「例示的な」という用語は本明細書では「実例、事例、例示として出されている」ことを意味して使用されている。「例示的な」として本明細書で説明されるどの実施形態または設計物でも他の実施形態又は設計物よりも好ましいまたは有利であると必ずしも解釈すべきではない。
本明細書で説明されるAMCモデムは種々の無線通信システム、例えば、符号分割多元接続(CDMA)システム、時分割多元接続(TDMA)システム、周波数分割多元接続(FDMA)システム、直交周波数分割多元接続(OFDMA)システム、などに使用することができる。CDMAシステムは1種または複数種の無線接続技術、例えば、cdma2000、広帯域−CDMA(W−CDMA)などを実装することができる。cdma2000はIS−95、IS−2000およびIS−856スタンダードをカバーする。TDMAシステムは広域移動体通信システム(GSM)を実装することができる。GSMおよびW−CDMAについては「第3世代パートナーシッププロジェクト」(3GPP)と呼ばれるコンソーシアム発行の文献に記述されている。cdma2000については「第3世代パートナーシッププロジェクト2」(3GPP2)と呼ばれるコンソーシアム発行の文献に記述されている。3GPPおよび3GPP2発行の文献は公に入手できる。明確にするために、AMCモデムについては、単純に「CDMA」と呼ばれるcdma2000に対し以下に具体的に説明する。
図1は多元基地局および多元無線装置を有するCDMAシステム100を示す。簡単にするために、2カ所だけの基地局110aおよび110bならびに2台の無線装置120aおよび120bを図1に示す。基地局は無線装置と交信する一般には固定の局で、ノードB(Node B)、接続点またはいくつかの他の専門用語で呼ぶこともできる。それぞれの基地局110は特定の地理的範囲102に対し通信可能サービスエリアを提供する。
無線装置は固定又は移動ができ、移動局、ユーザ機器、端末器、加入者ユニットまたはいくつかの他の専門用語で呼ばれる。それぞれの無線装置はどんな時でも順方向リンクおよび/または逆方向リンクで0局,1局または複数の基地局と交信ができる。順方向リンク(またはダウンリンク)は基地局から無線装置までの通信リンクを指し、逆方向リンク(またはアップリンク)は無線装置から前記基地局までの通信リンクを指す。無線装置が通信する基地局はサービス基地局と呼ばれる。
また、図1は、無線装置120に対する干渉として動作する信号を送信するCDMAシステム100の一部ではない干渉器130を示す。干渉器130からの干渉信号は基地局110によって送信される所望の信号群に周波数が近接していることがある。干渉信号は高い電力レベルで無線装置120に受信されることもある。
無線装置は基地局のサービスエリア中に分散することができる。さらに無線装置は妨害装置に対し様々の距離をとって位置していてもよい。図1に示す例では、無線装置120aは基地局110aの近くにあり、干渉器130からは遠い。見通し線方向の送信では送信者と受信者との間の経路損失は送信者と前記受信者との間の距離の4乗の法則におよそ比例する、即ち 経路損失∝(距離)4である。従って無線装置120aは基地局110aから所望の信号を高電力レベルで、干渉器130からの干渉信号を比較的低電力レベルで受信することができる。これに対し、無線装置120bは基地局110bのサービスエリア境界に近く、干渉器130の近くに位置している。このため無線装置120bは基地局110bから所望の信号を低電力レベルで、干渉器130から干渉信号を高電力レベルで受信してもよい。
図2Aはcdma2000に適用可能なIS−98Dにより定められた単発振音(single tone)テストをしたときの基地局からのCDMA信号のプロットを示す。CDMA信号は帯域幅が1.23MHzで、図2Aに示すように0HzすなわちDCに中心があることを示す。単発振音テストでは、CDMA信号の中心周波数から+900Hzに単発信音がありCDMA信号レベルよりも振幅が71デシベル(dB)高い。単発振音は「ジャマー」(jammer)としばしば呼ばれる大きな振幅の干渉信号の典型である。単発振音テストでは、CDMA信号は−101dBmであり、単発振音は−30dBmである。IS−98Dはまた2発振音テストを指定しており、このテストにおいてはCDMA信号の中心周波数から+900KHzおよび+1700KHzに2種の発振音がありCDMA信号レベルよりも振幅が58デシベル高い。
単発振音および2発信音テストは無線装置における受信経路の前記線形性とダイナミックレンジのテストを意図している。これらのテストに適合するために、無線装置に於けるアナログおよびディジタルフィルタは多くの場合、1個のCDMA信号に対する帯域幅を有するように、大きな振幅のジャマーを充分にはねつけるための高い選択性(または鋭いロールオフ)を有するように設計される。受信経路の回路ブロックは、さらに受信CDMA信号が感度を要求する場合でも所望の性能を与えるよう設計される。感度とは、無線装置が正確に復調するために必要な最低のCDMA信号レベルを指す。指定された周波数オフセットで必要とされるリジェクション(rejection)の量はジャマー対信号の比率により決定されるが、それはジャマーレベル対所望信号レベルの比率であり、ΔPで示される。IS−98D単発振音テストでは、ジャマー対信号の比率は900KHzでΔPmax=71dBである。
CDMAシステムに於けるそれぞれの基地局は、多重CDMA信号群をほぼ同電力レベルで、お互いに隣接するかまたは並んだ多重CDMAチャネル上で送信することができる。CDMAチャネルは1個のCDMA信号に対しては周波数チャネルであり、ほぼ1.23MHz幅である。多重CDMA信号群は音声、パケットデータ、メディア送信、テキストメッセージ、などの様々なサービス用とすることができる。従来は無線装置は、1個のCDMAチャネル上に1個のCDMA信号を選定し、所望のサービスを得るために選択されたCDMA信号を処理する。
無線装置が同時に多数のCDMA信号を受信すること、例えば音声、パケットデータなどの異なるサービス類を同時に得ることが望ましいかもしれない。拡張帯域幅を有するアナログフィルタが多重CDMA信号群を受信するために使用されてもよい。通過帯域に対する遷移帯域の前記比率が、アナログフィルタに対するロールオフの必要性を決める。遷移帯域が固定され(最悪の状況の動作状態で高い振幅のジャマー群を減らすために)、かつ通過帯域がより多くのCDMA信号を通過させるために増やされる場合は、通過帯域に対する遷移帯域の比率は減少する。大きい振幅のジャマー群を充分に減らすには非常に鋭いロールオフを有するアナログフィルタが必要とされる。このようなアナログフィルタは高価で電力を食う恐れがある。
AMCモデムは多くの動作環境で同時に1個または複数個のCDMA信号を受信することが可能である。AMCモデムは、動作条件によって1個または複数個のCDMA信号を受信するために電力効率およびコスト効率の両方が良い回路ブロックを利用する。動作条件は関係する周波数帯の条件、例えば、所望の信号レベル、ジャマー群が存在するかどうか、ジャマーのレベル、ADCのフルスケールに比較した時の全ジャマーの電力、などを参照する。殆どのシステムに於いて、ジャマー群はほんの僅かな時間だけ存在し、まれにIS−98Dにより定められた+58または+71dBに達する。更に、CDMA信号群は多くの場合、高い信号レベル群で受信されてもよい。AMCモデムは好ましい動作条件の下で多重CDMA信号群を受信することが可能である。
図2Bは強いCDMA信号群および大きなジャマーを有すると想定した場合の動作を示す。この例では、CDMA信号群は高い信号レベル(約−50dBm)で、ジャマーは−30dBmの最大レベルである。CDMA信号レベルが高いので、ジャマー対信号の比率は、例えジャマーが最大のレベルであっても比較的小さい(ΔP≒20dB)。
図2Cは弱いCDMA信号群および弱いジャマーを有する場合の動作のシナリオを示す。この例では、CDMA信号群は低い信号レベル(約−85dBm)であり、ジャマーもまた低いレベル(約−65dBm)にある。ジャマー対信号比率は、例えCDMA信号レベルが低くても比較的小さい(ΔP≒20dB)。
図2Bおよび図2Cに示すように、CDMA信号群が比較的強い(図2B)かまたはジャマーが比較的弱い(図2C)場合は、小さなジャマー対信号比率が生じる可能性がある。ジャマー対信号比率が小さい時は、アナログフィルタの設定の必要性は緩和するか省略されてもよい。
図3はAMCモデムを備えた無線装置120xのブロック図である。受信経路上では、アンテナ310が、1カ所または複数の基地局からのCDMA信号群と、場合によっては他の送信装置からの妨害信号群とを受信し、受信したRF信号をデュプレクサ312に供給する。デュプレクサ312は受信したRF信号を所望の順方向リンク周波数帯域について濾波し、入力RF信号を受信器ユニット320へ供給する。
受信器はスーパーヘテロダインアーキテクチャまたはダイレクト・ツー・ベースバンドアーキテクチャ(direct-to-baseband architecture)を実装することができる。スーパーヘテロダインアーキテクチャでは、入力RF信号は、例えば1つの段階でRFから中間周波数(IF)へ、次にもう1つの段階でIFからベースバンドへと、多段階で周波数ダウンコンバートされる。ダイレクト・ツー・ベースバンドアーキテクチャでは、入力RF信号は1つの段階でRFから直接ベースバンドへ周波数ダウンコンバートされる。スーパーヘテロダインアーキテクチャおよびダイレクト・ツー・ベースバンドアーキテクチャは別の回路ブロックを使用しても、および/または別の回路要件を有してもよい。以下はダイレクト・ツー・ベースバンドアーキテクチャの説明である。
受信器ユニット320の内部では、低ノイズ増幅器(LNA)322は、固定または可変利得を以って入力RF信号を受信しかつ増幅し、増幅されたRF信号を供給する。ミキサ324はLO発生器334からの受信局部発信機(RX_LO)信号と共に増幅RF信号を周波数ダウンコンバートし、ダウンコンバートした信号を供給する。RX_LO信号の周波数は、所望のCDMA信号群がベースバンドまたはベースバンド近くにダウンコンバートされるように選択される。可変利得増幅器(VGA)326は可変利得と共にダウンコンバートした信号を増幅し、所望の増幅がなされた入力ベースバンド信号Sinを供給する。LNA322,VGA326およびディジタル信号処理装置(DSP)350の他の回路ブロックは、入力RF信号に対し、必要な信号増幅をもたらし、増幅が90dB以上変化する可能性もある。
調整可能なベースバンドフィルタ328は調整可能な帯域幅を以って入力ベースバンド信号Sinを濾波し、出力ベースバンド信号Soutを供給する。ΔΣADC330は出力ベースバンド信号をディジタル化し、DSP350へデータサンプル群Dinを供給する。フィルタ328、ADC330、およびDSP350については更に詳細を以下に説明する。簡単にするために図3には示していないがLO発生器334、ミキサ324、VGA326、フィルタ328、およびADC330からの信号群は複素信号群で、各複素信号は同相(I)成分および直交(Q)成分を有する。
送信経路上において、DSP350は、送信される出力データDoutを処理し、ディジタル−アナログ変換器(DAC)338にデータチップのストリームを供給する。DAC338はデータチップのストリームをアナログに変換し、送信器ユニット340へアナログ信号を供給する。送信器ユニット340の内部では、VGA342が可変利得を以ってアナログ信号を増幅する。ミキサ344はLO発生器334からの送信LO(TX_LO)信号と共にベースバンドからRFへの増幅された信号を周波数アップコンバートする。帯域フィルタ346はディジタル−アナログ変換および周波数アップコンバートにより生じたイメージを除去するためにアップコンバートされた信号を濾波する。電力増幅器(PA)348はアップコンバートされた換信号を増幅し、必要な電力レベルを有する出力RF信号を供給する。デュプレクサ312は所望の逆方向リンク周波数帯域について出力RF信号を濾波し、サービス基地局へ送信するために濾波した出力RF信号をアンテナ310へ供給する。簡単にするために図3には示さないが、DSP350、DAC338およびVGA342からの信号群は同相成分と直交成分を有する複素信号群である。
図3に示すように、デュプレクサ312は送信経路および受信経路に対してRFフィルタの機能を実行することができる。あるいはまたはさらに、別のRFフィルタを送信経路および受信経路に対して使用することができる。いずれにしても受信経路に対するRFフィルタは通常は、例えばセルラー帯域向けの824MHzから849MHzまで、およびPCS用帯域向けの1850MHzから1920MHzまでの順方向リンク用の全周波数帯域を通す。送信電力に対してRFフィルタは通常は、例えばセルラー帯域向けの869MHzから894MHzまで、およびPCS帯域向けの1930MHzから1990MHzまでの逆方向リンク用の全周波数帯域を通す。周波数帯域は多くのCDMAチャネル群をカバーしており、各CDMAチャネルは1.23MHzの帯域幅を有している。
DSP350は、以下に説明するように受信経路に向けてデータサンプル群に信号処理を行い、また送信経路に向けてデータチップを生成する。制御器360はDSP350の動作および無線装置120x内の他の回路ブロックを制御する。制御器360は、LO発生器334によって発生されたRX_LO信号群およびTX_LO信号群の周波数を調整する周波数制御を提供する。制御器360は、調整可能なベースバンドフィルタ328の帯域幅を調整するフィルタ制御も提供する。制御器360は、ADC330のサンプリング比率および/または基準電圧を設定するADC制御機能も提供する。他の回路ブロック(例えば、VGAs326およびVGAs342)に対する制御については簡単にするために図3には示さない。各制御は1個または複数個の制御信号を含んでいてもよい。記憶ユニット362は、制御器360により使用されるデータおよびプログラムコードを記憶し、図3に示すように制御器360の内部にまたは制御器の外付けで実装してもよい。
図3は受信器ユニットおよび送信器ユニット向けの特定の設計を示す。一般に、各パスに対する信号の条件付けは増幅器、フィルタ、ミキサ、などの1つ以上のステージによって実行されてもよい。受信器ユニットおよび送信器ユニットは図3に示されていない別のおよび/または追加の回路ブロックを含んでもよい。
図4Aは調整可能なベースバンドフィルタ328aを示し、図3に示すフィルタ328の実施形態である。調整可能なベースバンドフィルタ328aは縦に連結された410aから410kまでのKフィルタセクション群を含む。ここでKは1またはそれ以上の任意の整数、例えばK=1,2,3,またはある他の値であってよい。第1のフィルタセクション410aはVGA326から入力ベースバンド信号Sinを受信し、最後のフィルタセクション410kはADC330へ出力ベースバンド信号Soutを供給する。各フィルタセクション410は特定の公称周波数応答性、例えば公称の帯域幅およびフィルタ形状を有する。Kフィルタセクション群410aから410kまでは同じかまたは異なる公称周波数応答性を有してもよい。少なくとも1個のフィルタセクションは調整可能な帯域幅を有する。各調整可能なフィルタセクションの帯域幅は、そのフィルタセクションへの制御信号に基づいて変化してもよい。フィルタ328aの全体の帯域幅は、調整可能なフィルタセクション(群)を調整することにより、信頼できるフィルタセクション群を有効にすることおよび他のフィルタセクション群をバイパスすること、などにより変えてもよい。
1つの実施形態では、410aから410kまでの全てのKフィルタセクション群は同じ公称帯域幅を有し調整可能である。全てのKフィルタセクション群を調整することによって、フィルタ328aに対して異なる帯域幅(例えば、1個,2個,3個、またはそれ以上のCDMA信号に対する)を得てもよい。各フィルタセクション410は1本の支配極を有する単極形フィルタでもよい。支配極は抵抗とコンデンサとで形成されてもよく、単極形フィルタセクションの帯域幅はコンデンサおよび/または抵抗を取り替えることによって変えてもよい。
図4Bは調整可能なベースバンドフィルタ328bを示し、図3に示すフィルタ328の他の実施形態である。調整可能なベースバンドフィルタ328bは420aから420kまでのKフィルタセクション群を含み、ここでKは1より大きい任意の整数であってよい。420aから420kまでのKフィルタセクション群は異なる帯域幅を有する。例えばフィルタセクション420aは1個のCDMA信号用の帯域幅を有してもよいし、フィルタセクション420bは2個のCDMA信号用の帯域幅を有してもよいし、フィルタセクション420cは3個のCDMA信号用の帯域幅を有してもよい、などである。フィルタ328bの全帯域幅は様々なフィルタセクション群を選択することによって変えてもよい。スイッチ418は、フィルタ制御によって決定されたように、VGA326から入力ベースバンド信号Sinを受信し、この信号をKフィルタセクション群の1個に供給する。スイッチ422は選択されたフィルタセクションからの出力信号を受信し、この信号を出力ベースバンド信号Soutとして供給する。
調整可能なベースバンドフィルタ328aおよび328bの両方に対し、それぞれのフィルタセクションは種々の型式のフィルタ(例えば、Butterworth、elliptical、Chebychev、など)と、適切なフィルタ次数および帯域幅と、線形性およびダイナミックレンジの要件にかなうよう充分なバイアス電流とを以って実装されてもよい。図2Aの単振音テストで示したような受信信号中の大きく増幅されたジャマーを減らすために、高い選択性(または鋭いロールオフ)を有する1個または複数個のフィルタセクション群を使用してもよい。一般に、調整可能なベースバンドフィルタ328の複雑さはAMCモデムに対する所望の動作環境に依存する。フィルタ328は、これらのジャマー群がADC330のダイナミックレンジで大きな部分を占めないように、受信信号中のジャマー群に対するあるフィルタリングを備える。フィルタ328は、高いジャマー対信号の比率を有する環境中で動作するように、同時により多くのCDMA信号を受信するようになど、高い選択性を有して設計してもよい。
一実施形態において、フィルタ328は、強い信号群または弱いジャマー群を有する環境中で多重CDMA信号群を受信することが可能な単極型の調整可能なフィルタとして実装される。フィルタの帯域幅は、受信中のCDMA信号の数によって決定され、支配極の位置を移動することにより調整される。この支配極は、受信中の最も外側のCDMA信号に近いかまたは内側に置いてもよい。極の位置は正確である必要はなく、コンデンサ、抵抗、および/またはいくつかの他の回路要素によって容易に移動してもよい。フィルタの帯域幅が変えられる時に、極の位置を確定することが可能であり、フィルタの周波数応答性(例えば、垂下)はDSP350内のディジタルフィルタによって正確に補償することができる。他の実施形態において、フィルタ328は調整可能な数個の極を以って実装される。一般に、単純な調整可能なベースバンドフィルタが多くの動作環境でAMCモデムに対し良好な性能を提供することができ、さらにフィルタ周波数応答性のより正確な補償を可能にしてもよい。ADC330のダイナミックレンジおよびDSP350内のディジタルフィルタによるフィルタリングは、図2Bおよび図2Cに示される大きな信号および弱いジャマーのシナリオを処理するために頼りにしてもよい。
図5はCDMA信号の異なる数に対する調整可能なベースバンドフィルタ328の可変帯域幅を示す。受信される全てのCDMA信号群の内の中央のCDMA信号は、受信経路内のミキサ324によってDCに周波数ダウンコンバートされてもよい。フィルタ328の帯域幅は、受信される最も外側のCDMA信号群を含めそこに至るまでの全てのCDMA信号群を通すように調整されてもよい。例えば、フィルタ328は1個のCDMA信号が受信中の場合は一方だけの周波数応答性510aを、3個のCDMA信号が受信中の場合は周波数応答性510bを、5個のCDMA信号が受信中の場合は周波数応答性510cを有してもよい。
ADC330は、受信経路に対しアナログディジタル変換を行い、図3に示すようなΔΣ ADCまたは必要なダイナミックレンジを有するある他の形式のADC(例えば、フラッシュADC)であってよい。入力信号の帯域幅よりも何倍も高いサンプリングレートで先行のサンプルが既に近似計算されているので、ΔΣ ADCは、入力信号の振幅に於ける変化の継続的なL−ビットの近似計算を行うことによって入力信号のアナログディジタル変換を行う。Lは通常は1であるが、1を超えても良い。ΔΣ ADCからのデータサンプル群は入力信号および量子化ノイズを含む。ΔΣ ADCは、高いダイナミックレンジおよびノイズ整形のような、AMCモデムに良く適しているある望ましい特性を有している。
図6Aは異なるサンプリングレートに対するCDMA信号群のプロットおよびΔΣ ADC330のノイズスペクトル群のプロットを示す。ΔΣ ADCはノイズを低い周波数からより高い周波数へ押し上げるように量子化ノイズをスペクトル的に整形する。このノイズ整形によって、CDMA信号群の帯域内に観察される量子化ノイズを少なくし、ひいては高い信号対ノイズ比率(SNR)を達成することができる。帯域外量子化ノイズは後に続くディジタルフィルタによってより容易に濾波してもよい。
ΔΣ ADCのノイズスペクトルはオーバーサンプリング比率(OSR)によって決まり、この比率はΔΣ ADCのサンプリングレート対ディジタル化される所望の信号の両側帯域幅の比率である。ΔΣ ADCは、ΔΣ ADCの設計により、例えばΔΣ ADCに於けるループの数、各ループの次数、などにより決まる特定のノイズ応答性を有している。このノイズ応答性はオーバーサンプリング比率により周波数で乗算される。例えば、ノイズスペクトル610はCDMA信号の帯域幅の16倍(またはChipx16)であるサンプリングレートを以って得られ、ノイズスペクトル612はChipx32サンプリングレートを以って得られ、ノイズスペクトル614はChipx48のサンプリングレートを以って得られる。チップレートはcdma2000に対しては1.23MHzである。既定のCDMA信号レベルにとって、サンプリングレートを増していくことは周波数上でのノイズ応答性を引き延ばし、これによってΔΣ ADCの帯域幅が効果的に増すことになる。
ΔΣ ADCのサンプリングレートは、例えば受信中のCDMA信号の数、動作条件(例えば、CDMA信号のレベルおよびジャマーのレベル)、電力消費量への配慮、などの種々の要因に基づいて変えてもよい。より高いサンプリングレートは量子化ノイズをより高い周波数に押し上げ、ΔΣ ADCの帯域幅を増すが、電力消費量をより高くする結果となる。より低いサンプリングレート(例えば,Chipx16)は1個のCDMA信号を受信するために使用してもよく、より高いサンプリングレート(例えば、Chipx32またはChipx48)は多重CDMA信号群を受信するために使用してもよい。
ΔΣ ADCのSNRはサンプリングレートに関連する。量子化ノイズは周波数で押し上げられるので、より高いサンプリングレートはより高いSNRに対応する。量子化ノイズ信号レベルに対して低いので、高いCDMA信号レベルに対してより低いサンプリングレートを使用してもよい。逆に、より低いCDMA信号に対してより高いサンプリングレートを使用して、量子化ノイズを排除しより高いSNRを得てもよい。
ΔΣ ADCは入力信号振幅における変化を近似するために基準電圧、Vrefを使用する。このVref電圧は、クリッピングすることなくΔΣ ADCにより捕捉することができる最大信号レベルを決定する。それはしばしばフルスケールレベルと呼ばれる。また、Vref電圧は、Vref電圧に対して通常与えられる量子化ノイズを決定する。Vref電圧は普通所定の電圧に固定されるかまたは狭い電圧範囲内で変化することができる。自動利得制御器(AGC)ループは、入力信号レベルがVref電圧の所望のパーセンテージであるようにΔΣ ADCに先立って1個または複数個の回路ブロックの利得を変化させるためにしばしば使用される。
図6Bは同じサンプリングレート(例えば,Chipx48)を有する異なるVref電圧に対するΔΣ ADCのノイズスペクトル群のプロットを示す。ΔΣ ADCのノイズ応答性はΔΣ ADCの設計により決まる。このノイズ応答性はVref電圧を変化することにより上下に移動ができる。例えば、ノイズスペクトル620はVmaxのVref電圧で得られ、ノイズスペクトル622は0.1×VmaxのVref電圧で得られ、ノイズスペクトル624は0.01×VmaxのVref電圧から得られる。既定のCDMA信号レベルの場合、Vref電圧の調整を介して量子化ノイズフロアを下げれば、ΔΣ ADCの帯域幅が効率的に増加する。
ΔΣ ADCのVref電圧は、例えば、受信中のCDMA信号の数、CDMA信号のレベル、ジャマーのレベル、などの種々の要因に基づいて変えてもよい。例えば、Vref電圧は、多重CDMA信号群を受信する時、CDMA信号レベルが低い時などに下げてもよい。より低いVref電圧は、上述したシナリオの場合、量子化ノイズのレベルを下げ、SNRを改善する。簡単にするために図6Bには示していないが、量子化ノイズレベルが落ちるにつれてΔΣ ADCのノイズフロアが関与し、限界要因となる。Vref電圧は、以下に説明するようにAGCに対して使用することもできる。
図6Aおよび図6Bに示すように、サンプリングレートを増やすことおよび/またはVref電圧を下げることにより、ΔΣ ADCに対しより広い帯域幅を達成してもよい。より広い帯域幅は同時に複数のCDMA信号群の受信を提供することができる。また、より高いサンプリングレートはエイリアス周波数をより高く移動させ、それは、先行のアナログベースバンドフィルタ328の必要条件を軽減することができる。エイリアス周波数はサンプリングレートの半分であり、エイリアス周波数より高い信号成分は、ADCによりサンプリングされたときに帯域内に収めることができる。
表1はΔΣ ADCへのいくつかの設定および各設定に対する可能な動作条件を一覧表にしたものである。特定のサンプリングレートおよび異なる動作条件に対するV
ref電圧を含む更なる詳細な表はコンピュータシミュレーション、実験的な測定などに基づいて決定してもよい。
ΔΣ ADCによるノイズ整形によって、直流で最良のSNRを達成したCDMA信号、および低いSNRを達成した最も外側のCDMA信号が得られる。受信されるどのCDMA信号群にとっても、量子化ノイズが主要な要因とはならないように、サンプリングレートおよび/またはVref電圧を調整するなどによってΔΣ ADCが動作してもよい。
図7は図3に示すDSP350の実施形態のブロック図である。この実施形態では、DSP350は710aから710nまでのNチャネルプロセッサ、データ処理装置730および探索装置732を含む。Nチャネルプロセッサは、時分割多重(TDM)方法においてすべてのNチャネルプロセッサのための処理を実行することが出来る特定のハードウエアまたは一般的な高速プロセッサを用いて実施してもよい。各チャネルプロセッサ710は1個のCDMA信号を処理するように割り当てられてもよい。ΔΣ ADC330からのデータサンプル群は受信されるすべてのCDMA信号群を含み、割り当てられたチャネルプロセッサ710すべてに供給される。
各チャネルプロセッサ710内では、割当てられたCDMA信号の中央周波数をfosのオフセット周波数から直流に下方変換するために、回転子712がΔΣ ADC330からのデータサンプル群について回転を実行する。図5に示すように多重CDMA信号群を受信したときは、多くても1個のCDMA信号が直流の信号であり、残りのCDMA信号群の各々は直流の近くのオフセット周波数の信号である。回転子712はデータサンプルを複素正弦波信号と乗算し、ベースバンドサンプル群を供給する。正弦波信号は割当てられたCDMA信号のオフセット周波数に一致する周波数を有する。オフセット周波数およびADCサンプリングレートが整数の倍数によって関連づけられているなら、回転は簡単化されてもよい。
ディジタルフィルタ714は、他のCDMA信号群および帯域外の好ましくない信号群を排除するために、回転子712からのベースバンドサンプル群を濾波する。フィルタ714はさらに、調整可能なベースバンドフィルタ328の周波数応答性を補償する。フィルタ714は濾波したサンプル群を供給するが、それらはオフライン処理を可能とするためにサンプルバッファ716に格納することができる。濾波されたサンプル群がリアルタイムで処理される場合は、サンプルバッファ716は必要ではない。
復調器(Demod)718はバッファ716からの格納サンプル群を処理し、シンボル推定値を供給する。IS−95およびcdma2000の場合、復調器718による処理は以下を含む。(1)基地局でデータをスペクトル的に拡散するために使用される擬似乱数(PN)系列を以ってサンプル群を逆拡散すること、(2)データシンボルおよびパイロットシンボルを得るためにデータおよびパイロットウオルシュコードを以って逆拡散サンプル群をデカバリングすること、(3)パイロット推定値を得るためにパイロットシンボルを濾波すること、および(4)復調シンボルを得るためにパイロット推定値でデータシンボルをコヒーレントに復調すること。復調器718は、割当てられたCDMA信号の複数の信号インスタンス(またはマルチパス)を処理することが可能な複数のフィンガプロセッサ(または簡単にフィンガ)を有するレーキレシーバを実装しても良い。この場合、復調器718はマルチパスを処理するために割当てられた全てのフィンガからの復調されたシンボルを結合し、割当てられたCDMA信号に対する符号推定値を供給する。復号器720はシンボル推定値をデインターリーブしかつ復号し、割当てられたCDMA信号に対する復号されたデータを供給する。
探索装置732は、処理されるCDMA信号群の中から強いマルチパスを探索し、探索装置により見出された各マルチパスの強度とタイミングを制御器360に供給する。マルチパスの探索は通常各CDMA信号中で送られてきたパイロットに基づいて行われる。特定のCDMA信号中で強いマルチパスを探索するために、探索装置732は、異なるPN位相で局部的に発生したPN系列で、そのCDMA信号に対し格納されたサンプル群を相互に関連付ける。PN系列の擬似乱数性により、PN系列を有する格納されたサンプル群の相互関連性は、局部的に発生したPN系列の位相がマルチパスのPN位相に整列する時を除いて低くなければならない。制御器360は、探索装置732により供給された情報に基づき関心のあるマルチパスを同定し、関心のある各マルチパスを処理するために復調器718内にフィンガを割当てる。
多重チャネルプロセッサ710は同時に複数のCDMA信号群を処理するように割当てられてもよい。基地局は異なるサービス(例えば、音声、パケットデータ、メディア送信、など)に対して異なるCDMAチャネル上で異なるCDMA信号群を送信することができ、多重CDMAチャネル上で人気の高いサービス(例えば、音声)に対して多重CDMA信号群を送信してもよい。無線装置は所望のサービスに対し送信されるCDMA信号群を同定し、周波数が隣接するかお互いに近いCDMA信号群を選択する。選択されたCDMA信号群のクラスタの中心周波数は直流にダウンコンバートしてもよく、1個のチャネルプロセッサ710は各選択されたCDMA信号を処理するために割当てられてもよい。選択されたCDMA信号群は通常CDMAチャネル群に隣接しているが、これは必要条件ではなく、CDMA信号群は、周波数において互いに隣接する必要は無い。
多重CDMA信号群は同じ基地局からのものであり、周波数が互いに近くにあるので、これらのCDMA信号群はシャドウイングおよび場合によってはマルチパスフェージングなどの類似のチャネル効果を受けることもある。CDMAチャネル間の相互関連性を利用して性能を向上してもよい。例えば、探索装置732は、1個のCDMA信号に対する強いマルチパスのロケーションを他のCDMA信号中の強いマルチパスの探索における開始点として使用してもよい。CDMAチャネル内での相互関連性を使用すればマルチパス群を予知することができ、ひいては探索力を向上させることができる。
多重CDMA信号群に関し得られるタイミングおよび周波数の情報はそれぞれタイミングおよび周波数トラッキングの向上に使用してもよい。例えば、粗い周波数制御ループは、ドップラー、図3に示すLO発生器334に於けるドリフトを補償するため、などに使用することができる。この粗い周波数制御ループは、受信される1つ、幾つかまたは全てのCDMA信号から得られる周波数情報に基づいて更新されてもよい。細かい周波数制御ループは各割当てられたCDMA信号に対し維持され、そのCDMA信号に対する周波数誤差を追跡するために使用されてもよい。同様に、粗いタイミング制御ループはクロック信号群を発生するオシレータでのドリフトを補償するために使用されてもよい。この粗いタイミング制御ループは、受信される1つ、幾つかまたは全てのCDMA信号から得られるタイミング情報に基づいて更新されてもよい。細かいタイミング制御ループは各割当てられたCDMA信号に対し維持され、そのCDMA信号に対するタイミング誤差を追跡するために使用されてもよい。
シャドウイング効果は隣接するCDMAチャネルにわたって共通であり、フェージング効果もいくらか相互関連する可能性があり、各CDMAチャネルに対し向上したチャネル推定値を得るために、チャネル推定がこれらCDMAチャネルに対して実行されてもよい。一般にCDMAチャネル内の相互関連性の知識は探索、チャネル推定、時間および周波数追跡、などに対する性能の向上のために使用されてもよい。
図8はディジタルフィルタ714xの実施形態を示し、それは図7に示す714aから714nまでのディジタルフィルタの各々に対して使用されてもよい。ディジタルフィルタ714x内では、ジャマー排除フィルタ812が、好ましくない信号群を減らすために比較的鋭いロールオフを有する周波数応答性を以って回転子712からのベースバンドサンプル群を濾波する。調整可能なベースバンドフィルタ328およびジャマー排除フィルタ812などの受信経路中の他の回路ブロックが原因である通過帯域に於ける垂下(droops)を補償するために、ジャマー排除フィルタ812からの出力サンプル群について等化フィルタ814が等化を行う。ベースバンドフィルタ328はより高い周波数でより多くの垂下を有するので、等化は処理されるCDMA信号のオフセット周波数fosに依存してもよい。等化フィルタ814は処理中のCDMA信号が直流で中央にある場合はより少ない補償を、CDMA信号がより高いオフセット周波数で中央にある場合はより多くの補償を供給するようにしてもよい。
利得補正ユニット816は、等化フィルタ814からのサンプルを調節可能な利得と乗算し、適切なサンプルレート(例えば、1または2サンプル/チップ周期)でのおよび適切な解像度(例えば、4ビット/サンプル)および振幅を有する濾波されたサンプル群を供給する。ユニット816は(1)処理中のCDMA信号の信号レベル、(2)ΔΣ ADCのサンプリングレートおよび/またはVref電圧の調整、(3)受信経路に於ける他の回路ブロックの利得などを補償することができる。図8には示さないが、直流オフセット除去ユニットは、ミキサ324により直流に周波数ダウンコンバートされる中央のCDMA信号に対しサンプル群における直流オフセットを排除するために使用されてもよい。
フィルタ812およびフィルタ814は各々、有限インパルス応答(FIR)構造、無限インパルス応答(IIR)構造、ある他のディジタルフィルタ構造、またはそれらの組合せで実装されてもよい。フィルタ812およびフィルタ814はそれぞれ1個または複数個のフィルタセクション群を含んでよい。例えば、米国特許第6389069号に記述されているように、フィルタ812は3個の2−4(bi-quad)FIRフィルタセクション群を実装してよいし、フィルタ814は2個の2−4IIRフィルタセクション群および1個の2−4FIRフィルタセクションを実装してよい。フィルタ812およびフィルタ814の係数は固定してもよいし、柔軟性をもたらすためにプログラム可能であってもよい。ディジタルフィルタ714xは、異なるおよび/またはさらなるフィルタ群、他の回路ブロックなどを含んでもよい。
図8はまたジャマー検知ユニット820の1つの実施形態を示し、それはディジタルフィルタ714xの一部であってもよいし制御器360に備わっていても良い。この実施形態のために、電力測定ユニット822が、ジャマー排除フィルタ812に供給されたベースバンドサンプル群を受信し、これらサンプル群の電力を測定し、第1の電力測定をジャマー検知器826に供給する。電力測定ユニット824はジャマー排除フィルタ812により供給されたサンプル群を受信し、これらサンプル群の電力を測定し、第2の電力測定をジャマー検知器826に供給する。ジャマー検知器826はCDMA信号の近くのジャマー群の存在を検知しジャマー表示を提供する。第1の電力測定は所望のCDMA信号と、ジャマー群のような帯域外の好ましくない信号群との両方を含む。殆どの好ましくない信号群はジャマー排除フィルタ812により濾波されているので、第2の電力測定には主に所望のCDMA信号が含まれる。2つの電力測定値の比率は、所望の信号レベルに対する好ましくない信号レベルを示す。第1の電力測定値および第2の電力測定値の差が大きい場合は、帯域外信号の電力が大きいことを表し、ジャマー検知器826は大きな振幅のジャマー群の存在を示す。逆に、第1の電力測定値および第2の電力測定値の差が小さい場合は、帯域外信号の電力がごく僅かであることを表し、ジャマー検知器826は大きな振幅のジャマー群の存在を示す。ジャマー対信号の比率は、第1の電力測定値および第2の電力測定値の差に関連するものであり、その差に基づいて推定してもよい。ジャマー表示は制御器360に供給され、同時に受信されてもよいCDMA信号の最大数を決定することおよび他の目的に対して使用される。
一般に、ジャマー群は、2種の測定−1つはジャマー排除フィルタの前の測定、もう1つはジャマー排除フィルタの後の測定、に基づいて検知されてもよい。測定の1つは間接的であってよい。例えば、ジャマー排除フィルタの出力はAGCループにより所定の値に設定されてもよく、その場合は第2の電力測定は固定される。ジャマーに対する濾波が図8に示すようにディジタル領域で行われる場合は、ディジタル領域でジャマー検知を行うことができる。
飽和検知器はΔΣ ADCによる飽和を検知するためにジャマー検知器の代わりに、または追加して使用されてもよい。大きな好ましくない信号群はΔΣ ADCを飽和させることができ、その結果ΔΣ ADCにより供給されるデータサンプル群に歪みおよび他の不自然な結果をもたらす。飽和検知器は起こりうるADCの各値の発生数を数えてもよく、大きなADC値の発生数が所定の境界値を越える場合は飽和を宣言してもよい。例えば、ΔΣ ADCが{+3、+1、−1、−3}の値を有する2ビットのデータサンプル群を供給する場合は、その結果、飽和検知器は、所定の時間窓関数の内で+3の発生数および―3の発生数を数えることができ、+3および−3の発生数が所定の境界値を超えれば飽和を宣言してもよい。ΔΣ ADCおよび/または受信するCDMA信号の数に対し供給されたベースバンド信号の振幅は、飽和が検知されれば減らしてもよい。
ディジタル領域でのジャマーおよび飽和の検知によって、より高い精度および柔軟性(処理がディジタルに行われるため)ならびにより低いコスト(アナログ回路を必要としないので)など確実に利益を得ることができる。実施形態では、ΔΣ ADCからのデータサンプル群を周波数領域に変換すればよい。データサンプル群の周波数スペクトルは、多重CDMA信号群が受信された場合、ΔΣ ADCが飽和かどうかを判断するために分析されてもよい。
図3に戻って参照すると、送信経路はその動作方法を著しく変えることなく1個または複数個のCDMA信号に対処することが可能である。送信経路に於ける回路ブロックは、AMCモデムによって支援された最大数のCDMA信号に対し必要な線形性を与えるように設計されてもよい。電力増幅器348は各CDMA信号に対し必要な出力電力レベルを供給するよう調節されてもよい。例えば、1個のCDMA信号に必要な出力電力のレベルが+24dBmであり、3個のCDMA信号が同時に送信されているのであれば、3個すべてのCDMA信号への全出力電力のレベルを約5dB高く設定されてもよい。ここで、10・log10(3)=4.8dBである。
受信経路は通常、例えば、cdma2000では90dB以上の広範囲な入力RF信号レベルを処理する必要がある。受信経路の回路ブロック(例えば、LNA322,ミキサ324およびVGA326)は入力RF信号レベルの全範囲に亘って必要な線形性を備えるように設計される。受信経路のそれぞれの可変回路ブロックの利得および/またはバイアスは入力RF信号レベルに基づき変えてもよい。受信経路の回路ブロックは1個だけのCDMA信号を受信しているかのように通常の方法で動作されてもよい。ΔΣ ADCは入力RF信号レベルの殆ど全範囲にわたって多重CDMA信号群に対し通信可能サービスエリアとするように動作されてもよい。
ΔΣ ADCに供給されたベースバンド信号が適切な振幅を有し、ΔΣ ADCを飽和させないことを確実にするために、AGCループが受信経路に対し維持される。受信経路の回路ブロックは多重利得状態を有して設計されてもよい。各利得状態は入力RF信号レベルの特定の範囲に対し充分な利得を供給する。第1の利得状態は最大の利得を有し、感度をカバーする入力RF信号レベル群の最も低い範囲に対して設計される。受信経路は利得状態の1つで動作し、それは入力RF信号レベルにより決まる。
ΔΣ ADCに対するVref電圧はAGCに対して使用できる。高いVrefは以下の理由から第1の利得状態に対して使用されてもよい。(1)受信経路での利得が大きいため、ノイズフロアが高くなる。および(2)Vrefが低いとADCのダイナミックレンジを小さくすることになる。他の利得状態に対しては、VrefをAGCの1手段として使用されてもよく、ΔΣ ADCのフルスケールがCDMA信号レベルおよびジャマーレベルに一致するように変更されてもよい。例えば、場合によっては第1の利得状態を除く各利得状態に対して、受信されるCDMA信号の数に基づいて、例えば、より多くのCDMA信号群に対してはより高いVrefに、より少ないCDMA信号群に対してはより低いVrefに、Vrefを調節することができる。Vrefは、入力RF信号レベルでのトラック変更に対しても調節されてもよい。Vrefは(1)ジャマー群が存在しない場合はダイナミックレンジを妥協することなく、より低い入力RF信号レベルに減らしてもよく、(2)利得条件で得られる利得を利用するのであれば高い入力RF信号レベルへ(例えば、より多くのCDMA信号群の受信により)増やしてもよい。
同じ周波数帯域であるが異なるCDMAチャネル上で基地局により送信されるCDMA信号群は、類似の受信信号レベルを有するであろう。AGCは受信される全てのCDMA信号群に対し入力RF信号レベルで行ってもよい。受信される各CDMA信号に対し、別個のAGCループが維持されてもよい。各別個のAGCループは、濾波されたサンプル群が適切な振幅を有するように(例えば、図8に示す利得補正ユニット816を介して)1個のCDMA信号に対し利得を調節する。
チャネル選択とは、同時に受信されてもよいCDMA信号の数の決定、および受信に対する特定のCDMA信号群の選択を指す。チャネル選択は、例えば、動作状態に於ける変化、ユーザの要求、などに基づいて、呼の開始時に行ってもよく、呼の期間中にも行ってもよい。無線装置は呼の期間中にCDMA信号群の異なる数および/または異なるCDMA信号群を受信してもよい。
一般に、同時に受信されてもよいCDMA信号の数は、動作条件、受信器の性能、ユーザの要求、などの種々の要因に依存する。動作条件はジャマー検知器、飽和検知器、スペクトル分析、などにより確定されてもよい。受信器の性能は調整可能なベースバンドフィルタの選択特性、ADCのダイナミックレンジ、などにより定量化されてもよい。強いCDMA信号群または弱いジャマー群によってジャマー対信号の比率が小さくなっている場合は、AMCモデムは多重CDMA信号群を同時に受信することができる。AMCモデムは動作条件に基づいてできるだけ多くのCDMA信号(例えば、1個,2個,3個,4個,5個、など)を受信するために動作されてもよい。AMCモデムは、動作条件の変化に基づいて可変数のCDMA信号を受信するように動作されてもよい。
AMCモデムは種々の方法で、および種々の目的で使用されてもよい。AMCモデムは異なるサービスに対して多重CDMA信号群を受信してもよい。例えば、AMCモデムは、音声に対しては1個のCDMA信号、パケットデータに対しては1個または複数個の他のCDMA信号、放送データおよび/またはページングに対しては別のCDMA信号、などを受信してもよい。もう1つの例として、AMCモデムは、パケットデータに対しては第1のCDMA信号を、ページングに対しては第2のCDMA信号を受信してもよく、ページングを支援するために第1のCDMA信号がオーバーヘッドを運ぶ必要性を軽減することができる。ネットワーク運営者達がより多くのCDMAチャネル群を介してより多くのサービスおよび機能性を供給するので、同時に複数の使用をサポートするための能力は、益々重要になるであろう。
AMCモデムは、ピークスループットを増すために多重CDMA信号群を受信してもよい。例えば、ピークデータレートが1個のCDMA信号に対し2.4Mbpsである場合は、結果としてAMCモデムは2個のCDMA信号を以って4.8Mbps、3個のCDMA信号を以って7.2Mbps、5個の信号を以って12.0Mbps、などを達成することが可能である。多重CDMA信号群を受信する能力はデータダウンロード時間を短縮し、ユーザの満足感を高め、かつリソースの稼働率を増す。
AMCモデムは周波数ダイバーシティを達成するために多重CDMA信号群を受信してもよい。例えば、基地局は、2個以上のCDMAチャネルを介してパケットを無作為に送信したり、より良いCDMAチャネル上でパケットを選択的に送信(例えば、ACKフィードバックに基づいてより高い成功率で)したり、より良い受信信号品質を以ってCDMAチャネル上でパケットを送信してもよい。周波数ダイバーシティは性能を高め、信号受信に多重アンテナの使用というアンテナダイバーシティなどの他の形式のダイバーシティとの連携で使用されてもよい。
基地局は無線装置が多重CDMA信号群を受信中であることを知っている必要が有る場合もあるし無い場合もある。自律的受信(またはオープンループ動作)の場合無線装置は基地局に知らせる必要なく、何個のCDMA信号を受信するべきか、およびどのCDMA信号を受信するべきかを決定する。自律的受信は、例えば異なるサービスへの、独立的に発生したCDMA信号群を受信するために使用されてもよい。調和的受信(またはクローズドループ動作)では、無線装置および/または基地局は何個のCDMA信号を受信するべきか、およびどのCDMA信号を受信するべきかを決定し、基地局は選択したCDMA信号を知っている。調和的受信は連携した多重サービス(例えば、音声および映像)、多重CDMAチャネル群からのデータ(例えば、周波数ダイバーシティおよび/またはより高いデータレート)、などを受信するために使用されてもよい。このため、基地局は相互依存的なCDMA信号群を発生する。
図9はサービス基地局からの信号群を受信するために無線装置によって行われるプロセス900を示す。初めに、サービス基地局により送信された拡散スペクトル信号群を用いて観察された動作条件が決定される(ブロック910)。拡散スペクトル信号群は、cdma2000の基地局からのCDMA信号群か、ユニバーサルモバイルテレコミュニケーションシステム(UMTS)ノードBからのW−CDMA信号群か、またはある他の拡散スペクトル信号群でもよい。動作条件は所望の信号レベル、ジャマーのレベル、などを推定することにより決定されてもよい。特定の数の拡散スペクトル信号が、同時受信のために、動作条件、ユーザの要求、および場合によっては他の要因に基づいて選択される(ブロック912)。調整可能なフィルタの帯域幅は拡散スペクトル信号の選択された数に基づいて設定される(ブロック914)。サンプリングレートおよび/またはADC用の基準電圧は動作条件、拡散スペクトル信号の選択された数、などに基づいて設定されてもよい(ブロック916)。入力信号(例えば、図3に示すVGA326からの)は、出力信号を得るために調整可能なフィルタによって濾波される(ブロック918)。出力信号はデータサンプル群を得るためにADCによりディジタル化される(ブロック920)。各選択された拡散スペクトル信号の周波数は直流に下方変換され(ブロック922)、その拡散スペクトル信号に対し選択されたフィルタ応答性を以って濾波され(ブロック924)、さらに拡散スペクトル信号に対し復号データを得るために処理される(例えば、復調および復号される)(ブロック926)。
本明細書に記載されたAMCモデムは種々の手段により実装されてもよい。例えば、AMCモデムは、ハードウエア、またはハードウエアおよびソフトウエアの組合せで実装されてもよい。ハードウエアの実装では、多重拡散信号群を受信するために使用される処理ユニットは、1個または複数個の、特定用途向け集積回路(ASICs)、ディジタル信号処理装置(DSPs)、ディジタル信号処理デバイス(DSPDs)、プログラム可能論理回路(PLDs)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGAs)、RF集積回路(RFICs)、中央演算処理装置、制御装置、マイクロ制御装置、マイクロプロセッサ、電子デバイス、本明細書に記述された機能を実行するために設計された他の電子ユニット、またはそれらの組合せで実装されてもよい。
AMCモデムのある部分はソフトウエアで実装されてもよい。例えば、チャネル選択および種々の制御機能は本明細書に記述される機能群を実行するモジュール(例えば、手順、機能、など)で実装されてもよい。ソフトウエアのコードはメモリユニット(図3に示すメモリユニット362)に記憶され、処理装置(例えば、制御器360)により遂行されてもよい。メモリユニットは処理装置内または処理装置外に実装されてもよい。
開示した実施形態の記載は、当業者が本発明を生産したり使用したりすることができるように提供される。これら実施形態への種々の変更は当業者には直ちに明白であり、本明細書で定義される一般的な原理は本発明の精神または範囲を逸脱することなく他の実施形態に適用されてもよい。従って本発明は本明細書に示す実施形態に限定されることを意図するものではなく、本明細書で開示されている原理および新規の特徴に一致した最大の範囲を与えられるものとする。