JP2009001545A - アルコール類の製造方法 - Google Patents
アルコール類の製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2009001545A JP2009001545A JP2008114075A JP2008114075A JP2009001545A JP 2009001545 A JP2009001545 A JP 2009001545A JP 2008114075 A JP2008114075 A JP 2008114075A JP 2008114075 A JP2008114075 A JP 2008114075A JP 2009001545 A JP2009001545 A JP 2009001545A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- group
- ester
- bis
- substituent
- optical purity
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Landscapes
- Pyrrole Compounds (AREA)
- Organic Low-Molecular-Weight Compounds And Preparation Thereof (AREA)
- Low-Molecular Organic Synthesis Reactions Using Catalysts (AREA)
Abstract
本発明は、比較的温和な条件下でエステル又はラクトンからアルコール類を高収率かつ高触媒効率で製造する方法を提供する。
【解決手段】
本発明は、次の一般式(1)
Ru(H)(η1−BH4)(LP 1)(LN 2) (1)
(式中、LP 1はビスホスフィン配位子を表し、LN 2はジアミン配位子を表す。)
で表される錯体を触媒としてエステル又はラクトンを水素還元することを特徴とするアルコール類の製造方法に関する。
【選択図】 なし
Description
このために、エステル又はラクトンを触媒的に水素化してアルコール類を製造する方法は、均一系触媒、不均一系触媒等で多くの提案がなされている。均一系触媒は不均一系触媒に比べて、多様な触媒設計ができるため、近年は均一系触媒による報告が多く見られる。例えば、特許文献1〜3及び非特許文献1、2には、ルテニウム化合物および有機ホスフィン化合物からなるルテニウム錯体を使用するエステル類の水素化反応が記載されている。また、特許文献4、5にはルテニウム化合物および二座又は四座のアミノホスフィンを配位子とするルテニウム錯体を用いた水素化反応が記載されている。特許文献1〜3および非特許文献1、2に記載の水素化反応はいずれも、収率および触媒効率をともに満たすものではなく、経済的に有利な方法と言いがたい。また特許文献2および非特許文献1に記載のエステルの水素化反応では含フッ素アルコールが溶媒として使用され、経済性、環境負荷の観点において課題を有する。特許文献4及び5に記載の方法は、水素化する際に多量の塩基が必要なため塩基に敏感なエステル類では官能基の脱離、重合やエステル交換等の副反応を併発するなどの問題点がある。
また、特許文献6には、ルテニウムヒドリド触媒を用いた均一系でのカルボニル基の水素化方法が開示されているが、この方法ではエステル基の水素化は困難であるとされていた(特許文献6の実施例8参照)。
すなわち、本発明は、ビスホスフィン化合物及びジアミン化合物を配位子とするルテニウムヒドリド錯体を触媒として、エステル又はラクトンを水素還元することによる対応するアルコール類の製造方法を提供するものである。
本発明をより詳細に説明すれば、本発明は、以下の[1]又は[2]に関するものである。
[1]一般式(1)
Ru(H)(η1−BH4)(LP 1)(LN 2) (1)
(式中、LP 1はビスホスフィン配位子を表し、LN 2はジアミン配位子を表す。)
で表される錯体を触媒としてエステル又はラクトンを水素還元することを特徴とするアルコール類の製造方法。
[2]エステル又はラクトンが光学活性体であり、得られるアルコール類の光学純度が、水素還元されるエステル又はラクトンの光学純度の90%以上の数値を保持していることを特徴とする前記[1]に記載の製造方法。
本発明において原料の水素化基質としてエステル又はラクトンが用いられる。水素化基質として用いられるエステルとしては、脂肪族カルボン酸エステル又は芳香族カルボン酸エステル等が挙げられる。該エステルはモノカルボン酸由来でもポリカルボン酸由来でも良い。また、これらのエステル類やラクトン類は、本発明の水素化方法において悪影響を及ぼさないいかなる置換基で置換されていてもよい。
本発明において水素化基質として用いられるエステル類としては、例えば、下記の脂肪族カルボン酸又は芳香族カルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、ヘキシルエステル、オクチルエステル等の炭素数1〜30、好ましくは1〜20、1〜15、1〜10、又は1〜5の直鎖状又は分岐状のアルキル基からなるアルキルエステル;フェニルエステル、ビフェニルエステル、ナフチルエステル等の炭素数6〜40、好ましくは6〜30、6〜20、又は6〜12の単環式、多環式、又は縮合環式のアリール基からなるアリールエステル;ベンジルエステル、1−フェネチルエステル等の炭素数7〜40、好ましくは炭素数7〜20、炭素数7〜15のアラルキル基(炭素環式芳香脂肪族基)からなるアラルキルエステル等が挙げられる。
好ましいエステル類としては、メチルエステル、エチルエステルなどの炭素数1〜10、好ましくは1〜5のアルキルエステルが挙げられる。より好ましいエステル類としてはメチルエステルが挙げられる。
また、これら脂肪族カルボン酸は置換基で置換されていてもよい。置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、保護されていてもよいアミノ基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、保護されていてもよい水酸基等が挙げられる。
上記脂肪族カルボン酸の置換基としてのアルキル基としては、直鎖又は分岐あるいは環状でもよい基が挙げられ、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
さらに、脂肪族カルボン酸の置換基としてのアミノ基としては、アミノ基;N−メチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、N,N−ジイソプロピルアミノ基、N−シクロヘキシルアミノ基等のモノ又はジアルキルアミノ基;N−フェニルアミノ基、N,N−ジフェニルアミノ基、N−ナフチルアミノ基、N−ナフチル−N−フェニルアミノ基等のモノ又はジアリールアミノ基;N−ベンジルアミノ基、N,N−ジベンジルアミノ基等のモノ又はジアラルキルアミノ基;ホルミルアミノ基、アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ペンタノイルアミノ基、ヘキサノイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等のアシルアミノ基;メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、n−プロポキシカルボニルアミノ基、n−ブトキシカルボニルアミノ基、tert−ブトキシカルボニルアミノ基、ペンチルオキシカルボニルアミノ基、ヘキシルオキシカルボニルアミノ基等のアルコキシカルボニルアミノ基;フェニルオキシカルボニルアミノ基等のアリールオキシカルボニルアミノ基;ベンジルオキシカルボニルアミノ基等のアラルキルオキシカルボニルアミノ基等が挙げられる。
また、脂肪族カルボン酸の置換基としてのアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基等が挙げられ、これらアリール基は前記したようなアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アミノ基等で置換されていてもよい。
さらに、脂肪族カルボン酸の置換基としてのヘテロアリール基としては例えば炭素数2〜15で、異種原子として少なくとも1個、好ましくは1〜3個の窒素原子、酸素原子、硫黄原子等の異種原子を含んでいる、5〜8員、好ましくは5又は6員の単環式ヘテロアリール基、多環式又は縮合環式のヘテロアリール基が挙げられ、具体的にはフリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリニル基、フタラジニル基、キナゾリニル基、ナフチリジニル基、シンノリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基等が挙げられる。
また、脂肪族カルボン酸の置換基としてのアラルキル基としては、ベンジル基、1−フェネチル基等が挙げられる。
脂肪族カルボン酸の置換基としての保護されていてもよい水酸基としては、無保護の水酸基であってもよいが、例えば、トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基などのトリアルキルシリル基などの公知の水酸基の保護基で保護されていてもよい水酸基などが挙げられる。
脂肪酸カルボン酸の置換基としての保護されていてもよいアミノ基としては、無保護のアミノ基であってもよいが、例えば、ベンジルオキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基などの公知のアミノ基の保護基で保護されていてもよいアミノ基などが挙げられる。
また、これらの芳香族カルボン酸は前記したようなアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、保護されていてもよいアミノ基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、保護されていてもよい水酸基等で置換されていてもよい。
一般式(1):
Ru(H)(η1−BH4)(LP 1)(LN 2) (1)
(式中、LP 1はビスホスフィン配位子を表し、LN 2はジアミン配位子を表す。)
で表されるルテニウム錯体について説明する。
まず、本発明に用いられるビスホスフィン配位子について説明する。
一般式(1)におけるLP 1で表されるビスホスフィン配位子としては、例えば下記一般式(2)、
一般式(2):
R1R2P−Q1−PR3R4 (2)
(式中、R1、R2、R3及びR4は同一又は異なっていてもよく、アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基及び置換基を有していてもよいシクロアルキル基を表し、R1とR2とで及び/又はR3とR4とで環を形成してもよい。Q1は、置換基を有していてもよいアルキレン鎖、置換基を有していてもよいシクロアルキレン基、置換基を有していてもよい二価のアリーレン基、又は置換基を有していてもよいフェロセンジイル基を表す。)
で表されるものが挙げられる。
上記式中、R1、R2、R3及びR4で表される、置換基を有していてもよいアリール基におけるアリール基としては、炭素数6〜36、好ましくは炭素数6〜18、炭素数6〜14の単環式、多環式、又は縮合環式のアリール基が挙げられ、具体的には、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニル基等が挙げられる。これらアリール基の置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、複素環基等が挙げられる。
該アリール基の置換基としてのアルキル基としては、直鎖状又は分岐状の、例えば炭素数1〜15、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基が挙げられ、具体例としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基及びt−ブチル基等が挙げられる。
また、該アリール基の置換基としてのアルコキシ基としては、直鎖状又は分岐状の、例えば炭素数1〜6のアルコキシ基が挙げられ、具体的にはメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、イソブトキシ基及びt−ブトキシ基等が挙げられる。
前記したアリール基はさらに他のアリール基で置換されていてもよく、当該置換基としてのアリール基としては、例えば炭素数6〜14のアリール基が挙げられ、具体的にはフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニル基等が挙げられる。
前記したアリール基の置換基としての複素環基としては、脂肪族複素環基及び芳香族複素環基が挙げられ、脂肪族複素環基としては、例えば炭素数2〜14で、異種原子として少なくとも1個、好ましくは1〜3個の例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を含んでいる、5〜8員、好ましくは5又は6員の単環、多環又は縮合環の脂肪族複素環基が挙げられる。脂肪族複素環基の具体例としては、例えば、2−オキソピロリジル基、ピペリジノ基、ピペラジニル基、モルホリノ基、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロチエニル基等が挙げられる。また、芳香族複素環基としては、例えば炭素数2〜15で、ヘテロ原子として少なくとも1個、好ましくは1〜3個の窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を含んでいる、5〜8員、好ましくは5又は6員の単環式、多環式又は縮合環式のヘテロアリール基が挙げられ、具体的にはフリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリル基、フタラジニル基、キナゾリニル基、ナフチリジニル基、シンノリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基等が挙げられる。
また、R1とR2及び/又はR3とR4とで形成してもよい環としては、R1、R2、R3及びR4が結合しているリン原子を含めた環として、炭素数3〜10、好ましくは3〜5のアルキレン基で形成される4員環、5員環又は6員環の環が挙げられる。具体的な環としては、ホスフェタン環、ホスホラン環、ホスファン環、2,4−ジメチルホスフェタン環、2,4−ジエチルホスフェタン環、2,5−ジメチルホスホラン環、2,5−ジエチルホスホラン環、2,6−ジメチルホスファン環、2,6−ジエチルホスファン環等が挙げられる。環を形成する前記したアルキレン基は、前記してきたような各種の置換基で置換されていてもよい。
Q1で表される、置換基を有していても良いシクロアルキレン基のシクロアルキレン鎖としては、炭素数3〜15、好ましくは炭素数3〜10、4〜6の単環式、多環式又は縮合環式のシクロアルキル基からなる2価の基が挙げられ、例えば、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基等が挙げられる。これらシクロアルキレン基の置換基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
Q1で表される、置換基を有していてもよい二価のアリーレン基の二価のアリーレン基としては、炭素数6〜36、好ましくは炭素数6〜18、炭素数6〜12の単環式、多環式、又は縮合環式のアリール基からなる2価の基が挙げられ、例えば、フェニレン基、ビフェニルジイル基、ビナフタレンジイル基等が挙げられる。フェニレン基としては、o又はm−フェニレン基が挙げられ、これらのアリーレン基における置換基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基及びt−ブチル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、イソブトキシ基及びt−ブトキシ基等のアルコキシ基;水酸基;アミノ基又は置換アミノ基等の置換基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
ビフェニルジイル基及びビナフタレンジイル基としては、1,1’−ビアリール−2,2’−ジイル型の構造を有するものが好ましく、これらのビフェニルジイル基及びビナフタレンジイル基における置換基としては、前記したようなアルキル基、アルコキシ基、例えばメチレンジオキシ基、エチレンジオキシ基、トリメチレンジオキシ基等のアルキレンジオキシ基、水酸基、アミノ基、置換アミノ基等の置換基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、Q1で表される、置換基を有していてもよいフェロセンジイル基の置換基としては、前記したようなアルキル基、アルコキシ基、アルキレンジオキシ基、水酸基、アミノ基、置換アミノ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
またこの他にも、以下に示すビスホスフィン化合物等も挙げられる。
もちろん、本発明に用いることのできるビスホスフィン配位子はこれらに限定されるものではない。
一般式(1)におけるLN 2で表されるジアミン配位子としては、下記一般式(3)、
R5R6N−Q2−NR7R8 (3)
(式中、R5、R6、R7及びR8は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルカン又はアレーンスルホニル基を表し、Q2は置換基を有していてもよいアルキレン鎖、置換基を有していてもよいシクロアルキレン基又は置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。)
で表されるものが挙げられる。
一般式(3)における置換基を有していてもよいアルキル基としては、例えば前記したR1、R2、R3及びR4の説明で例示されたような基が挙げられる。
一般式(3)における置換基を有していてもよいアリール基のアリール基としては、例えば炭素数6〜14のアリール基が挙げられ、具体的にはフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニル基等が挙げられる。該アリール基の置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、複素環基、モノ又はジ置換アミノ基等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
また、一般式(3)における置換基を有していてもよいアルカン又はアレーンスルホニル基としては、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜15、炭素数1〜10の直鎖状若しくは分枝状のアルカン、又は炭素数6〜36、好ましくは炭素数6〜18、炭素数6〜12の単環式、多環式、若しくは縮合環式のアレーンに結合したスルホニル基が挙げられ、例えば、メタンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基、p−トルエンスルホニル基等が挙げられる。
一般式(3)のQ2における置換基を有していてもよいアルキレン鎖、及び置換基を有していてもよいシクロアルキレン基としては、前記してきたQ1と同様のものが挙げられる。
もちろん、本発明に用いることのできるジアミン配位子はこれらに限定されるものではない。
出発原料であるルテニウム化合物とビスホスフィン配位子との反応は、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレンなどの脂肪族又は芳香族炭化水素溶媒、塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコールなどのアルコール系溶媒、アセトニトリル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシドなどの有機溶媒中で、反応温度−100℃〜200℃で行うことにより、ルテニウム−ビスホスフィン錯体を得ることができる。
得られたルテニウム−ビスホスフィン錯体とジアミン配位子との反応は、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレンなどの脂肪族又は芳香族炭化水素溶媒、塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコールなどのアルコール系溶媒、アセトニトリル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシドなどの有機溶媒中で、反応温度−100℃〜200℃で行うことにより、ルテニウム−ビスホスフィン−ジアミン錯体を得ることができる。
本発明の方法において、水素還元を行う際の反応温度は、10℃〜150℃、好ましくは70℃〜120℃である。反応温度が低すぎると未反応の原料が多く残存する場合があり、また高すぎると、原料、触媒等の分解が起こる場合があり、好ましくない。
本発明において、水素還元を行う際の水素の圧力は、0.5MPa〜10MPa、好ましくは1〜6MPa、さらに好ましくは3MPa〜6MPaである。
また反応時間は8時間〜16時間程度で十分に高い原料転化率を得ることができる。
反応終了後は、抽出、濾過、結晶化、蒸留、各種クロマトグラフィー等、通常用いられる精製法を単独又は適宜組み合わせることにより目的のアルコール類を得ることができる。
なお、転化率、選択率、光学純度の測定はガスクロマトグラフィー(GC)及び液体クロマトグラフィー(LC)で行った。用いた装置は次のとおりである。
転化率・選択率
GC: GC353B(GLサイエンス社製)
カラム:TC−WAX 0.25mm(I.D.)×30m(length),
0.250μm(thickness) (GLサイエンス社製)
LC: SERIES 1100(HEWLETT PACKARD社製)
光学純度
GC: 5890 SERIES II plus(HEWLETT PACKARD社製)
1H−NMRスペクトル及び31P−NMRスペクトルの測定はバリアンテクノロジージャパンリミテッド製Mercury plus 300 4N 型(1H−NMR 300MHz,31P−NMR 121MHz)を用いて実施した。
なお、今回水素化原料として用いたα−アミノ酸メチルエステル類は、市販のアミノ酸メチルエステル塩酸塩から、テオドーラ W.グリーン、ピーター G.M.ウッツ、「プロテクティング グループス イン オーガニック シンセシス 第二版」ジョン ウイリー アンド サンズ、1991(Theodora W.Greene,Peter G.M.Wuts,PROTECTING GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS Second Eddition,JOHN WILEY & SONS,INC.1991)に記載されている手法を参考に合成した。なお、L−アラニンメチルエステル塩酸塩((S)−2−アミノプロピオン酸メチル塩酸塩)はAldrich社から、L−プロリンメチルエステル塩酸塩((S)−ピロリジン−2−カルボン酸メチルエステル塩酸塩)は和光純薬から購入したものを使用した。
100mLのシュレンク型反応管に1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン(dppp)(680mg、1.65mmol)と、[Ru(benzene)Cl2]2(408.2mg、0.816mmol)を量り取り、容器内を窒素置換した。窒素雰囲気下、DMF(30mL)を加えた後、120℃のオイルバス中で4.0時間加熱した後、オイルバスを60℃まで冷却して、減圧下(1mmHg)でDMFを留去した。ジクロロメタン(25mL)と1,2−ジフェニルエチレンジアミン(dpen)(350mg、1.65mmol)を加えた後、40℃のオイルバス中で2.0時間加熱した。減圧下(1mmHg)でジクロロメタンを留去して、NaBH4(1.56g、41.2mmol)、トルエン(15mL)、エタノール(15mL)を加えた。65℃のオイルバスで5分加熱した後、室温で30分撹拌した。
反応溶液をセライト濾過した濾液から溶媒を減圧下(1mmHg)で留去した。得られた残渣にトルエン(50mL)を加えて40℃のオイルバスで加熱して30分撹拌した。反応液をセライト濾過した濾液から溶媒を減圧下(1mmHg)で留去して、得られた粉体を減圧下(1mmHg)で乾燥、1.1gのRuH(η1−BH4)(dppp)(dpen)(錯体1)を得た。(収率90%)
1H−NMR (C6D6):δ(ppm)
7.84(m, 3H), 7.31(m, 3H), 6.94(m, 3H), 6.86-6.35(m, 19H), 6.23(m, 2H),
4.34(m, 1H), 4.04(m, 1H), 3.67(m, 1H), 3.37(m, 1H), 2.49(m, 2H),
2.27(m, 1H), 2.04(m, 3H), 1.47(m, 1H), 1.14(m, 1H), -0.81(br, 4H),
-15.26(m, 1H).
31P−NMR (C6D6):δ(ppm)
57.78, 57.66.
合成例1における1,2−ジフェニルエチレンジアミン(dpen)に代えて、エチレンジアミン(en)を用いた以外は合成例1と同様にして、RuH(η1−BH4)(dppp)(en)(錯体2)を得た。
合成例1における1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン(dppp)に代えて、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン(dppb)を用いた以外は合成例1と同様にして、RuH(η1−BH4)(dppb)(dpen)(錯体3)を得た。
転化率・選択率分析条件: 注入温度 250℃, 検出温度 250℃
80℃(1分)−10℃/分−250℃(12分)
光学純度分析条件: 注入温度 250℃, 検出温度 250℃
100℃ 一定(カラム:CHIRASIL−DEX CB)
転化率・選択率分析条件: 注入温度 250℃, 検出温度 250℃
60℃(1分)−10℃/分−250℃(10分)
光学純度分析条件: 注入温度 250℃, 検出温度 250℃
100℃ 一定(カラム:CHIRASIL−DEX CB)
転化率・選択率分析条件: 注入温度 250℃, 検出温度 250℃
80℃(1分)−10℃/分−250℃(12分)
光学純度分析条件: カラム CHIRALCEL OJ−H、
溶離液 ヘキサン/2−プロパノール=90/10
流速 0.5mL/分、 カラム温度 30℃、
UV 254nm
転化率は96.7%で、選択率は94.7%であり、水素化による光学純度の低下は見られなかった。
転化率は100%で、選択率は98.8%であり、水素化による光学純度の低下は見られなかった。
光学純度分析条件: カラム:CHIRALPAK AD 4.6mm(I.D.)×250mm(length),10μm(P.S.) (ダイセル化学工業社製)
溶離液 ヘキサン/IPA=90/10、流量 1.0ml/min、カラム温度 40℃、UV 254nm
光学純度分析条件: カラム:CHIRALCEL OD 4.6mm(I.D.)×250mm(length),10μm(P.S.) (ダイセル化学工業社製)
溶離液 ヘキサン/IPA=95/5、流量 1.0ml/min、カラム温度 40℃、UV 254nm
光学純度分析条件: カラム:β―DEX 225 0.25mm(I.D.)×30
m(length),0.250μm(thickness) (SUPELCO社製)
注入温度 250℃, 検出温度 250℃ 170℃ 一定
転化率・選択率分析条件:カラム:Inertsil ODS−3 4.6mm(I.D.)×250mm(length),5μm(P.S.) (GLサイエンス社製)
溶離液 アセトニトリル/メタノール/水=30/30/40 〜 70/0/30、流量 0.5ml/min、カラム温度 30℃、UV 254nm
光学純度分析条件: カラム:CHIRALCEL OJ−H 4.6mm(I.D.)×250mm(length),5μm(P.S.) (ダイセル化学工業社製)
溶離液 ヘキサン/エタノール=90/10、流量 1.0ml/min、カラム温度 40℃、UV 254nm
光学純度分析条件: カラム:CHIRALCEL OD−H 4.6mm(I.D.)×250mm(length),5μm(P.S.) (ダイセル化学工業社製)
溶離液 ヘキサン/IPA=99/1、流量 1.0ml/min、カラム温度 40℃、UV 254nm
Claims (2)
- 次の一般式(1)
Ru(H)(η1−BH4)(LP 1)(LN 2) (1)
(式中、LP 1はビスホスフィン配位子を表し、LN 2はジアミン配位子を表す。)
で表されるルテニウム錯体を触媒として、エステル又はラクトンを水素還元することによる対応するアルコール類の製造方法。 - エステル又はラクトンが光学活性体であり、得られるアルコール類の光学純度が、水素還元されるエステル又はラクトンの光学純度の90%以上の数値を保持していることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2008114075A JP2009001545A (ja) | 2007-05-22 | 2008-04-24 | アルコール類の製造方法 |
Applications Claiming Priority (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2007134905 | 2007-05-22 | ||
JP2008114075A JP2009001545A (ja) | 2007-05-22 | 2008-04-24 | アルコール類の製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2009001545A true JP2009001545A (ja) | 2009-01-08 |
Family
ID=40318346
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2008114075A Pending JP2009001545A (ja) | 2007-05-22 | 2008-04-24 | アルコール類の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2009001545A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2013065189A1 (ja) * | 2011-11-04 | 2013-05-10 | 高砂香料工業株式会社 | 光学純度低下防止方法 |
Citations (7)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPS63185937A (ja) * | 1987-01-26 | 1988-08-01 | Nippon Oil Co Ltd | 光学活性2−メチル−1,4−ブタンジオ−ルの製造方法 |
JP2003104993A (ja) * | 2001-09-28 | 2003-04-09 | Nagoya Industrial Science Research Inst | ルテニウムヒドリド錯体、アルコール化合物の製造方法およびラセミ体カルボニル化合物の分割方法 |
JP2004522732A (ja) * | 2001-01-16 | 2004-07-29 | セールズ テクノロジーズ, アクチェンゲゼルシャフト | 不斉ルテニウム水素化触媒および方法 |
JP2004238306A (ja) * | 2003-02-04 | 2004-08-26 | Nagoya Industrial Science Research Inst | ルテニウムヒドリド錯体、アルコール化合物の製造方法およびラセミ体カルボニル化合物の分割方法 |
WO2005016943A1 (ja) * | 2003-08-13 | 2005-02-24 | Takasago International Corporation | 新規な遷移金属錯体、及び該錯体を用いた光学活性アルコールの製造法 |
WO2006106484A1 (en) * | 2005-04-05 | 2006-10-12 | Firmenich Sa | Hydrogenation of esters with ru/tetradentate ligands complexes |
JP2008260758A (ja) * | 2007-03-16 | 2008-10-30 | Takasago Internatl Corp | アルコール類の製造方法 |
-
2008
- 2008-04-24 JP JP2008114075A patent/JP2009001545A/ja active Pending
Patent Citations (8)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPS63185937A (ja) * | 1987-01-26 | 1988-08-01 | Nippon Oil Co Ltd | 光学活性2−メチル−1,4−ブタンジオ−ルの製造方法 |
JP2004522732A (ja) * | 2001-01-16 | 2004-07-29 | セールズ テクノロジーズ, アクチェンゲゼルシャフト | 不斉ルテニウム水素化触媒および方法 |
JP2003104993A (ja) * | 2001-09-28 | 2003-04-09 | Nagoya Industrial Science Research Inst | ルテニウムヒドリド錯体、アルコール化合物の製造方法およびラセミ体カルボニル化合物の分割方法 |
JP2004238306A (ja) * | 2003-02-04 | 2004-08-26 | Nagoya Industrial Science Research Inst | ルテニウムヒドリド錯体、アルコール化合物の製造方法およびラセミ体カルボニル化合物の分割方法 |
WO2005016943A1 (ja) * | 2003-08-13 | 2005-02-24 | Takasago International Corporation | 新規な遷移金属錯体、及び該錯体を用いた光学活性アルコールの製造法 |
WO2006106484A1 (en) * | 2005-04-05 | 2006-10-12 | Firmenich Sa | Hydrogenation of esters with ru/tetradentate ligands complexes |
JP2008537946A (ja) * | 2005-04-05 | 2008-10-02 | フイルメニツヒ ソシエテ アノニム | Ru/四座配位子錯体を用いたエステルの水素化 |
JP2008260758A (ja) * | 2007-03-16 | 2008-10-30 | Takasago Internatl Corp | アルコール類の製造方法 |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2013065189A1 (ja) * | 2011-11-04 | 2013-05-10 | 高砂香料工業株式会社 | 光学純度低下防止方法 |
US9896402B2 (en) | 2011-11-04 | 2018-02-20 | Takasago International Corporation | Method for preventing decrease in optical purity |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP5671456B2 (ja) | 3座配位子を有する新規ルテニウムカルボニル錯体、並びにその製造法及び用途 | |
JP5477557B2 (ja) | エステル又はラクトン類の水素還元によるアルコール類の製造方法 | |
US7569735B2 (en) | Method for producing alcohols | |
Berthod et al. | New perfluoroalkylated BINAP usable as a ligand in homogeneous and supercritical carbon dioxide asymmetric hydrogenation | |
JP5006059B2 (ja) | キラルなイリジウムアクア錯体およびそれを用いた光学活性ヒドロキシ化合物の製造方法 | |
JP4718452B2 (ja) | 光学活性遷移金属−ジアミン錯体及びこれを用いた光学活性アルコール類の製造方法 | |
JP5491854B2 (ja) | 液相でラクトンおよびカルボン酸エステルを水素化するアルコール類の製造方法 | |
US7473793B2 (en) | Transition metal complex and process for producing optically active alcohol | |
JP5001861B2 (ja) | ケトンの不斉ヒドロシリル化法 | |
JP5271503B2 (ja) | 有機ホウ素化合物の製造方法 | |
JP5283931B2 (ja) | アルコール類の製造方法 | |
JP4705031B2 (ja) | アミノ酸誘導体を製造するためのケト酸誘導体の還元的不斉アミノ化 | |
JP2009001545A (ja) | アルコール類の製造方法 | |
JPWO2010061909A1 (ja) | 不斉水素化触媒 | |
JP4425654B2 (ja) | 水溶性遷移金属−ジアミン錯体、及びその製造方法、並びにその用途 | |
JP6291179B2 (ja) | 光学活性2級アルコールの製造方法 | |
DE102008033165A1 (de) | Verfahren zum Herstellen eines optisch aktiven ß-Hydroxycarbonsäurederivats | |
Dolhem et al. | P-Chirogenic α-carboxyphosphine boranes as effective pre-ligands in palladium-catalyzed asymmetric reactions | |
JP2009096752A (ja) | アルコール類の製造方法 | |
JP4446465B2 (ja) | 光学活性β−アミノ酸誘導体の製造方法 | |
CN114426564A (zh) | 一类手性二茂铁膦-1,2-二苯基乙二胺配体及其制备方法和应用 | |
JP5087395B2 (ja) | スルホナート触媒及びそれを利用したアルコール化合物の製法 | |
JP2005298411A (ja) | 光学活性アルコールの製造方法 | |
JP2011140469A (ja) | 新規な配位子、遷移金属錯体、及び該錯体を触媒として用いる光学活性アルコールの製造法 | |
JPH10251284A (ja) | アミノ酸を配位子とする新規ルテニウム錯体およびそれを用いた不斉水素化方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20110208 |
|
A977 | Report on retrieval |
Effective date: 20120709 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Effective date: 20120814 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 |
|
A521 | Written amendment |
Effective date: 20121011 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20130219 |