JP2009283639A - 面発光レーザ素子およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】素子厚を増加させることなく出射面におけるレーザ光のビーム径を拡大することができる面発光レーザ素子およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】水平共振器面発光レーザ素子101は、n型InP基板11と、n型InP基板11上に形成されたInGaAlAs活性層61と、InGaAlAs活性層61で発生する光をその長手方向に共振させる共振器と、共振器内で共振するレーザ光の少なくとも一部をn型InP基板11の裏面方向に反射する反射鏡18と、反射鏡18により反射されるレーザ光を外部に出射するよう該レーザ光の光軸上に形成された光出射面が凸状の低屈折率レンズ31と、を含む。低屈折率レンズ31は、n型InP基板11の屈折率とは異なる屈折率と、反射鏡18から入射するレーザ光の放射角を広げるよう形成された光入射面と、を有する。
【選択図】図1
【解決手段】水平共振器面発光レーザ素子101は、n型InP基板11と、n型InP基板11上に形成されたInGaAlAs活性層61と、InGaAlAs活性層61で発生する光をその長手方向に共振させる共振器と、共振器内で共振するレーザ光の少なくとも一部をn型InP基板11の裏面方向に反射する反射鏡18と、反射鏡18により反射されるレーザ光を外部に出射するよう該レーザ光の光軸上に形成された光出射面が凸状の低屈折率レンズ31と、を含む。低屈折率レンズ31は、n型InP基板11の屈折率とは異なる屈折率と、反射鏡18から入射するレーザ光の放射角を広げるよう形成された光入射面と、を有する。
【選択図】図1
Description
本発明は、光通信モジュールや光ディスク装置などに用いられる面発光レーザ素子およびその製造方法に関する。
半導体基板と垂直な方向にレーザ光を出射する面発光レーザ素子の1つに、水平共振器面発光レーザ素子がある。水平共振器面発光レーザ素子は、半導体基板面に平行な方向に形成されたレーザ共振器と、レーザ光を基板表面(上面)または裏面(下面)から出射するために形成された傾斜角45°の反射ミラーと、が集積された構造を持つ。
たとえば、特許文献1には、半導体基板上に形成された多層膜反射鏡と、多層膜反射鏡上に形成された光導波路層と、光導波路層の端部に形成された45°の傾斜を有する反射鏡と、を備えた水平共振器面発光レーザが開示されている。
図8は、従来の水平共振器面発光レーザ素子(以下単に「レーザ素子」ともいう)の一例を示す図である。図8(a)はレーザ素子104の一部切欠斜視図、図8(b)は共振器の光軸を含む平面での断面図、図8(c)はレーザ素子104の下面図、図8(d)は共振器の光軸方向に直交する平面での断面図である。ここでは、レーザ素子104の構造を三次元的に表すために、基板面に平行な面をxy平面、基板裏面から表面に向かう方向をz軸方向、共振器の光軸に沿って反射鏡18に向かう方向をx軸方向として、レーザ素子104の構造を説明する。
図8に示すように、水平共振器面発光レーザ素子104は、n型InP基板11と、n型InP基板11上に形成されたInGaAsP活性層14と、InGaAsP活性層14の上方近傍に形成されたx軸方向に屈折率が周期的に変化する回折格子層17と、回折格子層17の上方に形成されたp型InPクラッド層15と、InGaAsP活性層14をy軸方向両側から挟み込む半絶縁性InP16と、InGaAsP活性層14を含む光導波路層の一端に形成された傾斜角45°の反射鏡18と、p電極13と、n型InP基板11の裏面に形成された円形の開口部を有するn電極12と、n電極12の開口部に形成された無反射コーティング19と、を含んで構成される。
光は、p電極13から電流が注入されるInGaAsP活性層14で発生する。InGaAsP活性層14で発生した光は、p型InPクラッド層15/InGaAsP活性層14/n型InP基板11からなる光閉じ込め構造によりz方向に閉じ込められる。また、InGaAsP活性層14で発生した光は、半絶縁性InP層16/InGaAsP活性層14/半絶縁性InP層16からなる光閉じ込め構造によりy方向にも閉じ込められる。こうしてy方向およびz方向に閉じ込められた光はx軸方向に伝播する。InGaAsP活性層14の近傍にはx軸方向に屈折率が周期的に変化する回折格子層17が形成されており、x軸方向に伝播する光がこの回折格子層17で帰還されることによりレーザ発振が起こる。このレーザは、分布帰還型(DFB:Distributed Feedback)レーザと呼ばれる。
こうして発生したレーザ光は、導波路の一端を45°にエッチング加工することにより形成した反射鏡18で全反射し、n型InP基板11の裏面方向に導かれる。反射鏡18により反射されたレーザ光は、その光軸とn型InP基板11の裏面とが交差する部分に形成された無反射コーティング19から出射される。
このような構造を持つ水平共振器面発光レーザ素子では、共振器が基板面に平行な方向に形成されているので、共振器長を長くとることができ、高い光出力を得ることが容易である。また、基板面に垂直な方向に光が出射されるので、フルウェハプロセスでレーザ素子を作製し、へき開によるチップ化の前にレーザ素子を検査することも可能であり、製造検査にかかるコストを低く抑ることができる。
ところで、水平共振器面発光レーザ素子の中には、図9に示すレーザ素子105のように(半導体レンズ34参照)、レーザ光の出射面が凸状に形成されたレンズ集積型の水平共振器面発光レーザ素子がある。
このような構造を持つ水平共振器面発光レーザ素子では、凸状の出射面から出射されるレーザ光が平行光線に近づくため、レーザ素子と光ファイバまたは導波路との光結合効率を高めることができる。
たとえば、特許文献2には、10〜100μmの活性領域と、分布ブラッグ反射鏡と、斜めミラーと、凸状に形成された出射面と、を有するレンズ集積型水平共振器面発光レーザが開示されている。また、非特許文献1には、InP基板上に形成されたInGaAsP活性層を含む光導波路と、光導波路の端部に形成された45°の傾斜を有する反射鏡と、InP基板裏面における反射鏡と対向する位置に形成された円形レンズと、を備えたレンズ集積型水平共振器面発光レーザの室温連続発振特性が開示されている。
特開2004-235182号公報
特開2007-5594号公報
「アイトリプルイー・フォトニクス・テクノロジー・レターズ(IEEE Photonics Technology Letters)」、第3巻、第9号、p.776
レーザビームにおける近視野像と遠視野像はフーリエ変換により関係付けられる。すなわち、近視野像が狭いと遠視野像が広くなり、近視野像が広いと遠視野像が狭くなる。このため、レーザ素子の出射面におけるビーム径によって出射光の広がり角の下限値が決まり、出射面におけるビーム径が大きいほどその下限値は0に近づく。したがって、光結合効率の観点からは、ビームを平行光線に近づけるためにレーザ素子の出射面におけるビーム径をできるだけ大きくすることが好ましい。
しかしながら、図9に示すような従来のレンズ集積型水平共振器面発光レーザ素子では、レンズの出射面におけるビーム径が数十ミクロン程度と小さい。これは、量産性の要請からチップサイズ(素子面積)が小さくてもヘキ開可能な範囲にレーザ素子の素子厚が制限され、ビーム径を決める活性層端からレンズまでの距離を十分に確保することができないからである。
本発明は、上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、素子厚を増加させることなく出射面におけるレーザ光のビーム径を拡大することができる面発光レーザ素子およびその製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明に係る面発光レーザ素子は、半導体基板と、前記半導体基板の一方面上に形成された活性層と、前記活性層で発生する光を該活性層の長手方向に共振させる共振器と、前記共振器内で共振するレーザ光の少なくとも一部を前記半導体基板の他方面方向に反射する反射部と、前記反射部により反射されるレーザ光を外部に出射するよう該レーザ光の光軸上に形成された光出射面が凸状のレンズと、を含む面発光レーザ素子であって、前記レンズは、前記半導体基板の屈折率とは異なる屈折率と、前記反射部から入射するレーザ光の放射角を広げるよう形成された光入射面と、を有することを特徴とする。
本発明によれば、半導体基板の屈折率とは異なる屈折率を有するレンズの光入射面でレーザ光の放射角が広がるため、素子厚を増加させることなく出射面におけるレーザ光のビーム径を拡大することができる。
また、本発明の一態様では、前記レンズの屈折率は、前記半導体基板の屈折率より小さく、前記レンズの光入射面は、凸面、平面、または凹面である。
また、本発明の一態様では、前記レンズの屈折率は、前記半導体基板の屈折率より大きく、前記レンズの光入射面は、凹面である。
また、本発明の一態様では、前記レンズは、レジスト材料で形成されている。この態様では、前記半導体基板の他方面には、前記レジスト材料で充填される窪み部が形成されていてもよい。
また、本発明に係る面発光レーザ素子の製造方法は、半導体基板の一方面上に活性層を形成する工程と、前記活性層で発生する光を該活性層の長手方向に共振させる共振器を形成する工程と、前記共振器内で共振するレーザ光の少なくとも一部を前記半導体基板の他方面方向に反射する反射部を形成する工程と、前記反射部により反射されるレーザ光を外部に出射するよう該レーザ光の光軸上に、前記半導体基板の屈折率とは異なる屈折率と、前記反射部から入射するレーザ光の放射角を広げる光入射面と、凸状の光出射面と、を有するレンズを形成するレンズ形成工程と、を含むことを特徴とする。
また、本発明の一態様では、前記レンズ形成工程は、前記レジスト材料で前記レンズを形成する。
また、本発明の一態様では、前記レンズ形成工程は、前記反射部により反射されるレーザ光の光軸と前記半導体基板の他方面との交点を含む領域に窪み部を形成する工程と、前記窪み部をレジスト材料で充填するレジスト充填工程と、前記窪み部に充填されたレジスト材料の表面を加熱融解することにより、該レジスト材料の表面を凸状に形成する凸面形成工程と、を含む。
また、本発明の一態様では、前記レジスト充填工程は、前記窪み部が埋没するよう前記半導体基板の他方面に前記レジスト材料を堆積する工程と、前記窪み部以外の領域に堆積されたレジスト材料を除去する工程と、を含むことを特徴とする。
また、本発明の一態様では、前記凸面形成工程では、前記融解したレジスト材料の表面張力を利用して、該レジスト材料の表面を凸状に形成する。
本発明によれば、半導体基板の屈折率とは異なる屈折率を有するレンズの光入射面でレーザ光の放射角が広がるため、素子厚を増加させることなく出射面におけるレーザ光のビーム径を拡大することができる。このため、平行光線に近いレーザ光を出射する面発光レーザ素子を実現できる。また、本発明に係る光結合効率の高い面発光レーザ素子を用いれば、レーザ実装時の高精度な光軸調整が不要となり、光モジュールや光トランシーバの大幅な低コスト化を実現できる。
以下、本発明の実施形態1〜3を図面を参照しながら詳細に説明する。なお、同一のまたは類似する構成要素には同一の符号を付し、重複説明を省略する。
[実施形態1]
図1は、本発明の実施形態1に係る水平共振器面発光レーザ素子101を示す図である。図1(a)はレーザ素子101の斜視図、図1(b)はレーザ素子101の一部切欠斜視図、図1(c)は共振器の光軸を含む平面での断面図、図1(d)はレーザ素子101の下面図、図1(e)は共振器の光軸方向に直交する平面での断面図である。
図1は、本発明の実施形態1に係る水平共振器面発光レーザ素子101を示す図である。図1(a)はレーザ素子101の斜視図、図1(b)はレーザ素子101の一部切欠斜視図、図1(c)は共振器の光軸を含む平面での断面図、図1(d)はレーザ素子101の下面図、図1(e)は共振器の光軸方向に直交する平面での断面図である。
水平共振器面発光レーザ素子101は、波長1.3μm帯のInGaAlAs量子井戸型水平共振器面発光レーザ素子であり、図1に示すように、n型InP基板11と、n型InP基板11上に形成されたInGaAlAs活性層61と、InGaAlAs活性層61の上方近傍に形成された回折格子層17と、回折格子層17の上方に形成されたp型InPクラッド層15と、InGaAlAs活性層61を短手方向両側から挟み込む半絶縁性InP16と、InGaAlAs活性層61を含む光導波路層の一端に形成された傾斜角約45°の反射鏡18と、p電極13と、n型InP基板11の裏面に形成されたn電極12と、反射鏡18により反射されるレーザ光を外部に出射するよう該レーザ光の光軸上に形成された低屈折率レンズ31と、を含んで構成される。
InGaAlAs活性層61は、図2に示すように、n型InGaAlAs光閉じ込め層611と、厚さ7nmのウェル層613と厚さ8nmのバリア層614とが5周期積層されたInGaAlAs歪多重量子井戸層と、p型InGaAlAs光閉じ込め層612と、が積層された構造を有し、レーザとして十分な特性を実現できるように設計されている。
量子井戸層(ウェル層613とバリア層614の積層構造)を上下から挟むよう形成された光閉じ込め層(n型InGaAlAs光閉じ込め層611とp型InGaAlAs光閉じ込め層612)は、量子井戸層による光閉じ込めを強化するための層である。光導波機能はコア領域をそれより屈折率の小さいクラッド層で挟み込むことによって実現されるため、クラッド層(n型InP基板11、p型InPクラッド層15)の屈折率は光閉じ込め層(n型InGaAlAs光閉じ込め層611,p型InGaAlAs光閉じ込め層612)の屈折率より小さい値とする。なお、本実施形態では、基板側のクラッド層をn型InP基板11としているが、n型InP基板11とは異なる基板側クラッド層をn型InP基板11上に別途設けてもよい。
レーザ素子101の光導波路部分は、図1(b)および(e)に示すように、ストライプ状の埋め込みヘテロ(BH:Buried Hetero)構造を有する。すなわち、レーザ素子101の光導波路部分は、InGaAlAs活性層61の厚さ方向にp型InPクラッド層15/InGaAlAs活性層61/n型InP基板11からなる光閉じ込め構造を有し、InGaAlAs活性層61の短手方向に半絶縁性InP層16/InGaAlAs活性層61/半絶縁性InP層16からなる光閉じ込め構造を有する。かかる光閉じ込め構造により、p電極13からn電極12方向に流れる電流によってInGaAlAs活性層61から放射される光は、InGaAlAs活性層61の長手方向に伝播する。
また、InGaAlAs活性層61の上方近傍には、図1(b)および(c)に示すように、InGaAsP系材料からなる極性がp型の回折格子層17が形成されている。回折格子層17は、InGaAlAs活性層61の長手方向に屈折率が周期的に変化する回折格子(グレーティング)を含み、InGaAlAs活性層61の長手方向に伝播する光を帰還させることによってレーザ発振させる、いわゆる屈折率結合型DFBレーザを実現する。活性層領域および回折格子層17の構造は、室温でのDFBレーザの発振波長が1310nmとなるように形成されている。なお、回折格子層17には、DFBレーザの全領域に均一に分布する回折格子を設けてもよいし、該領域の一部に回折格子の位相をずらした、いわゆる位相シフト構造を持つ回折格子を設けてもよい。
反射鏡18は、InGaAlAs活性層61を含む光導波路層に対して約45°傾斜した反射面であり、回折格子層17内で共振するレーザ光の少なくとも一部をn型InP基板11の裏面方向に反射する。反射鏡18により反射されるレーザ光は、該レーザ光の光軸とn型InP基板11の裏面との交点を含む領域に形成された底面が平面の窪み部に密着保持される低屈折レンズ31に入射する。
低屈折率レンズ31は、n型InP基板11の裏面に形成された窪み部の底面に密接する平面の光入射面と、凸面(たとえば凸状曲面)の光出射面と、を有するフォトレジストで形成されたレンズである。このフォトレジストの屈折率は、n型InP基板11の屈折率より小さく、外気(たとえば空気)の屈折率より高い。
かかる低屈折率レンズ31を設けることにより、図1(b)および(c)に波線で示すように、反射鏡18から入射するレーザ光21の放射角が低屈折率レンズ31の光入射面で広がるため、素子厚を増加させることなく光出射面におけるレーザ光21のビーム径を拡大することが可能となる。このため、平行光線に近い狭出射ビームを得ることができ、レーザ素子101と光ファイバまたは導波路との光結合効率を高めることができる。
なお、窪み部の底面に密接する低屈折率レンズ31の光入射面は平面に限らず、凸面であってもよいし、n型InP基板11の屈折率と低屈折率レンズ31の屈折率との関係に基づき反射鏡18から入射するレーザ光の放射角を拡大できるという条件さえ満たせば凹面であってもよい。
次に、水平共振器面発光レーザ素子101の製造工程を図3〜5を参照しながら説明する。図3および図4は、水平共振器面発光レーザ素子101の製造工程を説明する図であり、図5は、水平共振器面発光レーザ素子101の製造工程を示すフロー図である。
図5に示すように、まず、レーザ部分の構造を形成するために、n型InP基板11上に、n型InGaAlAs光閉じ込め層611、InGaAlAs歪多重量子井戸層、およびp型InGaAlAs光閉じ込め層612からなるInGaAlAs活性層61を形成する(S701)。次に、InGaAlAs活性層61の上方近傍にInGaAsPからなる回折格子層17を含む多層構造を形成する(S702)。さらに、回折格子層17の上方にp型InPクラッド層15を形成し(S703)、p型InGaAsコンタクト層72を形成する(S704)。なお、ドーピングによるキャリア濃度は、たとえばn型p型ともに10の18乗cm−3とする。
次に、かかる多層構造を有するInPウェハ上面の一部を保護マスク用の二酸化珪素膜73で被覆し(S705、図3(a))、p型InGaAsコンタクト層72、p型クラッド層15、回折格子層17、InGaAlAs活性層61、およびn型InP基板11の一部をエッチングすることにより、光導波路を形成する(S706、図3(b))。エッチングには、例えば塩素系ガスによる反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)等のドライエッチングおよび臭素系溶液等によるウェットエッチングの少なくとも一方を用いる。
ここで、本試料を結晶成長炉に搬入し、有機金属気相成長(MOVPE:Metal-Organic Vapor Phase Epitaxy)法を用いて600℃にてFeをドープした高抵抗の半絶縁性InP層16を埋め込み成長させる(S707、図3(c))。このエッチング工程S706と埋め込み層(半絶縁性InP層16)を再成長させる工程S707とにより、埋め込みヘテロ構造が形成される(図1(e)参照)。埋め込みへテロ構造は、光導波路における光の進行方向の両側を光を閉じ込め得る材料で埋め込んだ構造である。閉じ込めに用いる材料は、通例高抵抗の材料とする。
なお、この埋め込み構造形成工程においては、光導波路における光の進行方向の両側を半絶縁性InP16で埋め込むと同時に、光導波路の光出射端も半絶縁性InP16で埋め込む。このときInPウェハを上面から見ると、光導波路がコの字型(U字型)の半絶縁性InP16に挟み込まれた状態となっている。これにより、エッチング加工により45°傾斜ミラー(反射鏡18)が形成される部分が半絶縁性InP16だけで構成されるため、後述するS710において反射鏡18を平滑に加工することが容易になる。
その後、埋め込み層の選択成長マスクとして用いた二酸化珪素膜73を除去し(S708、図3(d))、エッチングマスク用の窒化珪素膜74をInPウェハ上面の一部に形成する(S709、図3(e))。次に、Feがドープされた半絶縁性InP層16を傾斜角45°にエッチング加工する(S710、図3(f))。この傾斜エッチング工程S710では、45°の角度に固定したウェハを塩素とアルゴンガスを用いた化学アシストイオンビームエッチング(CAIBE:Chemically Assisted Ion Beam Etching)を用いてエッチングすることにより、傾斜角45°の反射鏡18を形成する。なお、CAIBEの代わりに、塩素系ガスの反応性イオンビームエッチング(RIBE:Reactive Ion Beam Ethching)やウェットエッチングを用いてもよい。
エッチングにより反射鏡18を形成した後、窒化珪素膜74を除去し(S711)、p型InGaAsコンタクト層72の上部にp電極13を蒸着する(S712、図3(g))。
次に、n型InP基板11の裏面を130μmの厚みまで研磨した後(S713)、基板裏面にマスク用の窒化珪素膜75を形成する(S714、図4(a))。続いて、メタンと水素の混合ガスを用いた反応性イオンエッチングより、反射鏡18により反射されるレーザ光の光軸と基板裏面との交点を含む領域を直径60μm、深さ50μmの円柱形状にエッチングし窪み部を形成する(S715、図4(b))。なお、窪み部の形状は、円柱形状に限らず、用途によって楕円柱形状、多角柱形状、またはその他の形状にしてもよい。また、窪み部の底面の形状は、平面に限らず、用途によって凹形状もしくは凸形状であってもよい。
円柱形状の窪み部を形成した後、n型InP基板11の屈折率より小さい屈折率を持つ液状のフォトレジストで窪み部を充填し、さらに窪み部からフォトレジストが十分に溢れる程度に(窪み部がフォトレジストで埋没するよう)基板裏面にフォトレジストを堆積する(S716、図4(c))。その後、窪み部以外の領域に堆積する不要なフォトレジストをフォトリソグラフィにより除去し(S717、図4(d))、さらにマスク用の窒化珪素膜75を除去する(S718、図4(e))。
続いて、窪み部から盛り上がったフォトレジストの表面を加熱により溶かし、融解したフォトレジストの表面張力を利用したフォトレジストのリフローにより光出射面が半球形状の低屈折率レンズ31を形成する(S719、図4(f))。
以上のような工程で製造される水平共振器面発光レーザ素子101では、反射鏡18により反射されるレーザ光の光路上に、屈折率の大きいn型InP基板11と屈折率の小さい低屈折率レンズ31とが密接する平面の界面が設けられている。これにより、低屈折率レンズ31の光入射面でレーザ光の放射角が広がるため、素子厚を増加させることなく出射面におけるレーザ光のビーム径を拡大することができる。また、低屈折率レンズ31の光出射面が凸状に形成されているため、狭出射ビームを得ることができる。
本発明の効果を確認するために水平共振器面発光レーザ素子101から出射されるレーザ光を測定したところ、レーザ光のビーム拡がり角は2°であり、レーザ出射面から1.5mmの位置において直径165μmの円形なビームスポットが得られた。一方、比較用に作製した45°反射鏡と裏面半導体レンズとを備える従来構造の1.3μm帯水平共振器面発光レーザ素子を用いて同様の測定をしたところ、ビーム拡がり角は4°であり、レーザ出射面から1.5mmの位置において直径250μmのビームスポットが得られた。この結果、本発明により、従来よりも平行光線に近い狭出射ビームを出射する水平共振器面発光レーザ素子が得られることが分かった。
なお、本実施形態では、本発明をn型InP基板11上に形成された波長帯1.3μmのInGaAlAs量子井戸型レーザに適用する例を示したが、基板材料、活性層材料、発振波長などは、この例に限定されるものではない。たとえば本発明は、1.55μm帯InGaAsPレーザやその他の材料系からなる面発光レーザにも適用可能である。
また、低屈折レンズ31の材料は、フォトレジストに限らず、半導体基板の屈折率より小さく外気の屈折率より高いという条件を満たすものであれば他の媒質であってもよく、たとえば半導体基板に所定濃度の不純物をドープしたものであってもよい。
[実施形態2]
本発明の実施形態2に係る水平共振器面発光レーザ素子102を図6に基づいて説明する。図6(a)は基板裏面の窪み部からレンズを外したレーザ素子102の一部切欠斜視図であり、図6(b)は基板裏面にレンズを備えるレーザ素子102の一部切欠斜視図である。
本発明の実施形態2に係る水平共振器面発光レーザ素子102を図6に基づいて説明する。図6(a)は基板裏面の窪み部からレンズを外したレーザ素子102の一部切欠斜視図であり、図6(b)は基板裏面にレンズを備えるレーザ素子102の一部切欠斜視図である。
図6に示すように、水平共振器面発光レーザ素子102は、InGaAsP活性層14と、n型InP基板11の裏面に形成された窪み部の底面形状と、該窪み部の底面に密接する低屈折レンズ32の光入射面の形状と、を除いて、実施形態1に係る水平共振器面発光レーザ素子101と同様の構成を有する。また、水平共振器面発光レーザ素子102の製造工程は、水平共振器面発光レーザ素子101の製造工程と同様である。
水平共振器面発光レーザ素子102は、反射鏡18により反射されるレーザ光の光軸とn型InP基板11の裏面との交点を含む領域に、底面が凹面(たとえば凹状曲面)の窪み部と、該窪み部に密着保持される低屈折レンズ32と、を有する。
低屈折率レンズ32は、n型InP基板11の裏面に形成された窪み部の凹状底面に密接する凸面の光入射面と、凸面の光出射面と、を有するフォトレジストで形成されたレンズである。このフォトレジストの屈折率は、n型InP基板11の屈折率より小さく、外気の屈折率より高い。
かかる低屈折率レンズ32を設けることにより、図6(b)に波線で示すように、反射鏡18から入射するレーザ光21の放射角が低屈折率レンズ32の光入射面で広がるため、素子厚を増加させることなく光出射面におけるレーザ光21のビーム径を拡大することが可能となる。このため、平行光線に近い狭出射ビームを得ることができ、レーザ素子102と光ファイバまたは導波路との光結合効率を高めることができる。
なお、窪み部の底面に密接する低屈折率レンズ32の光入射面は凸面に限らず、平面であってもよいし、n型InP基板11の屈折率と低屈折率レンズ32の屈折率との関係に基づき反射鏡18から入射するレーザ光の放射角を拡大できるという条件さえ満たせば凹面であってもよい。また、低屈折レンズ32の材料は、フォトレジストに限らず、半導体基板の屈折率より小さく外気の屈折率より高いという条件を満たすものであれば他の媒質であってもよく、たとえば半導体基板に所定濃度の不純物をドープしたものであってもよい。
[実施形態3]
本発明の実施形態3に係る水平共振器面発光レーザ素子103を図7に基づいて説明する。図7(a)は基板裏面の窪み部からレンズを外したレーザ素子103の一部切欠斜視図であり、図7(b)は基板裏面にレンズを備えるレーザ素子103の一部切欠斜視図である。また、水平共振器面発光レーザ素子103の製造工程は、水平共振器面発光レーザ素子102の製造工程と同様である。
本発明の実施形態3に係る水平共振器面発光レーザ素子103を図7に基づいて説明する。図7(a)は基板裏面の窪み部からレンズを外したレーザ素子103の一部切欠斜視図であり、図7(b)は基板裏面にレンズを備えるレーザ素子103の一部切欠斜視図である。また、水平共振器面発光レーザ素子103の製造工程は、水平共振器面発光レーザ素子102の製造工程と同様である。
図7に示すように、水平共振器面発光レーザ素子103は、n型InP基板11の裏面に形成された窪み部の底面形状と、該窪み部に形成される高屈折レンズ33と、を除いて、実施形態2に係る水平共振器面発光レーザ素子102と同様の構成を有する。
水平共振器面発光レーザ素子103は、反射鏡18により反射されるレーザ光の光軸とn型InP基板11の裏面との交点を含む領域に、底面が凸面(たとえば凸状曲面)の窪み部と、該窪み部に密着保持される高屈折レンズ33と、を有する。
高屈折率レンズ33は、n型InP基板11の裏面に形成された窪み部の凸状底面に密接する凹面の光入射面と、凸面の光出射面と、を有する所定の媒質で形成されたレンズである。高屈折率レンズ33を構成する媒質の屈折率は、n型InP基板11の屈折率より高い(もちろん、外気の屈折率より高い)。
かかる高屈折率レンズ33を設けることにより、図7(b)に波線で示すように、反射鏡18から入射するレーザ光21の放射角が高屈折率レンズ33の光入射面で広がるため、素子厚を増加させることなく光出射面におけるレーザ光21のビーム径を拡大することが可能となる。このため、平行光線に近い狭出射ビームを得ることができ、レーザ素子103と光ファイバまたは導波路との光結合効率を高めることができる。
以上説明した実施形態1〜3によれば、半導体基板の屈折率とは異なる屈折率を有するレンズの光入射面でレーザ光の放射角が広がるため、素子厚を増加させることなく出射面におけるレーザ光のビーム径を拡大することができる。このため、平行光線に近いレーザ光を出射する面発光レーザ素子を実現することができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形実施が可能である。たとえば、実施形態1〜3では、DFBレーザを含む面発光レーザ素子に本発明を適用したが、本発明は、分布ブラッグ反射型(DBR:Distributed Bragg Reflector)レーザを含む面発光レーザ素子にも適用可能である。
11 n型InP基板、12 n電極、13 p電極、14 InGaAsP活性層、15 p型InPクラッド層、16 半絶縁性InP(層)、17 回折格子層、18 反射鏡、19 無反射コーティング、21 レーザ光、31,32 低屈折率レンズ、33 高屈折率レンズ、34 半導体レンズ、61 InGaAlAs活性層、611 n型InGaAlAs光閉じ込め層、612 p型InGaAlAs光閉じ込め層、613 ウェル層、614 バリア層、62 高反射コーティング膜、72 p型InGaAsコンタクト層、73 二酸化珪素膜、74,75 窒化珪素膜、101,102,103,104,105 水平共振器面発光レーザ素子(レーザ素子)。
Claims (10)
- 半導体基板と、
前記半導体基板の一方面上に形成された活性層と、
前記活性層で発生する光を該活性層の長手方向に共振させる共振器と、
前記共振器内で共振するレーザ光の少なくとも一部を前記半導体基板の他方面方向に反射する反射部と、
前記反射部により反射されるレーザ光を外部に出射するよう該レーザ光の光軸上に形成された光出射面が凸状のレンズと、
を含む面発光レーザ素子であって、
前記レンズは、前記半導体基板の屈折率とは異なる屈折率と、前記反射部から入射するレーザ光の放射角を広げるよう形成された光入射面と、を有する、
ことを特徴とする面発光レーザ素子。 - 請求項1に記載の面発光レーザ素子において、
前記レンズの屈折率は、前記半導体基板の屈折率より小さく、
前記レンズの光入射面は、凸面、平面、または凹面である、
ことを特徴とする面発光レーザ素子。 - 請求項1に記載の面発光レーザ素子において、
前記レンズの屈折率は、前記半導体基板の屈折率より大きく、
前記レンズの光入射面は、凹面である、
ことを特徴とする面発光レーザ素子。 - 請求項1から3のいずれかに記載の面発光レーザ素子において、
前記レンズは、レジスト材料で形成されている、
ことを特徴とする面発光レーザ素子。 - 請求項4に記載の面発光レーザ素子において、
前記半導体基板の他方面には、前記レジスト材料で充填される窪み部が形成されている、
ことを特徴とする面発光レーザ素子。 - 半導体基板の一方面上に活性層を形成する工程と、
前記活性層で発生する光を該活性層の長手方向に共振させる共振器を形成する工程と、
前記共振器内で共振するレーザ光の少なくとも一部を前記半導体基板の他方面方向に反射する反射部を形成する工程と、
前記反射部により反射されるレーザ光を外部に出射するよう該レーザ光の光軸上に、前記半導体基板の屈折率とは異なる屈折率と、前記反射部から入射するレーザ光の放射角を広げる光入射面と、凸状の光出射面と、を有するレンズを形成するレンズ形成工程と、
を含むことを特徴とする面発光レーザ素子の製造方法。 - 請求項6に記載の面発光レーザ素子の製造方法において、
前記レンズ形成工程は、前記レジスト材料で前記レンズを形成する、
ことを特徴とする面発光レーザ素子の製造方法。 - 請求項7に記載の面発光レーザ素子の製造方法において、
前記レンズ形成工程は、
前記反射部により反射されるレーザ光の光軸と前記半導体基板の他方面との交点を含む領域に窪み部を形成する工程と、
前記窪み部をレジスト材料で充填するレジスト充填工程と、
前記窪み部に充填されたレジスト材料の表面を加熱融解することにより、該レジスト材料の表面を凸状に形成する凸面形成工程と、
を含むことを特徴とする面発光レーザ素子の製造方法。 - 請求項8に記載の面発光レーザ素子の製造方法において、
前記レジスト充填工程は、
前記窪み部が埋没するよう前記半導体基板の他方面に前記レジスト材料を堆積する工程と、
前記窪み部以外の領域に堆積されたレジスト材料を除去する工程と、
を含むことを特徴とする面発光レーザ素子の製造方法。 - 請求項8または9に記載の面発光レーザ素子の製造方法において、
前記凸面形成工程では、前記融解したレジスト材料の表面張力を利用して、該レジスト材料の表面を凸状に形成する、
ことを特徴とする面発光レーザ素子の製造方法。
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- 2008-05-21 JP JP2008133688A patent/JP2009283639A/ja active Pending
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