JP2008539549A - 電子衝撃イオン源において空間電荷により影響を受けるイオン不安定性の制御方法 - Google Patents

電子衝撃イオン源において空間電荷により影響を受けるイオン不安定性の制御方法 Download PDF

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Abstract

【課題】電子イオン化源における空間電荷に関する現象を抑制するための方法および、その方法を実施するために使用することができる電子イオン化装置を提供する。
【解決手段】イオン源における空間電荷関連現象を抑制する方法において、電子ビームをチャンバ内に導入して、チャンバ内でサンプル物質からイオンを生成する(602)。電圧パルスをチャンバに印加してチャンバ内に存在する電子空間電荷を撹乱する(604)。イオン源は電子衝撃イオン化EI装置であってもよい。イオン源を質量分析計と結合して作動してもよい。
【選択図】図6

Description

本発明は大略的にサンプル物質のイオン化に関し、これは、たとえば質量分析のような分析化学の分野において用途がある。さらに詳細には、本発明は特に、電子イオン源の性能の改良に関しイオン源において生じるイオン不安定性を制御することによるイオン源に関する。
質量分析(MS)は、質量対電荷比によってサンプル成分を分解できる、質的および量的分析の機器を用いた種々の方法を説明する。この目的のために、質量分析計は、サンプル成分をイオンに変換し、イオンをその質量対電荷比に基づいて分類または分離し、そして得られたイオン出力(たとえば、イオン流、フラックス、ビーム、信号など)を質量スペクトル形成に必要なように処理する。典型的には、質量スペクトルは、荷電成分の相対存在量を質量対電荷比の関数として示す一連のピークからなる。「質量対電荷」という言葉は、しばしばm/zまたはm/e、または電荷zまたはeがしばしば1の値であれば、単に「質量」として表される。イオン出力により表される情報は、アナログおよび/またはデジタル技術によるデータ処理が可能な適切なトランスデューサの使用により、電気信号としてコード化することができる。
本発明の開示において、MSシステムは一般に公知であり、詳細に説明する必要がない。簡単に言えば、典型的なMSシステムは一般に、サンプル取入れシステムと、イオン源またはイオン化システムと、質量分析器(質量分類器または質量分離器とも呼ばれる)または多数の質量分析器と、イオン検出器と、信号処理装置と、読取り/表示手段とを含む。さらに、MSシステムは、典型的には、MSシステムの1つまたはそれ以上の部品の機能を制御し、データ取得を管理し、MSシステムにより生成された情報を保存し、分析のための分子データのライブラリーを提供するなどのためのコンピュータまたは他の電子処理装置に基づく装置のような電子制御装置を含んでいる。この電子制御装置は、MSシステムのオペレータとの連動を可能にする端子、コンソールなどを含むメインコンピュータと、データ取得および操作のような専用の機能を有する1つまたはそれ以上のモジュールまたはユニットを含んでいてもよい。MSシステムはまた真空システムを含み、制御された真空環境内に質量分析器を包囲する。質量分析器に加えて、設計によっては、サンプル取入れシステム、イオン源およびイオン検出器の全てまたは一部も、真空環境内に包囲されていてもよい。
動作において、サンプル取入れシステムは、設計によってはサンプル取入れシステムと一体化されていてもよいイオン源に、少量のサンプル物質を導入する。複合技術において、サンプル取入れシステムは、ガスクロマトグラフィー(GC)機器、液体クロマトグラフィー(LC)機器、キャピラリー電気泳動(CE)機器、キャピラリー電気クロマトグラフィー(CEC)機器などのような分析的分離機器の出力であってもよい。イオン源は、サンプル成分を正または負イオンの流れに変換する。それによって、1つのイオン極性が質量分析器内へ加速される。質量分析器は、イオンをそれぞれの質量対電荷比に応じて分離する。質量分析器はm/z比に応じて分解されたイオンのフラックスを生成し、それらのイオンはイオン検出器に集められる。
イオン検出器は、質量で識別されたイオンの情報を、信号処理装置による処理/調整、メモリへの保存および読取り/表示手段による表現とに適した電気信号に変換するトランスデューサとして機能する。典型的なイオン検出器は、第1ステージとして、イオン/エレクトロン変換装置を含む。質量分析器からのイオンは、イオンオプティックスとして作用する電界および/または電極構造によって、イオン/エレクトロン変換装置へ集められる。電気的および構造的イオンオプティックスは、好ましくは、イオンビームを質量分析器から排出されてもよい中性粒子および電磁放射から分離するように設計されており、それによって、背景ノイズを低減して信号対ノイズ(S/N)比を増加させる。イオン変換ステージの次には、電子増倍ステージが続き、これは典型的には増倍用のダイノードと、増倍された電子フラックスを収集し、出力電流を次の処理に送るための陽極とを含む。または、電子増倍器の代わりに光増倍器を用いて、同様に作動してもよい。
イオン検出器の出力は、典型的にはイオン検出器に供給されるイオン流の強度と電子増倍管の利得とに比例する増幅された電流である。この出力電流は必要に応じて処理を行ない、読取り/表示手段により表示されるかまたは印刷されることができる質量スペクトルを生じることができる。次に、熟練した分析者は質量スペクトルを解釈して、MSシステムにより処理されたサンプル物質に関する情報を得ることができる。
イオン源の実施例は、ガス相イオン源と脱離イオン源とを含むが、これに限定されない。イオン源はまた、それらがハードイオン化を実施するかソフトイオン化を実施するかによって特徴づけられてもよい。イオン源の一実施例は、電子衝撃イオン化(EI)源である。典型的なEI源において、サンプル物質は分子蒸気の形状でチャンバ内に導入される。エネルギー電子を発生するために加熱フィラメントが使用され、エネルギー電子はビームとして視準を合わせられ加速されて、フィラメントと陽極との間に印加された電位の影響下でチャンバ内に導入される。サンプル物質のチャンバ内へのビームの経路は、典型的には電子ビームの経路と直交する。これらの経路はチャンバ内の領域で交差し、ここで電子ビームがサンプル物質を照射させることによりサンプル物質のイオン化が起る。イオン化処理の第1反応は、次の関係で表すことができる。すなわち、M+e→M*++2eで、Mは検体の分子であり、eは電子であり、M*+は得られた分子イオンである。すなわち、電子は、分子が静電反発力により電子を失うのに充分な近さに近づき、したがって、単独に荷電した正イオンが形成される。電位は、チャンバ内に形成されたイオンを出口に向けて引付けるために使用され、その後、得られたイオンビームは質量分析器内へ加速される。
米国特許第6,576,897号明細書
イオン源の作動において、その感度を最大化するために高電子発生電流(数百マイクロアンペア)および強磁界(数百ガウス)のもとでイオン源が作動される時は、イオンビームの自己振動現象が起る可能性がある。この現象は、イオン源の状態に応じてHz〜kHzへの広範囲にわたって変化する周波数とともに、質量分析計に向けて抽出されたイオン信号の準周期的振動を明示しているかもしれない。この自己振動現象が起ると、質量分析計の性能が低下する可能性があり、それによって、ピーク域再生能力の低下、直線性の低下、および測定イオン比の不一貫性などをもたらす。イオン源が低圧(<1mTorr)で作動され、かつイオン交換レンズ電圧が小さい(2〜3ボルト)である時に、高電子発生電流を用いると、この現象がより高い確率でおこる。
EI源を用いての本開示における発明者の実験観察に基づいて、観察された自己振動現象の下記の作用が提案されるが、この提案によって本発明の態様を限定する意図はない。イオン源内において、電子空間電荷は電子ビームの周囲にポテンシャル井戸を作りだす。電子によって発生したイオンは、それらが質量分析計に向かって抽出されることができる前の限定された時間内でこのポテンシャル井戸に捕捉されることがある。ある条件下で、特にイオン源の感度を最大化するために電子濃度が最大化される時には、捕捉されたイオンは、それらが荷電反発を介して多数集まり爆発する充分前に、電子ポテンシャル井戸を逃れることができるだけである。このイオン抽出の作用はイオンビームの自己振動を生じる可能性があり、その場合には、サイクルは、短いイオン爆発からなり、その後にイオンが捕捉されて電子ビームの周囲に集められる。
したがって、イオンの自己振動現象が起ることを抑制すると同時にイオン源の全体的な感度を維持することが解決のために必要である。本開示における発明者の実験は、自己振動現象は、一連の可能な対策により防止できることを示している。第1に、自己振動現象は、電子フィラメント電流の低下または電子の視準合わせのための磁界の強度の低下のいずれかを介して、イオン源における電子濃度を低下させることにより防止できた。残念なことには、イオン源のある構造にとっては、これによってイオン源全体の感度の重大な低下をもたらす。第2に、自己振動は、第1のイオン抽出レンズに印加される電圧を増加することにより防止できたが、これもまた一定のイオン源構造により限定され、したがってイオン源感度の著しい低下となる可能性がある。第3に、自己振動は、通常ガスクロマトグラフのたとえばヘリウムのキャリアガスである、イオン源に存在する背景ガスを増加することにより防止できた。ガスクロマトグラフの作動には特別の流速が必要であるため、この圧力の調整の範囲は限られており、したがって現在のところ、これも受容できる解決法ではないと見なされている。
したがって、イオン源、特にEIイオン源での空間電荷により生じるイオン不安定性の適切な制御方法に対する要望は依然としてある。
前記の問題および/または当業者により考察されてきた問題を全体的または部分的に扱うために、下記に実施例を介して説明するように、本開示は、電子イオン化源における空間電荷に関する現象を抑制するための方法および、その方法を実施するために使用することができる電子イオン化装置を提供する。
本発明の一つの態様において、イオン化源における空間電荷に関する現象を抑制するための方法が提供される。この方法によれば、電子ビームがチャンバ内に導入されてチャンバ内のサンプル物質からイオンを生成する。チャンバ内に存在する電子空間電荷を撹乱させるために、電圧パルスが印加される。
いくつかの実施態様において、多数の電圧パルスの場合におけるパルス高さ、パルス幅およびパルス周波数のような、電圧パルスの作動変数は、イオン源またはその内部でイオン源が作動するシステムの他の部品の1つまたはそれ以上の作動変数に全体的または部分的に基づいて選択されてもよい。他の部品の作動変数の例は、データサンプリング周波数、電子放出電流、チャンバ内の圧力、およびチャンバ内のイオン質量であるが、これらに限定されない。
いくつかの実施態様において、チャンバの開口の近くに配置された導電性表面に電圧パルスが印加され、その結果、脈動電位が導電性表面とチャンバの表面との間、またはチャンバ内の表面との間に印加される。導電性表面は、たとえばイオン抽出レンズまたは電子集電極のようにチャンバの外部にあってもよく、または、たとえばリペラー、つまり反射電極のようにチャンバの内部にあってもよい。
他の実施態様において、電圧パルスはチャンバ自体に印加され、その結果、脈動電位がチャンバ構造とチャンバ内に配置された導電性表面との間に印加される。
他の実施態様において、電圧パルスは、電子ビームのパルス化により印加される。
他の実施態様において、イオン化装置が提供される。この装置は、チャンバと、チャンバ内に電子ビームを導くための電子源と、チャンバ内に存在する電子空間電荷を撹乱させるためにチャンバに電圧パルスを印加する手段とを含む。
いくつかの実施態様において、電圧パルス印加手段は、電圧源と、電圧源に連結されたチャンバの近くに配置された導電性表面とを含む。導電性表面は、チャンバの外部もしくは内部に配置されてもよく、またはチャンバ構造の一部分であってもよい。
他の実施態様において、電圧パルス印加手段は、電子ビームを制御する手段、または電子ビームを印加するために使用される装置を含む。
一般に、「連結」という語(たとえば、第1部品は第2部品と「連結されている」または「連結状態にある」)は、本明細書において、2つまたはそれ以上の部品または要素の間の構造的、機能的、機械的、電気的、光学的、磁的、イオン的または流体的関係を示すために使用されている。同様に、1つの部品が第2の部品と連結されているということは、他の部品が、第1および第2の部品の間に存在および/または第1および第2の部品に作動的に関連または係合してもよいという可能性の排除を意図するものではない。
本明細書に開示された主題は、大略的にサンプル物質のイオン化に関する。方法ならびに関連する装置および/またはシステムの実施態様の例を、図1〜図6を参照して下記に詳述する。これらの実施例は質量分析の文脈において説明される。しかしながら、電子ビームまたはそれに類似するものを利用したイオン化を伴う工程は、本発明開示の範囲内に含まれてもよい。
図1は、全体として参照符号100で示されている質量分析(MS)システムの一部を形成してよい部品を示している。MSシステム100は、サンプル取入れシステム102と、イオン源104と、イオンオプティックス106(たとえば、レンズ、ゲートなど)、質量分析器(または質量分析計)108と、イオン検出器110と、電子制御装置112(たとえば、信号処理装置およびデータ取得制御装置)と読取り/表示装置114とを含んでいてもよい。簡潔にするために、図1に示された代表的なMSシステム100の一部分を実際に形成する、またはMSシステム100と連動してもよい他の部品は、特に示されていない。このような部品は当業者には容易に理解できるからである。
サンプル取入れシステム102は、ガス状サンプル物質の流れまたはビームをイオン源104に導入するように、イオン源104と連動するのに適したいかなるシステムまたは装置であってもよい。MSシステム100が連続ビームシステムである場合には、サンプル取入れシステム102はしばしばガスクロマトグラフィー(GC)機器であり、必要であれば、MSシステム100に対して高く連続的な流速で検体源を供給できる。しかしながら、MSシステム100は、たとえばLC/MSまたはMS/MSのような、GC/MSとは異なる複合技術を実施してもよい。さらに、上流の分析機器からの出力としてではなく、イオン源104へのサンプル物質の導入が直接的になされてもよい。
イオン源104は、本明細書において開示された方法に適応し、かつ使用されている分析器108に適応するイオン源であってよい。本明細書において開示された方法が電子ビームによって生起されるイオン化に関して試験されている限りにおいて、イオン源104は電子衝撃(または電子イオン化、EI)イオン源104として図1に示されている。MSシステム100は、たとえばEIまたはCI(化学的イオン化)のように1つ以上のタイプのイオン化技術が選択できるように設計してもよいことは、当業者には理解されるであろう。図示された実施例において、イオン源104は、内部でサンプル物質のイオン化を実施するイオン化チャンバ130を含んでいる。イオン化チャンバ130の構造は、1以上の壁部または表面131によって形成されてもよく、また、サンプル入口132と、イオン出口134と、電子ビーム入口136と、電子ビーム出口138とを有してもよい。イオン源104はまた、ヒータ142と、電子を発生させる熱イオン陰極またはフィラメント144とを含むタイプのような、適切な電子源140を含んでいてもよい。イオン源104は、また必要であれば、イオン化チャンバ130に向けられる所望の強度およびコヒーレンスの制御可能な電子ビーム146を生じる導入部品、集束部品および/または視準部品を含んでいてもよい。図示された実施例においては、イオン源104はこの目的のために、電子集束磁石148、152を含んでいる。電子ビーム146は、電子ビーム入口136と電子ビーム出口138とを介してイオン化チャンバ130に導かれ、適切な陽極または集電極154に集められる。イオン化は、全体として符号156で示されたイオン化領域において起こり、このイオン化領域においては、イオン化チャンバ130に射入されたサンプルビーム122(たとえばサンプル分子)の成分が、電子ビーム146により照射され、それによりイオン化される。
サンプルビーム122からのサンプル物質がいったんイオン化されると、それらのイオンは、さらに処理するためにイオン化チャンバ130から抽出される。イオン源104の作動により、典型的にはイオンビームと直交し、かつイオン出口134を介してイオン化チャンバ130から外へ向かうイオン信号、イオンフラックスまたはイオンビーム158が生じる。このようなイオン抽出工程は、イオン化チャンバ130のすぐ下流で、イオン出口134に近接して配置されたイオンオプティクス106の利用により、促進してもよい。種々の形態の適切なイオンオプティクス106は広く知られており、市販されている。一例として、イオンオプティクス106は、イオン抽出レンズ162を含む1つまたはそれ以上のレンズ162、164および166を含んでいてもよい。他のレンズ164および166は、イオンの集束および/または加速に利用されてもよい。図1に模式的に示されているように、レンズ162、164および166は、それぞれがイオンビーム158が通過する少なくとも1つの開口またはスリットを含む板状で提供されてもよいが、他の公知の形態を用いてもよい。作動においては、イオン抽出レンズ162は電気的連結配線を介して適切な電圧源172により通電され、その結果、DC電位が抽出レンズ162とイオン化チャンバ130の導電性表面または部品との間に印加される。イオン化およびイオン抽出が同時かつ連続的に行なわれるように、イオン抽出レンズ162と電子源140とは同時に作動してもよい。イオン抽出レンズ162に印加されるイオン抽出電圧は、質量分析器108に入るイオンビーム158が最大の感度を得られるように最適化する一定値に設定されてもよい。
イオンビーム158は、次に適切な取入れ連動を介して質量分析器108に導入される。質量分析器108は、質量分類作業および同様に所望の他の作業(たとえば、反応または粉砕)に適した、いかなるタイプのものであってもよい。適切な質量分析器108の実施例は、連続ビームタイプおよび4増倍線形トラップの質量分析器を含むが、これらに限定されない。質量分析器108の作動によって、質量で識別されたイオン176の出力が行なわれる。このイオン出力または信号176は、イオン検出器110により収集される。イオン検出器110は、質量分析器108からの出力として受け取られたイオン信号176を、電流のような電気信号178に変換できるいかなる装置であってもよい。たとえばイオン検出器110は、電子増倍器(EM)または光増倍器を含むタイプであってもよいが、他のタイプのイオン検出器110が使用されてもよい。
イオン検出器110により形成された電気信号178は、電子制御装置112に供給される。全体的として、図1に示された電子制御装置112は、MSシステム100のための電子または電算環境を、簡潔な模式図で表したものである。したがって、電子制御装置112は、当該分野においてこれらの用語が理解されるように、コンピュータ、マイクロコンピュータ、マイクロ処理装置、マイクロ制御装置、アナログ回路などを含んでいてもよく、またそれらの一部であってもよい。電子制御装置112は、1つ以上の処理部品を表すか、または1つ以上の処理部品で具体化されていてもよい。たとえば、電子制御装置112は、信号調整、データ取得、データ処理、情報送信または部品間タスクの連結などのさらに特定の機能を果たす1つまたはそれ以上の処理部品と組み合わされたコンピュータのような主制部品を含んでいてもよい。電子制御装置112は、キャリブレーション、スケーリング、読取り/表示などの、検知後処理に備えてイオン検出器110により生成された電流信号を調整するための信号処理回路を含んでいてもよい。たとえば、信号処理回路は、イオン検出器110により生成された電流信号(典型的にはfA〜μAのオーダ)を、これに比例する電圧信号に変換する電流/電圧増幅器を含んでいてもよい。この目的のために、電流/電圧増幅器は抵抗器を介したフィードバックを有するオペアンプ(演算増幅器)を含んでいてもよい。データ処理の準備において、電流/電圧増幅器のデータ出力をアナログ領域からデジタル領域へ変換するために、信号処理装置はアナログ/デジタル変換器(ADC)を含んでいてもよい。電子制御装置112は、MSシステム100の作動によりスペクトルデータを生成するのに必要なデータ取得の制御および初期化用のデータ処理回路を含んでいてもよい。したがって、電子制御装置112は、データ回線182を通じてプリンタまたは表示画面などの読取り/表示装置114と連結されていてもよい。MSシステム100の作動の結果として生成した質量スペクトル184の実施例が、読取り/表示装置114内に示されている。
データ取得、処理、記憶および出力に加えて、電子制御装置112は、MSシステム100の1つまたはそれ以上の部品のコンピュータ制御のようないくつかの他の機能を実施してもよい。たとえば、電子制御装置112は、イオン抽出に使用される電圧のタイミングおよび大きさおよび、本明細書において開示された方法によりイオン化チャンバ130に印加されてもよい電圧パルスのパルス幅と周波数とを制御するために、制御信号線186を通じて電圧源172と連結されていてもよい。図1には特別に示していないが、MSシステム100の1つまたはそれ以上の部品の性能の最適化、それらの作動状態の制御、他の部品の作動との作動の調整などの目的のために、電子制御装置112は、MSシステム100の1つまたはそれ以上の部品と連結されていてもよい。たとえば電子制御装置112は、サンプルビーム122の温度流速または圧力、電子ビーム146の開閉および作動パラメータ、イオン化チャンバ130内のガスまたは蒸気圧、イオン化チャンバ130内のイオン計算、四重極部品が質量分析またはイオン検出器110のイオン導入、イオンオプティクス電圧、磁界または電界の強度、利得制御などに使用されている実施態様における四重極電圧(DCおよび/またはRF)、スキャン条件などの種々の態様の機械的制御を実施してもよい。
電子制御装置112は、ハードウエアとソフトウエアとの両方の属性を有していてもよい。特に、電子制御装置112は、MSシステム100の1つまたはそれ以上の作動に使用される1つまたはそれ以上のアルゴリズム、方法または工程を実施するためのコンピュータ可読媒体または信号を含んだ媒体において具体化された命令を実行するように構成されていてもよい。これらの命令は、何らかの適切なコード、たとえばCで書かれていてもよい。
上記のように、図1に示されたイオン源104のようなイオン源の作動において、自己振動現象が生じて、関連するMSシステム100の性能を低下させるおそれがある。この自己振動は、イオン化工程においてイオン化チャンバ130内に存在する電子空間電荷の作用により生じると考えられている。本開示は、イオン源104の感度を最大にする所望の作動条件を保持しながら、同時に自己振動現象の悪影響を改善するための解決法を提供する。この解決法は、イオン化時にイオン化チャンバ130に対して短い電圧パルスまたは連続する電圧パルスを印加することにより、イオン化チャンバ130内のイオン運動の安定を伴う。電圧パルス作用は空間電荷を攪乱し、それによって多数の捕捉されたイオンを一定時間減少させて、その結果、自己振動現象を抑制すると考えられている。イオン源104またはMSシステム100全体の他の作動を妨害せず、かつMSシステム100により生成された質量スペクトルを変更させないような方法で、電圧パルスが印加される。
電圧パルス(または一連もしくは一列の電圧パルスの各電圧パルス)は制御可能なパルス幅およびパルス高さ(電圧の大きさ)により規定されてもよい。複数の電圧パルスが印加される実施態様において、電圧パルスは制御可能なパルス周波数で印加される。電圧パルスの変数(パルス幅、パルス高さおよびパルス周波数)はいくつか要素に依存して決定されてもよく、これらのファクタは、MSシステム100において使用される機器のタイプ、これらの機器の作動限界、データサンプリング速度のようなイオン源104に関連する作動状態、イオン化チャンバ130の形状および寸法、イオン化チャンバ130内の圧力、イオン化チャンバ130内での粒子の平均自由行路、イオン化チャンバ130内のイオンの数ならびにそれらの質量または質量範囲、サンプルビーム122の流速、電子ビーム140電子発生電流、電子ビーム140を駆動する電位、イオン化チャンバ130からイオンを抽出するために使用される電位、イオン化チャンバ130の壁部131のようなイオン化チャンバ130の導電性表面またはイオン化チャンバ130内に配置されたイオン導入部品の電圧などを含む。
一般にパルス幅、パルス高さおよびパルス周波数は、上記のようにイオン不安定性を安定化し、かつ自己振動現象を抑制するように、空間電荷を攪乱(perturb)するのに充分な値の範囲内に設定される。パルス幅は負荷(パルス)サイクルの一部分(たとえば15%またはそれに近い値)に設定されてもよい。すなわち、電圧パルスがオンである期間は、印加された電圧パルス間の期間の所定の一部分であってもよい。いくつかの実施態様において、たとえば、パルス幅は約2μs〜約20μsの範囲である。さらに具体的な実施例においては、パルス幅は約10μsである。パルス高さは、電子発生電流のような作動変数の関数として設定されてもよく、その作動変数の変化に応じて変更されてもよい。たとえば、パルス高さは、増加する電子発生電流に伴って直線的または非直線的に自動的に増加するように設定されてもよい。他の実施例として、パルス高さはイオン化チャンバ130内の圧力の関数として設定されてもよい。さらに他の実施例として、パルス高さはイオン化チャンバ130内のスキャンされたイオン質量または濃度の関数として設定されてもよい。イオン源104に印加される電圧パルスは、特定の時間にスキャンされて、質量分析器108を介して送信された特定のイオン質量に最適化されてもよい。いくつかの実施態様において、たとえば、パルス高さは約0V〜約60Vである。
パルス周波数は他の作動変数とは無関係に選択されてもよい(すなわち、パルス周波数は自走周波数であってもよい)。また、パルス周波数は質量分析器108によりデータがサンプリングされる速度または周波数(データ取得または収集速度)の関数として、および/またはその速度もしくは周波数と同期するように設定されてもよい。いくつかの実施態様においては、パルス周波数はデータサンプリング速度よりも高く(たとえばデータサンプリング速度の2倍に)設定される。たとえば、データが80μsごとにサンプリングされるならば、電圧パルスは40μsごとに印加される。パルス周波数をデータサンプリング周波数よりも高く設定して、質量スペクトル内にイオン信号の変動がないことを確実にするために利用してもよい。電圧パルスをデータサンプリングイベントと同期させることは、周波数干渉(たとえばエイリアシング現象)が絶対に起こらないために有用である。いくつかの実施態様において、たとえば、パルス周波数は、約12kHz〜約50kHzの範囲である。
電圧パルスがイオン化チャンバ130内の空間電荷を攪乱してイオン空間電荷安定性を得るために充分である限りにおいて、脈動電位がイオン化チャンバ130(たとえばイオン化チャンバ130の壁部131)およびイオン化チャンバ130の近くのどこかに配置された他の導電性表面との間に印加されるように、電圧パルスが印加されてもよい。たとえば、もし、イオン出口134またはイオンビーム出口138のようなイオン化チャンバ130の開口が、周縁電界にイオン化チャンバ130内部への貫入を許すならば、導電性表面はイオン化チャンバ130に対して外部に位置してもよい。または、導電性表面はイオン化チャンバ130内に位置していてもよい。電圧パルスの印加の実施態様は下記に説明する。さらにまた、イオン化チャンバ130内へのエネルギー入力は、電子ビーム146のようにあらかじめ存在するエネルギーの入力であってもよいが、同じイオン安定効果を達成するためにパルス化されてもよい。一般に、これらの技術のいずれかによる電圧パルス化は、MSシステム100の観察された連続作動(たとえばサンプル導入、イオン化、イオン抽出、質量分析および検出など)をはっきり変化させないように実施しても良い。
一実施例において、電圧が印加される導電性表面は、イオン化チャンバ130に対して外部にある導電性表面である。具体的には、図1に示すように、イオン抽出レンズ162が導電性表面として用いられてもよい。電圧源172は、電圧パルスを印加するために使用されてもよい。設計に応じて、同一の電圧源172が電圧パルスとイオン抽出電圧との両方を印加するために使用されてもよく、または物理的に別の電圧源がこれらの機能のために使用されてもよい。したがって、図1に示された電圧源172は1つまたはそれ以上の電圧源を表してもよく、したがって、「電圧源」という言葉は1つまたはそれ以上の電圧源を包含してもよい。電圧パルスは、前記のように一定の最適化値に設定されていることが好ましいイオン抽出電圧上に重畳していてもよい。同じく前記のように、質量分析器108を介して検知されたイオンまたは得られた質量スペクトルに、このパルス化の感知できる影響がないように、パルス化はデータサンプリングの1サイクル内において実施してもよい。イオン抽出電圧の印加およびデータサンプリングのような他の機能に関する電圧パルスのタイミングを含む電圧源172の作動は、電子制御装置112によって制御信号線186を介して制御されてもよい。
上記に説明した技術は実験的に試験されてきわめてよい結果を生じ、感度、直線性、ダイナミックレンジ、イオン比の一貫性、質量分解性、信号対ノイズ(S/N)比および再生産性に関する質量分析器の性能は、イオン抽出レンズを使用した時と類似することを示している。同時にイオンの自己振動は抑制され、それによってイオン源は最大感度条件下で作動できた。イオン源および質量分析計の他の部品の性能を最適化するために使用された作動変数は、電圧パルス化の使用により悪影響を受けなかった。電圧源に対する電圧パルスの印加は、この新規な電圧パルシングの技術なしで作動するイオン源に対する改良であることを、これらの実験は明らかにしている。
図2は、電圧パルスがイオン化チャンバの内部の導電性表面に印加される実施態様を示している。図2においては、図1と同様の部品を示すために同様の参照符号が使用されている。したがって、図2は、イオン源204、イオン化チャンバ230、電子エミッタ、つまりフィラメント244を含む電子源240、電子ビーム246、電子コレクタ254、イオンビーム258、イオン抽出レンズ262、イオン抽出レンズ262と連結された電圧源272、および電圧源272と連結された制御信号線286を示している。図2に示されたイオン源204は、図1に示されたMSシステム100と結合して実施されてもよい。図2に示した実施例において、電圧パルスが印加される内部の導電性表面はリペラー、つまり反射電極292であり、これはしばしばイオン化チャンバ230内に配置されて、イオンをイオンビーム258の形でイオン化チャンバ230から外部へ加速排出するための電位を(たとえば、イオン抽出レンズ262によって)達成するのに使用される。この実施態様における電圧パルスは、リペラー電極292と連結されている電圧源294により印加されてもよい。この電圧源294は、図1に示した電子制御装置112のような適切な制御手段から制御信号線296を通じて送信された信号により制御されてもよい。イオン源204の作動は、その他の点では、上記に説明し、図1に示したイオン源104と類似している。
図3は、図1の実施態様と同様に、電圧パルスがイオン化チャンバの外部の導電性表面に印加される実施態様を示している。図1および図2と比較して同様の部品を示すために、図3においては、同様の参照符号が使用されている。したがって、図3は、イオン源304、イオン化チャンバ330、電子エミッタ、つまりフィラメント344を含む電子源340、電子ビーム346、電子コレクタ354、イオンビーム358、イオン抽出レンズ362、イオン抽出レンズ362と連結された電圧源372、および電圧源372と連結された制御信号線386を示している。図3に示されたイオン源304は、図1に示されたMSシステム100と結合して実施されてもよい。図3に示した実施例において、電圧パルスが印加される外部の導電性表面は、イオン化チャンバ330を通るように向けられた電子ビーム346を受ける集電極354である。この実施態様における電圧パルスは、集電極354と連結された電圧源394により印加されてもよい。この電圧源394は、図1に示された電子制御装置112のような適切な制御手段から制御信号線396を通じて送信された信号により制御されてもよい。イオン源304の作動は、その他の点では、上記に説明し、図1に示したイオン源104と類似している。
図4は、イオン化チャンバ130内に入力された現存するエネルギー源が、電圧パルスを印加するために使用されている実施態様を示している。図1〜図3と比較して同様の部品を示すために、図3においては同様の参照符号が使用されている。したがって、図4は、イオン源404、イオン化チャンバ430、電子エミッタ、つまりフィラメント444を含む電子源440、電子ビーム446、電子コレクタ454、イオンビーム458、イオン抽出レンズ462、イオン抽出レンズ462と連結された電圧源472、および電圧源472と連結された制御信号線486を示している。図4に示されたイオン源404は、図1に示されたMSシステム100と結合して実施されてもよい。図4に示した実施例において、電子源440の作動は、電子ビーム流をパルス化するように電圧源494により制御される。電子ビーム流のパルス化は、たとえば、フィラメント444に急速に通電し、そして電源を切ることにより、またはフィラメント444とイオン化チャンバ430との間に位置する開閉部品を作動させそして作動を停止することにより実施されてもよい。この電圧源494は、図1に示された電子制御装置112のような適切な制御手段から制御信号線496を通じて送信された信号により制御されてもよい。このイオン源404の作動は、その他の点では、上記に説明し、図1に示したイオン源104と類似している。
図1〜図4とともにこのように説明した実施態様において、イオン化チャンバ130(または230、330、または440)それ自体(すなわち、イオン化チャンバ130の壁部または構造物131)上の電圧は、イオンの導入のような種々の目的のために印加される他の電圧に対して一定である(または接地されている)。しかしながら、図5は電圧パルスが直接イオンチャンバに印加される実施態様を示している。図1〜図4と比較して同様の部品を示すために、図5においては同様の参照符号が使用されている。したがって、図5は、イオン源504、イオン化チャンバ530、電子エミッタ、つまりフィラメント544を含む電子源540、電子ビーム546、電子コレクタ554、イオンビーム558、イオン抽出レンズ562、イオン抽出レンズ562と連結された電圧源572、および電圧源572と連結された制御信号線586を示している。図5に示されたイオン源504は、図1に示されたMSシステム100と結合して実施されてもよい。図5に示された実施例において、電圧パルスはイオン化チャンバ530に直接印加され、その結果、イオン化チャンバ530と、イオン化チャンバ530の近くに配置された外部または内部電極のような、イオン化チャンバ530と関連するなんらかの他の導電性表面との間に、前記のようにイオン化チャンバ530内の空間電荷を撹乱するのに充分な脈動電位が確立される。たとえばイオン化チャンバ530の壁部531を有するイオン化チャンバ530と電気的に連結されている電圧源594により、電圧パルスがイオン化チャンバ530に直接印加されてもよい。この実施態様のイオン源504の作動は、他の点では、上記に説明し、図1に示されたイオン源104に類似している。
図6のフロー線図を参照して、イオン源における空間電荷に関する現象を抑制するための方法を一実施態様により説明する。ブロック602において、電子ビームがチャンバ内に向けられて、チャンバ内のサンプル物質からイオンが生成される。ブロック604において、電圧パルスがチャンバに印加されてチャンバ内に存在する電子空間電荷を撹乱する。このチャンバは、適切なイオン源(たとえば、イオン源104、204、304、404、または504)の一部である、図1〜図5とともに上記に説明したイオン化チャンバ(たとえば、イオン化チャンバ130、230、330、430、または530)であってもよい。イオン源は、サンプル分析システムのようなより大きいシステムと結合して作動してもよく、またはそのようなシステムの一部分を構成してもよい。たとえば、そのシステムは、図1に示されたMSシステム100のような質量分析計であってもよい。チャンバに電圧パルスを印加するために種々の技術が実施されてもよく、その実施例が上記に説明されている。いくつかの実施態様において、電圧パルスはチャンバに対して外部に配置された導電性表面に印加される。他の実施態様において、電圧パルスはチャンバ内部に配置された導電性表面に印加される。他の実施態様において、電圧パルスはチャンバの壁部のようなチャンバ自体の導電性表面に印加される。他の実施態様において、電圧パルスは、電子ビームのパルス化のようなチャンバ内へのエネルギー入力の一部として印加される。
本明細書において開示した方法は、たとえば上記GC/MS技術のような複合技術と結合して、およびタンデムMSまたはMS/MSのような他の複合技術において実施してもよい。たとえば、タンデムMSにおいては、1つ以上の質量分析器(および1タイプ以上の質量分析器)が使用されてもよい。一実施例として、イオン源は、混合物の分子イオンを単離する質量分離の第1ステージとして作用する多重極(たとえば四重極)構造に結合されていてもよい。第1の分析器は同様に、衝突集束機能を果たし、しばしば衝突チャンバまたは衝突セルと呼ばれる他の多重極構造(RFのみのモードで正常に作動する)に結合されている。アルゴンのような適切な衝突ガスがチャンバ内に注入されて、イオンを粉砕しそれによって娘イオン(daughter ion)を生じる。この第2の多重極構造も同様に、娘イオンをスキャンするための質量分離の第2ステージとして作用するさらに他の多重極構造に結合されていてもよい。最後に、第2ステージの出力は、イオン検出器に結合されている。多重極構造の代わりに、磁性および/または静電セクタが使用されてもよい。MS/MSシステムの他の実施例は、カリフォルニア州、Palo AltoのVarian Inc.から市販されている四重極GC/MSシステムのVarian Inc.1200シリーズと、本開示の譲受人に譲渡された上記特許文献1に開示された実施態様とを含む。
また、図1〜図6を参照して説明した処理および装置のような、質量分析計、イオン源および/または1つまたはそれ以上の電圧源において実行される1つまたはそれ以上の処理、下位処理、または処理工程は、ハードウエアおよび/またはソフトウエアにより実施または制御されてもよいことは、当業者には理解および認識されるであろう。もし、1つの処理がソフトウエアにより実行されるならば、そのソフトウエアは、たとえば図1に模式的に図示された電子制御装置112のような適切な電子処理部品またはシステム内のソフトウエアメモリ(図示せず)に存在してもよい。ソフトウエアメモリ内のソフトウエアは論理関数(すなわち、デジタル回路もしくはソースコードのようなデジタル形式、アナログ回路もしくはアナログの電気、音声もしくはビデオ信号などのアナログソースのようなアナログ形式のいずれかにおいて実施されてもよい「論理」)を実施するために実行できる命令を順序化した一覧を含んでもよく、また、命令実行システムまたは装置からの命令を選択的に取出してその命令を実行する、コンピュータに基づくシステム、処理装置を含むシステムまたは他のシステムなどの命令実行システムまたは装置(その一実施例は、図1において模式的に図示された電子制御装置112である)により、またはそれと結合して使用するためのコンピュータで可読(すなわち信号を有する)媒体内において選択的に実施されてもよい。本開示の文脈において、「コンピュータ可読媒体」および/または「信号を有する媒体」は、命令実行システムまたは装置により、またはそれと結合して使用するためのプログラムを含有、記憶、通信、伝搬または輸送してもよい何らかの手段である。コンピュータ可読媒体は、選択的に、電子、磁気、光学、電磁、赤外線、または半導体システム、装置、または伝搬媒体であってもよいが、それに限定されない。コンピュータ可読媒体のさらに具体的な、しかしながら非限定的な実施例として、以下を含むであろう。すなわち、1つ以上の配線を有する電気的接続(電子)、ポータブルコンピュータディスケット(磁気)、ランダムアクセスメモリ「RAM」(電子)、リードオンリーメモリ「ROM」(電子)、消去可能書き込み可能なリードオンリーメモリ「EPROMまたはフラッシュメモリ」(電子)、光ファイバ(光学)、およびポータブルコンパクトディスクリードオンリーメモリ「CDROM」(光学)である。コンピュータ可読媒体は、プログラムが印字された紙または他の媒体をたとえば光スキャンすることにより、そのプログラムが電子的に取り込まれ、コンパイルされ、その後に解釈されるか、またはもし必要ならば適切な方法で処理され、そしてコンピュータメモリ内に記憶されることが可能ならば、紙または他の適切な媒体であってもよい。
本発明の種々の態様または詳細を本発明の範囲から逸脱することなく変更してよいことも、さらに理解されるであろう。また、上記の記述は説明のために過ぎず、限定のためのものではない。本発明は請求の範囲によって限定されるものである。
本明細書に開示された主題が実施できる質量分析システムまたは装置の実施例を表し、イオン源の構造の実施例を含んでいる模式図である。 別の実施態様によるイオン源の構造の他の実施例の模式図である。 別の実施態様によるイオン源の構造のさらに他の実施例の模式図である。 別の実施態様によるイオン源の構造のさらに他の実施例の模式図である。 別の実施態様によるイオン源の構造のさらに他の実施例の模式図である。 本明細書に開示されたような、イオン源における空間電荷による影響を抑制する方法の実施例を説明するフロー図である。

Claims (19)

  1. 電子ビームをチャンバ内に導入して、前記チャンバ内のサンプル物質からイオンを生成する工程と、
    前記チャンバに抽出電圧を印加して、前記チャンバからイオンを放出させる工程と、
    電圧パルスを前記チャンバに印加して、前記チャンバ内に存在する電子空間電荷を撹乱させる工程とを含み、
    イオン化とイオン抽出とが同時に実行される、
    イオン源における空間電荷関連現象を抑制するための方法。
  2. 前記電圧パルスの印加は、それぞれが個別電圧間の期間の一部分であるパルス幅を有する、複数個の個別電圧パルスを含む周期的電圧パルスの印加を含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記周期的電圧パルスは、前記チャンバ内で生成された前記イオンからデータを取得するデータサンプリング周波数よりも高いパルス化周波数で印加され、そして前記パルシング周波数は前記データサンプリング周波数の約2倍である、請求項2に記載の方法。
  4. 前記電圧パルスのタイミングを、前記チャンバ内で生成された前記イオンからデータを取得するタイミングと同期させることを含む、請求項1に記載の方法。
  5. 前記電圧パルスの高さを前記電子ビームの電子発生電流の関数として選択することを含む、請求項1に記載の方法。
  6. 前記電圧パルスの高さを前記チャンバ内の圧力の関数として選択することを含む、請求項1に記載の方法。
  7. 前記電圧パルスの高さを前記チャンバ内のイオンの質量の関数として選択することを含む、請求項1に記載の方法。
  8. 前記電圧パルスは前記チャンバの開口の近くに配置された導電性表面に印加され、それによって脈動電位がチャンバの導電性表面とある表面との間に印加される、請求項1に記載の方法。
  9. 前記導電性表面は前記チャンバの外部に存在し、かつ電子集電極を含む、請求項8に記載の方法。
  10. 前記導電性表面は前記チャンバの内部に存在し、かつ反射電極を含む、請求項8に記載の方法。
  11. 前記抽出電圧は一定値で印加される、請求項1に記載の方法。
  12. 前記抽出電圧は、質量分析器による使用のために前記イオン出口から放出されるイオン信号を最適化する選択値に設定される、請求項1に記載の方法。
  13. 前記電圧パルスの印加は、前記電子ビームのパルス化を含み、さらに前記電子ビームのパルス化を、前記チャンバ内で生成された前記イオンからデータを取得するタイミングと同期させることを含む、請求項1に記載の方法。
  14. 前記電圧パルスは前記チャンバの壁部に印加され、それによって脈動電位が前記壁部と前記チャンバ内に配置された導電性表面との間に印加される、請求項1に記載の方法。
  15. 前記電圧パルスの印加および前記抽出電圧の印加は協働して、イオンの自己振動が減少していることを特徴とする実質的に連続的なイオンビームを生成する、請求項1に記載の方法。
  16. チャンバと、
    電子ビームを前記チャンバ内に導入するための電子源と、
    抽出電圧を前記チャンバに印加して、前記チャンバからイオンを放出させるための手段と、
    前記チャンバに電圧パルスを印加して、前記チャンバ内に存在する電子空間電荷を撹乱させる手段とを含み、
    前記抽出電圧を印加する手段と、前記電圧パルスを印加する手段とは、イオン化とイオン抽出とを同時にかつ連続的に提供する、
    イオン化装置。
  17. 前記電圧パルス印加手段は、電圧源と、前記電圧源に連結された前記チャンバの近くに配置された導電性表面とを含み、前記導電性表面は前記チャンバの外部もしくは内部に配置されているか、または前記チャンバの一部分である、請求項16に記載の装置。
  18. 前記電圧パルス印加手段は、前記電圧源を制御するための手段を含む、請求項16に記載の装置。
  19. 前記チャンバ内で生成された前記イオンからデータを取得するデータサンプリング周波数と、前記電子ビームの電子発生電流と、前記チャンバ内の圧力と、前記チャンバ内のイオンの質量と、前記のうちの2つまたはそれ以上とからなる群から選択された変数に基づいて、前記電圧パルス印加手段を制御するための手段をさらに含む、請求項16に記載の装置。
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