面発光レーザは、基板面から略垂直にレーザ光を射出することができる、複数のレーザ素子を2次元に集積すること(2次元アレー化)ができる、および、各レーザ素子からコヒーレントな光を並列的に射出することができるなどの様々な特徴から、例えば、ストレージ分野、通信分野および情報処理分野などの各分野へ様々な応用が期待され、研究、開発が進んでいる。
面発光レーザでは、キャリア注入によって光を発生する活性層を多層膜反射鏡(DBR)で上下に挟み込む構造が一般な基本構造として採用されるが、この他、例えば、特許文献1に開示されているように、2次元フォトニック結晶を用いるものがある。フォトニック結晶は、一般的に光の波長と同程度もしくはより小さい周期的な屈折率分布を内部に備える光学素子であり、3次元的な屈折率分布を持つ3次元フォトニック結晶や、2次元的な屈折率分布を持つ2次元フォトニック結晶などがある。フォトニック結晶は、半導体において原子核の周期ポテンシャルによって電子(電子波)がブラック反射を受けバンドギャップが形成される現象と同様に、周期的な屈折率分布によって光波がブラック反射を受け、光に対するバンドギャップ(フォトニックバンドギャップ)が形成されるという特徴を有している。このフォトニックバンドギャップでは、光の存在自体が不可能となるので、フォトニック結晶によって光の制御が可能になると期待されている。
この特許文献1に開示の2次元フォトニック結晶面発光レーザは、基板と、基板の主面上に設けられた下部クラッド層として機能するn型InP層と、n型InP層上に設けられキャリアの注入によって光を発生する活性層と、活性層上に設けられた上部クラッド層として機能するp型InP層と、p型InP層上および基板の他主面上に設けられた第1および第2電極と、活性層の近傍であってn型InP層内に形成される2次元フォトニック結晶とを備えて構成される。このような構成の面発光レーザでは、第1および第2電極間に所定値以上の電圧が印加されると、活性層が発光し、この光が活性層から2次元フォトニック結晶に入射される。2次元フォトニック結晶に入射された光は、2次元フォトニック結晶の格子定数に一致する波長の光が共振することによって増幅され、発振し、面方向からレーザ光が射出される。
図19は、2次元フォトニック結晶面発光レーザにおける2次元フォトニック結晶の構造を示す平面図である。図20ないし図23は、共振モードを説明するための図であり、図20は、Aモードを示し、図21は、Bモードを示し、図22は、Cモードを示し、そして、図23は、Dモードを示す。図20ないし図23の(A)は、マックスウェルの方程式を解くことによって得られた近視野の電界分布を示す図であり、矢印が電界の方向および大きさを示している。図20ないし図23の(B)は、図20ないし図23の(A)の概念図であり、矢印が格子点の±X方向および±Y方向における電界方向を示している。図24は、2次元フォトニック結晶面発光レーザにおける面発光の様子を示す図である。
この2次元フォトニック結晶における共振作用をさらに説明すると、例えば、図19に示すように、2次元フォトニック結晶100が第1屈折率を持つ第1媒質101内に円柱状の第1屈折率とは異なる第2屈折率を持つ第2媒質(格子点)102を互いに直交する2方向に同じ周期(格子間隔、格子定数)aで形成した正方格子から成っている場合では、格子間隔aに一致する媒質内波長λを持つ光Lは、正方格子の辺方向であるΓ−X方向に進行すると、格子点102で回折される。この回折された光Lは、光Lの進行方向に対して0度、±90度、180度の方向に回折された光Lのみがブラッグ条件(2×a×sinθ=m×λ(m=0、±1、・・・))を満たすことになる。0度、±90度、180度の方向に回折された光Lは、その進行方向にも格子点102が存在するため、さらに、再度進行方向に対して0度、±90度、180度の方向に回折される。そして、Γ−X方向に進行する光Lは、1回または複数回のこのような回折を繰り返すことによって元の格子点102に戻る。このため、2次元フォトニック結晶100で共振作用が生じることになる。なお、正方格子の場合には、その代表的な方向として対角方向Γ−Mも存在する。
このような共振作用で発振可能な共振モードには、4つのモードが存在する。任意の格子点102の中心を座標原点として2次元フォトニック結晶100の2次元平面にxy座標系を設定すると、共振作用によって形成される定在波は、図20ないし図23の(B)に示すように、格子点102において各モードに対し次のようになる。
第1のモード(以下、「Aモード」と呼称する。)では、x軸方向に形成される電界のy方向成分の定在波の主成分Eyは、+sinで始まり(A1)、y軸方向に形成される電界のx方向成分の定在波の主成分Exは、−sinで始まる(A2)。この結果、電界分布は、図20(A)に示すようになる。
第2のモード(以下、「Bモード」と呼称する。)では、x軸方向に形成される電界のy方向成分の定在波の主成分Eyは、+sinで始まり(B1)、y軸方向に形成される電界のx方向成分の定在波の主成分Exは、+sinで始まる(B2)。この結果、電界分布は、図21(A)に示すようになる。
第3のモード(以下、「Cモード」と呼称する。)では、x軸方向に形成される電界のy方向成分の定在波の主成分Eyは、+cosで始まり(C1)、y軸方向に形成される電界のx方向成分の定在波の主成分Exは、+cosで始まる(C2)。この結果、電界分布は、図22(A)に示すようになる。
第4のモード(以下、「Dモード」と呼称する。)では、x軸方向に形成される電界のy方向成分の定在波の主成分Eyは、+cosで始まり(D1)、y軸方向に形成される電界のz方向成分の定在波の主成分Exは、−cosで始まる(D2)。この結果、電界分布は、図23(A)に示すようになる。
図22(A)および図23(A)を見ると分かるように、これらの電界分布は、90度回転すると同じになるので、CモードとDモードとは、縮退していることになる。
そして、2次元フォトニック結晶100の面に垂直な方向にもブラッグ条件が満たされるため、これら面内の電界分布を反映した状態で、面に垂直な方向にレーザ光が射出される。AモードおよびBモードでは、2次元フォトニック結晶100の格子に対して奇関数の電界分布となるため、垂直方向の回折波が互いに打ち消す結果(消失性干渉)、理論的には、面に垂直な方向にはレーザ光が射出されない。一方、CモードおよびDモードでは、2次元フォトニック結晶100の格子に対して偶関数の電界分布となるため、消失性干渉となることはなく、面に垂直な方向にはレーザ光が射出される。このことを、波を閉じ込めることができるという共振器の性能から見ると、共振器の性能は、AモードおよびBモードに対して高く、CモードおよびDモードに対して低い。この結果、図19に示す2次元フォトニック結晶100を備える2次元フォトニック結晶面発光レーザは、Aモードが最も発振し易く、次にBモードが発振し易く、CモードおよびDモードは、ほとんど発振しないという特性を有している。
実際のデバイスでは、2次元フォトニック結晶100の格子数(周期数)は、有限であるため、Aモードに関して図20(B)に示すように、2次元フォトニック結晶100の周辺部における互いに対向する辺では、電界E1、E2;E3、E4は、消失性干渉を引き起こすための電界成分の打ち消し合いが完全ではなくなり、2次元フォトニック結晶100の終端部では、面に垂直な方向における消失性干渉が不完全となる。この結果、Aモードでも面に垂直な方向にレーザ光が漏れ出てくることになって、図19に示す2次元フォトニック結晶100を備える2次元フォトニック結晶面発光レーザは、図24に示すように、円環状(リング状、ドーナツ状)に面発光する。
このような円環状の面発光は、一般的なレーザ素子が発光する直線偏光であって単峰の光強度分布を持つレーザ光と異なるため、通常の使用用途には、不向きである。そのため、特許文献2では、2次元フォトニック結晶における格子点を楕円柱状で構成することが提案され、特許文献3では、2次元フォトニック結晶における正方格子を、2次元文様に関する1952年の国際結晶学連合(International Union of Crystallography in 1952、以下、「IUC」と略記する。)の分類法においてp1、pm、pgおよびcmのうちのいずれかの対称性で構成することが提案されている。このような手法によって上記不都合は、改善されるが、まだ上記不都合の改善に余地がある。
一方、特許文献1には、位相をシフトする位相シフト構造を2次元フォトニック結晶に設けることも提案されている。
図25は、従来の位相シフト構造を備える2次元フォトニック結晶の構造を示す平面図である。図25には、格子点の周近傍におけるx軸に沿った方向の電界方向が矢印付きの細い直線で表され、格子点の周近傍におけるy軸に沿った方向の電界方向が矢印付きの細い直線で表され、そして、代表的に4個の格子点についてその格子点の周近傍における電界方向が矢印付きの曲線で表されている。図26は、2次元フォトニック結晶に従来の位相シフト構造を備える2次元フォトニック結晶面発光レーザにおける面発光の様子を示す図である。
図25において、位相シフト構造を備える2次元フォトニック結晶200は、同じ周期aを備える第1および第2の2次元フォトニック結晶領域DM201、DM202を備え、第1の2次元フォトニック結晶領域DM201と第2の2次元フォトニック結晶領域DM202は、その接合において、x軸方向に半周期の整数倍だけずれている。このずれている部分が位相シフト構造PSとなる。このような位相シフト構造PSを2次元フォトニック結晶200に導入することによって、位相シフト構造PSを挟んで電界のy軸方向の主成分Eyが左右で反転するので、図25に矢印付きの太い直線で示すように、2次元フォトニック結晶200の周辺部におけるy軸方向に沿った左右の辺では電界E5、E6が同相になる。この結果、2次元フォトニック結晶面発光レーザは、図26に示すように、サイドローブを有するが、左右対称な単峰の直線偏光でレーザ光を発光する。
なお、特許文献1には、y軸方向に半周期の整数倍だけずれる位相シフト構造も開示されているが、何れにおいても、1個の位相シフト構造では、一方向に半周期の整数倍だけずれる構成のみが開示されている。
特開2000−332351号公報
特開2003−023193号公報
特開2004−296538号公報
以下、本発明に係る実施の一形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。
図1は、実施形態における2次元フォトニック結晶面発光レーザの構成を示す部分断面斜視図である。
図1において、実施形態における2次元フォトニック結晶面発光レーザLDは、基板1と、基板1の一方の主面上に形成された第1導電型の第1導電型半導体層2と、第1導電型半導体層2上に形成された活性層3と、活性層3上に形成され、導電型が第1導電型とは異なる第2導電型の第2導電型半導体層4と、活性層3で発生する光の波長を選択する2次元フォトニック結晶10と、第2導電型半導体層4上に形成された円環状(リング状、ドーナツ状)の第1電極5と、基板1における前記一方の主面に対向する他方の主面上の全面に形成された第2電極6とを備えて構成される。
第1導電型半導体層2は、例えば電子をキャリアとするn型の半導体層であり、例えば、n型InPで形成されている。第2導電型半導体層4は、例えばホール(正孔)をキャリアとするp型の半導体層であり、例えば、p型InPで形成されている。
活性層3は、前記のように基板1上に各層2、3、4が積層されることによって、第1導電型半導体層2と第2導電型半導体層4とに挟まれており、キャリア注入によって光を発生(発光)する。活性層3は、公知の一般的な構造を採用することができ、例えば、InGaAs/InGaAsP系の半導体材料を用いた多重量子井戸構造で構成される。
第1および第2導電型半導体層2、4は、活性層3の屈折率よりも低い屈折率の材料で形成され、下部および上部クラッド層の機能を兼ね備えており、活性層3を挟んでダブルへテロ接合を形成し、キャリアを閉じ込めて、発光に寄与するキャリアを活性層3に集中させている。上記InPは、活性層3が上記のようにInGaAs/InGaAsP系の半導体材料を用いた多重量子井戸構造で構成される場合に、活性層3よりも低屈折率の材料であり、この他、上記InPに代え、同じIII−V族化合物半導体である例えばInGaAsP,GaAs,InGaAsなども好適に用いることができる。あるいは、例えば、8−キノリノールAl錯体(Aiq3)などの有機半導体を用いることもできる。
なお、第1導電型半導体層2と活性層3との間に他の層が介在していてもよく、あるいは、第2導電型半導体層4と活性層3との間に他の層が介在していてもよく、あるいは、第1導電型半導体層2と活性層3との間および第2導電型半導体層4と活性層3との間に他の層が介在していてもよい。
第1および第2電極5、6は、金系電極などから構成され、第1および第2電極5、6間に電圧を印加することによって活性層3にキャリアが注入され、所定値以上の電圧値で活性層が発光するようになっている。一方の電極5(6)を他方の電極6(5)よりも面積を小さくすることによって、その小さい面積の電極5(6)が形成された面から選択的にレーザ光が射出される。本実施形態では、第1電極5が第2電極6よりその面積が小さくされおり、第2導電型半導体層4の上面がレーザ光を射出する射出面となっている。なお、第1電極5は、この2次元フォトニック結晶面発光レーザLDが発光するレーザ光の波長に対して透明な導電性の材料であることが好ましい。
2次元フォトニック結晶10は、フォトニックバンドギャップを形成するように2次元の周期的な屈折率分布を備え、活性層13で発生する光の波長を選択する光学素子であり、例えば、本実施形態では、活性層3の近傍における第1導電型半導体層2内に形成されている。2次元フォトニック結晶10は、第2導電型半導体層4内に形成されてもよく、あるいは、活性層3の両側に、すなわち、第1および第2導電型半導体層2、4内にそれぞれ形成されてもよく、あるいは、活性層3内に形成されてもよい。
ここで、注目すべきは、2次元フォトニック結晶10は、互いに異なる第1および第2方向で第1および第2周期の第1および第2屈折率分布を少なくとも備える複数の2次元フォトニック結晶領域から成り、これら複数の2次元フォトニック結晶領域のそれぞれは、互いに第1および第2周期が同じであって、その接合において互いに異なる第3および第4方向の両方向に予め設定された第1および第2所定距離だけずれていることである。
第1および第2屈折率分布は、第1導電型半導体層2を形成する材料の屈折率と異なる屈折率の材料が格子点として第1および第2方向で第1および第2周期で配列されることによって形成されている。より具体的には、本実施形態では、第1導電型半導体層2に柱状の凹部(空孔)が格子点として形成されている。なお、第1導電型半導体層2を形成する材料の屈折率と異なる屈折率の材料が柱状の凹部(空孔)内に充填されてもよい。例えば、第1導電型半導体層2が上述のようにn型InPで形成される場合には、柱状の凹部(空孔)内にはSiNなどが充填される。
このような構成の2次元フォトニック結晶10を備える2次元フォトニック結晶面発光レーザLDでは、複数の2次元フォトニック結晶領域のそれぞれがその接合において第3および第4方向の両方向に予め設定された第1および第2所定距離だけずれているので、電界のy軸方向の主成分Eyにおける位相をずらすことが可能となり、かつ、電界のx軸方向の主成分Exを連続とすることが可能となる。この結果、2次元フォトニック結晶面発光レーザLDは、より安定して発振することが可能となる。
以下、このような2次元フォトニック結晶10(10A〜10F)の各構成を例示し、より具体的に説明する。
図2は、実施形態における2次元フォトニック結晶の第1の構成を示す平面図である。図3は、図2に示す2次元フォトニック結晶における電界分布を説明するための図である。図3には、格子点11Aの周近傍におけるx軸に沿った方向の電界方向が矢印付きの細い直線で表され、格子点11Aの周近傍におけるy軸に沿った方向の電界方向が矢印付きの細い直線で表され、2次元フォトニック結晶10Aの周辺部における各軸に沿った方向の電界方向が矢印付きの太い直線で表され、そして、代表的に5個の格子点11Aについてその格子点11Aの周近傍における電界方向が矢印付きの曲線で表されている。以下の図7、図8、図10、図11、図13および図14も同様である。図4は、図2に示す2次元フォトニック結晶を備える2次元フォトニック結晶面発光レーザにおける面発光の様子を示す図である。
このような構成の2次元フォトニック結晶10Aは、例えば、図2に示すように、第1および第2の2次元フォトニック結晶領域DM11A、DM12Aを備える。図2では、第1の2次元フォトニック結晶領域DM11Aにおける各格子点11Aを“●”で表し、第1および第2方向を実線で表している。そして、第2の2次元フォトニック結晶領域DM12Aにおける各格子点11Aを“○”で表し、第1および第2方向を破線で表している。以下の図5および図6も同様である。
第1および第2の2次元フォトニック結晶領域DM11A、DM12Aのそれぞれは、x軸に沿った方向を第1方向とする第1周期aを持つ第1屈折率分布と、x軸と直交するy軸に沿った方向を第2方向とする第1周期aと同じ第2周期aを持つ第2屈折率分布とを備える正方格子で構成されている。第1および第2の2次元フォトニック結晶領域DM11A、DM12Aの各格子点11Aは、図2に示す例では、同じ媒質から成る円柱形状となっている。そして、第1および第2の2次元フォトニック結晶領域DM11A、DM12Aのそれぞれは、その接合の領域CDaにおいてx軸に沿った第3方向に半周期a/2だけずれていると共にy軸に沿った第4方向に半周期a/2だけずれている。すなわち、図2に示す2次元フォトニック結晶10Aでは、第3および第4方向のぞれぞれは、第1および第2方向とされている。言い換えれば、2次元フォトニック結晶10A中の光学的距離において第1方向における基本並進ベクトルの長さの略半分だけずれていると共に、2次元フォトニック結晶10A中の光学的距離において第2方向における基本並進ベクトルの長さの略半分だけずれている。この接合の領域CDaが位相をシフトする位相シフト構造となっている。光学的距離(光路長)は、媒質内で光が感じる実効的な屈折率に真空中の距離を乗じたものである。図2に示す2次元ニック結晶10Aでは、この接合の領域CDaは、y軸に沿って直線状に延在するように構成されている。このような構成の2次元フォトニック結晶10Aの各2次元フォトニック結晶領域DM11AおよびDM12Aは、共に、IUCの分類法においてp4mの対称性を有している。p4mでは、90度回転が含まれ、90度回転の中心を通る鏡映がある。
このような構成の2次元フォトニック結晶10Aでは、第1および第2の2次元フォトニック結晶領域DM11A、DM12Aのそれぞれがその接合の領域CDaにおいて第1および第2方向の両方向にそれぞれ半周期a/2だけずれているので、図3に示すように、この接合の領域CDaを挟んで電界のy軸方向の主成分Eyが左右で反転することによって2次元フォトニック結晶10Aの周辺部におけるy軸方向に沿った左右の辺では電界E5、E6が同相になると共に、電界のx軸方向の主成分Exが連続となる(例えば、代表的に5個の格子点11Aについて示す格子点11Aの周近傍における電界方向を参照)。この結果、この2次元フォトニック結晶10Aを備える2次元フォトニック結晶面発光レーザLDは、より安定して発振することができ、図4に示すように、サイドローブを有するが、左右対称な直線偏光でレーザ光を発光する。
ここで、図2に示す例では、第1および第2の2次元フォトニック結晶領域DM11A、DM12Aのそれぞれは、その接合の領域CDaにおいて第3(第1)および第4(第2)方向に半周期a/2だけそれぞれずれているが、その接合の領域CDaにおいて、第1方向で共振している光の媒質内波長の半波長の奇数倍であって、第2方向で共振している光の媒質内波長の半波長の奇数倍であってもよい。
図5および図6は、実施形態における2次元フォトニック結晶の第1の構成における変形形態を示す平面図である。
ここで、図2に示す例では、第1および第2の2次元フォトニック結晶領域DM11A、DM12Aは、y軸に沿った直線状に延在する領域CDaで接合したが、図5に示すように、x軸から反時計回りに+45度の直線に沿った直線状に延在する領域CDbで接合してもよく、あるいは、図6に示すように、y軸に沿った直線状に延在する一方でその途中でx軸から反時計回りに+45度の直線に沿った直線状に延在する部分を備えた領域CDcで接合してもよい。また、図示しないが、第1および第2の2次元フォトニック結晶領域DM11A、DM12Aは、x軸から反時計回りに−45度の直線に沿った直線状に延在する領域で接合してもよく、あるいは、y軸に沿った直線状に延在する一方でその途中でx軸から反時計回りに−45度の直線に沿った直線状に延在する部分を備えた領域で接合してもよい。このような構造でも、第1および第2の2次元フォトニック結晶領域DM11A、DM12Aのそれぞれは、その接合の領域CDb、CDcにおいてx軸に沿った第3(第1)方向に半周期a/2だけずれていると共にy軸に沿った第4(第2)方向に半周期a/2だけずれている。
図7および図8は、実施形態における2次元フォトニック結晶の第2および第3の構成を示す平面図である。図9は、図8に示す2次元フォトニック結晶を備える2次元フォトニック結晶面発光レーザにおける面発光の様子を示す図である。
また、図2に示す2次元フォトニック結晶10Aは、格子点11Aが円柱形状であるが、図7に示すように、格子点11Bが楕円柱形状である2次元フォトニック結晶10Bであってもよい。図7に示す例では、第1および第2の2次元フォトニック結晶領域DM11B、DM12Bのそれぞれにおいて、楕円柱形状の横断面(xy平面)で、楕円の長軸は、y軸方向に沿っている。このように格子点11Bが楕円柱形状で構成されることによって、各2次元フォトニック結晶領域DM11BおよびDM12Bは、共に、IUCの分類法においてpmmの対称性を有し、円柱形状である場合に較べて、サイドローブが抑制される。pmmでは、180度回転が含まれるが90度回転および60度回転が含まれず、鏡映が含まれ、すべり鏡映軸が必ず鏡映軸でもある。
また、図2に示す2次元フォトニック結晶10Aは、図8に示すように、格子点11C(11C1、11C2)が三角柱形状であって、IUCの分類法においてpmの対称性を有する第1の2次元フォトニック結晶領域DM11Cと、第1の2次元フォトニック結晶領域DM11Cを鏡映軸に対し垂直な軸に対して折り返して得られるpmの対称性を有する第2の2次元フォトニック結晶領域DM12Cとを備える2次元フォトニック結晶10Cであってもよい。図8に示す例では、第1の2次元フォトニック結晶領域DM11Cでは、格子点11C1は、三角柱形状の横断面(xy平面)で、三角形の一辺がy軸方向に沿っており、このy軸方向に沿う一辺から他の2辺によって形成される頂点へ向かう向きが−x軸方向となっている。そして、第2の2次元フォトニック結晶領域DM12Cでは、格子点11C2は、三角柱形状の横断面(xy平面)で、三角形の一辺がy軸方向に沿っており、このy軸方向に沿う一辺から他の2辺によって形成される頂点へ向かう向きが+x軸方向となっている。このような構成の2次元フォトニック結晶10Cを備える2次元フォトニック結晶面発光レーザLDは、より安定して発振することができ、図9に示すように、サイドローブが抑制された左右対称な単峰の直線偏光でレーザ光を発光する。pmでは、回転が含まれず、鏡映が含まれ、すべり鏡映軸が必ず鏡映軸でもある。
図10は、Bモードに対する2次元フォトニック結晶における電界の様子を示す図である。
また、図2ないし図9に示す例では、Aモードについて説明したが、Bモードについても同様である。図2に示す2次元フォトニック結晶10Aの場合について、Bモードに対する2次元フォトニック結晶10Aにおける電界の様子を図10に示す。図10に示すように、Bモードにおいても、接合の領域CDaを挟んで電界のy軸方向の主成分Eyが左右で反転することによって2次元フォトニック結晶10Aの周辺部におけるy軸方向に沿った左右の辺では電界E5、E6が同相になると共に、電界のx軸方向の主成分Exが連続となる(例えば、代表的に5個の格子点11Aについて示す格子点11Aの周近傍における電界方向を参照)。この結果、この2次元フォトニック結晶10Aを備える2次元フォトニック結晶面発光レーザLDは、Bモードにおいても、より安定して発振することができ、左右対称な単峰の直線偏光でレーザ光を発光する。
このように2次元フォトニック結晶10A〜10Cでは、2個の2次元フォトニック結晶領域DM11A〜DM11C、DM12A〜DM12Cのそれぞれは、正方格子で構成されており、2個の2次元フォトニック結晶領域DM11A〜DM11C、DM12A〜DM12Cの接合面は、正方格子における互いに直交する2辺の各辺方向に平行であり、そして、その接合において正方格子における互いに直交する2辺の各辺方向のそれぞれに予め設定された第1および第2所定距離だけ、図2(図10)、図3、図5〜図8に示す例では、半周期a/2だけずれている。
図11は、実施形態における2次元フォトニック結晶の第4の構成を示す平面図である。図12は、図11に示す2次元フォトニック結晶を備える2次元フォトニック結晶面発光レーザにおける面発光の様子を示す図である。
また、図2に示す2次元フォトニック結晶10Aは、正方格子で構成され、各2次元フォトニック結晶領域DM11A、DM12Aの接合面が正方格子における互いに直交する2辺の各辺方向に平行であり、第3および第4方向のそれぞれが正方格子における互いに直交する2辺の各辺方向(x軸に沿う方向およびy軸に沿う方向)であったが、図11に示すように、正方格子で構成され、各2次元フォトニック結晶領域DM11D、DM12Dの接合面が正方格子における2対角の各対角方向に平行であり、第3および第4方向のそれぞれが正方格子における互いに直交する2辺の各辺方向である2次元フォトニック結晶10Dであってもよい。第1および第2の2次元フォトニック結晶領域DM11D、DM12Dの各格子点11Dは、図11に示す例では、同じ媒質から成る円柱形状となっている。このような構成の2次元フォトニック結晶10Dを備える2次元フォトニック結晶面発光レーザLDは、より安定して発振することができ、図12に示すように、光強度分布および偏光が略同じの二重ドーナツの光強度分布を持つレーザ光を発光する。
図13および図14は、実施形態における2次元フォトニック結晶の第5および第6の構成を示す平面図である。図15は、図14に示す2次元フォトニック結晶を備える2次元フォトニック結晶面発光レーザにおける面発光の様子を示す図である。
また、図11に示す2次元フォトニック結晶10Dは、格子点11Dが円柱形状であるが、図13に示すように、格子点11Eが楕円柱形状である2次元フォトニック結晶10Eであってもよい。図13に示す例では、第1および第2の2次元フォトニック結晶領域DM11E、DM12Eのそれぞれにおいて、楕円柱形状の横断面(xy平面)で、楕円の長軸は、y軸方向に沿っている。このように格子点11Eが楕円柱形状で構成されることによって、各2次元フォトニック結晶領域DM11EおよびDM12Eは、共に、IUCの分類法においてcmmの対称性を有し、円柱形状である場合に較べて、サイドローブが抑制される。cmmでは、180度回転が含まれるが90度回転および60度回転が含まれず、鏡映が含まれ、鏡映軸ではないすべり鏡映軸があり、すべり鏡映軸には必ずそれに平行な鏡映軸がある。
また、図11に示す2次元フォトニック結晶10Dは、図14に示すように、格子点11F(11F1、11F2)が三角柱形状であって、IUCの分類法においてcmの対称性を有する第1の2次元フォトニック結晶領域DM11Fと、第1の2次元フォトニック結晶領域DM11Fを鏡映軸に対し垂直な軸に対して折り返して得られるcmの対称性を有する第2の2次元フォトニック結晶領域DM12Fとを備える2次元フォトニック結晶10Fであってもよい。図14に示す例では、第1の2次元フォトニック結晶領域DM11Fでは、格子点11F1は、三角柱形状の横断面(xy平面)で、三角形の一辺がy軸方向に沿っており、このy軸方向に沿う一辺から他の2辺によって形成される頂点へ向かう向きが−x軸方向となっている。そして、第2の2次元フォトニック結晶領域DM12Fでは、格子点11F2は、三角柱形状の横断面(xy平面)で、三角形の一辺がy軸方向に沿っており、このy軸方向に沿う一辺から他の2辺によって形成される頂点へ向かう向きが+x軸方向となっている。このような構成の2次元フォトニック結晶10Fを備える2次元フォトニック結晶面発光レーザLDは、より安定して発振することができ、図15に示すように、サイドローブがより一層抑制された左右対称な単峰の直線偏光でレーザ光を発光する。すなわち、この2次元フォトニック結晶10Fを備える2次元フォトニック結晶面発光レーザLDでは、光強度分布の対称性、単峰の直線偏光性およびモードの安定性のすべてが両立可能となる。cmでは、回転が含まれず、鏡映が含まれ、鏡映軸ではないすべり鏡映軸がある。
このように2次元フォトニック結晶10D〜10Fでは、2個の2次元フォトニック結晶領域DM11D〜DM11F、DM12D〜DM1FCのそれぞれは、正方格子で構成されており、2個の2次元フォトニック結晶領域DM11D〜DM11F、DM12D〜DM12Fの接合面は、正方格子における2対角の各対角方向に平行であり、そして、その接合において正方格子における互いに直交する2辺の各辺方向のそれぞれに予め設定された第1および第2所定距離だけ、図11、図13、図14に示す例では、半周期a/2だけずれている。
図16は、実施形態における2次元フォトニック結晶の第7の構成を示す平面図である。
また、図2(図3、図10)、図5ないし図8、図11、図13および図14に示す2次元フォトニック結晶10A〜10Fでは、正方格子であるが、図16に示すように、長方形格子であってもよい。
図16に示す2次元フォトニック結晶20は、第1および第2の2次元フォトニック結晶領域DM21、DM22を備える。図16では、第1の2次元フォトニック結晶領域DM21における各格子点21を“●”で表し、第1および第2方向を実線で表している。そして、第2の2次元フォトニック結晶領域DM22における各格子点を“○”で表し、第1および第2方向を破線で表している。
第1および第2の2次元フォトニック結晶領域DM21、DM22のそれぞれは、x軸に沿った方向を第1方向とする第1周期b1を持つ第1屈折率分布と、x軸と直交するy軸に沿った方向を第2方向とする第1周期b1と異なる第2周期b2(≠b1)を持つ第2屈折率分布とを備える長方形格子で構成されている。第1および第2の2次元フォトニック結晶領域DM21、DM22の各格子点21は、図16に示す例では、同じ媒質から成る円柱形状となっている。そして、第1および第2の2次元フォトニック結晶領域DM21、DM22のそれぞれは、その接合の領域CD2においてx軸に沿った第3方向に半周期b1/2だけずれていると共にy軸に沿った第4方向に半周期b2/2だけずれている。すなわち、図16に示す2次元フォトニック結晶20では、第3および第4方向のぞれぞれは、第1および第2方向とされている。この接合の領域CD2が位相をシフトする位相シフト構造となっている。図16に示す2次元ニック結晶20では、この接合の領域CD2は、y軸に沿って直線状に延在するように構成されている。
このような構成の2次元フォトニック結晶20を備える2次元フォトニック結晶面発光レーザLDも、図2に示す2次元フォトニック結晶10Aを備える2次元フォトニック結晶面発光レーザLDと同様に、より安定して発振することができる。
ここで、第1周期b1と第2周期b2とに大きな差があると、格子点21で回折する光の結合が弱くなるので、第1周期b1に対する両周期b1、b2の差の絶対値(=|(b1−b2)/b1|)が20%以下であることが好ましい。
このような長方形格子の場合においても、図2に示す正方格子に対する図5や図6に示す変形形態と同様な変形形態を採用することができる。そして、このような長方形格子の場合においても、図2に示す正方格子の2次元フォトニック結晶10Aに対する図7、図8、図11、図13および図14に示す他の構成の2次元フォトニック結晶10B〜10Fと同様な他の構成を採用することができる。また、このような長方形格子の場合においても、図2(図3)に示す正方格子の2次元フォトニック結晶10Aが図10に示すようにAモードおよびBモードをとり得るように、AモードおよびBモードをとり得る。
なお、上述では、本発明の実施形態として最低次の場合について例示したが、より高い次数についても同様に、本発明は、適用可能である。その一例として、2次元フォトニック結晶10の2次元フォトニック結晶領域DMが正方格子であってAモードの場合について以下に説明する。
図17は、実施形態における2次元フォトニック結晶の第8の構成を示す平面図である。図18は、第8の構成の2次元フォトニック結晶における近視野の電界分布を示す図である。図17には、格子点11Gの周近傍における、基本格子の対角方向の電界方向が矢印付きの細い直線で表され、2次元フォトニック結晶10Gの周辺部における各軸に沿った方向の電界方向が矢印付きの太い直線で表され、そして、代表的に4個の格子点11Gについてその格子点11Gの周近傍における電界方向が矢印付きの曲線で表されている。
図17において、2次元フォトニック結晶10Gは、第1および第2の2次元フォトニック結晶領域DM11G、DM12Gを備える。
第1および第2の2次元フォトニック結晶領域DM11G、DM12Gのそれぞれは、x軸に沿った方向に周期aを持つ屈折率分布と、x軸と直交するy軸に沿った方向に周期aを持つ屈折率分布とを備える正方格子で構成され、その基本格子は、一辺aの長さの正方形である。そして、第1および第2の2次元フォトニック結晶領域DM11G、DM12Gのそれぞれには、基本格子の2対角の各対角方向を第1および第2方向として基本格子の2対角の各対角線の長さa√2を第1および第2周期とする第1および第2屈折率分布が形成されている。第1および第2の2次元フォトニック結晶領域DM11G、DM12Gの各格子点11Gは、図17に示す例では、同じ媒質から成る円柱形状となっている。そして、第1および第2の2次元フォトニック結晶領域DM11G、DM12Gのそれぞれは、その接合において基本格子の2対角の各対角方向へそれぞれ、第1および第2周期a√2の四分の一周期であるa/2√2だけずれている。
このような構成の2次元フォトニック結晶10Gでは、光が基本格子の対角方向においてa/√2の媒質内波長で共振しており、第1および第2の2次元フォトニック結晶領域DM11G、DM12Gのそれぞれがその接合において基本格子の2対角の各対角方向へそれぞれ四分の一周期a/2√2だけずれているので、図17および図18に示すように、接合面を挟んで電界のy軸方向の主成分Eyが左右で反転することによって2次元フォトニック結晶10Gの周辺部におけるy軸方向に沿った左右の辺では電界E5’、E6’が同相になると共に、電界のx軸方向の主成分Exが連続となる(例えば、代表的に4個の格子点11Gについて示す格子点11Gの周近傍における電界方向を参照)。この結果、この2次元フォトニック結晶10Gを備える2次元フォトニック結晶面発光レーザLDは、より安定して発振することができる。
また、上述の実施形態では、2次元フォトニック結晶10、20の2次元フォトニック結晶領域DMは、第1および第2の2個の場合について説明したが、3個以上であってもよい。
また、上述の実施形態では、2次元フォトニック結晶10、20の2次元フォトニック結晶領域DMは、第1および第2の2個の屈折率分布で構成されたが、3個以上であってもよい。
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更及び/又は改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。従って、当業者が実施する変更形態又は改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態又は当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。