JP2009001646A - バインダー樹脂、及び、無機微粒子分散ペースト組成物 - Google Patents
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Abstract
Description
背面ガラス基板にはプラズマ放電から電極を保護する目的で電極上に誘電体層が形成されている。更に誘電体層の表面に蛍光体層を形成するためのガラスリブが形成されている。また、蛍光体層の表面積を大きくするために、ガラスリブは、サンドブラスト法を用いて凹型ストライプ状に成形されている。
特許文献2は、背面ガラス基板表面に多官能(メタ)アクリレートを含有する誘電体層用ガラスペーストを塗工し、熱重合を用いて硬化させた誘電体前駆層にガラスリブ用ペーストを塗工し、1度の焼成で誘電体層及びガラスリブを製造する方法が開示されている。しかし、熱重合を用いて誘電体前駆層を短時間で完全に硬化させることは難しく、また、熱重合後に有機溶剤を揮発させることが難しいため、背面ガラス基板から誘電体層が剥がれたり、誘電体層に気泡が発生したりするという問題があった。
まず、ポリビニルブチラール樹脂やポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂等のバインダー樹脂を有機溶剤に溶解させ、可塑剤、分散剤等を添加した後、セラミック粉末を加える。次いで、ボールミル等により均一に混合し脱気を行って一定粘度を有するセラミックペースト組成物を得る。得られたセラミックペースト組成物をドクターブレード、リバースロールコーター等を用いて、離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルム又はステンレス鋼製プレート等の支持体面で流延成形する。次いで、加熱等により有機溶剤等を揮発させた後、支持体から剥離してセラミックグリーンシートを得る。
更に、「シートアタック」現象が発生するという課題を解決するために、例えば、特許文献4には、セラミックグリーンシートのバインダー樹脂が溶解しない有機溶剤を用いた導電ペーストが開示されているが、このような有機溶剤は導電ペーストの粘度をコントロールすることが困難であり、印刷に適していなかった。
以下に本発明を詳述する。
そこで、本発明者らは、更に鋭意検討の結果、窒素原子を含む特定の構造を中心としその周囲にポリマー鎖が伸びた(メタ)アクリレートポリマーをバインダー樹脂として用いた無機微粒子分散ペースト組成物は、耐シートアタック性に優れ、低温で焼成しても脱脂できるということを見出し、本発明を完成させるに至った。
ただし、R1、R2及びR3のうち少なくとも2つは(メタ)アクリレート構造を主骨格とするポリマーである。なお、R1、R2及びR3は同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、R1、R2が(メタ)アクリレート構造を主骨格とするポリマーの場合は、R3は水素又は任意の置換基である。R3はポリオキシアルキレンであることが好ましい。また、さらに他の位置に置換基を有していてもよい。
また、下記一般式(1)、下記一般式(2)又は下記一般式(3)で表される構造を有するバインダー樹脂のなかでも、耐シートアタック性に優れることから、下記一般式(2)で表される構造を有するバインダー樹脂が好ましい。
本発明においては、複数の(メタ)アクリルポリマー鎖を結ぶ中心位置に、上記一般式(1)〜(3)で表されるような窒素原子を有する構造を有する(メタ)アクリレートポリマーをバインダー樹脂とすることにより、無機微粒子分散ペースト組成物の耐シートアタック性を向上させることができる。本発明のバインダー樹脂は、複数の(メタ)アクリルポリマー鎖の末端の間に存在する上記一般式(1)〜(3)で表される窒素原子を有する構造が無機微粒子と相互作用するため、耐シートアタック性に優れると考えられる。つまり、相互作用により上記窒素原子を有する構造に接近した無機微粒子は(メタ)アクリレート構造を主骨格とするポリマーが間に介在して立体障害となり、周囲の無機微粒子と隔てられているため、無機微粒子の再凝集が起こりにくくなっていると考えられる。
更に、上記窒素原子を有する構造は、複数の(メタ)アクリレートポリマー鎖を結ぶ中心位置にのみ存在するため、耐シートアタック性に優れ、ポリマー鎖中に多数の窒素原子を含む官能基を持っていないことから、低温でも速やかに熱分解するため低温で焼成しても脱脂できるバインダー樹脂となる。
従って、本発明のバインダー樹脂を用いれば、耐シートアタック性に優れ、低温で焼成しても脱脂できる無機微粒子分散ペースト組成物を製造することができる。
以下、この例について詳述する。
なかでも、トリス(3−メルカプトプロパン酸)[2,4,6−トリオキソ−1,3,5−トリアジン−1,3,5(2H,4H,6H)−トリイル]トリ(2,1−エタンジイル)、1,3,5−トリス(3−メルカプトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、2,4,6−トリメルカプト−s−トリアジンを連鎖移動剤として用いることが好ましい。
更に、トリス(3−メルカプトプロパン酸)[2,4,6−トリオキソ−1,3,5−トリアジン−1,3,5(2H,4H,6H)−トリイル]トリ(2,1−エタンジイル)、又は1,3,5−トリス(3−メルカプトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオンを連鎖移動剤として用いて得られるバインダー樹脂は、耐シートアタック性に優れ、低温でも熱分解させることができる。
これらの(メタ)アクリレートモノマーは単独で用いてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
なお、ポリスチレン換算による重量平均分子量の測定は、カラムとして例えばSHOKO社製カラムLF−804を用いてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定を行うことで得ることができる。
なお、本発明のバインダー樹脂に上記した特定の窒素原子を有する構造が存在しているか否かは、例えば、13C−NMRにより確認することができる。
本発明のバインダー樹脂、有機溶剤、及び、無機微粒子を含有する無機微粒子分散ペースト組成物もまた、本発明の1つである。
本発明の無機微粒子分散ペースト組成物における上記バインダー樹脂の含有量としては特に限定されないが、好ましい下限が0.1重量%、好ましい上限が5重量%である。上記バインダー樹脂の含有量が、0.1〜5重量%の範囲内であると、耐シートアタック性に優れ、低温で焼成しても脱脂できる無機微粒子分散ペースト組成物を作製することができる。上記バインダー樹脂の含有量のより好ましい下限は0.5重量%、より好ましい上限は3重量%である。更に、上記バインダー樹脂の含有量のより好ましい下限は1重量%、より好ましい上限は2.5重量%である。
上記無機微粒子としては特に限定されず、例えば、銅、銀、ニッケル、パラジウム、アルミナ、ジルコニア、酸化チタン、チタン酸バリウム、窒化アルミナ、窒化ケイ素、窒化ホウ素や、ケイ酸塩ガラス、鉛ガラス、亜鉛ガラス、ビスマスガラス、CaO・Al2O3・SiO2系無機ガラス、MgO・Al2O3・SiO2系無機ガラス、LiO2・Al2O3・SiO2系無機ガラス、SnO・ZnO・P2O5系無機ガラス等のガラス粉末、BaMgAl10O17:Eu、Zn2SiO4:Mn、(Y、Gd)BO3:Eu等の蛍光体、種々のカーボンブラック、金属錯体等が挙げられる。なかでも、本発明のバインダー樹脂に対する分散性に優れ、本発明のバインダー樹脂と併用することにより、より高い耐シートアタック性が得られることから、ガラス粉末を用いることが好ましい。
上記有機溶剤としては特に限定されず、例えば、テルピネオール等のテルペンアルコール類、エチレングリコールモノアルキルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、エチレングリコールジアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジアルキルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールトリプロピルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアルキルエーテルアセテート、プロピレングリコールトリアルキルエーテルアセテート等が挙げられる。
特に、本発明の無機微粒子分散ペースト組成物を基板に塗工する際に、上記有機溶剤がほとんど揮発せず無機微粒子分散ペースト組成物の粘度上昇の恐れがないことから、テルピネオール、テルピネオールアセテート、ジヒドロテルピネオール、ジヒドロテルピネオールアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート等がより好ましい。
すなわち、本発明の無機微粒子分散ペースト組成物を用いることにより、焼成工程の回数を減らすことができるため、生産効率を向上させることができる。
また、薄膜化された積層セラミックコンデンサを作製する際には、内部電極となる導電ペーストに含有する有機溶剤によるシートアタック現象が発生しない。更に、導電ペーストの印刷精度を高めることが可能となり、歩留まりが大幅に向上する。
また、本発明のバインダー樹脂は、上述したPDPの誘電体層や積層セラミックコンデンサの作製以外にも、シートアタック現象を生じないという特徴を活かし、電極シート上に誘電体ペーストを塗工する工程、ガラスリブ前駆体上に蛍光体ペーストをスクリーン印刷する工程等を簡略化することができる。
また、本発明のバインダー樹脂は、ガラスリブ前駆体にインクジェット法で蛍光体ペーストを印刷したり、オフセット印刷で印刷した電極上に誘電体ペーストをスクリーン印刷したりする等、スクリーン印刷とは異なる印刷法であっても当然用いることができる。
攪拌機、冷却器、温度計、湯浴、及び、窒素ガス導入口を備えた2Lセパラブルフラスコに、メチルメタクリレート(MMA)100重量部、連鎖移動剤としてトリス(3−メルカプトプロパン酸)[2,4,6−トリオキソ−1,3,5−トリアジン−1,3,5(2H,4H,6H)−トリイル]トリ(2,1−エタンジイル)を0.7重量部、及び、有機溶剤として2,2,4―トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート(以下、トリメチルペンタンジオールモノイソブチレートとする)100重量部を混合し、モノマー混合液を得た。
このようにして得られたバインダー樹脂のトリメチルペンタンジオールモノイソブチレート溶液に対し、表1に記載した組成比になるようにトリメチルペンタンジオールモノイソブチレートを更に添加し、高速分散機で分散させてビヒクル組成物を作製した。
連鎖移動剤の種類を表1に示した連鎖移動剤に変え、連鎖移動剤の添加量を変えたこと以外は、実施例1と同様に重合を行い、バインダー樹脂を得た。バインダー樹脂の重量平均分子量は、表1のとおりであった。表1の組成比になるように各成分を調整し、実施例1と同様にしてビヒクル組成物、及び、ガラスペースト組成物を作製した。
表1の組成比になるように各成分を調整したこと以外は、実施例3と同様にしてバインダー樹脂、ビヒクル組成物、及び、ガラスペースト組成物を作製した。
用いるモノマーをイソブチルメタクリレート(IBMA)に変え、有機溶剤をジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートに変えたこと以外は、実施例1と同様にしてバインダー樹脂、ビヒクル組成物及びガラスペースト組成物を作製した。
用いるモノマーをイソブチルメタクリレート(IBMA)に変え、有機溶剤をジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートに変えたこと以外は、実施例2と同様にしてバインダー樹脂、ビヒクル組成物及びガラスペースト組成物を作製した。
用いるモノマーをイソブチルメタクリレート(IBMA)に変え、有機溶剤をジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートに変えたこと以外は、実施例3と同様にしてバインダー樹脂、ビヒクル組成物及びガラスペースト組成物を作製した。
用いるモノマーをイソブチルメタクリレート(IBMA)90重量部、ヒドロキシエチルメタクリレート(2−HEMA)10重量部の混合モノマーに変え、有機溶剤をテルピネオールに変えたこと以外は、実施例2と同様に重合を行い、バインダー樹脂を得た。バインダー樹脂の重量平均分子量は、表1のとおりであった。実施例2と同様にしてバインダー樹脂、ビヒクル組成物及びガラスペースト組成物を作製した。
用いるモノマーをシクロヘキシルメタクリレート100重量部に変え、有機溶剤をテルピネオールに変えたこと以外は、実施例2と同様に重合を行い、バインダー樹脂を得た。バインダー樹脂の重量平均分子量は、表1のとおりであった。実施例2と同様にしてバインダー樹脂、ビヒクル組成物及びガラスペースト組成物を作製した。
用いるモノマーをイソブチルメタクリレート50重量部、メチルメタクリレート40重量部、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(日本油脂社製「ブレンマーPP1000」)10重量部の混合モノマーに変え、有機溶剤をテルピネオールに変えたこと以外は、実施例2と同様に重合を行い、バインダー樹脂を得た。バインダー樹脂の重量平均分子量は、表1のとおりであった。実施例2と同様にしてバインダー樹脂、ビヒクル組成物及びガラスペースト組成物を作製した。
用いるモノマーをイソブチルメタクリレート100重量部に変え、連鎖移動剤をドデカンチオールに変え、連鎖移動剤の添加量を変えたこと以外は、実施例1と同様に重合を行い、バインダー樹脂を得た。バインダー樹脂の重量平均分子量は、表1のとおりであった。表1の組成比になるように各成分を調整し、実施例1と同様にしてバインダー樹脂、ビヒクル組成物及びガラスペースト組成物を作製した。
用いるモノマーをイソブチルメタクリレート100重量部に変え、連鎖移動剤をアミノエタンチールに変え、連鎖移動剤の添加量を変えたこと以外は、実施例1と同様に重合を行い、バインダー樹脂を得た。バインダー樹脂の重量平均分子量は、表1のとおりであった。表1の組成比になるように各成分を調整し、実施例1と同様にしてバインダー樹脂、ビヒクル組成物及びガラスペースト組成物を作製した。
用いるモノマーをイソブチルメタクリレート95重量部、メタクリルアミド5重量部の混合モノマーに変え、連鎖移動剤をドデカンチオールに変え、連鎖移動剤の添加量を変えたこと以外は、実施例1と同様に重合を行い、バインダー樹脂を得た。バインダー樹脂の重量平均分子量は、表1のとおりであった。表1の組成比になるように各成分を調整し、実施例1と同様にしてバインダー樹脂、ビヒクル組成物及びガラスペースト組成物を作製した。
実施例1〜10及び比較例1〜3で得られたバインダー樹脂、ビヒクル組成物及びガラスペースト組成物について以下の評価を行った。結果を表2に示した。
実施例1〜10、及び、比較例1〜3で作製したガラスペースト組成物を塗工厚さ10ミルに設定したアプリケーターを用いてガラス基板(2cm×4cm)上に塗工した。ガラスペースト組成物を塗工したガラス基板を、120℃で30分間加熱してガラスペースト組成物に含まれる有機溶剤を揮発させ、誘電体前駆層を形成した。
有機溶剤として、テルピネオール、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(BCA)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(BC)を用意した。スポイトを用いて有機溶剤を誘電体前駆層表面に数滴落とし、120℃で30分間加熱して有機溶剤を揮発させた。それぞれの有機溶剤が落とされた誘電体前駆層の表面状態を顕微鏡観察した。表面に穴、亀裂等が観察された誘電体前駆層を×、誘電体前駆層にバインダー樹脂の溶出(浮きだし)が観察された誘電体前駆層を△、変化がなかった誘電体前駆層を○とした。
実施例1〜10、及び、比較例1〜3で作製したバインダー樹脂を熱分解装置(TAインスツルメンツ社製「simultaneousSDT2960」)を用いて空気雰囲気下にて昇温速度10℃/minで600℃まで加熱した場合に、バインダー樹脂の初期重量の99.9重量%の樹脂が熱分解するために必要な焼成温度を測定した。焼成温度が400℃未満のバインダー樹脂を○、400℃以上のバインダー樹脂を×とした。
実施例1〜10、及び、比較例1〜3で作製したガラスペースト組成物を塗工厚み10ミルに設定したアプリケーターを用いてガラス基板(2cm×4cm)上に塗工した。ガラスペースト組成物を塗工したガラス基板を、120℃で30分間加熱してガラスペースト組成物に含まれる有機溶剤を揮発させ、誘電体前駆層を形成した。更に450℃で30分間焼成し、ガラスの表面状態の観察と、着色の確認を行った。
溶融したガラスの表面に光沢があるガラスを○、表面が曇り、凹凸が観察されたガラスを×とした。
実施例1〜10、及び、比較例1〜3で作製したガラスペースト組成物を25℃で1ヶ月間保管し、バインダー樹脂とガラス粉末との分離の有無を目視で観察した。バインダー樹脂とガラス粉末との分離が観察されなかったガラスペースト組成物を○、バインダー樹脂とガラス粉末との分離が観察されたガラスペースト組成物を×とした。
熱分解性評価では実施例1〜10、及び、比較例1〜2では、いずれも良好な分解性を示したが、比較例3では600℃で分解しない残渣成分がバインダー樹脂の初期重量の0.5重量%程度確認された。
ガラス焼結性評価では実施例1〜10、及び、比較例1〜2では誘電体層が透明で光沢があり、表面に凹凸等は見られなかったが、比較例3では残渣成分の影響でガラス流動性が不良となり、表面が曇り、凹凸が見られた。
また、貯蔵安定性評価では、実施例1〜10で作製したガラスペースト組成物は優れた貯蔵安定性を示した。
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