定在波の主成分ED2は、+sinで始まり、D3方向に形成される定在波の主成分ED3は、+sinで始まる。この結果、電界分布は、図26に示すようになる。
第3のモード(以下、「γ2モード」と呼称する。)では、D1方向に形成される定在波の主成分ED1は、無く、D2方向に形成される定在波の主成分ED2は、+sinで始まり、D3方向に形成される定在波の主成分ED3は、−sinで始まる。この結果、電界分布は、図27に示すようになる。
第4のモード(以下、「βモード」と呼称する。)では、D1方向に形成される定在波の主成分ED1は、+cosで始まり、D2方向に形成される定在波の主成分ED2は、+cosで始まり、D3方向に形成される定在波の主成分ED3は、−cosで始まる。この結果、電界分布は、図28に示すようになる。
第5のモード(以下、「δ1モード」と呼称する。)では、D1方向に形成される定在波の主成分ED1は、+cosで始まり、D2方向に形成される定在波の主成分ED2は、+cosで始まり、D3方向に形成される定在波の主成分ED3は、−cosで始まる。この結果、電界分布は、図29に示すようになる。
第6のモード(以下、「δ2モード」と呼称する。)では、D1方向に形成される定在波の主成分ED1は、無く、D2方向に形成される定在波の主成分ED2は、−cosで始まり、D3方向に形成される定在波の主成分ED3は、−cosで始まる。この結果、電界分布は、図30に示すようになる。
また、αモード、γ1モード、γ2モードおよびβモードでは、消失性干渉であり、理論的には、面に垂直な方向に光が射出されない。δ1モードおよびδ2モードでは、消失性干渉ではなく、理論的には、面に垂直な方向に光が射出される。
図31は、実施形態の2次元フォトニック結晶における第8の構成を示す平面図である。
αモードの場合では、2次元フォトニック結晶10Hは、図31に示すように、2次元の屈折率分布が周期(格子間隔、格子定数)aの三角格子から成る2次元フォトニック結晶領域11Hと、2次元フォトニック結晶10Hの結晶面と水平方向における、2次元フォトニック結晶領域11Hの周囲に光反射領域13Hとを備える。2次元フォトニック結晶領域11Hは、その結晶面に水平な方向において、正六角形の形状となる。光反射領域13Hの反射面13HSは、基本格子E1からその対向する2頂点を互いに結ぶことによって得られる正三角形を考えた場合にこの三角形の各辺における各法線方向に平行となる。そして、光反射領域13Hの反射面13HSは、2次元フォトニック結晶領域11Hの最外周の格子点12から、格子点12が円柱形状である場合にはその中心から、a/2またはa/4の位置に配置される。より一般的には、この光反射領域13Hの反射面13HSは、Nを正整数とすると、2次元フォトニック結晶領域11Fから(その最外周の格子点12から)(N/2)×aまたは(N/4)×aの位置に配置される。
図示しないが、安定的に共振させるべく、βモード、γ1モードおよびδ1モードについても光反射領域13の反射面13Sを同様に設定することができる。
以上のように、2次元の屈折率分布が周期aの三角格子から成る2次元フォトニック結晶10(10H)を備える光共振器REでは、2次元フォトニック結晶領域11の周囲に光反射領域13を、上述のように所定の位置に配置することによって、αモード、βモード、γ1モードおよびδ1モードのうちのいずれかのモードで安定的に共振することができ、共振器の性能がより向上する。また、このような2次元フォトニック結晶10(10H)を備える光共振器REでは、背景技術における周期数が無限である場合のように、面内方向の光の漏れが略無くなり、かつ、光の分布が2次元フォトニック結晶10内で略均一な好ましい分布とすることが可能となる。
また、本実施形態では、αモード、βモードと、γ1モード、δ1モードとの間で、2次元フォトニック結晶領域11から(その最外周の格子点12から)光反射領域13の反射面までの距離を適宜に設定することによって、光共振器REの共振モードを選択することができる。すなわち、2次元フォトニック結晶領域11の終端面から光反射領域11の反射面11Sまでの距離は、所望の共振モードに応じて、2次元フォトニック結晶領域11の終端面を最外周の格子点とし、任意の正の整数をNとした場合に、(N/4)×aの長さとなる。
上述では、2次元の屈折率分布が周期aの三角格子から成る2次元フォトニック結晶10を備える光共振器REにおいて、回折光の伝播方向が三角格子のΓ−X方向である場合について説明したが、他の周期方向である場合にも同様に説明することができる。
また、上述では、2次元の屈折率分布が周期aの正方格子から成る2次元フォトニック結晶10を備える光共振器REや2次元の屈折率分布が周期aの三角格子から成る2次元フォトニック結晶10を備える光共振器REについて説明したが、他の形状の格子である場合にも同様に説明することができる。
例えば、正方格子の他の次数の共振モードや、三角格子の他の次数の共振モードや、長方形格子や、面心格子などにも同様に本発明は、適用可能である。
上記いずれの場合でも、上述したように、光反射領域13の反射面13Sは、2次元フォトニック結晶領域11における回折光の複数の伝播方向のうちから偶数個の伝播方向が存在するように、360度を2分割した0度から180度未満の範囲を設定し、この範囲に存在する偶数個の各伝播方向を表す各単位ベクトルをすべて足し合わせて合成した合成ベクトルの方向が法線方向となるように配置されればよく、そして、2次元フォトニック結晶領域11の終端面11Sから光反射領域13の反射面13Sまでの距離は、複数の伝播方向のうちの一の伝播方向の回折光が反射面13Sで反射した場合に、この反射光の伝播方向および位相が複数の伝播方向のうちの他のいずれかの伝播方向における光の伝播方向および位相とそれぞれ一致するように設定されればよい。
上述した構成の光共振器REは、その機能から様々な装置に適用可能であり、例えば、レーザ共振させるためにレーザ素子に用いられたり、単色性を向上させるために発光ダイオード素子(LED素子)や有機エレクトロルミネッセンス素子などの自発光素子に用いられたり、波長フィルタとして用いられたりなどする。
その一例として、光共振器REがレーザ発振させるためのレーザ素子に用いられる場合について説明する。
図32は、実施形態における2次元フォトニック結晶面発光レーザの構成を示す部分断面斜視図である。
図32において、実施形態における2次元フォトニック結晶面発光レーザLDは、基板1と、基板1の一方の主面上に形成された第1導電型の第1導電型半導体層20と、第1導電型半導体層20上に形成された活性層30と、活性層30上に形成され、導電型が第1導電型とは異なる第2導電型の第2導電型半導体層40と、活性層30で発生する光の波長を選択する2次元フォトニック結晶10と、第2導電型半導体層40上に形成された円環状(リング状、ドーナツ状)の第1電極5と、基板1における前記一方の主面に対向する他方の主面上の全面に形成された第2電極6とを備えて構成される。
第1導電型半導体層20は、例えば電子をキャリアとするn型の半導体層であり、例えば、n型InPで形成されている。第2導電型半導体層40は、例えばホール(正孔)をキャリアとするp型の半導体層であり、例えば、p型InPで形成されている。
活性層30は、前記のように基板11上に各層20、30、40が積層されることによって、第1導電型半導体層20と第2導電型半導体層40とに挟まれており、キャリア注入によって光を発生(発光)する。活性層30は、公知の一般的な材料および構造を採用することができ、使用用途に応じた波長を発光するように材料や構造などが選択される。活性層30は、例えば、InGaAs/InGaAsP系の半導体材料を用いた多重量子井戸構造で構成される。
第1および第2導電型半導体層20、40は、活性層30の屈折率よりも低い屈折率の材料で形成され、上述の第1および第2クラッド層2、4としても機能しており、活性層30を挟んでダブルへテロ接合を形成し、キャリアを閉じ込めて、発光に寄与するキャリアを活性層30に集中させている。上記InPは、活性層30が上記のようにInGaAs/InGaAsP系の半導体材料を用いた多重量子井戸構造で構成される場合に、活性層30よりも低屈折率の材料であり、この他、上記InPに代え、同じIII−V族化合物半導体である例えばInGaAsP,GaAs,InGaAsなども好適に用いることができる。このような化合物半導体では、混晶比を変えることによって、所定の範囲内でその屈折率を変えることができる。あるいは、例えば、8−キノリノールAl錯体(Aiq3)などの有機半導体を用いることもできる。
なお、第1導電型半導体層20と活性層30との間に他の層が介在していてもよく、あるいは、第2導電型半導体層40と活性層30との間に他の層が介在していてもよく、あるいは、第1導電型半導体層20と活性層30との間および第2導電型半導体層40と活性層30との間に他の層が介在していてもよい。
第1および第2電極5、6は、金系電極などから構成され、第1および第2電極5、6間に電圧を印加することによって活性層30にキャリアが注入され、所定値以上の電圧値で活性層が発光するようになっている。一方の電極5(6)を他方の電極6(5)よりも面積を小さくすることによって、その小さい面積の電極5(6)が形成された面から選択的にレーザ光が射出される。本実施形態では、第1電極5が第2電極6よりその面積が小さくされおり、第2導電型半導体層40の上面がレーザ光を射出する射出面となっている。なお、第1電極5は、この2次元フォトニック結晶面発光レーザLDが発光するレーザ光の波長に対して透明な導電性の材料であることが好ましい。
2次元フォトニック結晶10は、上述した構成の2次元フォトニック結晶10、10A〜10Hなどであり、活性層30で発生する光の波長を選択する光学素子である。そして、2次元フォトニック結晶10は、例えば、本実施形態では、活性層30の近傍における第1導電型半導体層20内に形成されている。なお、2次元フォトニック結晶10は、第2導電型半導体層40内に形成されてもよく、あるいは、活性層30の両側に、すなわち、第1および第2導電型半導体層20、40内にそれぞれ形成されてもよく、あるいは、活性層30内に形成されてもよい。
このような構成の2次元フォトニック結晶面発光レーザLDでは、共振器の性能をより向上させた2次元フォトニック結晶10が用いられているので、所定のモードで安定的に発振し、レーザ発光を開始する電流値をより低くすることが可能となる。また、2次元フォトニック結晶面発光レーザLDを所望の発振モードで安定的に発振させることもできる。
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更及び/又は改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。従って、当業者が実施する変更形態又は改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態又は当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。